結論
グンゼは、肌着とストッキングで知られる京都の老舗だ。いまの稼ぎの柱は肌着ではなく、包装フィルムや半導体向け樹脂を作る機能ソリューション事業である。医療材料のメディカル事業が、それに続く。
筆者の結論は「割高」だ。10年先の中心の見立てでも、価値は今の時価総額を大きく下回る。会社が悪いのではない。今の値段が、赤字のアパレルの再建と医療の回復を、ほぼ全部先取りしているのである。
アパレルは売上の44%を占めるが、前期は13億円の営業赤字に落ちた。量販店の売り場が縮み、在庫の評価損も出た。国内の生産拠点をたたみ、希望退職を募る大手術の最中にある。
一方、機能ソリューションは営業利益率が15%と高く、会社全体の利益をほぼ一手に支える。メディカルも中国の規制で足踏みしたが、国内の癒着防止材や組織補強材は堅い。
財務は健全だ。自己資本比率は7割を超え、借金は軽い。会社は配当と自社株買いで利益以上を返すと約束した。ただし、利益そのものが2027年度に1.8倍へ戻る前提の計画は、過去の実績に照らして甘い。
買収される側として見る向きもあるが、筆者は値段の根拠にしない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、グンゼは「持ち続けたい会社」とまではいえない。
理由は、稼ぎの質だ。利益の大半を樹脂事業が生んでおり、売上の半分近くを占めるアパレルは利益を食っている。株主のものになる利益、つまり再投資を引いたあとの利益は、いまの見かけよりずっと小さい。
次に、資本の使い方だ。自己資本の厚さは安全域になるが、その資本が資本コストを上回って稼いでいない。ためたお金が低い収益で眠るなら、株主にとっては値打ちが目減りしていく。経営がそれを認め、返す方向へ舵を切ったのは評価できる。
最後に、計画の確かさだ。前の中計は利益100億円の目標に対し79億円で終わった。今回は2027年度に125億円を掲げるが、足元の予想は88億円だ。筆者は、この差を埋める確信を持てない。
楽観の筋書きでも、10年後の時価総額は今の1.5倍ほどだ。払う値段に対する安全域は薄い。
何で稼ぐ会社か
グンゼは4つの事業で稼ぐ。2026年3月期の売上は1,309億円、営業利益は49億円だ。
機能ソリューション(売上475億円、営業利益72億円)は、最大の稼ぎ頭である。ペットボトルに巻く収縮フィルム、食品の包装フィルム、複合機や半導体の製造工程で使う樹脂製品が中心だ。収縮フィルムは国内首位といわれる。滋賀の守山工場は、出た端材を再生して使う資源循環型の工場に建て替え、約95億円を投じて2027年度に仕上げる。
メディカル(売上132億円、営業利益15億円)は、体内で溶けて消える癒着防止材、骨をつなぐ骨接合材、組織を補強するシートなどを病院に納める。前期は中国の高額医療への規制で利益が減った。綾部に新工場を建て、日本・中国・米国・欧州の4拠点で売る構想だ。
アパレル(売上586億円、営業損益13億円の赤字)は、肌着の「キレイラボ」、汗対策の「アセドロン」、ストッキングの「サブリナ」を持つ。量販店向けが細り、通販や自社サイトの直販が伸びている。
ライフクリエイト(売上125億円、営業利益12億円)は、兵庫・尼崎のショッピングセンター「つかしん」、スポーツクラブ、緑化事業を運営する。
本社費などの調整が、営業利益から37億円ほど引かれる(4事業の数字との差から割り出した推定)。4事業の利益を足しても、会社全体の利益はその分だけ小さい。
優良さと弱いところ
優良さを一言でいえば、「財務は強いが、稼ぐ力は事業ごとにまちまち」だ。
強みの1つは、機能ソリューションの技術である。薄いフィルムを何層も重ねて延ばす技術は、収縮フィルムと半導体向けの両方に効く。利益率が15%あり、肌着のような値段競争に巻き込まれにくい。
弱みはアパレルである。値段を決めるのは量販店で、ユニクロのような大手も近くにいる。堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。全社で見ても、堀は「普通」にとどまると筆者は考える。
資本効率は低い。自己資本利益率は過去10年の中央値で3.4%、資本コストの半分にも届かない。厚い自己資本に比べて、稼ぎが小さいのだ。会社も2027年度に8%以上を掲げたが、前の中計は目標の6.3%に対し5.3%で終わった。
経営の意思は変わりつつある。配当の基準を厚くし、自社株買いも実施した。2026年6月には社長が代わり、アパレルの改善を最優先に掲げる。ただし、構造改革に10年以上かかった事業を、2年で黒字へ戻す計画だ。実行力はこれから試される。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
グンゼの競争相手は、事業ごとに違う。
