結論
リズムは、車載を含む電子・機構向けの精密部品を作る会社だ。売上の4分の3が精密部品、2割強が時計と小型家電(生活用品)である。2026年3月期は、営業利益が前期のほぼ2倍の16億円に乗った。
筆者の結論は「割高」だ。10年後の中立でも、時価総額は今の2割強低い。理由は資本効率にある。自己資本は340億円あるが、稼ぐ利益はその5〜7%にとどまり、資本コストの8.75%に届かない。資本コストに届かない会社が貯めた利益は、額面を下回る価値しかない。
良い材料は確かにある。精密部品の利益率は9%台に乗り、生活用品の赤字はほぼ消えた。新しい配当方針と株主優待で、還元は一気に厚くなった。ただ、10年の価値の大半を占めるのは、この還元のほうだ。事業が伸びて価値が増える筋書きより、稼ぎが物価についていけない筋書きのほうが、確率では重い。
見直しの鍵は、特別利益を除いた利益率が5%台で定着するかどうかだ。そこまで届けば中立の価値は上がる。届かなければ、今の値段は下がる余地のほうが大きい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、まず問うのは、10年後にこの事業が今より強いかどうかだ。リズムの精密部品は10年後も残るが、強くなる保証はない。堀は浅く、利益率の天井は低い。
次に、株主が自由に使える利益を見る。2026年3月期のフリーキャッシュフローは15億円で、特別利益を含む純利益23億円を下回った。設備投資は年14〜18億円と、営業利益並みに大きい。見かけの利益より、手元に残る利益は小さい。
資本の使い方は、いま評価が分かれる。資本が余っている会社が還元を厚くするのは正しい。ただし、2026年3月期の配当は、特別利益を除いた平常の純利益とほぼ同額だった。この水準を事業の稼ぎだけで続けるのは難しい。M&Aに50億円を使う計画も、買い手としての実績がまだ無い。
最後に安全域だ。ROEが資本コストを下回る会社の帳簿は、額面どおりの価値がない。中立の価値は、帳簿の7割弱にとどまる。今の値段はそれより高い。事業はわかりやすいが、価格を決める力が弱く、10年の利益を確信をもって言える会社ではない。
何で稼ぐ会社か
リズムの稼ぎは2本ある。1本目は精密部品で、2026年3月期の売上の約75%、セグメント利益のほぼすべてを占める。自動車、産業機器、光学機器、家電向けの小さな部品を、金型づくりから成形、巻線、金属加工、組み立てまで一貫して作る。ソレノイドコイル(電気で動く弁やスイッチの心臓部)、基板に載せる金属板のSMDバスバー、複数の部品を組んだユニット品が主力だ。
精密部品のうち、車載(会社の呼び名はモビリティ)は4割ほどで、年に約105億円。ハイブリッド車向けは堅調だが、EV向けと、欧州・中国・東南アジア向けは弱い。残りは工作機械、光学機器、高額家電、ベトナムで受注したAIデータサーバー向けや光ケーブル関連の部品だ。半導体製造関連は、今期に受注が増える見込みだと会社は説明している。
2本目は生活用品で、掛け時計・置き時計などのクロックと、ハンディファン・加湿器などの快適品を売る。クロック市場は10年でほぼ半分に縮んだ。会社は中国工場の作り直しと販売子会社の整理を終え、快適品に軸足を移して、赤字をほぼゼロまで縮めた。
生産は国内のほか、ベトナム、インドネシア、中国にある。地域別の売上は日本が約半分、ベトナムが約4分の1だ。売上の1割を超える顧客はなく、特定の1社に頼る形ではない。ただし、車載では完成車メーカーの系列に連なるため、価格の主導権は弱い。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、あるが浅い。強みは、金型から量産までを自社で持つ一貫体制と、コイル・成形・金属加工を1つのユニット品にまとめる提案力だ。複合部品の提案で新規の引き合いが増えたと会社は述べている。顧客の工程に組み込まれるため、いったん採用されれば簡単には替えられない。
一方で、価格を決める力は弱い。車載の顧客からは毎年の原価低減を求められ、仕様書どおりに作る下請けの性格が強い。ブランドも規制も味方にならない。営業利益率が過去に2〜3%で張り付いてきたのが、その証拠だ。2026年3月期にようやく4.6%に乗ったが、過去12年で最高の水準である。
資本効率はもっと弱い。自己資本比率は約7割、純現金は58億円ある。財務は堅いが、稼ぎに比べて資本が厚く、ROE(自己資本利益率)は過去10年の中央値で1%台、2026年3月期も特別利益を除けば4%前後だ。
