結論
サーモフィッシャー・サイエンティフィックは、製薬・バイオ・大学・病院の研究室に、機器(質量分析・電子顕微鏡・分析装置)、消耗品(培養液・試薬・使い捨て容器・ろ過材)、受託サービス(臨床試験の PPD・クラリオ、製薬工場の製造受託)を一括で売る世界最大のライフサイエンス機器会社である。2025 年は売上 446 億ドル(+4%、自然増 +2%)、GAAP の営業利益 84 億ドル(営業利益率 18.9%)、純利益 67 億ドル。2026 年は 4〜6 月期の売上が 120 億ドル(+10%、自然増 +5%)で、通期の売上予想を 474〜481 億ドルへ引き上げた。
事業の質は高い。売上の約 6 割を製薬・バイオに売り、そのうち消耗品とサービスは繰り返し使われる。ただし資本効率はさほど高くなく、ROE は 12.6% で、これはのれんの大きさ(PPD・クラリオ・ソルベンタムのろ過事業の買収)による。2026 年前半は 89 億ドルを買収に使い、現金は 99 億ドルから 41 億ドルへ、有利子負債は 425 億ドルに増えた。
市場 × シェア(価格は物価並みに 10 年 1.41 倍、残りが数量の伸び)で積み上げると、10 年後の中立は売上 838 億ドル・純利益 146 億ドルと今の 2.2 倍になる。資本コスト 7.75%・g 4%・ROE 15%(帳簿の値で、のれんを除かない)で、利益ベースの正当化 PER は 17.3 倍になる。その 8 割の 13.8 倍を置き、10 年後の時価総額は 2,019 億ドルと今(2,608 億ドル)の 0.8 倍。割り引くと今の 5 割強にとどまる。バリュー投資の観点では「優れた事業だが、割高」と結論する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後を問う。研究室と製薬工場がこの先 10 年も消耗品とサービスを必要とすることは確かで、事業が消える心配は小さい。堀は広がるというより、一括調達・切り替えの費用・事業システムで「当面は 2 強」の地位を保つ形で、これはダナハーも同じ。
オーナー利益を見る。2025 年の純利益 67 億ドルに対し FCF は 63 億ドル、株主のものになる利益は時価総額 2,608 億ドルの 2.4% で、5% の無リスク金利を大きく下回る。調整後の利益(のれんの償却を除く)で見ても 3.3% 程度で、この差は成長が戻ることへの前払いである。ROE 12.6% は、買収で買ったのれんが利益を薄めていることを示し、本業の資本効率はもっと高いが、株主にとっての収益率は買収の収益率で決まる。
安全域の観点では、中立の筋書きの 10 年後の時価総額(約 2,020 億ドル)は今の 0.8 倍で、資本コスト 7.75% で割り引くと今の 5 割強にとどまる。楽観なら 10 年後に約 3,400 億ドルで今の 1.3 倍になる。悲観とやや悲観の合計は 3 割ある。経営はキャスパー氏の下で資本配分は規律があるが、買収の回収が 10 年先の収益率で決まる。事業への確信は高く、値段への確信は持てない。
何で稼ぐ会社か
4 つの事業部で成り立つ。ライフサイエンス・ソリューション(2025 年 104 億ドル、利益率 36〜37%)は、バイオ医薬の製造向けの培養液・使い捨てのバイオリアクター・ろ過材(2025 年 9 月にソルベンタムの事業を 41 億ドルで取得)と、研究用の試薬・ゲノム解析の機器を扱う。最も利益率が高く、バイオ医薬の製造規模に連動する。分析機器(76 億ドル、利益率 22〜23%)は質量分析・クロマトグラフ・電子顕微鏡・化学分析で、製薬・半導体・環境・学術向け。2025 年は関税で利益率が押され、数量は横ばいだった。専門診断(約 46 億ドル、利益率 27%)は免疫診断・移植診断・微生物検査で、マイクロバイオロジー事業は 2026 年に売却が決まった。
最大のラボ製品・バイオ医薬サービス(約 220 億ドル、利益率 14%)は 3 つの顔を持つ。研究室向けの消耗品・小型機器の流通(フィッシャー・サイエンティフィック)、製薬の臨床試験を受託する PPD(2021 年に 174 億ドルで買収)と 2026 年 3 月に 88.8 億ドルで買収したクラリオ(臨床試験のエンドポイントのデータ)、製薬工場の製造受託(パテオン)である。利益率は低いが、顧客の試験・製造を一括で請け負うことで、機器・消耗品の販売と組み合わせて囲い込む。
顧客は製薬・バイオが売上の約 6 割、残りは病院・診断、産業・応用、学術・政府。2026 年 4〜6 月期の事業部別は、ライフサイエンス・ソリューション +13%(自然増 +3%)、分析機器 +7%、専門診断 +6%、ラボ製品・バイオ医薬サービス +12%。
優良さと弱いところ
堀は 3 つ。第 1 は規模の経済と一括調達で、研究室・製薬工場が必要とする数万点を 1 社で調達でき、顧客は発注先を減らせる。第 2 は切り替えの費用で、バイオ医薬の製造は規制当局へ届けた工程の中に消耗品が組み込まれており、使い捨ての部材を変えるには再承認が要る。第 3 は PPI という事業システムで、調達・製造・販売の費用を毎年削り、買収した会社の利益率を引き上げる。ダナハーとの 2 強で、分析機器はアジレント・テクノロジー、ウォーターズ、ブルカーなどの寡占、受託研究はアイキューヴィア(IQVIA)、アイコン、メディペイスなどの少数と争う。
資本効率は並である。ROE は 12.6%、営業利益率は GAAP で 18.9%、調整後で 22〜23%。2020〜21 年は検査需要で ROE が 19% 近くまで上がったが、その後は平常に戻った。買収で成長を買う経営で、PPD・パテオン・ソルベンタム・クラリオの買収総額は 250 億ドルを超える。買収の収益率が資本コスト(7.75%)をわずかに上回る程度なら、価値はほぼ増えない。