肌着の国内市場は、人口とともにじわじわ縮む。そこへユニクロやネット通販が入り、量販店の売り場は減っている。グンゼは、売り場の縮小に合わせて品目を絞り、直販へ軸足を移した。値上げも進める。だが、売り場を失う速さに、直販の伸びが追いつくかが勝負だ。
包装フィルムは、飲料の消費が弱く、収縮フィルムの需要は伸びにくい。海外では低価格品が増え、日本の品は競争力を落としている。一方、AI関連の工業用途や、環境対応のリサイクル品は伸びている。
半導体向けの樹脂は、設備投資の波に左右される。今は谷にあるが、増産体制はすでに整えた。需要が戻れば利益の振れが大きく出る。
医療材料では、世界大手のジョンソン・エンド・ジョンソンのような相手がいる。国内の癒着防止材は価格競争が厳しい。中国は、国産品を優先する流れと日中関係の悪化で、日本製の購入が抑えられている。
全体として、グンゼは「縮む市場で稼ぐ事業」から「伸びる市場で稼ぐ事業」へ重心を移す途中にある。その移り変わりが10年で終わるのか、途中で息切れするのかが、評価の分かれ目だ。
資本政策と M&A
資本政策は、この会社でいちばん変わった部分だ。
自己資本は1,000億円以上、自己資本比率は60%程度を目安にする。それを上回る分は株主へ返す。配当は、自己資本に対する割合で4.0%以上とし、利益が足りなくても出す。ROEが8%に届くまでは、配当と自社株買いの合計が利益の100%を超えるまで返す。
実際に、2025年11月から50億円の自社株買いを実施し、300万株を消却した。政策保有株、つまり取引先と持ち合っていた株は、投資有価証券が40億円弱まで減っており、重荷にならない。
成長への投資も重い。前期の設備投資は162億円で、エンプラと医療の新工場、アパレルの海外移転に充てた。営業キャッシュフローだけでは足りず、外部から借り入れた。
買収する側としては、プラスチックのリサイクル分野でM&Aを検討すると表明している。買われる側の見方もあるが、会社は自社の価値向上を優先している。
還元は方針(DOE4.0%以上、ROEが8%に届くまで総還元性向100%超)どおり。中立は純利益の合計(起点は一過性を除いた50億円)の約114%で、超える分は自己資本1,000億円以上の目安を守る範囲で返す。
点検済み:中立の営業利益率7.4%が会社予想(27・28年3月期6.7〜6.9%)と過去最高(5.8%)を超え、前の中計が目標を外した実績もあるため、メディカル13%・アパレル2.5%に置き直した(全社6.9%)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アパレルの再建が成功し、機能ソリューションとメディカルが計画どおり伸びれば、グンゼは別の会社になる。
アパレルは、国内の生産拠点をたたみ、品目を絞り、値上げを通す。構造改革で営業損益を33億円改善する計画が、実際に進み始めた。汗対策のアセドロンは好調が続き、売り場が縮んでも直販が補える。
機能ソリューションは、半導体と事務機器向けの増産体制がすでにある。需要が戻れば、利益率は15%台後半へ上がる。収縮フィルムは、リサイクル原料の使用率を高めるほど、環境対応を求める顧客に選ばれやすくなる。
メディカルは、中国の一時的な逆風を除けば、国内の吸収性製品が堅調だ。綾部の新工場が動き、米国と欧州の販売網も育つ。前期は利益率が11%に落ちたが、本来は18%超だった。
会社は、2030年度に営業利益160億円とROE10%を掲げる。達成すれば、資本効率が資本コストを上回る会社になり、配当の厚さと合わせて評価が大きく変わる。
慎重な見方
過去の実績を見れば、計画に頼るのは危うい。前の中計は、利益の目標100億円を79億円で外した。自己資本利益率も、目標6.3%に対し5.3%だった。
アパレルは、市場そのものが縮んでいる。量販店の売り場は減り、人口は減る。品目を絞っても、数量が落ちれば固定費の重さは残る。海外生産への移行は、為替と物流のリスクを新しく背負う。
機能ソリューションは、収縮フィルムが飲料の消費低迷で弱く、海外では低価格品に負けている。半導体向けは設備投資の波に左右され、利益の振れが大きい。
メディカルは、中国で高額医療の規制と国産品の優先が続く。国内でも、新製品の承認が遅れ、癒着防止材の値段は厳しい。利益は前期に4割落ちた。
そのうえ、会社の自己資本は厚いのに稼ぎが小さい。資本コストを下回る事業にためた利益は、帳簿の値より小さな価値しかない。株主還元を厚くしても、利益そのものが増えないなら、10年後の時価総額は伸びない。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方である。計画の確かさと、資本効率の低さが決め手になった。
機能ソリューションの高い利益率と、医療の長期的な伸びは評価する。ただ、利益が元の水準へ戻るだけでは、今の値段の裏付けにならない。
