結論
シキボウは、綿の紡績から織物、染色加工、乾燥カンバスやろ布などの産業資材、食品用の増粘剤、リネンサプライまでを手がける老舗の繊維会社だ。2025年12月にユニチカの衣料・繊維事業を引き継ぎ、2027年3月期の売上は557億円と、前期の446億円から1割以上増える見込みだ。
筆者の結論は、10年の価値は今の時価総額を3割ほど下回る、である。統合で規模は増えるが、利益率は2〜3%台の低い水準が続く。実際に稼いでいるのは不動産とサービス事業で、全体の営業利益9.7億円に対し、このセグメントだけで19億円を出している。
問題は財務だ。純有利子負債は245億円と時価総額の1.9倍あり、営業利益で利払いを賄う力は2.6倍しかない。統合の費用が重なる間は、利益より借入の返済が先に来る。
過去10年のROEの中央値は2.6%で、資本コストを大きく下回る。純資産に対する株価の低さは、この低い収益力を反映している。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の本質は「低収益の繊維と、安定した不動産・サービス」の組み合わせだ。繊維は規模を増やしても利益率が上がりにくく、統合の効果は借入の重さに吸われやすい。
株主のものになる利益は薄い。10年のROEの中央値は2.6%で、中立の筋書きでも4%に届かない。自己資本362億円の大半は、利益を生みにくい固定資産と在庫だ。
安全域は弱い。純有利子負債が時価総額の1.9倍あり、資産の売却額から負債を引くと、悲観の筋書きでは自己資本の15%ほどしか残らない。賃貸等不動産の含み益は確かめられていない。
筆者は、PBRの低さだけを割安の根拠にしない。ROEが資本コストを下回る会社の帳簿の価値は、額面を下回るからだ。
経営の資本配分は、攻めの色が濃い。ユニチカ事業の取り込みと堺工場の新設を借入で進め、財務の余裕が薄い段階で規模を取りにいった。成功すれば利益率が変わるが、失敗すれば借入だけが残る。
成功した時の上振れと失敗した時の傷の深さを、確率で分けて評価するしかない。
何で稼ぐ会社か
事業は四つある。繊維は売上の55%で、綿・合成繊維の糸、織物、染色加工、衣料品の企画販売を行う。産業資材は17%で、製紙用の乾燥カンバスやろ布を作る。機能材は15%で、食品用の増粘剤、複合材、機能性の素材を扱う。不動産・サービスは13%で、リネンサプライの工場運営、賃貸、物流を行う。
営業利益は、不動産・サービスが19億円で、全体の約2倍に当たる。繊維は4.7億円、産業資材は2億円、機能材は1.5億円の赤字だ。本社費が約14億円あり、全体では9.7億円になる。
2026年3月期は、ユニチカ事業の取り込みで売上が14%増えた。ただし取り込みは12月末で、通年の効果は2027年3月期から出る。負ののれんの利益5.5億円が純利益に入っているため、本業の稼ぎとは分けて見る必要がある。
繊維の中身をもう少し分けると、紡績糸、綿を中心とした織物、染色加工、衣料の企画販売の四つに分かれる。ユニチカから引き継いだ事業は、衣料向けの繊維と製品が中心で、取引先の重なりが大きい。
機能材は、食品の粘度を調整する増粘剤が柱だ。高齢者向けの介護食や、飲料のとろみ付けに使われる。複合材は炭素繊維などを使った軽量素材で、堺工場の新設が立ち上げの最中にある。
優良さと弱いところ
堀は、紡績から染色までの一貫した技術と、食品用増粘剤のような独自の用途だ。ただ繊維そのものは中国製の糸や海外の衣料に押され、価格を決める力は弱い。
収益力は低い。営業利益率は2016年3月期の6.7%、2017年3月期の7.3%を山に、直近は2〜4%に落ちた。2019年3月期は14億円の最終赤字だった。
財務は弱い。純有利子負債は自己資本の0.68倍、営業利益は支払利息の2.6倍にとどまる。統合の資金は借入で賄っており、借入が減る見通しはまだ立っていない。
経営は構造改革に積極的だ。ユニチカ事業の取り込み、堺工場の新設、食品用増粘剤への集中などを進めている。結果が出るのはこれからで、実績で見れば優良とは言いにくい。
一方で、不動産・サービスは別格に安定している。リネンサプライの施設と賃貸が、全社の営業利益の約2倍を稼ぐ。本業の繊維が縮んでも、この利益が下支えになる。
筆者は、この会社を二つの顔で見る。繊維は規模の割に稼ぎが薄い事業、不動産・サービスは静かに稼ぐ資産だ。合算した資本の使い方は、効率的とは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の衣料需要は、人口の減少と海外製品の流入で長期に縮んでいる。紡績は特に中国製の糸の流入が強く、国内の綿糸の生産量はこの20年で大きく減った。同社の繊維は年1〜3%縮む前提で見る。
一方、中東向けの民族衣装は輸出が伸びている。食品用の増粘剤は、高齢化と介護食の拡大で需要が底堅い。乾燥カンバスは製紙の国内需要が縮み、数量が減っている。
