結論
メディキットは、血管に針やカテーテルを入れる医療機器の専業メーカーだ。透析用の針、点滴用の留置針、心臓や脳の治療に使うカテーテルの3本柱で、売上は238億円、営業利益は43億円である。
筆者の結論は、今の値段は割安という見方だ。理由は二つある。事業の質が悪くないこと。そして純現金が186億円と、時価総額の半分近くを占めることだ。
守りは固い。点滴の針も透析の針も、毎日どこかの病院で使い捨てられる。景気の影響は小さい。安全機構つきの針が広がる流れも、追い風である。
弱みは、利益率が下がり続けていることだ。営業利益率は10年前の23%から18%に落ちた。新しい工場の償却が重いうえ、透析患者は3年連続で減っている。国内の透析針は縮む市場である。
伸びを担うのは、米国で売れる静脈留置針と、不整脈の治療に使うシースなどのカテーテルだ。会社は2029年3月期に売上290億円以上を目指す。
もう一つの論点が資本の使い方だ。現金を抱えたまま、ROEは6%台にとどまる。ただ、この現金をどこまで株主が受け取れるかは読み切れない。そこは半分に割り引いて見た。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、メディキットは「地味だが堅い会社を、現金つきで安く買う」話に近い。
事業は、使い捨ての針とカテーテルだ。景気で需要が減りにくく、10年後も必要とされる。ただし堀は中程度で、値段は病院との交渉で決まる。利益率は10年かけて下がってきた。
資本の使い方は、評価が分かれる。自社株買いに踏み切ったのは前向きだ。一方で、現金が時価総額の半分に近いのに、ROEは6%台にとどまる。筆者は、この現金の半分だけが株主に届くと見ている。
安全域は広い。10年後の価値を確率で加重すると、今の時価総額を大きく上回る。最悪の場合でも、純現金と無借金の財務が下値を支える。
筆者がいちばん気にしているのは、利益率が計画どおり18%に戻るかだ。新しい工場の償却を、海外の増収で吸収できるかが分かれ目になる。もう一つは、現金が株主に戻らず、ただ積み上がる姿に戻ることだ。この二つがそろって外れると、割安の理由は消える。
予測の難しさは中程度で、確信度は高めに置いた。
何で稼ぐ会社か
メディキットの商品は、血管と血液に関わる使い捨ての医療機器だ。売上は3つの品目に分かれ、規模はほぼ同じである。
人工透析類は、透析用の留置針「ハッピーキャス」が中心で、売上は78億円。透析は1回に針を2本使い、週3回通う患者が多い。国内では首位級のメーカーとされる。ただ、透析患者は2024年末で33万7千人と、3年連続で減った。
静脈留置針類は、点滴のために血管に残す針で、売上は84億円。主力は「スーパーキャス」だ。国内の年間使用量は約1億3千万本で、そのうち安全針、つまり針刺し事故を防ぐ機構つきの製品が約4分の3を占める。最近は米国で想定を上回る勢いで売れ、前期は14%増えた。
インターベンション類は、カテーテルを血管に通す治療の道具で、売上は75億円。血管に器具を入れる導入用の「シース」や造影用のカテーテルが中心だ。ここ数年は、不整脈の治療(アブレーション)向けのシースなど、単価の高い製品を足している。他社製品の販売も手がける。
生産は宮崎県日向市の工場が中心で、2024年から2025年にかけて第二・第三工場を増設した。増設の投資は50〜70億円にのぼる。売上の全体は、国内の病院向けが主で、海外は欧米と中国を伸ばす方針だ。
優良さと弱いところ
メディキットの強みは「現場が替えたがらない」ことだ。針は看護師が毎日手に取る道具で、刺しやすさや漏れにくさの好みが強い。透析針は特に、患者ごとに血管の状態が違い、慣れた製品が好まれる。堀、つまり他社がまねしにくい強みとしては中程度である。切り替えは不可能ではなく、病院が購買を一本化すれば値下げ圧力を受ける。
実際、静脈留置針は2020年4月に、国が価格を決める特定保険医療材料から外れた。以降は病院との価格交渉になっている。
資本効率は弱い。ROEは6.4%で、10年間ほぼ6〜7%にとどまる。自己資本比率は88%、純現金は186億円。守りが固い反面、お金が働いていない。会社も、ROE8%を目標に「スリムな総資産」を掲げている。
経営は堅実だ。2023年度には発行済み株式の約11%、47億円の自社株買いに踏み切った。配当性向は48%まで高めた。
筆頭株主はナカジマコーポレーションで約37%を持つ。自社が約9%を持つので、市場に出回る株は少ない。長期の安定株主がいる点は強みだが、少数株主に現金が戻るかは、この株主の意向にも左右される。
弱点は、利益率の下降と、品目ごとの採算が見えないことだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