確率は、やや悲観を28%、悲観を12%と厚めに置いた。中心は4割にとどめ、やや楽観と楽観は合わせて2割にした。再建が思いどおり進めば上振れもありうる、という余地は残している。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,693 円845 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,989 円624 億円)。 今の値に割り戻すと 2,601 円816 億円、今との差 −36.6%、 期待の年率 +1.3%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 7,145 円2,241 億円 | 3,022 円948 億円 | +148.0% | +9.5% | 508 円159 億円 |
| やや楽観 | 15% | 5,024 円1,576 億円 | 2,646 円830 億円 | +87.1% | +6.5% | 1,150 円361 億円 |
| 中立 | 40% | 2,961 円929 億円 | 2,249 円705 億円 | +27.1% | +2.4% | 2,084 円654 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1,159 円364 億円 | 1,594 円500 億円 | −32.9% | −3.9% | 771 円242 億円 |
| 悲観 | 12% | 608 円191 億円 | 797 円250 億円 | −65.7% | −10.2% | 169 円53 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,693 円845 億円 | 1,989 円624 億円 | +14.2% | +1.3% | 4,682 円1,469 億円 |
今の株価時価総額 4,100 円1,286 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 5% 再建が成功し、樹脂と医療が計画を超える 利益 146 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 7,145 円2,241 億円
アパレルの再建がうまくいく。国内の生産拠点をたたんだ効果が出て、品目を絞り、値上げも通る。通販の直販が量販店の落ち込みを補い、営業利益率は6%台まで戻る。
機能ソリューションは、半導体と事務機器向けが本格的に回復する。守山のリサイクル工場も軌道に乗り、環境対応の包装を求める顧客が増える。利益率は17%台に上がる。
メディカルは、中国の逆風が薄れ、綾部の新工場が動く。米国と欧州でも組織補強材と癒着防止材が売れ、利益率は20%に戻る。
全社の営業利益は今期予想の2倍を超える。資本効率は資本コストを上回り、会社は2030年度に掲げた目標をほぼ達成する。ROEが8%を超えて、特別な還元は役目を終える。
- 機能ソリューション:数量 91.7(販売量(千トン。推定))× 価格 94(1 トンあたり売上(万円)。物価と海外の低価格化・製品の中身で動く)→ 売上 860 億円・営業利益 151 億円。数量1.35倍(半導体・事務機器の回復と増産分)、値段1.34倍。営業利益率17.5%
- メディカル:数量 1.5(取扱量(実質・億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 201(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率 × 値下がり)→ 売上 301 億円・営業利益 60 億円。数量1.7倍(国内の吸収性製品と米欧)、値段1.34倍。営業利益率20%
- アパレル:数量 85.5(販売点数(百万点。推定))× 価格 872(1 点あたり売上(円)。物価・値上げと量販店の値下げ圧力で動く)→ 売上 746 億円・営業利益 49 億円。数量0.95倍、値段1.34倍(値上げが通る)。営業利益率6.5%
- ライフクリエイト:数量 0.9(取扱量(実質・億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 201(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率)→ 売上 185 億円・営業利益 21 億円。数量1.1倍。営業利益率11.5%
