結論
日本フエルトは、紙を作る機械に使うフェルトの会社だ。1917年の創業で、国内ではイチカワと並ぶ2強の一角にある。もう1つの顔は、保有株と賃貸ビルを抱える資産の会社だ。
結論から言う。今の値段は、割高と見る。本業の稼ぎが薄く、価値の大半が保有株と現金にあるからだ。上場株は103億円を持ち、現金も純額で18億円ある。時価総額170億円のうち、本業が占める分は小さい。
本業のフェルトは、利益がほとんど出ていない。営業利益4.4億円のうち、賃貸の利益が3億円ほどを占める。フェルトの営業利益は1億円台にとどまる。国内の紙の生産量が年2%ほどのペースで減り、売上は10年で2割落ちた。
一方で、会社は資産の還元に動き始めた。2026年9月には保有株3銘柄を売り、約17億円の売却益が出る。自社株買いも4億円を実行した。目標のDOE(自己資本に対する配当の割合)も2.5%以上と置いた。
それでも筆者は、還元の速さを中立としても、10年の価値は今の値段に届かないと見る。資産を早く戻すほど評価は上がるが、本業の価値が小さいからだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、日本フエルトは「事業の株ではなく、資産の株」だ。
本業のフェルトは、製紙という縮む業界に消耗品を納める仕事だ。堀はあるが、価格を決める力がない。10年先も事業は残るが、今より強くなる姿は描きにくい。
資産の側は、評価できる。上場株103億円と純現金18億円は、利益を生む力が弱くても、価値そのものはある。会社が保有株の縮減に動いたのは、望ましい変化だ。
問題は、戻る速さと値段だ。資産を早く株主に戻すほど評価は上がるが、時間がかかれば、10年分の資本コストがかかる。ROEが2%台の会社に、資本コストを上回る価値は生まれない。
オーナー利益、つまり再投資を引いて株主に残る利益は、純利益に近い。年5億円前後で、時価総額に対する利回りは3%台。国債の利回りより低い。
安全域はない。資産の価値を足し上げても、今の値段のほうが高い。DOE5パーセントのような投資家の買いが、価格を支えているのかもしれない。それは本質価値とは別の話だ。
何で稼ぐ会社か
日本フエルトは、製紙会社の抄紙機(紙を作る機械)に使う消耗品を作る会社だ。事業はフェルト事業と不動産賃貸事業の2つがある。
主力は紙・パルプ用のフェルトだ。抄紙機の中で、濡れた紙から水を絞り取る布状の製品で、製紙会社は摩耗するたびに取り替える。売上の約8割が紙・パルプ業界向けで、日本製紙が売上の11%を占める。ほかに、製紙用のワイヤー、シュープレス用のベルト、集塵機用のバグフィルターなど、工業用の製品もある。
2026年3月期の売上は94億円。内訳は、紙・パルプ用のフェルトが74億円(うち海外が18億円)、工業用その他が14億円、残りが不動産賃貸の6億円ほどだ。賃貸は利益率が5割前後と高く、営業利益の主役になっている。
工場は埼玉県の蕨と栃木にある。海外は、台湾の子会社(持分68.7%)が台湾唯一の抄紙用フェルト工場を運営し、上海にも販売会社がある。従業員は連結で541人だ。
本社は東京都北区にある。本社ビルの一部と、オフィスビル、介護施設を貸している。賃貸は景気の波を受けにくく、フェルトの落ち込みを支える土台だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、製紙会社との長い取引と、抄紙機ごとの技術の蓄積にある。
フェルトは、機械ごと、紙の種類ごとに設計が違う。製紙会社は品質の安定を重んじるため、一度採用した会社を簡単には替えない。国内では、イチカワと2社で市場の大半を分け合う。
ただし、堀は価格に結びついていない。客は王子ホールディングスや日本製紙のような大手で、交渉力が強い。国内の紙・板紙の生産量は、2015年の2,600万トン台から2024年の2,160万トンへ2割ほど減った。会社の売上も2割ほど落ち、1トンあたりの売上はほぼ横ばいだった。物価が上がるなかで、実質では値下がりが続いたことになる。
資本効率は低い。ROE(自己資本に対する純利益の割合)は、10年の中央値が2.8%で、資本コストの半分以下だ。営業利益率は2%から8%まで揺れるが、賃貸を除くと、フェルト本業は赤字に近い年が多い。
財務は健全だ。自己資本比率は8割に近く、借金は軽い。
経営の資本配分は、保有株を抱え続けてきた点が弱い。上場株103億円が、ROEを押し下げた。最近は、保有株の売却と自社株買いに動いており、方向は正しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
製紙用フェルトの需要は、国内の紙の生産量で決まる。生産量は、新聞や印刷用紙の落ち込みで減り続けている。
2025年の紙・板紙の国内需要は2.6%減った。グラフィック用紙(新聞・印刷用紙)は6%減、段ボールなどのパッケージ用紙は0.7%減、衛生用紙は0.8%増だった。新聞用紙は9%台の減少だ。人口減とデジタル化で、この流れは変わりにくい。
抄紙機も減る。製紙会社は採算の悪い機械を止め、残った機械の稼働を上げて対応する。フェルト1枚あたりの寿命を延ばす技術も進み、消耗品としての需要は生産量の減少以上に細りやすい。
