結論
ソトーは、愛知県一宮市で毛織物やニットの染色加工を営む老舗だ。売上は107億円。祖業の染色加工が年6億円超の営業赤字を出し、会社全体の営業利益は2期続けて赤字になっている。筆者の結論は、今の値段は割高に傾く。
支えは2つある。1つは、投資有価証券68億円だ。時価総額86億円に迫る厚みがあり、年1億5千万円の配当が入る。もう1つは、量販店向けの店舗賃貸で、年3億円近い営業利益を安定して稼ぐ。
弱みは、本業の染色加工だ。暖冬、スーツのカジュアル化、安価な中国製の流入、アパレルの見込み生産の縮小が重なる。受注は戻りにくい。
配当は純利益を上回る。不足分は有価証券の売却益でまかなう形で、資産は少しずつ減る。10年の中立は、染色加工の赤字が縮む前提で、営業利益5億円弱に置いた。それでも、資産を現金化して株主に戻す速度が遅い限り、今の値段は払いすぎになる。染色加工の工場を整理する決断が出れば、見方は変わる。
バリュー投資の観点から
価値を測るのは、将来の稼ぎだ。ソトーは、稼ぎが薄いのに、資産が厚い会社だ。
資産の中身は良い。投資有価証券は含み益を抱え、借金はほぼなく、賃貸不動産は毎年の家賃を生む。時価総額86億円のうち、有価証券だけで8割に迫る。ここは確かな安全域になる。
事業の経済性は悪い。染色加工は設備が重く、減価償却が年7億円あるのに、受託の加工賃に値決めの力がない。製品販売は伸びているが、利益率は3%に届かない。ROEは過去10年の中央値が1.6%と、資本コストの半分以下だ。
資本配分は、評価が割れる。配当を厚くし、株を消却して還元を強めた。だが、財源は資産の売却で、赤字の本業を立て直す手は見えない。
払ってよい値段は、賃貸不動産と製品販売の稼ぎに、有価証券の価値を足し、染色加工の赤字を引いたものだ。10年で見ると、有価証券が配当で減る分と、赤字の分が効いて、今の時価総額を下回る。安全域はあるが、資産が目減りする速度が速い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は3つある。2026年3月期の売上107億円の内訳は、染色加工が57億円、製品販売が45億円、不動産賃貸が5億円だ。
染色加工は、毛織物とニットを染めて仕上げる受託加工で、愛知県西部の尾州地区の織物会社やアパレルが顧客になる。織物が32億円、ニットが25億円。ウール素材が中心で、秋冬物に偏るため、売上は上期に集まる。2026年3月期は営業損失6億6千万円と、前期の5億円から赤字が広がった。
製品販売は、テキスタイルの販売と、アパレル製品の企画・販売だ。2025年1月に買収したジェノなど2社が加わり、売上は2割増えた。営業利益は1億5千万円。
不動産は、量販店に店舗を貸す事業で、営業利益2億8千万円。売上の6割近くが利益になる。
全社の営業損失は2億円強だが、受取配当などの営業外収益と投資有価証券の売却益で、純利益は5億円を確保した。売却益6億4千万円と補助金1億円は一度きりの利益だ。来期の業績予想は、中東情勢でエネルギー・薬剤の価格が読めないとして、未定にしている。第1四半期は営業黒字に戻ったが、補助金と売却益が純利益を押し上げた。
優良さと弱いところ
堀は浅く、染色加工は衰えている。受託加工は、顧客が生産を絞ればそのまま仕事が減る。暖冬でコートの需要期間が短くなり、スーツはカジュアル化で細り、完成品の在庫を減らす動きで見込み生産も縮んだ。海外の安い製品が日本に入るのも重い。
利益の質は低い。営業利益率は2015年3月期の4%から、2021年以降は4期連続で赤字に沈んだ。2024年3月期だけは3%の黒字に戻ったが、2期続けて赤字に戻っている。ROEの中央値は1.6%で、資本コストをはるかに下回る。
一方、財務は強い。自己資本比率は75%、借入は5億円弱で、現金が借入を上回る。投資有価証券の含み益は税引き前で約38億円ある。賃貸不動産の事業は、毎年変わらない家賃収入を生む。
筆者は、染色加工の赤字をどこまで許すかが、最大の問題とみる。工場を畳めば閉鎖費用が出るが、赤字は止まる。経営は、その決断をまだ下していない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
毛織物の染色加工は、国内で縮む産業だ。尾州地区を中心に、織物会社の廃業が続き、加工の仕事は細っている。2026年3月期は、婦人コート地のウール素材の受注が暖冬で減り、ニットや紳士物も完成品在庫の増加で生産調整を受けた。
構造の変化も重なる。アパレルや商社は、大量生産・大量廃棄を避ける方向に動き、在庫を持たない発注に変わった。以前のような見込み生産を含む受注には、戻らないとみるのが自然だ。中国内需の低迷と米国との通商問題から、安価な中国製品が日本に流れ込む。
染色の薬剤は原油由来が多く、中東情勢でエネルギーと薬剤の値上がりが見込まれる。受託加工は、原材料高を加工賃に移すのに時間がかかる。
化合繊の加工、輸出、アパレルの自販は、数少ない伸びる領域だ。ただ、化合繊は競争相手が多く、利益率は低い。賃貸不動産は、量販店の出店・撤退の動きに左右される。市場は縮むが、生き残る工場は、需要を取り込んで稼働率を保てる。国内の毛織物産地では、廃業と集約が進み、残った工場に仕事が寄る流れもある。ただ、集約の恩恵が利益に出るまでには時間がかかり、設備の更新費用も重い。
資本政策と M&A
