結論
キムラタンは、かつてベビー・子供服の老舗だった会社だ。今は売上の9割近くを、中古物件を買って改装し売る不動産事業が占める。子供服はネット通販に縮み、園児の見守りサービスという小さな新事業も持つ。
2026年3月期は売上25億円で、子会社の買収により前期比44%増えた。営業利益は0.9億円で黒字だが、借入の利息が重く、経常損益は0.6億円の赤字、純損益は1億円の赤字だった。
筆者の結論は「割高」だ。時価総額は約83億円。これに対し自己資本は16億円、純負債は70億円で、自己資本の4倍を超える。営業利益はこの借金の利息をまかなえるかどうかの水準だ。
会社は2027年3月期に営業利益3億円と、純利益の黒字転換を見込む。ただ、金利が上がる中で、借入を増やして物件を仕入れる事業は利ざやが薄い。10年の稼ぎを積み上げても、今の値段には届かないと筆者は見る。
小さな会社の事業転換には時間がかかる。筆者は、利払いをこなして黒字が積み上がるまで、評価を上げない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、キムラタンは「事業が定まらず、借金で回す小型株」だ。10年後も事業が続くか、続くとして誰の利益になるかが読みにくい。わからない事業に高い値段は払えない。
株主のものになる利益、つまりオーナー利益は、今はほぼ無い。営業利益は利払いにほぼ消え、純損益は赤字だ。増資で資金を足し続けてきた会社では、利益が出ても薄まった株の一部にしかならない。
経営は、不動産への転換と子会社の買収で規模を広げる道を選んだ。資本の使い方は、借入で物件を仕入れて回す形で、金利が上がる世界ではリスクが高い。
安全域は、自己資本16億円と不動産の含み益にあるが、純負債は70億円と大きい。時価総額83億円は、この資産の厚みに比べて高い。筆者は、資産でも稼ぐ力でも、今の値段を支える根拠を見つけられなかった。
何で稼ぐ会社か
事業は三つある。不動産事業が売上の87%を占める。中古の一戸建てやマンションを買い取って改装し売る「買取再販」、賃貸、収益物件の販売、投資家向けの小口化商品などだ。2024年から2025年にかけて、九建機材など複数の不動産会社を子会社にして、規模を広げた。
二つ目はアパレル事業で、売上の12%。ベビー・子供服を主にネットで売る。在庫の値下げ販売で赤字が拡大し、営業損失は1.2億円と、不動産事業の利益の半分を食っている。
三つ目はウェアラブル事業で、売上の1.5%。園児の見守りサービス「cocolin」を全国の保育施設に提供し、熱中症対策の商品も売る。まだ小さく、赤字だ。
2026年3月期の営業キャッシュフローは11億円のプラスだったが、これは在庫の不動産を売って現金に換えた影響が大きい。借入は長期63億円、短期7億円。2025年12月には第三者割当増資で5億円を調達し、自己資本比率は11%から17%に戻った。2027年3月期の計画は、売上30億円、営業利益3億円だ。
従業員は少数で、物件の仕入れと営業を本社と子会社が分担する。
優良さと弱いところ
強みは、不動産の仕入れと改装を手早く回す小回りと、子会社を買って規模を広げる速さにある。ただ、堀と呼べるほどの優位は見当たらない。中古物件の買取は同業が多く、仕入れの値段は市場が決める。
弱みは三つある。ひとつは、借金が重いこと。純負債は自己資本の4倍強で、営業利益は支払利息の0.6倍しかない。ふたつめは、アパレル事業の赤字が続くこと。みっつめは、増資で薄まってきた歴史だ。過去20年のうち7期で株が増え、赤字の期は14に及ぶ。
営業利益率は過去12年で、赤字が続いたあと2024年から黒字に変わった。ROEは中央値でマイナス40%と、会社が長く損失を出し続けた事実を映す。
借入先との契約には、経常損益を2期連続で赤字にしないという財務の特約があり、直近の経常損益は赤字だった。銀行との関係は、事業の生命線になる。支配株主は確認できなかった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
中古住宅の買取再販は、住宅価格の高止まりと、新築を買えない層の増加が追い風になってきた。上場の大手が参入し、小さな会社は仕入れ値と販売先の両方で価格競争にさらされる。
事業の利ざやは、売却益と借入の利息の差で決まる。物価が年3%で上がる世界では、不動産の値段も長い目で上がる傾向があるが、その分、建築費と改装費も上がる。短期金利が2%に上がり、借り換えの金利は3.5%になる。借入で仕入れる事業には、金利の上昇が利ざやを直撃する。
子供服は、少子化で数量が縮む成熟した市場だ。ユニクロやしまむらなど大手が価格を決め、ネット専業の小さな会社は在庫の値下げを避けにくい。
園児の見守りサービスは、保育の人手不足を背景に需要がある。ただ、導入が進むかは自治体の補助金に左右される。
不動産価格が下がる局面では、在庫を抱える再販業者は損失を出しやすい。
物件の仕入れは、競売や不動産会社の売却情報が元になる。仕入れ値は市場が決め、改装費の上昇が利幅を削る。
人手不足による職人の賃上げも、改装の原価を押し上げている。
