結論
愛知時計電機は、水道メーターとガスメーターを作る会社だ。家庭や事業所の水とガスの使用量をはかる器具で、国内ではどちらも首位級、シェアは 3 割とされる。計量法で取り替えの期限が決まっているため、新しい家が建たなくても毎年一定の台数が売れる。
筆者の結論は、10 年の本質価値は今の時価総額とほぼ同じで、わずかに割高寄りの「適正」だ。需要が堅いのは強みだが、利益率は薄く、品質トラブルが続き、自己資本が厚すぎて ROE が資本コストに届かない。
2027 年 3 月期は、ガスメーターの不具合対策費で営業利益が 2 割ほど落ちる見通しだ。2024 年にも都市ガス用メーター約 5 万台を全数交換した。この種の費用を一度きりとは見ない。そこで中立の営業利益率は 7.7% と、過去最高の 8.0% を下回って置いた。
中立の 10 年後は、純利益 54 億円、PER 約 11 倍で、時価総額は約 600 億円になる。今の約 1.4 倍だ。資本コストは 7.25%。ためた利益が自己資本を押し上げ、ROE は 7% を割る。強気と慎重の筋書きを確率で重ね、今に割り引くと、本質価値は今の値段を 8% ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、愛知時計電機は「地味で堅いが、資本の使い方が重い」会社だ。法律で決まった取り替え需要は、景気に左右されない。赤字の年がない点も安心材料になる。
一方で、稼いだ利益の多くが現金と持ち合いの株として眠っている。自己資本が 526 億円もあるのに、通常の純利益は 40 億円前後だ。資本が稼ぐ力に見合わない。こうした会社では、ためた利益が帳簿の額面どおりには評価されない。
品質の問題も、見過ごせない。計量器は 10 年の信頼が商品だ。2 度の大きな不具合は、経営の品質管理に疑問を残す。
経営が還元を 4 割まで引き上げ、政策保有株を整理しようとしている点は、前向きに評価できる。ただ、実行はまだ途中だ。
10 年後もメーターの取り替えは続くと見る。ただし、利益率は薄く、資本は重い。今の値段は、この現実をほぼ織り込んでいる。安全域は大きくないが、割高でもない。判断の確信は中くらいだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、検定の満期だ。水道メーターは 8 年、都市ガスのメーターは 10 年で、法律により取り替えなければならない。愛知時計電機は、この取り替え需要を中心に年間約 200 万台を売る。売上の約半分がガス、3 分の 1 強が水道である。
ガス関連機器は 275 億円で、都市ガス用の超音波式やマイコンメーター、LP ガス用の保安メーターを作る。顧客は都市ガス会社約 200 社と、LP ガス販売店約 1.8 万社。LP ガスでは自社を国内首位と称している。
水道関連機器は 205 億円。顧客は全国の水道事業体で、役所の入札で売ることが多い。2026 年 3 月期は値上げと需要増で 9% 近く伸びた。
計装は電磁流量計などの産業用機器で 84 億円。この年は 34% 増えた。ほかに民需のセンサー・システムが 27 億円ある。特機と呼ぶ部門は精密金型で、売上は 0.5 億円しかない。
工場は国内に 7 つ、営業所は 23。台湾、ベトナム、中国にも拠点を持つ。売上の 10% を超える単一の顧客はない。
2026 年 3 月期の売上は 591 億円、営業利益は 47 億円、営業利益率は 8.0%。ともに過去最高だった。純現金は 82 億円ある。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、規制が作る安定した需要と、全国に張った販売網にある。検定の満期が来れば、必ず取り替える。ガス会社も水道局も、納入実績のある相手を選びやすい。水道とガスの両方で首位級というのは、国内でほかにほとんどない立場だ。
ただし、値決めの力は強くない。水道は入札で、ガスも大手の購買部門が相手になる。アズビル金門、東洋計器、矢崎エナジーシステムといった競合がいて、営業利益率は 7〜8% にとどまる。
筆者がいちばん気にするのは、品質だ。2024 年に都市ガス用の超音波メーター約 5 万台を全数交換した。2026 年には LP ガスメーターの不具合対策費で 1 四半期が営業赤字になった。計量器は 10 年の信頼が命だ。同じ種類の失敗が続く点は、堀の質に傷をつける。
資本効率は低めだ。ROE は 9% 前後、通常は 7% 台にとどまる。自己資本比率は 75% あり、現金と取引先の株を積み上げた結果、利益に比べて資本が重い。過去 10 年に赤字の年は一度もないが、稼ぐ力は資本に見合っていない。
取引先の株を持ち合う文化も、資本の重さにつながっている。優良さは「安定しているが、普通」と筆者は見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この市場の数量は、取り替えの周期で決まる。メーターの寿命が来れば必ず替えるので、景気や住宅着工の影響は小さい。逆に言えば、急に伸びる局面も少ない。人口と世帯数は減るので、台数の天井は少しずつ下がる。