倍率:事業の純利益 146 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.34 倍、時価総額 2,241 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:アパレルの再建、半導体の回復、医療の中国復調の3つが重なる必要がある。前の中計の目標を外した実績もあり、5%にとどめた。
やや楽観 15% アパレルは黒字定着、樹脂と医療は計画の8割 利益 112 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 5,024 円1,576 億円
アパレルは、小さな黒字で定着する。構造改革の効果は出るが、量販店の縮小は続き、利益率は5%にとどまる。
機能ソリューションは、半導体向けの回復が計画の8割ほどで、収縮フィルムは横ばいだ。利益率は16%台を保つ。
メディカルは、国内の吸収性製品が伸び、中国も底を打つ。ただし価格競争で、利益率は本来の18%には戻りきらず、17%台になる。
全社の営業利益は180億円ほどで、会社の目標には届かないが、今より大きく伸びる。ROEは9%台に乗り、特別な還元は終わる。資本効率が資本コストをやや上回る、普通の優良企業になる。
- 機能ソリューション:数量 84.9(販売量(千トン。推定))× 価格 92(1 トンあたり売上(万円)。物価と海外の低価格化・製品の中身で動く)→ 売上 785 億円・営業利益 129 億円。数量1.25倍、値段1.32倍。営業利益率16.5%
- メディカル:数量 1.3(取扱量(実質・億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 198(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率 × 値下がり)→ 売上 261 億円・営業利益 46 億円。数量1.5倍、値段1.32倍。営業利益率17.5%
- アパレル:数量 81.0(販売点数(百万点。推定))× 価格 859(1 点あたり売上(円)。物価・値上げと量販店の値下げ圧力で動く)→ 売上 696 億円・営業利益 35 億円。数量0.9倍、値段1.32倍。営業利益率5%
- ライフクリエイト:数量 0.9(取扱量(実質・億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 201(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率)→ 売上 176 億円・営業利益 19 億円。数量1.05倍。営業利益率10.5%
倍率:事業の純利益 112 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 14.02 倍、時価総額 1,576 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:機能ソリューションの稼ぐ力と、医療の長期の伸びは確かだ。アパレルが小さな黒字で落ち着く道は十分あるので、15%を置いた。
中立 40% アパレルは小幅黒字、樹脂と医療が利益を支える 利益 74 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,961 円929 億円
アパレルは、小さな黒字を保つ。国内の生産拠点を整理した効果が出る一方、量販店の縮小と人口減で数量は1割5分ほど細る。営業利益率は2%台にとどまる。
機能ソリューションは、半導体、事務機器、工業用途が伸び、収縮フィルムの減を埋める。値段は、海外の低価格品に押されて物価ほどは上がらない。利益率は15%を保つ。
メディカルは、国内の癒着防止材と組織補強材が伸びる。中国は規制が続くが、悪化はしない。利益率は13%まで戻る。
全社の営業利益は120億円ほどで、前期の2.4倍、今期予想の1.4倍だ。物価の3%を引くと、実質の伸びは小さい。会社の計画(2027年度に125億円)には、10年かけても届かない形になる。ROEは7%台で、資本コストにわずかに届かない。
- 機能ソリューション:数量 78.1(販売量(千トン。推定))× 価格 91(1 トンあたり売上(万円)。物価と海外の低価格化・製品の中身で動く)→ 売上 711 億円・営業利益 107 億円。数量1.15倍(半導体・事務機器・工業用途が収縮フィルムの減を上回る)、値段は海外の低価格化で物価より実質3%低い1.30倍。営業利益率15%
- メディカル:数量 1.1(取扱量(実質・億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 195(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率 × 値下がり)→ 売上 223 億円・営業利益 29 億円。数量1.3倍、値段は償還価格の引き下げ圧力で1.30倍。営業利益率13%
