結論
日本エム・ディ・エムは、人工関節・骨接合材料・脊椎固定器具を扱う整形外科インプラントの専業だ。米国の子会社が自社製品を作り、日本の病院に売る。売上は約240億円、従業員は500人台と小さい。
筆者の結論は、今の値段はほぼ妥当、少し割高寄りというものだ。10年後の価値は今の時価総額を1割弱下回る。理由は、事業の稼ぐ力が今は一時的に落ちているのではなく、構造的に薄いことにある。
まず足元は悪い。2026年3月期の営業利益は約6億円で、前の期の4割に満たない。2025年の贈賄事件の報道で一部の病院が採用を見送り、国内の人工関節が減った。米国は部品の納期遅れで売れず、関税で原価も上がった。
回復の道筋は会社の計画に書いてある。3年後に営業利益15億円だ。それでも利益率は5%にすぎない。かつての13〜14%には戻らない前提だ。筆者は中立でも7%台までの回復を見るが、そこまで戻ると見て、なお割安にはならない。国内の償還価格の引き下げと賃金の上昇が、利益率を押し下げ続けるからだ。
上振れは、国内の信頼回復と米国の供給正常化が同時に進む場合に限られる。三井化学が3割を持つため、買収の余地もあるが、価値の計算には入れていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は持ち続けたい企業ではない。理由は、10年後の稼ぐ力が今より強いと言い切れないことだ。
医療は安定した需要を持つ。だが、手術は医師が選ぶので、顧客を縛る力は弱い。値段は2年ごとの価格改定で国が決め、賃金は上がり、器具の更新に毎年約18億円を使う。オーナーの手元に残るお金は、会計上の利益よりずっと少ない。
それでも、悲観の側の損失は限られる。自己資本は約254億円あり、在庫と器具と債権に裏づけられている。悲観でも自己資本の4〜5割は残ると筆者は見る。
逆に上振れは、国内の信頼回復と米国の供給正常化が両方そろった時だけだ。確率は3割に置いた。今の時価総額は、その上振れを半分ほど織り込んでいる水準だ。安全域は薄い。
経営への評価は、信頼の回復を見てからになる。三井化学の関与が資本の使い方にどう効くかも、見ておきたい点だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、手術1件ごとに使われるインプラントの販売だ。人工股関節・人工膝関節、骨折の固定具、背骨の固定具を、日本では病院に直接、米国では現地の病院網に売る。
製品は米国のODEV社が開発・製造し、売上の約8割が自社製品だ。残りは他社から仕入れて売る。日本の連結売上は約131億円、米国は外部向けで約108億円となる。
日本は利益が出る側だ。営業利益は約7億円で、人工関節約49億円、骨接合約44億円、脊椎は日米で約35億円を売る。米国は赤字で、膝関節の部品が届かず出荷が細った。米国での大手は医療機器の巨人が占め、同社の売上は市場の1%にも届かない。
コスト面の特徴は、手術用の器具セットを病院に貸す商売であることだ。器具の購入が毎年約18億円かかり、減価償却は年16億円ある。売上が伸びなくても器具の更新に現金が出ていく。
医療を支える側の安定と、小さい会社の脆さが同居している。国内と米国は、利益の出方がまるで違う。日本は営業所の数が少ない分、固定費も小さい。日本は小さな利益を稼ぎ、米国は今は赤字だ。
優良さと弱いところ
優良さは、中の上にとどまる。筆者は強い堀とは見ない。
良い点は、自社で製品を作れることだ。日米で共同開発し、日本と米国の両方で承認を取れる。骨接合のPrima Hip Screwや脊椎のKMCは伸びている。純有利子負債は小さく、自己資本比率は7割ある。
弱い点は規模だ。人工関節の国内は外資の大手が強く、同社の国内シェアは推定で1割に届かない。病院は採用する製品を症例ごとに選ぶので、不祥事の報道一つで採用を外される。営業のやり方がそのまま堀の薄さになっている。
過去の稼ぐ力も、直近は崩れた。営業利益率は2015年から2022年まで13〜14%だったが、2023年に9.5%、2026年に2.4%まで下がった。原因は価格圧力、人件費、関税、供給の乱れが重なったことだ。
経営の信頼は回復の途上にある。特別委員会の報告書は2026年3月に出て、再発防止策は実施途上だ。社内処分は39件に及んだ。最大の看板である誠実さに傷が付いた事実は軽くない。
三井化学が3割を持つ点は安心材料にも、重しにもなる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
整形外科インプラントは、高齢化で手術が増え、景気の影響を受けにくい。世界の人工関節市場は約276億ドルで、年4%台で伸びるとされる(調査会社の名目の予測)。日本の手術件数は米国の約9分の1と少なく、伸びしろはある。
