結論
ヴィシ・プロパティーズ(VICI Properties)は、カジノ・リゾートの土地と建物を所有し、シーザーズ(Caesars)、MGM リゾーツ(MGM Resorts)、ベネチアン(Venetian)などの運営会社に 15〜30 年の長期契約で貸す最大手の REIT である。賃料は借り手の売上ではなく契約で決まり、年 2%以上か物価連動で上がる。2026 年の AFFO(配当の元手になる現金利益)は 26.8 億ドル前後で前年比 約 6%増、配当は約 19.6 億ドル(AFFO の約 73%)。株式報酬や借金の発行費用の償却など、会社が足し戻している分を引いたオーナー利益は約 25.8 億ドル。
堀は、代わりの利かない立地(ラスベガスのストリップの大型施設、州の免許が要る地方カジノ)と、賃料を払えないとカジノの運営権を失う契約構造にある。コロナの 2020 年も賃料は払われ、株価の下げは −37%にとどまった。弱点は借り手の集中で、シーザーズ関連が収入の 3〜4 割、MGM 関連が約 4 分の 1。シーザーズの地方カジノの賃料カバー(現金収益 ÷ 賃料)は約 1.0 倍と薄く、2026 年 5 月にフェルティッタ(Fertitta)が 176 億ドルでシーザーズの買収を発表したこともあり、賃料の減額が噂されている。
バリュー投資の観点では、今の時価総額 251 億ドルはオーナー利益の約 9.7 倍(利回り 10.3%)で、借金の調達費用 5.75%を大きく上回り、減額の懸念を厚く織り込んだ値段とみる。地方リース賃料の 8%ほどの減額と上げ幅の緩和を中立に入れても、オーナー利益は 10 年後に約 36 億ドルとなり、資本コスト 8.0%(基本 8% + quality 0%)の式どおりの倍率(約 12.7 倍)をかけると、10 年後の中立は今の時価総額を大きく上回る。確率で加重した価値は今を 22% ほど上回り、「やや割安」とみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後もあるかを問う。ゲーミング施設が使われ続ける限り、答えはある。堀は、契約の構造と立地の希少さで、広がりも縮みもせず安定している。賃料が物価に完全には追いつかず、実質で毎年 0.5%ほど目減りする点が静かな弱点である。
オーナー利益は、AFFO 約 26.8 億ドルから株式報酬や借金の発行費用の償却の足し戻し分(約 1 億ドル)を引いた約 25.8 億ドル。維持の設備投資を借り手が負担するネットリースなので、減価償却を戻した後も引く設備投資はほぼない。GAAP の純利益(2025 年は 27.8 億ドル)は、現金で入らない会計上のリース収益(5.2 億ドル)を含むので、株主の利益としては使わない。配当 19.6 億ドルを除く約 7 億ドルが再投資に回り、取得の利回り 7〜7.5%で運用される。資本配分は、借金を使いすぎないことと、安い株を新株で出して取得しないことが肝で、今はその規律が守られている。ただしローン投資が急増し、CECL の引当が 19 億ドルと大きい点は注意する。
安全域は、オーナー利益の利回り約 10.3%が借金の調達費用 5.75%を約 5 ポイント上回ること。シーザーズ地方賃料が 35%落ちても AFFO の約 1 割減にとどまる。わからないのは借り手の信用で、確信度は中程度とし、悲観の確率を厚めに置いた。
何で稼ぐ会社か
収益は、カジノ・リゾートの建物と土地を運営会社に貸して得る賃料である。契約は固定資産税・保険・修繕を借り手が負担するネットリースで、期間は 15〜30 年、更新の選択権が付く。賃料の上げは、シーザーズの地方・ラスベガスのリースが「年 2%か物価の高い方」、ベネチアンが「2%か物価、上限 3%」、2026 年に取得したゴールデン・エンターテインメント(Golden Entertainment)の 7 施設は 30 年契約で初年度賃料 0.87 億ドル、3 年目から年 2%。借り手は、シーザーズ関連(収入の 3〜4 割。地方リース年約 7.3 億ドル、ラスベガスのリース年約 5.1 億ドル)、MGM 関連(約 25%。MGM グランド・マンダレイ・ベイなど)、ベネチアン(約 7%)が中心で、大型のストリップ施設が収入の 4〜5 割を占める。
数量は賃貸している資産の規模(取得価額換算で約 525 億ドルと推定)、価格はその資産への年間賃料の利回り(約 7.05%)と置いた。利回りは契約の上げ幅の積み重ねで毎年少しずつ上がる。賃料のほかに、ローン・優先株の投資(残高 29.2 億ドル、年初は 25.3 億ドル)と、ゴルフ(カボット(Cabot))・ボウリング・フィットネスなど体験型資産の賃料がある。ローンは借り手の開発資金などを貸して利息を得るもので、将来の物件取得の権利に結びつくことが多い。
