結論
ルックホールディングスは、海外ブランドの婦人服や革小物を日本と韓国で売る会社だ。イル ビゾンテ、マリメッコ、A.P.C.といった、他社のブランドを借りて売る事業が中心である。
筆者の結論は、会社の資産は厚いが、稼ぐ力は弱く、今の値段はやや高い、というものだ。確率で重みを付けた10年後の価値は、今の時価総額を2割台後半下回る。
足元は苦しい。2025年12月期の営業利益は17.6億円と、前の期から3割減った。2026年12月期は、韓国で扱っていたMAJEとSANDRO(SMCP社のブランド)の独占販売契約が2026年2月に切れ、売上が約80億円減る見通しだ。
それでも利益は反転し始めた。2026年12月期の営業利益は19億円と、前期比8%増を見込む。国内の主力ブランドの出店が進み、韓国の自社ブランドも伸びている。
気になるのは資本の使い方だ。純資産は417億円と時価総額の2倍ある。しかしROEは3.6%にとどまり、在庫157億円と無形固定資産172億円が資本を重くしている。配当性向は5割と高いが、稼ぐ力が低いままでは、純資産の厚さは割安の根拠にならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「資産は厚いが、その資産が稼いでいない」例に見える。純資産は417億円あり、時価総額の2倍だ。しかしROEは3.6%で、資本コストの8.5%にまったく届かない。ためた利益が簿価どおりの価値を持たない状態で、PBR1倍割れを割安と見るのは間違いだ。
事業の質にも疑問がある。売上の柱が他社のブランドの独占販売権で、更新は相手次第だ。堀がなく、契約が切れれば事業が消える。2026年2月の韓国の契約終了は、その危うさの実例である。
一方で、評価できる点もある。借金は軽く、自己資本比率は63%だ。配当の下限(DOE2%)を決め、優待も続ける。経営は2026年に利益重視へ舵を切り、営業利益は反転する見通しだ。
安全域は、純資産の厚さと、悲観でも傷が浅い財務にある。ただし、在庫157億円と無形固定資産172億円は、事業が傾けば簿価どおりの価値は期待できない。
筆者は、株主を大切にする会社だが、事業の持続性に確信が持てない、と考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、ブランドを仕入れて売る小売である。2025年12月期の売上は521億円で、日本が243億円、韓国が257億円、欧州が10億円、その他海外が5億円だった。
日本の主力は3つのブランドだ。フィレンツェ生まれの革製品イル ビゾンテが国内55店、フィンランドのデザイン会社マリメッコが42店、パリ発のA.P.C.が37店である。このほかSCAPAなどアパレル、2025年春に取り扱いを始めた英国の革製品SMYTHSONがある。国内の店舗売上の56%が直営店で、EC化率は2割弱だ。
韓国は売上が日本を上回る。子会社アイディールックが、A.P.C.、A.P.C. GOLF、ELEVENTYなどを百貨店やECで売る。ただし最大の稼ぎ頭だったMAJEとSANDRO(SMCP社)の独占契約は2026年2月に終わった。後継として、フランスのSOEURや日本のmizuiro indの独占契約を結んだ。
欧州では、イル ビゾンテの卸売と直営店を持つ。2025年は赤字だったが、2026年上期はイタリアの直営店と卸売が好調で黒字に転じた。2018年に純粋持株会社になり、傘下に生産・OEMのルックモード、物流のエル・ロジスティクスを持つ。国内販売品の約85%は海外で作られ、連結の従業員は884人だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、いちばん弱い所だ。売上の柱は、他社から借りたブランドの独占販売権である。A.P.C.の契約は2029年12月まで、SCAPAは2029年12月まで、マリメッコは2026年12月までで、更新されるかどうかは相手次第になる。切れたら、売上はそのまま消える。2026年のMAJEとSANDRO(韓国)がその実例だ。
強みは、ブランドを日本と韓国で育てる販売の腕と、店舗網である。国内241店、グループ489店を運営し、ECを含めた会員基盤を持つ。イル ビゾンテや A.P.C. は、会社が時間をかけて育てたブランドで、契約が続く限り安定して稼げる。
収益性は低い。営業利益率は過去12年で最高でも6.8%(2022年12月期)、2025年は3.4%だ。10年のROEの中央値は7.1%、直近は3.6%である。在庫が売上の3割(157億円)と重く、無形固定資産は172億円、そのうちのれん・商標権の割合が大きい。
経営は、利益率の改善に力を入れ始めた。不採算店の閉鎖、高収益ブランドへの集中、飲食事業からの撤退を進め、2026年は利益重視の運営に切り替える。中期経営計画(2028年に売上700億円、営業利益50億円)は意欲的だが、2025年の実績との差は大きい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のアパレル市場は2024年に8兆5,010億円と、4年連続で増えた。ただし1990年代の約15兆円から4割縮んだ成熟市場で、2030年ごろまでは微増にとどまる見通しだ。人口が減る中で、売上を伸ばせるのはブランド力のある会社に限られる。