生き残る分野もある。段ボールや衛生用紙は底堅く、アジアの紙・板紙は増えている。会社は中国、東南アジア、インドの市場開拓と、家庭紙・板紙機向けの強化を掲げる。ただ、海外ではバルメットやアルバニーなどの世界大手が強い。
競争は、国内ではイチカワとの2社が中心で、価格を安売りしない暗黙の了解がある。ただ、客である製紙会社の側がコスト削減の圧力をかけるため、価格は上がりにくい。
10年の構図は、数量がゆるやかに縮み、価格が物価の半分ほど上がるというものだ。売上は横ばい、利益は賃貸に支えられる。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、保有株の扱いだ。上場株20銘柄の簿価は103億円で、みずほ、三井住友、三菱UFJの3メガバンクだけで約69億円を占める。製紙大手の王子ホールディングス、大王製紙、北越コーポレーションも持つ。
2026年9月、会社は保有株3銘柄を10月1日から9日に売ると発表した。売却益は約17億円になる。目的は、保有株の縮減で資産効率を高めることだ。
自社株買いも動いている。2026年7月から9月に約40万株(約4億円)を買い、2023年にも約2.7億円の買い付けをした。配当は、2026年3月期が配当性向7割ほどで、次期はさらに増配する。中期計画(2026〜2028年度)は、営業利益4.7億円以上、ROE4%以上、DOE2.5%以上を掲げる。
資産の価値は、売却益にかかる税(約3割)を引いて数えた。配当は利益に含まれているため、価値には二重に足していない。
大株主は王子ホールディングス(約9%)、自己株式(約6%)、日本製紙(約4%)だ。日本製紙は2025年12月に3ポイント下げた。2026年10月には、DOE5パーセントと共同保有者が9.4%まで買い増したと報告された。kabufuの試算で、10年以内のTOB(公開買い付け)の確率は約20%だ。株主優待は、QUOカードで年0.3億円未満とみて、還元には足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社は資産の還元に本気で動き始めた。2026年9月に保有株3銘柄を売り、約17億円の売却益が出る。自社株買いも4億円を実行した。DOE2.5%以上という目標も置いた。この流れは、今後も続く。
保有株の縮減で、上場株103億円の多くが現金に変わる。現金は自社株買いと増配で株主に戻る。DOE5パーセントのような投資家が株主に入り、圧力は強まる。10年で資産の8割以上が戻れば、価値は今の簿価に近づく。
本業にも芽がある。家庭紙と板紙は底堅く、アジアの紙の生産量は増える。台湾の子会社を足場に、中国、東南アジア、インドで売上を伸ばせば、海外のフェルトは今の1.7倍になる。
賃貸は、オフィスビルと介護施設で安定している。賃料は物価の分だけ上がる。
さらに、TOBの可能性もある。kabufuの試算で、10年以内のTOBの確率は約20%。保有株を含む資産の価値を踏まえた価格なら、今の値段を大きく上回りうる。
慎重な見方
本業は縮み続ける。国内の紙・板紙の生産量は10年で2割減り、新聞用紙は毎年1割近く減っている。抄紙機の停止が続けば、フェルトの出荷は生産量の減少以上に落ちる。売上は10年で2割減り、これからの10年も同じ道をたどる。
利益の質も弱い。営業利益4.4億円のうち、賃貸が3億円ほどを占める。フェルト本業は、赤字に近い年が多い。2027年3月期の会社計画は、営業利益を44%減の2.5億円と見ている。
資産は、戻る保証がない。会社は保有株の縮減を進めるが、ペースは遅い。10年で資産の半分も戻らなければ、資本コストの分だけ価値は削られる。中期計画のROE4%以上は、資本コストの半分で、達成しても足りない。
客の交渉力が強い。製紙会社はコスト削減の圧力を強め、フェルトの価格は物価に追いつかない。10年で1トンあたりの売上は、ほぼ横ばいだった。
DOE5パーセントのような投資家の買いは、価格を支えるかもしれないが、価値を増やすわけではない。
どちらに重みを置いたか
どちらにも根拠がある。強気の見方は資産の還元に、慎重な見方は本業の縮小に支えられている。
筆者は、慎重な見方を強いと見た。資産が戻るほど価値は上がるが、本業の価値が小さく、戻る速さにも限りがある。確率は、やや悲観に28%、悲観に10%を置いた。楽観は6%にとどめる。結果として、中立でも今の値段を大きく下回り、割高と出た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 550 円92 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 628 円105 億円)。 今の値に割り戻すと 640 円107 億円、今との差 −38.2%、 期待の年率 +1.3%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 671 円112 億円 | 897 円150 億円 | +51.5% | +4.2% | 94 円16 億円 |
| やや楽観 | 18% | 630 円105 億円 | 778 円130 億円 | +36.0% | +3.1% | 253 円42 億円 |