成長の手段は 3 つ。第 1 に契約の上げ幅(加重平均で年約 3%と推定)。第 2 に新規の物件取得で、売却賃貸(運営会社が自社の建物を VICI に売って借りる)を中心に、取得の利回りは 7〜7.5%。2026 年はゴールデン 11.6 億ドル、クレアベスト(Clairvest)のノースフィールド・パーク(初年度賃料 0.53 億ドル)、ゲームホスト(Gamehost、約 1.4 億ドル)などを取得した。第 3 にローンと提携。2026 年の通期見通しは AFFO 26.75〜26.95 億ドルで、決まっていない取得や資本調達は含まない。
優良さと弱いところ
堀は 3 つ。第 1 は代わりの利かない立地。ストリップの大型施設(シーザーズ・パレス、MGM グランドなど)は新たに作れず、地方カジノも州の免許で数が限られる。第 2 は契約の構造。運営会社が賃料を払えなければ、免許を持つカジノの運営権を失う。賃料は運営の利益より先に払われ、2020 年のコロナ休業中も VICI の賃料は払われた。第 3 は規模と資金調達力。ゲーミング不動産で最大の持ち主として、売却賃貸の最初の相手に選ばれる。ただし格付けは Moody's が Baa3、S&P と Fitch が BBB−(いずれも見通し安定)と投資適格の下端で、さらに下げられる余裕は薄い。
弱みは 3 つ。第 1 に借り手の集中。シーザーズ関連が収入の 3〜4 割、MGM 関連が約 4 分の 1。2026 年 5 月にフェルティッタがシーザーズを 176 億ドル(借金約 119 億ドル引き受け)で買収すると発表し、借金が重い運営会社は賃料の減額を求めうる。第 2 に賃料カバーの薄さ。地方リースは、現金収益が年約 7.5 億ドルに対し賃料が約 7.3 億ドルで、ほぼ 1.0 倍と推定される。第 3 に上げ幅が物価に追いつかない点。ベネチアンの上限 3%、ゴールデンの年 2%などを混ぜると加重平均で年約 3%。物価 3.5%が続くと既存の賃料の実質価値は年 0.5%ほど目減りする。会計の ROE は約 10%だが、信用損失引当(CECL)の変動で年により大きくぶれるため、本質は AFFO で見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国のゲーミングは成熟した安定産業である。ラスベガスのストリップの賭けの勝ち分は 2026 年 5 月が 8.08 億ドル(前年比 +13.2%)、7 月が 7.76 億ドル(+3.6%)、1 月は −11%と月でぶれ、訪問者数は 1〜4 月累計で約 1,300 万人(−0.2%)と横ばい。地方カジノは先住民のカジノ、スポーツ賭博・オンラインとの競合で伸びが低い。ただし VICI の賃料は借り手の売上に連動せず、賃料カバーが 1.2〜2 倍あれば守られる(推定)ので、需要の循環は主に借り手の信用と株価の変動を通じて効く。
競合の REIT は、ゲーミング・アンド・レジャー・プロパティーズ(Gaming and Leisure Properties、GLPI)で、ペン・エンターテインメント(Penn Entertainment)やボイド(Boyd Gaming)に貸す。VICI は規模が大きく、借り手の質(ストリップの大型施設)が良い点で優位。体験型資産ではイーピーアール・プロパティーズ(EPR Properties)などがある。M&A の構造変化として、フェルティッタによるシーザーズ買収は地方リースの再交渉の引き金になりうるうえ、独占禁止のためラスベガス・アトランティックシティ・ラフリン・レイクタホ・レイクチャールズ・ビロクシで一部施設の売却が要りうる。売却される施設は VICI が買う候補にもなる。
今は循環の位置として、ストリップは好調で山に近く、地方は賃料カバーが薄い。10 年の構造では、ラスベガスの会議・スポーツ・イベント(F1 など)の需要は強く、地方カジノはオンラインとの競合で伸びが鈍る。物価 3.5%が続く世界で、運営会社が料金を上げて賃料の物価連動に耐えられるかが、VICI の賃料の質を決める。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、2026 年は約 19.6 億ドル(AFFO の約 73%)。2018 年の上場以来、毎年増やしてきた。自社株買いはしない。成長は物件取得とローンで、資金は借金と新株の組み合わせ。純負債は 169 億ドル(AFFO の約 4.9 倍の水準)で、格付けを守るため大きくは増やせない。AFFO の利回りが約 10.7%と取得の利回り(7〜7.5%)を上回る今は、新株での取得が既存の株主の価値を削るので、増資の出番は少ない。