経営は2025年に方針を変えた。配当性向35%以上とDOE(純資産配当率)4%以上を掲げ、株主優待も始めた。筆者は、この姿勢が続くかどうかを、利益率の定着と並べて見ている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
リズムの市場は1つではない。車載部品、電子・機構部品の受託加工、時計・小型家電の3つに分かれる。
車載は、日本の自動車部品の出荷額が約41兆円と大きい成熟市場だ。世界の車の台数は横ばい圏で、伸びを生むのは1台あたりの部品の量と質(電装化、先進運転支援)である。リズムはハイブリッド車に強い。一方、EV(電気だけで走る車)はエンジンまわりの弁やコイルが要らなくなる面がある。EVの停滞はいま追い風だが、10年その風が続くとは限らない。完成車メーカーは原価低減を毎年求め、中国勢が海外の工場でも価格を崩しにくる。
電子・機構部品は、AIデータサーバー、光通信、半導体製造装置、工作機械の設備投資とともに動く。リズムはこの分野で受注を取り始めたばかりだ。市場は伸びるが、成形・金属加工の受託は参入が多く、価格競争になりやすい。差がつくのは、金型の難度と、組み立てまで請ける提案力である。
時計は縮む市場だ。クロック市場は10年でほぼ半分になった。ハンディファンなどの快適品は夏の気温に左右され、流行の波もある。
景気や自動車の生産が落ちた年は、リズムも赤字になる。過去20年で最終赤字が5期ある。
資本政策と M&A
資本政策は2025年6月に大きく変わった。配当性向35%以上、DOE4%以上を新しい方針とし、2026年3月期の配当は前期の2倍を超えた。100株以上の株主に1万5千円相当の電子ギフトを贈る優待も始めた。中期経営計画の3年間では、営業キャッシュフロー70〜80億円を、事業投資50〜60億円、M&A(企業買収)約50億円、株主還元約50億円に振る。
同じ時期に、株主の顔ぶれも動いた。個人の大株主の共同保有は、2025年6月に約37%から約15%へ下がり、その後も売りが進んで2026年3月末には約5%になった。この間にリズムと結んだ契約の中身は、確認できていない。筆頭株主はシチズン時計の約7%である。上場維持基準のうち、流通株式の比率と時価総額は未達で、改善期間に入っている。大株主の売りは、この未達を解く方向に働く。
M&Aに約50億円を充てる方針だが、過去に大きな買収はない。実績の乏しい買い手が、本業に近い分野で小さく買うなら害は小さい。大きく外せば、純現金58億円が一気に減る。
優待の費用は開示を確認できなかった。2025年3月末の株主は約4千人(うち個人が約3,850人)で、優待の導入後に増えるとみて、100株以上の株主を5千人と仮置きした。1人1万5千円相当で、電子ギフトは額面に近い原価なので、年0.75億円になる。営業利益の5%ほどで、配当に比べて小さい。10年の還元には、この受け取り分を、中立で1.0、やや悲観で0.75、悲観で0.5の割合で足した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
精密部品の利益率は、すでに9%台に乗った。会社は2028年3月期に売上400億円、営業利益25億円を掲げる。2026年3月期は前年の計画14億円を上回る16億円で着地しており、計画を超えて終える実績がある。6%台の利益率は絵空事ではない。ハイブリッド車向けは堅調で、AIデータサーバー、光ケーブル、半導体製造装置と、車載以外の受注の柱が増えている。複合部品の提案で、部品1つの受注がユニット品の受注に変わりつつある。ユニットになれば単価も利益も厚くなる。
生活用品は、中国工場の作り直しと販売子会社の整理が終わり、赤字がほぼゼロまで縮んだ。快適品が伸びて、2028年3月期には黒字に乗せる計画だ。
財務は純現金58億円、自己資本比率約7割。借金に頼らず、設備投資と還元を両立できる。DOE4%の下限が株主を支える。M&Aでユニット部品の技術を買えれば、成長はさらに早まる。大株主の持ち分が整理され、流通株式の不足も解けていく。
慎重な見方
資本効率は10年以上、資本コストに届いたことがない。ROEの過去10年の中央値は1%台で、2026年3月期の23億円の純利益も、不動産売却益と子会社清算益に支えられた。同期の営業利益率は4.6%で、過去12年の最高である。1年の好業績を新しい水準と呼ぶのは早い。
