結論
山喜は大阪のワイシャツの老舗だ。「CHOYA」などのドレスシャツを百貨店や量販店に卸し、ラオスの自社工場と国内の工場で縫う。筆者の結論は、今の値段でも割高というものだ。需要が細り続けるなか、借金の利息が利益の大半を食うからだ。
売上は10年前の190億円から99億円まで縮んだ。職場の服装がくだけ、ワイシャツを毎日着る人が減ったためだ。2026年3月期は工場の閉鎖費用もあり、純損失は10億円に達した。配当も見送った。
新しい中期計画は、3年後に営業利益2億円台を目指す。だが過去12年で営業利益率が2.2%を超えた年は無い。借入金は約41億円あり、時価総額22億円を大きく上回る。金利が上がれば、細い営業利益はさらに削られる。
大阪・船場の本社の土地など、帳簿より値打ちのある不動産はある。ただ会社が清算されない限り、少数株主の手に渡る道は細い。
10年の中立では、需要が2割減るなかで営業利益は2億円余りにとどまる。利息を払うと、株主に残る利益は1億円に届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい事業ではない。
ワイシャツは毎日の暮らしに要る品だった。だが需要そのものが縮み、値段を決める力は量販店と大手の側にある。過去12年で資本コストを超えて稼いだ年は無い。オーナーとして手元に残る利益は、ほとんど無かったと言ってよい。
資本の使い方にも余地が乏しい。稼いだ現金は在庫と借金の返済に回り、株主には戻らない。金利が上がれば、営業利益の多くは銀行に渡る。
安全域を探すなら、本社や物流センターの土地だろう。帳簿より高く売れる見込みはある。しかし会社が自ら清算しない限り、その値打ちは株主の手に届かない。筆者は、不動産の含みを理由にこの会社を持つのは危ういと考える。値段が安く見えても、払う額に見合う利益の流れが無い。
もし買うなら、事業の回復ではなく、資産の切り売りに賭けることになる。それはオーナーの投資ではない。
何で稼ぐ会社か
1953年創業のワイシャツの専業メーカーだ。企画から縫製、物流、店頭までを自社で抱える。開示上は国内販売・製造・海外販売の3つに分かれる。
稼ぎの柱は国内販売で、売上の8割強を占める。自社ブランドの「CHOYA」を百貨店と紳士服の専門店に、「SWAN」などを量販店に卸す。量販店の中には「SHIRT HOUSE」という売り場を124か所持つ。販路は百貨店が4分の1、専門店と量販店がそれぞれ2割で、自社のネット通販は7%にとどまる。
製造は、国内3工場とラオスの自社工場で縫う。中国やベトナム、バングラデシュの協力工場も使い、産地を散らしている。2026年3月には信州の工場を閉じ、生産を残りの工場に寄せた。
海外販売は、上海やタイの拠点で細々と売る規模にすぎない。
儲けの仕組みは、ワイシャツを1枚いくらで卸すかに尽きる。綿の値段と円安で仕入れが上がっても、量販店や百貨店に値上げを飲ませる力は弱い。
社員は連結で約600人、その8割近くが縫製の工場で働く。本社は大阪・船場にあり、東大阪に物流センターを持つ。福岡と鹿児島には賃貸に出している土地もある。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、ほとんど見当たらない。
CHOYAは百貨店で長く売られ、名前は知られている。形態安定の加工や縫製の品質にも定評がある。だがワイシャツは差がつきにくい品だ。ユニクロや紳士服チェーンの自社品が安く大量に売られ、買う人は値段で選ぶ。
数字が実力を語る。過去12年の営業利益率は最高でも2.2%で、赤字の年が4回ある。ROEの中央値は1.3%と、資本コストに遠く届かない。株主の資本を預けても、ほとんど増えてこなかった。
借金も重い。売掛金と在庫を借入で賄う形で、純負債は自己資本と同じくらいある。支払利息は今でも年0.8億円で、営業利益の大半に当たる。
経営は手を打っている。工場を閉じ、ライセンスのブランドを絞り、製販一体を掲げる。ただ、縮む市場で利益率を上げるのは難しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ドレスシャツの市場は、構造的に縮んでいる。
縮みの原因ははっきりしている。夏の軽装が定着し、在宅勤務とオフィスのカジュアル化が進んだ。スーツを毎日着る人は減り、ワイシャツを買う枚数も減った。働く世代の人口も減っていく。山喜の売上が10年で半分になったのは、会社の問題だけではない。
値段も上げにくい。ユニクロや紳士服の青山商事、AOKIが自社で企画したシャツを安く売る。百貨店の売り場は縮み、量販店は仕入れ値に厳しい。綿や人件費の上昇を、卸の値段に乗せ切れない年が多い。
一方で、残る需要もある。冠婚葬祭や就職活動、接客の制服など、白いシャツが要る場面は消えない。形態安定やストレッチなど機能のあるシャツは、少し高くても売れる。