資本政策と M&A
還元は無い。配当は出しておらず、自社株買いの実績もない。増資で資金を集めて事業を広げてきた会社で、2025年12月の第三者割当で5億円を調達した。割当先は確認できなかった。
子会社化を続ける会社で、2024年1月に九建機材、2025年2月にイスト、ライブ、コネクトの3社を取得した。買収の費用と効果は、まだ数字で確かめられない。
借入先との契約には、経常損益を2期連続で赤字にしないという特約がある。破ると返済を求められる恐れがあり、増資や資産の売却で対応する必要が出る。
継続企業の前提の注記は、有価証券報告書に記載を確認できなかった。ただ、過去には2020年3月期と2021年3月期に付いた経緯がある。
TOBの可能性は試算で10年以内に17%あるが、価値には足していない。株主優待は確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
不動産の買取再販は、住宅価格の高止まりで需要が続く。2026年3月期は子会社の取り込みと再販の伸びで売上が44%増え、営業利益も黒字を維持した。2027年3月期の計画は営業利益3億円で、純利益も黒字に戻る。
小さな会社が子会社を買って規模を広げる速さは、他にない強みだ。資金調達のため増資を重ねても、成長で取り返せる。投資家向けの小口化商品など、新しい収益源も育っている。
子供服の赤字は縮み、ネット通販に絞って採算を取れる水準まで下がる。園児の見守りサービスは、保育の人手不足を追い風に、全国の施設に広がる。
物価上昇の世界では、不動産の値段も上がり、在庫の含み益が増える。営業キャッシュフローは11億円と、現金を生む力は戻っている。
株価が低い小型株は、事業の転換が当たれば評価が大きく変わる。
金利が上がっても、物件の値上がりが利払いを上回れば、再販の利ざやは保たれる。
不動産の買取再販は、新築価格の高騰で需要が伸びる市場だ。小回りの利く会社に、仕入れの機会がある。
慎重な見方
借金が重すぎる。純負債は70億円で自己資本の4倍強、営業利益は支払利息の0.6倍。短期金利が2%に上がり、借り換えが3.5%になれば、利払いはさらに増える。営業利益3億円の計画が達成されても、利払いにほとんど消える。
財務の特約が足かせだ。経常損益を2期連続で赤字にできず、直近は赤字だった。破れば返済を求められ、増資か資産の売却を迫られる。過去20年で7期も増資を繰り返した会社で、株がまた薄まる可能性が高い。
アパレル事業の赤字は拡大し、事業の柱が入れ替わった途上にある。買収した子会社の収益は、まだ1年に満たない。4月には、不動産の売却が遅れ、取りやめになって、利益の予想を下方修正した。
不動産価格が下がれば、在庫の損失が自己資本を直撃する。自己資本16億円では、わずかな下落で債務超過に近づく。時価総額83億円は、これらの危うさを織り込んでいない。
金利の上昇と不動産価格の下落が同時に来れば、再販業者の経営は一気に苦しくなる。
増資に頼る経営は、株主にとって取り分がさらに薄まることを意味する。
どちらに重みを置いたか
事業の転換が進み、営業キャッシュフローも戻った点は強気の見方が正しい。ただ、借金の重さと財務の特約、増資で薄まる歴史は慎重な見方が勝る。そこで中立を35%、やや悲観を30%、悲観を15%と、悲観側を厚くした。
結果として、10年の価値は今の時価総額を大きく下回る。割高の最大の理由は、自己資本に対する借金の重さと、利益が利払いに消える構造だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3 円7 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 1 円3 億円、今との差 −96.7%、 期待の年率 −21.9%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 8 円21 億円 | 0 円0 億円 | −74.6% | −12.8% | 0 円1 億円 |
| やや楽観 | 15% | 4 円12 億円 | 0 円0 億円 | −85.5% | −17.5% | 1 円2 億円 |
| 中立 | 35% | 3 円7 億円 | 0 円0 億円 | −91.3% | −21.7% | 1 円3 億円 |
| やや悲観 | 30% | 2 円5 億円 | 0 円0 億円 | −94.0% | −24.5% | 1 円1 億円 |
| 悲観 | 15% | 0 円1 億円 | 0 円0 億円 | −98.8% | −35.7% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3 円7 億円 | 0 円0 億円 | −91.5% | −21.9% | 3 円7 億円 |
今の株価時価総額 30 円83 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 5% 楽観:再販が3倍に伸び、金利負担をこなす 利益 2 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 8 円21 億円