還元は、配当と自社株買いの両方だ。目標はDOE(純資産配当率)3.5%で、2026年3月期の配当性向は102%に達した。来期の配当も、ほぼ同額を予定している。自社株買いは3億円を実施し、発行済み株式40万株を消却した。
財源は、純利益ではなく資産の売却だ。投資有価証券を9億円売却し、売却益6億円を計上した。第1四半期も1億円近い売却益を出している。配当を維持するための資産の取り崩しに近い。
大株主には、ミソノサービスが約19%、日本毛織、ダイドーリミテッド、トーア紡などの繊維の会社が並ぶ。持ち合いの色が濃い。親会社は無い。
買収は2025年1月のジェノなど2社で、アパレルの自販を狙う。この2社は染色加工の赤字を補うほどの力はまだない。
筆者は、資産を売って配当に回す今のやり方を、少数株主にとっての前向きな変化と見る。ただ、染色加工の赤字を止める手が打たれない限り、資産は減り続ける。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額86億円は、手元の資産だけで説明がつく。投資有価証券は68億円、含み益を抱え、現金は借入を上回る。賃貸不動産は、土地と建物の簿価が24億円なのに、年3億円近い営業利益を出している。時価は簿価より大きい。
配当利回りは6%に迫る。DOE3.5%の目標があり、自社株買いと消却も進めた。1株あたりの価値は上がっていく。
染色加工の赤字は、立て直せる。2024年3月期は、全社で営業利益が3億円の黒字に戻った。当時の需要が戻れば、赤字は一気に縮む。化合繊の受注は増え、第1四半期のニットは14%伸びた。アパレル自販の子会社2社も、製品販売の利益を押し上げた。
仮に染色加工を畳んでも、閉鎖費用は十数億円で、残る資産で十分に吸収できる。赤字が止まれば、営業利益は5億円を超え、会社は割安に見える。資産の価値と、事業の整理の余地を足せば、今の値段は安い。経営が決断さえすれば、上振れの余地は大きい。製品販売のアパレル自販は、まだ育ち始めたばかりで、伸びしろがある。
慎重な見方
資産が厚いのに、安い値段で放置されてきたのには理由がある。染色加工の赤字は、暖冬、カジュアル化、中国製の流入という構造の変化で、景気が戻っても元に戻らない。2021年から4期連続で営業赤字になり、2024年3月期の黒字は一時の需要の戻りにすぎなかった。
今期の純利益5億円は、有価証券の売却益6億円と補助金1億円がなければ赤字だった。営業損失は2億円で、拡大している。配当は純利益を超え、資産を売って払っている。10年続ければ、有価証券は半分近くまで減る。
持ち合いの色が濃く、大株主は繊維業界の会社だ。資産を現金化して少数株主に戻す力は、弱い。事業を畳む決断も、経営はまだしていない。
ROEは3%台で、資本コストを下回る。簿価に対する割安は、稼げない資産には当てはまらない。製品販売の貸倒引当金など、細かい痛みも出ている。工場の設備は老朽化し、更新に投じる現金も要る。簿価の安さは、売れる値段の高さを意味しない。
どちらに重みを置いたか
資産の厚みは事実で、強気の見方に分がある。ただ、本業が赤字のまま資産を取り崩して配当に回す限り、10年の価値は今の値段を下回る。中立は、染色加工の赤字が縮む控えめな回復に置いた。資産が減るのが速いため、確率は中立と悲観寄りの側を厚くした。工場の整理と赤字の解消が数字に出れば、見直す。それまでは、資産の厚みだけを理由に買う局面ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 603 円73 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 362 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 508 円62 億円、今との差 −27.8%、 期待の年率 +3.2%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,190 円145 億円 | 451 円55 億円 | +133.5% | +8.8% | 164 円20 億円 |
| やや楽観 | 22% | 826 円101 億円 | 427 円52 億円 | +78.1% | +5.9% | 275 円34 億円 |
| 中立 | 33% | 633 円77 億円 | 402 円49 億円 | +47.3% | +3.9% | 342 円42 億円 |
| やや悲観 | 22% | 280 円34 億円 | 295 円36 億円 | −18.2% | −2.0% | 127 円15 億円 |
| 悲観 | 13% | 245 円30 億円 | 197 円24 億円 | −37.2% | −4.5% | 57 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 603 円73 億円 | 362 円44 億円 | +37.3% | +3.2% | 965 円118 億円 |
今の株価時価総額 703 円86 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 染色加工の赤字が止まり、アパレル自販と賃貸が伸びる 利益 9 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 1,190 円145 億円