モビリティの柱はハイブリッド向けだが、EVが勢いを取り戻せば、エンジンまわりの電磁弁やコイルの需要は縮む。欧州・中国・東南アジア向けはすでに弱い。完成車メーカーの原価低減の要請は毎年かかり、中国勢が価格を崩す。AIデータサーバー向けも、ベトナムの新規受注という段階で、量が続く保証はない。
時計は10年で市場が半減した。快適品は気温と流行に左右される。生活用品の黒字化は、夏の暑さに頼る面もある。
配当は、平常の純利益とほぼ同額まで引き上がった。優待の費用は年1億円に満たず小さいが、業績が崩れた年に配当を方針どおり保つのは難しい。減配や優待の縮小が起きれば、10年の価値の大半を占める還元が細る。M&Aに50億円を使う計画も、実績のない買い手が外せば、純現金が目減りする。
どちらに重みを置いたか
事業の改善は本物だが、資本コストを超えるほどの稼ぎ方ではない、という見方を勝たせた。強気の根拠である、計画を超えて着地した実績は確かだ。ただ、慎重な見方が突く点、つまり利益率が過去12年の最高を更新した初めての年であること、ROEが10年以上資本コストを下回ってきたこと、還元の厚さが事業の稼ぎを超えていることは、10年の価値に直接効く。確率は、楽観を1割、やや楽観を2割強に抑え、やや悲観と悲観を合わせて3割強に置いた。中立は、計画の利益率の9割まで届くが、ROEが資本コストを超えない筋書きにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,177 円253 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,952 円156 億円)。 今の値に割り戻すと 2,751 円219 億円、今との差 −26.8%、 期待の年率 +3.2%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,002 円478 億円 | 2,855 円228 億円 | +135.5% | +8.9% | 886 円71 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,384 円349 億円 | 2,416 円193 億円 | +80.8% | +6.1% | 1,496 円119 億円 |
| 中立 | 36% | 3,639 円290 億円 | 2,165 円173 億円 | +54.3% | +4.4% | 2,089 円167 億円 |
| やや悲観 | 20% | 999 円80 億円 | 1,451 円116 億円 | −34.9% | −4.2% | 490 円39 億円 |
| 悲観 | 12% | 852 円68 億円 | 550 円44 億円 | −62.7% | −9.4% | 168 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,177 円253 億円 | 1,952 円156 億円 | +36.4% | +3.2% | 5,129 円409 億円 |
今の株価時価総額 3,760 円300 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 車載以外が柱になり、利益率が過去の最高を大きく超える 利益 35 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 6,002 円478 億円
車載以外の受注が10年続けて伸び、ユニット品が主力になる。AIデータサーバー、光ケーブル、半導体製造装置向けの部品で売上が膨らみ、車載はハイブリッド車と先進安全の電装品を押さえて、搭載額が物価を大きく上回って上がる。金型から組み立てまでを請ける強みが、単価の高いユニット品の受注に結びつく。生活用品は快適品が当たり、時計の縮小を埋めて黒字が定着する。中計で掲げた小さな買収もユニット技術の取り込みに成功する。営業利益率は7%台に乗り、過去の最高を大きく超える。10年の売上は600億円規模になる。ただし、これは会社の過去の実績から大きく離れた姿だ。優待は続き、配当は利益の伸びに合わせて増える。
- モビリティ(車載の電装・先進安全部品):数量 97.0(搭載先の世界の自動車生産台数(百万台))× 価格 1.87(1 台あたり搭載額の指数(億円 ÷ 百万台。1.167=1 台あたり百円強))→ 売上 181 億円・営業利益 17 億円。搭載額が先進安全と電装品で物価を大きく上回る
