結論
日本精密は、腕時計の金属のバンドと外装の部品を作る会社だ。工場はベトナムとカンボジアにあり、売上の7割をカシオ計算機の1社に頼る。筆者の結論は割高である。値段はカシオが決め、稼ぎは売上の5%に届かない。借入も自己資本より大きい。
2026年3月期は売上が10%増え、純利益は3.5億円と久しぶりに厚かった。だが、その3割近くは円安による為替の差益だ。来期の会社の予想は、純利益2億円に減る。2017年からの6年間で5回の赤字を出した会社で、繰越損失のせいで配当もまだ出せない。
筆者は10年後の自己資本利益率(ROE)を7%前後とみる。資本コストの9.5%に届かない。1社に頼る下請けの稼ぎには、高い値段を払えない。
カシオの金属の時計が世界で売れ続ければ、上側の筋書きは開ける。ただ、その果実の多くは値段を決めるカシオの側に残る。工場の腕は確かだが、それを値段に変える立場に無いことが、この会社の本質だと筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、日本精密は「腕のいい下請けだが、稼ぎの値段を自分で決められない会社」だ。金属の時計バンドを作る技術は確かで、カシオとの取引は半世紀近く続く。だが、オーナーとして持ちたい事業の条件には足りない。
筆者がいちばん気にしているのは、1社への依存だ。売上の7割がカシオで、値段も数量も相手が決める。カシオが調達を分ければ、工場の稼働はすぐに落ちる。過去の6期で5回の赤字は、その弱さの表れだ。カシオにとって日本精密は大事な作り手だが、代わりが見つからない相手ではない。
利益の質も低い。2026年3月期の純利益の3割近くは円安による為替の差益で、事業の稼ぎではない。借入は自己資本を上回り、利払いが営業利益の2割を取る。
安全域は、カシオ以外の顧客が売上の半分を超え、借入が自己資本の半分を切った時に初めて見えると考える。
何で稼ぐ会社か
日本精密は1978年にカシオ向けの金属の時計バンドを作り始めた会社だ。本社は埼玉県川口市にあり、従業員は連結で1,700人いる。その大半はベトナムとカンボジアの工場で働く。
1つ目の柱は時計関連で、売上の74%を占める。金属の時計バンドと、ケースなどの外装の部品を作る。売上の43%はカシオ計算機、28%はその香港の子会社向けで、2つで7割を超える。カシオの金属の外装のG-SHOCKなどに部品を納める。
2つ目は釣具・応用品で、売上の15%だ。時計で磨いた金型とプレスの技術を、釣り具のリールの部品などに使う。利益率は16%と高く、利益の半分をここで稼ぐ。
3つ目はメガネフレームで、売上の11%だ。子会社の村井が企画して国内に売る。売上は減り、利益はほぼゼロだ。
生産の中心はホーチミンの子会社だ。難しい加工と品質の管理をここが担い、手間のかかる作業をカンボジアに回す。円安は海外の子会社の資産を円で大きく見せ、為替の差益を生むが、事業の稼ぎそのものではない。設備の投資は小さく、償却も年に数億円の規模にとどまる。
優良さと弱いところ
強みは、金属の小さな部品を精密に、安く大量に作る力だ。時計バンドは見た目と着け心地が売り物で、細かな加工と仕上げが要る。カシオとは50年近い取引があり、調達の一番手の地位を持つ。
弱さは3つある。第1に、値段を決める力が無い。売上の7割を1社に頼る下請けで、値段の交渉ではカシオが強い。第2に、借入が重い。有利子負債は27億円で、自己資本の20億円を上回る。銀行との約束には財務の条件が付く。第3に、稼ぎが不安定だ。2017年3月期から6期のうち5期が赤字で、自己資本は一時12億円まで減った。
2026年3月には第三者割当で2億円の株を出し、資本を補った。韓国のアパレルの会社GNCOが2割を持つ大株主だが、経営の方向を示す数字の目標は見当たらない。中期の計画や資本の稼ぎの目標を示さない点も、外の株主には物足りない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
腕時計の市場は、高い時計と安い時計に分かれた。スマートウォッチが中間の価格帯を奪い、日本のメーカーの数量は長く減ってきた。その中で、カシオのG-SHOCKは丈夫さと手ごろな値段で世界に客を持つ。樹脂から金属の外装への置き換えが進み、金属のバンドの需要は増えている。
ただ、時計の部品の作り手は中国にも多い。カシオは調達の値段を抑えるため、作り手を複数に分ける力を持つ。日本精密の数量はカシオの販売の計画に左右され、自分で需要を作ることはできない。
人件費の逆風も強い。ベトナムとカンボジアの賃金は年に5〜7%上がり、安い人手という強みは少しずつ薄れる。自動化で吸収できなければ、利益率は削られる。
釣り具の市場は、シマノとグローブライドの2強が世界の需要を握る。日本精密はその部品の作り手の1社で、数量は世界の釣り人口の伸びに沿う。筆者は、10年で釣具の部品の比重が上がるとみる。
メガネフレームの国内の市場は、安い量販の店と輸入の品に押されて細る。高い価格帯のフレームは福井の鯖江の作り手が強く、日本精密の子会社が値段で勝てる場所は少ない。
