結論
イチカワは、製紙工場の抄紙機で使うフェルトとベルトを作る会社だ。紙をつくる機械の中で水を絞る部分に使う消耗品で、すり減るので定期的に買い替えられる。筆者の結論は「やや割高」。事業は堅いが、国内の紙の需要が縮み、直近の高い利益が続かないとみるからだ。
2026年3月期の営業利益率は10.6%と、過去12年で最高だった。計画の5.4%を大きく超えたが、会社は今期の営業利益を13億円と、17%減で見ている。国内のフェルトは数量が減っており、海外の増販と円安が利益を押し上げた面がある。
強みは、国内で同業1社と二分する地位と、シュープレス用ベルトだ。ベルトは世界2位で、2030年度の首位を目指す。海外の売上は63%に達した。ただ、世界の抄紙用具の市場は年2〜4%の伸びにとどまり、売上148億円は市場の4%前後にすぎない。
財務は強い。自己資本比率は75%、純現金は44億円ある。このほか上場株などの投資有価証券が73億円ある。合わせて時価総額150億円の8割にあたる。ただ株の配当は利益に入っており、現金の価値は戻り方で測る。会社は今期から、DOE(株主資本配当率)2.5%を目標にした。
10年後の中立は、営業利益が15億円前後で、今とほぼ同じ。物価の分だけ売上は増えるが、国内の数量減と本社費用の増加で相殺される。自己資本利益率は4%台で資本コストに届かない。10年の価値は、今の時価総額を下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「堅い事業と、使い道に迷う資本をあわせ持つ会社」と見る。
オーナーとして持ちたいかと問えば、事業は悪くない。消耗品で需要が安定し、国内で二分する地位は10年後も残る。ただ国内の紙は縮み、海外で取れるシェアは限られる。本社費用が重く、事業の稼ぎが利益に届きにくい。
値段を決めるのは、株主に残る利益と、現金の戻り方だ。10年の中立で、純利益は12億円前後と今と同じ。倍率は資本コストの逆数を上限とし、その8割に置いた。純現金は、DOEの新方針を踏まえて満額で数えた。
安全域は、現金と株の厚さにある。時価総額150億円に対し、純現金44億円と投資有価証券73億円は合わせて117億円。ただ株は配当を稼ぎ、利益に数え済みだ。二重には足さない。悲観の筋書きでも、この資産の税引き後が床になる。
確信度は中くらいだ。直近の利益率は山で、会社の今期予想も下がる。DOE方針の中身はこれからだ。わからない部分があるので、確率は慎重な側へ寄せた。
何で稼ぐ会社か
イチカワは、紙をつくる抄紙機の「プレスパート」で使う用具を作る。抄紙用フエルト、シュープレス用ベルト、トランスファー用ベルト、スレート用フエルト、それに工業用フエルトだ。2026年3月期の売上は148億円。ほぼ全てが抄紙用具で、工業用は5億円足らずにとどまる。
フェルトは、湿った紙から水を絞りとる布状の用具だ。紙が通るたびにすり減り、定期的に買い替える。新しい抄紙機を買わなくても、紙が作られ続ける限り、需要は発生する。ベルトは、シュープレスという省エネの方式に使い、広い幅に樹脂を均一に塗る技術が要る。1988年に国内で初めて開発した。
売り先は国内の製紙会社が中心で、王子ホールディングスと日本製紙が株主でもある。海外は北米、欧州、中国、タイの販売子会社が受け持つ。海外売上は63%で、前期の60.5%から上がった。北米が25%、欧州が22%と大きく伸びた。
生産は柏工場(千葉)と岩間工場(茨城)。織りと縫合の工程は子会社のアイケー加工に任せる。連結の従業員は639人で、ほとんどが日本にいる。海外は販売拠点で、生産設備はない。
稼ぎの源は、日本の工場でつくったフェルトとベルトを、国内と海外へ売る差額だ。日本のセグメント利益率は35%と高い。ただ、その利益から本社費用や研究開発の約18億円を差し引くと、全体の営業利益率は10.6%になる。原料はナイロンなど石油由来の素材で、原油や為替の影響を受ける。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、フェルトの品質と、ベルトの樹脂配合にある。抄紙用具は、機械ごとに仕様が違い、紙の品質を左右する。製紙会社は、品質が確かな仕入先を簡単に替えない。国内で同業と二分する状態は、この関係の厚さを示す。ここは筆者が評価する点だ。
ただ、堀は絶対ではない。主要な販売先の王子ホールディングスと日本製紙は大口で、値下げを求める力が強い。世界にはAlbany、Voith、Valmet、Andritzなど大手があり、海外では価格で競る。国内のフェルトは数量が減っており、増収は海外と円安が支えた。
資本の使い方は、堅実だが非効率だ。自己資本利益率は過去10年の中央値が2.4%で、資本コストを一度も超えていない。その原因は、使い道のない資産にある。純現金44億円と投資有価証券73億円が、自己資本241億円の半分近くを占める。
一方、2026年5月に配当の方針を変えた。DOEを目標とし、目標値は2.5%。自己株式の取得も検討する。中期計画の初年度は計画を大幅に上回った。変わり始めた経営姿勢は評価できる。不祥事の類は検索の範囲で見当たらなかった。
弱みは、国内の紙の需要が縮むことと、本社費用の重さだ。セグメント利益の合計は34億円だが、営業利益は16億円で、半分が全社費用に消える。ここが膨らむと、優良な事業の利益が薄まる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