借金の平均金利は 4.45%(2026 年 6 月末)、平均の残りは 5.5 年、固定が 99%。2026 年 8 月に 17.5 億ドルの無担保債(5.4%・2031 年満期 9 億ドル、5.75%・2036 年満期 8.5 億ドル)を出して 2026 年の満期を償還した。2027 年に 7.5 億ドルが 2 本(5.75%と 3.75%)、2028 年に約 20 億ドルが満期で、借換えは 5.4〜5.75%になる。brief の推定は 10 年で −3 億ドル。満期の山が 2028 年以降に寄っているので、それを 10 年の純利益に入れた。
M&A は、ベネチアン(2022 年)、シーザーズとの取引、2026 年のゴールデン(11.6 億ドル・利回り 7.5%)などの売却賃貸が柱。ベネチアンは追加の資金投入ごとに 7.25%で賃料が付く。資本配分の評価の分かれ目は、ローン投資(急増中)の回収と、シーザーズ地方リースの再交渉である。CECL の引当残高は約 19 億ドル(2026 年 4〜6 月期に 2.7 億ドル繰入)で会計の純利益を揺らすが AFFO には入らない。株式報酬は年 0.2 億ドル前後(推定)で、payout はこれと増資の払い込みを差し引いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
契約の構造が堀になる。運営会社は賃料を払えないとカジノを失うので、コロナの休業中も賃料は払われた。シーザーズ地方リースのカバーは約 1.0 倍と薄いが、ストリップの施設、MGM、ベネチアンの賃料には余裕がある。フェルティッタはシーザーズを 176 億ドルで買う側で、VICI の賃料を切るとは限らない。地方施設の一部を VICI に売って賃料を下げる代わりに別の取得を受ける形など、VICI が資産と交換できる案もある。
成長は途切れない。2026 年だけでゴールデン 11.6 億ドル、ノースフィールド・パーク、ゲームホストなど。AFFO は 2026 年に約 6%伸び、見通しも引き上げた。ローン・優先株は 29.2 億ドルに増え、将来の取得の入口になる。上げ幅は物価連動を含み、物価 3.5%が続けば地方とラスベガスのリースは年 3.5%で上がる。
値段は安い。AFFO の約 9.3 倍、利回り 10.7%。賃料を 15%減らしても約 9%の利回りが残り、借金の調達費用 5.75%を大きく上回る。再評価と物件取得が進めば、10 年後の AFFO は約 45 億ドルに伸び、17 倍がつく。
慎重な見方
今の安さには理由がある。シーザーズ関連が収入の 3〜4 割、MGM が約 4 分の 1 で、2 社で収入の 6 割近くに達する。地方リースのカバーは約 1.0 倍で、運営会社が利益のほぼ全てを賃料に回している状態であり、アナリストの一部は賃料が高すぎると指摘する。フェルティッタの買収で借金が約 119 億ドルになる運営会社は賃料の減額を求め、VICI は運営を自分では代えられない(免許が要る)ので交渉力が限られる。減額はそのまま AFFO から消え、倍率も借り手の信用不安で下がる。
上げ幅は、物価 3.5%が続くと上限 3%(ベネチアン)や年 2%(ゴールデン)の契約で実質の賃料が目減りする。借金は 172 億ドルで、格付けは BBB−(Moody's は Baa3)の下端。格下げされれば、取得も借換え(2027 年に 15 億ドル、2028 年に約 20 億ドル)も高くつく。
会計の CECL 引当は約 19 億ドルで、2026 年 4〜6 月期だけで 2.7 億ドルを繰り入れた。借り手へのローンが増えるほど、貸し倒れが現金の損失になる。成長は取得頼みだが、AFFO の利回りが取得の利回りを上回る今は、株での調達が既存株主の価値を削る。成長は頭打ちで、10 年後の AFFO は約 31 億ドル、倍率は 12〜13 倍が妥当である。
どちらに重みを置いたか
強気の主張は契約の構造と取得の実績に裏付けがあり、賃料の減額を中立に入れても AFFO が伸びる点が強い。慎重な主張は、借り手の集中・賃料カバーの薄さ・格付けの余裕のなさの指摘が妥当で、地方リース賃料の約 8%の減額を中立に入れ、悲観とやや悲観の確率を合わせて 35%と厚くした。悲観は借り手の破綻で賃料が大きく下がる形に深くした。楽観は 10%にとどめた。倍率は今の約 9.3 倍に寄せず、k 8.0%・上限 4%の式から約 12.7 倍に置いた。結果は、利益を株主の手に残るオーナー利益に揃えても、中立で今の時価総額を上回り、総合で 22% ほどのやや割安。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 38.87 ドル413 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 15.77 ドル168 億ドル)。 今の値に割り戻すと 28.74 ドル305 億ドル、今との差 +19.6%、 期待の年率 +8.6%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 53.90 ドル573 億ドル | 14.02 ドル149 億ドル | +182.8% | +11.0% | 6.79 ドル72 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 48.79 ドル519 億ドル | 15.81 ドル168 億ドル | +168.9% | +10.4% | 14.21 ドル151 億ドル |
