結論
シグマ光機は、研究室や工場で使うレーザー用の光学部品を作る専業メーカーだ。ミラー、レンズ、ステージ(位置を動かす台)を、カタログで世界に売る。筆者の結論は「割高」である。本質価値は、今の時価総額を 5 割ほど下回る。
事業そのものは悪くない。要素部品の営業利益率は 17% 近くあり、財務も堅い。自己資本比率は 88% で、実質は無借金だ。2026 年 5 月期は売上 114 億円、営業利益 12 億円だった。
ただ、稼ぐ力に対して値段が高い。時価総額 236 億円は、直近の純利益の約 28 倍にあたる。10 年後の中立でも、営業利益は 18 億円ほどだ。強気でも 34 億円で、純利益の倍率は 12 倍に届かない。
理由は資本の効率にある。ROE は 4〜5% で、資本コストの 8% を下回る。厚い自己資本が利益を薄めるため、倍率には 12.5 倍という天井がかかる。
筆者が見るのは 2 点だ。売上が 2022 年から伸び悩んでいる点と、会社の 15% の営業利益率の目標に届いていない点である。ここが動けば、見方は変わる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い小さな専業だが、高い値段を払う理由がない」。事業は堅実で、無借金だ。ただ、成長は伸び悩み、資本の効率は低い。
最も気になるのは、稼ぐ力と値段の差だ。時価総額は純利益の 28 倍にあたる。これは、利益が 3 倍になる未来をすでに織り込んだ値段だ。ROE が資本コストを下回る会社の倍率は、12.5 倍を超えられない。
事業の良さは、要素部品の営業利益率の高さに出ている。ただ、全社費用と、伸びないシステム製品が足を引っ張り、全社では 10% 台にとどまる。この差を埋める経営の動きは、まだ見えない。
資本の使い方は保守的だ。現金は積み上がり、自社株買いはない。浜松ホトニクスなどの安定株主が厚く、少数株主に厳しい圧力をかける人もいない。
結論として、今の値段は事業の実力を大きく超える。楽観の筋書きですら、今の値段に届かない。安全域はない。
何で稼ぐ会社か
会社の仕事は、光を扱う部品と小さな装置を作って売ることだ。事業は 2 つに分かれる。要素部品事業は売上 98 億円、システム製品事業は 16 億円だ。従業員は連結で 547 人、うち 460 人が要素部品にいる。
要素部品は、光学基本機器、自動応用製品、光学素子・薄膜の 3 種類だ。ミラーやレンズを支える台、モーターで動く位置決めのステージ、研磨したガラスにコートを付けた素子をそろえる。カタログに載る汎用品が中心で、買い手は大学、研究所、メーカーの開発部門、装置メーカーなど、幅広い。特定の顧客への依存は低いと会社は述べている。
システム製品は、顧客の要望に合わせた測定や加工の装置だ。売上は前期比 11.6% 減だったが、受注は 6.8% 増え、受注残も 24% 増えた。
生産は埼玉の日高と石川の能登が中心で、上海と米国のカリフォルニアにも工場がある。販売の子会社は、フランス、ドイツ、シンガポール、上海にある。持分法の関連会社は、LMS とタックコートの 2 社だ。
研究開発に年 3.6 億円を使い、中赤外域の光学素子、ガラススケール付きのステージ、圧電アクチュエータの制御、医療機器の基盤技術に取り組む。経営方針の標語は「Great Reset」だ。
優良さと弱いところ
この会社の質は、堅実な専業の「中堅」だ。強みは、品ぞろえの広さと、精密な研磨・コートの技術にある。カタログに数千点を載せ、注文が来れば早く届ける。これは、部品を探す研究者にとって、手間を省く価値になる。
要素部品の営業利益率は 16〜17% で、過去 10 年を通じて高い水準を保ってきた。全社でみると、全社費用を引いた後の営業利益率は 10% 台だ。2018 年 5 月期に 16.0% まで上がり、その後は 10〜13% で推移している。
弱みは、規模と成長だ。売上は 2023 年 5 月期の 114 億円から、3 年たっても 114 億円のままだ。物価が上がった分を考えると、実質では縮んだことになる。海外には、Thorlabs や Edmund Optics のような、規模の大きな通販型の競合がいる。筆者の理解では、品ぞろえと納期の競争は、年々厳しい。
資本の効率は低い。ROE は 4.5% で、過去 10 年の中央値は 6.1% だ。現金と自己資本が厚く、利益がそれに追いついていない。2023 年に会社が掲げた目標は、営業利益率 15% 以上、ROE 8% 以上だった。実績はどちらにも届いていない。
経営は保守的で、配当は性向 30% を目標にする。一方で、利益率の改善や資本の使い方を、数字で語る場面は少ない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
レーザー光学の市場は、成長するが、競争も厳しい。レーザーは半導体の検査と加工、通信、医療、量子技術、研究に広がっている。光学部品の市場は、調査会社の推計で年 7% ほど(名目)伸びる。物価の分を除いた実質では、年 4% 前後になる。