抄紙用具は、新設でなく交換の需要で成り立つ市場だ。世界の市場は2025年に約18〜27億ドル、年2〜4%の成長が見込まれる。主な企業はAlbany、Voith、Valmet、Andritz、AstenJohnson、そしてイチカワ。上位5社で大半を占める寡占の世界だ。
数量は紙の生産量に連れて動く。日本では新聞用紙や印刷情報用紙が長く縮み、段ボール原紙など包装用は底堅い。電子化と人口減で、国内の紙の生産は今後も細る。製紙会社は工場の統廃合を進め、抄紙機の台数が減る。フェルトの数量も同じ方向に向かう。
海外は逆だ。アジアや北米では、包装用の紙の需要が伸びる。紙の用途が板紙やティッシュに移り、抄紙機の運転は続く。シュープレスは省エネと高付加価値の紙づくりに向き、新設や改造が進む。イチカワのベルトは、この流れに乗る。
価格は、石油由来の原料と人件費に連動する。為替は円安の追い風を受ける一方、製紙会社の合理化要請も強い。ただ、紙をつくる機械は止められないので、消耗品の需要は安定している。景気の波は小さく、景気が良くても悪くても、一定の量が買われる。
競争の形は、国内が2社、海外が大手数社の寡占だ。再編は、製紙会社側の集約が先に進む。1社の統合で購買が集まると、価格の交渉力が弱まる。10年では、国内の数量が縮む速さと、海外のベルトとフェルトで取れるシェアが、利益を決める。
資本政策と M&A
資本政策は、転換点にある。2026年5月に、配当の目標をDOE、つまり自己資本に対する配当の割合に変えた。目標は2.5%で、現在の自己資本なら年6億円ほどにあたる。自己株式の取得も検討する。2027年3月期の配当は増配の予定で、利益に連れて払う方式から、資本に連れて払う方式へ移る。
手元は厚い。純現金44億円と、評価益56億円を含む投資有価証券73億円がある。上場株は157銘柄と多く、三菱UFJ、千葉銀行、みずほ、王子ホールディングスが上位だ。会社は毎年検証して全銘柄の保有を適切と判断し、売る方針は示していない。配当は営業外収益に入っているので、価値は別に足さない。
設備投資は、2026年3月期に20億円と、償却の10億円の2倍だった。岩間工場にシュープレス用ベルトの設備を約10億円で増強し、2025年度に稼働させた。受注が生産能力を超えていたためだ。
株主は、王子ホールディングスが9.5%、日本製紙が4.6%で、取引先が上位を占める。みずほ銀行は5.3%を持つ。2026年には、対話を目的とする投資家が小口で買い増した。保有割合は1%に届かないが、方針変更の背景を考えさせる。
減価償却は物価では増やさない。今ある設備は取得時の値段のままで、更新と新規の投資だけ新しい値段で足される。ただ、この会社は増産投資が先行し、投資が償却を上回る。10年後の償却は約14億円で、物価で一律に増やした場合の約13億円より大きい。会計上の利益が見かけでふくらむ面は、小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、変わり始めたところだ。2026年3月期は計画の営業利益率5.4%を、10.6%で大きく上回った。国内のフェルトが減っても、海外のフェルトとベルトが伸び、利益を押し上げた。
ベルトは世界2位で、2030年度に首位を目指す。省エネの抄紙方式の普及に乗り、生産能力を10%増やした。注文は生産能力を超えていた。ベルトは注文が能力を上回るほどで、値段を保ちやすい。構成が変わるほど全体の利益率は上がる。
資本政策も動いた。DOE2.5%の導入は、株主への還元を資本に連動させる決断だ。自己株式の取得も検討する。投資有価証券73億円のうち、評価益56億円を含む株は、売れば現金になる。対話を目的とする投資家が買い増しており、保有の見直しを迫られる場面もありうる。
海外は北米が25%、欧州が22%と伸びた。中国やタイも立ち上がっている。国内の縮小を、海外の増加が上回れば、売上は物価以上に伸びる。利益率は10%に乗り、純利益は今の1.6倍になる。
慎重な見方
高い利益率は山にある。2026年3月期の営業利益率10.6%は、過去12年で最高で、10年前は4%だった。会社も今期の営業利益を17%減の13億円と見る。国内のフェルトは数量が減っており、円安と海外の伸びが支えた面が大きい。
国内の紙は縮む。製紙会社は工場を整理し、抄紙機の台数が減る。フェルトは消耗品でも、機械が止まれば需要も消える。王子ホールディングスと日本製紙は大口で、値下げを求める力も強い。
本社費用が重い。セグメント利益の合計34億円のうち、18億円が全社費用で消える。物価で費用が増えるほど、この差は利益を圧迫する。海外の販売子会社は利益率が数%と薄く、伸びても全体の利益は増えにくい。
資本の使い方も効率が低い。自己資本利益率は10年の中央値が2.4%。DOE2.5%の目標は、配当を自己資本の2.5%にとどめる意味で、積極的な還元とは言いにくい。投資有価証券は配当しか生まず、売る方針も示されていない。