- 車載以外の精密部品:数量 6.8(部品の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 45(1 個あたり平均売上(億円 ÷ 億個。32.2=1 個あたり数十円。金型・ユニット品を含む平均))→ 売上 307 億円・営業利益 37 億円。個数 1.36 倍、AI サーバー・半導体向けでユニット化
- 生活用品・その他:数量 410(年間の出荷点数(万点、推定))× 価格 0.30(1 点あたり平均売上(億円 ÷ 万点。0.204=1 点あたり約 2 千円))→ 売上 121 億円・営業利益 6 億円。快適品が当たり黒字が定着
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 13.28 倍、時価総額 478 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:車載以外の受注の柱が増え、会社の計画を超えて着地した実績は強い。ただ、過去12年の営業利益率の最高は4.6%で、7%台に乗る姿は実績から遠い。価格を決める力が弱い会社でもあり、1割にとどめた。
やや楽観 22% 中計の姿が実現し、その先も物価以上に伸びる 利益 28 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,384 円349 億円
中計の姿がおおむね実現し、その後も物価並み以上に伸びる。モビリティはハイブリッド車向けが堅調で、先進安全の電装品も加わり、搭載額が物価をやや上回って上がる。車載以外の精密部品は、AIデータサーバーと半導体製造関連の受注が定着して、ユニット品の比率が上がる。工作機械や光学機器の設備投資の波にも乗り、個数は年2%ほど伸びる。生活用品は赤字を脱し、快適品を軸に小さな黒字を保つ。営業利益率は6%台後半まで上がる。10年の売上は550億円前後になる。ただし自己資本が厚く、利益が増えても資本コストには届かない。配当は方針どおり利益の増加に合わせて増え、優待も続く。
- モビリティ(車載の電装・先進安全部品):数量 95.0(搭載先の世界の自動車生産台数(百万台))× 価格 1.75(1 台あたり搭載額の指数(億円 ÷ 百万台。1.167=1 台あたり百円強))→ 売上 166 億円・営業利益 15 億円。搭載額が物価を上回る
- 車載以外の精密部品:数量 6.2(部品の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 44(1 個あたり平均売上(億円 ÷ 億個。32.2=1 個あたり数十円。金型・ユニット品を含む平均))→ 売上 274 億円・営業利益 31 億円。個数 1.24 倍、物価を上回る
- 生活用品・その他:数量 385(年間の出荷点数(万点、推定))× 価格 0.29(1 点あたり平均売上(億円 ÷ 万点。0.204=1 点あたり約 2 千円))→ 売上 110 億円・営業利益 4 億円。快適品を軸に小さな黒字
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 349 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年3月期は前年の計画14億円に対し16億円と上回って着地した。精密部品の利益率は9%台で、計画の達成は現実味がある。物価以上の伸びが続くかは別なので、2割強に置いた。
中立 36% 中計の達成後は物価並み。資本効率は資本コストに届かない 利益 23 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,639 円290 億円
中計のとおり2028年3月期に営業利益25億円前後まで進み、その後は物価に沿って伸びる。モビリティは数量がほぼ横ばいで、ハイブリッド車向けの堅調さで1台あたりの搭載額が物価をわずかに上回る。車載以外の精密部品は、数量が年1.5%ほど伸び、価格は物価並みに上がる。生活用品は快適品で時計の縮小を補い、小さな黒字になる。営業利益率は5.8%で、2026年3月期の4.6%から上がる。根拠は、精密部品の9%台の利益率と、赤字を縮めた実行の実績だ。それでも本社費は物価で増え、ROEは7%弱にとどまる。配当は方針どおり出て、優待も続く。優待の費用は利益から引かれ済みで、還元には受け取り分を足してある。
