結論
ワコールホールディングスは、日本の女性用下着の最大手だ。国内の「ワコール」に加え、英米で大きいサイズに強い会社を持ち、ピーチ・ジョンも傘下にある。筆者の結論は、資産は厚いが稼ぐ力が弱く、10 年で見た価値は今の時価総額をかなり下回る、というものだ。
2026 年 3 月期の営業利益は 199 億円と大きい。だが 195 億円は京都のビルの売却益で、本業の事業利益は 5 億円足らずの赤字だった。2027 年 3 月期の会社予想も、営業利益は 15 億円にとどまる。
弱さの根は国内の下着需要にある。人口が減り、ユニクロやしまむらが若い層を取った。海外は米国で関税が重しになった。会社は構造改革室を作り、2029 年 3 月期に事業利益 85 億円を掲げる。ただ前の計画は目標に届かなかった。
支えは財布の厚みだ。純現金は約 320 億円、自己資本比率は 7 割を超える。政策保有株の縮減と自社株買いも続く。それでも、稼ぐ力の弱さを埋めるには足りない。
中立の筋書きでは、会社の目標を 5 年ほど遅れて達成する。それでも自己資本の利回りは 5% 台で、株主が求める 8% 台には届かない。楽観の筋書きまで行って、ようやく今の時価総額に並ぶ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は資産は厚いが、事業の稼ぐ力に確信を持ちにくい。
事業の本質は、体に合う下着を接客で売ることだ。この強みは、人口が減る国内で少しずつ細る。10 年先の堀を強いとは言えない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は小さい。事業利益は赤字から抜けたばかりで、目を引く純利益は売却益という一時のものだ。
資本の使い方には疑問が残る。現金と政策保有株を抱え、ROE は 3% 程度にとどまる。買収した 2 社も、利益への貢献はまだ小さい。グラマライズの純利益は約 2 億円で、ブラビッシモは火災の影響もあり成果が見えにくい。
安全域はある。純現金と政策保有株が株価の下を支え、悲観の筋書きでも、価値は売れる資産の水準までしか落ちない。だが今の値段は、改革の成功をほぼ織り込んだ形だ。成功しても要求する利回りに届かない事業に、先に値段を払うことになる。
何で稼ぐ会社か
ワコールは女性用の下着を企画し、百貨店・量販店・ドラッグストア・自社ネットで売る。2026 年 3 月期の売上は 1,715 億円。内訳は国内ワコール事業が約 877 億円、海外ワコール事業が約 684 億円、ピーチ・ジョンが約 111 億円だ。
国内の中心は、体に合わせてサイズを選ぶ接客を売りにした下着だ。売り場に店員を置き、採寸して売る。この接客が値段を守ってきた。一方、ウンナナクールやランジェノエルなど国内の子会社は不調で、国内の事業利益は赤字だった。
海外は米国・英国・中国・アジアに広がる。2024 年に英国の大きいサイズ専門店ブラビッシモを、2026 年 4 月に米国のグラマライズを約 52 億円で買った。どちらも大きいサイズに強い。体型に合う下着が少ない客層を押さえ、世界での地位を固める狙いだ。
ピーチ・ジョンは、若い層向けの通販が中心のブランドだ。2026 年 3 月期に営業黒字へ戻ったが、利益は 1 億円台と小さい。
新しい芽は 2 つある。3D の体型計測サービス「SCANBE」と、運動用の肌着 CW-X だ。会社は中期経営計画 2029 で、2029 年 3 月期に売上 2,010 億円・事業利益 85 億円、2031 年 3 月期に事業利益 130 億円と ROE 7% 以上を掲げる。
優良さと弱いところ
筆者がいちばん気にしているのは、稼ぐ力がこの 10 年で細ったことだ。営業利益率は 2016 年 3 月期の 6.8% から、2024 年 3 月期の −5.1% まで落ちた。最近も、事業利益は赤字から抜け出せていない。
堀、つまり他社がまねできない強みは、まだ残っている。採寸と接客のノウハウ、体型のデータ、百貨店の売り場だ。ただ、ユニクロのブラトップやしまむらは、この堀をよけて若い層と低価格を取った。2020 年の女性下着のシェアは、ユーロモニターの調べでユニクロ 22%、ワコール 20% だった。
値決め力は中くらいだ。体型にこだわる客には高い値段でも売れる。だが新しい客は、安い方へ流れる。
資本効率は低い。ROE は過去 10 年の中央値が 2.7% だ。現金と政策保有株を厚く抱え、稼ぐ力に比べて資本が多すぎる。