世界の市場は年2〜4%の成長で、大手が寡占する。イチカワの売上は市場の4%ほど。ベルトで首位を目指すと言っても、AlbanyやVoithが相手だ。海外で伸びても、国内の縮みを埋めきれない。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さと資本政策の転換という強気の見方には、一定の説得力がある。だが、国内の紙の需要が縮み、直近の高い利益率が山にあるという慎重な見方の裏づけが強い。確率は中立に厚く置き、強気の上振れは、投資有価証券の売却と増産の成功を前提にした8%にとどめた。DOE方針のおかげで現金は満額で評価したが、10年の価値は今の時価総額を下回り、判定は「やや割高」となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,270 円180 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,709 円72 億円)。 今の値に割り戻すと 3,201 円135 億円、今との差 −10.5%、 期待の年率 +5.3%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,633 円363 億円 | 3,090 円130 億円 | +227.9% | +12.6% | 938 円39 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,956 円251 億円 | 2,377 円100 億円 | +133.1% | +8.8% | 1,833 円77 億円 |
| 中立 | 38% | 4,433 円187 億円 | 1,664 円70 億円 | +70.5% | +5.5% | 2,317 円97 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,901 円80 億円 | 1,070 円45 億円 | −16.9% | −1.8% | 654 円28 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,661 円70 億円 | 713 円30 億円 | −33.6% | −4.0% | 237 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,270 円180 億円 | 1,709 円72 億円 | +67.2% | +5.3% | 5,979 円252 億円 |
今の株価時価総額 3,575 円150 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% ベルトが世界首位に届き、現金も戻る 利益 20 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 8,633 円363 億円
国内のフェルトは、紙の縮みを上回るシェアの確保で、数量の減りが8%にとどまる。シュープレス用ベルトは世界首位に届き、海外の数量は10年で7割増える。北米と欧州の大手製紙会社が、増産した設備の恩恵を受ける。
利益率は10%台に乗る。本社費用は物価で増えるが、ベルトの構成比が上がり、国内の数量減を補う。営業利益は26億円まで伸びる。
投資有価証券の売却が進み、DOEの方針とあわせて還元が膨らむ。10年の還元は130億円。余った現金は85億円で、全て株主に戻る。
それでも自己資本利益率は7%台。資本コストにはわずかに届かない。
減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。この会社は増産投資が先行して償却を上回るため、償却は今の9.7億円が10年後に約15億円(物価で一律に増やすと約13億円)。会計の利益が見かけでふくらむ面はなく、投資は現金から出る。
- 抄紙用具・日本:数量 92.0(国内向け販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 1.15(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 106 億円・営業利益 38 億円。数量 0.92 倍・価格 1.38 倍(名目)・セグメント利益率 36.0%
- 抄紙用具・海外(北米・欧州・中国・タイ):数量 170(海外向け販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.81(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 138 億円・営業利益 12 億円。数量 1.70 倍・価格 1.36 倍(名目)・セグメント利益率 8.5%
- 工業用:数量 110(販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.06(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍(名目)・セグメント利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)85 億円。全体の PER 14.95 倍、時価総額 363 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ベルトの首位、投資有価証券の売却、海外の伸びが重なる筋書き。対話を目的とする投資家の存在と、DOE方針で現実味はあるが、重なる必要があるので8%を置いた。
やや楽観 22% 海外が伸び、国内の縮みが小さい 利益 15 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 5,956 円251 億円