競合は繊維では東洋紡、クラボウ、ユニチカなどで、同業の再編が進む。ユニチカの事業を引き取ったのも、その流れの一つだ。
リネンサプライは病院やホテル向けで安定している。ただ人件費と洗剤・水道光熱費の上昇が利益を削りやすい。
紡績の分野では、東洋紡やクラボウが同じ市場で戦っており、国内の綿糸の生産量は長期で細っている。衣料の分野では、海外で縫製された製品が小売の大半を占め、国内の織物と染色加工の仕事は年々減っている。
機能材の増粘剤は、食品メーカーの仕様に合わせた作り込みが必要で、一度採用されると頻繁には切り替えられない。競合は海外の大手化学メーカーで、価格競争力で勝負するより、品質と供給の安定で選ばれる分野だ。
産業資材の乾燥カンバスは、製紙の国内需要の縮小で数量が減るが、海外向けと、ろ布のような他の用途への広がりで補う余地がある。
資本政策と M&A
配当は年間で総額は6.35億円ほどだ。2026年3月期の純利益9.5億円に対して性向は約67%だが、負ののれんを除くと実力は高い。会社は配当を維持する姿勢を見せている。
自社株買いの実績は確認できなかった。株主優待も確認できなかった。
投資は重い。ユニチカ事業の取り込みと、堺工場の新設が続く。借入の返済は進んでおらず、金利が3%台に上がる環境で、利払いが利益を削る。純有利子負債は245億円で、時価総額の1.9倍だ。
親会社に当たる大株主は確認できなかった。M&Aの動きは見えない。
配当を維持する姿勢は明確で、総還元性向は高い。株主優待の有無は確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
統合の効果はこれから出る。ユニチカの衣料事業は通年で売上に乗り、2027年3月期の売上は557億円、営業利益は15億円を見込む。2028年3月期には営業利益20億円、ROE2.8%を目指す。食品用の増粘剤は需要が底堅く、堺工場の複合材も立ち上がれば機能材の赤字が消える。不動産とサービスは、リネンサプライと賃貸が安定して稼ぐ。PBR0.36倍は、これらの価値を織り込んでいない。簿価の高い工場や土地には含み益があるかもしれない。 取り込んだ事業は取引先が重なるため、営業と物流の重複を整理しやすい。会社は2028年3月期にROE2.8%を目指すが、これは低い目標で、達成の壁は高くない。 リネンサプライは病院やホテルの外注化が進む分野で、需要は人口減の影響を受けにくい。繊維のなかでも、中東向けの民族衣装は取引先が固定され、値決めの余地がある。統合で国内の同業との価格競争が和らぐ効果も見込める。借入が重いと見られがちだが、不動産とサービスの安定した利益が利払いを賄っている点は強みだ。
慎重な見方
繊維は中国製の糸と海外の衣料に押され、利益率は2〜4%が続く。統合で規模は増えても、固定費と借入の利払いが利益を削る。営業利益の2倍を稼ぐ不動産・サービスも、人件費と光熱費の上昇で利益が圧迫されやすい。純有利子負債は時価総額の1.9倍、営業利益は支払利息の2.6倍で、金利が上がれば利益が消える。2019年3月期の最終赤字、2021年と2022年の純利益ゼロの実績もある。会社予想の20億円は、過去11年のうち5年しか超えていない。 統合の資金は借入で賄い、金利の上昇に弱い。2028年3月期の新リース会計の導入で、借入の見え方も変わる。 配当の総額は純利益の大半を占め、借入の返済に回る余裕が小さい。堺工場の新設と統合の費用が重なる間は、フリーキャッシュフローが薄い。ユニチカの事業を引き継ぐ価格は有利に見えるが、引き継いだ事業が赤字なら、負ののれんの利益はそのまま損失の裏返しになる。会社自身が2028年3月期のROEを2.8%としか見込んでいない点も、資本効率の低さを物語る。
どちらに重みを置いたか
勝つのは慎重な見方だ。統合の規模は評価するが、利益率の低さと借入の重さで、利益の価値は帳簿の3割強にとどまる。楽観の筋書きでもROEは資本コストに届かず、倍率は10倍が限度だ。確率は中立を厚くし、悲観を13%とした。賃貸等不動産の含み益が確かめられれば、床は上がる余地がある。 統合の効果が出るかどうかと、借入の重さの二点が分かれ目だ。後者は短期では動かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,132 円144 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 461 円59 億円)。 今の値に割り戻すと 823 円104 億円、今との差 −19.8%、 期待の年率 +4.5%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,374 円301 億円 | 709 円90 億円 | +200.5% | +11.6% | 185 円23 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,729 円220 億円 | 591 円75 億円 | +126.1% | +8.5% | 394 円50 億円 |