経営は変わりつつある。2026 年 1 月に社長直轄の構造改革室を置き、海外は 2 本部に分けた。だが前の計画は、売上も利益も途中で下方修正された。実行力が問われる局面だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の下着市場は、人口とともに細る。大きさは調査によって 4,800 億〜5,600 億円とばらつく。筆者は 5,000 億円と置き、数量は 10 年で 1 割弱減ると見る。
勝ち筋を持つのは 2 種類の会社だ。1 つは、低価格で量を売るユニクロやしまむらだ。もう 1 つは、大きいサイズや体型への合わせ込みなど、専門で売る会社だ。ワコールは後者の顔をしながら、前者に若い層を取られた。
夏の高温化も響いた。下着代わりに着るトップスや機能性の肌着が広がり、ワコールやピーチ・ジョンの売上を押し下げたと言われる。商品の定義そのものが変わった、と見るべきだ。
海外はどうか。米国は関税で粗利が悪化し、減収だった。英国は大きいサイズの専門店を取り込んだ。中国は低迷が続く。世界の下着市場は年 6% ほどで伸びるとの見方もあるが、ワコールがその成長を取れるかは別の話だ。
価格は、物価並みに上げられるかが鍵になる。原材料も人件費も物価で上がるので、値上げが客を削ると元も子もない。
なお、ワコールは国際会計基準(IFRS)で決算を出す。店舗や売り場の賃借はすでに借金の側に載っているので、2028 年 3 月期からの新リース会計基準による数字の形の変化は小さい。
資本政策と M&A
還元は、利益に比べて大きい。配当は年 46 億円前後を保つ方針で、2025 年 5 月から 2026 年 3 月に約 234 万株の自社株買いも行った。利益が出ない年にも配当を出しており、還元が利益を上回る形だ。
2026 年 3 月期の純現金は約 320 億円。ここから、米国グラマライズの買収に約 52 億円、成果次第でさらに最大約 17 億円が出ていく。
政策保有株は、2026 年 3 月末で連結純資産の約 19% を占める。中計では、2029 年 3 月期までに約 200 億円を減らし、15% 未満にする。前の計画は 300 億円超・10% 未満を掲げたが、届かなかった。自社株買いも、枠の 550 億円を下回った。会社は、買収の検討と時期が重なったと説明する。
株主には、2024 年にシンガポールの投資ファンド、3D インベストメント・パートナーズが筆頭株主として浮上した。保有目的に重要提案の可能性を挙げていた。今の持株は確かめていない。
M&A は「美・快適・健康」の領域で続ける方針だ。大きいサイズの買収が 2 件続いており、次も同じ型が続く公算が大きい。kabufu の推計では、10 年以内に買収や TOB を受ける確率は約 2 割だ。
還元は方針(配当は年46億円前後、余った資金は自社株買いで返す)どおり。中立は純利益の合計(起点は一過性を除いた30億円)を上回るので、上回る分だけ筋書きの余った現金を減らして置いた(上の370億円に対し中立170億円)。二重にしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
改革は今度こそ進む。社長直轄の構造改革室ができ、前の計画で止まっていた国内子会社の立て直しが動く。ワコール単体はすでに黒字に戻り、ピーチ・ジョンも黒字になった。
海外は、買収で足場が広がった。大きいサイズは体型に合う下着が少なく、値段で選ばれにくい。ブラビッシモとグラマライズで英米の地位を固められる。米国の関税の影響も、時間とともに薄れる。
国内は、体型計測の SCANBE で接客を強める。下着は、サイズが合ってこそ売れる。ここは低価格のユニクロと真正面から争う場所ではない。運動用の CW-X も、健康志向の追い風を受ける。
資本の手当ても大きい。政策保有株の 200 億円縮減、自社株買い、厚い純現金で、資本は軽くなる。会社が掲げる ROE 7% に近づけば、利益は今の水準を大きく超える。大株主に投資ファンドもいて、資本の無駄は許されにくい。
値上げの余地も残る。採寸して合わせる下着は、客が値段より着け心地で選ぶ。物価の上昇を価格に乗せても、数量は大きく崩れない。国内の市場が縮んでも、利益率で稼ぐ形に変えられる。
慎重な見方
本業は、10 年近く稼げていない。営業利益率は 2016 年 3 月期の 6.8% から下がり続け、直近の黒字は売却益のおかげだ。2027 年 3 月期の会社予想も、事業利益は 5 億円しかない。
国内は人口が減り、若い層をユニクロやしまむらに取られた。ブラトップが、ブラジャーという商品の定義を変えた。百貨店の売り場に頼る売り方は、客が減る中で固定費だけが重い。
海外は、買収で売上が増えても利益がついてこない。米国は関税で粗利が悪化し、中国は低迷が続く。買収した 2 社は大きいサイズという専門の分野で、市場は小さい。