資本政策と M&A
還元はない。繰越損失が残るため、2026年3月期も配当を見送った。自社株買いもしていない。利益が数年続けば繰越損失は消え、配当は再開できるが、その額は小さいとみる。
財務の中心は銀行の借入だ。有利子負債は27億円で、うち18億円は銀行団との協調融資だ。財務の条件に今は触れていない。2026年3月には第三者割当で2億円の株を出し、資本を補った。
大株主は韓国のアパレルの会社GNCOが21%、韓国の投資会社とその関係者が約2割を持つ。外の会社が買いに来るより、大株主の間の動きで資本の形が変わる会社だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
カシオの金属の時計は伸びている。樹脂から金属への置き換えが世界で進み、時計関連の売上は2026年3月期に12%増えた。日本精密は半世紀近い取引で調達の一番手の地位を持ち、金属のバンドの加工では代わりが見つけにくい。
釣具・応用品は隠れた柱だ。売上は15%増え、利益率は16%と高い。時計で磨いた金型とプレスの技術はほかの精密な部品にも使え、顧客を増やす余地がある。
財務も良くなった。赤字が続いた時期に自己資本は12億円まで減ったが、今は20億円まで戻った。増資で資本を補い、銀行の約束にも触れていない。利益が続けば繰越損失は消え、配当を再開できる。今のROEは17%あり、自己資本の薄さの分だけ利益の伸びが株主の取り分を大きく押し上げる。
カシオにとっても、金属の外装を安定して作れる作り手は多くない。50年近い付き合いで積んだ品質の実績は、値段だけで切り替えられる関係ではない。円安も、海外の工場で作って円で売る形には追い風だ。
慎重な見方
売上の7割がカシオの1社だ。値段も数量もカシオが決め、日本精密は利益率3%の下請けにとどまる。カシオが調達の値段を抑えるために中国の作り手を使えば、受注はすぐに減る。2017年3月期から6期のうち5期が赤字だった事実が、その弱さを示している。
2026年3月期の利益は為替の差益に押し上げられた。来期の会社の予想は、純利益が4割以上減る。ベトナムとカンボジアの賃金は年に5〜7%上がり、安い人手の強みは薄れていく。
借入は自己資本を上回り、金利が上がれば利払いは増える。繰越損失が消えれば税も重くなる。増資で株主の取り分は既に薄まり、資本が足りなくなれば次の増資もありうる。大株主は韓国のアパレルの会社で、時計の事業を伸ばす計画は見えない。
メガネフレームは売上が減り続け、利益はほぼゼロだ。釣具の部品は伸びているが、時計の落ち込みを埋めるほどの規模ではない。工場の自動化の投資も、借入の重さで思うように進められない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。金属の時計の伸びは本物だが、値段を決めるのはカシオで、1社への依存と借入の重さという構造は10年で大きく変わらない。中立を最も厚くし、やや悲観と悲観を合わせて35%に置いた。カシオ以外の顧客の比率と、借入の額で見直す。釣具の部品の伸びは上側の確率に入れた。今のROEの高さは自己資本の薄さと為替の差益によるもので、確率を上へ寄せる理由にはしない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 168 円40 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 23 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 82 円20 億円、今との差 −64.9%、 期待の年率 −2.0%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 423 円101 億円 | 50 円12 億円 | +102.2% | +7.3% | 33 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 264 円63 億円 | 38 円9 億円 | +29.0% | +2.6% | 60 円14 億円 |
| 中立 | 38% | 188 円45 億円 | 25 円6 億円 | −9.0% | −0.9% | 81 円19 億円 |
| やや悲観 | 24% | 54 円13 億円 | 8 円2 億円 | −73.6% | −12.5% | 15 円4 億円 |
| 悲観 | 11% | 13 円3 億円 | 0 円0 億円 | −94.7% | −25.4% | 1 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 168 円40 億円 | 23 円5 億円 | −18.5% | −2.0% | 191 円46 億円 |