シグマ光機の売上は、この市場の伸びを取り込めていない。2023 年 5 月期の 114 億円から、売上は横ばいだ。半導体装置の投資の谷や、大学・研究機関の予算の制約が重なった。2027 年 5 月期の会社予想は 119 億円で、3.9% の増収にとどまる。
競合は 3 種類ある。海外の通販型(Thorlabs、Edmund Optics)、装置メーカー系の部品部門(Newport を持つ MKS など)、国内の専業(駿河精機など)だ。シグマ光機は、日本の研究者に近い立場と、特注の対応力で戦う。
価格は上げやすい面がある。精密部品は人件費の比率が高く、値上げが通りやすい。ただ、為替が円安に動くほど、海外の競合との価格差が縮む。ドル円を 150 円に固定した前提では、価格は物価並みに上げてよい。
循環の位置としては、谷から回復の初期にある。2027 年 5 月期は営業利益率 11.7% の予想で、2018 年のような 16% の山には遠い。
資本政策と M&A
資本政策は、普通だ。配当は性向 30% を目標にし、2026 年 5 月期の配当総額は 3 億円ほどだった。来期は 5 億円ほどに増える見通しで、性向は 36% になる。自社株買いの記載は確認できなかった。
自己資本は 187 億円で、自己資本比率は 88% だ。現金は 37 億円あり、有利子負債はほぼない。このうち、運転資金と不測の備えに月商 2 か月分(約 19 億円)を残し、約 18 億円を余りと見る。ただし、過去 10 年で純現金は 22 億円から 36 億円に積み上がっただけで、戻す実績は薄い。
大株主は浜松ホトニクスで、14.1% を持つ。光の分野の大手で、事業の関係も深いとみられる。取引先持株会が約 7% で、安定株主が厚い。光通信が保有割合を増やした変更報告書も出ている。
政策保有株は、上場分が約 1 億円と小さい。M&A は小さな出資(LMS、タックコート)にとどまる。TOB の可能性は、浜松ホトニクスなどの安定株主と、時価総額の小ささから、ゼロではない。ただし時期も条件も不明で、筋書きには織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
光学部品の需要は、10 年かけて厚くなる。レーザーは半導体の検査、量子コンピュータ、医療、通信に広がり、研究機関の装置の数も増える。調査会社の推計では、光学部品の市場は年 7% ほど伸びる。
シグマ光機は、その市場の入り口にいる。要素部品の営業利益率は 17% 近くあり、品ぞろえと納期は日本の研究者に支持されている。値上げも通りやすく、売上は物価の分だけ自然に伸びる。
システム製品は底を打った。受注は 6.8% 増え、受注残は 24% 増えた。会社は来期、売上 119 億円、営業利益 13.6 億円と、増益を見込む。
財務は堅く、配当は増える見通しだ。会社の目標どおり営業利益率が 15% に届けば、10 年で営業利益は 34 億円を超える。
資本の使い方も変わりうる。自社株買いや増配が始まれば、ROE が上がり、倍率も上げられる。浜松ホトニクスのような大手が株主にいる意味は、提携や買収の可能性にもつながる。
慎重な見方
売上は 3 年間伸びていない。2023 年 5 月期の 114 億円から、2026 年 5 月期も 114 億円だ。物価の分を引けば、実質では縮んでいる。需要の増加は、まだ数字に出ていない。
海外には、規模の大きな通販型の競合がいる。Thorlabs や Edmund Optics のような会社は、品ぞろえも納期も強い。価格競争が厳しくなれば、営業利益率の高い要素部品が先に削られる。
システム製品は売上が 11.6% 減り、営業利益はわずか 1 億円だ。全社費用を引いた全社の営業利益率は 10% 台で、会社が 2023 年に掲げた 15% には届かない。
ROE は 4.5% だ。資本コスト 7.5% を下回る会社の倍率は、12.5 倍が天井になる。今の 28 倍は、強気の筋書きでも正当化できない。
安定株主が厚く、少数株主が資本政策に口を出す余地は小さい。現金が積み上がっても、戻る保証はない。
どちらに重みを置いたか
双方に理があるが、数字は慎重な側に強い。強気の根拠である市場の成長は、会社の売上にまだ出ていない。慎重な側の根拠である ROE の低さは、式の上でそのまま倍率の天井になる。
中立を 38% と最も厚くし、やや悲観を 25%、悲観を 10% に置いた。強気側は、やや楽観 20%、楽観 7% とした。小さな専業は、良い年も悪い年も大きく振れるため、悲観にも厚みを残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 2,642 円187 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 597 円42 億円)。 今の値に割り戻すと 1,698 円120 億円、今との差 −47.2%、 期待の年率 +0.1%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,593 円396 億円 | 890 円63 億円 | +101.6% | +7.3% | 454 円32 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,776 円267 億円 | 720 円51 億円 | +39.8% | +3.4% | 899 円64 億円 |