染色加工は、不採算の設備を整理し、化合繊と輸出に仕事を寄せて、営業利益率が4%の黒字になる。加工量は5%減るが、加工賃は物価を上回って上がる。製品販売は、ジェノなどアパレル自販が育ち、量は3割強増えて営業利益率が4.5%まで上がる。賃貸は、物価並みに賃料が上がり、営業利益率が6割になる。営業利益は11億円、純利益は9〜10億円。投資有価証券の配当は増え、有価証券の売却は進まない。DOE3.5%の配当は維持され、資産の厚みが保たれる。ただし、国内の毛織物の需要は縮むなかで、染色加工が黒字を保つ姿は、10年続く姿としては最良に近い。
- 染色加工:数量 9.0(加工量(百万メートル換算、推定))× 価格 8.39(1メートルあたり加工賃(億円/百万メートル・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 3 億円。整理で黒字
- 製品販売:数量 162(販売点数(万点換算、推定))× 価格 0.53(1点あたり売上(億円/万点・名目))→ 売上 85 億円・営業利益 4 億円。アパレル自販
- 不動産:数量 17.1(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.41(1平方メートルあたり年賃料(億円/千平方メートル・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 4 億円。賃料は物価並み
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 12.27 倍、時価総額 145 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2024年3月期に営業黒字へ戻った実績はあるが、その後2期は赤字。工場の整理と化合繊への転換が同時に実を結ぶ姿で、確率は1割に抑えた。
やや楽観 22% 染色加工の赤字がほぼ消え、製品販売が伸びる 利益 7 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 826 円101 億円
暖冬とカジュアル化の逆風は続くが、不採算の設備を畳み、化合繊と輸出で稼働率を保つ。染色加工の加工量は1割減るが、加工賃は物価並みに上がり、営業利益率は1%の黒字になる。製品販売は、アパレル自販が伸びて量が25%増え、営業利益率は3.5%に乗る。賃貸は物価並みに賃料が上がり、営業利益率は59%を保つ。営業利益は7億円、純利益は6〜7億円。配当はほぼ現状を保ち、不足分は有価証券の売却益でまかなうが、売却は小さくとどまる。ただ、中国製の流入と見込み生産の縮小は構造の変化で、受注の戻りは限定的だ。賃貸と製品販売の稼ぎが、染色加工の赤字を覆う形になる。
- 染色加工:数量 8.6(加工量(百万メートル換算、推定))× 価格 8.15(1メートルあたり加工賃(億円/百万メートル・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 1 億円。整理で黒字化
- 製品販売:数量 150(販売点数(万点換算、推定))× 価格 0.52(1点あたり売上(億円/万点・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 3 億円
- 不動産:数量 16.3(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.40(1平方メートルあたり年賃料(億円/千平方メートル・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 4 億円
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 101 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場の整理や化合繊への転換が進み、染色加工の営業利益率が1%前後の黒字に戻る姿。2024年3月期の全社黒字3億円に近い水準で、無理のない回復だ。
中立 33% 染色加工の赤字は縮むが、本業の稼ぎは薄いまま 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 633 円77 億円
染色加工は、需要の縮小に合わせて設備を畳み、加工量が2割減る。加工賃は物価の7割ほどしか上がらず、営業利益率はマイナス1%まで赤字が縮む。製品販売は量が15%増え、営業利益率は2.5%。賃貸は物価並みに賃料が上がり、営業利益率が6割弱を保つ。営業利益は5億円弱、純利益は4〜5億円。配当は現状の水準で据え置かれるため、純利益を大きく上回り、不足分は有価証券の売却益でまかなう。10年で余った資産は4割ほど減る。ROEは4%弱で、資本コストを下回る。工場の整理が遅れれば、さらに赤字が続く。会社が中立で目指す姿は、ここまでだ。
- 染色加工:数量 7.6(加工量(百万メートル換算、推定))× 価格 7.67(1メートルあたり加工賃(億円/百万メートル・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 −1 億円。赤字は縮む
- 製品販売:数量 138(販売点数(万点換算、推定))× 価格 0.50(1点あたり売上(億円/万点・名目))→ 売上 70 億円・営業利益 2 億円