会社の計画は信用しにくい。前の計画も、売上と事業利益を途中で下方修正した。政策保有株の縮減も、300 億円超の目標に対し、純資産比は 19% 台に残った。
今の時価総額は、改革の成功を前提にしている。だが成功しても ROE は 7% で、資本コストに届かない。成功の値段を先に払うことになる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。国内の需要が縮む構造は変わらず、前の計画が未達だった事実も重い。ただし資産の厚みがあるので、悲観の筋書きでも時価総額は純現金と売れる資産の水準までは落ちない。
そこで確率は慎重な側に寄せた。構造的に負ける筋書きを 14%、やや悲観を 24% とした。会社の計画どおりに進む楽観は 8%、やや楽観は 20% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,247 円1,112 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,560 円772 億円)。 今の値に割り戻すと 1,997 円988 億円、今との差 −44.2%、 期待の年率 +0.6%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,894 円1,927 億円 | 2,627 円1,300 億円 | +82.4% | +6.2% | 522 円258 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,257 円1,612 億円 | 2,122 円1,050 億円 | +50.4% | +4.2% | 1,076 円532 億円 |
| 中立 | 34% | 2,598 円1,286 億円 | 1,818 円900 億円 | +23.5% | +2.1% | 1,502 円743 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,176 円582 億円 | 1,010 円500 億円 | −38.9% | −4.8% | 525 円260 億円 |
| 悲観 | 14% | 847 円419 億円 | 465 円230 億円 | −63.3% | −9.5% | 184 円91 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,247 円1,112 億円 | 1,560 円772 億円 | +6.5% | +0.6% | 3,807 円1,884 億円 |
今の株価時価総額 3,576 円1,770 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 改革が成功し、大きいサイズで世界の地位を固める 利益 160 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 3,894 円1,927 億円
構造改革が計画どおり進み、国内の子会社の赤字が消える。国内のシェアは 18% を保ち、営業利益率は 8% まで戻る。
海外は、ブラビッシモとグラマライズに続く買収で大きいサイズの地位を固める。点数は今の 4 割増になり、利益率は 7%。米国の関税の影響は薄れる。ピーチ・ジョンも 8% の利益率を出す。
営業利益は 200 億円ほどになり、2008 年 3 月期の最高水準に並ぶ。政策保有株を売り、現金を自社株買いに回すので、資本は軽くなって ROE は 9% 近くに上がる。
競合のユニクロ・しまむらは今と同じ顔ぶれで、若い層は引き続き取られる。ただワコールは、体型に合わせる分野に軸足を移して守る。M&A は大きいサイズの分野で続き、買収の失敗も大きくない。
- 国内ワコール事業:数量 5,000(国内の女性用下着市場(億円・今の値段で測った実質・推計))× 価格 24.1%(実質の市場に対する売上の比(シェア × 物価の倍率)=シェア × 物価の倍率(1.00 が今))→ 売上 1,206 億円・営業利益 96 億円。市場 5,000 億円(横ばい)× シェア 18%、価格は物価並み、利益率 8%
- 海外ワコール事業:数量 3,100(販売点数(万点・推計))× 価格 0.42(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 1,302 億円・営業利益 91 億円。3,100 万点(今の 1.36 倍)× 0.42 万円、利益率 7%