筆者は、この市場は10年で数量が2割前後減ると見る。残った需要を、安さで勝る大手と、ブランドで勝る少数が分け合う形になる。中堅の卸売りは、その間で挟まれやすい。
国内で縫う会社は年々減り、日本製の白シャツを求める取引先も一定数いる。受託の縫製は、細いながら残る需要の受け皿になりうる。
資本政策と M&A
還元は細い。2026年3月期は無配に転じ、今期の配当も未定だ。自社株買いの実績も無い。
優先しているのは財務の立て直しだ。純損失で自己資本は1年で10億円減った。借入金は短期を中心に約41億円あり、金利が上がるほど利払いが膨らむ。在庫を減らして借金を返すことが、当面の資本政策の中心になる。
政策保有株は丸紅や三越伊勢丹、AOKIなど9銘柄で、合計1.4億円と小さい。取引先との関係を保つ色が濃い。
買収や再編の動きは見えない。時価総額は22億円と小さく、本社の土地に目をつける買い手が出る余地はある。ただ借金を肩代わりする必要があり、筆者は確度の高い話とは見ない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
底は打った。2026年3月期の赤字は工場の閉鎖費用が大半で、一度きりだ。今期の第1四半期は営業利益1.4億円と黒字に戻った。信州の工場を閉じ、生産を残りの工場に集めたので、固定費は軽くなっている。
中期計画の3年後の営業利益2.3億円は、背伸びではない。ライセンスのブランドを絞り、利の薄い取引を切れば届く。製販一体で企画から店頭までを握れば、在庫の値引きも減る。
ワイシャツの需要も、ゼロにはならない。就職活動や冠婚葬祭、接客の制服など、白いシャツが要る場面は残る。形態安定やストレッチの機能品は、少し高くても売れる。同業の中堅が退けば、残った会社にシェアが寄る。
資産もある。大阪・船場の本社の土地は、帳簿の6億円より高い値がつくはずだ。物流センターや賃貸の土地もある。在庫を減らして借金を返せば、利払いは軽くなる。
株価は自己資本の7割ほどで、悪材料は織り込まれている。小さな改善でも、利益の伸び率は大きく見えるはずだ。
慎重な見方
需要の縮みは止まらない。売上はこの10年で半分になった。テレワークとカジュアル化は戻らず、働く世代も減る。会社が工場を閉じても、売上が減る速さに追いつけない。
値段を決める力も無い。ユニクロや青山商事、AOKIは自社でシャツを作り、安く大量に売る。百貨店の売り場は縮み、量販店は仕入れ値に厳しい。綿と人件費が上がっても、卸の値段には乗せ切れない。
何より借金が重い。借入金は約41億円で、時価総額のほぼ2倍だ。金利が1%上がるだけで、営業利益の半分近くが消える。過去12年で営業利益率が2.2%を超えた年は無く、中期計画が届いても利払いの後にはほとんど残らない。
不動産の含みも、少数株主の取り分にはなりにくい。赤字が続けば、土地は借金の返済に消えていく。
中期計画の目標は、過去にも届かなかった水準だ。前の計画でも黒字の定着を掲げたが、売上の減りに押し戻された。会社の努力では動かせない需要の縮みが、すべての前提を崩していく。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。工場の閉鎖で固定費が軽くなるのは確かだが、需要の縮みと値決め力の弱さは変わらない。利払いの重さも数字で確かめられる。確率は中立に4割を置き、やや悲観を楽観側より厚くした。工場の閉鎖と第1四半期の黒字は、やや楽観に17%を置く根拠にした。ただ利益率の天井と借金の利息を考えると、楽観は1割に満たない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 62 円9 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 8 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 29 円4 億円、今との差 −81.4%、 期待の年率 −7.6%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 226 円32 億円 | 35 円5 億円 | +68.4% | +5.3% | 16 円2 億円 |
| やや楽観 | 17% | 123 円17 億円 | 18 円3 億円 | −9.4% | −1.0% | 24 円3 億円 |
| 中立 | 40% | 49 円7 億円 | 7 円1 億円 | −63.6% | −9.6% | 23 円3 億円 |
| やや悲観 | 24% | 26 円4 億円 | 0 円0 億円 | −83.1% | −16.3% | 6 円1 億円 |
| 悲観 | 13% | 13 円2 億円 | 0 円0 億円 | −91.4% | −21.7% | 2 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 62 円9 億円 | 8 円1 億円 | −54.8% | −7.6% | 70 円10 億円 |