| 中立 | 37% | 1,145 円145 億円 | 504 円64 億円 | +60.7% | +4.9% | 610 円77 億円 |
| やや悲観 | 27% | 799 円101 億円 | 394 円50 億円 | +16.2% | +1.5% | 322 円41 億円 |
| 悲観 | 13% | 433 円55 億円 | 197 円25 億円 | −38.6% | −4.8% | 82 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,132 円144 億円 | 461 円59 億円 | +55.3% | +4.5% | 1,593 円202 億円 |
今の株価時価総額 1,026 円130 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% ユニチカ事業の統合が実り、機能材が育って利益率が過去の山に近づく10年 利益 25 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,374 円301 億円
2025年12月に取得したユニチカの衣料・繊維事業が通年で効き、繊維の数量は今の1.45倍になる。中東向けの民族衣装と国内の制服・スポーツ向けが伸び、重複する拠点の整理で利益率が改善する。
機能材は食品用の増粘剤が堅調に伸び、堺工場の複合材も軌道に乗る。赤字だった事業が黒字化し、全体の利益を押し上げる。リネンサプライと不動産賃貸は、賃料と料金の値上げが物価並みに進む。
営業利益は40億円ほどになり、売上820億円に対して4.8%となる。配当は現行の水準から増え、総額は今の約1.4倍になる。借入は返済が進む。
- 繊維:数量 145(販売数量の指数(今期=100))× 価格 3.30(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 479 億円・営業利益 22 億円。ユニチカ事業の通年化と中東向けの民族衣装が伸びる
- 産業資材:数量 95.0(販売数量の指数(今期=100))× 価格 0.98(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 93 億円・営業利益 5 億円。乾燥カンバスは縮むがろ布は底堅い
- 機能材:数量 170(販売数量の指数(今期=100))× 価格 0.97(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 164 億円・営業利益 10 億円。食品増粘剤と堺工場の複合材が立ち上がる
- 不動産・サービス:数量 105(稼働の指数(今期=100))× 価格 0.79(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 83 億円・営業利益 28 億円。リネンサプライと賃貸が物価並みに伸びる
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 301 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2016年3月期から2018年3月期は営業利益率が6.7〜7.3%だった。統合の効果と機能材の成長が重なれば、5%近くまでは戻りうる。ただ3年連続で赤字なしを保った時期は短く、確率は1割に届かせない。
やや楽観 17% 中計の目標を超え、統合の効果が緩やかに出る10年 利益 18 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,729 円220 億円
統合したユニチカ事業の売上が通年で乗り、繊維の数量は今の1.35倍になる。重複した営業拠点と物流の整理が進み、繊維の利益率は4%に戻る。
機能材は増粘剤が堅調で、複合材が小さな黒字をつくる。不動産とサービスは安定して稼ぎ、全体の利益を支える。
営業利益は30億円ほどで、2028年3月期の会社予想の20億円を物価分を超えて上回る。配当は現行の水準を保ち、増配の余地を残す。
借入は少しずつ返済が進み、純有利子負債は200億円台前半まで減る。
機能材の黒字化は4年後に達成し、堺工場の償却の負担が軽くなっていく。
- 繊維:数量 135(販売数量の指数(今期=100))× 価格 3.20(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 433 億円・営業利益 17 億円。ユニチカ事業を取り込み、重複の整理が進む
