結論
丸八ホールディングスは、羽毛・真綿のふとんを訪問販売で売る会社だ。売上は 118 億円で、そのうちダイレクトセールス(訪問販売)が約半分、残りがリース・通販などと東京のビル賃貸である。筆者の結論は割高。時価総額は純資産の 4 割しかなく割安に見えるが、その資産は株主に戻りにくい。
事業の質は悪くない。寝具の営業利益率は 14% 近く、広告費と配送を絞って利益を伸ばした。しかし売上は 10 年で 209 億円から 118 億円に縮み、販売員は減り続けている。
利益の質に注意が要る。2026 年 3 月期の純利益 37 億円は、為替差益 10.6 億円と子会社の清算益 6.0 億円、有価証券の売却益 3.1 億円を含む。会社は翌期を 18 億円と予想するが、その大半も運用収益だ。
この会社は、ふとんの会社であると同時に、有価証券と現金で 400 億円を超える金融資産を持つ資産運用の会社でもある。ただし親会社の洋大が 68% を握り、配当性向は 2 割にとどまる。少数株主が資産の価値を受け取れるかが評価の核心だ。
バリュー投資の観点から
事業は分かりやすい。ふとんは暮らしに欠かせず、10 年後も需要はある。ただし、売り方の訪問販売は規制と高齢化に押されている。販売員を育てられなければ、売上は減り続ける。
バリュー投資の観点では、まず経営者が資本をどう使うかを見る。この会社は営業利益の 15 億円から、有価証券と現金に 400 億円を超える資産を積み上げ、さらに借り入れて運用している。しかも配当性向は 2 割だ。株主のものになる利益、つまりオーナー利益は、事業の稼ぎの 10 億円ほどに限られる。
安全域は一見厚い。時価総額は純資産の 4 割で、賃貸不動産は簿価より 41 億円高い。しかし支配株主が 68% を持ち、資産を株主に戻す仕組みが無い。純資産の 4 割という安さは、戻りにくさを織り込んだ値段でもある。
筆者は、「安いから買う」会社ではなく、「資産が戻る仕組みができたら見直す」会社と見る。
何で稼ぐ会社か
寝具・リビング用品が売上の 9 割を占める。羽毛ふとん、真綿ふとん、マットレス、枕などを、静岡県西部の磐田・袋井の工場とラオスの工場で作る。売り方の中心はダイレクトセールス、つまり販売員が顧客の自宅を訪ねたり催事で売ったりする方式で、売上の 49% を占める。割賦(分割払い)の信販事業も抱える。ふとんのリース、レンタル、クリーニング、不要になったふとんのリサイクルも手がける。
収益の特徴は、粗利が高い一方で販売員の人件費が重いことだ。2026 年 3 月期は広告宣伝費の抑制と原価低減、配送の効率化で寝具の営業利益が 17.5% 増えた。連結の従業員は 638 名で、うち 608 名が寝具だ。
不動産賃貸は売上の 1 割、利益の 3 分の 1 を稼ぐ。新宿区のパークウェスト、港区の丸八青山ビル、町田と調布のホテル、新横浜のビルなどを持つ。賃貸目的の不動産は簿価 108.5 億円、会社が開示する時価は 150.1 億円。
さらに持株会社の傘下に、オーストラリアや中国・青島の子会社があり、米ドルや豪ドルで運用する金融資産も持つ。2022 年に持株会社化し、名古屋証券取引所に上場した。
優良さと弱いところ
堀は「普通」と見る。丸八真綿のブランドは中高年に浸透し、顧客と販売員の個人的な関係が競争の壁になっている。しかしそれは、販売員が減れば崩れる壁でもある。ニトリや西川などの量販・専門店とは売り方が違う分、競う場面は限られるが、通販や店頭に移る客は増えている。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 2.9%、2026 年 3 月期でも 6.4% にとどまる。事業の稼ぎに比べて自己資本の 581 億円が大きく、そのうち有価証券と現金が 400 億円超を占める。
利益の質も見ておきたい。営業利益は 15 億円前後だが、経常利益は 2026 年 3 月期に 40 億円を超えた。差の大半は運用収益と為替差益だ。運用に借り入れも使い、借入を 36 億円増やしている。
経営は親会社の洋大が 68% を持つ支配株主の下にある。外部から資本政策を変える力は弱く、配当は期末の年 1 回、配当性向は 2 割、自社株買いはしない。株主還元を「第一」とうたうが、実績は控えめだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の寝具市場は、人口減と高齢化で数量が緩やかに縮む。購入の主役は中高年だが、販売チャネルは量販・専門店・通販・ホームセンターに移り、訪問販売は規制と消費者意識の変化で細っている。特定商取引法、割賦販売法、個人情報保護法の対応も費用を押し上げる。
原材料は羽毛が中心で、円安と国際相場の影響を受ける。ラオスの工場は低コストの生産拠点だが、国内の工場は静岡県西部に集中し、地震など自然災害のリスクを抱える。