国内の数量は12%減るが、ベルトとフェルトの値段は物価を少し超えて上がる。海外は数量が5割増え、利益率は7.5%に上がる。
本社費用は物価並みに増えるが、営業利益は20億円まで伸びる。2027年度の計画を超える上振れが続く。
投資有価証券の一部が売られ、DOEの方針とあわせて10年の還元は100億円。
自己資本利益率は5%台で、資本コストには届かない。
減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。この会社は増産投資が先行して償却を上回るため、償却は今の9.7億円が10年後に約14.5億円(物価で一律に増やすと約13億円)。会計の利益が見かけでふくらむ面はなく、投資は現金から出る。
- 抄紙用具・日本:数量 88.0(国内向け販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 1.14(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 100 億円・営業利益 35 億円。数量 0.88 倍・価格 1.36 倍(名目)・セグメント利益率 35.0%
- 抄紙用具・海外(北米・欧州・中国・タイ):数量 150(海外向け販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.80(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 120 億円・営業利益 9 億円。数量 1.50 倍・価格 1.35 倍(名目)・セグメント利益率 7.5%
- 工業用:数量 100(販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.06(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・セグメント利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)65 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 251 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外が伸び、国内の縮みが小さい形。計画を上回って利益率が上がる形として2割強を置いた。
中立 38% 国内は縮み、海外が補う。利益はほぼ横ばい 利益 12 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 4,433 円187 億円
国内のフェルトは、紙の生産が細るので、数量が10年で15%減る。ベルトの増販が一部を補う。値段は物価並みの1.34倍に上がる。
海外は数量が35%増える。北米と欧州の大手顧客を深く取り込み、売上は物価の分を含めて6割ほど伸びる。ただ販売子会社の利益率は6〜7%と薄く、利益の増え方は緩やかだ。
本社費用と研究開発は物価で増え、年25億円に近づく。営業利益は15億円。これは会社の今期予想13億円より少し高く、直近の16億円より低い。
DOEの方針で、10年の還元は70億円。現金は少しずつ積み上がる。ROEは4%台。資本コストに届かない。
減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。この会社は増産投資が先行して償却を上回るため、償却は今の9.7億円が10年後に約14億円(物価で一律に増やすと約13億円)。会計の利益が見かけでふくらむ面はなく、投資は現金から出る。
- 抄紙用具・日本:数量 85.0(国内向け販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 1.12(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 95 億円・営業利益 32 億円。数量 0.85 倍・価格 1.34 倍(名目)・セグメント利益率 34.0%
- 抄紙用具・海外(北米・欧州・中国・タイ):数量 135(海外向け販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.80(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 108 億円・営業利益 7 億円。数量 1.35 倍・価格 1.34 倍(名目)・セグメント利益率 6.5%
- 工業用:数量 100(販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.06(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍(名目)・セグメント利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 186 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の数量は縮み、海外は伸び、本社費用が物価で増える。最も自然と考え、最大の確率を置いた。