ルックの主戦場は、中価格帯から高価格帯の輸入ブランドである。ここは円安と物価上昇の影響で、輸入品の値上げが続いている。インバウンド(訪日客)の消費は追い風だが、継続性は読みにくい。EC専業ブランドや、ユニクロなどファストファッションとの競争も強い。
韓国市場は、ファッションの流行の移り変わりが速い。日本のブランドを持ち込む形の事業は、契約の維持が命になる。SMCP社のように、独占契約を更新しない相手が出る。会社は韓国で自社のブランド(アパレル)を育てる戦略に動いており、上期は既存店が前年比112%と、手応えが出てきた。
アウトドアやアスレジャー(運動着の普段着化)は成長分野で、A.P.C. GOLFをアジア・オセアニアの卸売に広げている。この領域は、同じ繊維製品のアパレルの中でもゴールドウインが先行しており、後発のルックが取れる余地は限られる。
資本政策と M&A
還元は手厚い。配当は性向30%以上を方針とし、調整後DOE(純資産配当率)2%を下限とする。2025年12月期の配当は性向50.6%だった。株主優待は、100株以上で商品券を贈る仕組みで、2023年に金額を引き上げた。費用は開示がなく、筆者は年1億円強と推定する。自社株買いは確認できない。
投資は、新規出店が中心だ。中期経営計画では、国内・韓国・欧州・北米・東南アジアで170〜180億円の営業キャッシュフローを見込み、新規出店に回す。M&Aは、2018年にイル ビゾンテを買った実績がある。ただし買ったブランドの利益率が低く、のれんと商標権で無形固定資産が172億円に膨らんだ。
政策保有株を持つ。美津濃や三越伊勢丹ホールディングスなどで、投資有価証券は61億円だ。配当は利益に入っているので、価値は二重に足さない。株主は八木通商(約10%)、日本マスタートラスト信託(6.7%)、美津濃(4.7%)で、八木通商は2026年7月に持分を10.82%から9.81%へ下げた。
ブランドの所有権を持つ海外企業が、日本・韓国の事業ごと買い取る可能性もある。
株主優待の費用は開示がなく、年1.3億円(株主数を6,000人前後、平均で数千円相当の商品券、原価4割で推定)と置き、10年の還元に13億円(悲観は割引)を足した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
契約の更新リスクは、会社が自分で育てたブランドで下げられる、と強気の見方は考える。A.P.C.は日本で2029年12月まで契約を結び、イル ビゾンテは2018年に買収して自社のものにした。国内ではイル ビゾンテ、マリメッコ、A.P.C.の3ブランドが出店を続け、2026年12月期上期の国内売上は前年比106%と伸びている。
韓国は、MAJEとSANDRO(SMCP社)の契約終了で売上が約80億円減るが、自社のアパレルブランドが前年比178%と急伸している。新しい独占ブランド(SOEUR、mizuiro ind)も加わり、利益重視の運営で営業利益は19億円と反転する見通しだ。
欧州も黒字に転じた。中期経営計画では、2028年に売上700億円、営業利益50億円、ROE10%を目指す。純資産は417億円と厚く、ROEが改善すれば、PBR1倍に向けた再評価も働く。
強気の見立てでは、10年後の売上は900億円、営業利益は58億円に達し、時価総額は500億円ほどになる。
慎重な見方
独占契約に頼る事業は、いつか切られる、と慎重な見方は考える。2026年にMAJEとSANDRO(SMCP社)が切れ、2027年以降もマリメッコ(2026年12月期限)などの更新が焦点になる。切れるたびに売上が消え、後継ブランドの育成は時間と費用がかかる。
売上の約半分を占める韓国は、流行の移り変わりが速く、2025年は利益が45%減った。百貨店頼みの店舗網は固定費が重く、物価で家賃や人件費も上がる中で、利益率は低いままだ。営業利益率は過去12年で最高6.8%にすぎない。
資本の重さも問題だ。在庫は157億円で売上の3割、無形固定資産は172億円ある。売上が落ちれば在庫の評価損や、のれんの減損を迫られるおそれがある。ROEは3.6%と資本コストに遠く及ばない。
慎重な見立てでは、国内の人口減と契約の喪失で利益率は2%台に落ち、時価総額は100億円を割る。純資産の厚さも、在庫と無形固定資産が簿価どおりに売れなければ当てにならない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,279 円256 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,271 円99 億円)。 今の値に割り戻すと 2,384 円186 億円、今との差 −11.5%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 7,657 円598 億円 | 1,960 円153 億円 | +256.8% | +13.6% | 673 円53 億円 |
| やや楽観 | 18% | 5,301 円414 億円 | 1,550 円121 億円 | +154.2% | +9.8% | 1,233 円96 億円 |
| 中立 | 35% | 4,131 円323 億円 | 1,345 円105 億円 | +103.2% | +7.3% | 1,917 円150 億円 |
