結論
東京精密は、半導体の後工程でウェーハを薄く削り、切り分け、検査する装置と、自動車・航空機向けの精密計測機器を手掛ける会社だ。筆者の結論は「割高」である。プローバでは世界首位だが、収益の柱であるグラインダ・ダイサではディスコという絶対王者の後ろに付く2番手にとどまり、この構図は好況が続いても変わりにくい。
生成AI向けの高帯域メモリ(HBM)はチップを積み重ねる構造を取るため、積層前の薄化・切断・検査という東京精密の主戦場に追い風が吹いている。中期経営計画は2027年度に売上高1,850億円・営業利益450億円という過去最高水準を掲げ、実際に増益・増配が続く。
ここでは後工程・検査の装置市場(実質)にシェアを掛けて売上を積み上げ、物価3%を名目で加え、その時点のROEと資本コスト7.5%(基本7.5%に半導体装置の循環+1.0%)から正当化PERを決めて時価総額を出した。2番手企業で業績の振れが大きいことから、上限のおよそ7.5割にとどめた。結果、中立の10年後の時価総額は今の時価総額を2割弱下回り、悲観側の確率を重ねた10年の価値は今より4割ほど低い。楽観側の筋書きがそろって初めて今の値段を大きく超える。市場の伸びは、業種ノートの年6〜9%(物価込みの名目)から物価3%を除いた実質で置いた。純現金・自己資本比率76%という財務の強さは評価できるが、ディスコという1番手との差を詰める一手は見えず、今の株価はHBM特需の持続をかなり強く前提にしている。
バリュー投資の観点から
この会社の事業は、理解のしやすさという点では悪くない。ウェーハを薄く削り、切り分け、検査する。工程そのものは単純で、需要がどこから来るかもはっきりしている。ただし堀の強さという点では、プローバの首位はあっても、グラインダ・ダイサではディスコという巨人の後ろにいる2番手にとどまる事実を軽く見てはいけない。2番手の堀は、1番手の堀より何倍も薄い。
筆者が注目するのは、純現金で自己資本比率76%という財務の強さだ。好況の利益を派手な買収に使わず、配当性向40%程度を目安にした地道な還元に回す規律は評価できる。一方で、再投資先が自社の技術深化に限られ、ディスコの牙城やメモリ検査の新しい土俵に食い込むための大きな一手は見えてこない。守りは固いが、攻めの決断には乏しい経営だと見る。
もっとも気にしているのは、業績がウェーハ投資の山谷にそのまま連動する一本足に近い構造そのものだ。今の株価は好況の利益と高い倍率をそのまま将来に延ばした値段に見え、谷が来た時の安全域は薄い。計測機器事業という緩衝材はあるが、全体の2割強の規模では波を打ち消すほどの力はない。
何で稼ぐ会社か
東京精密は、半導体の後工程(ウェーハを個片化し検査する工程)向けの精密加工・検査装置と、自動車や航空機の部品を測る精密計測機器を二本柱で手掛ける。社名は「東京精密」だが、国内外では「ACCRETECH(アクレーテク)」のブランドで知られる。
半導体製造装置の中核は、ウェーハを薄く削るグラインダ、チップに切り分けるダイサ、出荷前に不良を見つけるプローバの三製品だ。顧客は半導体の後工程を受託するOSAT各社やメモリ・ロジックの大手で、生成AI向けの高帯域メモリ(HBM)がメモリチップを何層も積み重ねる構造を取るため、積層前の薄化・切断・検査の需要が連鎖的に膨らんでいる。プローバでは世界首位のシェアを握るが、グラインダとダイサでは最大手のディスコの後ろに付く世界2位の立場にとどまる。
もう一本の精密計測機器事業は、自動車・航空機・医療機器の生産現場で部品の寸法を測る三次元測定機が主力で、半導体の投資サイクルとは別の需要の波を持つ。会社自身は「計測事業を併せ持つ唯一の半導体製造装置メーカー」と位置づけ、半導体事業の谷を計測事業で和らげる構えだ。売上の7割超・利益の8割超は半導体製造装置が稼ぎ、計測機器は利益率でやや劣るものの業績の振れを抑える役回りにある。
優良さと弱いところ
プローバでの世界首位は本物の堀だが、強さの範囲は限られる。後工程の主戦場であるグラインダとダイサでは、ダイシングソーで世界シェア7〜8割を握るディスコという絶対王者が立ちはだかり、東京精密は残りを争う2番手に過ぎない。顧客ごとに装置選定が固定化しやすい薄化・切断の工程では、いちど採用されれば次世代でも継続採用されやすい切り替えコストの高さが頼りになるが、ディスコの牙城を切り崩すところまでは踏み込めていない。