| 中立 | 38% | 601 円100 億円 | 688 円115 億円 | +24.5% | +2.2% | 490 円82 億円 |
| やや悲観 | 28% | 475 円79 億円 | 509 円85 億円 | −5.0% | −0.5% | 275 円46 億円 |
| 悲観 | 10% | 348 円58 億円 | 299 円50 億円 | −37.5% | −4.6% | 65 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 550 円92 億円 | 628 円105 億円 | +13.8% | +1.3% | 1,177 円197 億円 |
今の株価時価総額 1,035 円173 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 資産の還元が加速し、海外が伸びる 利益 9 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 671 円112 億円
資産の還元が加速する。保有株は3銘柄の売却に続き、残りの多くも現金に変わり、自社株買いと増配で株主に戻る。DOE5パーセントのような投資家が圧力をかけ、10年で資産の8割以上が戻る。
本業では、家庭紙と板紙向けが底堅く、アジアの紙の生産量が増える。海外のフェルトは今の1.7倍に伸び、国内の数量減は7%にとどまる。価格は物価の7割ほどまで上がる。フェルト本業の営業利益率は3%台に乗り、全社の営業利益は9億円台になる。
賃貸は物価の分だけ上がり、安定する。TOBの可能性もあるが、ここでは本業と資産の価値で測っている。ROEは5%台にとどまり、資本コストに届かないため、倍率は式の上限の9割強にとどめた。
- 国内の紙・パルプ用フェルト:数量 804(納入先の紙・板紙生産量(万トン)× 日本フエルトの納入割合)× 価格 826(対応する生産1万トンあたりの売上(万円、名目))→ 売上 66 億円・営業利益 2 億円。営業利益率3.5%
- 海外の紙・パルプ用フェルト:数量 478(納入先の紙・板紙生産量(万トン相当))× 価格 826(対応する生産1万トンあたりの売上(万円、名目))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。営業利益率5.0%
- 工業用その他:数量 3.3(納入件数(百件、推定))× 価格 622(1件あたりの平均売上(万円、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。営業利益率5.0%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(一式))× 価格 8.14(賃料収入(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。営業利益率5割
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)17 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 112 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保有株の縮減、海外の拡大、国内の下げ止まりが、10年にわたってそろう必要がある。本業の構造を考えると、確度は高くない。
やや楽観 18% 資産の還元が着実に進み、本業は小幅に縮む 利益 7 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 630 円105 億円
保有株の縮減は続き、資産の7割ほどが10年で戻る。DOE2.5%以上の目標も守られ、自社株買いが定期的に入る。本業は、国内の数量が11%減、海外が45%増。価格は物価の6割ほど上がる。
フェルトの営業利益率は2%台に乗り、全社の営業利益は7億円ほどになる。会社の中期計画の営業利益4.7億円は上回る。ROEは4%台で、資本コストの半分ほどだ。
資産が戻ると、1株の価値は増えるが、本業の価値が小さい点は変わらない。海外は台湾の子会社が支え、工業用その他も小さく伸びる。賃貸は物価の分だけ上がり、利益の土台であり続ける。
- 国内の紙・パルプ用フェルト:数量 769(納入先の紙・板紙生産量(万トン)× 日本フエルトの納入割合)× 価格 787(対応する生産1万トンあたりの売上(万円、名目))→ 売上 61 億円・営業利益 1 億円。営業利益率2.2%
- 海外の紙・パルプ用フェルト:数量 407(納入先の紙・板紙生産量(万トン相当))× 価格 787(対応する生産1万トンあたりの売上(万円、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。営業利益率4.0%
- 工業用その他:数量 3.1(納入件数(百件、推定))× 価格 603(1件あたりの平均売上(万円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。営業利益率4.0%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(一式))× 価格 7.82(賃料収入(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。営業利益率5割