メディキットの3つの品目は、それぞれ別の需要で動く。
透析は、国内では縮む市場だ。日本透析医学会の調査では、2024年末の患者は33万7千人。3年連続の減少で、死亡が新規導入を上回った。糖尿病性腎症が原因の4割を占めるが、患者の高齢化で導入が減っている。一方で、欧州や中国など海外は伸びる余地がある。会社は欧州で透析針の販売を強める。
点滴の留置針は、国内が約1億3千万本の成熟市場だ。競合はテルモ、ニプロ、米国のBD、ドイツのB.ブラウンと強い会社が並ぶ。この中でメディキットは、安全針の新製品で米国の需要をつかんだ。国内で磨いた製品を海外へ広げる形である。
カテーテルによる血管内治療(インターベンション)は、低侵襲の治療が広がる成長市場だ。不整脈や脳血管の治療が伸びる。ただし、競争相手は世界の大手だ。メディキットは導入用のシースなどの周辺機器で入り込み、大きな治療機器そのものを持たない。
この分野で2022年に買収したBolt Medicalは、脳血管の治療を狙った事業だった。その後、米国の同名企業を大手のボストン・サイエンティフィックが2025年に買収した。メディキットとの関係は開示から確認できず、筆者は価値に入れなかった。
全体として、国内は縮み、海外とカテーテルが伸びる。その入れ替えが進むかが、10年を決める。
資本政策と M&A
還元は、安定配当を基本に増配を検討し、機会があれば自社株買いをするという方針だ。2026年3月期の配当性向は48.5%。2023年度には200万株の自社株買いを実施した。
資金計画の中心は設備投資だ。日向第二・第三工場の増設に50〜70億円を投じ、海外需要の増加に備えた。需要が先行する投資で、売上に結びつくかが問われる。償却が増えたため、営業利益は2期連続で減った。
M&Aは、2022年のBolt Medical(約35億円)が初めての買収だった。慎重に検討した結果と説明している。その後の展開が見えにくく、成果の評価は難しい。
現金は純額で186億円ある。必要な運転資金と設備投資をまかなっても、なお約140億円が余る、と筆者は見る。ただ、この現金は10年以上、150億〜190億円の間で動いていない。毎年の稼ぎは配当などで戻すが、積み上がった残高は動かない。そこで、余った現金の戻り方は半分とした。
会社自身は、自社の資本コストを4.5〜5.0%と見ている。それを根拠に、ROE8%を目指す。筆者は資本コストをより高く置くため、この目標は十分とは考えない。
大株主の動きで、買収や上場廃止の可能性は常にある。ただし、現時点でその兆候は見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
海外の需要は、想定を上回って伸びている。米国で売れる安全針「スーパーキャス」は前期に14%増え、会社は工場を増設して応えた。計画の海外年21%増が続けば、静脈留置針は10年で倍近くになる。
インターベンションも、単価の高い製品が揃ってきた。不整脈用のシースは販売が始まり、橈骨動脈用のシースはシェアを広げる。会社の年10%増の計画が続けば、この品目は3倍近くになり、利益率も2割に近づく。
透析は縮むと言われるが、欧州や中国の透析患者は増える。国内の減少を海外が埋め、売上は微増を保つ。安全機構つきの新製品「プロフレックス」も追い風だ。
資本政策も変わり得る。ROE8%の目標を掲げ、スリムな総資産を明言した会社だ。自社株買いを実績で示した。余った現金が戻れば、ROEは1割台に乗る。
営業利益率は新工場の償却が一巡して2割に戻る。株価は、現金と事業の両方で見直される。
そもそも需要の質が違う。針とカテーテルは、病院が使う分だけ売れる消耗品だ。景気や設備投資の波に左右されず、売上が毎年積み上がる。10年前から売上は一度も大きく崩れていない。営業利益率が下がったのは償却という一時的な費用が主因で、事業の稼ぐ力が壊れたわけではない。償却が終われば、利益は売上に追いついて伸びる。
慎重な見方
利益率が下がり続けている事実を、まず直視すべきだ。10年前の23%から、前期は18%まで落ちた。会社は2029年3月期に18%を目標とするが、これは「底打ち」であって「回復」ではない。工場増設で償却が膨らむ中、売上が計画に届かなければ、利益率はさらに下がる。
国内の透析は縮む一方だ。患者は3年連続で減り、死亡が導入を上回った。高齢化が進む限り、この流れは変わらない。針の値段も病院に決められ、2020年には保険の枠から外れた。
海外の伸びは、大手との競争で鈍りうる。留置針ではテルモ、ニプロ、BD、B.ブラウンが相手だ。米国では、価格の勝負を挑まれる。インターベンションは、世界の大手が圧倒的に強い分野だ。Bolt Medicalは、開発元を大手に取られた。