| やや悲観 | 27% | 933 円73 億円 | 1,125 円88 億円 | −23.7% | −2.7% | 555 円43 億円 |
| 悲観 | 13% | 705 円55 億円 | 621 円49 億円 | −50.8% | −6.8% | 172 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,279 円256 億円 | 1,271 円99 億円 | +68.9% | +5.4% | 4,551 円355 億円 |
今の株価時価総額 2,695 円210 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 自社で育てたブランドが日韓で伸び、中期計画の水準に近づく 利益 47 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 7,657 円598 億円
イル ビゾンテ、マリメッコ、A.P.C.の3ブランドが国内で出店を続け、ECも伸びる。日本の売上は10年で1.7倍の430億円ほどになり、利益率は8.5%を保つ。韓国は自社のアパレルブランドが定着し、売上は410億円、利益率は6.5%まで戻る。
欧米では、イル ビゾンテを核に直営店と卸売が広がり、売上は64億円、利益率は7%に乗る。全体の営業利益率は6.4%と、過去の最高(6.8%)に近づく。
配当は利益の45%を保ち、優待も続く。10年後の自己資本は580億円ほどになるが、ROEは8%台と資本コストにやっと届く。
- 日本(国内アパレル・生産・物流を含む):数量 86,700(国内のアパレル小売市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 0.5%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 430 億円・営業利益 37 億円。国内アパレル市場86700億円(実質)× シェア0.373%、営業利益率8.5%
- 韓国:数量 18,000(韓国の輸入・ライセンスのファッション市場で当社が狙う範囲(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 2.3%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 410 億円・営業利益 27 億円。韓国の輸入ファッション市場18000億円(実質)× シェア1.701%、営業利益率6.5%
- 欧州・その他海外:数量 12,000(高級レザーグッズなどの欧米市場で当社が狙う範囲(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 0.5%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 64 億円・営業利益 5 億円。欧米のレザーグッズ市場12000億円(実質)× シェア0.403%、営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.61 倍、時価総額 598 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:A.P.C.などの契約更新、自社ブランドの急伸、欧米への展開がすべてそろう必要がある。中期経営計画(2028年に営業利益50億円)の延長線にあたる。条件が多く、実績が薄いので1割に満たない確率とした。
やや楽観 18% 契約を維持し、国内と韓国で小幅に伸びる 利益 33 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,301 円414 億円
主要3ブランドの契約が更新され、日本の売上は10年で1.55倍の387億円になる。韓国は後継ブランドが育ち、売上は322億円に戻る。欧米は黒字が定着する。
全体の営業利益率は5.6%で、2022年12月期の6.8%には届かない。ライセンスの更新料や、物価の上昇による家賃・人件費の増加が利益を削る。
配当は利益の45%で、10年後の自己資本は540億円ほどになる。ROEは6%台にとどまる。
新ブランドの売上は計画の30億円に近づくが、利益の柱にはならず、在庫が増えやすい構造は変わらない。欧米は黒字が定着し、イル ビゾンテの卸売と直営店の組み合わせが利益に寄与する。EC会員の拡大で販促費の効率も少し上がる。
- 日本(国内アパレル・生産・物流を含む):数量 85,000(国内のアパレル小売市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 0.5%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 387 億円・営業利益 31 億円。国内アパレル市場85000億円(実質)× シェア0.343%、営業利益率8.0%
- 韓国:数量 15,500(韓国の輸入・ライセンスのファッション市場で当社が狙う範囲(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 2.1%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 322 億円・営業利益 18 億円。韓国の輸入ファッション市場15500億円(実質)× シェア1.552%、営業利益率5.5%