今の株価時価総額 155 円22 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 製販一体が実り、残った需要を取る 利益 3 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 226 円32 億円
中期計画が予定どおり進み、そのあとも改善が続く。信州の工場を閉じた効果で固定費が軽くなり、ライセンスのブランドを絞って利の薄い取引を切る。企画から店頭までを自社で握り、売れ残りの値引きが減る。
需要は細るが、同業の中堅が相次いで撤退する。百貨店と専門店の売り場で、CHOYAが残った棚を取る。形態安定やストレッチの機能品が育ち、1枚の値段は物価をやや上回って上がる。
在庫を絞った分で借金を返し、利払いは軽くなる。配当も再開し、利益の3割ほどを戻す。それでもROEは資本コストに届かず、事業は平凡なままだ。
同業が退いた分を取れるかが、この筋書きの分かれ目になる。
- 国内販売(ドレスシャツの卸と売り場):数量 469(国内で売るシャツの枚数(万枚))× 価格 2.35(1枚あたりの卸の平均売上(千円))→ 売上 110 億円・営業利益 4 億円。枚数0.95倍・単価1.38倍・利益率4%
- 製造・海外販売:数量 163(受託・海外で売るシャツの枚数(万枚))× 価格 1.66(1枚あたりの平均売上(千円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。受託の枚数1.3倍・単価1.38倍・利益率3.5%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 32 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要が縮むなかで枚数をほぼ保ち、営業利益率を過去12年の山の2倍近くまで上げる必要がある。同業の撤退と機能品の両方が当たる姿で、確度は低い。
やや楽観 17% 中期計画どおり、薄い黒字が定着 利益 2 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 123 円17 億円
構造改革が効き、営業利益率は3%近くで落ち着く。中期計画の目標を少し上回る水準だ。
ワイシャツの枚数は1割強減るが、同業の撤退で減り方は市場より緩い。機能品の比率が上がり、1枚の値段は物価並みに上がる。受託の縫製も、国内の生産を求める取引先から注文が増える。
借金は在庫の圧縮で少しずつ減る。それでも借り換えのたびに金利は上がり、利払いは営業利益の3割を食う。配当は細く再開する。会社は生き残るが、株主の資本を増やす力は弱いままだ。
受託の縫製が育つかどうかで、利益は上にも下にも振れる。国内の工場を残したことが、ここでは強みになる。
- 国内販売(ドレスシャツの卸と売り場):数量 435(国内で売るシャツの枚数(万枚))× 価格 2.28(1枚あたりの卸の平均売上(千円))→ 売上 99 億円・営業利益 3 億円。枚数0.88倍・単価1.34倍・利益率3%
- 製造・海外販売:数量 138(受託・海外で売るシャツの枚数(万枚))× 価格 1.61(1枚あたりの平均売上(千円))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。受託の枚数1.1倍・単価1.34倍・利益率2.5%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 17 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場の閉鎖で固定費は実際に減り、今期の第1四半期は黒字に戻った。中期計画の利益水準を10年保つ姿で、需要の縮みを一部シェアで埋める。
中立 40% 需要は2割減り、利益は利息に消える 利益 1 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 49 円7 億円
工場の閉鎖で赤字は止まる。だが需要の縮みは続き、国内で売るシャツの枚数は10年で2割強減る。綿や人件費の上昇は値段に乗せるが、量販店の目が厳しく、物価をやや下回る。
営業利益率は2%強で、過去の山とほぼ同じだ。金額にして2億円余り。そこから借金の利息が1億円以上引かれる。借り換えのたびに金利は上がり、在庫を減らして返す速さと追いかけっこになる。
残る純利益は1億円に届かない。配当は細く再開するが、自己資本はほとんど増えない。会社は続くが、株主が持つ理由は乏しい。
本社の土地は持ち続けるが、使い道は示されない。株主から見れば、眠った資産のままだ。