弱点は 3 つ。第 1 は景気と資金調達に左右される製薬・バイオの研究開発費、第 2 は NIH 予算と中国の学術・政府需要、第 3 は買収のたびに増えるのれんと有利子負債(2026 年 6 月末の有利子負債 425 億ドル、現金 41 億ドル)。経営はキャスパー氏の下で 2009 年以降一貫して買収と PPI を回しており、実行力は高い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ライフサイエンス機器・受託研究の市場は、サーモの試算で約 2,550 億ドル(2026 年 Investor Day)。製薬・バイオの研究開発費は世界で約 3,000 億ドルで、サーモの売上の 6 割がここに乗る。
循環でいえば、2021 年のコロナ需要の山のあと、2022〜23 年にバイオプロセスの在庫調整、2023〜25 年に NIH 予算・中国・金利の逆風で売上が横ばい(2023・2024 年は 429 億ドル、2025 年は自然増 +2%)が続き、2026 年に底から回復に入った局面にいる。2026 年 4〜6 月期は製薬・バイオが 1 桁半ばの伸び、受注が売上を上回り、中国は成長に戻り、学術・政府は 1 桁低い伸びで安定化した。会社は 2026〜27 年に 3〜6%、2028 年に 7% の自然増へ戻す道筋を示している。
構造の変化は 3 つ。1 つ目はバイオ医薬の製造能力の増設で、抗体医薬・GLP-1 などの新規工場(米国への生産回帰を含む)が培養液・使い捨て部材の需要を増やす。2 つ目は AI と自動化で、創薬の生産性が上がれば試験の件数が増える一方、受託研究の人手は減る。3 つ目は関税と米中の分断で、分析機器は 2025 年に関税で利益率が押された(関税等の逆風 約 3.75 億ドルを PPI で吸収)。
競争は、ダナハー(セパレーション・シテバ・ベックマン)がバイオプロセスで最大の相手で、アジレント・ウォーターズ・メトラー・トレド・ブルカーが分析機器、アイキューヴィア・アイコン・チャールズ・リバーが受託研究。分かれ目は、製薬・バイオの研究開発費、バイオプロダクションの受注残、NIH の資金、中国の売上である。
資本政策と M&A
還元は配当が小さく(2025 年 6 億ドル台)、自社株買いが中心。2025 年は 30 億ドル、2026 年上半期は 40 億ドル(4〜6 月期に 10 億ドル)を実施した。ただし 2026 年前半の買収が 89 億ドルで、現金は 99 億ドルから 41 億ドルへ減り、有利子負債は 425 億ドルに増えた(純有利子負債は時価総額比 15%)。FCF は上半期に 25 億ドル。
M&A はこの会社の中心の戦略。2021 年に PPD を 174 億ドル、2025 年 9 月にソルベンタムのろ過・分離事業を 41 億ドル、2026 年 3 月にクラリオを 88.8 億ドル(成果払い最大 4 億ドルを別に)で買収し、マイクロバイオロジー事業は 2026 年に売却が決まった。クラリオは売上の高い 1 桁成長と、5 年目に 1.75 億ドルの営業利益の相乗効果が見込まれるが、倍率は EBITDA の 13〜14 倍で、買収の収益率は資本コスト近辺とみる。
今後の鍵は、大型の買収を続けるか自社株買いへ配分を移すか、買収した事業の収益率が資本コストを超えるか、金利負担(有利子負債 425 億ドル)を FCF で減らせるかである。借り換えの金利は約 5.75% に上がり、利払いの増加(税後で数年後に年 約 2 億ドル・10 年後に約 4 億ドル)を純利益に入れた。サーモが買われる側になる可能性は時価総額 2,600 億ドルで現実的でない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
製薬・バイオの研究開発費が回復に入り、2026 年 4〜6 月期の製薬・バイオは 1 桁半ばの伸び、受注が売上を上回り、バイオプロダクションは 2 桁の伸びが続いている。学術・政府は 2027 年に戻り、中国は 2026 年 4〜6 月期に成長へ戻った。GLP-1 と抗体医薬の製造能力の新設、米国への生産回帰が重なり、使い捨ての部材と培養液の使用量が増える。2026 年の通期予想は 7 月に引き上げられた(売上 474〜481 億ドル)。
会社の目標は 2028 年に自然増 7%、調整後の利益は年 +10% 台前半で、営業利益率は年 0.4〜0.5 ポイント上がる。クラリオ(臨床試験のデータ)の追加で、研究の初期から承認後まで一括で請け負う力が強まり、AI の導入で費用が下がる。サーモは景気後退でも製薬の消耗品とサービスの売上が 2008 年で小さく落ちただけで、下がっても戻りが早い。自社株買いで 1 株の利益が年 +10% 台で増え、今の PER 39 倍は、成長が戻る 2027〜28 年の利益で割れば 25 倍台に下がる。
慎重な見方
今の PER 39 倍・PBR 4.9 倍は、2008 年の景気後退後の PER 15 倍や、20 期の中央値 31 倍からも高い。成長が戻る前提を先に織り込んでいる。ROE は 12.6% にすぎず、買収で買ったのれんが利益を薄めている。2026 年前半だけで 89 億ドルを買収に使い、有利子負債は 425 億ドルに増え、金利が 5% の世界では負担が重い。クラリオの買収倍率は EBITDA の 13〜14 倍で、収益率は資本コストを超えない可能性がある。
学術・政府は NIH の予算に左右されて 2027 年の回復は確約されず、中国は国産化が進む。分析機器は 2025 年に関税で利益率が押され、自然増は 0%。バイオプロダクションの 2 桁成長は、2021〜22 年のように過剰在庫で反転する前歴がある。ライフサイエンス・ソリューションの自然増は 2026 年 4〜6 月期でも +3% にとどまる。会社が示す高成長の目標は 2022 年にも示され、2023〜25 年は実績が 0〜3% にとどまった。成長が計画どおりでも、成熟後の倍率は今の 39 倍から 16 倍前後へ縮み、割り引けば今の時価総額の 6 割にとどまる。
どちらに重みを置いたか
