結論
ダイトウボウは、かつての毛織物の名門が静岡県清水町のショッピングセンター「サントムーン柿田川」の家主に姿を変えた会社だ。筆者の結論は割高である。モールの家賃が営業利益のほぼ全部を生むが、約 98 億円の借金の利息と本社の費用がそれを食い、株主に残る純利益は年 1 億円前後にとどまる。
家賃は物価に合わせて少しずつ上がり、建物の減価償却は取得した時の値段のままなので、会計上の利益は 10 年でいくらか膨らむ。それでも自己資本に対する利益率は 3% 前後で、資本コストに遠く届かない。寝装品と毛織物は縮みながら赤字すれすれを続けている。
今の株価は、モールの土地と建物の値打ちや、いずれ誰かが買いに来る可能性を映していると読める。ただ会社に資産を売る方針はなく、家賃は利益として数えている。筆者は帳簿の外の値打ちを当てにせず、稼ぐ力で測った価値は今の時価総額を大きく下回ると見る。上振れの道は、会社が資産の売却に踏み出すか、外から買い手が現れるかの二つしかない。どちらも今は見えていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「事業」と「土地」に分けて考えたくなる。土地とモールには、帳簿を上回る値打ちがあるかもしれない。だが株主がその値打ちを手にするには、会社が資産を売るか、誰かが会社ごと買うしかない。会社にその方針はなく、家賃はこれからも利益として入り続ける。
そこで株主のものになる利益を数える。モールの家賃から本社の費用と利息を引き、税を払うと、残りは年 1 億円前後だ。減価償却が更新の投資より多い分、現金はもう少し残るが、それは借金の返済に消える。
安全域の面では、払う値段に対して稼ぐ力が細すぎる。利益率の低い資本を長く持ち続けても、株主の富はほとんど増えない。筆者は、資産の値打ちを当てにした買い方を、本質価値に基づく投資とは呼ばない。オーナーとして持ち続けたいと思える事業とは、稼いだ利益を高い率で再び投じられる事業だ。この会社はその逆にある。
何で稼ぐ会社か
事業は三つある。柱は商業施設事業で、1997 年に開業し 2007 年に増床したサントムーン柿田川を自社で持ち、テナントに貸している。運営と管理は子会社の大東紡エステートが担う。2026 年 3 月期の売上は 23 億円、営業利益は 9.5 億円で、会社全体の稼ぎを一手に引き受けている。
二つ目はヘルスケア事業で、子会社の新潟大東紡がふとんなどの寝装品を作り、本社が売る。売上は 10.5 億円あるが、前の期から 1 割近く減り、わずかな赤字が続く。三つ目のせんい事業は毛織物を軸にした国内の繊維で、売上は 6.6 億円、利益はほぼ出ていない。
本社の費用などセグメントに配らない費用が年 6 億円を超え、三事業の利益の 3 分の 2 を吸い込む。連結の従業員は 93 人と小さな所帯だが、上場会社としての固定の費用は重い。
お金の流れも見ておきたい。モールの建物の減価償却は年 4 億円前後あり、設備の更新に使う額より多い。そのため手元に残る現金は純利益よりかなり多く、会社はそれで借金を少しずつ返している。
優良さと弱いところ
優良さは、モールの立地にほぼ尽きる。サントムーン柿田川は沼津・三島の生活圏の中にあり、地元の買い物客を長く集めてきた。土地を自社で持っているので、地代の値上げに振り回されることはない。
一方で、堀、つまり他社がまねできない強みは細い。2019 年にはららぽーと沼津が近くに開業し、休日の家族客を取り合う相手が増えた。テナントの家賃は売上に連動する部分があり、通販に客を取られれば家賃も伸びない。
資本効率は低い。自己資本利益率は過去 10 年の中央値で 2% と、資本コストの 4 分の 1 にも届かない。借金は自己資本の 2 倍近くあり、営業利益で利息を払える倍率は 1.5 倍しかない。寝装品と毛織物は値決めの力がなく、規模も小さい。経営は中期経営計画で資本コストを意識すると掲げるが、具体的な手はまだ配当の維持にとどまる。筆者は、モールという一つの資産に会社全体がもたれかかっている構図こそが、この会社の質を決めていると見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方の郊外型ショッピングセンターは、人口の減り方と競合の出店で勝敗が決まる。静岡県東部は人口がゆっくり減っており、買い物に来る人の数は 10 年で増えにくい。そこへ大手デベロッパーの大型施設が出てきたため、テナントを引き留める力の差が家賃の差になって表れる。
追い風もある。食品スーパーや医療、サービスのテナントは通販に客を奪われにくく、日常使いのモールは都市部の専門店ビルより客足が安定している。物価が年 3% 上がる世界では、売上歩合の家賃も少しずつ上がる。
