結論
東海染工は、名古屋を地盤に綿や合繊の布を染める会社だ。作業服や制服の生地が主で、今は保育所の運営が第2の柱になった。筆者の結論は、今の値段は高いというものだ。帳簿の自己資本は時価総額の2倍以上あるが、それを稼ぎに変える力が弱いからだ。
本業の染色は、国内の繊維産業とともに細ってきた。売上は10年で2割減り、2026年3月期は染色で赤字を出した。制服の在庫が積み上がり、官公庁の注文も後ろにずれた。
支えているのは保育だ。子会社のトットメイトとマミーズが保育所を運び、売上の3割を稼ぐ。子どもの数は減るが、共働きが増え、預ける家庭はまだ多い。
純現金は約12億円、株式の持ち合いも約11億円ある。ただ大株主と取引先の銀行が上位に並び、現金が株主に戻る見込みは薄い。ROEは2〜3%で、資本コストの3分の1にも届かない。安い帳簿の値段は、稼げない資産の値段でもある。
10年の姿は、染色が細る分を保育と賃貸が埋める形だとみる。会社全体の稼ぎは横ばいに近い。安全域は帳簿にあるように見えて、実は薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、安く見えて、安くない会社だ。
帳簿の自己資本は約79億円で、時価総額の2.7倍ある。純現金と持ち合いの株を合わせれば、時価総額の大半に届く。しかし、それは清算した時の話だ。会社は清算しないし、少数株主にそれを強いる力はない。
株主のものになる利益は、年2〜3億円にすぎない。染色の工場は古く、更新の投資を引けば手元に残る額はさらに減る。保育は安定しているが、国が値段を決める事業で、利益を大きく増やす余地は小さい。
資本の使い方にも物足りなさが残る。持ち合いの株と現金を抱え、ROEは資本コストを大きく下回る。それでも配当は増えない。ミソノサービスが持株を減らし始めたことは、何かが動く兆しかもしれないが、今の値段にそれを織り込む根拠はない。
筆者が持ち続けたいと思うには、資本の使い方の変化という一つの材料が要る。
何で稼ぐ会社か
1941年に設立された染色加工の会社だ。浜松と岐阜の羽島に工場を持ち、綿やポリエステルとの混紡の布を染め、プリントし、仕上げる。インドネシアとタイにも染色の子会社がある。
稼ぎ方は加工の請負だ。商社や生地の問屋から白い布を預かり、色を付けて返す。1メートルいくらの加工賃が売上になる。主な用途は、作業服、学校や企業の制服、官公庁のユニフォームで、ファッション向けは少ない。2026年3月期の染色の売上は89億円で、営業損益は1億円の赤字だった。
第2の柱が子育て支援だ。2010年に作ったトットメイトと、買収したマミーズが、企業の託児所や認可の保育所を運ぶ。売上は40億円を超え、毎年伸びている。保育料と国や自治体の給付が収入で、景気に左右されにくい。
ほかに、縫製品の販売、倉庫、染色機械の販売、名古屋の工場跡での洗濯の請負、商業施設や駐車場の賃貸がある。小さいが、賃貸は利益率が高い。
売上の6割強は染色、3割は保育で、残りがその他の事業だ。利益は年によって染色と保育の順番が入れ替わる。染色が赤字の年は、保育と賃貸が全社を黒字に保ってきた。従業員は連結で千人を超え、その多くは工場と保育所で働く。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、ほとんど無いと筆者は見る。
染色は装置と職人の技の産業だ。色をそろえる腕と、大量の水と熱を扱う設備は、新しく参入しにくい。国内の染色工場は廃業が続き、残った会社には注文が集まる面もある。東海染工は綿の染色で大手の一角を占める。
しかし値段を決める力は弱い。加工賃は商社と問屋が決め、ガスや電気の値上がりは遅れてしか移せない。中国や東南アジアで染めた生地とも比べられる。営業利益率は過去12年で7%が最高で、多くの年は2%を下回った。
保育は安定しているが、儲けは薄い。保育料は国が決める公定価格で、保育士の給料を上げれば利益は削られる。自己資本は厚く、借金も少ない。ただその資本の多くは工場と持ち合いの株で、ROEは長く2〜3%にとどまる。
経営の誠実さに問題は見えないが、資本を増やす工夫も見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の染色業は、長い縮小の途中にある。
衣料の9割以上は輸入品で、国内で布を染める量は20年前の数分の1になった。残るのは、作業服や制服のように、国内で縫い、品質と納期を求められる分野だ。ここは人口が減っても一気には消えないが、数量は年に数%ずつ細る。