- 欧州・その他海外:数量 11,000(高級レザーグッズなどの欧米市場で当社が狙う範囲(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 0.4%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 44 億円・営業利益 2 億円。欧米のレザーグッズ市場11000億円(実質)× シェア0.299%、営業利益率5.5%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 414 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:契約の更新が続き、自社ブランドが少しずつ伸びる筋書き。会社の2026年12月期の予想(営業利益19億円)とも整合する。ただし過去の利益率の低さを考え、中立を超える確率にはしない。
中立 35% 契約は大半を維持するが、利益率は5%に届かない 利益 26 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,131 円323 億円
主要ブランドの契約は大半が更新されるが、一部は条件が厳しくなる。日本の売上は10年で1.37倍の342億円。韓国は新ブランドが穴を埋め、295億円に戻る。欧米は小さな黒字にとどまる。
営業利益率は4.9%で、過去12年の最高(6.8%)より低い。本社費と販管費が物価の分だけ増え、売上の伸びで吸収しきれない。
配当は利益の45%に保たれる。10年後の自己資本は520億円ほどになるが、利益が増えないため、ROEは5%にとどまる。
優待は年1億円強の費用が続き、株主に還元される。
本社移転や店舗の改装、ERPの更新などの費用も、物価の上昇で重くなる。
- 日本(国内アパレル・生産・物流を含む):数量 82,450(国内のアパレル小売市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 0.4%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 343 億円・営業利益 26 億円。国内アパレル市場82450億円(実質)× シェア0.313%、営業利益率7.5%
- 韓国:数量 15,750(韓国の輸入・ライセンスのファッション市場で当社が狙う範囲(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 1.9%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 296 億円・営業利益 15 億円。韓国の輸入ファッション市場15750億円(実質)× シェア1.403%、営業利益率5.0%
- 欧州・その他海外:数量 10,400(高級レザーグッズなどの欧米市場で当社が狙う範囲(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 0.3%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。欧米のレザーグッズ市場10400億円(実質)× シェア0.254%、営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 322 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:一部の契約は切れ、一部は後継で補う形が、この業界の通常の姿に近い。過去12年で営業利益率の最高は6.8%、中央値は4%台なので、5%弱に置き、確率を最も厚くした。
やや悲観 27% 独占契約を相次いで失い、利益率が2%台に落ちる 利益 9 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 933 円73 億円
主要ブランドのうち2〜3つの契約が条件悪化や終了に直面し、後継の育成が間に合わない。日本の市場は人口減で0.95倍、シェアも下がり、売上は314億円にとどまる。韓国は流行に乗れず、売上は206億円に落ちる。
欧米は赤字が続く。営業利益率は2.4%に落ち、本社費の負担が重くなる。在庫の評価損も出る。
配当は性向を維持できず、DOEの下限(2%)が重荷になる。のれん・商標権の減損と在庫の評価損が出て、10年後の自己資本は340億円ほどに減る。ROEは2〜3%にとどまる。
国内の主力ブランドが残るため、事業は続くが、本社費の負担を吸収できず、利益は薄い。
- 日本(国内アパレル・生産・物流を含む):数量 80,750(国内のアパレル小売市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 0.4%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 314 億円・営業利益 17 億円。国内アパレル市場80750億円(実質)× シェア0.291%、営業利益率5.5%