国内の数量は、中立で10年に8%ほど伸びると筆者は見る。高齢者の骨折と変形性関節症が増えるためだ。ただ医療費の抑制が価格を縛る。特定保険医療材料の価格は2年ごとの改定で下がり続けており、物価が3%上がっても償還価格は追随しない。中立の10年の価格は1.1倍にとどまる。
競争は、外資の大手が国内の人工関節で強く、骨接合や脊椎には国内の専門メーカーも並ぶ。同社はそのすき間で、日米共同開発の製品で戦う。
米国は市場が大きい。ただ病院の集中購買と大手の営業力が強く、小さい会社は取れる枠が限られる。同社は米国の外部売上が約108億円で、実質の市場に占める割合は0.26%と推定している。価格は10年で1.2倍に置く。
分かれ目は、国内で採用が戻るか、米国の供給が正常に戻るか、関税の対応が済むかの3つだ。
資本政策と M&A
資本政策は、安定配当と配当性向30%以上が方針だ。直近の配当総額は約4.5億円で、純利益2.6億円を上回った。利益が戻らないまま配当を維持すれば、自己資本を削る。
筆者は還元を方針どおり30%台で置いた。自社株買いの実績はなく、利益が減る筋書きでは還元も減る。
大株主の三井化学は30.0%を持つ。2022年の提携で取締役の指名権があり、追加取得は会社の承諾が要る。買収の可能性は残るが、価値の計算には入れていない。
借入は短期が膨らんでいる。純有利子負債は約28億円で、支払利息は約2億円だ。10年の金利の動きによる利益への影響は小さい。2025年の米国訴訟の和解で約12億円を払い、現金が出ていった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
不祥事は一度きりの傷で、特別委員会の報告書が出て再発防止も動き出した。採用を見送った病院は、手術の質で選ぶ医師の要望で戻ってくる。人工股関節の新型ステムや、伸びている骨接合・脊椎の製品が国内を支える。
米国は部品の供給さえ正常に戻れば、膝関節の販売が戻る。ODEVの自社製造の強みは、大手が手を出さない小口の注文に応えられることだ。アジアへの生産移管で関税の影響は薄まる。
会社の計画では3年後に営業利益15億円、売上300億円だ。利益率が過去の水準の半分に戻るだけで、営業利益は2倍になる。三井化学が3割を持っており、買収で上場が終わる可能性もある。その場合は上乗せがつく。国内の整形外科は高齢化で手術が増え続け、価格が少し戻るだけで利益は大きく動く。
器具への投資が一巡すれば、現金も回り出す。経営は日米で共同開発した新製品を増やしており、製品の幅が営業の足場になる。純有利子負債が小さく、自己資本が厚いので、下がる時の底も堅い。
慎重な見方
不祥事は営業のやり方に根がある。社内処分が39件に上り、再発防止は途上だ。病院は採用を一度外すと、元に戻すのに年単位がかかる。違反が認定されれば、一部の販売先で営業が止まる。
価格は国が決める。2年ごとの改定で下がり、賃金は毎年上がる。利益率は構造的に押される。米国は市場の1%に満たない小口で、大手と集中購買に勝てない。関税、部品の遅れ、訴訟の和解と、毎年何かが起きている。
2027年3月期の会社予想は営業利益4億円で、第1四半期はすでに5億円の営業赤字だ。外部の予想はさらに低い。配当は純利益を上回り、自己資本を削っている。器具に毎年18億円を使い続けるため、利益が出ない年は現金が細る。回復は計画の期待で、実績は何もない。三井化学の関与が上限を作る側に働く可能性もある。人手の営業に頼る会社は、一度失った信頼を取り戻すのに時間がかかる。
償還価格は国が決め、賃金は市場が決める。この挟まれる構図が、小さな専業の利益率を長く押す。主要な競合の大手と違い、同社には価格の交渉力も規模の経済もない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が少し強い。会社の計画が達成されても営業利益率は5%で、過去の水準に戻らない。国内の価格圧力と米国の小ささは構造であり、一時的な問題ではない。
確率は中立に4割を置き、やや悲観を2割強、悲観を1割に置いた。上振れの2筋書きは合わせて3割弱だ。10年後の価値は、今の時価総額を1割弱下回る。三井化学の買収の可能性は、価値の計算に入れていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 977 円258 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 137 円36 億円)。 今の値に割り戻すと 546 円144 億円、今との差 −10.9%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,729 円719 億円 | 376 円99 億円 | +406.5% | +17.6% | 248 円65 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,440 円380 億円 | 224 円59 億円 | +171.5% | +10.5% | 333 円88 億円 |