| 中立 | 33% | 43.00 ドル457 億ドル | 16.94 ドル180 億ドル | +149.6% | +9.6% | 19.78 ドル210 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 33.48 ドル356 億ドル | 17.41 ドル185 億ドル | +111.9% | +7.8% | 11.20 ドル119 億ドル |
| 悲観 | 13% | 9.17 ドル98 億ドル | 11.29 ドル120 億ドル | −14.8% | −1.6% | 2.66 ドル28 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 38.87 ドル413 億ドル | 15.77 ドル168 億ドル | +127.5% | +8.6% | 54.64 ドル581 億ドル |
今の株価時価総額 24.02 ドル255 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:地方賃料は維持され、取得が 10 年で 220 億ドル進む 利益 43 億ドル · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 53.90 ドル573 億ドル
地方リースは据え置きのまま、ラスベガスと物件取得が伸びる。10 年で売却賃貸・提携の取得が 220 億ドル(利回り 7.5%、半分は株で調達)、ローンは 80 億ドルまで増える。既存の賃料は物価連動を含み加重平均で年 3.0%上がり 1.344 倍。賃料収入は約 67 億ドル、AFFO は約 45 億ドルで、2026 年の見通しから年 5.5%。格付けは BBB に上がり、借金の調達費用が 5.5%前後に下がる。AFFO の利回りが 6%台に下がるので、新株での取得も価値を増やせる。g 4.0%・ROE 9.1%・k 8.00% の式(正当化 PER 13.3 倍)の 10.0 割にあたる 13.32 倍を利益に掛けて、時価総額は約 573 億ドル。強気の見方が全て当たる形で、シーザーズ(フェルティッタの下で成長を続ける)、MGM、ベネチアンが賃料を払い続け、ラスベガスの会議・スポーツ需要も続く。VICI は優良な売却賃貸の最初の相手として選ばれ、取得の利回りも 7〜7.5%を保つ。 オーナー利益は、会社の AFFO の道筋から株式報酬・借金の発行費用の償却・取引費用の足し戻し分(年 約 1.0 億ドル)を引いた約 43 億ドル。GAAP 純利益の累計は約 384 億ドル(非現金のリース収益 年 約 5 億ドルを上乗せし、貸倒引当の繰入 年 約 0.5 億ドルを引いた値。減価償却はほぼない)。
- ゲーミング・体験型施設の賃貸(ネットリース):数量 745(賃貸資産の規模(取得価額換算、億ドル))× 価格 8.93(取得価額に対する年間賃料の利回り(%))→ 売上 67 億ドル・営業利益 56 億ドル。取得 220 億ドル
- ローン・優先株・その他の投資:数量 8,000(ローン・優先株の残高(百万ドル))× 価格 0.12(平均の利回り)→ 売上 9 億ドル・営業利益 9 億ドル。ローン残高 8000 百万ドル
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)。k は 基本 8.0% + quality +0.00% = 8.00%。 検査の g は 4.0%(長期の上限)。 事業の ROE は筋書きの利益 43.0 ÷ 自己資本 471.0 = 9.1%(帳簿の値で 40% 以下なので ROIC には直さない)。 moat は 普通(残る割合 0.50)、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 8.6%、正当化 PER は 13.3 倍。 上限は利益 43.0 × 13.3 倍 = 573 億ドル。置いた 13.32 倍は上限の 10.0 割。