競合は西川、ニトリ、無印良品、通販の専門会社などで、価格や寝心地の提案で攻めてくる。ふとんの買い替え周期は長く、一度買えば 10 年以上使われる。
不動産賃貸は別の環境で動く。東京の賃貸ビルは賃料が物価に連動しやすいが、ホテル向けの建て貸しは賃料が固定的で、観光の波を受ける。金利が上がると、不動産の評価と資金調達の費用の両方に響く。
丸八が属するのは、この 3 つの環境が重なる珍しい会社だ。ふとんの訪問販売は縮む市場、賃貸は物価に連動する資産、金融資産は金利と為替の波である。業界の見通しを一本の需要曲線で語れないため、ここでは事業ごとに別の前提を置く。ふとんは実質で毎年 1% 弱縮み、賃貸は物価並み、金融資産は時価を基準に見る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。方針は「株主還元を第一」で、年 1 回の期末配当を続ける。第 14 期の配当は総額 7.7 億円、連結の配当性向は 20.9% だった。自社株買いと株主優待の記載はない。中期経営計画も開示されていない。
資本政策の実態は、利益をためて金融資産を積み上げる形だ。2026 年 3 月期は長期借入 115 億円を新たに調達し、79 億円を返済して、借入を 36 億円増やした。米ドルと豪ドルの金融資産を持ち、為替差益 10.6 億円が利益を押し上げた。フリーキャッシュフローは約 65 億円のマイナスになった。
M&A は少ない。海外では英国の G L Bowron の株式を譲渡し、タイの工場を売却した。2026 年 4 月には、資産管理子会社の丸八アセットが現物配当を通じて直接の子会社になった。
支配構造が評価の核心だ。洋大が 68.4%、静岡銀行が 3.4%、残りは個人など。市場に流通する株は限られ、TOB の確率は 24% と見積もられるが、親会社が応じるかは別の話だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、時価総額 223 億円に対して、有価証券と現金で 400 億円を超える金融資産を持ち、借入を引いても 230 億円ほどが余る。賃貸不動産も簿価 108.5 億円に対して時価 150.1 億円で、含み益が 41 億円ある。事業を無料でもらい、金融資産を 4 割引きで買っているようなものだ。
事業も悪くない。寝具の営業利益率は 14% 近くあり、ここ 4 年は 12〜14% で安定している。広告費の抑制と配送の効率化は、構造的な改善として定着しつつある。2027 年 3 月期の 1Q は営業利益 5.4 億円と通期予想の 4 割に達した。
資本政策が変わる芽もある。2026 年 4 月に丸八アセットが直接の子会社になり、グループの整理が進んでいる。PBR 0.4 倍の放置は、上場を続ける限り批判にさらされる。名証メインに上場する以上、資本コストを意識した経営の開示も求められる。親会社が相続や資産の整理で上場を取りやめれば、少数株主には高い価格での TOB が提示されるはずだ。
慎重な見方
売上は 10 年で 209 億円から 118 億円に縮み、最近 4 年も実質では年 3% ずつ減っている。ダイレクトセールスの販売員は減少が続き、高齢の顧客に依存する訪問販売は規制にも弱い。2026 年 3 月期の営業利益率 13% は、広告費の削減と配送の最適化という一回限りの効果で、売上の伸びを伴っていない。
純利益 37 億円は、為替差益 10.6 億円、子会社の清算益 6.0 億円、有価証券の売却益 3.1 億円を含む。2027 年 3 月期の予想は 18 億円に落ちる。足元の好調は事業でなく運用の結果で、為替は 1 年で逆に動きうる。借入を 36 億円増やして外貨建て資産を持つのは、本業と関係のない賭けだ。
何より、資産が株主に戻らない。親会社が 68% を持ち、配当性向は 2 割、自社株買いはゼロ。純資産の 4 割という値段は、資産を使えないことへの正当な割引である。TOB の期待に値を払うのは、事業の価値でなく買い手の都合に賭けることになる。
どちらに重みを置いたか
資産の豊かさと事業の安定は、両方の見方が一致する。争点は、その資産が少数株主に戻るかだ。親会社が 68% を持ち、配当性向は 2 割、自社株買いも無い。この実績を重く見て、慎重な見方を強く取った。確率は中立に 38%、やや悲観に 24% を置いた。楽観は親会社が還元に動く場合に限り 8%、やや楽観を 20% にとどめた。悲観は金融資産の値下がりと直販の崩れが重なる場合で 10%。計算の結果は大きな割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,775 円275 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 501 円78 億円)。 今の値に割り戻すと 1,210 円188 億円、今との差 −13.2%、 期待の年率 +5.0%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,384 円370 億円 | 968 円150 億円 | +140.3% | +9.2% | 268 円42 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,144 円332 億円 | 678 円105 億円 | +102.2% | +7.3% | 564 円87 億円 |