資本効率は悪くない。自己資本比率は76%と厚く、純有利子負債は実質ゼロどころかわずかな純現金で、財務面の不安はほぼない。ROEは13%前後で、好況期には20%近くまで上がる年もあり、過去10年を見ても景気の波に合わせて6%台から18%台まで振れてきた。経営陣は中期経営計画で「10年後の絶対的なポジション確立」を掲げ、計測事業との組み合わせでの差別化を打ち出すが、裏を返せば単独の半導体事業だけでは絶対的な地位にまだ届いていないという自己認識の表れでもある。
弱点は、業績がウェーハ投資の山谷にそのまま連動する一本足に近い構造と、後工程という付加価値の取りにくい工程に主力を置く点だ。中国の装置メーカーが成熟工程でシェアを伸ばす動きも、いずれ薄化・切断のような汎用性の高い工程に及ぶおそれがある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体製造装置市場全体は2026年に前年比23%増の約1,659億ドルへ拡大し、2028年には2,295億ドル規模になるとSEMIは見積もる。生成AI向けのデータセンター投資がロジックとHBMの両方を押し上げ、東京精密が主戦場とする後工程・検査の市場も連動して膨らんでいる。HBMはメモリチップを何層も積み重ねて作るため、積層前のウェーハを薄く削り、個片に切り分け、不良を検査する工程の重要度が増している点が同社に有利に働く。
一方でこの業界は循環がもっとも深い部類に入る。2008年のリーマンショック、2019年のメモリ不況、2022〜23年の在庫調整では、いずれも装置市場が前年比3〜4割縮む急落を経験した。今の好況がどこまで続くかという一点に、業界全体の評価が懸かっている。
競争の形は工程ごとに寡占が進んでいる。薄化・切断ではディスコが圧倒的な王者で、東京精密は2番手の立場から長年抜け出せていない。プローバでは首位を保つが、検査装置の分野は顧客の投資サイクル次第で受注が大きく振れる。中国は国家戦略として装置の国産化を進めており、まずは成熟工程の汎用品から日本・欧米勢のシェアを奪う構図が指摘される。薄化・切断・検査はいずれも技術の目新しさより量産の安定性が問われる工程であり、中国メーカーの追い上げが及ぶ速度が今後10年の競争構造を左右する。
資本政策と M&A
配当は連結配当性向40%程度を目安に、業績に連動して増配・減配する方針を取る。2026年3月期は前期から増配し、2027年3月期も上方修正を重ねて過去最高の配当水準を見込む。好況期にしっかり配当を乗せ、純現金の財務を維持する保守的な資本政策だ。
M&Aは規模の大きな統合には動かず、技術や事業の補完を狙った小ぶりな買収を重ねてきた。1992年に米シリコン・テクノロジーを、2019年には米シュミット・インダストリーズのバランサ事業を取り込み、2023年には子会社経由で充放電試験装置事業を譲り受けている。いずれも本業の周辺領域を固める買収で、ディスコのような巨大な競合を正面から崩す規模の再編には至っていない。
ブランド名「ACCRETECH」は2001年に導入され、「共生」と「技術」を組み合わせた造語だという。社名と事業の実態が必ずしも一致しない点は、海外投資家への認知のしやすさという意味で地味な課題として残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
生成AI向けのデータセンター投資はまだ途中で、SEMIは半導体製造装置市場全体が2028年に2,295億ドルへ拡大すると見積もる。高帯域メモリ(HBM)はチップを何層も積み重ねて作るため、積層前にウェーハを薄く削り、個片に切り分け、不良を検査する工程の重みが増し続ける。この工程でプローバ首位、グラインダ・ダイサでも世界2位という地位を持つ東京精密には、追い風がもっとも強く当たる。
中期経営計画では2027年度に売上高1,850億円・営業利益450億円という過去最高水準を掲げ、実際に直近の決算でも増益・増配が続いている。中国の装置国産化はまだ成熟工程の汎用品が中心で、最先端のHBM・ロジック向け後工程では日欧米の技術に依存する構図がすぐには崩れない。純現金・自己資本比率76%という財務の強さは、好況が続く限り増産投資と株主還元を同時に進める余力を与える。
計測機器事業も、自動車・航空機・医療機器の高精度化の流れに乗って緩やかに伸びる。半導体事業の谷が来ても、計測事業がある分だけ会社全体の落ち込みはディスコのような単一事業の競合より浅くなりやすい。プローバで培った検査技術の蓄積は、HBMのような複雑な積層構造の検査需要にも応用でき、新しい成長の芽になる余地がある。
慎重な見方