費用の側では、エネルギーの値段が重い。染色は大量の湯と蒸気を使い、ガスと電気の値上がりがそのまま原価になる。2022年以降、各社は加工賃を上げたが、上げ幅は費用に追いついていない。廃業する工場が増え、生き残った会社の稼働は上がる余地がある。
保育の市場は、待機児童の解消で伸びが鈍った。出生数は年70万人を割り、保育所は定員割れが増えている。一方で共働きは増え続け、0〜2歳を預ける率は上がる。保育士の不足で、人件費は物価より速く上がる。国は公定価格を毎年引き上げてきた。
筆者の見立てでは、染色の数量は10年で4分の3に縮み、保育は横ばいから少し伸びる。会社全体の数量はほぼ横ばいだ。
競合の染色会社も同じ逆風の中にあり、合併や廃業で数が減る局面が続くとみる。生き残る会社は、官公庁や大企業の制服のように、品質の基準が厳しく、国内で縫う需要に絞り込む。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、総額は年0.8億円前後だ。配当は利益にかかわらず据え置かれ、配当性向は2〜4割になる。自社株買いはほとんどしていない。
株主の顔ぶれが資本政策を縛る。筆頭はユニフォームのレンタルを営むミソノサービスで、17%を持っていた。2026年9月の報告では14%に減らしている。続いて取引先の銀行、日清紡ホールディングス、長瀬産業など、取引の縁で持つ株主が並ぶ。会社の側も上場株を17銘柄持ち合う。
買収は保育で実績がある。マミーズを子会社にし、保育を第2の柱に育てた。染色では工場を閉じて洗濯や倉庫に転じてきた。今後も、空いた土地と建物を別の事業に回す形が続くとみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿の価値に比べて、値段があまりに安い。自己資本は時価総額の2.7倍あり、純現金と持ち合いの株だけで時価総額の8割に届く。工場や賃貸の土地も持つ。事業を半分の値段で買えるようなものだ。
染色の赤字は一時的だ。2026年3月期は制服の在庫が積み上がり、官公庁の注文が後ろにずれた。在庫がはければ注文は戻る。会社は今期の営業利益を3倍近くに見込む。国内の染色工場は廃業が続き、残った会社に注文が集まる。
保育は毎年伸びている。共働きの増加で0〜2歳を預ける家庭は増え、国は保育士の給料を上げるため公定価格を毎年引き上げる。景気に左右されない稼ぎが3割を占めるのは強みだ。
株主の動きもある。筆頭株主のミソノサービスが持株を減らした。株が動けば、資本の使い方を変える圧力がかかる。持ち合いを解き、現金を還元に回すだけで、ROEは上がる。
10年後に保育が売上の4割を占めれば、会社は景気に強い姿に変わる。工場の跡地を賃貸や洗濯に回してきた実績もあり、資産を生かす手は打てる。
慎重な見方
帳簿の価値は、稼げない資産の値段だ。ROEは過去10年の中央値で2%しかない。持ち合いの株も工場も、株主にお金を生んでいない。清算されない限り、帳簿の厚みは少数株主のものにならない。
染色は構造的に縮む。衣料の国産は細り続け、売上は10年で2割減った。営業利益率は過去12年で7%が最高で、多くの年は2%を下回る。ガスと電気の値上がりを移せず、今期も第1四半期は赤字だ。
保育も楽ではない。出生数は年70万人を割り、保育所の定員割れが広がる。保育士は足りず、給料は物価より速く上がる。公定価格が上がっても、利益率は3〜4%にとどまる。
資本の使い方は変わっていない。配当は据え置きで、自社株買いもない。筆頭株主が持株を減らしたのは、むしろ見切りの表れかもしれない。会社を買う側から見ても、古い染色工場は魅力に乏しい。
今の値段は安く見えるが、稼げない会社の帳簿は、いつまでも帳簿のままだ。持ち合いの相手も同じ取引の縁でつながり、互いに株を売りにくい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方に分がある。帳簿の厚みは本物だが、それを稼ぎに変える道筋が見えない。染色の縮みは統計で確かめられ、保育の利益率は国に縛られる。確率は中立を厚くし、悲観側を楽観側よりやや厚く置いた。株主の顔ぶれが変わり、資本の使い方が改まれば、楽観に寄せる余地はある。