最後に、現金の問題がある。186億円を持ちながらROEは6%台だ。筆頭株主が37%を持つ構造では、少数株主への還元は限られる。残高は10年以上動いておらず、今後も戻らない可能性が高い。
割安に見えるのは、現金が動かないための割引と読むべきだ。
さらに、利益の伸びが計画どおりに進む保証もない。工場の増設は、需要が先行して見込まれる前提で行われた。売上が思うように伸びなければ、増えた固定費が営業利益をさらに圧迫する。会社は2期連続で営業減益となっており、この流れが続かない根拠は、まだ数字で示されていない。
どちらに重みを置いたか
現金の厚さと、海外・カテーテルの伸びを重く見た。ただ利益率の低下と、現金が動かない点は事実なので、中立を4割に置き、悲観を1割とした。やや楽観に2割強を置いたのは、海外の想定超えの伸びが実績で裏付けられているためだ。
10年の価値は今の時価総額を大きく上回る。理由は主に、事業の稼ぐ力が7〜8%の資本コストに比べ十分に高いことと、現金の半分が株主に届くとしてもなお厚いことだ。割安の幅は大きいが、利益率が下がり続ける場合に備えて、やや悲観にも2割を残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,235 円904 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,589 円230 億円)。 今の値に割り戻すと 4,303 円624 億円、今との差 +59.5%、 期待の年率 +11.2%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 12,226 円1,772 億円 | 2,222 円322 億円 | +435.5% | +18.3% | 1,156 円167 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,360 円1,356 億円 | 1,974 円286 億円 | +320.1% | +15.4% | 2,494 円361 億円 |
| 中立 | 40% | 6,360 円922 億円 | 1,636 円237 億円 | +196.3% | +11.5% | 3,198 円463 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,771 円401 億円 | 1,215 円176 億円 | +47.7% | +4.0% | 797 円115 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,000 円145 億円 | 801 円116 億円 | −33.3% | −4.0% | 180 円26 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,235 円904 億円 | 1,589 円230 億円 | +190.0% | +11.2% | 7,825 円1,134 億円 |
今の株価時価総額 2,698 円391 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 海外とカテーテルが計画を上回る 利益 87 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 12,226 円1,772 億円
米国で安全針の採用が広がり、静脈留置針の本数は10年で倍近くになる。増設した日向工場がフル稼働し、単価も物価並みに上がる。
透析は、国内の患者減少を欧州と中国が補い、本数は2割増える。インターベンションでは、不整脈用のシースが新しい柱になり、売上は3倍近くになる。
新工場の償却が一巡し、営業利益率は2割に戻る。自社株買いが続き、現金の一部が株主に戻って、ROEは1割台半ばに届く。
メディキットは、国内の針メーカーから、海外でも戦える医療機器の会社へ変わる。
この筋書きが成り立つ前提は三つある。米国の病院が安全針を標準にすること。欧州と中国で販売の認可と販路が予定どおり整うこと。そして、新工場が計画どおり立ち上がることだ。どれか一つが欠けると、伸びは中立に近づく。会社が公表した実績では、静脈留置針の米国向けは想定を上回るペースで拡大しており、最初の条件は進んでいる。
- 人工透析類:数量 7,800(出荷本数(万本、透析針換算))× 価格 0.02(1万本あたりの売上(億円))→ 売上 122 億円・営業利益 24 億円。欧州・中国で販売が伸び、国内の減少を補う
- 静脈留置針類:数量 10,450(出荷本数(万本))× 価格 0.02(1万本あたりの売上(億円))→ 売上 217 億円・営業利益 51 億円。米国で安全針の採用が広がり本数が倍近くに