- ピーチ・ジョン事業:数量 520(販売点数(万点・推計))× 価格 0.38(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 199 億円・営業利益 16 億円。520 万点 × 0.383 万円、利益率 8%
- その他:数量 150(販売点数(万点・推計))× 価格 0.40(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 5 億円。150 万点 × 0.403 万円、利益率 8%
倍率:事業の純利益 159 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)70 億円。全体の PER 11.68 倍、時価総額 1,927 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画どおり、またはそれ以上に進む姿。前の計画が未達で、本業の利益が 10 年近く出ていない。だから 1 割に届かない 8% にとどめた。
やや楽観 20% 目標を数年遅れで達成し、利益は 7% の水準に戻る 利益 130 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,257 円1,612 億円
構造改革は進むが、会社の目標より数年遅れる。国内は市場が 2% 縮み、シェアは 17.5% を保つ。営業利益率は 7% まで戻る。
海外は大きいサイズが伸びる。米国の関税の影響は残るが、点数は今の 25% 増、利益率は 6% になる。ピーチ・ジョンは 7%。
営業利益は 170 億円弱で、会社が 2031 年 3 月期に掲げる 130 億円を超える。だが ROE は 7% に届かず、6% 台にとどまる。
政策保有株の縮減は計画どおり進み、自社株買いも続く。M&A は大きいサイズでもう 1〜2 件が出る。競合は変わらず、ワコールは専門の分野で守る。
- 国内ワコール事業:数量 4,900(国内の女性用下着市場(億円・今の値段で測った実質・推計))× 価格 23.5%(実質の市場に対する売上の比(シェア × 物価の倍率)=シェア × 物価の倍率(1.00 が今))→ 売上 1,149 億円・営業利益 80 億円。市場 4,900 億円(実質 −2%)× シェア 17.5%、物価並み、利益率 7%
- 海外ワコール事業:数量 2,850(販売点数(万点・推計))× 価格 0.41(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 1,163 億円・営業利益 70 億円。2,850 万点 × 0.408 万円、利益率 6%
- ピーチ・ジョン事業:数量 450(販売点数(万点・推計))× 価格 0.37(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 167 億円・営業利益 12 億円。450 万点 × 0.372 万円、利益率 7%
- その他:数量 143(販売点数(万点・推計))× 価格 0.40(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 5 億円。143 万点(横ばい)× 0.403 万円、利益率 8%
倍率:事業の純利益 128 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 1,612 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前の計画は未達でも、構造改革室と資本の圧力で、遅れつつ進む可能性は高い。会社の目標に近い姿を 2 割とした。
中立 34% 目標を 5 年遅れで達成し、低い資本効率が残る 利益 100 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,598 円1,286 億円
構造改革は進むが、前の計画と同じく遅れる。会社が 2031 年 3 月期に掲げる事業利益 130 億円に、5 年遅れで届く。
国内は市場が実質で 5% 縮み、シェアは 16.5% まで下がる。営業利益率は 6%。海外は点数が 1 割ほど増え、利益率は 5%。ピーチ・ジョンは 6%。
営業利益は 130 億円弱。それでも ROE は 5% 台にとどまる。現金と政策保有株が厚く、事業の稼ぐ力に対して資本が多いからだ。
還元は年 46 億円前後の配当を保ち、自社株買いで余った資金を返す。M&A は大きいサイズでさらに 1 件続くが、成果は小さい。買収や TOB の提案は出るが、成立する確率は高くない。