| 中立 | 38% | 2,066 円320 億円 | 484 円75 億円 | +82.8% | +6.2% | 969 円150 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,320 円205 億円 | 355 円55 億円 | +20.1% | +1.8% | 402 円62 億円 |
| 悲観 | 10% | 534 円83 億円 | 194 円30 億円 | −47.8% | −6.3% | 73 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,775 円275 億円 | 501 円78 億円 | +63.2% | +5.0% | 2,276 円353 億円 |
今の株価時価総額 1,395 円216 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 販売員の確保に成功し、親会社が資産の還元に動く 利益 18 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,384 円370 億円
寝具は直販の販売員を採用・定着させる仕組みを整え、60 代以下の顧客に商品を広げる。通販とリースを組み合わせ、市場が 3% 縮むなかでシェアの低下を 5% にとどめる。広告費の抑制と配送の効率化が定着し、営業利益率は 14% まで上がる。
不動産賃貸は新しい物件を取得して簿価ベースで 2 割増える。東京の賃料は物価並みに上がり、賃貸の利益は 10 億円近くになる。
資本政策も動く。余った金融資産(有価証券と現金で 230 億円ほど)の一部を、特別配当や自社株買いで株主に戻す。還元は 10 年で 150 億円に届く。それでも ROE は 3% に満たず、倍率は PER の上限 12 倍に届かない。筆者はこの筋書きを、実現すれば最も良い形として置く。
- 寝具・リビング用品:数量 9,700(国内の寝具市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 1.4%(丸八のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.01067 × 1.0))→ 売上 132 億円・営業利益 18 億円。営業利益率14%
- 不動産賃貸:数量 130(賃貸目的不動産の簿価(億円、実質))× 価格 0.14(簿価に対する賃料の利回り × 物価の指数(2026 年 = 0.1073 × 1.0))→ 売上 19 億円・営業利益 10 億円。営業利益率52%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)172 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 370 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:寝具の直販が若返りに成功し、同時に親会社が資産を株主に戻す。二つが重なる必要があり、親会社が動く根拠は開示にない。ただ、PBR 0.4 倍の割安さを解消しようという圧力は上場維持の条件にもなりうるため、1 割弱を置いた。
やや楽観 20% 直販の落ち込みが止まり、賃貸が伸びる 利益 15 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,144 円332 億円
寝具は市場が 5% 縮み、シェアは 1 割下がるが、物価並みの値上げで売上は 120 億円ほどを保つ。営業利益率は 13%、ここ 4 年の平均(12〜13%)の上側に収まる。
賃貸は 1 棟追加されて簿価が 1 割増え、賃料も物価に近い伸びで利益は 8.6 億円になる。
還元は 10 年で 105 億円、配当を少しずつ引き上げる形だ。余った金融資産は 230 億円のまま積み上がる。
運用では、ドルと豪ドルの金融資産が為替で大きく損をしない前提を置く。ドル円は 150 円に固定した世界なので、為替差益は出ないが、差損も出ない。配当性向は 2 割台から 3 割台へと慎重に上がるが、親会社が資産を使い続ける姿勢は変わらない。ROE は 2% 台にとどまる。