- 韓国:数量 14,000(韓国の輸入・ライセンスのファッション市場で当社が狙う範囲(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 1.5%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 206 億円・営業利益 5 億円。韓国の輸入ファッション市場14000億円(実質)× シェア1.097%、営業利益率2.5%
- 欧州・その他海外:数量 8,000(高級レザーグッズなどの欧米市場で当社が狙う範囲(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 0.2%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。欧米のレザーグッズ市場8000億円(実質)× シェア0.179%、営業利益率-2.0%
倍率:ROE 2.0% は k の 8.5% を大きく下回り、PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。構造的に負けた会社として、稼ぐ力に乏しく、上限の約7割の 8 倍とした。
確率:2026年にSMCP社の契約が切れた実績がある。マリメッコ(2026年12月期限)やA.P.C.(2029年12月期限)の更新で不利な条件を迫られる、あるいは失う形は十分にありうるため、4分の1強を置いた。
悲観 13% ブランドを大半失い、在庫と店舗が重荷になる 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 705 円55 億円
A.P.C.やマリメッコなど柱のブランドの契約を失い、後継が育たない。日本の売上は277億円、韓国は129億円に縮み、欧米は撤退に近い状態になる。
営業利益は赤字になり、店舗の閉鎖費用、在庫の評価損、のれん・商標権の減損が重なる。家賃など固定費は売上が減っても残る。
配当は半減し、優待も縮める。減損で自己資本は250億円ほどまで減り、時価総額はその約2割に下がる。簿価では厚い純資産も、事業が傾けば、在庫157億円や無形固定資産172億円の価値は大きく目減りする。
それでも借入と社債は返せる規模で、清算に至る前に再編や身売りの話が出ると筆者は見る。
- 日本(国内アパレル・生産・物流を含む):数量 76,500(国内のアパレル小売市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 0.4%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 277 億円・営業利益 8 億円。国内アパレル市場76500億円(実質)× シェア0.269%、営業利益率3.0%
- 韓国:数量 12,000(韓国の輸入・ライセンスのファッション市場で当社が狙う範囲(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 1.1%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 129 億円・営業利益 0 億円。韓国の輸入ファッション市場12000億円(実質)× シェア0.799%、営業利益率0.0%
- 欧州・その他海外:数量 7,000(高級レザーグッズなどの欧米市場で当社が狙う範囲(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 0.2%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 11 億円・営業利益 −1 億円。欧米のレザーグッズ市場7000億円(実質)× シェア0.119%、営業利益率-10.0%
倍率:事業の利益は赤字で、稼ぐ力では測れない。売れる資産の税後を床とし、清算されない限り少数株主は現金の使い道を決められないため、さらに割り引いた55億円とした。減損後の自己資本250億円に対するPBRは0.22倍。
確率:契約を相次いで失い、ECや新ブランドで補えない形。頻度は低いが、ライセンス事業では起こりうるため1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(国内アパレル・生産・物流を含む)
イル ビゾンテ、マリメッコ、A.P.C.、SCAPAなどの国内販売。直営店、百貨店、EC、卸売。
| 数量国内のアパレル小売市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア | 価格当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 85,010 | 0.3% | 249 | 17 |
| 10 年後 中立 | 82,450 | 0.4% | 343 | 26 |
取り方:日本セグメントの売上242.95億円に、生産・OEM5.1億円、物流1.0億円を合わせた249.1億円(開示)。国内のアパレル小売市場8兆5,010億円(2024年、名目、センケン)を市場とし、シェアは約0.29%。セグメント利益17.38億円は開示。
韓国