| 中立 | 38% | 2,854 円202 億円 | 593 円42 億円 | +7.2% | +0.7% | 1,310 円93 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,250 円89 億円 | 508 円36 億円 | −45.3% | −5.9% | 440 円31 億円 |
| 悲観 | 10% | 988 円70 億円 | 381 円27 億円 | −57.4% | −8.2% | 137 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,642 円187 億円 | 597 円42 億円 | +0.8% | +0.1% | 3,239 円229 億円 |
今の株価時価総額 3,215 円228 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 光学の需要が厚くなり、利益率が 14% に乗る 利益 26 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 5,593 円396 億円
レーザーが半導体の検査、量子技術、医療、通信に広がり、光学部品の需要が厚くなる。要素部品の実質の出荷は今の 1.5 倍になり、値上げも物価を少し上回る。
営業利益率は要素部品で 19%、全社で 14% に上がる。システム製品も受注残が売上に変わり、1.4 倍に伸びる。営業利益は 34 億円と、今の約 3 倍だ。
全社費用は物価で増えるが、売上が大きく伸びる分、薄まる。自己資本は 300 億円を超え、配当の性向は 3 割台半ばを保つ。
会社の営業利益率 15% の目標に近づく姿である。ただし、10 年を通じて外れずに続く必要がある。
- 要素部品事業:数量 73.6(出荷点数(万点))× 価格 2.76(1 点あたりの売値(万円・名目))→ 売上 203 億円・営業利益 39 億円。出荷 73.56 万点、単価 2.76 万円、利益率 19.0%
- システム製品事業:数量 286(出荷台数(台))× 価格 1,104(1 台あたりの売値(万円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。286 台、単価 1104 万円、利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 14.8 倍、時価総額 396 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:7%。レーザーの用途が広がり、会社の営業利益率の目標に近づく強気の姿。売上が 3 年伸びていない現実があり、確率は低くとどめた。
やや楽観 20% 市場の成長を取り込み、利益率が 12% 台に上がる 利益 19 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,776 円267 億円
要素部品の実質の出荷が 1.3 倍に伸びる。値上げは物価並みに通り、売上は 173 億円になる。営業利益率は要素部品で 17.5% に上がる。
システム製品は受注残が売上に変わり、1.1 倍に増える。ただし採算は 8.5% 止まりで、全社の押し上げは小さい。
全社費用を含めた営業利益は 25 億円になる。現金の利息が 2% に上がり、純利益は 19 億円ほどだ。
配当は性向 3 割台半ばで増える。自己資本は 280 億円ほどに積み上がる。
光学部品の用途は、半導体の検査と医療で広がる。浜松ホトニクスなど大株主との取引も、緩やかに厚みを増す。
- 要素部品事業:数量 63.8(出荷点数(万点))× 価格 2.72(1 点あたりの売値(万円・名目))→ 売上 173 億円・営業利益 30 億円。出荷 63.75 万点、単価 2.72 万円、利益率 17.5%
- システム製品事業:数量 224(出荷台数(台))× 価格 1,080(1 台あたりの売値(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。224 台、単価 1080 万円、利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 267 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:20%。市場の伸びを一部取り込み、利益率が緩やかに上がる姿。強気と中立の間に置く。
中立 38% 売上は物価並みに伸びるが、利益率は今とほぼ同じ 利益 14 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,854 円202 億円
要素部品の実質の出荷は、10 年で 1.15 倍にとどまる。年にして 1.4% の増加で、市場の伸びの半分ほどだ。値上げは物価並みの 1.34 倍が通る。