事業の回復は強気の見方が強く、確率は中立に最大を置いたうえで、楽観側にやや寄せた(10 年の楽観・やや楽観の合計 37%)。値段の議論は慎重な見方が勝つ。10 年の中立でも、割り引くと今の値段の 5 割強にとどまる。中立 35%、悲観は 10%、やや悲観は 18% とした。結論は「優れた事業だが、割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 547.40 ドル2,069 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 160.24 ドル606 億ドル)。 今の値に割り戻すと 369.82 ドル1,398 億ドル、今との差 −45.3%、 期待の年率 +0.5%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 898.84 ドル3,398 億ドル | 201.06 ドル760 億ドル | +62.6% | +5.0% | 131.99 ドル499 億ドル |
| やや楽観 | 25% | 701.16 ドル2,650 億ドル | 182.54 ドル690 億ドル | +30.6% | +2.7% | 220.93 ドル835 億ドル |
| 中立 | 35% | 534.18 ドル2,019 億ドル | 164.02 ドル620 億ドル | +3.2% | +0.3% | 244.37 ドル924 億ドル |
| やや悲観 | 18% | 330.34 ドル1,249 億ドル | 132.28 ドル500 億ドル | −31.6% | −3.7% | 83.27 ドル315 億ドル |
| 悲観 | 10% | 178.25 ドル674 億ドル | 92.59 ドル350 億ドル | −60.0% | −8.7% | 27.08 ドル102 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 547.40 ドル2,069 億ドル | 160.24 ドル606 億ドル | +4.6% | +0.5% | 707.64 ドル2,675 億ドル |
今の株価時価総額 676.54 ドル2,557 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 12% 楽観:バイオ医薬の製造基盤と臨床データの一括提供で、10 年間自然増 7〜8% 利益 202 億ドル · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 898.84 ドル3,398 億ドル
2035 年の売上は 994 億ドル(2025 年の 2.2 倍、年 +8.3%)。ライフサイエンス・ソリューションは 295 億ドル(バイオ医薬の製造・細胞遺伝子治療・GLP-1 関連の需要が続く)、分析機器は 135 億ドル、専門診断は 89 億ドル、ラボ製品・バイオ医薬サービスは 475 億ドル(クラリオと PPD で臨床試験の設計・運営・データを一括で請け負う形が定着し、シェアが 21% へ)。PPI と AI・自動化による費用削減で調整後営業利益率は 27% 近く、GAAP でも 24.8%。純利益は 202 億ドル(2025 年の 3.1 倍)。成長が落ち着いた後の PER は、利益ベースの正当化 PER 18.7 倍(ROE 18.9%・RONIC 13.3%)の 9 割、16.8 倍。
- ライフサイエンス・ソリューション:数量 1,686(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 17.5%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 295 億ドル・営業利益 118 億ドル。市場=数量 1.84 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 17.5%
- 分析機器:数量 769(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 17.5%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 135 億ドル・営業利益 36 億ドル。市場=数量 1.21 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 17.5%
- 専門診断:数量 590(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 15.0%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 89 億ドル・営業利益 27 億ドル。市場=数量 1.39 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 15.0%
- ラボ製品・バイオ医薬サービス:数量 2,262(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 21.0%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 475 億ドル・営業利益 86 億ドル。市場=数量 1.40 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 21.0%