増資と借入で物件を仕入れ、再販が3倍近くに伸びる。住宅価格の高止まりが続き、営業利益率は11%を保つ。
アパレルは撤退に近い形に縮み、赤字が止まる。ウェアラブルは全国の保育施設に広がり、利益が出る。
借入は膨らむが、利払いを営業利益でまかない、純利益は2億円ほどになる。自己資本は28億円に積み上がる。
ただ、配当は出せず、増資で薄まる可能性も残る。それでも規模の拡大が評価され、倍率は上限近くになる。
物件の仕入れは地方の中古住宅にも広がり、案件の数が増える。
新しい小口化商品も売れ、手数料収入が積み上がる。
- 不動産事業:数量 66.0(販売物件数相当(件。売上÷平均単価の推定))× 価格 1.07(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 71 億円・営業利益 8 億円。物件 66件相当 × 1件1.07億円(不動産の値上がり込み)、営業利益率11%
- アパレル事業:数量 1.0(販売点数(万点。推定))× 価格 0.30(1万点あたりの売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。アパレルは撤退に近い縮小、利益ゼロ
- ウェアラブル事業:数量 20.0(導入施設数(百施設相当。推定))× 価格 0.12(百施設あたりの売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。導入施設 2,000相当 × 0.12億円/百施設、利益率15%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 21 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:増資と借入で再販を拡大し、金利上昇の中でも利ざやを保つ筋書き。実績が短く1割に届かない。
やや楽観 15% やや楽観:再販が5割増え、アパレルの赤字が縮む 利益 1 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 4 円12 億円
再販が5割増え、営業利益率は10%を保つ。子会社の取り込みが進み、アパレルの赤字は縮む。
借入は増えるが、利払いをまかなえる範囲にとどまる。純利益は1億円ほどの黒字で、自己資本は18億円に増える。
配当は出さず、利益は借入の返済と物件の仕入れに回る。
特別な追い風は置かず、2027年3月期の計画が実現し、その水準が続く筋書きだ。
小口化商品などの手数料収入が加わり、営業利益率を支える。
子会社の統合が進み、仕入れから販売までの回転が速くなる。
配当を出せる水準には届かないが、借入の返済は進む。
借入先との関係も安定し、財務の特約には触れない。経常損益は黒字を保つ。
- 不動産事業:数量 52.0(販売物件数相当(件。売上÷平均単価の推定))× 価格 1.07(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 56 億円・営業利益 6 億円。物件 52件相当 × 1.07億円、営業利益率10%
- アパレル事業:数量 3.0(販売点数(万点。推定))× 価格 0.30(1万点あたりの売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。アパレル縮小、利益率-5%
- ウェアラブル事業:数量 14.0(導入施設数(百施設相当。推定))× 価格 0.11(百施設あたりの売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。導入施設 1,400相当、利益率12%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 12 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再販が計画どおり伸び、アパレルの赤字を縮める筋書き。
中立 35% 中立:再販は4割増えるが、金利で利益はほぼ残らない 利益 0 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 3 円7 億円
再販は4割増えるが、住宅価格の上昇は物価並み(1.34倍)にとどまる。営業利益率は8%に下がり、アパレルの赤字は縮むが残る。
借入は物件の仕入れに合わせて95億円ほどに増える。借り換えの金利は3.5%になり、利払いは営業利益とほぼ釣り合う。純利益はゼロ近辺にとどまる。
過去3年の純利益÷営業利益はマイナスで、利払いが利益を食う構造は変わらない。自己資本は12億円ほどで、増資で補えばさらに薄まる。
配当は出せず、株主の取り分は増えない。
子会社の取り込みで売上は増えるが、利益の多くは利払いと賃上げに消える。
物件の仕入れは続き、増資に頼る場面が残る。