繊維の側は厳しい。国内の衣料と寝具は数量が年 1〜3% 縮み、海外製品との価格競争も続く。寝装品は原料の羊毛や綿、中国などでの加工の値段に左右され、値上げを通しにくい。毛織物は制服や紳士服の生地が中心で、需要の底は見えない。
金利の上昇は、この会社にとって業界の変化以上に効く。10 年国債が 3% の世界では、借り換えのたびに利息が増える。約 98 億円の借金を 3.5% で借り直すと、利息は今より年 1 億円以上ふくらむ。現金を持つ会社には金利の上昇が追い風になるが、借金で建物を持つこの会社には向かい風でしかない。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向 50〜80%、総還元性向 70〜100% だ。実際は年 0.9 億円の配当を続けており、純利益がそれに届かない年は利益のほぼ全部か、それ以上を配っている。株主優待として QUO カードと自社通販の割引券も出す。費用は推定で年 0.2 億円ほどで、還元に数えた。
中期経営計画では、モールの設備の更新に 10 年で約 25 億円を見込む。借金の返済と更新の投資を同時に進めるので、大きな自社株買いや増配の余地は乏しい。
買収については、時価総額が小さく、帳簿上 160 億円を超える不動産を持つため、不動産会社や投資ファンドに狙われる余地はある。ただし会社がそれを望んでいる兆しは今のところ見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
モールは静岡県東部の生活の拠点で、食品スーパーや専門店、サービスのテナントが日常の客を集める。物価が年 3% 上がれば、売上に連動する家賃も上がる。建物の減価償却は取得した時の値段のままなので、家賃の伸びがそのまま利益の伸びになる。
借金の返済も進む。毎年の現金の余りで 3 億円前後を返せば、10 年で借金は 3 割近く減り、金利が上がっても利息の総額は抑えられる。寝装品の赤字を止め、毛織物を縮めれば、本社の費用も軽くできる。
さらに大きいのは資産の値打ちだ。土地と建物は帳簿で 160 億円を超え、家賃の利回りから見た値打ちはそれ以上ありうる。時価総額は 40 億円弱しかない。不動産会社やファンドが会社ごと買いに来れば、株主は資産の値打ちに近い値段を受け取れる。小さな時価総額と大きな不動産の組み合わせは、買い手にとって分かりやすい獲物だ。経営が資本コストを意識すると言い出したことも、変化の芽と読める。
慎重な見方
モールの家賃の伸びは、物価ほどには続かない。ららぽーと沼津などとの客の取り合いで、テナントの入れ替えには家賃の値下げや改装の負担が伴う。地方の人口は減り続け、10 年後に買い物客の数が今を上回る理由は乏しい。
利息の重さは増すばかりだ。今の利息は年 2 億円前後だが、3.5% で借り直せば年 1 億円以上ふくらみ、営業利益の半分以上が利息に消える。本社の費用は年 6 億円を超え、物価で上がる。寝装品と毛織物は値上げの力がなく、赤字が広がる恐れがある。
資産の値打ちは、株主の手に届かない。会社は売る方針を示しておらず、買収の話も見えない。自己資本利益率が 2% の会社に資本を預け続けても、価値は増えない。配当で利益のほぼ全部を配っても、株主が受け取るのは時価総額の 2% 余りにすぎない。設備の更新に 25 億円を使えば、借金の返済も遅れる。建築費の上昇で更新の額が膨らめば、手元に残る現金はさらに細る。モール一つに頼る会社は、一度客足が離れると立て直しの手が限られる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強い。家賃が物価で上がり、償却が増えない分だけ利益が膨らむという強気の言い分は正しいが、利息と本社の費用の増え方がそれを打ち消す。資産の値打ちや買収の期待は、会社の方針がない以上、確率の低い楽観の筋書きにとどめた。中立に最も重みを置き、悲観側にも楽観側と同じだけの重みを残した。モールの立地が底を支えるので、悲観を楽観より重くはしなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 67 円20 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 38 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 54 円16 億円、今との差 −57.3%、 期待の年率 −1.8%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 168 円50 億円 | 77 円23 億円 | +94.8% | +6.9% | 25 円7 億円 |