A.P.C.、A.P.C. GOLF、ELEVENTY、SOEUR、mizuiro indなどの韓国での独占販売とEC。MAJE・SANDRO(SMCP)は2026年2月に終了。
| 数量韓国の輸入・ライセンスのファッション市場で当社が狙う範囲(億円、実質)× 当社シェア | 価格当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 15,000 | 1.7% | 257 | 9 |
| 10 年後 中立 | 15,750 | 1.9% | 296 | 15 |
取り方:韓国セグメントの売上257.40億円、セグメント利益9.02億円は開示。狙う市場を約1.5兆円と筆者が推定し、シェア1.7%を逆算した。2026年のMAJE・SANDRO終了で売上が約80億円減る点は、筋書きの10年後に織り込んでいる。
欧州・その他海外
イル ビゾンテの欧州直営店・卸売、米国の直営店・卸売。
| 数量高級レザーグッズなどの欧米市場で当社が狙う範囲(億円、実質)× 当社シェア | 価格当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8,000 | 0.2% | 15 | −2 |
| 10 年後 中立 | 10,400 | 0.3% | 35 | 1 |
取り方:欧州の売上10.08億円・その他海外4.59億円(開示)。セグメント利益は欧州−1.83億円・その他海外−0.26億円。狙う市場を約8,000億円と推定。全社の費用(連結営業利益17.6億円との差−6.7億円)は adjust_oku で見る。
リスクと懸念
独占販売契約の更新・終了
売上の柱はA.P.C.(2029年12月期限)、マリメッコ(2026年12月期限)、SCAPA(2029年12月期限)などの契約で、更新は相手次第だ。2026年2月には韓国のMAJEとSANDRO(SMCP社)の契約が終わり、売上が約80億円減る。
韓国の流行と家賃・人件費の固定
売上の約半分を占める韓国は、流行の移り変わりが速く、2025年は利益が45%減った。百貨店中心の店舗網は賃料と人件費が固定費として残り、売上が落ちたときの利益の落ち込みが大きい。
在庫と無形固定資産の目減り
棚卸資産は157億円で売上の3割、無形固定資産は172億円ある。売上が落ちれば在庫の評価損やのれん・商標権の減損が出て、自己資本が減る。簿価の厚さは安全域にならない。
低い資本効率
ROEは3.6%と資本コストの8.5%に届かない。純資産が厚いのに稼いでいない状態が続く。中期経営計画(2028年にROE10%)が実現しなければ、再評価の根拠がなくなる。
海外生産と為替・関税
国内販売品の約85%は海外で作られる。円安や関税、原産地の地政学リスクが仕入れ価格に響く。イル ビゾンテの米国卸売は、通商政策の影響で前期を下回った。
百貨店と人口減
国内は人口減少と百貨店の縮小という構造的な逆風がある。ECとインバウンドで補っているが、継続性は読みにくい。
今後の分かれ目
- マリメッコや A.P.C. などの契約が、予定どおり長期で更新されたら
- 契約切れの不安が薄れ、中立より上の筋書きに確率を移してよい。更新の条件(期間と独占の範囲)も確認する。
- 韓国の自社ブランド(アパレル)が前年比150%超の伸びを続け、営業利益率が5%を超えたら
- 韓国の穴埋めが確かになり、やや楽観の確率を上げる。
- 主要ブランドの契約が終了または不利な条件で更新されたら
- 売上の穴が大きいため、やや悲観〜悲観に重みを移す。後継ブランドの売上を四半期ごとに確認する。
- 在庫が売上の3割を超えて積み上がり、評価損が出たら
- 資産の簿価に依存する安全域の議論が崩れる。悲観の確率を上げる。
- 八木通商が持分をさらに下げる、または第三者が保有を増やしたら
- 資本政策や再編の動きにつながる可能性があり、TOBの確率は上げてよい。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益率と、国内・韓国の既存店売上
- 主要ブランド(A.P.C.、マリメッコ、SCAPA)の契約更新
- 棚卸資産の水準と評価損
- 中期経営計画(2028年に営業利益50億円)の進み具合
- 配当性向・DOEと株主優待の方針
倍率と資本コストの決め方
日本・韓国・欧米の3つに、市場×シェアを置いて10年後の利益と倍率を式から決めた。今の株価は見ていない。2025年12月期の営業利益率3.4%、過去12年の最高6.8%を超えない形で、中立は4.9%に置いた。ROEがkを下回るため、倍率は1÷k(11.8倍)の上限の約76%に置いた。純資産の厚さ(417億円)は、稼ぐ力の裏づけがないため倍率の根拠にしていない。同じ領域の会社(オンワード9.4倍、TSI9.2倍)と近い水準になったが、市場の倍率を見て決めてはいない。今の時価総額(214億円)を基準にした調整はしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.61 倍・やや楽観 PER 10→12.5 倍・中立 PER 9→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。ライセンス契約の更新リスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。