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 18.9%(この筋書きの純利益 202.0 ÷ 自己資本 1066 億ドル。帳簿の自己資本で測った値。のれんを除かない)は先で薄れ、RONIC = k 7.75%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 13.3%(堀は普通:消耗品・装置・受託を束ねる規模と、規制に届けた工程の切り替えにくさは強いが、買収で積んだのれん(約 550 億ドル)で ROE は k 付近にとどまり、強い堀(2/3)とは見ない)。g は 4.0%(上限の 4% で止める。内訳の目安:市場の実質 年 3〜4% × シェア横ばい × 価格 3.5%)。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 18.7 倍 に対し、90% の 16.8 倍に置いた(事業の幅と消耗品の収入の質は高く、バイオ医薬の回復で伸びるが、のれんで ROE が低く、研究予算の循環に振れる)。時価総額 = 純利益 202.0 億ドル × 16.8 倍 = 3397.6 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:10 年間、バイオ医薬の製造設備への投資が年 +10% で続き、ラボ製品・サービスの規模の力が増す展開。会社の長期目標(自然増 7%)をやや上回るので 12%。
やや楽観 25% やや楽観:自然増 6.5〜7%、利益率は年 0.3 ポイント改善 利益 173 億ドル · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 701.16 ドル2,650 億ドル
2035 年の売上は 913 億ドル(年 +7.4%)。ライフサイエンス・ソリューションは 262 億ドル、分析機器は 125 億ドル、専門診断は 83 億ドル、ラボ製品・バイオ医薬サービスは 442 億ドル。調整後営業利益率は 25.9%(2026 年の 22.7% から年 0.35 ポイント改善)、GAAP は 23.6%。クラリオの相乗効果は 2031 年までに営業利益 1.75 億ドルを積み、PPD の受注は臨床試験の件数が年 +5% で伸びて安定する。純利益は 173 億ドル。10 年後の成熟した倍率として、成長が 1 桁後半から 5% 台へ落ち着く局面で、正当化 PER 18.1 倍の 8.5 割、15.3 倍。
- ライフサイエンス・ソリューション:数量 1,539(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 17.0%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 262 億ドル・営業利益 102 億ドル。市場=数量 1.68 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 17.0%
- 分析機器:数量 733(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 17.0%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 125 億ドル・営業利益 33 億ドル。市場=数量 1.16 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 17.0%
- 専門診断:数量 563(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 14.8%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 83 億ドル・営業利益 25 億ドル。市場=数量 1.33 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 14.8%
- ラボ製品・バイオ医薬サービス:数量 2,159(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 20.5%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 443 億ドル・営業利益 77 億ドル。市場=数量 1.33 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 20.5%
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 17.0%(この筋書きの純利益 173.0 ÷ 自己資本 1015 億ドル。帳簿の自己資本で測った値。のれんを除かない)は先で薄れ、RONIC = k 7.75%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 12.4%(堀は普通:消耗品・装置・受託を束ねる規模と、規制に届けた工程の切り替えにくさは強いが、買収で積んだのれん(約 550 億ドル)で ROE は k 付近にとどまり、強い堀(2/3)とは見ない)。g は 4.0%(上限の 4% で止める。内訳の目安:市場の実質 年 3〜4% × シェア横ばい × 価格 3.5%)。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 18.1 倍 に対し、85% の 15.3 倍に置いた(事業の幅と消耗品の収入の質は高いが、のれんで ROE が低く、研究予算の循環に振れる)。時価総額 = 純利益 173.0 億ドル × 15.3 倍 = 2650.4 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:業界の成長が年 +6〜9% で続き、サーモがシェアをやや伸ばす展開。Investor Day の長期目標(自然増 7%)に近い。
中立 35% 中立:自然増 6〜6.5%、売上は 2025 年の 1.9 倍。成熟した高品質の機器・サービス会社として評価 利益 146 億ドル · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 534.18 ドル2,019 億ドル