| やや楽観 | 20% | 112 円33 億円 | 58 円17 億円 | +34.4% | +3.0% | 34 円10 億円 |
| 中立 | 40% | 47 円14 億円 | 37 円11 億円 | −33.7% | −4.0% | 33 円10 億円 |
| やや悲観 | 20% | 34 円10 億円 | 13 円4 億円 | −62.7% | −9.4% | 9 円3 億円 |
| 悲観 | 10% | 27 円8 億円 | 10 円3 億円 | −70.7% | −11.6% | 4 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 67 円20 億円 | 38 円11 億円 | −16.8% | −1.8% | 105 円31 億円 |
今の株価時価総額 126 円38 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% モールの稼ぎが伸び、借金が減る 利益 4 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 168 円50 億円
サントムーン柿田川は改装でテナントを入れ替え、日常使いの店とサービスを厚くする。家賃は物価を上回って上がり、床の使い方も効率が上がる。寝装品は通販と法人向けで持ち直し、毛織物は高級の生地に絞って黒字を保つ。
毎年の現金の余りで借金を返し、残高は 10 年で 3 割ほど減る。利息の重さは今より軽くなり、営業利益の多くが株主の利益として残る。それでも自己資本利益率は 8% 前後で、資本コストには届かない。会社ごと買いに来る相手が現れれば、この筋書きを上回る値段もありうる。配当は利益に合わせて増やし、総還元性向の目標に近い形で株主に戻す。
- 商業施設(サントムーン柿田川):数量 4.7(テナントに貸す床面積(万㎡・推定))× 価格 7.17(1㎡あたり年間の家賃と共益費の収入(万円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 15 億円。床 4.7 万㎡ × 1㎡ 7.17 万円(今の 1.40 倍)、営業利益率 45%
- ヘルスケア(寝装品):数量 40.0(寝装品の販売点数(万点・推定))× 価格 0.40(1 点あたりの売上(万円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。40 万点 × 1 点 0.40 万円、営業利益率 5%
- せんい(毛織物):数量 25.0(生地などの販売量(万 m・推定))× 価格 0.29(1m あたりの売上(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。25 万 m × 1m 0.29 万円、営業利益率 4%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 50 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:家賃が物価を上回って伸び、繊維と寝装品の赤字を止め、借金も大きく減るという複数の条件がそろう必要がある。資産の値打ちに目をつけた買収の可能性も、この筋書きの確率に含めた。
やや楽観 20% 家賃が物価並みに伸び、利息を吸収する 利益 3 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 112 円33 億円
モールの家賃は物価並みに上がり、テナントの入れ替えも大きな値下げなしで進む。建物の償却は取得した時の値段のままなので、家賃の伸びの多くが利益に残る。寝装品は赤字を脱し、毛織物も小さな黒字を保つ。
本社の費用は物価ほどには増やさず、借金は少しずつ減る。金利の上昇で利息は今より増えるが、営業利益の伸びが上回る。株主に残る利益は今の 3 倍ほどになるが、自己資本利益率は 5% 台にとどまり、資本コストとの差は埋まらない。配当は少しずつ増え、優待も続く。モールの改装は計画の 25 億円の範囲に収まり、借金の返済と両立する。
- 商業施設(サントムーン柿田川):数量 4.6(テナントに貸す床面積(万㎡・推定))× 価格 6.91(1㎡あたり年間の家賃と共益費の収入(万円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 14 億円。床 4.6 万㎡ × 1㎡ 6.91 万円(今の 1.35 倍)、営業利益率 43.5%