- 国内ワコール事業:数量 4,750(国内の女性用下着市場(億円・今の値段で測った実質・推計))× 価格 22.1%(実質の市場に対する売上の比(シェア × 物価の倍率)=シェア × 物価の倍率(1.00 が今))→ 売上 1,050 億円・営業利益 63 億円。市場 4,750 億円(実質 −5%)× シェア 16.5%、物価並み、利益率 6%
- 海外ワコール事業:数量 2,550(販売点数(万点・推計))× 価格 0.40(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 1,025 億円・営業利益 51 億円。2,550 万点(グラマライズ込みで今の 1.12 倍)× 0.402 万円、利益率 5%
- ピーチ・ジョン事業:数量 440(販売点数(万点・推計))× 価格 0.37(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 164 億円・営業利益 10 億円。440 万点 × 0.372 万円、利益率 6%
- その他:数量 143(販売点数(万点・推計))× 価格 0.40(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 3 億円。143 万点 × 0.403 万円、利益率 6%
倍率:事業の純利益 98 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)170 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 1,286 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の縮小と構造改革の効果が打ち消し合う、最も起きやすい姿。会社の目標より遅れると置いた。
やや悲観 24% 国内の縮小が改革を上回り、利益が出ない 利益 42 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,176 円582 億円
構造的に負ける途中の姿。国内は市場が 8% 縮み、シェアは 15% まで下がる。値引きも増え、営業利益率は 3%。
海外は米国の関税が長引き、中国も立て直せない。点数は今の 1 割増にとどまり、利益率は 2%。ピーチ・ジョンも 2%。
営業利益は 50 億円ほどになり、2029 年 3 月期の目標 93 億円には届かない。配当は今の水準から引き下げ、自社株買いも小さくなる。
買収したブラビッシモとグラマライズは、思うように稼げない。のれんの一部は減損になる。現金と政策保有株は食いつぶさず、価値の下支えになる。
- 国内ワコール事業:数量 4,600(国内の女性用下着市場(億円・今の値段で測った実質・推計))× 価格 19.5%(実質の市場に対する売上の比(シェア × 物価の倍率)=シェア × 物価の倍率(1.00 が今))→ 売上 897 億円・営業利益 27 億円。市場 4,600 億円(実質 −8%)× シェア 15%、値引きで価格は 1.30 倍、利益率 3%
- 海外ワコール事業:数量 2,300(販売点数(万点・推計))× 価格 0.39(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 897 億円・営業利益 18 億円。2,300 万点 × 0.39 万円、利益率 2%
- ピーチ・ジョン事業:数量 380(販売点数(万点・推計))× 価格 0.35(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 132 億円・営業利益 3 億円。380 万点 × 0.347 万円、利益率 2%
- その他:数量 143(販売点数(万点・推計))× 価格 0.39(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 2 億円。143 万点 × 0.391 万円、利益率 3%
倍率:事業の ROE は 2% 台で、k を大きく下回る。1÷k の約 11.8 倍を上限に、利益の質の低さを見て 8 倍に置いた。余った資金は今の 0.75 倍で足す。
確率:国内の縮小は確実で、前の計画も未達だった。慎重な見方が強いので、やや悲観を 24% と厚めに置いた。
悲観 14% 若い層と店を失い、事業が資産以下の価値になる 利益 −8 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 847 円419 億円
構造的に負ける。国内は市場が 12% 縮み、シェアは 12% まで落ちる。百貨店の売り場は減り、残った売り場も値引きに頼って赤字になる。