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 105 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保有株の縮減は、すでに売却が始まっていて現実味が高い。ただし、本業の縮小を打ち消すほどではないと見る。
中立 38% 中立:本業はゆるやかに縮み、賃貸が利益を支える 利益 6 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 601 円100 億円
国内の紙・板紙の生産量は、年1.5%ほどのペースで減り、10年で14%減る。フェルトの国内の数量も同じ割合で減る。海外は台湾の子会社を足場に25%増え、工業用その他は5%減る。価格は物価の半分ほど上がり、売上は105億円ほどになる。
フェルト本業の営業利益率は1〜2%台にとどまり、賃貸が営業利益の7割を占める。全社の営業利益は5〜6億円。減価償却は今の約7億円で、設備投資も同規模のため、ほぼ横ばいだ。更新の投資は物価で膨らむが、償却を超える分は小さい。
保有株の縮減は、会社の目標どおり進む。10年で資産の6割が戻り、配当と自社株買いの合計は115億円になる。ROEは3%台にとどまる。
- 国内の紙・パルプ用フェルト:数量 743(納入先の紙・板紙生産量(万トン)× 日本フエルトの納入割合)× 価格 742(対応する生産1万トンあたりの売上(万円、名目))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.2%
- 海外の紙・パルプ用フェルト:数量 351(納入先の紙・板紙生産量(万トン相当))× 価格 742(対応する生産1万トンあたりの売上(万円、名目))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。営業利益率2.5%
- 工業用その他:数量 2.9(納入件数(百件、推定))× 価格 580(1件あたりの平均売上(万円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。営業利益率2.5%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(一式))× 価格 7.51(賃料収入(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 4 億円。営業利益率5割
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)40 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 100 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の紙の生産量は年1.5%減り、価格は物価の半分ほど、賃貸が利益を支える姿が最も自然。保有株の縮減は会社の目標どおり進む。
やや悲観 28% 紙の需要の落ち込みが加速し、本業が赤字に 利益 4 億円 · PER 6.7 倍 · 株価時価総額 475 円79 億円
紙・板紙の生産量が年2%のペースで減り、抄紙機の停止が続く。フェルトの国内の数量は2割減る。製紙会社のコスト削減が厳しく、価格は物価の4分の1ほどしか上がらない。国内のフェルトは赤字になり、海外は横ばいにとどまる。
全社の営業利益は3億円まで細り、賃貸が利益の大半を占める。保有株の縮減は続くが、ペースは遅く、10年で資産の4割ほどが戻る。ROEは2%前後に沈む。
配当は目標のDOEを守れず、減配もありうる。会社の価値は、資産と賃貸にほぼ限られる。ROEが2%前後では、資産を抱える間の資本コストがそのまま価値の目減りになる。
- 国内の紙・パルプ用フェルト:数量 691(納入先の紙・板紙生産量(万トン)× 日本フエルトの納入割合)× 価格 677(対応する生産1万トンあたりの売上(万円、名目))→ 売上 47 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-1.0%
- 海外の紙・パルプ用フェルト:数量 281(納入先の紙・板紙生産量(万トン相当))× 価格 677(対応する生産1万トンあたりの売上(万円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.5%
- 工業用その他:数量 2.6(納入件数(百件、推定))× 価格 534(1件あたりの平均売上(万円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.5%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(一式))× 価格 6.89(賃料収入(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 3 億円。営業利益率5割