- 産業資材:数量 92.0(販売数量の指数(今期=100))× 価格 0.96(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 89 億円・営業利益 4 億円。乾燥カンバスの縮小をろ布で補う
- 機能材:数量 150(販売数量の指数(今期=100))× 価格 0.93(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 140 億円・営業利益 7 億円。増粘剤が堅調で複合材が立ち上がる
- 不動産・サービス:数量 100(稼働の指数(今期=100))× 価格 0.77(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 77 億円・営業利益 24 億円。賃料と料金が物価並みに近く上がる
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 220 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社予想は2027年3月期に営業利益15億円、2028年3月期に20億円だ。統合が計画どおりに進めば、中計を超える筋は十分ありうる。
中立 37% 統合で規模は増えるが、利益率は低いまま、不動産とサービスが稼ぎを支える10年 利益 12 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,145 円145 億円
繊維の数量は、ユニチカ事業が通年で入る効果を除くと年1〜3%縮む。国内の衣料需要の減少と、中国製の糸の流入が続くためだ。統合で数量は今の1.3倍になるが、利益率は2.8%にとどまる。
産業資材は乾燥カンバスの需要減で数量が0.85倍になる。機能材は食品用の増粘剤が伸び、堺工場の償却が重い間は低い利益率が続く。不動産とサービスは営業利益が22億円ほどに伸び、全体の稼ぎの大半を占める。
営業利益は22億円で、会社の2028年3月期の予想20億円に物価分を足した水準に近い。本社費は物価で増える。配当は現行の水準を保ち、総額は64億円ほど。
繊維の価格は、衣料の値上げが物価ほど通らないため、物価の伸びを下回る前提で置いた。
- 繊維:数量 130(販売数量の指数(今期=100))× 価格 3.08(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 401 億円・営業利益 11 億円。ユニチカ事業の通年化で数量は増えるが、既存の繊維は年1〜3%縮む
- 産業資材:数量 85.0(販売数量の指数(今期=100))× 価格 0.94(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 80 億円・営業利益 2 億円。乾燥カンバスの需要減が続く
- 機能材:数量 130(販売数量の指数(今期=100))× 価格 0.90(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 117 億円・営業利益 4 億円。増粘剤は伸びるが複合材は小さい
- 不動産・サービス:数量 100(稼働の指数(今期=100))× 価格 0.74(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 74 億円・営業利益 22 億円。リネンサプライと賃貸の料金は物価に近い速さで上がる
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 145 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社予想の2028年3月期は営業利益20億円だが、直近11年のうち営業利益率が4%を超えたのは5年だけだ。統合の効果は取り込むが、繊維の利益率は低いままという筋が最も起こりやすい。
やや悲観 27% 統合の効果が出ず、繊維が赤字すれすれの10年 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 799 円101 億円
統合したユニチカ事業の拠点整理が遅れ、重複した人員と設備の費用が残る。繊維の数量は増えるが、販売価格が上がらず、利益率は1.5%に落ちる。
産業資材は乾燥カンバスが急速に縮み、ほぼ収支ゼロになる。機能材は増粘剤の競争が強まり、複合材も赤字が続く。営業利益は不動産とサービスの稼ぎからほとんど本社費で消える。
配当は現行の水準から減らすが、無配にはしない。借入の返済が進まず、利払いが利益を削る。
統合した事業の人員整理が進まず、固定費が重いまま残る。借入の返済が止まり、利払いが利益を削る。