- インターベンション類:数量 288(出荷個数(万個))× 価格 0.88(1万個あたりの売上(億円))→ 売上 252 億円・営業利益 45 億円。不整脈用シースと新製品が育ち、売上が3倍超に
倍率:事業の純利益 85 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)140 億円。全体の PER 19.21 倍、時価総額 1,772 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外と新製品が10年そろって計画を超える必要があり、条件が厳しいので8%に置いた。
やや楽観 22% 海外の伸びが国内の減少を補う 利益 69 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 9,360 円1,356 億円
静脈留置針は米国の伸びが続き、本数は6割以上増える。インターベンションは年10%の計画線を超えて伸び、売上は2倍に届く。
透析は、海外が国内の減少をやや上回り、本数は1割強増える。単価は物価に少し届かないが、安全針の比率が上がって下支えする。
営業利益率は19%台に乗り、償却の負担を海外の増収で吸収する。配当性向は5割台で、自社株買いも時折加わる。
会社の計画を、ほぼ達成する姿だ。
中立との違いは、海外の伸びの勢いと、新製品の立ち上がりの速さだけだ。国内の縮小という逆風は同じなので、上振れの幅は楽観ほど大きくはない。ただ、米国の実績が出ているため、この筋書きは単なる希望とは言えない。
- 人工透析類:数量 7,280(出荷本数(万本、透析針換算))× 価格 0.02(1万本あたりの売上(億円))→ 売上 110 億円・営業利益 21 億円。海外の伸びが国内の減少をやや上回る
- 静脈留置針類:数量 9,075(出荷本数(万本))× 価格 0.02(1万本あたりの売上(億円))→ 売上 184 億円・営業利益 41 億円。米国の拡大が計画線を上回る
- インターベンション類:数量 240(出荷個数(万個))× 価格 0.84(1万個あたりの売上(億円))→ 売上 203 億円・営業利益 32 億円。計画の年率10%を超えて伸びる
倍率:事業の純利益 67 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)140 億円。全体の PER 18.28 倍、時価総額 1,356 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米国の静脈留置針が実際に想定を上回って伸びており、その延長が続く筋書き。蓋然性は高く2割強に置いた。
中立 40% 利益率は1割台後半で成熟 利益 49 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 6,360 円922 億円
国内の透析は縮み続けるが、欧州と中国が補い、本数は微増にとどまる。単価は病院の交渉力で物価より低い伸びになる。
静脈留置針は米国の伸びと安全針への切り替えで、本数が4割増える。インターベンションは年7%台で伸び、売上は2倍強になる。
営業利益率は17%台半ばで落ち着く。会社の目標の18%には届かない。償却の負担は消えるが、品目の構成は価格の安い針に偏る。
配当性向は6割に近く、自社株買いもときどき行う。現金は積み上がらず、ROEは1割近くまで上がる。
中立では、会社の計画(2029年3月期に売上290億〜320億円)を達成後も、年5%前後の伸びが続くとみる。国内の縮小が重しになり、計画の上限には届かない。利益率は18%を超えないと置いた。計画の目標どおりに戻るが、それ以上は伸びない形だ。
- 人工透析類:数量 6,695(出荷本数(万本、透析針換算))× 価格 0.01(1万本あたりの売上(億円))→ 売上 97 億円・営業利益 17 億円。国内患者の減少を海外が埋め本数は微増
- 静脈留置針類:数量 7,700(出荷本数(万本))× 価格 0.02(1万本あたりの売上(億円))→ 売上 148 億円・営業利益 31 億円。米国の拡大と安全針への切り替えで本数が4割増
- インターベンション類:数量 192(出荷個数(万個))× 価格 0.81(1万個あたりの売上(億円))→ 売上 156 億円・営業利益 22 億円。年7%台の伸び、償却を吸収して利益率は1割台半ば
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)140 億円。全体の PER 16.58 倍、時価総額 922 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の縮小を海外とカテーテルが補い、利益率は計画の18%に近づく。最も蓋然性が高い筋書きで4割。