- 不動産:数量 16.3(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.40(1平方メートルあたり年賃料(億円/千平方メートル・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 4 億円
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)25 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 77 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足もとは営業損失2億円。工場の整理と賃貸・製品販売の伸びで、営業黒字に戻るのが自然だ。ただ、染色加工の加工量は縮み続けるため、利益の回復は限られる。
やや悲観 22% 染色加工の赤字が続き、配当で資産が減る 利益 2 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 280 円34 億円
染色加工の加工量は25%減り、加工賃の上がりは物価の3分の2にとどまる。営業利益率はマイナス5%で、赤字が続く。製品販売は、アパレル子会社の貸倒れや在庫処分で伸びず、営業利益率は1%。賃貸は賃料交渉で小さく伸びる。営業利益は1億円強、純利益は2億円弱。配当は減らすが、なお純利益を上回り、有価証券は少しずつ売却される。薬剤やエネルギーの値上がりが加工賃に移せず、設備の更新で現金も出る。工場の閉鎖費用は出ないが、赤字を放置するため、資産の目減りは止まらない。株主の目が届きにくい持ち合いの構造では、整理の決断はさらに遅れる。
- 染色加工:数量 7.1(加工量(百万メートル換算、推定))× 価格 7.49(1メートルあたり加工賃(億円/百万メートル・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 −3 億円。赤字が続く
- 製品販売:数量 114(販売点数(万点換算、推定))× 価格 0.49(1点あたり売上(億円/万点・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 1 億円
- 不動産:数量 15.5(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.39(1平方メートルあたり年賃料(億円/千平方メートル・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円
倍率:事業の ROE は 1.6% で資本コスト 8.5% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)から見て、上限 11.1 倍の 6 割にあたる 6.5 倍に置いた。赤字の本業を抱える筋書きなので、7 割へ引き上げない。余った資産は戻り方 0.75 を掛けて別に足している。
確率:暖冬・カジュアル化・中国製の流入が続き、染色加工の営業利益率が5%の赤字にとどまる筋書き。2021〜2023年の4期連続赤字が、10年に再び来る。
悲観 13% 本業が赤字を垂れ流し、工場閉鎖と減損に追い込まれる 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 245 円30 億円
染色加工の加工量は4割減り、加工賃は物価を下回る。営業利益率はマイナス15%まで悪化し、減価償却の重さがそのまま赤字になる。製品販売も、アパレルの在庫処分で赤字に近づく。賃貸は賃料の引き下げ交渉で、物価に追いつかない。営業利益はマイナス4億円。配当は半分近くに減るが、有価証券を売って払うため、資産が目減りする。工場の閉鎖で費用が数十億円出て、自己資本は今より小さくなる。稼ぐ力は小さいため、価値は賃貸不動産の事業と、残る有価証券・運転資本の床で決まる。経営が整理に踏み切るか、先延ばしにするかで、結果は大きく分かれる。
- 染色加工:数量 5.7(加工量(百万メートル換算、推定))× 価格 7.19(1メートルあたり加工賃(億円/百万メートル・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 −6 億円。仕事が半減・赤字
- 製品販売:数量 84.0(販売点数(万点換算、推定))× 価格 0.45(1点あたり売上(億円/万点・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 −1 億円
- 不動産:数量 14.7(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.38(1平方メートルあたり年賃料(億円/千平方メートル・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円