- アパレル:数量 76.5(販売点数(百万点。推定))× 価格 846(1 点あたり売上(円)。物価・値上げと量販店の値下げ圧力で動く)→ 売上 648 億円・営業利益 16 億円。数量0.85倍(売り場縮小と人口減)、値段1.30倍。営業利益率2.5%
- ライフクリエイト:数量 0.8(取扱量(実質・億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 201(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率)→ 売上 168 億円・営業利益 16 億円。数量横ばい、値段は物価並み。営業利益率9.5%
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 929 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:慎重な見方がやや強いなか、4割を置いた。機能ソリューションの安定と医療の回復を認め、アパレルは小さな黒字と見る落としどころだ。
やや悲観 28% 売り場の縮小が止まらず、医療も伸びきらない 利益 40 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,159 円364 億円
アパレルの売り場縮小が続き、数量は8割を切る。海外生産への移行で為替の影響が増え、利益率は1%台にとどまる。
機能ソリューションは、海外の低価格品に押されて、値段が物価ほど上がらない。半導体は回復するが、収縮フィルムは細る。利益率は12%台に下がる。
メディカルは、中国の規制が長引き、国内も価格競争が厳しい。利益率は10%台前半だ。
全社の営業利益は60億円弱で、前期より少し多い程度にとどまる。名目でも伸びず、実質では減る。ROEは3%台で、資本コストを大きく下回る。ためた自己資本は、帳簿の値より小さい価値しかもたない。10年後の値付けは、稼ぐ力だけで測られる。
- 機能ソリューション:数量 67.9(販売量(千トン。推定))× 価格 87(1 トンあたり売上(万円)。物価と海外の低価格化・製品の中身で動く)→ 売上 590 億円・営業利益 74 億円。数量横ばい、値段1.24倍(低価格品に押される)。営業利益率12.5%
- メディカル:数量 1.0(取扱量(実質・億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 183(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率 × 値下がり)→ 売上 177 億円・営業利益 19 億円。数量1.1倍、値段1.22倍(中国の規制と価格競争)。営業利益率10.5%
- アパレル:数量 70.2(販売点数(百万点。推定))× 価格 814(1 点あたり売上(円)。物価・値上げと量販店の値下げ圧力で動く)→ 売上 571 億円・営業利益 9 億円。数量0.78倍、値段1.25倍。営業利益率1.5%
- ライフクリエイト:数量 0.8(取扱量(実質・億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 195(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率)→ 売上 152 億円・営業利益 11 億円。数量0.93倍。営業利益率7.5%
倍率:事業のROE 3.9%はk 8.0%を大きく下回る。残る割合1/2でRONIC=5.9%、縮む事業なのでg 3.0%とおくと正当化PER=9.9倍。稼ぐ力で測り、9.0倍に置いた。ためた自己資本は額面未満の価値とみて、帳簿には掛けない。
確率:前の中計を外した実績、売り場縮小、中国の規制が長引く可能性を重く見て、28%と厚く置いた。
悲観 12% アパレルの赤字が居座り、樹脂も価格競争に負ける 利益 23 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 608 円191 億円
アパレルの赤字が居座る。海外生産への移行が思うように進まず、量販店の売り場も失い、数量は3割減る。構造改革を重ねても、黒字化は収支とんとんまでしか届かない。
機能ソリューションは、中国・韓国の低価格品に押され、値段が下がる。半導体向けも海外勢に取られ、利益率は11%に落ちる。
メディカルは、中国の国産品優先が決定的になり、国内でも癒着防止材の値段が崩れる。利益率は8%で、成長の柱にはならない。