確率:楽観を 1 割に置く。10 年間、賃料を守りつつ取得を続ける両立が条件で、運営会社の信用悪化が 1 回もないことを前提にする。
やや楽観 22% やや楽観:小幅の減額後、取得が着実に伸びる 利益 39 億ドル · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 48.79 ドル519 億ドル
地方リースは小幅な減額(0.3 億ドル)で決着し、その後は物価連動で上がる。取得は 10 年で 170 億ドル(4 割強を株で調達)、ローンは 65 億ドル。既存の賃料は 1.335 倍。賃料収入は約 62 億ドル、AFFO は約 41 億ドルで、2026 年の見通しから年 4.7%。借換えは全て 5.5〜5.75%に置き換わり利払いは 3 億ドル増える。g 4.0%・ROE 9.0%・k 8.00% の式(正当化 PER 13.3 倍)の 10.0 割にあたる 13.26 倍を利益に掛けて、時価総額は約 518 億ドル。ゲーミング施設の需要は安定し、シーザーズの地方リースの再交渉は 1 回で終わる。VICI は売却賃貸の最初の相手として取得を続け、ローンから物件取得へ進む案件も増える。物価連動の上げ幅が、上限付きの契約の弱さを補う。 オーナー利益は、会社の AFFO の道筋から株式報酬・借金の発行費用の償却・取引費用の足し戻し分(年 約 1.0 億ドル)を引いた約 39 億ドル。GAAP 純利益の累計は約 363 億ドル(非現金のリース収益 年 約 5 億ドルを上乗せし、貸倒引当の繰入 年 約 0.5 億ドルを引いた値。減価償却はほぼない)。
- ゲーミング・体験型施設の賃貸(ネットリース):数量 695(賃貸資産の規模(取得価額換算、億ドル))× 価格 8.94(取得価額に対する年間賃料の利回り(%))→ 売上 62 億ドル・営業利益 52 億ドル。取得 170 億ドル
- ローン・優先株・その他の投資:数量 6,500(ローン・優先株の残高(百万ドル))× 価格 0.12(平均の利回り)→ 売上 7 億ドル・営業利益 7 億ドル。ローン残高 6500 百万ドル
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)。k は 基本 8.0% + quality +0.00% = 8.00%。 検査の g は 4.0%(長期の上限)。 事業の ROE は筋書きの利益 39.1 ÷ 自己資本 433.0 = 9.0%(帳簿の値で 40% 以下なので ROIC には直さない)。 moat は 普通(残る割合 0.50)、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 8.5%、正当化 PER は 13.3 倍。 上限は利益 39.1 × 13.3 倍 = 518 億ドル。置いた 13.26 倍は上限の 10.0 割。
確率:賃料の維持と取得の継続が両立する形を 22%に置く。強気と慎重の議論で、強気の主張(契約の構造)の裏付けが強い。
中立 33% 中立:地方賃料の減額後、物価並みに近い伸びで取得が続く 利益 36 億ドル · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 43.00 ドル457 億ドル
地方リースは 0.8 億ドルの減額(約 8%下がった分)を引きずりつつ、既存の賃料は加重平均で年 2.8〜3%上がり 10 年で 1.32 倍(物価 1.41 倍より低い)。取得は 10 年で 130 億ドル(4 割を株で調達)、ローンは 55 億ドルまで増える。賃料収入は約 58 億ドル、AFFO は約 37 億ドルで、2026 年の見通しから年 3.7%。借換えが全て終わり利払いは 3 億ドル増える。配当は AFFO の約 73%を維持。g 4.0%・ROE 8.8%・k 8.00% の式(正当化 PER 13.1 倍)の 9.7 割にあたる 12.73 倍を利益に掛けて、時価総額は約 457 億ドル。ストリップの施設は賃料を払い続け、地方施設では運営会社ごとに小さな減額が混ざる。VICI は売却賃貸の最初の相手であり続けるが、格付けの下端と AFFO の高い利回りのために株での取得は限られ、借金での取得が中心になる。堀(契約の構造・立地)は変わらず、広がりも縮みもしない。 オーナー利益は、会社の AFFO の道筋から株式報酬・借金の発行費用の償却・取引費用の足し戻し分(年 約 1.0 億ドル)を引いた約 36 億ドル。GAAP 純利益の累計は約 344 億ドル(非現金のリース収益 年 約 5 億ドルを上乗せし、貸倒引当の繰入 年 約 0.5 億ドルを引いた値。減価償却はほぼない)。