- 不動産事業:数量 38.0(販売物件数相当(件。売上÷平均単価の推定))× 価格 1.07(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円。物件 38件相当 × 1.07億円(物価1.34倍)、営業利益率8%
- アパレル事業:数量 6.0(販売点数(万点。推定))× 価格 0.30(1万点あたりの売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。アパレルは縮小、利益率-10%
- ウェアラブル事業:数量 8.0(導入施設数(百施設相当。推定))× 価格 0.10(百施設あたりの売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。導入施設 800相当、利益率10%
倍率:利益がほぼ残らず、赤字や谷の年として PBR で置く。ROE がほぼゼロで、不動産の簿価に借入の重さを引いて0.6倍。EV ÷ 営業利益は(時価総額+純負債70億円で)大きく出るが、利益が利払いに消える筋書きなので、資産と借入の差で測っている。
確率:再販は伸びるが、金利の上昇が利ざやを食い、利益がほぼ残らない普通の筋書き。
やや悲観 30% やや悲観:売却が遅れ、赤字が続く 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 2 円5 億円
不動産の売却が遅れ、在庫が積み上がる。住宅価格の上昇は物価に届かず、営業利益率は4%に下がる。アパレルの赤字は続き、純損益は赤字になる。
借り換えの金利が上がり、利払いが営業利益を超える。財務の特約に触れ、増資か資産の売却が必要になる。
自己資本は6億円まで減り、増資で株が薄まる。配当は出せず、株主の取り分は残らない。
改装費と人件費の上昇が利幅を削り、在庫の回転も鈍る。
銀行との交渉に時間がかかり、新規の仕入れが止まる。
配当は出せず、株主の取り分はさらに薄まる。
財務の特約に触れる前に増資を急ぎ、株の希薄化が進む。経常損益は赤字が続く。
- 不動産事業:数量 30.0(販売物件数相当(件。売上÷平均単価の推定))× 価格 0.95(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。物件 30件相当 × 0.95億円(値上がりが物価に届かない)、営業利益率4%
- アパレル事業:数量 8.0(販売点数(万点。推定))× 価格 0.25(1万点あたりの売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。アパレルの赤字が続く、利益率-20%
- ウェアラブル事業:数量 5.0(導入施設数(百施設相当。推定))× 価格 0.10(百施設あたりの売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。導入施設 500相当、利益ゼロ
倍率:赤字が続くため PBR で置く。床は今の自己資本16.5億円に掛け、中立の0.6倍より下げて0.30倍。EV ÷ 営業利益は大きく出るが、利益が利払いに消える筋書きなので資産と借入の差で測っている。
確率:不動産の売却が遅れ、金利負担と赤字事業が足を引く筋書き。
悲観 15% 悲観:不動産の下落と借換えの失敗で、増資を重ねる 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 0 円1 億円
不動産価格が下がり、在庫の損失が出る。借り換えに失敗し、財務の特約を破って返済を求められる。
増資を繰り返して株が大きく薄まり、アパレルとウェアラブルも赤字が続く。自己資本は4億円まで減る。
価値は稼ぐ力でなく、不動産を売って借入を返した残りに頼る。
清算されない限り、少数株主は資産の使い方を決められず、株は薄まり続ける。
物件の売却を急ぎ、損失を確定させて借入を減らす。
事業の規模は大きく縮み、子会社の整理も進む。
従業員の削減も避けられず、事業の再建には新しい出資者が必要になる。
財務の特約に触れ、借入先との交渉が長引く。取引先の信用も落ちる。
- 不動産事業:数量 20.0(販売物件数相当(件。売上÷平均単価の推定))× 価格 0.80(1件あたりの売上(億円、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。物件 20件相当 × 0.80億円(値下がり)、営業利益率-2%
- アパレル事業:数量 8.0(販売点数(万点。推定))× 価格 0.22(1万点あたりの売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 −1 億円。アパレルの赤字が拡大、利益率-30%
- ウェアラブル事業:数量 3.0(導入施設数(百施設相当。推定))× 価格 0.10(百施設あたりの売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。導入施設 300相当、赤字