2035 年の売上は 839 億ドル(年 +6.5%)。ライフサイエンス・ソリューションは 231 億ドル(年 +8% を 10 年平均で)、分析機器は 117 億ドル(年 +4.5%)、専門診断は 78 億ドル、ラボ製品・バイオ医薬サービスは 412 億ドル(年 +6%、クラリオの相乗効果と PPD の受注)。調整後営業利益率は 24.9%(年 0.2 ポイント改善)、GAAP は 22.2%。純利益は 146 億ドルと 2025 年の 2.2 倍、年 +8.1%(利益率の改善による。借金は返していくが、借り換えの金利が約 5.75% に上がるので利払いは大きくは減らない)。自社株買いと配当で 10 年に 620 億ドルを正味で還元する(残りは買収に回る)。成熟後の PER は、利益ベースの正当化 PER 17.3 倍(ROE 15.1%・RONIC 11.4%・g 4%・k 7.75%)の 8 割、13.8 倍。
- ライフサイエンス・ソリューション:数量 1,403(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 16.5%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 232 億ドル・営業利益 88 億ドル。市場=数量 1.53 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 16.5%
- 分析機器:数量 699(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 16.8%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 117 億ドル・営業利益 30 億ドル。市場=数量 1.10 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 16.8%
- 専門診断:数量 537(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 14.5%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 78 億ドル・営業利益 23 億ドル。市場=数量 1.27 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 14.5%
- ラボ製品・バイオ医薬サービス:数量 2,059(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 20.0%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 412 億ドル・営業利益 68 億ドル。市場=数量 1.27 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 20.0%
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 15.1%(この筋書きの純利益 146.0 ÷ 自己資本 968 億ドル。帳簿の自己資本で測った値。のれんを除かない)は先で薄れ、RONIC = k 7.75%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 11.4%(堀は普通:消耗品・装置・受託を束ねる規模と、規制に届けた工程の切り替えにくさは強いが、買収で積んだのれん(約 550 億ドル)で ROE は k 付近にとどまり、強い堀(2/3)とは見ない)。g は 4.0%(上限の 4% で止める。内訳の目安:市場の実質 年 3〜4% × シェア横ばい × 価格 3.5%)。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 17.3 倍 に対し、80% の 13.8 倍に置いた(事業の幅と消耗品の収入の質は高いが、のれんで ROE が低く、バイオ医薬と研究予算の循環に振れる。業種共通の物差しどおり)。時価総額 = 純利益 146.0 億ドル × 13.8 倍 = 2019.2 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:議論の落としどころ。業界ノートの中立(業界全体で年 +6%)に沿い、会社の長期目標(7%)の下側を使う。M&A は価値中立(買収の収益率 ≒ 資本コスト)とし、利益には入れても倍率には入れない。市場の伸びは名目で、価格は物価 3.5%(10 年で 1.41 倍)に対し年 +2.5%(1.28 倍)にとどまる前提で、大口契約・競合・技術進歩による実質の値下がりを見込む。
やや悲観 18% やや悲観:自然増 4〜5%。学術・政府と中国が重く、価格競争で利益率は上がらない 利益 106 億ドル · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 330.34 ドル1,249 億ドル
2035 年の売上は 721 億ドル(年 +4.9%)。ライフサイエンス・ソリューションは 195 億ドル、分析機器は 104 億ドル、専門診断は 67 億ドル、ラボ製品・バイオ医薬サービスは 356 億ドル。調整後営業利益率は 23.3% で伸びず、GAAP は 20.3%。買収を重ねて成長を補おうとするが、収益率は資本コストに届かず、のれんの償却と金利負担が重い。純利益は 106 億ドル。10 年のうち後半は、成長の鈍さを買収で補う姿勢が続くものの、買収の対象は高い倍率になり、収益率の改善は小さい。自社株買いを維持しても有利子負債が重く、正味の還元は 500 億ドルにとどまる。PER は成長の鈍化を入れても、正当化 PER の上限 15.7 倍(ROE 11.7%)の 7.5 割、11.8 倍。