要素部品の営業利益率は 16% を保つ。システム製品は横ばいで、利益率は 7% だ。全社費用は物価で 1.34 倍に増え、約 7.6 億円になる。
営業利益は 18 億円、売上は 173 億円で、利益率は 10.5% だ。今の 10.3% とほぼ変わらない。現金の利息が 2% に上がり、純利益は 14 億円になる。
配当は性向 3 割台半ばで、緩やかに増える。現金は積み上がり、戻り方は半分と見る。
- 要素部品事業:数量 56.4(出荷点数(万点))× 価格 2.68(1 点あたりの売値(万円・名目))→ 売上 151 億円・営業利益 24 億円。出荷 56.4 万点、単価 2.68 万円、利益率 16.0%
- システム製品事業:数量 204(出荷台数(台))× 価格 1,072(1 台あたりの売値(万円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。204 台、単価 1072 万円、利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 202 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:38%。市場は伸びるが、シェアは動かない。利益率は今の 10% 台を保つ、10 年の中心の姿として最も厚く置いた。
やや悲観 25% 価格競争と需要の谷で、利益率が 7% に下がる 利益 8 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,250 円89 億円
海外の通販型の競合との価格競争が激しくなる。値上げは物価に届かず、価格は 1.30 倍にとどまる。半導体装置の投資と研究予算の谷で、実質の出荷は横ばいになる。
要素部品の営業利益率は 13.5% に下がる。システム製品は 15% 減り、採算もほぼ消える。
全社費用は物価で増えるので、営業利益は 10 億円に細る。純利益は 8 億円ほどだ。
配当は性向を守る。自己資本は 240 億円ほどで、ROE は 3% 台になる。
半導体装置の投資が谷に入り、大学・研究機関の予算も絞られる。カタログ品の注文が細り、在庫の評価損も出やすい。システム製品の特注案件は採算が合わず、受注を選ばざるを得ない。
研究開発費は削れず、新製品の投入が遅れて、品ぞろえの競争力も少しずつ落ちる。
- 要素部品事業:数量 49.0(出荷点数(万点))× 価格 2.60(1 点あたりの売値(万円・名目))→ 売上 128 億円・営業利益 17 億円。出荷 49.04 万点、単価 2.6 万円、利益率 13.5%
- システム製品事業:数量 173(出荷台数(台))× 価格 1,040(1 台あたりの売値(万円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。173 台、単価 1040 万円、利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 8 億円・ROE 約 3.5% は k 7.5% を大きく下回り、上限は 1÷k=12.5 倍。価格競争と需要の谷が重なる筋書きなので、上限の約 7.5 割の 9.5 倍に置いた。余った現金は 0.75 倍の 13.5 億円に戻り方 0.5 を掛けた。
確率:25%。海外の通販型の競合との価格競争と、半導体・研究予算の谷が重なる姿。小さな専業は振れが大きいので、厚めに置いた。
悲観 10% 通販型の競合に押され、要素部品の利益率が 8% に落ちる 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 988 円70 億円
海外の通販型の競合と中国の低価格品に押され、価格は 1.15 倍にとどまる。半導体投資と研究予算が細り、実質の出荷は 15% 減る。
要素部品の営業利益率は 8% に落ちる。システム製品は 4 割減り、赤字になる。全社費用は物価で増え続け、営業利益はわずかな赤字になる。
拠点の統廃合と減損が出て、自己資本は 200 億円ほどに減る。配当は最低限に抑えられる。
株主の取り分は、現金と売れる資産が頼りになる。安定株主が厚く、現金の戻り方も細い。
円高が進めば、海外の競合との価格差がさらに縮み、立て直しの余地は小さくなる。
- 要素部品事業:数量 41.7(出荷点数(万点))× 価格 2.30(1 点あたりの売値(万円・名目))→ 売上 96 億円・営業利益 8 億円。出荷 41.68 万点、単価 2.3 万円、利益率 8.0%
- システム製品事業:数量 122(出荷台数(台))× 価格 920(1 台あたりの売値(万円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。122 台、単価 920 万円、利益率 -3.0%
倍率:純利益はほぼ 0 で稼ぐ力は低く、売れる資産が値段の土台になる。今の自己資本 186 億円に対する PBR は約 0.38 倍。
確率:10%。構造的な価格競争と需要の縮小で、利益が消える姿。小さな専業で単一分野に偏るため、厚みを残した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