楽観と悲観の差は、資本の使い方が変わるかどうかに尽きる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,325 円42 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 304 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 804 円25 億円、今との差 −13.1%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,627 円83 億円 | 444 円14 億円 | +231.6% | +12.7% | 246 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,845 円58 億円 | 380 円12 億円 | +140.3% | +9.2% | 445 円14 億円 |
| 中立 | 40% | 1,465 円46 億円 | 317 円10 億円 | +92.4% | +6.8% | 713 円22 億円 |
| やや悲観 | 20% | 671 円21 億円 | 253 円8 億円 | −0.2% | 0.0% | 185 円6 億円 |
| 悲観 | 12% | 215 円7 億円 | 127 円4 億円 | −63.0% | −9.5% | 41 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,325 円42 億円 | 304 円10 億円 | +76.0% | +5.8% | 1,629 円51 億円 |
今の株価時価総額 926 円29 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 染色の生き残りとして注文を集め、保育も伸びる 利益 7 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,627 円83 億円
国内の染色工場の廃業が進み、制服や作業服の注文が東海染工に集まる。数量の減りは1割にとどまり、加工賃は物価を少し上回って上がる。工場の稼働が上がり、染色の利益率は4%に戻る。
保育は企業の託児所の受託を広げ、園児は25%増える。公定価格の引き上げが続き、利益率は5.5%になる。賃貸と洗濯も堅く稼ぐ。
営業利益は10億円を超え、純利益は6億円台に乗る。配当は増え、10年の還元は14億円だ。それでもROEは6%で、資本コストには届かない。
帳簿の厚みが少しずつ稼ぎに変わる姿で、持ち合いの株の一部を売って還元に回す動きも出る。
- 染色加工(国内・海外):数量 5,400(染色加工の数量(万メートル))× 価格 205(1メートルあたりの加工賃などの売上(円))→ 売上 111 億円・営業利益 4 億円。数量0.9倍・単価1.38倍・利益率4%
- 子育て支援(保育所の運営):数量 4,375(預かる園児の数(人))× 価格 168(園児1人あたりの年間の収入(万円))→ 売上 73 億円・営業利益 4 億円。園児1.25倍・単価1.38倍・利益率5.5%
- その他(縫製品・倉庫・機械・洗濯・賃貸):数量 66.0(倉庫・洗濯・賃貸に使う床面積などの規模(千平方メートル))× 価格 0.20(千平方メートルあたりの年間の売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。規模1.1倍・単価1.34倍・利益率15%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 83 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の染色工場の廃業で注文が集まり、加工賃を物価以上に上げ、保育の園も増やす必要がある。営業利益率を過去12年の天井近くまで戻す姿で、確度は低い。
やや楽観 20% 染色が黒字に戻り、保育が厚くなる 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,845 円58 億円
制服の在庫がはけ、官公庁の注文も戻る。染色の数量は10年で2割近く減るが、加工賃は物価並みに上がり、利益率は2.5%を保つ。
保育は園児が15%増え、公定価格の引き上げで1人あたりの収入も伸びる。利益率は4.5%だ。賃貸と倉庫は物価に沿って家賃を上げる。
営業利益は7億円台、純利益は4.5億円になる。配当は少しずつ増え、10年の還元は12億円。ROEは4%台で、帳簿の厚みに見合う稼ぎにはまだ遠い。