全社の営業利益は30億円に満たない。配当の基準を守りきれず、還元を縮める。資産の減損も出る。ROEは2%を割り、ためた自己資本は帳簿の値より小さな価値しかもたない。10年後の値付けは、事業の稼ぐ力だけで決まる。
- 機能ソリューション:数量 64.5(販売量(千トン。推定))× 価格 84(1 トンあたり売上(万円)。物価と海外の低価格化・製品の中身で動く)→ 売上 542 億円・営業利益 60 億円。数量0.95倍、値段1.20倍。営業利益率10%
- メディカル:数量 0.8(取扱量(実質・億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 173(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率 × 値下がり)→ 売上 137 億円・営業利益 11 億円。数量0.9倍、値段1.15倍。営業利益率7%
- アパレル:数量 63.0(販売点数(百万点。推定))× 価格 781(1 点あたり売上(円)。物価・値上げと量販店の値下げ圧力で動く)→ 売上 492 億円・営業利益 0 億円。数量0.7倍、値段1.20倍。営業損益は収支とんとん
- ライフクリエイト:数量 0.7(取扱量(実質・億ドル相当。今の値段で測る))× 価格 188(実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率)→ 売上 133 億円・営業利益 7 億円。数量0.85倍。営業利益率4%
倍率:事業の ROE 2.2% は k 8.0% を大きく下回り、構造的に負けた事業なので残る割合は 1/3、g 2.0%。RONIC=6.1%、正当化 PER=11.2 倍。アパレルの赤字が居座り樹脂も負ける、いちばん質の悪い利益なので、やや悲観の 9 割より低い 7.5 割の 8.4 倍に置いた。ためた自己資本は帳簿の値で評価しない。 PBR は 0.19 倍と低いが、ROE が 2% では帳簿の自己資本は価値の根拠にならない。売れる資産は、土地(簿価 102 億円)を 7 割、投資有価証券(39 億円)を 9 割、運転資本の回収分(推定 150 億円前後)を足し、純有利子負債 39 億円を引いて約 200 億円で、稼ぐ力から出した値とほぼ釣り合う。
確率:構造的に負ける筋書きで、アパレルの赤字が居座り、樹脂も価格競争に敗れる。再建を2年で終える計画の確かさに疑いがあり、12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
機能ソリューション
収縮フィルム・包装フィルム、複合機や半導体向けのエンジニアリングプラスチックス。守山のリサイクル工場もここに入る。
| 数量販売量(千トン。推定) | 価格1 トンあたり売上(万円)。物価と海外の低価格化・製品の中身で動く | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 67.9 | 70 | 475 | 72 |
| 10 年後 中立 | 78.1 | 91 | 711 | 107 |
取り方:会社開示の売上475.4億円・営業利益72.3億円(2026/03期)。販売量は開示が無いので、フィルム・樹脂の平均単価を1トン70万円前後と置いて割り戻した推定(約6.8万トン)。単位は千トン×万円/トン×0.1=億円。
メディカル
癒着防止材・骨接合材・組織補強材など体内で吸収される医療材料と、仕入れ品の医療機器。
| 数量取扱量(実質・億ドル相当。今の値段で測る) | 価格実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率 × 値下がり | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.9 | 150 | 132 | 15 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 195 | 223 | 29 |
取り方:会社開示の売上132.0億円・営業利益14.7億円(前期は24.3億円)。物量の開示は無いので、売上を150円で割った実質の取扱量で置いた。
アパレル
肌着(キレイラボなど)、汗対策のアセドロン、ストッキング(サブリナ)などのレッグウェア。量販店と直販で売る。
| 数量販売点数(百万点。推定) | 価格1 点あたり売上(円)。物価・値上げと量販店の値下げ圧力で動く | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 90.0 | 651 | 586 | −13 |
| 10 年後 中立 | 76.5 | 846 | 648 | 16 |