- 寝具・リビング用品:数量 9,500(国内の寝具市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 1.3%(丸八のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.01067 × 1.0))→ 売上 121 億円・営業利益 16 億円。営業利益率13%
- 不動産賃貸:数量 119(賃貸目的不動産の簿価(億円、実質))× 価格 0.14(簿価に対する賃料の利回り × 物価の指数(2026 年 = 0.1073 × 1.0))→ 売上 17 億円・営業利益 9 億円。営業利益率51%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.1% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)172 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 332 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:広告費の抑制と配送の効率化は 2026 年 3 月期に実際に利益を押し上げた。この効果が続き、直販の減少が緩む筋書きで、中立の次に起こりやすい。
中立 38% 寝具は静かに縮み、賃貸と金融資産が下支えする 利益 13 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 2,066 円320 億円
寝具は国内市場が実質で 8% ほど縮み、販売員の減少でシェアも 15% 下がる。物価より低い年率 2.7% の値上げで、売上は 108 億円と今とほぼ同じ名目額にとどまる。営業利益率は 12%。ここ 4 年の 12〜14% の下側に置いた。
不動産賃貸は簿価が変わらず、賃料の伸びが物価をやや下回る。賃貸の利益は 7.6 億円。持株会社の費用や連結消去は物価で増え、営業利益は 13.5 億円ほどになる。
純利益は事業の稼ぎ(営業利益の 7 割)だけで見ると 9〜10 億円で、会社が足元で見せる 18 億円との違いは運用収益だ。運用収益は資産を時価で別に評価するので、ここでは含めない。還元は配当を中心に 10 年で 75 億円。自己資本の積み上がりは続き、ROE は 2% 台と資本コストの 4 分の 1 にとどまる。
- 寝具・リビング用品:数量 9,200(国内の寝具市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 1.2%(丸八のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.01067 × 1.0))→ 売上 109 億円・営業利益 13 億円。営業利益率12%
- 不動産賃貸:数量 109(賃貸目的不動産の簿価(億円、実質))× 価格 0.14(簿価に対する賃料の利回り × 物価の指数(2026 年 = 0.1073 × 1.0))→ 売上 15 億円・営業利益 8 億円。営業利益率50%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)172 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 299 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最近 4 年の売上は 118 億円前後で横ばい、実質では年 3% ほど縮んでいる。広告費の抑制で利益率は上がったが、販売員が減る問題は残る。この延長線を中立に最も厚く置いた。
やや悲観 24% 直販が崩れ、金融資産の価値も目減りする 利益 8 億円 · PER 10.3 倍 · 株価時価総額 1,320 円205 億円
寝具は市場が実質で 12% 縮み、シェアも 2 割以上落ちる。値上げは物価の伸びを下回り、売上は 92 億円まで下がる。営業利益率は 9% で、広告費を戻さざるを得なくなる。
賃貸も、ホテル物件の賃料改定が物価に追いつかず、空室も出て、利益は 6.3 億円にとどまる。
運用収益も細る。保有する株や債券、外貨建て資産の価格が下がり、余った資産の価値は 4 分の 3 に目減りする。還元は 10 年で 55 億円。
経営は広告費を戻し、販売員の待遇を改善しようとするが、採用の効果は薄い。配当は据え置きのまま、利益の減りに合わせて 10 年の還元額が細る。親会社の資産運用の姿勢は変わらず、金融資産は戻らない。2020 年 3 月期前後の営業利益率(6% 前後)より低く、赤字寸前の水準になる。