- モビリティ(車載の電装・先進安全部品):数量 94.0(搭載先の世界の自動車生産台数(百万台))× 価格 1.63(1 台あたり搭載額の指数(億円 ÷ 百万台。1.167=1 台あたり百円強))→ 売上 154 億円・営業利益 13 億円。台数 1.04 倍、搭載額は物価の 1.34 倍に実質 +4%
- 車載以外の精密部品:数量 5.9(部品の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 43(1 個あたり平均売上(億円 ÷ 億個。32.2=1 個あたり数十円。金型・ユニット品を含む平均))→ 売上 255 億円・営業利益 27 億円。個数 1.18 倍、価格は物価並みの 1.34 倍
- 生活用品・その他:数量 380(年間の出荷点数(万点、推定))× 価格 0.27(1 点あたり平均売上(億円 ÷ 万点。0.204=1 点あたり約 2 千円))→ 売上 104 億円・営業利益 3 億円。時計の縮小を快適品で補い小さな黒字
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 290 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の9割まで届き、それ以上は伸びないという落としどころ。強気の根拠(計画超過の実績)と慎重な根拠(利益率の過去の低さ、価格を決める力の弱さ)が拮抗する中心の筋書きに、最も厚い確率を置いた。
やや悲観 20% 原価低減と電動化で、利益率が2%台に落ちる 利益 9 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 999 円80 億円
完成車メーカーの原価低減と中国勢の値下げで、車載の搭載額が物価に追いつかない。EVの比率が想定より上がり、エンジンまわりのコイルや弁の需要が細る。欧州・中国・東南アジアの販売不振は続く。車載以外の精密部品も、AIデータサーバーの案件はベトナムの1拠点止まりで、量が定着しない。生活用品は時計の縮小に快適品の失速が重なり、再び小さな赤字になる。営業利益率は2%台に落ちて、全社費用が重くのしかかる。売上は物価の分しか伸びず、実質では2割縮む。配当は方針の下限を維持できず、優待も縮める。ただし純現金があるため、財務が行き詰まることはない。
- モビリティ(車載の電装・先進安全部品):数量 88.0(搭載先の世界の自動車生産台数(百万台))× 価格 1.46(1 台あたり搭載額の指数(億円 ÷ 百万台。1.167=1 台あたり百円強))→ 売上 128 億円・営業利益 6 億円。搭載額が物価に追いつかない(今の 1.25 倍)
- 車載以外の精密部品:数量 5.1(部品の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 40(1 個あたり平均売上(億円 ÷ 億個。32.2=1 個あたり数十円。金型・ユニット品を含む平均))→ 売上 205 億円・営業利益 16 億円。個数は横ばい圏、価格は 1.25 倍
- 生活用品・その他:数量 330(年間の出荷点数(万点、推定))× 価格 0.26(1 点あたり平均売上(億円 ÷ 万点。0.204=1 点あたり約 2 千円))→ 売上 84 億円・営業利益 −1 億円。再び小さな赤字
倍率:事業の ROE は 2.6%(事業の純利益 ÷ 余った現金を除く自己資本)、k は 8.25%。ROE が k 以下なので、ためた利益は額面未満の価値しかなく、PER の上限は 1÷k=11.4 倍。利益が細り、原価低減と中国勢の値下げで質も落ちる。上限の 7 割の 8.0 倍に置いた。余った現金 11.25 億円は、戻り方 1.0 で足した(やや悲観は 0.75 倍の額)。
確率:EVの比率、完成車メーカーの原価低減、中国勢の値下げという3つのうち、どれか1つが効くだけでこの筋書きに入る。過去の利益率の低さを踏まえて、慎重な側に厚く置いた。
悲観 12% 電動化と中国勢で構造的に負け、赤字が続く 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 852 円68 億円
電動化で車載の電磁部品の需要が大きく縮み、中国勢が東南アジアの拠点の顧客を奪う。モビリティの数量は2割以上減り、単価も物価に追いつかない。AIデータサーバー向けも量が定着しないまま、他社の受注に切り替わる。時計の市場はさらに縮み、生活用品は赤字が膨らんで事業の整理を迫られる。固定費の重い工場を抱えたまま、営業赤字が続く。会社は優待と配当を大きく削り、純現金を食いつぶさないよう守る。もう優良とは言えず、帳簿の価値より、稼ぐ力と純現金で測るほかない10年になる。完成車メーカーの系列から外れた部品は、仕様を握られたまま買い叩かれる。