薄化・切断というこの会社の主戦場は、ディスコが世界シェア7〜8割を握る絶対王者の市場であり、東京精密は長年2番手から抜け出せていない。2番手である限り、好況の利益配分でも価格決定力でもディスコに劣後しやすく、好況が続くほどこの差が積み重なっていくおそれがある。
半導体製造装置市場は過去にも2008年、2019年、2022〜23年と繰り返し3〜4割規模が縮む急落を経験してきた。生成AI投資という新しい柱ができても、資本財の受注が需要の先読みと在庫調整で大きく揺れる循環そのものが消えたわけではなく、今の好況がいつ終わるかは誰にも分からない。
中国は装置の国産化を国家戦略として進めており、まずは成熟工程の汎用品から日本・欧米勢のシェアを奪う構図がすでに指摘されている。薄化・切断・検査は技術の目新しさより量産の安定性が問われる工程で、中国メーカーが得意とする領域に近い。10年という時間軸では、この会社の強みである後工程の一角を、価格で攻め込む中国勢に侵食される可能性は軽視できない。
今の株価は好況の利益と高い倍率をそのまま将来に延ばした値段に見える。過去のPBRは0.54倍から9.56倍まで振れてきた会社であり、好況の終わりとともに倍率そのものが大きく縮む場面が、これまでも繰り返し起きてきた。
どちらに重みを置いたか
事業の分かりやすさと財務の堅さでは強気の見方に理がある一方、堀の深さではディスコという絶対王者の存在を軽視できず、慎重な見方の指摘がより的を射ている。プローバの首位は本物だが、収益の柱であるグラインダ・ダイサは2番手の地位にとどまり、好況のうちに1番手との差を詰められるかが鍵になる。本質価値の計算では、中立の10年後の時価総額は今を2割弱下回り、悲観側の確率を重ねると10年の価値は今の4割ほど下になった。確率は中立をやや重く、やや悲観側にも相応の重みを置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 26,491 円1.08 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 4,326 円1,756 億円)。 今の値に割り戻すと 15,867 円6,440 億円、今との差 −0.9%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 57,584 円2.34 兆円 | 7,453 円3,025 億円 | +306.1% | +15.0% | 7,804 円3,168 億円 |
| やや楽観 | 25% | 38,126 円1.55 兆円 | 5,750 円2,334 億円 | +174.0% | +10.6% | 10,969 円4,452 億円 |
| 中立 | 33% | 25,168 円1.02 兆円 | 4,353 円1,767 億円 | +84.3% | +6.3% | 9,742 円3,954 億円 |
| やや悲観 | 20% | 7,213 円2,928 億円 | 2,387 円969 億円 | −40.1% | −5.0% | 1,920 円779 億円 |
| 悲観 | 10% | 3,017 円1,225 億円 | 803 円326 億円 | −76.1% | −13.4% | 382 円155 億円 |
| 加重平均 | 100% | 26,491 円1.08 兆円 | 4,326 円1,756 億円 | +92.4% | +6.8% | 30,818 円1.25 兆円 |
今の株価時価総額 16,015 円6,500 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 12% シェアを広げながら市場も拡大 利益 1,161 億円 · PER 20.1 倍 · 株価時価総額 57,584 円2.34 兆円
10年の間に生成AIのデータセンター投資が複数の波で続き、HBMの次の世代やチップレットのような先進パッケージングへの移行も重なって、後工程・検査の装置市場は実質で2倍強に拡大する。東京精密はこの間、薄化・切断・検査のすべてでHBM・先進パッケージング向けの新製品を投入し続け、シェアを5%台まで伸ばす。ディスコとの差は残るものの、計測で培った検査技術を応用した高精度検査装置が新しい収益源に育つ。計測機器事業も自動車の電動化・自動運転向けの高精度要求の高まりを受けて海外展開を広げ、シェアを9%近くまで伸ばす。純現金・高い自己資本比率を維持したまま、増産投資と株主還元を両立させ、営業利益率は3割前後の高水準を10年通じて保つ。中国メーカーの追い上げは成熟工程にとどまり、最先端の後工程では日欧米の技術優位がこの10年は崩れない、同社にとって最も理想的な10年になる。