倍率:稼ぐ力が無いので、床は今の自己資本16.5億円に掛ける。不動産の売却額から借入を返した残りを0.25倍と置いた。中立の PBR(0.6倍)より低い。
確率:不動産価格の下落と借換えの失敗が重なり、財務特約に触れて増資を重ねる筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産事業
中古物件の買取・リノベーション・再販、賃貸、収益物件の販売、不動産特定共同事業(小口化商品)。子会社の買収で2026年3月期に売上が急増した。
| 数量販売物件数相当(件。売上÷平均単価の推定) | 価格1件あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 27.5 | 0.80 | 22 | 2 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 1.07 | 41 | 3 |
取り方:売上22.0億円を、再販・収益物件・賃貸を均した1件あたり0.8億円で割り、27.5件相当と置いた推定。件数は開示されていない。セグメント利益2.2億円(利益率10%)は決算の値。
アパレル事業
ベビー・子供服をネット通販中心に販売。在庫の値下げ販売で赤字が拡大した。
| 数量販売点数(万点。推定) | 価格1万点あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.7 | 0.25 | 3 | −1 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 0.30 | 2 | 0 |
取り方:売上2.94億円を1点あたり約2.5千円で割り、11.7万点と置いた推定。セグメント損失は決算の値(利益率-42%)。
ウェアラブル事業
園児の見守りサービス「cocolin」を全国の保育施設に提供し、熱中症対策商品も販売する。
| 数量導入施設数(百施設相当。推定) | 価格百施設あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.9 | 0.10 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 0.10 | 1 | 0 |
取り方:売上0.39億円を百施設あたり0.1億円と置いた推定(導入施設数は開示を確認できなかった)。セグメント損失は決算の値。
リスクと懸念
重い借金と金利上昇
純負債は70億円で自己資本の4倍強。営業利益は支払利息の0.6倍しかなく、借り換えの金利が3.5%に上がれば利払いが増える。
財務の特約
経常損益を2期連続で赤字にしない特約がある。直近の経常損益は赤字で、破れば返済を求められる恐れがある。
増資による希薄化
過去20年で7期に増資があり、2025年12月にも第三者割当で5億円を調達した。株の価値が薄まり続ける。
不動産市況
在庫の不動産の値段が下がれば、損失が自己資本16億円を直撃する。売却の遅れで4月に予想を下方修正した。
アパレル事業の赤字
在庫の値下げ販売で赤字が拡大し、営業損失は1.2億円。不動産事業の利益を食っている。
子会社買収の効果
2024年から2025年に複数の不動産会社を子会社化した。収益の安定と統合の効果は、まだ確かめられない。
今後の分かれ目
- 営業利益3億円の計画が達成され、純利益が黒字に戻ったら
- やや楽観に確率を寄せてよい。ただし借金の重さは変わらない。
- 財務の特約に触れる、または追加の増資が発表されたら
- 悲観の確率を上げる。株の希薄化が確かになる。
- 借入の金利が3.5%を超えて上がったら
- 利払いが営業利益を超え、赤字が続く。やや悲観の確率を上げる。
- アパレル事業を撤退または売却したら
- 赤字の元が一つ消える。利益率の上振れ要因になる。
- 大手不動産会社による出資やTOBが発表されたら
- プレミアムが付く可能性がある。借金を引き継ぐ条件次第で価値は大きく動く。
見ておくもの
- 経常損益の黒字化
- 純負債と自己資本の比率
- 借入の金利と財務の特約
- アパレル事業の赤字の縮小
- 物件の在庫回転と売却の時期
倍率と資本コストの決め方
倍率は、利益がほぼ残らない中立以下の筋書きでは PBR で置き、ROE が k 10%を下回るため、帳簿の自己資本に掛ける倍率を1倍未満に置いた。楽観とやや楽観は上限 1÷k(9.1倍)の約9割の8.5倍。今の株価(PBR 約5倍)や同業の倍率は根拠にしていない。k は quality の上限+3.0%に、赤字の連続と増資の歴史による上乗せ0.5%を足した。新リース会計基準の影響は小さく、今の形で揃えた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.5→10 倍・やや楽観 PER 8.5→10 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 0.5%。