やや悲観 22% 国内の紙が速く縮み、利益が細る 利益 5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,901 円80 億円
国内の紙の生産が想定より速く縮み、フェルトの数量は22%減る。製紙会社の統廃合で、値下げ圧力も強まり、値段は1.30倍にとどまる。
海外は数量が15%増えるが、競争で値段が伸びず、利益率は5%。本社費用は物価で増え、営業利益は5億円に落ちる。
DOEの方針は、利益が減っても資本に連れて配当を出す。10年の還元は45億円。現金は戻らず、一部が積み上がる。
減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。この会社は増産投資が先行して償却を上回るため、償却は今の9.7億円が10年後に約13億円(物価で一律に増やすと約13億円)。会計の利益が見かけでふくらむ面はなく、投資は現金から出る。
- 抄紙用具・日本:数量 78.0(国内向け販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 1.09(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 85 億円・営業利益 25 億円。数量 0.78 倍・価格 1.30 倍(名目)・セグメント利益率 30.0%
- 抄紙用具・海外(北米・欧州・中国・タイ):数量 115(海外向け販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.77(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 89 億円・営業利益 4 億円。数量 1.15 倍・価格 1.30 倍(名目)・セグメント利益率 5.0%
- 工業用:数量 90.0(販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.06(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90 倍・価格 1.30 倍(名目)・セグメント利益率 3.0%
倍率:利益が薄く、稼ぐ力(純利益÷k+余った現金)は約85億円で、床の約80億円とほぼ並ぶ。今の自己資本241億円に0.332倍を掛け、この床に合わせた。ROEはkに大きく届かない。
確率:国内の紙が想定より速く縮み、製紙会社の統合で値下げ圧力が強まる形。大口の取引先に依存するため、中立に近い確率を置いた。
悲観 10% 国内の縮みと値下げ圧力で赤字に沈む 利益 −5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,661 円70 億円
国内の紙の縮みが重なり、フェルトの数量は35%減る。大手製紙会社の統合で購買力が強まり、値段は1.25倍にとどまる。海外ではベルトで首位に届かず、数量が減る。
本社費用が物価で増える一方、売上は伸びない。営業利益は赤字に沈む。
配当は減り、10年の還元は30億円。会社は国内の工場を整理し、減損を出す。
株主に残る価値は、稼ぐ力でなく、純現金の半分と投資有価証券の税引き後が床になる。
減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得時の値段のまま。更新と新規の投資だけ新しい値段で按分した。この会社は増産投資が先行して償却を上回るため、償却は今の9.7億円が10年後に約12億円(物価で一律に増やすと約13億円)。会計の利益が見かけでふくらむ面はなく、投資は現金から出る。
- 抄紙用具・日本:数量 65.0(国内向け販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 1.05(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 68 億円・営業利益 16 億円。数量 0.65 倍・価格 1.25 倍(名目)・セグメント利益率 24.0%
- 抄紙用具・海外(北米・欧州・中国・タイ):数量 95.0(海外向け販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.74(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 71 億円・営業利益 2 億円。数量 0.95 倍・価格 1.25 倍(名目)・セグメント利益率 3.0%
- 工業用:数量 80.0(販売量の指数(2026/03 を100))× 価格 0.06(指数1あたり売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量 0.80 倍・価格 1.25 倍(名目)・セグメント利益率 2.0%
倍率:赤字で、稼ぐ力は床を下回る。床は純現金の半分と、投資有価証券の売却額(税引き後)。今の自己資本241億円に0.29倍を掛け、この床に合わせた。
確率:国内の縮み、海外の失速、本社費用の増加が重なる複合の悪化。頻度は低いが、10年ではゼロにできず1割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
抄紙用具・日本
抄紙用フエルト、シュープレス用ベルトなどを国内の製紙会社へ売る。製造の利益の大半はここに出る。