倍率:ROE約2%でk9%を大きく下回る。上限11.4倍のうち、約6割の6.65倍に置いた。余った現金は、還元が遅れ59億円と置いた。
確率:紙の需要の落ち込みは加速しており、製紙会社の交渉力も強い。本業の赤字が続く姿は、現実味が高いため、やや悲観に厚めの確率を置いた。
悲観 10% 抄紙機の大量停止で本業が縮み、資産も目減りする 利益 2 億円 · PER 5.5 倍 · 株価時価総額 348 円58 億円
製紙会社が抄紙機を大きく止め、新聞用紙と印刷用紙の需要が急速に細る。国内のフェルトは3割以上減り、価格は物価に追いつかない。国内は赤字が続き、工場の統合と減損が出る。海外も縮み、工業用その他も売上の3割が落ちる。
営業利益は賃貸の3億円弱で、フェルトの赤字がほぼ全部を食う。会社は資産を使って赤字を埋め、資産は半分まで減る。保有株の縮減は遅れ、10年で戻るのは資産の1割ほどにとどまる。
財務は崩れないが、フェルトの会社としての役割を終えつつある姿だ。TOBの期待も、この姿では価格を支える力にならない。
- 国内の紙・パルプ用フェルト:数量 588(納入先の紙・板紙生産量(万トン)× 日本フエルトの納入割合)× 価格 613(対応する生産1万トンあたりの売上(万円、名目))→ 売上 36 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率-6.0%
- 海外の紙・パルプ用フェルト:数量 225(納入先の紙・板紙生産量(万トン相当))× 価格 613(対応する生産1万トンあたりの売上(万円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-2.0%
- 工業用その他:数量 2.1(納入件数(百件、推定))× 価格 464(1件あたりの平均売上(万円、名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。営業利益率-2.0%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(一式))× 価格 5.95(賃料収入(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円。営業利益率5割
倍率:ROE約1%でk9%を大きく下回る。稼ぐ力はほぼ賃貸だけで、PERは上限の約5割の5.46倍に置いた。余った現金は、赤字の穴埋めと投資の失敗で、今の100億円から50億円に目減りするとした。清算されない限り、少数株主は資産の使い方を決められない。
確率:抄紙機の大量停止と価格の下落が同時に来る姿は、確率は高くない。ただ、一度崩れると深いため10%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の紙・パルプ用フェルト
国内の製紙会社の抄紙機に使うフェルト(ワイヤー・ベルトを含む)。市場をイチカワと2社で分け合う主力。
| 数量納入先の紙・板紙生産量(万トン)× 日本フエルトの納入割合 | 価格対応する生産1万トンあたりの売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 864 | 645 | 56 | 1 |
| 10 年後 中立 | 743 | 742 | 55 | 1 |
取り方:紙・パルプ用フェルトの売上73.8億円から国外18.1億円を引いた国内55.7億円を、国内の紙・板紙の生産量2,160万トン(2024年。日本製紙連合会)に、日本フエルトの納入割合を約4割(市場を2社で約8割とされるため、半分と仮置き)と置いた864万トンで割り、1万トンあたり645(万円)とした(推定)。数量は、国内の紙・板紙の生産量が年1.5%減るとみて10年で0.86倍。価格は物価(1.34倍)の半分ほどの1.15倍。10年で売上が2割減る間に生産量も2割減っており、1トンあたりの売上はほぼ横ばいだったため、製紙会社が物価の転嫁を許さない前提を置いた。営業利益は区分の開示がなく、フェルト全体の営業利益約1.3億円(営業利益4.4億円から賃貸の約3.1億円を引いた額)を売上比で配分した。競合はイチカワと、海外大手(バルメット、アルバニーなど)。
海外の紙・パルプ用フェルト
台湾の子会社と輸出で売る抄紙用フェルト。アジアの紙・板紙の増加を取り込む。
| 数量納入先の紙・板紙生産量(万トン相当) | 価格対応する生産1万トンあたりの売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 281 | 645 | 18 | 0 |
| 10 年後 中立 | 351 | 742 | 26 | 1 |
取り方:有報の国外売上18.1億円を、国内と同じ1万トンあたり645(万円)で割って、約281万トン相当とした(推定)。海外の単価は不明で、国内と同じに仮置きした。アジアの紙・板紙の増加を取り込み、数量は中立で1.25倍。価格は国内と同じく1.15倍。営業利益は全社のフェルトの営業利益を売上比で配分。競合はバルメット、アルバニーなどの世界大手。
工業用その他