- ライフサイエンス・ソリューション:数量 1,220(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 16.0%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 195 億ドル・営業利益 71 億ドル。市場=数量 1.33 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 16.0%
- 分析機器:数量 635(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 16.3%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 103 億ドル・営業利益 24 億ドル。市場=数量 1.00 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 16.3%
- 専門診断:数量 489(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 13.8%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 67 億ドル・営業利益 19 億ドル。市場=数量 1.16 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 13.8%
- ラボ製品・バイオ医薬サービス:数量 1,873(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 19.0%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 356 億ドル・営業利益 54 億ドル。市場=数量 1.16 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 19.0%
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 11.7%(この筋書きの純利益 106.0 ÷ 自己資本 904 億ドル。帳簿の自己資本で測った値。のれんを除かない)は先で薄れ、RONIC = k 7.75%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 9.7%(堀は普通:消耗品・装置・受託を束ねる規模と、規制に届けた工程の切り替えにくさは強いが、買収で積んだのれん(約 550 億ドル)で ROE は k 付近にとどまり、強い堀(2/3)とは見ない)。g は 4.0%(上限の 4% で止める。内訳の目安:市場の実質 年 3〜4% × シェア横ばい × 価格 3.5%)。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 15.7 倍 に対し、75% の 11.8 倍に置いた(事業の幅と消耗品の収入の質は高いが、のれんで ROE が低く、バイオ医薬と研究予算の循環に振れる。中立より低く置く)。時価総額 = 純利益 106.0 億ドル × 11.8 倍 = 1248.7 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:NIH の恒常的な縮小・中国の国産化・米中の関税が長引き、ライフサイエンス・ソリューションの数量の伸びが年 +6.5% に落ち、受託研究の価格競争も厳しくなる展開。2023〜25 年の実績に近い停滞が続く姿。
悲観 10% 悲観:構造的に負ける(中国・国産化・連続生産・価格競争) 利益 55 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 178.25 ドル674 億ドル
2035 年の売上は 565 億ドル(年 +2.4%)。ライフサイエンス・ソリューションは 140 億ドル、分析機器は 86 億ドル、専門診断は 55 億ドル、ラボ製品・バイオ医薬サービスは 284 億ドル。調整後営業利益率は 20.1% へ下がり、GAAP は 15.7%。のれんの減損と金利負担(借り換えで約 5.75%)で純利益は 55 億ドルにとどまる。ダナハーや中国勢との価格競争でバイオプロセスの利益率は 33% 台へ下がり、受託研究も人手を AI で減らした競合に価格を引き下げられる。買収したクラリオとパテオン・ソルベンタム事業の一部は計画に届かない。自社株買いも金利負担で絞られ、10 年の正味の還元は 350 億ドル。優良企業ではなく普通の機器・サービス会社として、この筋書きの ROE 8.6% の上限(13.6 倍)の 9 割の 12.2 倍に置いた(減損後の自己資本 640 億ドルの約 1.1 倍)。
- ライフサイエンス・ソリューション:数量 962(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 14.5%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 140 億ドル・営業利益 46 億ドル。市場=数量 1.05 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 14.5%
- 分析機器:数量 576(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 15.0%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 86 億ドル・営業利益 17 億ドル。市場=数量 0.91 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 15.0%
- 専門診断:数量 423(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 13.0%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 55 億ドル・営業利益 13 億ドル。市場=数量 1.00 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 13.0%