| 中立 | 40% | 768 円203 億円 | 125 円33 億円 | +45.8% | +3.8% | 357 円94 億円 |
| やや悲観 | 22% | 562 円148 億円 | 57 円15 億円 | +0.9% | +0.1% | 136 円36 億円 |
| 悲観 | 10% | 398 円105 億円 | 0 円0 億円 | −35.1% | −4.2% | 40 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 977 円258 億円 | 137 円36 億円 | +81.8% | +6.2% | 1,115 円294 億円 |
今の株価時価総額 613 円162 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:国内の信頼が戻り、米国の供給も正常化 利益 49 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 2,729 円719 億円
国内は採用が戻り、骨接合と脊椎の新製品でシェアが5%に上がる。償還価格も、賃上げを一部認める方向に見直され、10年で1.3倍になる。米国は膝関節の供給が正常に戻り、アジアへの生産移管で関税の影響も消える。大手との共同販売が広がり、シェアは0.40%に高まる。営業利益率は日本15%、米国13%まで戻り、全社で13%台に乗る。過去の13〜14%の水準を取り戻す形だ。三井化学を軸に提携や再編も起こりうる。このとき同社は小さな専業から、日米で一定の存在感を持つ整形外科の中堅へ変わる。国内の骨接合では新型のスクリュー、脊椎では風船で骨を整える手技の製品が伸び続ける。人工関節も新型の股関節ステムが広がる。米国では大手が手の回らない小口の注文を取り、供給の正常化と合わせて売上の水準を一段上げる。10年後の売上は500億円台になる。
- 日本(人工関節・骨接合・脊椎の国内販売):数量 3,360(国内の整形外科インプラント市場(億円・今の値段で測った実質。人工関節・骨接合・脊椎))× 価格 6.5%(実質の市場に占める売上の割合=シェア × 償還価格・物価の指数)→ 売上 218 億円・営業利益 33 億円。実質の市場 3360 億円 × シェア 5.0%、償還価格・物価の指数 1.30 倍、営業利益率 15%
- 米国(ODEV社の外部向け販売):数量 364(米国の整形外科インプラント市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 80.4%(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア × 150円 × 販売単価の指数)→ 売上 293 億円・営業利益 38 億円。実質の市場 364 億ドル × シェア 0.40%、販売単価 1.34 倍、営業利益率 13.0%
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.62 倍、時価総額 719 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:上振れは信頼回復と供給正常化が同時に起きる場合だけだが、整形外科の需要は底堅く、数年のうちに会社の計画を超える筋書きは十分ありうる。
やや楽観 20% やや楽観:会社の計画を上回って回復 利益 30 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 1,440 円380 億円
国内の採用が2〜3年で戻り、シェアは4.6%になる。償還価格は物価に届かないが10年で1.2倍に上がる。米国は供給が戻り、シェアは0.34%まで回復する。営業利益率は日本13%、米国9.5%で、全社では10%台に乗る。会社の計画は営業利益15億円だが、10年のうちに40億円台まで伸びる。器具の更新に使うお金も増えるので、現金の余裕は限られる。不祥事の傷はほぼ癒え、成長の分だけ還元も増える。国内は骨接合と脊椎の新製品が支え、人工関節は新型の股関節ステムで穴を埋める。米国では供給が戻り、関税はアジアへの生産移管で吸収する。売上は10年で400億円台になる。営業利益は10年で40億円台になるが、この水準でも過去の最高の利益率には届かない。