水道は、老朽化した管路の更新が進み、水道事業の広域化や民間の活用が焦点だ。役所の予算は厳しいが、検針の人手不足を補う通信付きのスマートメーターの導入が始まった。東京都水道局が 4 年で 100 万個を入れる計画と報じられている。愛知時計電機は名古屋市と共同研究を進めてきた。
ガスは、都市ガスの需要が電化と省エネで細る一方、通信付きメーターへの切り替えが進む。LP ガスは保安メーターの更新が堅い。通信付きのメーターは単価が高く、データ配信のサービスも付く。台数は減っても、単価が上がる構図だ。
2026 年はメーターの値上げが通りやすかった。今後も人件費と部品の値上がりを転嫁できるかが焦点だ。
10 年の構造的な負け筋は 2 つある。ひとつは、アジア勢が低価格のメーターで入札に入り、価格が崩れること。もうひとつは、品質不具合で大手ガス会社の信頼を失い、納入量が減ることだ。電化の進行で都市ガスの契約数が減るなら、ガスメーターの母数も縮む。
需要の多くは、自治体の更新計画に載る。計画が先に見えるのは、事業の見通しを立てやすい利点だ。
この領域の他社と性格が違う。研究機関の設備投資で動く分析機器ではなく、役所とインフラ会社の更新需要で動く商売である。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから攻めへ動き始めたところだ。会社は配当性向 40% を 2027 年 3 月期までに目指すとし、2026 年 3 月期の配当を大きく増やした。自社株買いは 2026 年 1 月に約 1.7 億円で、規模は小さい。
政策保有株は削減する方針で、2026 年 3 月期には投資有価証券の売却益を特別利益に計上した。この益で純利益が押し上げられ、利益の質は見かけより低い。売却額は開示から読み取れていない。
現金は 92 億円あり、借金はほぼない。M&A の実績は目立たず、買収に使う方針も示されていない。中計は ROE 8% を 2027 年 3 月期の目標にした。配当性向が 4 割なら、残りの 6 割は社内にたまり、自己資本は膨らむ。ROE を上げるには、還元の引き上げか政策保有株の整理がさらに要る。
株主には、シンガポールの私募銀行口座が 9%、日本生命が 7.5%、地元のガス会社の東邦瓦斯が 4.5% ほど並ぶ。kabufu の推定では 10 年以内の買収確率は 30%。優待はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社の需要は、法律が作っている。水道は 8 年、都市ガスは 10 年で取り替えが必要で、国内首位級のシェアを持つ会社には毎年一定の注文が入る。住宅が増えなくても、台数は崩れない。
追い風は通信付きのスマートメーターだ。単価は従来品より高く、データ配信やクラウドの収益が積み上がる。会社は累計の接続台数 200 万台を目標に掲げる。LP ガスでは国内首位、ガスでも水道でも首位級で、切り替えの需要を取り込みやすい。
2026 年 3 月期は、売上も営業利益も過去最高だった。水道は値上げと需要増で 9% 近く伸び、計装は 3 割以上増えた。物価の上昇を価格に転嫁できる環境が整っている。
2027 年 3 月期の下振れは、対策費用という一時の要因が大きい。その分を除けば、営業利益は 50 億円規模の水準にある。品質対策が済めば、利益率は 8% 台に戻る。
資本効率の改善も期待できる。配当性向 40% の目標と、政策保有株の売却が進めば、自己資本の重さは軽くなる。PBR が 1 倍を割る今の水準は、こうした改善の余地を織り込んでいない。さらに、水道の広域化で調達が大きな単位にまとまれば、首位級の供給力と全国の営業網が有利に働く。
慎重な見方
利益率が薄すぎる。営業利益率は過去最高でも 8% で、品質トラブルが起きれば一気に赤字に近づく。2024 年の超音波メーター全数交換に続き、2026 年も LP ガスメーターの対策費で 1 四半期の営業利益が赤字になった。会社は、一部製品の不具合を決算のたびに認めている。
値決めの力が弱い。水道は入札で、ガスは大手の購買が相手になる。アズビル金門、東洋計器、矢崎エナジーシステムが競合で、アジア勢が低価格で入ってくれば、価格は崩れる。ガス会社が不具合を理由に調達先を分散すれば、首位の座も揺らぐ。
需要の天井も下がる。人口と世帯数が減り、新設住宅は減少傾向だ。都市ガスは電化で契約が細る。メーターの台数は、取り替え周期を考えても、少しずつ縮む。
資本の使い方が悪い。自己資本は 526 億円あるのに、純利益は 40 億円前後で、ROE は資本コストに届かない。2026 年 3 月期の純利益は、投資有価証券の売却益で見かけが良くなっているだけだ。ためた現金は買収にも使われず、ROE を押し下げ続ける。