- ラボ製品・バイオ医薬サービス:数量 1,622(該当する市場の規模(億ドル))× 価格 17.5%(シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格)→ 売上 284 億ドル・営業利益 37 億ドル。市場=数量 1.00 倍 × 価格 1.41 倍・シェア 17.5%
倍率:利益ベースの正当化 PER(SCHEMA §1-1)。事業の ROE 8.6%(この筋書きの純利益 55.0 ÷ 自己資本 640 億ドル。帳簿の自己資本で測った値。のれんを除かない)は先で薄れ、RONIC = k 7.75%(基本 8.0% + quality -0.2%)+ 1/2 ×(ROE − k)= 8.2%(堀は普通:消耗品・装置・受託を束ねる規模と、規制に届けた工程の切り替えにくさは強いが、買収で積んだのれん(約 550 億ドル)で ROE は k 付近にとどまり、強い堀(2/3)とは見ない)。g は 4.0%(上限の 4% で止める。内訳の目安:市場の実質 年 3〜4% × シェア横ばい × 価格 3.5%)。 正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g) = 13.6 倍 に対し、90% の 12.2 倍に置いた(構造的に負けた会社:のれんの減損と価格競争で ROE が下がる。式の上限の 9 割に置き、稼ぐ力(純利益 ÷ k)を超えない)。時価総額 = 純利益 55.0 億ドル × 12.2 倍 = 673.8 億ドル。純利益は GAAP(株式報酬は費用)。
確率:10 年の間に、バイオ医薬の製造が連続生産などで消耗品の使用量を減らし、中国の国産化と米中の関税で売上の一部を失い、NIH も恒常的に縮小し、買収に失敗してのれんの減損が出る。「優良」の地位を失う展開。確率は 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ライフサイエンス・ソリューション
バイオ医薬の製造向け(培養液・使い捨て部材・ろ過材)と研究用試薬・ゲノム解析。最も利益率が高い。
| 数量該当する市場の規模(億ドル) | 価格シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 650 | 16.0% | 104 | 38 |
| 10 年後 中立 | 1,403 | 16.5% | 232 | 88 |
取り方:2025 年のセグメント売上 103.7 億ドルを、Investor Day の市場 2,550 億ドルのうち推計 650 億ドルで割った約 16% のシェア。調整後営業利益率は約 37%。市場の分け方は自前の推計。 市場は名目の金額で、価格は物価並み(3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍)とし、残りを数量(検査・実験・製造の量)の伸びとした。競合はダナハー(Danaher)のシテバ、メルク(Merck KGaA)のミリポアシグマ、ザルトリウス(Sartorius)で、培養液・使い捨て部材は上位 4 社の寡占。
分析機器
質量分析・クロマトグラフ・電子顕微鏡・化学分析。製薬・半導体・環境・学術向けで、関税の影響を受ける。
| 数量該当する市場の規模(億ドル) | 価格シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 450 | 16.8% | 76 | 17 |
| 10 年後 中立 | 699 | 16.8% | 117 | 30 |
取り方:2025 年のセグメント売上 75.5 億ドル(自然増 0%)÷ 推計市場 450 億ドル。調整後営業利益率は約 22%。 市場は名目の金額で、価格は物価並み(3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍)とし、残りを数量(検査・実験・製造の量)の伸びとした。競合はアジレント(Agilent)、ウォーターズ(Waters)、島津製作所、ブルカー(Bruker)。電子顕微鏡では首位。
専門診断
免疫診断・移植診断・微生物検査(マイクロバイオロジー事業は売却が決まった)。
| 数量該当する市場の規模(億ドル) | 価格シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 300 | 15.3% | 46 | 13 |
| 10 年後 中立 | 537 | 14.5% | 78 | 23 |
取り方:2025 年のセグメント売上は通期の開示が確認できず、2026 年上半期の実績(23.5 億ドル)から逆算した推定 約 46 億ドル。÷ 推計市場 300 億ドル。 市場は名目の金額で、価格は物価並み(3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍)とし、残りを数量(検査・実験・製造の量)の伸びとした。競合はロシュ(Roche)、アボット(Abbott)、ビオメリュー(bioMérieux)、ダナハーのベックマン。アレルギー・自己免疫の検査では首位級。
ラボ製品・バイオ医薬サービス
研究室向けの消耗品の流通、臨床試験の受託(PPD・クラリオ)、製薬の製造受託。利益率は低いが規模が最大。
| 数量該当する市場の規模(億ドル) | 価格シェア(売上 ÷ 市場規模)。市場は名目=数量 × 価格 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,150 | 19.2% | 220 | 32 |
| 10 年後 中立 | 2,059 | 20.0% | 412 | 68 |