- 半導体製造装置(グラインダ・ダイサ・プローバ):数量 460(世界の半導体後工程・検査装置市場(億ドル・今の値段で測った実質、暦年))× 価格 10(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 4,805 億円・営業利益 1,441 億円。後工程・検査市場460億ドル(今の2.09倍・実質)×シェア5.2%、営業利益率30%
- 精密計測機器:数量 65.2(世界のCMM(三次元測定機)市場(億ドル・実質、暦年))× 価格 18(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 1,154 億円・営業利益 219 億円。CMM市場65億ドル(今の1.72倍・実質)×シェア8.8%、営業利益率19%
倍率:事業の純利益 1,161 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.1 倍。全体の PER 20.13 倍、時価総額 23,373 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年の間にHBMの複数世代と先進パッケージングの波を連続して取り切る必要があり、実現すれば非常に強いが連続成功の確度は高くない。
やや楽観 25% AI主導の成長が主軸として定着 利益 810 億円 · PER 19.1 倍 · 株価時価総額 38,126 円1.55 兆円
後工程・検査の装置市場は、生成AI向け投資が成長の主軸として定着し、実質で7割強拡大する。東京精密は薄化・切断・検査のシェアを4%台後半まで伸ばし、計測機器事業も自動車・医療機器向けの高精度化需要を取り込みシェア8%まで改善する。ディスコとの競争関係は大きくは変わらないが、HBM関連の採用実績の蓄積で安定した受注が見込める。営業利益率は28%前後を保ち、中国メーカーの国産化は主に成熟工程に限られ、最先端工程での同社の立ち位置は維持される。純現金の財務を背景に、増配と自社株買いを継続しながら、着実な成長を積み重ねる10年になる。
- 半導体製造装置(グラインダ・ダイサ・プローバ):数量 386(世界の半導体後工程・検査装置市場(億ドル・今の値段で測った実質、暦年))× 価格 9.25(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 3,567 億円・営業利益 999 億円。後工程・検査市場386億ドル(今の1.75倍・実質)×シェア4.6%、営業利益率28%
- 精密計測機器:数量 58.1(世界のCMM(三次元測定機)市場(億ドル・実質、暦年))× 価格 16(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 935 億円・営業利益 159 億円。CMM市場58億ドル(今の1.53倍・実質)×シェア8.0%、営業利益率17%
倍率:事業の純利益 810 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.1 倍。全体の PER 19.11 倍、時価総額 15,475 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI・HBM関連投資が業界の主役として定着するという、業界団体見通しの上位レンジに近い想定。
中立 33% 中立:市場は構造的に拡大するが2番手の地位は変わらず 利益 553 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 25,168 円1.02 兆円
半導体製造装置市場は構造的な拡大を続けるが、東京精密のシェアは現状からの改善が小幅にとどまり、後工程・検査市場は実質で4割強の拡大にとどまる。薄化・切断ではディスコとの力関係が大きくは変わらず、得るものと失うものが相殺し合う。計測機器事業は自動車・航空機・医療機器向けの需要に支えられ着実に伸び、シェアは7%台前半まで改善する。営業利益率は26%前後で過去の最良期並みに収まり、特別な超過成長は一巡した「普通に強い2番手企業」としての評価に収まる。中国メーカーの国産化は成熟工程を中心に進むが、最先端のHBM・先進パッケージング向けでは一定の優位を保つ。純現金の財務と配当性向40%程度の還元方針は維持され、会社の優良さは保たれるものの、ディスコを超える絶対的な地位には届かない10年になる。