倍率:事業の ROE は赤字で、稼ぐ力では床を決められない。賃貸不動産の事業価値(純利益2億円÷k)約23億円、残る有価証券・現金の戻り方0.5分約11億円、売掛・在庫の売れる分約14億円を足し、染色加工の閉鎖費用と退職給付の整理約18億円を引いた約30億円を床とみて、10年後の自己資本(今の149億円から赤字と還元で減った分)に0.26倍を掛けた。EV でも見たが、営業利益がマイナスで意味を持たない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.27 倍・時価総額 30 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:暖冬・中国製・見込み生産の縮小が続き、染色加工の仕事が半減する筋書き。過去12年のうち赤字は7期あり、小さくない確率で置く。確率は13%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
染色加工
毛織物・ニットを染める受託加工(尾州のウール中心)。
| 数量加工量(百万メートル換算、推定) | 価格1メートルあたり加工賃(億円/百万メートル・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.5 | 5.99 | 57 | −7 |
| 10 年後 中立 | 7.6 | 7.67 | 58 | −1 |
取り方:2026年3月期の売上は56.9億円(織物32.0・ニット24.9)で、前期比3.2%減。加工量は開示がなく、加工賃を毛織物の染色加工の目安から置き、約950万メートル換算と推定した。営業損失は6.6億円で、売上の11.6%。
製品販売
テキスタイルの販売とアパレル製品の企画・販売(ジェノなど)。
| 数量販売点数(万点換算、推定) | 価格1点あたり売上(億円/万点・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 0.38 | 45 | 1 |
| 10 年後 中立 | 138 | 0.50 | 70 | 2 |
取り方:2026年3月期の売上は45.2億円で、前期比21.7%増。2025年1月に子会社化した2社の寄与が大きい。点数は開示がなく、卸と自販の平均単価から推定した。営業利益は1.5億円で3.3%。
不動産
量販店への店舗の賃貸。
| 数量賃貸面積(千平方メートル、推定) | 価格1平方メートルあたり年賃料(億円/千平方メートル・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16.3 | 0.30 | 5 | 3 |
| 10 年後 中立 | 16.3 | 0.40 | 7 | 4 |
取り方:2026年3月期の売上は4.9億円(前期比9.0%増)、営業利益は2.8億円(5.3%減)。面積は開示がなく、賃料から推定した。賃料は物価並みに上がる前提。
リスクと懸念
染色加工の赤字の定着
営業損失は2期続けて拡大し、6.6億円になった。受注が戻らなければ、工場の整理と閉鎖費用が避けられない。
薬剤・エネルギー価格
染色の薬剤は原油由来が多く、中東情勢で値上がりが読めない。会社は来期の業績予想を未定にしている。
一度きりの利益に頼る決算
2026年3月期の純利益は、投資有価証券売却益6.4億円と補助金1.4億円に支えられた。毎年は続かない。
資産の取り崩し
配当と自社株買いの財源は有価証券の売却で、純利益を上回る。10年続くと、資産の厚みが目減りする。
賃貸先の撤退
量販店の店舗閉鎖や賃料の引き下げ交渉で、安定した家賃収入が細るおそれがある。
買収した子会社
アパレル子会社で貸倒引当金が出るなど、利益が不安定。統合の効果が見えない。
今後の分かれ目
- 染色加工の営業損失が2期続けて3億円を下回ったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。工場の整理か受注の回復が数字に出た証拠になる。
- 染色加工の工場閉鎖や事業譲渡が発表されたら
- 一時の費用は出るが、赤字が止まる。やや楽観の確率を上げる。
- 来期の業績予想が出て、営業黒字が見込まれたら
- 中立の利益率を上方に見直す。
- 投資有価証券の売却益が続き、配当が純利益を上回り続けたら
- 資産の目減りが速い。戻り方を 0.5 に下げることを考える。
- 量販店の撤退で不動産の稼働が落ちたら
- 賃貸の利益が細る。悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 染色加工の営業損益と、織物・ニットの受注
- 投資有価証券の残高と売却益
- 配当と自社株買いの総額と、純利益との差
- 不動産事業の営業利益
- 来期の業績予想の発表と、工場の整理の有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。ROEが資本コストを下回る筋書きは、PERの上限を1÷k=11.1倍とし、利益の質に応じて上限の6〜9割に置いた。今のPERやPBR、同業の倍率は使っていない。数量は実質、物価の1.34倍は価格にだけ入れた。償却は物価で増やしていない。投資有価証券は、配当を営業外に残す形で、余った現金に近い扱いで別に足し、戻り方0.75を掛けた。賃貸不動産は事業の利益に含め、別に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.9→12.27 倍・やや楽観 PER 9→11.76 倍・中立 PER 7.8→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。