集塵機用のバグフィルター、工業用フェルト、繊維製品。紙・パルプ以外の産業向け。
| 数量納入件数(百件、推定) | 価格1件あたりの平均売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 464 | 14 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.9 | 580 | 17 | 0 |
取り方:有報の工業用その他の売上13.9億円を、約300件の納入先で割り、1件あたり464(万円)とした(推定)。数量は中立で0.95倍(既存の用途が緩やかに縮む)、価格は1.25倍。営業利益はフェルト全体の営業利益を売上比で配分した。
不動産賃貸
本社ビルの一部、オフィスビル、介護施設の賃貸。利益率が高く、営業利益の主役。
| 数量賃貸物件(一式) | 価格賃料収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 6.26 | 6 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 7.51 | 8 | 4 |
取り方:全体の売上94.0億円から、紙・パルプ用フェルトと工業用その他の合計87.7億円を引いた約6.3億円を賃貸とした。営業利益率は直近の開示で5割前後とみて約3.1億円とした(推定)。賃料は新規の契約で物価に追いつき、10年で1.2倍。
リスクと懸念
国内の紙の生産量の減少
国内の紙・板紙の生産量は10年で2割減り、2025年も2.6%減った。新聞用紙は9%台の減少が続く。抄紙機の停止が進むと、フェルトの出荷は生産量以上に細る。
客の交渉力
客は王子や日本製紙などの大手で、日本製紙は売上の11%を占める。コスト削減の圧力が強く、10年で1トンあたりの売上はほぼ横ばいだった。物価の転嫁は期待できない。
本業の利益の薄さ
営業利益4.4億円のうち、賃貸が3億円ほどを占め、フェルト本業は1億円台にとどまる。次期の会社計画では営業利益が44%減る。本業が赤字に落ちると、賃貸の利益を食う。
保有株の価格変動と縮減の遅れ
上場株103億円の大半は3メガバンクだ。株価が下がれば資産価値が目減りし、売却益も減る。縮減が遅れれば、資本コストの分だけ価値が削られる。
海外大手との競争
アジアの市場開拓は成長の柱だが、バルメットやアルバニーなどの世界大手が強い。価格と技術で押され、期待したほど伸びないおそれがある。
資本効率が資本コストに届かない
ROEの10年の中央値は2.8%で、資本コスト8.75%の3分の1以下だ。中期計画のROE4%以上は達成しても足りない。
今後の分かれ目
- 保有株の追加売却と自社株買いが続き、資産の還元が目標を上回る速さで進んだら
- 楽観・やや楽観の確率を上げ、余った現金の戻り方を速める。
- 国内の紙・板紙の生産量が年3%を超えるペースで減り、抄紙機の停止が加速したら
- やや悲観・悲観の確率を引き上げ、本業の数量を下方に見直す。
- フェルト事業の営業利益が赤字に転じたら
- 本業の価値を賃貸のみで測り直し、中立の利益を下げる。
- DOE5パーセントなどの投資家が経営への働きかけを強め、非上場化やTOBが表明されたら
- 買い取り価格が資産と賃貸の価値を上回るかを別に確かめる。
- 3メガバンクなどの株価が大きく下落したら
- 資産の価値を下方に見直す。
- 中期計画の営業利益4.7億円以上、ROE4%以上が達成されたら
- 本業の改善を評価するが、資本コストには届かない点を確かめる。
見ておくもの
- 保有株の売却額と、残りの銘柄数
- 国内の紙・板紙の生産量と抄紙機の停止
- フェルト事業の営業利益と賃貸の利益の割合
- 自社株買いと配当の合計(DOE2.5%以上の達成)
- 大株主の動き(DOE5パーセント、王子、日本製紙)
倍率と資本コストの決め方
売上は、国内フェルトを紙・板紙の生産量×納入割合×1万トンあたりの売上、海外を同様に、工業用を件数×1件あたりの売上、賃貸を賃料で積んだ。納入割合と単価は推定。価格は物価の半分ほどを基本にした(10年で1トンあたりの売上がほぼ横ばいだったため)。倍率は式から決め、事業の純利益に掛けるPERの上限1÷kの約7割に置いた。余った現金(純現金と、政策保有株の税引後)は別に足し、その配当・利息の分(1.4%)を事業の純利益から引いて二重に数えないようにした。戻り方は1.0とし、10年の還元に資産の分を含めた。今の株価は見ずに決め、最後に比べて割高と出た。リースは貸す側が中心で小さく、新リース会計基準(2028年3月期から)の影響は軽いが、10年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.11 倍・やや楽観 PER 9.5→11.11 倍・中立 PER 8→11.11 倍・やや悲観 PER 7→6.65 倍・悲観 PER 6→5.46 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+1.25%を足して8.75%。事業は縮むが傾いてはおらず、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 9.25%。