現金と持ち合いの株は手つかずのまま残り、資本の効率は大きくは変わらない。それでも、今の値段で買った株主には配当と利益の伸びが報いる。
- 染色加工(国内・海外):数量 4,920(染色加工の数量(万メートル))× 価格 199(1メートルあたりの加工賃などの売上(円))→ 売上 98 億円・営業利益 2 億円。数量0.82倍・単価1.34倍・利益率2.5%
- 子育て支援(保育所の運営):数量 4,025(預かる園児の数(人))× 価格 165(園児1人あたりの年間の収入(万円))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。園児1.15倍・単価1.36倍・利益率4.5%
- その他(縫製品・倉庫・機械・洗濯・賃貸):数量 63.0(倉庫・洗濯・賃貸に使う床面積などの規模(千平方メートル))× 価格 0.20(千平方メートルあたりの年間の売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。規模1.05倍・単価1.32倍・利益率14%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 57 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は今期の営業利益を前期の約3倍と見込み、保育は毎年増収増益だ。染色の数量は細るが利益率を2%台に保つ、過去10年の良い年に近い姿。
中立 40% 染色は縮み、保育が支える 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,465 円46 億円
衣料の国産が細り、染色の数量は10年で4分の3に縮む。ガスと電気の値上がりは加工賃に移すが、利益率は1.5%しか残らない。古い工場の償却は取得時の値段のままで軽いが、更新の投資は建築費の上昇で膨らむ。
保育は園児が5%増え、公定価格の引き上げで収入は物価並みに伸びる。保育士の給料も上がり、利益率は4%だ。賃貸と洗濯は物価に沿って稼ぐ。
営業利益は5億円強、純利益は3億円強になる。配当は年1億円前後で、10年の還元は10億円。自己資本は99億円に積み上がり、ROEは3%台にとどまる。
帳簿は厚くなるが、稼ぐ力は変わらない。持ち合いの株と現金は手つかずで残る。
- 染色加工(国内・海外):数量 4,500(染色加工の数量(万メートル))× 価格 199(1メートルあたりの加工賃などの売上(円))→ 売上 90 億円・営業利益 1 億円。数量0.75倍・単価1.34倍・利益率1.5%
- 子育て支援(保育所の運営):数量 3,675(預かる園児の数(人))× 価格 163(園児1人あたりの年間の収入(万円))→ 売上 60 億円・営業利益 2 億円。園児1.05倍・単価1.34倍・利益率4%
- その他(縫製品・倉庫・機械・洗濯・賃貸):数量 60.0(倉庫・洗濯・賃貸に使う床面積などの規模(千平方メートル))× 価格 0.20(千平方メートルあたりの年間の売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。規模横ばい・単価1.30倍・利益率13%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 43 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の染色の縮小と、保育の公定価格に縛られた薄い利益は、どちらも過去の数字で確かめられる。過去10年のROEの中央値に近い稼ぎが続く姿を中心に置いた。
やや悲観 20% 染色の赤字が続き、保育の伸びも止まる 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 671 円21 億円
制服の国産がさらに細り、染色の数量は4割減る。エネルギー高を加工賃に移し切れず、染色は小さな赤字が続く。
保育は出生数の減少で定員割れが広がり、園児は1割減る。保育士の給料は上がり続け、利益率は3%に下がる。賃貸と倉庫が利益の半分以上を稼ぐ形になる。
営業利益は2億円前後、純利益は1億円強だ。配当は据え置かれ、10年の還元は8億円。稼ぐ力で測る価値は15億円ほどで、帳簿の自己資本の2割にすぎない。現金は残るが、使い道を決めるのは経営と大株主だ。