繊維の価格は海外製品との競争で物価に届かず、機能材の黒字化も遅れる。
- 繊維:数量 115(販売数量の指数(今期=100))× 価格 2.96(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 340 億円・営業利益 5 億円。統合の費用が重く、中国製の糸や海外製の衣料に押される
- 産業資材:数量 75.0(販売数量の指数(今期=100))× 価格 0.90(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 68 億円・営業利益 1 億円。乾燥カンバスが急に縮む
- 機能材:数量 110(販売数量の指数(今期=100))× 価格 0.83(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 91 億円・営業利益 0 億円。増粘剤の競争が強まり、複合材は赤字が続く
- 不動産・サービス:数量 95.0(稼働の指数(今期=100))× 価格 0.71(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 68 億円・営業利益 18 億円。リネンサプライの人件費と料金の伸び悩み
倍率:稼ぐ力は薄く、売れる資産の側で見る。今の自己資本362億円の約0.28倍、約101億円。総資産939億円のうち現金を除く資産を簿価の約73%で売り、負債約577億円を返した残りに近い。時価は有価証券報告書で未確認。 EV(時価総額+純有利子負債)÷営業利益が49倍と高く出るのは、利益が薄い年のためで、倍率は使わず床の資産で見ている。
確率:2021年3月期から2025年3月期の営業利益率は3〜4%台だった。統合で規模が増えても、固定費と借入の利払いが重ければ、利益はほぼ不動産とサービスだけになる。
悲観 13% 統合が失敗し、減損と赤字で借入だけが残る10年 利益 −20 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 433 円55 億円
統合したユニチカ事業の不採算分を閉鎖し、減損と退職金の費用が膨らむ。繊維の数量は今の0.9倍に戻り、赤字が続く。
産業資材は乾燥カンバスの需要が半分近くまで落ちる。機能材は堺工場の稼働が上がらず、減損を計上する。不動産とサービスの利益は残るが、本社費と利払いで消える。
配当は減り、自己資本比率は下がる。残る価値は資産の売却額から借入を返した額になる。
自己資本比率は下がり、借入の条件の見直しや資産の売却が現実の選択肢になる。
不動産とサービスの利益も料金の値上げが追いつかず、人件費の上昇に押される。
- 繊維:数量 90.0(販売数量の指数(今期=100))× 価格 2.71(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 244 億円・営業利益 −2 億円。統合したユニチカ事業を縮小し、不採算の拠点を閉める
- 産業資材:数量 60.0(販売数量の指数(今期=100))× 価格 0.83(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 50 億円・営業利益 −1 億円。乾燥カンバスの需要が半分近くになる
- 機能材:数量 80.0(販売数量の指数(今期=100))× 価格 0.76(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 61 億円・営業利益 −3 億円。堺工場の稼働が上がらず減損
- 不動産・サービス:数量 85.0(稼働の指数(今期=100))× 価格 0.65(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 55 億円・営業利益 14 億円。料金の値上げが追いつかず利益が減る
倍率:稼ぐ力にほぼ値が付かず、床は売れる資産から負債を引いた額。今の自己資本362億円の約0.15倍、約55億円。
確率:2019年3月期に14億円の最終赤字を出した前例がある。統合で借入が増えた今は、同じ規模の損失が出れば自己資本の傷みは前回より大きい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
繊維
綿・合成繊維の糸と織物、染色加工、衣料品の企画販売。
| 数量販売数量の指数(今期=100) | 価格指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.47 | 247 | 5 |
| 10 年後 中立 | 130 | 3.08 | 401 | 11 |