- 日本(人工関節・骨接合・脊椎の国内販売):数量 3,300(国内の整形外科インプラント市場(億円・今の値段で測った実質。人工関節・骨接合・脊椎))× 価格 5.5%(実質の市場に占める売上の割合=シェア × 償還価格・物価の指数)→ 売上 182 億円・営業利益 24 億円。実質の市場 3300 億円 × シェア 4.6%、償還価格・物価の指数 1.20 倍、営業利益率 13%
- 米国(ODEV社の外部向け販売):数量 350(米国の整形外科インプラント市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 63.7%(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア × 150円 × 販売単価の指数)→ 売上 223 億円・営業利益 21 億円。実質の市場 350 億ドル × シェア 0.34%、販売単価 1.25 倍、営業利益率 9.5%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.57 倍、時価総額 380 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画を超えるが、過去の最高水準には届かない。
中立 40% 中立:計画に近い回復。それでも利益率は7%台 利益 16 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 768 円203 億円
国内の手術は高齢化で10年に8%ほど増える。同社のシェアは4.2%で、不祥事の影響から回復するが少し失う。償還価格は物価に届かず、10年で1.1倍だ。米国はシェアが0.28%に上がり、販売単価は1.2倍に上がる。営業利益率は日本10%、米国6%で、全社で7%台に戻る。過去の13〜14%には届かない。物価で人件費が1.34倍に増え、価格が追いつかないためだ。手術は戻るが、強い成長も強い縮みもない10年になる。売上は10年で約320億円、営業利益は約23億円だ。会社の計画は3年後に15億円なので、それより高い水準を10年かけて目指す形になる。器具の更新投資は、償却を上回る年が多く、増えた利益の多くは事業に残らない。還元は純利益の3割台にとどまる。
- 日本(人工関節・骨接合・脊椎の国内販売):数量 3,240(国内の整形外科インプラント市場(億円・今の値段で測った実質。人工関節・骨接合・脊椎))× 価格 4.6%(実質の市場に占める売上の割合=シェア × 償還価格・物価の指数)→ 売上 150 億円・営業利益 15 億円。実質の市場 3240 億円 × シェア 4.2%、償還価格・物価の指数 1.10 倍、営業利益率 10%
- 米国(ODEV社の外部向け販売):数量 336(米国の整形外科インプラント市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 50.4%(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア × 150円 × 販売単価の指数)→ 売上 169 億円・営業利益 10 億円。実質の市場 336 億ドル × シェア 0.28%、販売単価 1.20 倍、営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 202 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中立は、会社の計画をやや上回る回復を置く。
やや悲観 22% やや悲観:採用が戻らず、価格に押される 利益 7 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 562 円148 億円
国内はシェアが3.8%に下がる。病院が採用を戻さず、償還価格は据え置きで10年で変わらない。米国は供給が戻るものの、大手の集中購買に押されて、シェアは0.22%にとどまる。営業利益率は日本7%、米国3%で、全社では4%台になる。稼ぐ力の積み上げは低いので、売れる資産(在庫・器具・売掛金)の換金価値を下値に置く。人件費は上がり続け、販売費の削減にも限りがある。三井化学の関与は続き、少数株主は大きな変化を期待しにくい。人件費と器具の更新費が先に増え、利益は薄いまま推移する。国内は採用を外した病院が戻らず、骨接合は競争で値下がりする。米国は供給が戻っても大手に押され、赤字をなんとか脱する程度にとどまる。売上は10年で240億円ほどと、今とほぼ同じ水準だ。