今の PER は約 9 倍だが、これは一時の利益が混ざった数字だ。通常の利益で測れば割安とは言えない。
どちらに重みを置いたか
需要の堅さと国内首位級の地位では強気の見方が優勢だが、利益率の薄さ、品質トラブルの連続、ROE が資本コストを下回る自己資本の重さという慎重な見方も同じくらい重い。そこで中立の営業利益率を過去最高より低く置き、倍率は ROE が資本コストに届かないため上限(1÷k)の 8 割にとどめた。確率は、慎重な筋書き(やや悲観と悲観)に厚めに置いた。結果は、10 年の本質価値が今の値段を 8% ほど下回る適正水準で、割安とも割高とも言い切れない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,154 円638 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,263 円194 億円)。 今の値に割り戻すと 2,953 円453 億円、今との差 +4.5%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 7,806 円1,199 億円 | 1,660 円255 億円 | +235.1% | +12.9% | 568 円87 億円 |
| やや楽観 | 19% | 6,057 円930 億円 | 1,393 円214 億円 | +163.7% | +10.2% | 1,416 円217 億円 |
| 中立 | 37% | 4,867 円747 億円 | 1,257 円193 億円 | +116.8% | +8.0% | 2,266 円348 億円 |
| やや悲観 | 28% | 2,315 円356 億円 | 1,159 円178 億円 | +23.0% | +2.1% | 973 円149 億円 |
| 悲観 | 10% | 856 円132 億円 | 1,087 円167 億円 | −31.2% | −3.7% | 194 円30 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,154 円638 億円 | 1,263 円194 億円 | +91.7% | +6.7% | 5,416 円832 億円 |
今の株価時価総額 2,825 円434 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% スマートメーター化で単価が上がり、利益率が 9% に乗る 10 年 利益 77 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 7,806 円1,199 億円
通信付きのスマートメーターが、都市ガスでも水道でも標準になる。単価は従来品の 1.5〜1.6 倍に上がり、台数が世帯数の減少で 1〜5% 動いても、売上は 995 億円まで伸びる。データ配信の収益も積み上がり、累計の接続台数は会社の目標どおり 200 万台を超える。
品質対策は 2027 年 3 月期で済み、新しい不具合は出ない。営業利益率は 9.0% と、過去最高の 8.0% を超える。理由は、通信付きメーターの付加価値と、計装の拡大が重なるためだ。
配当性向は 4 割台で、自社株買いも入る。政策保有株の整理が進み、自己資本の伸びは抑えられる。国内で首位級の地位を保ったまま、会社の描く姿がほぼ実現する 10 年である。
- ガス関連機器:数量 105(販売台数(万台、当社推定))× 価格 4.40(1 台あたり売上(万円))→ 売上 462 億円・営業利益 39 億円。ガス 105 万台 × 4.40 万円。通信付きメーターへの切り替えで単価が 1.6 倍
- 水道関連機器:数量 100(販売台数(万台、当社推定))× 価格 3.17(1 台あたり売上(万円))→ 売上 317 億円・営業利益 33 億円。水道 100 万台 × 3.17 万円。スマートメーターが広がり単価 1.55 倍
- 計装・センサー・システム:数量 4.8(納入台数(万台、当社推定))× 価格 45(1 台あたり売上(万円))→ 売上 216 億円・営業利益 17 億円。計装 4.8 万台 × 45 万円
倍率:事業の純利益 77 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.55 倍、時価総額 1,199 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:通信付きメーターへの切り替えが想定より速く、品質問題も出ない必要があり、重なる確率は高くない。需要の堅さがあるので 5% 以上は置く。
やや楽観 19% 品質問題が収まり、利益率が 8% 台に戻る 10 年 利益 65 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 6,057 円930 億円