- 半導体製造装置(グラインダ・ダイサ・プローバ):数量 312(世界の半導体後工程・検査装置市場(億ドル・今の値段で測った実質、暦年))× 価格 8.44(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 2,634 億円・営業利益 685 億円。後工程・検査市場312億ドル(今の1.42倍・実質)×シェア4.2%、営業利益率26%
- 精密計測機器:数量 49.6(世界のCMM(三次元測定機)市場(億ドル・実質、暦年))× 価格 15(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 728 億円・営業利益 109 億円。CMM市場50億ドル(今の1.31倍・実質)×シェア7.3%、営業利益率15%
倍率:事業の純利益 553 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍。全体の PER 18.07 倍、時価総額 9,994 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの長期見通し(市場年6〜9%拡大・名目。物価3%を除くと実質で年3〜6%、中心は10年で1.4倍)と、2番手企業としての過去のシェア実績を組み合わせた中心シナリオ。
やや悲観 20% シェアがじわり侵食される 利益 249 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 7,213 円2,928 億円
中国の装置国産化が成熟工程から徐々に広がり、東京精密のシェアは薄化・切断でじわりと低下する。後工程・検査の装置市場自体の伸びも鈍り、実質で1割弱の拡大にとどまる。ディスコとの力関係も、価格競争の激化でやや不利な方向に振れる。計測機器事業も中国・新興国メーカーの追い上げでシェアがやや低下するが、自動車・医療機器向けの底堅い需要が下支えする。営業利益率は18%前後まで下がり、中期経営計画で描いた成長の軌道からは明確に後退する。純現金の財務は崩れないが、増配のペースは鈍り、2番手企業としての脆さが構造的な競争劣位として定着しつつある10年になる。
- 半導体製造装置(グラインダ・ダイサ・プローバ):数量 238(世界の半導体後工程・検査装置市場(億ドル・今の値段で測った実質、暦年))× 価格 7.04(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 1,675 億円・営業利益 302 億円。後工程・検査市場238億ドル(今の1.08倍・実質)×シェア3.5%、営業利益率18%
- 精密計測機器:数量 44.0(世界のCMM(三次元測定機)市場(億ドル・実質、暦年))× 価格 13(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 557 億円・営業利益 61 億円。CMM市場44億ドル(今の1.16倍・実質)×シェア6.3%、営業利益率11%
倍率:ROE 9.6%。RONIC=k 7.5%+残る割合 1/2×(9.6−8.5)=9.1%、g 4.5% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.6 倍、下限の 1÷k は 11.8 倍で、上限は 12.6 倍。好況が終わり装置市場が縮む筋書きなので、上限の 8.1 割の 9.5 倍に置いた。
確率:中国の国産化が成熟工程から徐々に広がり、市場の伸び自体も鈍化する想定。業種ノートの長期見通しのうち弱めのレンジに相当。
悲観 10% 構造的に優良さを失う 利益 60 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 3,017 円1,225 億円