- ゲーミング・体験型施設の賃貸(ネットリース):数量 655(賃貸資産の規模(取得価額換算、億ドル))× 価格 8.85(取得価額に対する年間賃料の利回り(%))→ 売上 58 億ドル・営業利益 49 億ドル。取得 130 億ドル
- ローン・優先株・その他の投資:数量 5,500(ローン・優先株の残高(百万ドル))× 価格 0.12(平均の利回り)→ 売上 6 億ドル・営業利益 6 億ドル。ローン残高 5500 百万ドル
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)。k は 基本 8.0% + quality +0.00% = 8.00%。 検査の g は 4.0%(長期の上限)。 事業の ROE は筋書きの利益 35.9 ÷ 自己資本 406.0 = 8.8%(帳簿の値で 40% 以下なので ROIC には直さない)。 moat は 普通(残る割合 0.50)、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 8.4%、正当化 PER は 13.1 倍。 上限は利益 35.9 × 13.1 倍 = 471 億ドル。置いた 12.73 倍は上限の 9.7 割。
確率:中立を 33%に置く。契約が物価連動を含むとはいえ上げ幅に上限が付く契約が混ざるので、物価並みには届かない。取得は借金と株の組み合わせで緩やかに進む。
やや悲観 22% やや悲観:賃料の減額が続き、成長は物価を下回る 利益 30 億ドル · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 33.48 ドル356 億ドル
10 年のうちに地方リースの賃料が 2.0 億ドル(約 27%)下がり、MGM・ベネチアンの一部でも上げ幅が緩む。取得は 80 億ドル(3 割を株で調達)にとどまり、ローンは 40 億ドル。既存の賃料は 1.27 倍。賃料収入は約 51 億ドル、AFFO は約 31 億ドルで、2026 年の見通しから年 1.6%。借換えは 5.75%で利払いは 3.3 億ドル増える。g 4.0%・ROE 8.1%・k 8.00% の式(正当化 PER 12.6 倍)の 9.5 割にあたる 11.90 倍を利益に掛けて、時価総額は約 356 億ドル。ゲーミングはオンラインとの競合で伸びが鈍り、地方施設の運営会社が繰り返し賃料の見直しを求める。VICI は格付けを守るために応じ、取得の余力が減る。堀(契約の構造)は保たれるが、成長の物語が弱まり、倍率が縮む。 オーナー利益は、会社の AFFO の道筋から株式報酬・借金の発行費用の償却・取引費用の足し戻し分(年 約 1.0 億ドル)を引いた約 30 億ドル。GAAP 純利益の累計は約 312 億ドル(非現金のリース収益 年 約 5 億ドルを上乗せし、貸倒引当の繰入 年 約 0.5 億ドルを引いた値。減価償却はほぼない)。
- ゲーミング・体験型施設の賃貸(ネットリース):数量 605(賃貸資産の規模(取得価額換算、億ドル))× 価格 8.45(取得価額に対する年間賃料の利回り(%))→ 売上 51 億ドル・営業利益 43 億ドル。取得 80 億ドル
- ローン・優先株・その他の投資:数量 4,000(ローン・優先株の残高(百万ドル))× 価格 0.11(平均の利回り)→ 売上 4 億ドル・営業利益 4 億ドル。ローン残高 4000 百万ドル
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)。k は 基本 8.0% + quality +0.00% = 8.00%。 検査の g は 4.0%(長期の上限)。 事業の ROE は筋書きの利益 29.9 ÷ 自己資本 370.0 = 8.1%(帳簿の値で 40% 以下なので ROIC には直さない)。 moat は 普通(残る割合 0.50)、RONIC = k + 残る割合 ×(ROE − k)= 8.0%、正当化 PER は 12.6 倍。 上限は利益 29.9 × 12.6 倍 = 376 億ドル。置いた 11.90 倍は上限の 9.5 割。
確率:賃料の減額が 1 回で終わらず、格付けの下端のため取得も止まる形を 22%に置く。
悲観 13% 悲観:借り手の破綻・賃料の大幅な減額で、構造的に優良でなくなる 利益 13 億ドル · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 9.17 ドル98 億ドル