品質問題が 2027 年 3 月期で収まり、通信付きメーターの導入が順調に進む。ガスの台数は 100 万台前後で横ばい、水道は 98 万台に微減するが、単価の上昇で売上は 896 億円になる。
営業利益率は 7.5% を超え、8% 台に戻る。計装は取り替え需要ほど景気に左右されず、年 5% ほど伸びる。
配当性向は 4 割強で、政策保有株は少しずつ売られて還元に回る。自己資本は膨らむが、ROE は 8% 近くで下げ止まる。
ガス会社との取引では、不具合の再発防止策が評価され、受注量は保たれる。水道では値上げが通りやすい局面が続く。派手さはないが、堅実に積み上がる 10 年である。
- ガス関連機器:数量 100(販売台数(万台、当社推定))× 価格 4.18(1 台あたり売上(万円))→ 売上 418 億円・営業利益 33 億円。ガス 100 万台 × 4.18 万円
- 水道関連機器:数量 98.0(販売台数(万台、当社推定))× 価格 2.99(1 台あたり売上(万円))→ 売上 293 億円・営業利益 29 億円。水道 98 万台 × 2.99 万円
- 計装・センサー・システム:数量 4.4(納入台数(万台、当社推定))× 価格 42(1 台あたり売上(万円))→ 売上 185 億円・営業利益 14 億円。計装 4.4 万台 × 42 万円
倍率:事業の純利益 65 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.4 倍、時価総額 930 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:品質対策が済み、通信付きメーターの導入が順調に進む現実的な上振れ。
中立 37% 取り替え需要は堅いが、世帯減と薄い利益率で、ROE が資本コストに届かない 10 年 利益 54 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 4,867 円747 億円
取り替え需要は堅いが、世帯数の減少で台数は少しずつ縮む。ガスは 97 万台、水道は 95 万台になる。通信付きメーターへの切り替えで単価は上がり、ガスは 10 年で 1.45 倍、水道は 1.4 倍になる。売上は 820 億円で、年 3.3% ほどの伸びだ。
品質トラブルは時折起きるものの、会社は費用を吸収する。営業利益率は 7.7% で、過去最高の 8.0% には届かない。
配当性向は 4 割台だが、残りが社内にたまる。自己資本は 792 億円に増え、ROE は 7% を割る。資本が重いまま、利益だけが少しずつ伸びる標準的な 10 年である。
- ガス関連機器:数量 97.0(販売台数(万台、当社推定))× 価格 3.99(1 台あたり売上(万円))→ 売上 387 億円・営業利益 27 億円。ガス 97 万台 × 3.99 万円。世帯減で台数は微減、通信付きへの切り替えで単価は物価を上回り 1.45 倍
- 水道関連機器:数量 95.0(販売台数(万台、当社推定))× 価格 2.87(1 台あたり売上(万円))→ 売上 272 億円・営業利益 25 億円。水道 95 万台 × 2.87 万円。給水件数の減で台数は微減、単価は 1.4 倍
- 計装・センサー・システム:数量 4.0(納入台数(万台、当社推定))× 価格 40(1 台あたり売上(万円))→ 売上 161 億円・営業利益 11 億円。計装 4.0 万台 × 40.2 万円
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 747 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:取り替え需要は堅いが、世帯減と薄い利益率が上限を抑える標準的な姿。最も重みを置く。
やや悲観 28% 品質トラブルが続き、値上げが通らず利益率が 5% 台に下がる 10 年 利益 35 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 2,315 円356 億円
品質トラブルが続き、会社は 2〜3 年に 1 度、まとまった対策費用を出す。大手ガス会社は調達先を分散し始め、愛知時計電機のシェアは下がる。
値上げは原価高に追いつかず、単価は 1.3 倍止まりだ。台数も世帯数の減少でガスは 92 万台、水道は 90 万台に減る。営業利益率は 5.4% に下がる。
政策保有株の売却益で純利益は下支えされるが、本業の稼ぐ力は弱い。ROE は 5% を割る。
人件費と部品の値上がりは物価並みに進み、固定費の重い工場が稼働率の低下で重荷になる。通信付きメーターの開発費も回収が遅れる。堀の質に疑問符がつく 10 年である。
- ガス関連機器:数量 92.0(販売台数(万台、当社推定))× 価格 3.58(1 台あたり売上(万円))→ 売上 329 億円・営業利益 16 億円。ガス 92 万台 × 3.58 万円。値上げが原価高に追いつかず単価は 1.3 倍止まり