- ヘルスケア(寝装品):数量 35.0(寝装品の販売点数(万点・推定))× 価格 0.39(1 点あたりの売上(万円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。35 万点 × 1 点 0.39 万円、営業利益率 3%
- せんい(毛織物):数量 25.0(生地などの販売量(万 m・推定))× 価格 0.29(1m あたりの売上(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。25 万 m × 1m 0.285 万円、営業利益率 3%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 33 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:家賃の伸びと借金の返済が計画どおりに進めば届く筋書き。モールの立地は確かで、物価並みの家賃の改定は無理のない前提なので、楽観より重く置いた。
中立 40% 家賃は上がるが、利息と本社の費用に食われる 利益 1 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 47 円14 億円
モールの床の広さは変わらず、家賃は物価よりやや遅れて上がる。ららぽーと沼津などとの競争で、テナントの入れ替えに少し家賃を譲るためだ。建物の償却は取得した時の値段のままで、更新の投資の分だけ少し増える。モールの営業利益は今の 1.3 倍になる。
しかし本社の費用は物価で増え、借金の利息は 3.5% への借り換えで年 2.4 億円ほどに上がる。寝装品と毛織物は数量が縮み、利益はほぼゼロのままだ。株主に残る利益は年 1.2 億円前後で、今と大きく変わらない。配当は今の水準を続け、優待も残る。資産の値打ちは帳簿の外に眠ったままで、株主の手には届かない。
- 商業施設(サントムーン柿田川):数量 4.5(テナントに貸す床面積(万㎡・推定))× 価格 6.55(1㎡あたり年間の家賃と共益費の収入(万円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 12 億円。床 4.5 万㎡ × 1㎡ 6.55 万円(今の 1.28 倍。競争で物価よりやや低い)、営業利益率 41.7%(償却は年 4.5 億円で据え置き)
- ヘルスケア(寝装品):数量 30.0(寝装品の販売点数(万点・推定))× 価格 0.39(1 点あたりの売上(万円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。30 万点 × 1 点 0.39 万円(今の 1.30 倍)、営業利益率 1%
- せんい(毛織物):数量 22.5(生地などの販売量(万 m・推定))× 価格 0.28(1m あたりの売上(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。22.5 万 m × 1m 0.284 万円(今の 1.30 倍)、営業利益率 2%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 14 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:家賃は物価よりやや遅れて上がり、利息と本社の費用の増加がそれを打ち消すという、今の延長に近い筋書き。強気と慎重の言い分の落としどころとして最も重く置いた。
やや悲観 20% テナントが抜け、利息で赤字に 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 34 円10 億円
人気のテナントがいくつか近くの大型施設へ移り、空いた床を埋めるために家賃を下げる。モールの売上は物価ほどに伸びず、営業利益は今とほぼ同じ水準で止まる。寝装品と毛織物は数量の縮みで小さな赤字になる。
本社の費用は削っても物価の分だけ増え、利息は借り換えで年 2.5 億円に上がる。会社全体では営業利益が利息を払いきれず、純利益は小さな赤字になる。配当は半分に減らし、優待も縮める。資産の値打ちは帳簿に残るが、株主に届く道は見えないままだ。更新の投資を先送りすれば、モールの見劣りがさらに客を遠ざける悪い循環に入る。