- 日本(人工関節・骨接合・脊椎の国内販売):数量 3,150(国内の整形外科インプラント市場(億円・今の値段で測った実質。人工関節・骨接合・脊椎))× 価格 3.8%(実質の市場に占める売上の割合=シェア × 償還価格・物価の指数)→ 売上 120 億円・営業利益 8 億円。実質の市場 3150 億円 × シェア 3.8%、償還価格・物価の指数 1.00 倍、営業利益率 7%
- 米国(ODEV社の外部向け販売):数量 322(米国の整形外科インプラント市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 36.3%(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア × 150円 × 販売単価の指数)→ 売上 117 億円・営業利益 4 億円。実質の市場 322 億ドル × シェア 0.22%、販売単価 1.10 倍、営業利益率 3.0%
倍率:稼ぐ力は低い(純利益 7 億円×PER 12 倍でも約 80 億円)ので、売れる資産の換金価値を下値に置く。今の自己資本 254 億円×0.51=約 130 億円。過去の 水準からは置いていない。
確率:国内の採用が戻らず、価格圧力が続く筋書き。稼ぐ力より売れる資産の側で下を支える。
悲観 10% 悲観:国内の営業が制約され、米国は縮小 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 398 円105 億円
贈賄の違反が認定され、一部の販売先で営業が止まる。国内のシェアは3.0%に下がり、償還価格は10年で1割下がる。米国は供給難と関税、訴訟で縮小し、シェアは0.10%に落ちる。営業利益はほぼゼロになる。配当は止まり、他社が提携や買収に動く場合でも、値段は資産の換金価値が下値になる。会社は縮んだ形で存続し、三井化学が持ち分を整理する可能性もある。国内の営業が止まり、売上は今の半分近くに縮む。固定費の人件費と器具の償却は残るので、営業利益はゼロ近くになる。配当は止まり、短期借入の借り換えは金利3.5%で重くのしかかる。米国は縮小に動き、他社に製品や事業を売る形も考えられる。
- 日本(人工関節・骨接合・脊椎の国内販売):数量 3,000(国内の整形外科インプラント市場(億円・今の値段で測った実質。人工関節・骨接合・脊椎))× 価格 2.7%(実質の市場に占める売上の割合=シェア × 償還価格・物価の指数)→ 売上 81 億円・営業利益 2 億円。実質の市場 3000 億円 × シェア 3.0%、償還価格・物価の指数 0.90 倍、営業利益率 2%
- 米国(ODEV社の外部向け販売):数量 308(米国の整形外科インプラント市場(億ドル・今の値段で測った実質))× 価格 15.0%(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア × 150円 × 販売単価の指数)→ 売上 46 億円・営業利益 −1 億円。実質の市場 308 億ドル × シェア 0.10%、販売単価 1.00 倍、営業利益率 -2.0%
倍率:赤字に近いので、売れる資産の換金価値で置く。今の自己資本 254 億円×0.41=約 105 億円。営業が止まる筋書きなので、在庫・器具の換金は 4 割前後とみた。
確率:営業の制約が実際に起きる最悪に近い筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(人工関節・骨接合・脊椎の国内販売)
人工関節約49億円、骨接合約44億円、脊椎などを国内の病院に販売する。
| 数量国内の整形外科インプラント市場(億円・今の値段で測った実質。人工関節・骨接合・脊椎) | 価格実質の市場に占める売上の割合=シェア × 償還価格・物価の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 4.4% | 131 | 7 |
| 10 年後 中立 | 3,240 | 4.6% | 150 | 15 |
取り方:国内の市場規模は開示がなく、約3,000億円と推定した(根拠は弱い。人工関節・骨接合・脊椎の合計の目安)。日本セグメントの売上131.1億円から、実質シェア4.4%を逆算した。数量は今の値段のままの実質、価格の欄はシェアと償還価格の指数の積。
米国(ODEV社の外部向け販売)