やや悲観 20% 大手との競争で伸びが鈍る 利益 27 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 2,771 円401 億円
米国の静脈留置針は、テルモ、BDなどの大手との競争で伸びが鈍る。本数は15%増にとどまり、単価も物価に追いつかない。
透析は、国内の患者減が速まり、病院の値下げ圧力が強まる。本数は1割近く減る。インターベンションは新製品の立ち上がりが遅れ、売上は2割増しにすぎない。
新工場の償却を吸収できず、営業利益率は13%台に下がる。ROEは資本コストを割る。配当は維持するが、自社株買いは止まる。
現金は動かず、株主の取り分は小さい。
この筋書きの核心は、海外の拡大が当初の期待ほど続かない点にある。国内の縮小に加え、新工場の償却が重くのしかかる。会社は2期連続で営業減益となっており、この筋書きは現実の延長線上にある。
- 人工透析類:数量 5,980(出荷本数(万本、透析針換算))× 価格 0.01(1万本あたりの売上(億円))→ 売上 79 億円・営業利益 12 億円。国内患者の減少が進み、病院の値下げ圧力も強い
- 静脈留置針類:数量 6,325(出荷本数(万本))× 価格 0.02(1万本あたりの売上(億円))→ 売上 112 億円・営業利益 19 億円。大手との競争で米国の伸びが鈍り単価も上がらない
- インターベンション類:数量 144(出荷個数(万個))× 価格 0.72(1万個あたりの売上(億円))→ 売上 104 億円・営業利益 8 億円。新製品の立ち上がりが遅れ償却負担が残る
倍率:事業のROE 5.4%はk 7%以下なので、正当化PERの上限は1÷k=13.8倍(ためた利益は額面未満)。この筋書きの稼ぐ力の弱さを反映して上限の8.0割の11.0倍に置いた。余った現金は戻り方0.5を掛けて足した。
確率:海外で大手に押され、新工場の償却を吸収できない筋書き。利益率が2期連続で下がっており、2割と厚めに置いた。
悲観 10% 構造的に負ける:患者減と大手の攻勢 利益 9 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 1,000 円145 億円
透析は患者が減り続け、病院の価格交渉で単価も下がる。静脈留置針は大手の安全針に押され、米国での足掛かりを失う。
インターベンションは、投資を回収できない。開発の遅れや競争で売上が伸びず、採算が合わない。
売上は今より小さくなり、営業利益率は6%に下がる。増設した工場は稼働率が落ち、固定費が重くのしかかる。
それでも無借金の財務と純現金が残り、倒産には至らない。ただし現金の使い道は少数株主に決められず、評価は現金の半分程度にとどまる。
構造的な負けの条件は、国内の縮小、海外の大手との競争、カテーテル投資の失敗が同時に起きることだ。確率は低いが、利益率が23%から18%へ下がってきた実績は、この方向に動く力が働いていることを示す。
- 人工透析類:数量 5,200(出荷本数(万本、透析針換算))× 価格 0.01(1万本あたりの売上(億円))→ 売上 63 億円・営業利益 6 億円。患者減と値下げで本数・単価とも下がる
- 静脈留置針類:数量 4,950(出荷本数(万本))× 価格 0.02(1万本あたりの売上(億円))→ 売上 76 億円・営業利益 8 億円。大手の安全針に押され、海外の足掛かりを失う
- インターベンション類:数量 108(出荷個数(万個))× 価格 0.63(1万個あたりの売上(億円))→ 売上 68 億円・営業利益 0 億円。投資が回収できず採算が取れない
倍率:悲観の純利益9億円はROE 1.6%で、ためた利益は額面未満の価値。稼ぐ力(純利益÷k)を超えない倍率として上限の7割の9.7倍に置いた。余った現金は半分に減らし、戻り方0.5で足した。
確率:透析針が縮み、静脈留置針でも大手に押され、カテーテルの投資を回収できない構造的な負け。現金が下値を支え、買収の可能性もあるため、1割に抑えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
人工透析類
透析用の留置針「ハッピーキャス」と、周辺品(フィルムドレッシングなど)。国内で首位級。
| 数量出荷本数(万本、透析針換算) | 価格1万本あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,500 | 0.01 | 78 | 15 |
| 10 年後 中立 | 6,695 | 0.01 | 97 | 17 |