取り方:会社開示の売上586.0億円・営業損益13.3億円の赤字(在庫の評価損約19億円を含む)。販売点数は開示が無いので、肌着とストッキングの平均単価を1点あたり約0.065万円と置いた推定(約9,000万点)。単位は百万点×円×0.01=億円。
ライフクリエイト
ショッピングセンター「つかしん」などの不動産、スポーツクラブ、緑化。
| 数量取扱量(実質・億ドル相当。今の値段で測る) | 価格実質 1 ドルあたりの売上(円)=150 円 × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 150 | 125 | 12 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 201 | 168 | 16 |
取り方:会社開示の売上125.3億円・営業利益12.3億円。物量の開示は無いので、売上を150円で割った実質の取扱量で置いた。
リスクと懸念
アパレル再建の遅れ
国内の生産拠点をたたみ、海外生産へ移す。希望退職は82人が応募し、特別損失は35億円に達した。それでも量販店の売り場は縮み続ける。黒字化が2年遅れれば、構造改革の費用だけが先に出る。
計画と実績のずれ
前の中計は営業利益100億円の目標を79億円で外し、ROEも5.3%にとどまった。今回の目標125億円は、足元の予想88億円との開きが大きい。達成できなければ、資本効率の約束も崩れる。
中国の医療規制と日中関係
メディカルの前期の利益は4割近く落ちた。中国では高額医療への規制と国産品の優先が続き、日本製の購入も抑えられている。回復が遅れれば、医療を成長の柱に置く構図が揺らぐ。
半導体と事務機器の波
エンプラの半導体向けは、設備投資の谷で足踏みしている。増産体制を先に整えたため、需要が戻らなければ、減価償却の負担だけが利益を圧迫する。前期の設備投資は162億円と例年にない大きさだった。
包装フィルムの海外競争
海外では低価格品が増え、日本製のフィルムは競争力に課題がある。飲料向けの収縮フィルムも、消費の弱さと原料高で苦しい。国内の優位を海外へ広げられないと、成長の余地が狭まる。
借入を前提にした資本政策
自己資本比率を60%程度まで下げ、借金で投資と還元を賄う方針だ。金利が上がる局面では、利払いが増える。利益が計画に届かないまま還元だけが続けば、財務の余裕が削れる。
今後の分かれ目
- アパレルの営業損益が、2027年3月期に黒字へ戻ったら
- 再建の第一段階をこなしたと判断し、やや楽観より上の確率を引き上げる。国内の固定費が下がった証拠になる。
- アパレルが、2027年3月期も赤字のままだったら
- 構造改革が数量の縮みに追いついていないと見る。やや悲観・悲観の確率を上げ、中立の利益率を引き下げる。
- メディカルの営業利益率が、2年以内に15%を超えたら
- 中国の逆風を乗り越え、医療が柱になる道が見えたと判断する。やや楽観以上の確率を引き上げてよい。
- エンプラの半導体向けが、2027年度に前期比で2割以上伸びたら
- 増産投資が収益に変わる合図で、機能ソリューションの利益率の見立てを上げる。
- 営業利益が、2027年度に100億円を超えたら
- 計画の確かさが高まったと見て、慎重な見方の確率を下げる。今の値段との差も縮まる。
- 総還元が、利益の100%を超える状態が3年を超えて続いたら
- 自己資本が下限の1,000億円に近づく。財務の余裕と将来の投資余地を再点検する。
見ておくもの
- アパレルの営業損益と、直販(アセドロンなど)の売上
- 機能ソリューションの営業利益率と、半導体向けの回復
- メディカルの中国販売と、綾部新工場の稼働
- 営業利益が中計の目標125億円に近づく速さ
- 総還元(配当と自社株買い)と自己資本の水準
倍率と資本コストの決め方
売上は事業ごとに、数量と値段で積み上げた。今の株価と PER は見ずに筋書きを置き、倍率は資本コスト8.0%(基本7.5%に、値決め力+0.25%と寿命+0.25%)と長期成長、事業のROEから出る正当化PERで決めた。中立のROEは資本コストに届かないので、上限は1÷k。今の値段は、会社予想の利益に対して25倍前後で、筆者の置いた倍率の2倍を超える。今の値段に寄せて倍率を上げ下げしていない。純有利子負債は小さく、店舗の賃借も小さいため、リース会計(2028/03期から)の影響は特に調整していない。10年後の数字は、今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.8→15.34 倍・やや楽観 PER 12.9→14.02 倍・中立 PER 11.4→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。