海外は、大きいサイズの買収が利益に結びつかず、米国の関税と中国の不振で利益はゼロ近い。ピーチ・ジョンも赤字に戻る。
営業損益は 20 億円近い赤字。のれんと店舗の減損で、自己資本も削られる。配当は大きく引き下げ、自社株買いはほぼ止まる。
事業の稼ぐ力は価値として残らず、純現金と政策保有株の売却で得る資産だけが価値になる。TOB の提案が出るとしても、事業の価値は低く評価される。
- 国内ワコール事業:数量 4,400(国内の女性用下着市場(億円・今の値段で測った実質・推計))× 価格 15.0%(実質の市場に対する売上の比(シェア × 物価の倍率)=シェア × 物価の倍率(1.00 が今))→ 売上 660 億円・営業利益 −13 億円。市場 4,400 億円(実質 −12%)× シェア 12%、価格は 1.25 倍、赤字 −2%
- 海外ワコール事業:数量 1,900(販売点数(万点・推計))× 価格 0.38(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 712 億円・営業利益 0 億円。1,900 万点 × 0.375 万円、利益ゼロ
- ピーチ・ジョン事業:数量 280(販売点数(万点・推計))× 価格 0.33(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 −3 億円。280 万点 × 0.333 万円、赤字 −3%
- その他:数量 100(販売点数(万点・推計))× 価格 0.38(1 点あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 0 億円。100 万点 × 0.376 万円、利益ゼロ
倍率:稼ぐ力(純利益が赤字)より、売れる資産のほうが大きい。床は今の自己資本 2,096 億円に PBR 0.2 倍を掛けた約 420 億円で、純現金と政策保有株の売却分の税後から、還元と損失を引いた額に相当する。倍率は市場の値付けから置いていない。
確率:国内の縮小と、ユニクロやしまむらへの流出、買収の失敗が重なる構造的な負けを 14% とした。5% 未満にはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内ワコール事業
国内の女性用下着。採寸と接客を売りにした百貨店・量販店・ネットの販売と、ウンナナクールなど国内の子会社。
| 数量国内の女性用下着市場(億円・今の値段で測った実質・推計) | 価格実質の市場に対する売上の比(シェア × 物価の倍率)=シェア × 物価の倍率(1.00 が今) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,000 | 17.5% | 877 | −12 |
| 10 年後 中立 | 4,750 | 22.1% | 1,050 | 63 |
取り方:開示がなく、女性下着の国内市場を 5,000 億円と置いた(ユーロモニターは 2020 年に約 4,800 億円、矢野経済研究所系の二次情報は約 5,580 億円で、幅がある)。国内ワコール事業の売上 877 億円を割ると、シェアは 17.5% で、ユーロモニターの 2020 年の約 20% とも近い。事業利益はワコール単体の黒字と子会社の赤字を合わせ、約 −12 億円(推計)。
海外ワコール事業
米国・英国・中国・アジアのワコール。英ブラビッシモと米グラマライズ(2026 年 4 月から)は大きいサイズに強い。
| 数量販売点数(万点・推計) | 価格1 点あたりの平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,280 | 0.30 | 684 | 5 |
| 10 年後 中立 | 2,550 | 0.40 | 1,025 | 51 |
取り方:点数の開示はない。海外の売上 684 億円を、1 点あたり 0.3 万円(推計)で割り、2,280 万点とした。事業利益は決算説明から約 5 億円(前期比 −10 億円)。グラマライズは 2026 年 4 月に加わるので、今の列には入っていない。
ピーチ・ジョン事業
若い層向けの通販を中心とした下着ブランド。2026 年 3 月期に営業黒字へ戻った。
| 数量販売点数(万点・推計) | 価格1 点あたりの平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 0.28 | 111 | 1 |
| 10 年後 中立 | 440 | 0.37 | 164 | 10 |