| 数量国内向け販売量の指数(2026/03 を100) | 価格指数1あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.84 | 84 | 30 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 1.12 | 95 | 32 |
取り方:有価証券報告書のセグメント値(売上83.61億円、利益29.64億円)。数量の開示がなく指数で表した。国内のフェルトは需要減で数量が減っている。
抄紙用具・海外(北米・欧州・中国・タイ)
日本の工場でつくった製品を、海外の販売子会社から現地の製紙会社へ売る。
| 数量海外向け販売量の指数(2026/03 を100) | 価格指数1あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.59 | 60 | 4 |
| 10 年後 中立 | 135 | 0.80 | 108 | 7 |
取り方:北米20.72億円・欧州27.99億円・中国5.93億円・タイ4.84億円の合計59.48億円と、利益の合計3.69億円。販売子会社の利益は薄く、製造の利益は日本に出る。数量は指数。
工業用
工業用フエルトと関連の仕入品。
| 数量販売量の指数(2026/03 を100) | 価格指数1あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.05 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.06 | 6 | 0 |
取り方:セグメント売上4.79億円、利益0.18億円。全社費用・研究開発・消去(セグメント利益合計との差−17.8億円)は調整欄に置く。
リスクと懸念
高い利益率が戻る
2026年3月期の営業利益率10.6%は過去12年で最高で、10年前は4%だった。会社も今期の営業利益は13億円と17%減を見込む。円安と海外の増販が山を作った面がある。
国内の紙の需要が縮む
新聞用紙と印刷情報用紙の減少は長期で続く。製紙会社の統廃合で抄紙機が減ると、フェルトの数量も減る。国内のフェルトは当期も数量が減った。
大口の取引先の交渉力
王子ホールディングスと日本製紙が主要な販売先で、株主でもある。購買が統合されると、値下げ要請が強まる。構成比は開示されていない。
本社費用の重さ
セグメント利益34億円のうち、全社費用・研究開発で約18億円が消える。物価で費用が膨らむほど、事業の稼ぎが利益に届きにくい。
海外の競争
Albany、Voith、Valmet、Andritzなど世界の大手がある。世界2位のシュープレス用ベルトで首位を目指すが、相手は同じ土俵にいる。海外の販売子会社の利益率は数%にとどまる。
原料と為替
原料はナイロンなど石油由来で、原油や為替の影響を受ける。海外売上が63%で、為替予約でヘッジしているが、円高になれば利益が目減りする。
政策保有株と資本の効率
投資有価証券73億円は配当しか生まず、自己資本利益率を下げている。売却の方針は示されていない。株価が下がれば自己資本も目減りする。
今後の分かれ目
- DOE2.5%を超える増配、または自社株買いが実行される
- 現金の戻り方が確かになる。上振れの確率を上げる。
- 投資有価証券の売却を数字で開示し、実行する
- 余った現金に足す価値が増える。上振れの確率を上げる。
- 国内のフェルトの数量が2期続けて想定より大きく減る
- 縮みが速い。慎重な筋書きの確率を上げる。
- シュープレス用ベルトが世界首位に届き、海外の売上が7割を超える
- 利益の構成が変わる。強気の筋書きの確率を上げる。
- 王子ホールディングスや日本製紙が購買を集約する
- 値下げ圧力が強まる。利益率の見方を下げる。
- 営業利益率が10%を割り込み、7%前後へ戻る
- 山の利益率が終わる。中立の見方を確かにする。
見ておくもの
- 営業利益と営業利益率(今期予想は13億円)
- 国内と海外の売上比率、国内のフェルト数量
- シュープレス用ベルトの世界シェア
- DOEの実績と自己株式の取得
- 投資有価証券の売却の有無
- 王子ホールディングス・日本製紙の保有割合
倍率と資本コストの決め方
倍率はROEから置いた。現金の利息を除く事業のROEは4%台で、資本コスト7.75%に届かず、上限は1÷kの13.3倍。国内の紙が縮む点を見て、上限の8割の10.7倍に置いた。今の株価・過去の倍率・同業の倍率は使っていない。PBR0.6倍は割安の根拠にしなかった。
現金は、純現金44億円から運転資金を引いた30億円を余りとみて、DOEの新方針を理由に戻り方1.0で足した。10年後の中立は、その額が45億円に積み上がるとして置いた。投資有価証券73億円は配当が利益に入っているため、別には足さない(売却の方針と実績が出れば足す)。悲観の床にだけ入れた。
同領域の鉄鋼・化学の消耗品メーカーとは事業が違い、比べにくい。抄紙用具の世界大手(Albanyなど)の倍率は使わず、式だけで置いた。
減価償却は物価で増やさず、10年後を約14億円と置いた(物価で一律に増やすと約13億円)。増産投資が先行し、償却は物価の伸びより大きい。新リース会計基準の影響は、リース債務が1億円余りと小さい。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。