- 水道関連機器:数量 90.0(販売台数(万台、当社推定))× 価格 2.62(1 台あたり売上(万円))→ 売上 236 億円・営業利益 15 億円。水道 90 万台 × 2.62 万円
- 計装・センサー・システム:数量 3.6(納入台数(万台、当社推定))× 価格 36(1 台あたり売上(万円))→ 売上 130 億円・営業利益 6 億円。計装 3.6 万台 × 36 万円
倍率:ROE 4.9% は k 7.25% 以下なので、正当化 PER は 1÷k = 13.8 倍が上限。品質トラブルの連続と調達先の分散で、堀の質が落ちる筋書きなので割り引く。やや悲観は上限の約 7 割(9.66 倍)に置いた。
確率:品質トラブルが繰り返され、値上げが原価高に追いつかない足元の傾向が続く姿。会社が 2 度も大きな対策費を出したので、厚く置く。
悲観 10% 大手ガス会社の調達分散とアジア勢の価格攻勢で、台数も単価も縮む 10 年 利益 12 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 856 円132 億円
品質不具合がさらに起き、大手ガス会社が調達先を分散する。アジア勢が低価格のメーターで入札に入り、水道の価格が崩れる。都市ガスは電化で契約数が減り、ガスの台数は 78 万台まで落ちる。
単価は物価の上昇を転嫁できず、10 年で 1.1 倍にとどまる。営業利益率は 2% 台に落ち、営業利益は 11 億円まで縮む。
政策保有株の配当と受取利息で、純利益は営業利益を上回る。配当は維持するが、減配の圧力は強い。
工場の稼働率が落ち、再編や人員の削減が避けられない。自己資本には現金と保有株が残るため倒産の心配はないが、事業としての魅力は失われる。優良な会社だった面影を失う 10 年である。
- ガス関連機器:数量 78.0(販売台数(万台、当社推定))× 価格 3.03(1 台あたり売上(万円))→ 売上 236 億円・営業利益 4 億円。ガス 78 万台 × 3.03 万円。電化と調達先の分散で台数が減り、価格は据え置きに近い
- 水道関連機器:数量 82.0(販売台数(万台、当社推定))× 価格 2.25(1 台あたり売上(万円))→ 売上 185 億円・営業利益 6 億円。水道 82 万台 × 2.25 万円。入札で価格が崩れる
- 計装・センサー・システム:数量 3.0(納入台数(万台、当社推定))× 価格 32(1 台あたり売上(万円))→ 売上 96 億円・営業利益 2 億円。計装 3.0 万台 × 32 万円
倍率:ROE 2.1% は k 7.25% 以下で、稼ぐ力は純利益 11.8 億円 × 1÷k の約 6 割(8.28 倍)で約 98 億円にとどまる。ただし事業が縮めば運転資金が解放され、純現金と保有株の含み益が残る。床は今の自己資本 526 億円に PBR 0.25 倍を掛けた約 131 億円(純現金と含み益の税後の合計 150 億円を下回る。清算されない限り少数株主は現金の使い道を決められないため、満額は見ない)。やや悲観の PBR 0.63 倍より低い。
確率:品質問題で調達先が分散し、アジア勢の価格攻勢が重なる構造的な負け。確度は低いが、入札と大口顧客の購買力を考えると無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ガス関連機器
都市ガス用の超音波式・マイコンメーター、LP ガス用の保安メーター、通信端末とデータ配信。
| 数量販売台数(万台、当社推定) | 価格1 台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.75 | 275 | 21 |
| 10 年後 中立 | 97.0 | 3.99 | 387 | 27 |
取り方:ガス関連機器の売上 274.84 億円(会社開示)と、年間約 200 万台という全社の販売台数(FISCO)から、ガス・水道を 100 万台ずつと推定して 1 台あたり売上を逆算した。区分ごとの営業利益は非開示で、全社 47 億円を推定で配分した(ガス 7.5%)。
水道関連機器
水道メーター、通信付きのスマートメーター用の送信器、表示器。水道事業体が主な顧客。
| 数量販売台数(万台、当社推定) | 価格1 台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.05 | 205 | 18 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 2.87 | 272 | 25 |
取り方:水道関連機器の売上 204.70 億円(会社開示)を、推定 100 万台で割って 1 台あたり売上を出した。大口径の高額品を含む平均値。営業利益は全社 47 億円の推定配分(水道 9.0%。値上げが通った年)。
計装・センサー・システム