- モビリティ(車載の電装・先進安全部品):数量 70.0(搭載先の世界の自動車生産台数(百万台))× 価格 1.34(1 台あたり搭載額の指数(億円 ÷ 百万台。1.167=1 台あたり百円強))→ 売上 94 億円・営業利益 −2 億円。電動化で台数が 2 割以上減り、搭載額も下がる
- 車載以外の精密部品:数量 4.4(部品の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 37(1 個あたり平均売上(億円 ÷ 億個。32.2=1 個あたり数十円。金型・ユニット品を含む平均))→ 売上 163 億円・営業利益 7 億円。個数 0.88 倍、価格 1.15 倍
- 生活用品・その他:数量 250(年間の出荷点数(万点、推定))× 価格 0.24(1 点あたり平均売上(億円 ÷ 万点。0.204=1 点あたり約 2 千円))→ 売上 61 億円・営業利益 −2 億円。赤字が膨らみ整理を迫られる
倍率:営業赤字の筋書きで、利益から値が付かない。稼ぐ力は無く、価値は純現金と事業の売れる資産が支える。今の自己資本 339 億円に 0.20 倍を掛けた(悲観の床は今の自己資本に掛け、ためた利益には掛けない)。
確率:電動化で車載の電磁部品が縮み、同時に時計と快適品も失速する複合の筋書き。財務が堅く倒産には遠いが、20年で最終赤字が5期あり、構造的な負けの確率として1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
モビリティ(車載の電装・先進安全部品)
ソレノイドコイル、金属加工、精密成形などで作る車載の電装品と先進安全向けの部品。ハイブリッド車向けが中心。
| 数量搭載先の世界の自動車生産台数(百万台) | 価格1 台あたり搭載額の指数(億円 ÷ 百万台。1.167=1 台あたり百円強) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 90.0 | 1.17 | 105 | 8 |
| 10 年後 中立 | 94.0 | 1.63 | 154 | 13 |
取り方:売上は中計2027が示す2025年度のモビリティ売上105億円。世界の自動車生産を約9,000万台とみて、割り戻した1台あたり搭載額を価格にした(日本・北米向けのハイブリッド車が中心なので、世界の平均の車に掛ける『みなし』の額)。利益は精密部品全体の利益率9.4%に対し、車載は原価低減の圧力が強いので8%と推定した。物価の分は価格に入れ、数量は実質の台数。
車載以外の精密部品
工作機械、光学機器、高額家電、AIデータサーバー、光ケーブル、半導体製造関連の部品と、高難度金型、受託製造。
| 数量部品の年間出荷個数(億個、推定) | 価格1 個あたり平均売上(億円 ÷ 億個。32.2=1 個あたり数十円。金型・ユニット品を含む平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 32 | 161 | 17 |
| 10 年後 中立 | 5.9 | 43 | 255 | 27 |
取り方:精密部品の売上266億円から車載の105億円を引いた161億円。個数は開示がないので、小型の成形・巻線・加工部品の平均単価を数十円台と置いて年5億個と推定した。金型やユニット品を含む平均なので単価は高めに出る。利益は精密部品の利益25.4億円から車載の8.4億円を引いた17.0億円で、利益率は約10.6%。
生活用品・その他
掛け時計・置き時計などのクロック、ハンディファン・加湿器などの快適品、物流・ギフトなどのその他。
| 数量年間の出荷点数(万点、推定) | 価格1 点あたり平均売上(億円 ÷ 万点。0.204=1 点あたり約 2 千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 0.20 | 82 | 0 |
| 10 年後 中立 | 380 | 0.27 | 104 | 3 |
取り方:生活用品75億円とその他(物流等)の外部売上6.6億円を合わせた81.6億円。クロックとハンディファンなどの平均単価を約 2 千円と置き、出荷点数を年400万点と推定した。利益は生活用品の営業損失0.8億円とその他の0.8億円でほぼゼロ。