今の株価時価総額 234 円56 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% カシオの金属の時計が世界で伸び、新しい顧客も加わる 利益 7 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 423 円101 億円
カシオの金属の外装の時計が、世界で売れ続ける筋書きだ。樹脂から金属への置き換えが中東・アジア・北米で進み、日本精密の時計バンドの数量は10年で3割増える。カシオの調達で一番手の地位を保ち、欧州の時計の会社からの受注も加わる。
ベトナムとカンボジアの工場は、自動化で人件費の上昇を吸収する。時計関連の利益率は6%に上がり、釣具の部品も海外の釣り人口の増加で伸びる。営業利益は10億円近くになる。
利益で借入を返し、繰越損失も消えて配当を再開する。自己資本は厚くなり、ROEは資本コストを少し上回る。メガネフレームも高い価格帯に絞り、小さな黒字を保つ。
- 時計関連:数量 520(時計バンド・外装の部品の出荷(万本・推定))× 価格 20(1本あたりの売上(百円))→ 売上 105 億円・営業利益 6 億円。520万本×単価(物価並み)、6%
- 釣具・応用品:数量 3,600(部品の出荷(万個・推定))× 価格 0.54(1個あたりの売上(百円))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。3,600万個×単価、16%
- メガネフレーム:数量 30.0(フレームの販売(万本・推定))× 価格 40(1本あたりの売上(百円))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。30万本×単価、4%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.8% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.05 倍、時価総額 90 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:時計関連は2026年3月期に12%増えたが、10年で数量を3割増やし、利益率を過去の山(7.3%)近くまで上げる必要がある。カシオ以外の顧客が育つ証拠はまだ無いので7%とした。
やや楽観 20% 金属の時計バンドが伸び、釣具の部品も育つ 利益 5 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 264 円63 億円
カシオの金属の時計が伸び、時計バンドの数量が10年で2割増える筋書きだ。カシオは外装の部品を複数の会社から買うが、日本精密は精密な加工の実績で一番手を保つ。値段はカシオとの交渉で物価に少し届かない。
釣具・応用品は、時計で磨いた金型とプレスの技術を釣り具のリールの部品に使う。利益率は15%前後と高く、数量も海外の需要で伸びる。メガネフレームは赤字の手前から小さな黒字に戻る。
営業利益は7億円ほどになり、利払いを引いても純利益は4億円を超える。繰越損失が消えた後は配当を再開するが、配当の額はまだ小さい。
- 時計関連:数量 460(時計バンド・外装の部品の出荷(万本・推定))× 価格 20(1本あたりの売上(百円))→ 売上 90 億円・営業利益 4 億円。460万本×単価(1.30倍)、4.5%
- 釣具・応用品:数量 3,300(部品の出荷(万個・推定))× 価格 0.53(1個あたりの売上(百円))→ 売上 17 億円・営業利益 3 億円。3,300万個×単価、15%
- メガネフレーム:数量 26.0(フレームの販売(万本・推定))× 価格 39(1本あたりの売上(百円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。26万本×単価、2%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.03 倍、時価総額 54 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年3月期は時計関連が12%増、釣具・応用品が15%増と両方が伸びた。カシオの金属の外装の時計の伸びが続く筋として20%とした。
中立 38% カシオの下請けとして細く続き、稼ぎは利払いと税に削られる 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 188 円45 億円
日本精密がカシオの下請けとして、今の形のまま続く筋書きだ。時計バンドの数量は10年で5%ほど増えるが、値段はカシオとの交渉で物価に届かず1.28倍にとどまる。ベトナムとカンボジアの人件費は年に5〜7%上がり、利益率は3.5%にとどまる。
釣具・応用品は利益の柱として育ち、時計関連と同じくらいを稼ぐ。メガネフレームは国内の市場が細り、売上は減る。