取り方:全社売上 445.6 億ドルから他 3 事業部の売上を引いた 約 220 億ドル(セグメント間取引を除いた推定)÷ 推計市場 1,150 億ドル。調整後営業利益率は約 14.6%。 市場は名目の金額で、価格は物価並み(3 年 1.11 倍・10 年 1.41 倍)とし、残りを数量(検査・実験・製造の量)の伸びとした。競合は、ラボ用品の流通でアバンター(Avantor)、臨床試験の受託でアイキューヴィア(IQVIA)・アイコン(ICON)、製造受託でロンザ(Lonza)・サムスンバイオロジクス。
リスクと懸念
製薬・バイオの研究開発費と資金調達
売上の約 6 割が製薬・バイオで、バイオ企業の資金調達は 2〜3 四半期遅れて売上に出る。2022〜23 年のバイオプロセスの在庫調整のように、投資が止まると数量が 10% 以上落ち、消耗品の使用量が減る。景気後退で製薬が研究を抑えれば、売上と利益率が同時に下がる。
NIH・学術・政府と中国
学術・政府は NIH の予算が不確実で 1 桁低い伸びにとどまり、会社は 2027 年の回復を見込む。予算の恒常的な縮小が起きれば分析機器と研究用試薬が落ちる。中国は 2026 年 4〜6 月期に成長へ戻ったが、国産化と学術・政府の予算で戻りが細る恐れがある。
買収の回収と有利子負債
2026 年前半に 89 億ドルを買収に使い(クラリオ 88.8 億ドルなど)、有利子負債は 425 億ドルに増えた。クラリオの買収倍率は EBITDA の 13〜14 倍で、収益率が資本コストを超えなければ価値は増えない。金利 5% の世界では、利払いが利益の伸びを抑える。
関税とサプライチェーン
分析機器は 2025 年に関税で利益率が押され、会社は関税等の逆風 約 3.75 億ドルを事業システムで吸収する構え。関税率の引き上げ・輸出規制・為替の変動で、価格転嫁が間に合わなければ利益率の改善(年 0.4〜0.5 ポイント)が止まる。
バイオプロダクションの在庫調整の再来
ライフサイエンス・ソリューションの 2026 年 4〜6 月期の自然増は +3%(買収を除く)で、バイオプロダクションは好調でもほかが重い。2021〜22 年にコロナ関連で積み上がった在庫が反転した前歴がある。連続生産への技術変化で消耗品の使用量が減れば、長期の数量が下がる。
倍率の縮み
今の PER 39 倍は成長が戻ることを先取りしている。2008 年の景気後退後は PER 15 倍まで下がった。成長が会社の目標どおり(自然増 7%)でも、成熟後の倍率は 16 倍前後へ縮み、時価総額が伸びない。
受託研究(PPD・クラリオ)の価格競争
臨床試験の受託はアイキューヴィア・アイコン・メディペイスなどとの競争で、バイオ企業の資金難で案件が減ると価格競争が強まる。サーモの PPD は規模があるが、ラボ製品・バイオ医薬サービスの利益率は 14% と低く、数%の価格低下が利益に直撃する。
今後の分かれ目
- 製薬・バイオの研究開発費が 2027 年に年 +8% 以上で伸び、バイオプロダクションの受注が売上を上回り続けたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げ、自然増 7% の道筋が現実になる。10 年の確率を楽観側へ 5〜10 ポイント動かす。
- NIH の予算が恒常的に縮小し、学術・政府の売上が 2 年続けて減ったら
- 分析機器と研究用試薬が落ち、やや悲観の確率を上げる。利益率は 1〜2 ポイント下がる。
- クラリオの売上成長が高い 1 桁を下回り、相乗効果(5 年目の営業利益 1.75 億ドル)が遅れたら
- 買収の収益率が資本コストを下回り、価値が増えない。倍率を 1〜2 倍下げる。
- 関税や輸出規制が強化され、分析機器の利益率が 3 ポイント以上下がったら
- 調整後営業利益率の改善が止まり、中立の純利益が 1 割下がる。やや悲観へ確率を動かす。
- 連続生産などの技術変化で、バイオ医薬の製造向け消耗品の使用量が減り始めたら
- ライフサイエンス・ソリューションの数量の伸びが落ちる。悲観の確率を上げ、倍率を下げて見る。
- 自社株買いを大型買収より優先する方針に変えたら
- 正味の還元が増え、買収の価値を壊すリスクが減る。倍率を 1〜2 倍上げてよい。
見ておくもの
- 製薬・バイオ・学術政府・中国別の自然増(四半期)
- バイオプロダクションの受注と受注残
- クラリオの売上成長と相乗効果の進み
- NIH 予算と学術・政府の売上
- 自社株買いと有利子負債・金利負担
- 調整後営業利益率の改善幅(年 0.4〜0.5 ポイント)
- マイクロバイオロジー事業の売却条件
倍率と資本コストの決め方
今の PER 39 倍・時価総額 2,608 億ドルを見る前に、4 つの事業部の市場規模 × シェアで 10 年後の売上と利益を積み、利益率・還元を置いてから倍率を決めた。倍率は利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)、g は 4% で止める、k は基本 8.0% に quality −0.25% で 7.75%)の 7.5〜9 割で、ROE は帳簿の値でのれんを除かない(成長の一部を買収で買う会社)。10 年の中立は上限 17.3 倍の 8 割、13.8 倍。悲観は上限の 9 割に置き、稼ぐ力(純利益 ÷ k)を超えない。今の倍率(39 倍)には寄せていない。結論は「やや割高」から「割高」に変わったが、計算の結果で、最後に今の値段と比べた。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 5% + β 0.90 × 5%。基本 8.0% に quality −0.25% を足して 7.75%。売上の約 8 割が消耗品とサービスで、物価についていける事業なので 8% を少し下回る水準が妥当。買収で有利子負債は増えたが、FCF で返せる範囲。研究開発費の循環と買収依存の不確かさは k に足さず、確率(悲観・やや悲観の合計 10 年 28%)で表した。存続は危うくないので上乗せ 0。