要素部品事業
光学基本機器(ミラーやレンズの台)、自動応用製品(位置決めステージ)、光学素子・薄膜をカタログで売る。
| 数量出荷点数(万点) | 価格1 点あたりの売値(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 49.0 | 2.00 | 98 | 16 |
| 10 年後 中立 | 56.4 | 2.68 | 151 | 24 |
取り方:2026 年 5 月期の要素部品の売上 98.1 億円を、カタログ品の平均単価 2 万円で割った推定の出荷点数(約 49 万点)。点数の開示はなく、汎用の台・ミラー・レンズ(数千円〜数万円)と電動ステージ(数十万円)の混ざった平均で置いた粗い推定。数量は実質で、物価の分は価格に入れた。営業利益 16.4 億円は開示。
システム製品事業
顧客の要望に合わせた測定・加工の光学装置。受注生産が中心。
| 数量出荷台数(台) | 価格1 台あたりの売値(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 204 | 800 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 204 | 1,072 | 22 | 2 |
取り方:2026 年 5 月期のシステム製品の売上 16.3 億円を、1 台約 800 万円で割った推定の台数(約 204 台)。台数と単価の開示はなく、受注残 7.3 億円と売上の規模から置いた粗い推定。営業利益 1.1 億円は開示。
リスクと懸念
売上が伸びない
売上は 2023 年 5 月期の 114 億円から横ばいで、実質では縮んでいる。調査会社が言う市場の成長を取り込めない状態が続けば、10 年後の利益は今とほぼ同じになる。会社の中期目標(営業利益率 15%)も遠のく。
海外の通販型との価格競争
Thorlabs や Edmund Optics のような規模の大きな競合は、品ぞろえと納期で強い。円高が進むか、競合が値下げに動けば、営業利益率の高い要素部品の利益が削られる。
半導体と研究予算の波
光学部品の買い手は半導体装置メーカーと、大学・研究機関だ。装置投資の谷や研究予算の抑制が重なると、売上が落ちる。固定費は一定なので、利益は売上以上に減る。
システム製品の採算
システム製品は売上 16 億円で、営業利益は 1 億円しかない。前期は売上が 11.6% 減った。受注は増えているが、特注の装置は採算が読みにくく、赤字案件が出れば全社の利益を削る。
資本が利益を薄める
自己資本 187 億円に対し、純利益は 8 億円で、ROE は 4.5% だ。現金が積み上がるほど、ROE は下がる。資本の使い方が変わらない限り、倍率の天井は 12.5 倍に抑えられる。
安定株主と資本政策
浜松ホトニクスが 14.1%、取引先持株会が約 7% を持つ。少数株主は自社株買いや増配を迫りにくい。光通信の保有割合の増加は、動きの兆しにもなりうるが、結果は読めない。
今後の分かれ目
- 売上が 2 期続けて 5% 以上伸び、営業利益率が 12% を超えたら
- 成長が数字に出たと読み、やや楽観・楽観の確率を上げてよい。ただし倍率の天井は変わらない。
- システム製品の受注残が売上に変わり、営業利益率が 10% に届いたら
- 全社の利益率が改善する。中立の利益率を上方に直す。
- 自社株買いや配当性向 50% への引き上げが発表されたら
- ROE が上がる道が開く。倍率の評価を上げる。
- 浜松ホトニクスが持株比率を引き上げるか、TOB の動きが出たら
- 買収価格が議論になる。筋書きにはない上振れとして別に考える。
- 半導体装置の投資が 2 年続けて落ち込んだら
- 要素部品の売上が落ちる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 売上の伸び(実質)と営業利益率(四半期)
- システム製品の受注残と採算
- 配当性向と自社株買いの有無
- 大株主(浜松ホトニクス・光通信)の持株比率の変化
- 半導体装置の投資と大学・研究機関の予算
- 円安・円高の動き
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER には寄せていない。売上は要素部品とシステム製品を、点数(台数)と単価の推定から積み上げ、物価の分は価格に入れた。全社費用も物価で増やした。倍率は ROE が資本コスト 7.5% を下回るので、上限 1÷k(12.5 倍)の約 9 割(11.2 倍)にした。今の PER が 28 倍で、楽観の筋書きでも今の値段に届かない点は、結果であって倍率の根拠にしていない。余った現金は 18 億円だけを分け、戻り方 0.5 を掛けた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.7→14.8 倍・やや楽観 PER 11.5→13.33 倍・中立 PER 11.2→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。