- 寝具・リビング用品:数量 8,800(国内の寝具市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 1.0%(丸八のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.01067 × 1.0))→ 売上 92 億円・営業利益 8 億円。営業利益率9%
- 不動産賃貸:数量 109(賃貸目的不動産の簿価(億円、実質))× 価格 0.13(簿価に対する賃料の利回り × 物価の指数(2026 年 = 0.1073 × 1.0))→ 売上 14 億円・営業利益 6 億円。営業利益率45%
倍率:ROE が k 以下で、稼ぐ力(事業の純利益÷k)は小さい。PER の上限 12.1 倍の約 7.5 割(10.3 倍)。余った資産は 0.75 倍の 172 億円に戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:ふとんの訪問販売は、特定商取引法の規制強化や顧客の高齢化に弱い。販売員の減少が止まらず、利益率が元に戻る筋書きで、中立の次に起こりやすい。
悲観 10% 直販が成り立たなくなり、金融資産も大きく傷む 利益 1 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 534 円83 億円
寝具の直販は販売員を確保できず、市場の縮小も重なってシェアは 3 割以上落ちる。売上は 64 億円まで減り、営業利益率は 3% に沈む。本社費を物価で増やす前提のため、全社の営業損益は赤字に落ちる。
賃貸の物件のうち一部を売却して簿価が 1 割減る。
金融資産は株・債券・外貨建て資産が大きく値下がりし、価値は半分に目減りする。親会社が動かず、少数株主は資産の使い方を決められない。還元は 10 年で 30 億円まで細る。
構造的な負けの中身は 3 つある。ひとつは訪問販売そのものの規制強化と、販売員の高齢化・離職だ。ふたつめは顧客の高齢化で、ふとんの買い替え需要が量販・通販に流れること。みっつめは、借り入れて持った外貨建て資産の評価損が自己資本を傷つけることだ。経営は支配株主の下で動かず、少数株主は資産の使い方を決められない。
- 寝具・リビング用品:数量 8,000(国内の寝具市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 0.8%(丸八のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.01067 × 1.0))→ 売上 64 億円・営業利益 2 億円。営業利益率3%
- 不動産賃貸:数量 97.7(賃貸目的不動産の簿価(億円、実質))× 価格 0.12(簿価に対する賃料の利回り × 物価の指数(2026 年 = 0.1073 × 1.0))→ 売上 12 億円・営業利益 5 億円。営業利益率40%
倍率:営業損益がマイナスで、稼ぐ力は小さい。PER の上限 12.1 倍の約 7 割(8.5 倍)に置いたが、事業の純利益は利息控除後でほぼゼロ。余った資産は 0.5 倍の 115 億円に戻り方 0.5 を掛けて足した(親会社が動かず戻らない前提)。
確率:訪問販売の規制強化や景気の急変、保有する金融資産の大幅な下落が重なる筋書き。1 割は置いてよいが、賃貸の収益と資産の下支えがあり、これ以上は厚くしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
寝具・リビング用品
羽毛・真綿ふとんなどの製造とダイレクトセールス(訪問販売)、リース、レンタル、リサイクル、割賦。
| 数量国内の寝具市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定) | 価格丸八のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.01067 × 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,000 | 1.1% | 107 | 15 |
| 10 年後 中立 | 9,200 | 1.2% | 109 | 13 |
取り方:寝具・リビング用品の売上 106.7 億円(有報)を、実質の市場 10,000 億円(出典を確認できず、筆者の推定)× シェアと物価の指数 0.01067 に分けた。セグメント利益 14.8 億円は有報。数量(実質の市場)は人口減で中立 10 年 0.92 倍、シェアは販売員の減少で 15% 低下。価格は物価 1.34 倍より低い 1.30 倍(量販・通販への流出で値上げが物価に届かない)。ダイレクトセールスは売上の 49.4%。市場の大きさ:西川・ニトリ・無印良品などが並ぶ国内の寝具市場で、丸八は直販に特化した中堅。