営業利益は5億円ほどで、利払いを引いた純利益は3億円強だ。繰越損失が消えると税が重くなる。配当は再開するが、利益の2割ほどにとどまる。借入は少しずつ減るが、自己資本に対する重さは残る。
- 時計関連:数量 410(時計バンド・外装の部品の出荷(万本・推定))× 価格 19(1本あたりの売上(百円))→ 売上 79 億円・営業利益 3 億円。410万本×単価(1.28倍。カシオとの交渉で物価に届かない)、3.5%
- 釣具・応用品:数量 3,100(部品の出荷(万個・推定))× 価格 0.52(1個あたりの売上(百円))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。3,100万個×単価(1.30倍)、14%
- メガネフレーム:数量 24.0(フレームの販売(万本・推定))× 価格 38(1本あたりの売上(百円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。24万本×単価(1.25倍)、1%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.12 倍、時価総額 36 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:カシオ向けが売上の7割を占める形は10年で大きく変わらず、値段はカシオに決められる。数量の小さな伸びと値段の物価割れが打ち消し合う落としどころとして38%とした。
やや悲観 24% カシオが調達を分け、時計バンドの数量が細る 利益 1 億円 · PER 7.4 倍 · 株価時価総額 54 円13 億円
カシオが時計バンドの調達を中国の会社や自社の工場に分ける筋書きだ。日本精密の時計バンドの数量は10年で2割減り、値段も物価に届かない。工場の稼働が下がり、時計関連の利益率は1.5%に落ちる。
釣具・応用品は利益を出し続けるが、時計の落ち込みを埋めきれない。メガネフレームは赤字に戻る。営業利益は2億円ほどで、利払いがその半分近くを食べる。
純利益は1億円を切り、配当は再開できない。借入の約束に近づき、工場の設備の更新も絞る。株主に残る価値は、細い稼ぎに見合う低い値段になる。工場と在庫を売っても、借入を返すとほとんど残らない。
- 時計関連:数量 330(時計バンド・外装の部品の出荷(万本・推定))× 価格 17(1本あたりの売上(百円))→ 売上 57 億円・営業利益 1 億円。330万本×単価(1.15倍)、1.5%
- 釣具・応用品:数量 2,800(部品の出荷(万個・推定))× 価格 0.48(1個あたりの売上(百円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。2,800万個×単価、11%
- メガネフレーム:数量 20.0(フレームの販売(万本・推定))× 価格 35(1本あたりの売上(百円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。20万本×単価、−2%
倍率:ROE約2%は資本コストを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で見て、1÷kの10.5倍の7割の7.4倍。売れる資産の床(約3億円)よりは上にある。
確率:2017〜2022年3月期は6期のうち5期が赤字で、時計の受注の減少に弱い形は過去に出ている。カシオの調達の分散が起これば同じ形に戻るので24%とした。
悲観 11% カシオの受注を失い、時計の工場が赤字になる 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 13 円3 億円
カシオが時計の金属の部品を別の会社に切り替え、日本精密が主力の受注を失う筋書きだ。時計バンドの数量は10年で半分になり、ベトナムとカンボジアの工場は人が余る。時計関連は赤字に沈む。
釣具・応用品は残るが、規模が小さく会社全体を支えられない。営業赤字が続き、借入の約束に触れる。工場の一部を閉じ、人を減らす費用もかかる。
自己資本は大きく減り、配当は出せない。新しい株の発行による資本の増強で、既存の株主の取り分は薄まる。株主に残るのは、工場と在庫を売って借入を返した後のわずかな残りだ。大株主が救済に動くとしても、その条件は既存の株主に厳しい。
- 時計関連:数量 200(時計バンド・外装の部品の出荷(万本・推定))× 価格 16(1本あたりの売上(百円))→ 売上 32 億円・営業利益 −2 億円。200万本×単価−5%
- 釣具・応用品:数量 2,500(部品の出荷(万個・推定))× 価格 0.46(1個あたりの売上(百円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。2,500万個×単価、8%
- メガネフレーム:数量 15.0(フレームの販売(万本・推定))× 価格 33(1本あたりの売上(百円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。15万本×単価、−4%