中国の装置メーカーが成熟工程だけでなく、薄化・切断・検査の先端領域にも技術力で食い込み、東京精密のシェアは大きく低下する。ディスコも同様に競争圧力を受けるが、もともと2番手だった東京精密の方が相対的な傷が深く、世界シェアは半分以下に落ち込む。計測機器事業もドイツ・スイスの大手やアジアの新興メーカーとの価格競争に巻き込まれ、シェアを落とす。生成AI投資の反動とメモリの供給過剰が重なり、装置市場自体も伸びが鈍る中でのシェア損失が業績を直撃し、営業利益率は一桁台まで落ち込む。純現金の財務は残るため経営破綻には至らないが、「計測事業を併せ持つ唯一の半導体製造装置メーカー」という独自性は薄れ、普通の資本財企業としての評価に落ち着く10年になる。
- 半導体製造装置(グラインダ・ダイサ・プローバ):数量 238(世界の半導体後工程・検査装置市場(億ドル・今の値段で測った実質、暦年))× 価格 4.02(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(3年1.09・10年1.34倍))→ 売上 957 億円・営業利益 76 億円。後工程・検査市場238億ドル(今の1.08倍・実質)×シェア2.0%、営業利益率8%
- 精密計測機器:数量 39.7(世界のCMM(三次元測定機)市場(億ドル・実質、暦年))× 価格 9.05(実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率)→ 売上 359 億円・営業利益 22 億円。CMM市場40億ドル(今の1.04倍・実質)×シェア4.5%、営業利益率6%
倍率:赤字で稼ぐ力は無く、売れる資産の床で置く。事業用資産(今の自己資本 1,910 億円に純有利子負債 -388 億円を足した 1,523 億円)が簿価の 55% で売れると仮定し、純有利子負債 -388 億円を返すと 1,225 億円で、今の自己資本の 0.64 倍にあたる。純現金は全額、後工程装置の工場・在庫などの事業用資産は簿価の 55% で数える。市場の値付けは根拠にしていない。
確率:中国の国産化が最先端工程にまで及び、かつ循環の谷が同時に来るという複合シナリオ。技術優位の喪失は一度始まると10年で後退しやすいため低頻度だが無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
半導体製造装置(グラインダ・ダイサ・プローバ)
ウェーハを薄く削るグラインダ、個片に切り分けるダイサ、出荷前に不良を見つけるプローバなど半導体後工程向けの主力装置群。
| 数量世界の半導体後工程・検査装置市場(億ドル・今の値段で測った実質、暦年) | 価格実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(3年1.09・10年1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 220 | 5.81 | 1,279 | 284 |
| 10 年後 中立 | 312 | 8.44 | 2,634 | 685 |
取り方:SEMIの半導体製造装置市場全体(2026年約1,659億ドル)からWFE(ウエハ工程装置、約1,439億ドル)を除いた約220億ドルを後工程・検査装置市場の推定規模とし、東京精密の半導体製造装置売上1,278.78億円をシェア3.9%(1ドル150円換算)として逆算した。
精密計測機器
自動車・航空機・医療機器の生産現場で部品の寸法を測る三次元測定機などの精密計測装置。
| 数量世界のCMM(三次元測定機)市場(億ドル・実質、暦年) | 価格実質の市場1ドルあたりの売上(円)=シェア×150円×物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 38.0 | 10 | 390 | 53 |
| 10 年後 中立 | 49.6 | 15 | 728 | 109 |
取り方:世界のCMM市場を2026年時点で約38億ドル(調査各社の推定33〜43億ドルの中央値)とし、東京精密の計測機器売上389.60億円をシェア6.8%として逆算した。
リスクと懸念
ディスコという絶対王者への従属
薄化・切断の主戦場でディスコがダイシングソー7〜8割・グラインダ6〜7割という圧倒的シェアを握り、東京精密は長年2番手から抜け出せていない。価格決定力・好況時の利益配分のいずれもディスコに劣後しやすく、好況が長引くほどこの差が積み重なるおそれがある。
半導体投資サイクルの深さ
半導体製造装置市場は2008年・2019年・2022〜23年と繰り返し前年比3〜4割縮む急落を経験してきた。生成AI投資という新しい柱ができても、資本財の受注が需要の先読みと在庫調整で大きく揺れる循環そのものは消えていない。