取り方:点数の開示はない。売上 111 億円を、1 点あたり 0.2775 万円(推計)で割り、400 万点とした。事業利益は約 1.3 億円で、営業利益は 1.5 億円と報じられている。
その他
美術・不動産・関連サービスなど、3 つの事業に入らない部分と全社の調整。
| 数量販売点数(万点・推計) | 価格1 点あたりの平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 143 | 0.30 | 43 | 5 |
| 10 年後 中立 | 143 | 0.40 | 58 | 3 |
取り方:連結売上 1,715 億円から 3 つの事業を引いた約 43 億円。連結の事業利益 −4.6 億円との差が、その他と調整の約 5 億円になる(推計)。
リスクと懸念
国内の需要減とシェア流出
国内の下着の数量は、人口とともに細る。ユニクロやしまむらは若い層を取り、夏の高温化で下着代わりのトップスも広がった。国内で稼ぐ主力が縮み続ければ、構造改革で固定費を削っても利益は伸びない。
構造改革が計画どおり進まない
2026 年 1 月に構造改革室を置いたが、前の計画は売上も事業利益も下方修正で終わった。国内子会社の立て直しが遅れれば、2029 年 3 月期の事業利益 85 億円は遠のく。会社予想の事業利益は 2027 年 3 月期でも 5 億円しかない。
米国の関税と海外の収益
海外ワコール事業の事業利益は 5 億円で、前期から 10 億円減った。米国は減収と関税で粗利が悪化した。関税が続けば、買収で増えた売上も利益に結びつかない。中国の低迷も長引く恐れがある。
買収の失敗とのれんの減損
ブラビッシモとグラマライズは、大きいサイズに特化した買収だ。グラマライズは約 52 億円で、成果次第で最大約 17 億円を追加で払う。思うように稼げなければ、のれんの減損が出る。市場が小さい分野なので、買収を重ねるほど失敗の傷が深くなる。
固定費の重さ
百貨店などの売り場と店員を抱える売り方は、客が減っても固定費が残る。リースは国際会計基準ですでに借金の側に載っており、不況の年には利益を大きく削る。純現金が厚く見えても、この約束を差し引いて見る必要がある。
資本政策のぶれ
政策保有株の縮減は目標に届かず、自社株買いも枠を下回った。資本の使い方が計画とずれる傾向がある。一方で、大株主に投資ファンドが 2024 年に浮上しており、資本の圧力が高まれば還元が増える面もある。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の事業利益が会社予想の 5 億円を大きく上回り、2028 年 3 月期に 30 億円台へ乗る
- 改革が前倒しで進んでいる。楽観とやや楽観に確率を移す。
- 国内ワコール事業の事業利益が 2 期続けて赤字
- 子会社の立て直しが進んでいない。やや悲観と悲観に確率を移し、2029 年 3 月期の目標は届かないと見る。
- 米国の関税が続き、海外ワコール事業が赤字に落ちる
- 買収の効果が打ち消される。のれんの減損も視野に入り、悲観側の確率を上げる。
- 政策保有株の縮減と自社株買いが計画を上回って進む
- 余った資金の戻りが早まる。還元の合計が増え、中立の価値を押し上げる。
- 投資ファンドや事業会社が大きな提案や TOB を出す
- この会社の価値は、事業より資産に近い。提案の中身が純現金と売れる資産の水準を上回るかが分かれ目になる。
見ておくもの
- 国内ワコール事業とウンナナクールなど子会社の事業利益
- 米国の関税の影響と、海外ワコール事業の粗利率
- グラマライズの売上・利益と追加対価の支払い
- 政策保有株の縮減額と、自社株買いの実行額
- 百貨店の売り場の数と、ピーチ・ジョンの営業損益
- 有価証券報告書のリース負債と、純資産に占める政策保有株の比率
倍率と資本コストの決め方
今の株価から逆算していない。国内は市場 5,000 億円の実質の縮み × シェア × 物価並みの価格、海外は点数 × 単価で営業利益を積み、事業の ROE から倍率の上限を出して 8〜9 割に置いた。ROE が k に届かない会社で、倍率は 1÷k を超えない。余った資金は純現金と売却予定の政策保有株で別に足した。ワコールは IFRS で、リースはすでに BS に載っており、数字の形は今と同じ前提で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→11.68 倍・やや楽観 PER 10.2→11.43 倍・中立 PER 9.5→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。