倍率:赤字で稼ぐ力は床にならない。今の自己資本20億円に0.15倍を掛けた約3億円を、工場と在庫を売って借入を返した残りとみる。
確率:売上の7割が1社に集まり、2021年3月期には売上が48億円まで落ちて大きな赤字を出した。主力の顧客を失えば存続の手当てが要る形なので11%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
時計関連
金属の時計バンドと外装の部品。主にカシオ向け。
| 数量時計バンド・外装の部品の出荷(万本・推定) | 価格1本あたりの売上(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 392 | 15 | 59 | 2 |
| 10 年後 中立 | 410 | 19 | 79 | 3 |
取り方:出荷の数の開示が無いため推定。売上58.78億円を、金属のバンドと外装の部品の平均の単価(1本15百円)で割った約392万本。利益はセグメント利益1.74億円。
釣具・応用品
釣り具のリールなどのプレス・切削の部品。
| 数量部品の出荷(万個・推定) | 価格1個あたりの売上(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,900 | 0.40 | 12 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3,100 | 0.52 | 16 | 2 |
取り方:数の開示が無いため推定。売上11.63億円を、小さなプレス部品の平均の単価(1個0.4百円)で割った約2,900万個。利益はセグメント利益1.92億円。
メガネフレーム
子会社の村井が企画し国内に売るメガネフレーム。
| 数量フレームの販売(万本・推定) | 価格1本あたりの売上(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 28.5 | 30 | 9 | 0 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 38 | 9 | 0 |
取り方:数の開示が無いため推定。売上8.55億円を、卸の値段の平均(1本30百円)で割った約28.5万本。利益はセグメント利益0.15億円。
リスクと懸念
カシオへの依存
売上の約71%がカシオ計算機とその香港の子会社向けだ。カシオが調達を他社に分ける、または時計の販売を減らせば、数量と値段の両方がすぐに下がる。
借入と財務の条件
有利子負債は約27億円で自己資本を上回る。銀行団との協調融資には財務の条件が付き、赤字が続けば返済の前倒しや金利の引き上げを求められうる。
海外の工場の人件費
生産はベトナムとカンボジアに集まる。賃金は年に5〜7%上がり、値段に転嫁できなければ時計関連の利益率3%はさらに削られる。
為替の差益の振れ
2026年3月期の経常利益の3割強は為替の差益だった。円高に振れれば差損に変わり、純利益は事業の稼ぎ以上に振れる。
繰越損失と希薄化
繰越損失が残り、配当は出せない。2026年3月に第三者割当で株を出した。資本が足りなくなれば、次の増資で既存の株主の取り分が薄まる。
今後の分かれ目
- カシオ以外の顧客の売上が全体の3割を超えたら
- 1社への依存が薄れた証拠として、寿命の上乗せと悲観の確率を見直す。
- 時計関連の利益率が5%を超えて2期続いたら
- 値段の交渉力が増した証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- カシオの時計の販売の数量が2割減ったら
- やや悲観に重みを移す。
- 配当を再開したら
- 繰越損失が消え、利益が安定した証拠として還元の見通しを上げる。
- 大株主のGNCOが持株を増やす、または売ったら
- 資本の形が変わる場面として、時価総額の見方を見直す。
見ておくもの
- カシオ向けの売上の比率
- 時計関連のセグメント利益率
- 有利子負債と財務の条件
- 為替の差損益を除いた経常利益
- 配当の再開
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBRを見ずに、ROEとk 9.5%から決めた。中立のROEは7%前後で資本コストに届かないので、PERは1÷kの10.5倍の7.6割に置いた。今の自己資本が小さいためROEは17%と高く見えるが、為替の差益と繰越損失による低い税の分を除いて流れを組んだ。利益率は過去の山(7.3%)より低く置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.9→13.05 倍・やや楽観 PER 8.4→12.03 倍・中立 PER 8→11.12 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。