リスクと懸念
電動化で車載の電磁部品が要らなくなる
リズムの車載はハイブリッド車向けが中心で、エンジンまわりの弁やコイルに使われる部品が多い。EVの比率が想定より上がれば、モビリティの数量が縮む。いまはEVの停滞が追い風だが、10年の間に風向きが変わる可能性は小さくない。
完成車メーカーの原価低減と中国勢
車載の顧客は毎年の値下げを求め、中国勢が欧州・東南アジアの工場でも価格を崩しにくる。価格を決める力の弱い会社なので、物価の上昇分を価格に乗せきれない年が続くと、利益率が真っ先に削られる。
特別利益で実力を見誤る
2026年3月期の純利益23億円には、不動産売却益と子会社清算益が入っている。平常の利益は13億円前後で、これを新しい水準と見ると過大評価になる。売れる資産は有限で、同じ補いは続かない。
還元が事業の稼ぎを超える
配当は平常の純利益とほぼ同額まで上がり、優待の費用は年0.75億円と推定する。業績が崩れた年にこの水準を保てば純現金が減り、保てなければ減配・優待の縮小が起きる。10年の価値の大半が還元なので、ここが崩れると価値が大きく動く。
買収で資本を壊す
中期経営計画はM&Aに約50億円を充てる。過去に大きな買収をした実績はなく、買い手としての経験が浅い。純現金58億円の大半に当たる額で、外せば自己資本と還元余力が一度に細る。
生活用品が黒字に届かない
クロックの市場は10年で半減した。快適品は気温と流行に左右され、円安は輸入コストにも響く。黒字化が遅れると、全社の利益率の上がり方が止まり、事業の整理という判断も重くなる。
大株主の動きと上場維持基準
個人の大株主が持ち分を大きく減らし、流通株式の不足は解ける方向にある。ただ、残る大株主の売買や、契約の内容次第では、株価が需給で振れやすい。上場維持基準への対応が経営の優先順位を左右する可能性もある。
今後の分かれ目
- 特別利益を除いた営業利益率が、2期続けて5%台に乗ったら
- 中立の利益率前提を引き上げ、楽観側の確率を厚くする。ただし自己資本が厚いままだと倍率の上限は動かないので、還元と自己資本の流れも見る。
- ハイブリッド車向けの受注が減り、EV向けの比率が逆に高まったら
- モビリティの数量の前提を下げ、やや悲観に確率を移す。電磁部品が要らなくなる速さを見る。
- AIデータサーバー向けの受注がベトナム以外の拠点にも広がったら
- 車載以外の精密部品の数量を上方修正する。ユニット品の比率が上がっていれば、利益率の前提も上げる。
- M&Aで50億円規模の買収が発表されたら
- 買収先の稼ぐ力と価格を見て、買収で資本を壊す筋書き(やや悲観〜悲観)の確率を見直す。本業に近い小さな買収なら影響は小さい。
- 配当や優待を減らす発表が出たら
- 10年の価値の大半を占める還元の前提を下げる。減らす理由が業績悪化なら、やや悲観への移行を進める。
- 大株主が公開買付けなどで会社の再編を提案したら
- TOB(株式公開買付け)の価格しだいで、悲観を除く筋書きの上に買収の筋書きが加わる。価格は本質価値と比べて見る。
見ておくもの
- 精密部品の営業利益率(特別利益を除く)と、モビリティの売上の伸び
- ハイブリッド車向けとEV向けの受注の比率
- AIデータサーバー・半導体製造関連の受注と、ユニット品の比率
- 生活用品の黒字化と、クロックの縮小の速さ
- 配当・優待の方針の変更と、M&Aの発表
倍率と資本コストの決め方
今の株価や過去の倍率は倍率の根拠に使っていない。自己資本340億円に対し平常の利益が13億円前後で、事業のROEは10年中立でも6〜7%と資本コスト8.25%に届かない。そのためPERの上限は1÷k=11.4倍で、中立はその8.3割の9.5倍に置いた。売上は車載の搭載額、車載以外の個数、生活用品の点数に物価を価格として掛けて積み、利益率は精密部品の9%台と実行済みの構造改革を根拠に5.8%まで引き上げた。数字は新リース会計基準に移る前の、家賃を営業費用に入れた形でそろえた。優待の費用は開示を確認できず、株主数の仮置き(5千人)による推定を含む。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.91→13.28 倍・やや楽観 PER 10.29→12.12 倍・中立 PER 9.49→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。