不動産賃貸
東京の賃貸ビル・ホテルの賃貸。新宿区のパークウェスト、港区の丸八青山ビル、町田・調布のホテル、新横浜のビルなど。
| 数量賃貸目的不動産の簿価(億円、実質) | 価格簿価に対する賃料の利回り × 物価の指数(2026 年 = 0.1073 × 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 109 | 0.11 | 12 | 6 |
| 10 年後 中立 | 109 | 0.14 | 15 | 8 |
取り方:不動産賃貸の売上 11.64 億円(有報)を、賃貸目的の不動産の簿価 108.5 億円(EDINET DB 要約)× 賃料利回り 10.73%(簿価ベース。時価 150.1 億円では約 7.8%)に分けた。セグメント利益 6.03 億円は有報。数量は簿価が横ばい、価格は賃料が物価をやや下回って上がり 1.30 倍。
リスクと懸念
支配株主の下で資産が戻らない
親会社の洋大が 68.4% を持ち、配当性向は 2 割、自社株買いはしない。余った金融資産は 230 億円ほどあるが、少数株主に戻る保証がない。
訪問販売の縮小と規制
ダイレクトセールスは売上の約半分。販売員の減少と顧客の高齢化が続き、特定商取引法・割賦販売法の規制も重い。販売員の確保が止まれば売上は急減する。
為替と金融資産の価格変動
米ドル・豪ドル建ての金融資産を持ち、2026 年 3 月期は為替差益が 10.6 億円。逆に動けば利益が減り、保有有価証券の値下がりは純資産にも響く。
借り入れで運用するリスク
長期借入を 36 億円増やして運用資産を積み増した。金利の上昇や運用の失敗は、利益と財務の両方を傷つける。フリーキャッシュフローは約 65 億円のマイナスだった。
原材料と円安
羽毛などの価格は国際相場と円安に左右される。コスト高を価格に移せなければ営業利益率が下がる。
工場の集中と自然災害
国内の工場は静岡県西部に集中している。大地震などで生産が止まれば、販売員が持つ顧客関係も維持しにくくなる。
不動産市況と賃料
東京の賃貸ビルとホテルが利益の 3 分の 1 を占める。ホテル向けの建て貸しは観光の波に左右され、金利上昇は不動産価格を押し下げる。
今後の分かれ目
- 配当性向を 4 割以上に引き上げ、または自社株買いを始めたら
- 余った資産の戻り方を 0.5 から引き上げて見直す。価値は大きく上がる。
- 親会社が TOB や完全子会社化を発表したら
- 買い手の価格は純資産近辺が目安。ただし事業の稼ぎ以上の値は付きにくい。
- ダイレクトセールスの販売員数・売上が 2 期連続で前年を下回る幅が広がったら
- 寝具の数量前提を引き下げ、やや悲観側に重みを移す。
- 為替差益が剥落し、翌期の経常利益が営業利益に近づいたら
- 運用収益の持続性を疑う。事業の稼ぎだけで評価するほうが現実に近い。
- 保有有価証券で大きな評価損や売却損が出たら
- 悲観の筋書き(金融資産の値下がり)に重みを移す。
- 賃貸不動産を売却して株主に還元する方針を出したら
- 含み益 41 億円の税引き後が還元に回り、戻り方を見直す根拠になる。
見ておくもの
- ダイレクトセールスの売上比率と販売員数
- 営業外収益の内訳(受取配当・利息・為替差益)
- 配当性向と自社株買いの有無
- 借入残高と金融資産の評価損益
- 親会社の洋大・8128 の動きと名証メインの上場維持
倍率と資本コストの決め方
寝具は市場規模(実質、出典を確認できず推定)× シェアと物価の指数、賃貸は簿価 × 利回りで積み上げ、価格は物価より低い 1.30 倍(寝具は量販・通販への流出)とした。営業利益率は中立で 12%(ここ 4 年の 12〜14% の下側)。net_oku は営業利益の 7 割に、余った資産の現金並みの利息 1.4%(3.2 億円)を足した形で置いた。実際の運用収益は 14 億円ほどあるが、資産は時価で別に足すので二重に数えない。余った資産は有価証券 267 億円 + 現金 146 億円 − 借入約 160 億円 − 事業に要る現金 20 億円で 230 億円とし、親会社が 68% を持ち配当性向 2 割のため戻り方 0.5。ROE は 2% 台で k 以下、PER の上限は 1÷k=12.1 倍。賃貸不動産の含み益(時価 150.1 億円と簿価 108.5 億円の差)は賃料が利益に入るので足さない。今の株価や PBR 0.4 倍から倍率を置いていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75%。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。