筆頭株主の売りが続けば、株の需給も重くなる。帳簿の厚みは、悲観の時ほど頼りにならない。
- 染色加工(国内・海外):数量 3,600(染色加工の数量(万メートル))× 価格 186(1メートルあたりの加工賃などの売上(円))→ 売上 67 億円・営業利益 −1 億円。数量0.6倍・単価1.25倍・赤字
- 子育て支援(保育所の運営):数量 3,150(預かる園児の数(人))× 価格 155(園児1人あたりの年間の収入(万円))→ 売上 49 億円・営業利益 1 億円。園児0.9倍・単価1.28倍・利益率3%
- その他(縫製品・倉庫・機械・洗濯・賃貸):数量 57.0(倉庫・洗濯・賃貸に使う床面積などの規模(千平方メートル))× 価格 0.19(千平方メートルあたりの年間の売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。規模0.95倍・単価1.25倍・利益率12%
倍率:ROE約1.5%でkを大きく下回る。稼ぐ力(純利益1.3億円÷k)約15.3億円に、余った現金5億円×0.75×戻り方0.5の約1.9億円を足して約18億円。今の自己資本78.9億円の0.232倍に置いた。
確率:2026年3月期と今期の第1四半期は染色が赤字で、エネルギー高を移し切れていない。出生数の減少で保育所の定員割れも広がっている。両方が続く姿はありうる。
悲観 12% 国内の染色から撤退を迫られる 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 215 円7 億円
制服の生地も海外で染める流れが強まり、染色の数量は6割減る。工場を閉じるたびに、退職金と設備の処分で損が出る。染色は大きな赤字が続く。
保育も出生数の減少で園児が2割減り、利益は細る。賃貸と洗濯が残るが、全社では営業赤字だ。配当は減り、10年の還元は4億円にとどまる。
残る価値は、純現金と持ち合いの株を売った税後から、撤退の費用を引いた残りだ。その使い道を決めるのは経営と大株主で、少数株主の取り分は小さい。
保育だけの会社としては、規模も利益率も小さい。売り先を探す動きが出ても、値段は帳簿を大きく下回る。会社は小さく続くが、株主に報いる力は失われる。
- 染色加工(国内・海外):数量 2,400(染色加工の数量(万メートル))× 価格 171(1メートルあたりの加工賃などの売上(円))→ 売上 41 億円・営業利益 −2 億円。数量0.4倍・単価1.15倍・赤字
- 子育て支援(保育所の運営):数量 2,800(預かる園児の数(人))× 価格 146(園児1人あたりの年間の収入(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。園児0.8倍・単価1.2倍・利益率2%
- その他(縫製品・倉庫・機械・洗濯・賃貸):数量 54.0(倉庫・洗濯・賃貸に使う床面積などの規模(千平方メートル))× 価格 0.17(千平方メートルあたりの年間の売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。規模0.9倍・単価1.15倍・利益率8%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。純現金と持ち合いの株の税後から撤退の費用を引き、戻り方0.5を掛けた床(約6.8億円)で、今の自己資本78.9億円の0.086倍に置いた。
確率:国内の染色工場の廃業は現に続いており、エネルギー高と人手不足が重なれば東海染工も例外ではない。保育と賃貸が残るので、会社が消える筋書きではない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
染色加工(国内・海外)
綿・合繊の布を染め、プリントし、仕上げる加工の請負。作業服・制服・官公庁のユニフォーム向けが主。
| 数量染色加工の数量(万メートル) | 価格1メートルあたりの加工賃などの売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,000 | 148 | 89 | −1 |
| 10 年後 中立 | 4,500 | 199 | 90 | 1 |
取り方:2026年3月期の染色加工の売上89.06億円・営業損失1.14億円(決算の要約)。数量の開示は無く、国内と海外をならした1メートルあたり約148(円)と置いて約6,000万メートルとした推定。