- 商業施設(サントムーン柿田川):数量 4.3(テナントに貸す床面積(万㎡・推定))× 価格 6.04(1㎡あたり年間の家賃と共益費の収入(万円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 9 億円。床 4.3 万㎡ × 1㎡ 6.04 万円(今の 1.18 倍)、営業利益率 36%
- ヘルスケア(寝装品):数量 27.0(寝装品の販売点数(万点・推定))× 価格 0.37(1 点あたりの売上(万円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。27 万点 × 1 点 0.37 万円、営業利益率 −2%
- せんい(毛織物):数量 18.0(生地などの販売量(万 m・推定))× 価格 0.27(1m あたりの売上(万円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。18 万 m × 1m 0.27 万円、営業利益率 −2%
倍率:純利益が赤字になるので PER は使わず、今の自己資本 50 億円に PBR 0.20 倍を掛けた。モールの家賃から利息と本社の費用を引くと稼ぐ力はほぼゼロで、会社に資産を売る方針もないため、帳簿の値打ちの多くは株主に届かないとみた。営業利益が細るので EV÷営業利益は 40 倍を超え、借金を足した見方でも価値は小さい。
確率:競合の出店と人口の減少でテナントの引き留めに家賃を譲り、利息の増加が重なる筋書き。地方の郊外型施設ではよく起きる形で、楽観側と同じ重みを置いた。
悲観 10% モールの地盤沈下と減損 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 27 円8 億円
近くの大型施設に客を奪われ、核になるテナントが撤退する。空いた床は埋まりきらず、家賃は物価を大きく下回る伸びにとどまる。モールの帳簿の値打ちは見直され、減損が出る。寝装品と毛織物は縮小の果てに撤退の判断を迫られる。
利息は 3.5% への借り換えで年 2.6 億円に増え、営業利益は本社の費用で赤字になる。毎年の赤字で自己資本は 3 割近く減る。配当はほぼ止まり、株主に残るのは、モールの土地を売れば借金を返して何が残るかという問いだけになる。銀行との約束を守るために、会社は不利な条件で資産を手放す恐れもある。
- 商業施設(サントムーン柿田川):数量 4.0(テナントに貸す床面積(万㎡・推定))× 価格 5.38(1㎡あたり年間の家賃と共益費の収入(万円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 4 億円。床 4.0 万㎡ × 1㎡ 5.38 万円(今の 1.05 倍)、営業利益率 20%
- ヘルスケア(寝装品):数量 20.0(寝装品の販売点数(万点・推定))× 価格 0.35(1 点あたりの売上(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。20 万点 × 1 点 0.35 万円、営業利益率 −7%
- せんい(毛織物):数量 12.0(生地などの販売量(万 m・推定))× 価格 0.26(1m あたりの売上(万円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。12 万 m × 1m 0.26 万円、営業利益率 −6%
倍率:赤字が続くので PER は使わず、今の自己資本 50 億円に PBR 0.16 倍を掛けた。稼ぐ力は赤字で床にならず、純現金もない。モールを売れば借金を返して何かが残る可能性はあるが、会社に売る方針がないので床の資産には数えなかった。
確率:大型テナントの撤退と金利の上昇が重なる構造的な負け。モールの立地は一定の底を支えるので、10% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
商業施設(サントムーン柿田川)
静岡県清水町のショッピングセンターを自社で持ち、テナントに貸して家賃を得る。
| 数量テナントに貸す床面積(万㎡・推定) | 価格1㎡あたり年間の家賃と共益費の収入(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.5 | 5.12 | 23 | 10 |
| 10 年後 中立 | 4.5 | 6.55 | 29 | 12 |
取り方:床面積の開示は無いので、テナントに貸す床を約 4.5 万㎡と推定し、セグメント売上 23.04 億円を割って 1㎡あたり年 5.12 万円とした(推定)。数量は床の広さ(実質)、物価と家賃の改定は 1㎡あたりの収入に入れる。営業利益には建物の減価償却(年 4 億円前後と推定)を含み、償却は物価で増やさない。