取り方:本数は非開示。国内の透析患者33万7千人が年に約1億本の針を使い、そのうち約6割が当社と推定、海外分を加えて約6,500万本相当とした。売上を本数で割って単価を逆算した。営業利益は品目別の開示がなく、全社の利益42.7億円に合わせて19.3%と仮置きした。
静脈留置針類
点滴のために血管に残す針「スーパーキャス」と安全針。米国で伸びている。
| 数量出荷本数(万本) | 価格1万本あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,500 | 0.02 | 84 | 18 |
| 10 年後 中立 | 7,700 | 0.02 | 148 | 31 |
取り方:本数は非開示。国内の年間使用量は約1億3千万本、当社の国内シェアと輸出を合わせて約5,500万本相当とした。売上を本数で割って単価を逆算した。営業利益は仮置きで21.5%。
インターベンション類
カテーテルを血管に入れる導入用のシース、造影用カテーテル、不整脈治療用のシースなど。他社製品の販売も含む。
| 数量出荷個数(万個) | 価格1万個あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 0.63 | 75 | 10 |
| 10 年後 中立 | 192 | 0.81 | 156 | 22 |
取り方:個数は非開示。導入用シースやカテーテルの出荷を約120万個相当と推定し、売上を個数で割って単価を逆算した。他社製品の販売を含むため利益率は低めとみて12.7%と仮置きした。
リスクと懸念
利益率の低下が止まらない
営業利益率は10年前の23%から18%に下がった。新工場の償却が重く、2027年3月期の予想も営業利益は横ばいだ。海外の増収で吸収できなければ、会社の18%目標も届かない。
国内の透析患者の減少
2024年末の透析患者は33万7千人で、3年連続の減少だ。死亡が新規導入を上回った。透析針は国内の主力で、売上の3分の1を占める。縮小の速さが読みにくい。
病院の価格交渉
静脈留置針は2020年4月に特定保険医療材料から外れ、病院が価格を決める要素が増えた。購買の一本化が進めば、値下げ圧力が強まる。
海外の大手との競争
留置針ではテルモ、ニプロ、BD、B.ブラウンなどが相手だ。米国の需要を取り込んだが、大手が安全針で攻勢をかければ、伸びが鈍る。
インターベンションの投資回収
2022年に約35億円でBolt Medicalを買収したが、その後に同名の米国企業が大手に買収された。メディキットの取り分や成果は開示で確認できない。投資が実を結ばない可能性がある。
現金が株主に戻らない
純現金は186億円と時価総額の半分に近い。残高は10年以上150億〜190億円で動いていない。筆頭株主は約37%を持ち、少数株主への還元は限られる。
増設した工場の稼働
日向第二・第三工場の投資は50〜70億円。需要が先行する投資であり、海外の売上が伸びなければ、固定費が重荷になる。
今後の分かれ目
- 米国向けの静脈留置針が、2期連続で前年比10%超の増収を続ける
- 海外の成長が実証され、楽観側の確率を上げる。
- 営業利益率が2期連続で16%を下回る
- 償却の負担を吸収できていない証拠で、悲観側へ確率を寄せる。
- 自社株買いを新たに決議し、現金の一部を戻す
- 余った現金の戻り方が1.0に近づき、価値が上がる。
- 透析患者の減少が年1%を超えて加速する
- 国内透析針の縮小が速まり、透析品目の中立を引き下げる。
- 筆頭株主が株式の売却や買い増し、または非公開化の意向を示す
- 現金の戻り方や企業価値の見直しが一気に動く。
- 不整脈用シースの売上が、会社の年10%増の計画を上回る
- インターベンションの利益率が上がる根拠になる。
見ておくもの
- 米国向け静脈留置針の増収率
- 営業利益率(16%を割らないか)
- 日向第二・第三工場の稼働と償却
- 自社株買いの有無
- 日本の透析患者数(日本透析医学会)
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、3品目の数量×価格で10年後を積み上げ、余った現金140億円を除いた事業のROEとk 7%から正当化PERを決めた。中立は上限の8.5割で、利益率の低下傾向を織り込んだ。余った現金は戻り方0.5で足した。悲観は稼ぐ力を超えない倍率にした。10年後の数字は、リースを含めて今と同じ形で置いている。市場の倍率は根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.8→19.21 倍・やや楽観 PER 15→18.28 倍・中立 PER 13.5→16.58 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。