子育て支援(保育所の運営)
子会社のトットメイトとマミーズが、企業の託児所や認可の保育所を運ぶ。収入は保育料と国・自治体の給付。
| 数量預かる園児の数(人) | 価格園児1人あたりの年間の収入(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,500 | 121 | 43 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3,675 | 163 | 60 | 2 |
取り方:2025年3月期の子育て支援の売上38.7億円・利益1.38億円(有報)から、2026年3月期は増収増益で約42.5億円・1.6億円と推定。園児数の開示は無く、0〜5歳をならした1人年約121万円と置いて約3,500人とした推定。
その他(縫製品・倉庫・機械・洗濯・賃貸)
縫製品の販売、倉庫、染色機械の販売、名古屋の工場跡での洗濯の請負、商業施設や駐車場の賃貸。
| 数量倉庫・洗濯・賃貸に使う床面積などの規模(千平方メートル) | 価格千平方メートルあたりの年間の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 0.15 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 0.20 | 12 | 2 |
取り方:2025年3月期の縫製品・倉庫・機械・洗濯・その他の売上合計約8.5億円・利益約1.3億円(有報)から、2026年3月期は約9億円・約1.2億円と推定(全社の営業利益1.63億円から染色と保育を引いた残り。調整額を含む)。床面積の開示は無く、規模は推定。
リスクと懸念
国内の染色の縮小
衣料の国産は細り続け、染色の売上は10年で2割減った。制服や作業服も海外で染めた生地に置き換われば、工場の稼働が落ち、固定費が重くのしかかる。
エネルギーの値段
染色は大量の湯と蒸気を使う。ガスと電気の値上がりは加工賃に遅れてしか移せず、その間は利益が削られる。2026年3月期の染色の赤字にも表れている。
保育の公定価格と人手
保育の収入は国が決める公定価格に縛られる。保育士は足りず、給料は物価より速く上がる。出生数の減少で定員割れが広がれば、利益率はさらに薄くなる。
資本の使い方
自己資本は厚いが、持ち合いの株と現金が稼ぎを生んでいない。配当は据え置きで、自社株買いも無い。ROEが資本コストを下回るまま利益をためても、株主の価値は増えない。
大株主の動き
筆頭のミソノサービスは持株を17%から14%に減らした。売りが続けば需給が崩れる一方、買い手が現れれば会社の形が変わる。どちらに転ぶかは読めない。
今後の分かれ目
- 染色の営業利益率が2期続けて2%を超えたら
- やや楽観の確率を厚くし、染色の利益率を上げる。
- 保育の売上が60億円を超え、利益率が5%に乗ったら
- 保育の園児数と利益率を上げ、楽観側を厚くする。
- 持ち合いの株の売却や自社株買いの方針が数字で示されたら
- 余った現金の戻り方を0.75か1.0に上げ、価値を上げる。
- 染色の工場を閉じる、または国内の染色から手を引く発表が出たら
- 悲観の確率を厚くし、撤退の費用を床から引く。
- ミソノサービスなど大株主から買収の提案が出たら
- 買収の値段が付く筋書きとして、価値の見方を改める。
見ておくもの
- 染色加工の売上と営業損益
- 保育の売上と利益率
- ガスと電気の値段と加工賃の改定
- 持ち合いの株の売却
- 配当と自社株買いの方針
- ミソノサービスの持株比率
倍率と資本コストの決め方
今の株価やPBRは見ずに、染色の数量と加工賃、保育の園児数と公定価格、その他の小さな事業から10年後の利益を積んだ。どの筋書きもROEは資本コスト8.25%を下回るので、PERは1÷k(約11.8倍)を上限に利益の質で7〜85%に置いた。悲観側は稼ぐ力と純現金・持ち合いの株の税後に戻り方0.5を掛けた床で置いた。今のPBR0.4倍弱は割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.12 倍・やや楽観 PER 9→12.12 倍・中立 PER 8.5→12.12 倍・やや悲観 PBR 0.215→0.232 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。