電磁流量計などの産業用計装機器、民需のセンサー・システム、精密金型(特機、売上 0.5 億円)。
| 数量納入台数(万台、当社推定) | 価格1 台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.7 | 30 | 112 | 8 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 40 | 161 | 11 |
取り方:計装 83.99 億円、民需センサー・システム 27.06 億円、特機 0.54 億円の合計 111.6 億円を、推定 3.7 万台で割った。台数は非開示で当社推定。営業利益は全社 47 億円の推定配分(7.0%)。
リスクと懸念
品質不具合の連続
2024 年に都市ガス用超音波メーター約 5 万台の全数交換、2026 年に LP ガスメーターの不具合対策費の追加計上が起きた。2027 年 3 月期の営業利益は当初予想の約 5 割減益、前期比でも 2 割減に見直された。大口の顧客の信頼を損なえば、受注の減少につながる。
入札と大口顧客による値下げ圧力
水道は入札、ガスは大手の購買部門が価格を決める。アズビル金門、東洋計器、矢崎エナジーシステムなどが競合で、アジア勢が低価格で参入すれば、物価の分の値上げが通らなくなる。
人口・世帯数の減少と電化
世帯数が減り、新設住宅の着工は減少傾向だ。都市ガスは電化で契約数が細る。取り替え周期が決まっていても、メーターの母数は少しずつ縮む。
ROE が資本コストに届かない資本構成
自己資本 526 億円に対し、通常の純利益は 40 億円前後。現金と政策保有株が積み上がり、ためた利益は額面より低い価値でしか評価されない。還元が 4 割では、さらに自己資本が膨らむ。
一時の利益による見かけの良さ
2026 年 3 月期の純利益 48 億円には投資有価証券の売却益が含まれる。売却益は繰り返せないため、通常の利益はこれより低い。株価の PER を見る際には注意が要る。
スマートメーター化の競争と投資負担
通信付きのメーターは開発費がかさみ、通信方式の選択を誤ると在庫のリスクになる。大手ガス会社や水道局の仕様に合わせられなければ、先行投資が回収できない。
政策保有株の評価額の変動
取引先の株の評価額は株価で動く。売却を進める方針だが、規模は開示から読み取れず、評価損益が自己資本や特別損益を揺らす可能性がある。
今後の分かれ目
- 対策費用が 2027 年 3 月期で終わり、品質トラブルが再発しなければ
- 営業利益率は 8% 前後に戻り、本質価値は中立から強気の筋書きに近づく。
- 通信付きスマートメーターが、都市ガスと水道で本格採用されれば
- 単価が上がり、データ配信の収益も積み上がるので、利益率は 9% 台に近づく。
- 品質不具合がまた起き、大手ガス会社が調達を分散すれば
- 首位の座と価格が揺らぎ、やや悲観〜悲観の筋書きに近づく。
- 配当性向を 4 割超に引き上げ、政策保有株の売却代金も還元に回せば
- 自己資本が膨らまず、ROE の低下が止まる。評価を引き上げる材料になる。
- アジア勢が低価格のメーターで入札に入り込めば
- 物価の分の値上げが通らず、利益率が下がる。やや悲観の筋書きに近づく。
- 東邦瓦斯など取引先との持ち合いが解消に向かえば
- 売却代金の使い道しだいで、価値が上振れも下振れもする。ガス会社の購買姿勢の変化にも注意する。
見ておくもの
- ガスメーター・水道メーターの区分別売上と受注残
- 営業利益率(対策費用を除いた水準)
- LP ガス・都市ガスの不具合対策費用の追加の有無
- スマートメーターの出荷台数とデータ配信の接続台数
- 配当性向と自社株買い、政策保有株の売却額
- 水道局の入札での落札価格の動き
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER を見て筋書きを作っていない。先にガス・水道・計装を「台数 × 1 台あたり売上」で 10 年分積み、その結果から ROE と資本コスト 7.25% で倍率を決めた。自己資本が厚く、中立の ROE(約 7%)は資本コストを下回るため、PER の上限は 1÷k の約 13.8 倍で、中立はその 8 割に置いた。
2026 年 3 月期の純利益は売却益込みなので、流れの出発点は経常利益から出した通常の水準(37 億円)にした。中立の営業利益率 7.7% は、過去最高の 8.0% を下回る。結果が適正に出たのは、堅い需要と薄い利益率がつり合うからで、今の値段に寄せたわけではない。
新リース会計基準(2028 年 3 月期から)は、今と同じ形に揃えて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→15.55 倍・やや楽観 PER 12.24→14.4 倍・中立 PER 11.03→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。