膝・股関節、脊椎、骨接合を米国の病院に販売し、DePuy Synthesesへ一部を供給する。
| 数量米国の整形外科インプラント市場(億ドル・今の値段で測った実質) | 価格実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア × 150円 × 販売単価の指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 280 | 38.6% | 108 | −1 |
| 10 年後 中立 | 336 | 50.4% | 169 | 10 |
取り方:米国の外部売上は7,158万ドル(150円換算で約107〜108億円)。米国市場は約280億ドルと推定(根拠は弱い)、実質シェア0.26%。営業利益はセグメント損益で、内部売上を含むため外部売上との差がある。
リスクと懸念
贈賄事件の再発・営業の制約
2025年の贈賄事件の報道で一部の病院が採用を見送った。特別委員会の再発防止策は実施途上で、違反が認定されれば一部の販売先で営業が制約される。国内の売上は医師の採用判断に直結するため、信頼の回復には年単位がかかる。
償還価格の引き下げと人件費の上昇
人工関節などの特定保険医療材料は2年ごとの価格改定で下がり続けている。人件費は物価並みに上がるので、利益率は構造的に押される。中立でも国内の価格は10年で1.1倍と、物価の1.34倍に届かない前提だ。
米国の供給制約と関税
膝関節は部品の納期遅れで供給が細った。欧州と台湾からの調達には相互関税がかかり、原価率は37.7%から40.9%に上がった。アジアへの生産移管は途上で、効果の出る時期は読みにくい。
器具の更新投資が現金を食う
手術器具を病院に貸す商売なので、年約18億円の器具投資が要る。償却は年16億円。売上が伸びなくても現金が出ていき、利益が出ない年は短期借入に頼る。配当が純利益を超える年は、自己資本を削る。
訴訟・和解
2025年3月に米国子会社の損害賠償訴訟が和解し、約12億円の支払いが出た。製造物責任や公正取引の訴訟が続く可能性がある。小さい会社には1件が重い。
三井化学との関係
三井化学は30.0%を持ち、取締役の指名権がある。買収で上場が終わる可能性があるが、価格は決まらず、少数株主には条件を選べない。持ち分の売却があれば株価の重しにもなる。
今後の分かれ目
- 国内の人工関節・骨接合の売上が2四半期続けて前年を上回ったら
- 採用の回復が確かめられたとして、上の筋書きの確率を上げる。
- 贈賄事案で違反が認定され、販売先の営業が制約されたら
- 悲観の確率を上げ、国内のシェアの前提を下げる。
- 米国の膝関節の供給が正常に戻り、営業利益が黒字になったら
- 米国の利益率の前提を上げ、中立と上振れを厚くする。
- 中間決算で2027年3月期の営業利益予想が下方修正されたら
- 計画の信頼性が下がり、回復の時期を遅らせて見直す。
- 三井化学が買収の意向を示したら
- 価値の計算には入れていないので、上乗せ要因として別に見る。
- 償還価格の改定で人工関節・骨接合の価格が物価に近づく形で見直されたら
- 国内の価格の前提を上げる。
見ておくもの
- 国内の人工関節・骨接合の売上と採用の戻り
- 米国の供給と関税の対応(アジアへの生産移管)
- 2027年11月の中間決算と計画の進み具合
- 三井化学の動きと配当方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。k は 8%(quality の合計 0)、g は 4%、RONIC は残る割合 1/2 で薄め、ROE が k 未満の中立は上限 1÷k 以下に置いた。今の PER や PBR、同業の倍率には寄せていない。悲観側は稼ぐ力ではなく売れる資産の換金価値で下値を置いた。市場規模(国内 3,000 億円・米国 280 億ドル)は推定で根拠が弱いので、数量はシェアの変化で動かす形にした。減価償却は今の器具は取得時の値段のまま、新しい器具の償却は更新投資の分だけ足し、営業利益率を物価で一律に増やしていない。リースは小さく、約束の大きさは重くない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→14.62 倍・やや楽観 PER 13.2→12.57 倍・中立 PER 12→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality 0.0%=7.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 8.00%。