地方リース(シーザーズ)が破綻手続きに入り賃料が約 55%(約 4 億ドル)下がるうえ、MGM のマスターリースも約 25%の減額に追い込まれる。ラスベガスの一部の施設でも賃料の引き直しが続き、取得の利回りに対する賃料は 7.05%から 5.5%へ下がる。格下げで取得は 20 億ドルしかできず、ローンは貸し倒れで残りは 30 億ドル(利回り 8%)。賃料収入は約 30 億ドル、利払い(借り換えで 6.25%)を引いたオーナー利益は約 13 億ドルと、2026 年の半分を割る。配当は 2028 年から半分近くへ削られ、10 年の払い出しは 120 億ドルにとどまる。借り手の入れ替えには時間がかかり、新しい借り手は以前より低い賃料しか払えない。ストリップの賃料は保たれるが、集中の不安が現実になり、投資家は VICI を成長株でなく取り崩し型の資産として見る。 10 年のオーナー利益の累計は約 205 億ドル(GAAP 純利益の累計も同程度。非現金のリース収益 年 約 5 億ドルを上乗せし、貸倒引当の繰入 年 約 0.5 億ドルを引いた値。減価償却はほぼない)。自己資本は 今 278 + 累計 − 還元 120 で約 363 億ドル。 ROE 3.6% が k 8.00% 以下なので、倍率の上限は 1÷k の 12.5 倍。その 6.0 割の 7.50 倍を利益に掛けて、時価総額は約 98 億ドル。
- ゲーミング・体験型施設の賃貸(ネットリース):数量 545(賃貸資産の規模(取得価額換算、億ドル))× 価格 5.50(取得価額に対する年間賃料の利回り(%))→ 売上 30 億ドル・営業利益 25 億ドル。取得 20 億ドル。賃料の取得価額に対する利回りは 5.5% へ
- ローン・優先株・その他の投資:数量 3,000(ローン・優先株の残高(百万ドル))× 価格 0.08(平均の利回り)→ 売上 2 億ドル・営業利益 2 億ドル。ローン残高 3000 百万ドル
倍率:利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)。k は 基本 8.0% + quality +0.00% = 8.00%。 検査の g は 4.0%(長期の上限)。 事業の ROE は筋書きの利益 13.0 ÷ 自己資本 363.0 = 3.6%(帳簿の値で 40% 以下なので ROIC には直さない)。 ROE 3.6% が k 8.00% 以下なので、PER は 1÷k = 12.5 倍まで(ためた利益は額面未満の価値)。 上限は利益 13.0 × 12.5 倍 = 162 億ドル。置いた 7.50 倍は上限の 6.0 割。 取り崩し型の資産として見られ、借り手の入れ替えにも時間がかかるので、上限の 6 割に置いた。
確率:運営会社の破綻や構造的な需要の落ち込みで優良でなくなる形を 13%に置く。契約の構造と立地があるため、完全な崩壊は起きにくい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ゲーミング・体験型施設の賃貸(ネットリース)
シーザーズ・MGM・ベネチアンなどに 15〜30 年の長期契約で貸す建物と土地の賃料。上げ幅は年 2%か物価連動(上限付きもある)。
| 数量賃貸資産の規模(取得価額換算、億ドル) | 価格取得価額に対する年間賃料の利回り(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 525 | 7.05 | 37 | 31 |
| 10 年後 中立 | 655 | 8.85 | 58 | 49 |
取り方:2025 年の連結売上 約 40 億ドルのうちローン利息等 約 3 億ドルを除いた約 37 億ドルを賃料収入とし、取得価額換算 約 525 億ドル(推定)で割って利回り約 7.05%と置いた。営業利益は会計上の非現金収益(賃料の平準化・金融リースの会計)を引いた現金ベースの利益率 84%(AFFO に合うよう置いた)。
ローン・優先株・その他の投資
借り手の開発資金などへのローンと優先株の利息収入。将来の物件取得の入口になる。
| 数量ローン・優先株の残高(百万ドル) | 価格平均の利回り | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,530 | 0.12 | 3 | 3 |
| 10 年後 中立 | 5,500 | 0.12 | 6 | 6 |
取り方:年初のローン・優先株の残高 25.3 億ドル(2026 年 6 月末は 29.2 億ドル)に利回り約 11.9%(推定)をかけて約 3.0 億ドル。貸倒れ引当は AFFO に入らないので利益率は 95%。
リスクと懸念
シーザーズ地方リースの再交渉
地方リースは年約 7.3 億ドルでカバーは約 1.0 倍。フェルティッタの買収を機に減額・上げ幅緩和・資産の入れ替えが起きうる。35%の減額で AFFO は約 1 割減る。確定しておらず、決着までは株の重しが続く。
借り手の集中