ヘルスケア(寝装品)
子会社の新潟大東紡が作るふとんなどの寝装品を、本社が販売する。
| 数量寝装品の販売点数(万点・推定) | 価格1 点あたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 35.0 | 0.30 | 11 | 0 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 0.39 | 12 | 0 |
取り方:点数の開示は無いので、平均単価を約 0.3 万円と置き、売上 10.52 億円から年 35 万点と推定した(推定)。
せんい(毛織物)
毛織物を軸にした国内の繊維製品の製造と販売。
| 数量生地などの販売量(万 m・推定) | 価格1m あたりの売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 0.22 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 22.5 | 0.28 | 6 | 0 |
取り方:数量の開示は無いので、1m あたり約 0.22 万円と置き、売上 6.55 億円から年 30 万 m と推定した(推定)。
リスクと懸念
金利の上昇と借り換え
有利子負債は約 98 億円で、今の利息は年 2 億円前後だ。10 年国債 3% の世界で 3.5% で借り直すと、利息は年 1 億円以上ふくらむ。営業利益が 3〜4 億円の会社にとって、これだけで純利益が消えかねない。
競合の大型施設
ららぽーと沼津など、近くの大型施設とテナントと客を取り合う。人気のテナントが移れば、空いた床を埋めるために家賃を下げるか、改装に投資するしかない。家賃の収入はモール一つに頼っており、逃げ場がない。
設備の更新の負担
1997 年開業の建物は更新の時期に入る。会社は 10 年で約 25 億円の更新を見込むが、建築費は物価以上に上がっている。更新の投資が膨らめば、借金の返済が遅れ、利息の負担も軽くならない。
繊維と寝装品の赤字
寝装品と毛織物は数量が縮み、値上げの力も弱い。売上は合わせて 17 億円ほどあるが、利益はほぼゼロだ。原料の値上がりや人件費の上昇を転嫁できなければ、赤字が広がり、モールの稼ぎを食う。
本社の費用の重さ
セグメントに配らない費用が年 6 億円を超え、三事業の利益の 3 分の 2 を吸い込む。上場の維持や管理部門の費用は物価で上がるので、削る手を打たなければ利益は増えにくい。
今後の分かれ目
- 会社がモールの売却や資産の流動化を数字で示したら
- 帳簿の外の値打ちが株主に届く道が開ける。売却の値段から借金と税を引いた額を、価値に足せるようになる。
- 不動産会社や投資ファンドが買収を提案したら
- 株主は資産の値打ちに近い値段を受け取れる可能性がある。楽観の筋書きに近づく。
- 借り換えの金利が 3% を大きく超えたら
- 利息が営業利益の大半を食い、純利益は赤字に近づく。やや悲観の筋書きに重みが移る。
- 大型テナントが退店し、空き床が埋まらなかったら
- 家賃の収入が 1 割以上減り、悲観の筋書きに近づく。
- 寝装品と毛織物を縮めて本社の費用を減らしたら
- 利益がモールの稼ぎに近づき、やや楽観の筋書きに移る。
見ておくもの
- 商業施設事業の売上と営業利益の伸び
- 有利子負債の残高と平均の借入金利
- 寝装品と毛織物の赤字の幅
- モールの設備の更新の額
- 大株主の動きや買収の提案
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10 年後の事業の自己資本利益率が資本コスト 8.75% を大きく下回ることから、PER の上限を 1÷k の約 10.8 倍とし、利益の質に応じてその 8〜9 割に置いた。今の株価は見ていない。今の時価総額は、モールの土地と建物の値打ちや買収の期待を映していると読めるが、会社に売る方針がなく家賃を利益に残すため、含み益は足していない。2028 年 3 月期からの新しいリース会計で開示の形は変わるが、10 年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.43 倍・やや楽観 PER 9→11.43 倍・中立 PER 9→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.75%。赤字が続く・存続が危ういわけではないので上乗せはしない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.75%。