取り方:開示の売上246.5億円・営業利益4.74億円。数量は開示がないため今期を100とする指数で置き、1あたりの売上を単価とした。ユニチカ事業は12月末の取り込みで、今期は3か月分しか入っていない。 価格は衣料の値上げが物価ほど通らず、物価の伸びを下回る前提。
産業資材
製紙用の乾燥カンバスとろ布、工業用の織物。
| 数量販売数量の指数(今期=100) | 価格指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.75 | 75 | 2 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 0.94 | 80 | 2 |
取り方:開示の売上75.3億円・営業利益1.99億円。乾燥カンバスの需要減が続いているため、数量は縮む前提で見る。
機能材
食品用の増粘剤、複合材、機能性の素材。
| 数量販売数量の指数(今期=100) | 価格指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.69 | 69 | −2 |
| 10 年後 中立 | 130 | 0.90 | 117 | 4 |
取り方:開示の売上69.0億円・営業利益は1.5億円の赤字。堺工場の新設による償却が重い。
不動産・サービス
リネンサプライ工場の運営、不動産賃貸、物流。
| 数量稼働の指数(今期=100) | 価格指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.59 | 59 | 19 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.74 | 74 | 22 |
取り方:開示の売上59.3億円・営業利益18.96億円。全社の営業利益の約2倍を稼いでいる。リネンサプライの施設や賃貸の内訳は開示が薄く、数量は指数で置いた。
リスクと懸念
統合の費用と効果の遅れ
ユニチカ事業の重複拠点や人員の整理が遅れれば、統合の費用だけが先に出る。取り込みは12月末で、通年の実力はまだ見えていない。
借入の重さと金利
純有利子負債は245億円で、営業利益は支払利息の2.6倍にとどまる。金利が上がれば利益は急に薄くなる。2028年3月期には新リース会計の導入も重なる。
国内の繊維需要の縮小
人口の減少と海外製品の流入で、国内の糸と衣料の需要が縮む。中国製の糸の流入が続けば、紡績の採算は戻りにくい。
乾燥カンバスの需要減
製紙の国内需要が縮み、産業資材の数量が減る。顧客の製紙会社の設備削減が続けば、固定費の重い工場の稼働が下がる。
機能材の立ち上げの遅れ
堺工場の新設による償却は先に出る。食品用増粘剤や複合材の売上が計画に届かなければ、赤字が長引き、減損の恐れが出る。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が会社予想の15億円を大きく超え、2028年3月期の20億円に近づく
- 統合の効果が出たと見て、中立から楽観の筋書きに寄る。
- 統合した事業の拠点閉鎖や追加の減損が発表される
- 繊維の利益が下がると見て、やや悲観から悲観の筋書きに寄る。
- 賃貸等不動産の売却や含み益を示す開示が出る
- 売れる資産の価値が具体化し、床が上がる。確率は楽観側に動く。
- 借入の返済が進み、純有利子負債が200億円を下回る
- 利払いの負担が減り、利益の質が上がる。やや悲観の確率を下げる。
- 同業との再編や、不動産・サービス事業の分離の発表
- 少数株主にとって別の価値が出うるが、条件は読みにくい。
見ておくもの
- 繊維のセグメント営業利益(統合後の通年)
- 純有利子負債と営業利益に対する支払利息の割合
- 機能材の黒字化の時期
- 賃貸等不動産の時価(有価証券報告書の注記)
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化PERの式とROEがk以下なら1÷kが上限という決まりから置き、今の株価や過去のPBRは使っていない。床は総資産から現金を除いた分を簿価の6〜7割で換金し、負債を引いた額で、PBRの谷から置いていない。賃貸等不動産の含み益は確かめていないので価値に足していない。新リース会計の形は変わるが、10年後の利益の形は今と同じ前提で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.12 倍・やや楽観 PER 9.8→12.12 倍・中立 PER 9.5→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+2.0%を足して9.5%。借入の重さを質で反映しており、追加の上乗せはない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 8.25%。