中国の装置国産化
中国は半導体装置の国産化を国家戦略として進め、まず成熟工程の汎用品から日本・欧米勢のシェアを奪う構図が指摘されている。薄化・切断・検査は量産の安定性が問われる工程で、中国メーカーが得意とする領域に近く、長期的な侵食のリスクがある。
顧客の投資判断への依存
顧客はメモリ・ロジックの大手数社やOSAT各社に集中しており、どの1社の投資計画の延期・縮小も装置受注全体に大きく影響する。HBM関連の投資が特定の顧客・特定のメモリ規格に偏れば、受注の振れが一段と大きくなりやすい。
倍率の圧縮
過去のPBRは月末値で0.54倍から9.56倍まで大きく振れてきた会社で、好況の終わりとともに倍率そのものが縮む場面を繰り返してきた。業績そのものが落ちる前に、倍率の圧縮だけで株価が先に下がる場面が起こりやすい。
計測機器事業の緩衝力の限界
計測機器事業は半導体事業とは別の需要の波を持ち業績の緩衝材になるが、売上の2割強にとどまり、会社全体の落ち込みを打ち消すほどの規模はない。自動車・航空機向けの投資サイクルが半導体と同時に悪化すれば緩衝効果は働かない。
社名とブランドの分かりにくさ
社名「東京精密」と海外で使う「ACCRETECH」というブランド名が一致しないため、海外投資家や新規顧客にとって認知のしやすさに課題を残す。知名度の低さが海外での顧客開拓や人材獲得の面で地味な足かせになりうる。
今後の分かれ目
- 中国メーカーが最先端の薄化・切断・検査工程にまで技術力で食い込んだら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。特にディスコとの力関係がさらに不利に振れるかを見る。
- HBM関連の装置受注が会社計画を上回る形で増え続けたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし倍率そのものはすでに市場で高めに評価されていないかを別に確認する。
- 中期経営計画の2027年度目標(売上高1,850億円・営業利益450億円)を上回る決算が続いたら
- 中立の筋書きの利益率前提を上方修正し、価値を見直す。
- ディスコがグラインダ・ダイサで追加のシェアを獲得する発表が続いたら
- 東京精密のシェア前提を下方修正し、2番手企業としての構造的な劣位をやや悲観側に強めに反映する。
- 半導体投資の過熱が急に冷め、受注高(BBレシオ)が1を大きく割り込んだら
- やや悲観・悲観の筋書きが近づいていると見て、倍率の圧縮も合わせて想定する。
- 計測機器事業が自動車の電動化・自動運転向けで大口の新規採用を獲得したら
- 計測機器事業のシェア前提を上方修正し、半導体事業の谷を和らげる緩衝効果を強めに見る。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高(BBレシオ)とHBM関連の装置受注動向
- 中期経営計画(2025〜2027年度)の上方修正・下方修正のタイミング
- ディスコの決算・シェア動向(グラインダ・ダイサの競争環境)
- 中国国内装置メーカーの後工程装置でのシェア動向
倍率と資本コストの決め方
後工程・検査の装置市場(億ドル、実質)にシェアを掛けて売上を積み上げ、市場の伸びは業種ノートの名目(年6〜9%)から物価3%を除いた実質で置き、物価3%は価格側(シェア×150円×物価の倍率)に入れて二重に数えないようにした。倍率は資本コスト7.5%(基本7.5%に半導体装置の循環+1.0%)と長期の成長率4.5%(半導体の数量が10年より先も実質で伸びる構造的な領域)から利益ベースの正当化PERの上限を引き、楽観8.5割・やや楽観8割・中立7.5割に置いた(2番手企業で業績の振れが大きいため上限すれすれにはしない)。今のPER29.6倍には寄せていない。やや悲観は上限の8割、悲観は赤字に近いので純現金388億円と事業用資産(簿価の55%)の仮定の床で置き、過去のPBRの最小値などは根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.4→20.13 倍・やや楽観 PER 12.9→19.11 倍・中立 PER 11→18.07 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality +1.0%=8.5%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.50%。