シーザーズ関連が収入の 3〜4 割、MGM 関連が約 4 分の 1。どちらかの信用が傷むと、収入の大きな部分が同時に揺れる。ストリップの 3 社(シーザーズ・MGM・ベネチアン)で収入の 4〜5 割を占める。
格付けの下端と借換え
格付けは Baa3 / BBB− / BBB−で、投資適格の下端。格下げされると借金の調達費用が 1 ポイント上がり、取得の利回りとの差が縮む。2027 年に 15 億ドル、2028 年に約 20 億ドルが満期を迎える。
ローン投資と信用損失
ローン・優先株の残高が 29.2 億ドルに急増し、CECL の引当残高は約 19 億ドル。貸し倒れが起きれば現金の損失になる。引当の繰入で会計の純利益は 2026 年 4〜6 月期に 39%減った(AFFO には入らない)。
上げ幅が物価に追いつかない
加重平均の上げ幅は年約 3%と推定され、物価 3.5%が続くと既存の賃料は実質で年 0.5%目減りする。ベネチアンは上限 3%、ゴールデンは年 2%。ネットリースで運営費は借り手持ちのため利益率は崩れないが、実質の成長が止まり、取得に頼る成長が必要になる。
ゲーミング需要の循環と規制
ラスベガスの訪問者数は横ばいで、勝ち分は月でぶれる。景気後退で借り手の利益が減ると賃料カバーが薄い施設から問題が出る。スポーツ賭博・オンラインの拡大や州の課税強化も、地方カジノには逆風。賃料の払いは守られても、借り手の信用の変動を通じて VICI の倍率に効く。
新株での取得が価値を削る
AFFO の利回りが約 10.7%と取得の利回り 7〜7.5%より高いうちは、増資での取得は既存株主の価値を削る。借金での取得は格付けが制約し、成長が頭打ちになりうる。取得の規模が縮み、成長の物語が弱まる。株価が上がれば再び増資で取得できる。
今後の分かれ目
- シーザーズ地方リースが賃料 10%以内の減額と上げ幅維持で決着したら
- 不確実性が消え、倍率が 12〜14 倍へ戻る。中立から楽観側へ確率を寄せる。
- 賃料を 30%以上減額、または運営会社が破綻手続きに入ったら
- AFFO が 1 割以上減り、倍率も 8〜10 倍へ下がる。悲観の筋書きに近づく。
- 格付けが BBB−から下がったら
- 借金の調達費用が上がり、取得が止まる。成長が 1%台に落ち、倍率が 1〜2 倍下がる。
- MGM かベネチアンが賃料の再交渉を求めたら
- 集中の不安が本物になる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- AFFO の利回りが 7%台まで下がり、新株の取得が再び価値を増やす水準になったら
- 取得の規模が増え、楽観の筋書きが近づく。
- ローンの貸し倒れが現金の損失として出始めたら
- AFFO が下がり、資本配分への信頼が揺らぐ。倍率を 1〜2 倍下げる。
見ておくもの
- シーザーズ地方リースの交渉結果(減額幅・上げ幅・資産の入れ替え)
- 賃料カバー(地方リース・ストリップの各施設)と四半期の AFFO
- 格付け(Baa3 / BBB−)と 2027 年・2028 年の借換えの金利
- ローン・優先株の残高と CECL 引当の推移
- ラスベガスの訪問者数と勝ち分、フェルティッタによる買収の完了と独禁法の売却対象
倍率と資本コストの決め方
今の値段(オーナー利益の約 9.7 倍)を見る前に、資産規模 × 賃料の利回りでリースの収入を積み上げ、ローン収入と利払い(brief の推定を満期の山に合わせて補正)を引いて AFFO を出し、株式報酬・借金の発行費用の償却・取引費用の足し戻し(約 1 億ドル)を引いてオーナー利益にした(2025 年は GAAP 27.8 − 非現金のリース収益 5.2 + 貸倒引当の非現金分 1.8 = AFFO 25.3、そこから 1.0 を引いて 24.3 億ドル)。倍率は式どおりで、k 8.0%(基本 8% + quality 0%)・g は上限 4%・再投資の利回り 8%から、10 年の中立は 12.7 倍(上限の 9.7 割)。借り手の集中・BBB− は確率と悲観の深さで表し、式の外では割り引かない。悲観は借り手の破綻で賃料が下がる構造の筋書きで、取り崩し型の資産として上限の 6 割に置いた。業界ノートの妥当値 13〜16 倍の下端に当たる。今の安い倍率には寄せていない。結果として中立でも今を大きく上回るのは、賃料減額を織り込んでなお利回りが高いからである。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。基本 8.0% + quality +0.00% = 8.00%(内訳と理由は quality_why)。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。