- 国内販売(ドレスシャツの卸と売り場):数量 385(国内で売るシャツの枚数(万枚))× 価格 2.21(1枚あたりの卸の平均売上(千円))→ 売上 85 億円・営業利益 2 億円。枚数0.78倍・単価1.30倍・利益率2.4%
- 製造・海外販売:数量 119(受託・海外で売るシャツの枚数(万枚))× 価格 1.56(1枚あたりの平均売上(千円))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。受託の枚数0.95倍・単価1.30倍・利益率1%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.9% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 7 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上が10年で半分になった流れは統計と開示で確かめられ、営業利益率は過去12年で2.2%を超えていない。改革で赤字は止まるが、天井は破れない姿を中心に置いた。
やや悲観 24% 縮みが速まり、赤字に戻る 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 26 円4 億円
カジュアル化と人口減が重なり、シャツの枚数は10年で4割近く減る。百貨店の売り場がさらに縮み、量販店は大手の自社品に棚を譲る。値上げも物価に届かない。
工場を閉じても、売上の減りに固定費の削減が追いつかない。営業利益はほぼゼロになり、利息を払うと赤字が続く。自己資本は10年で3割ほど減る。
借金を返すために、賃貸用の土地や物流センターを手放す。本社の土地の含みは、借金の圧縮に使われる。配当は再開できない。
会社は続くが、規模は今の8割ほどになる。株主の価値は、手元に残る土地の含みとほぼ同じになる。
- 国内販売(ドレスシャツの卸と売り場):数量 306(国内で売るシャツの枚数(万枚))× 価格 2.13(1枚あたりの卸の平均売上(千円))→ 売上 65 億円・営業利益 0 億円。枚数0.62倍・単価1.25倍・利益率0.5%
- 製造・海外販売:数量 93.8(受託・海外で売るシャツの枚数(万枚))× 価格 1.50(1枚あたりの平均売上(千円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。受託の枚数0.75倍・単価1.25倍・赤字
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。売れる資産の税後(本社の土地の含みと政策保有株)に戻り方0.5を掛けた約3.7億円を床とし、今の自己資本32.3億円の0.115倍に置いた。EV(時価総額+純負債約35億円)÷営業利益は数百倍と意味をなさない。営業利益がほぼゼロの筋書きで、株主の取り分は資産の床でしか測れない。
確率:2021〜2022年と2026年に赤字の前例があり、売上の年率は−6%と速い。工場を閉じても売上の減りに追いつかない姿は十分ありうるので、楽観側より厚くした。
悲観 13% 需要が半減し、資産が借金に消える 利益 −4 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 13 円2 億円
ワイシャツを毎日着る人がさらに減り、枚数は10年で半分以下になる。百貨店の売り場は消え、量販店は大手の自社品で足りる。卸の値段は物価に遠く届かない。
工場を閉じ続けても、固定費と利息が重く、毎年数億円の赤字が出る。自己資本は10年でほとんど消える。銀行は返済を求め、本社や物流センターの土地は借金の返済に回る。
資産を売り尽くしたあとに残るものは少ない。会社が生き残っても、株主の取り分はわずかだ。
この筋書きでは、会社の規模は今の半分になる。株主に残るのは、土地を売り尽くした後のわずかな値打ちだけだ。
- 国内販売(ドレスシャツの卸と売り場):数量 222(国内で売るシャツの枚数(万枚))× 価格 2.04(1枚あたりの卸の平均売上(千円))→ 売上 45 億円・営業利益 −1 億円。枚数0.45倍・単価1.2倍・赤字
- 製造・海外販売:数量 62.5(受託・海外で売るシャツの枚数(万枚))× 価格 1.44(1枚あたりの平均売上(千円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。受託の枚数0.5倍・単価1.2倍・赤字
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。土地の売却額から赤字で膨らむ借金を返した残りに戻り方0.5を掛けた約1.9億円を床とし、今の自己資本32.3億円の0.059倍に置いた。
確率:売上は10年で半分になった前例があり、同じ速さがもう10年続けば事業は維持できない。純負債が時価総額を上回るので、赤字が続けば株主の取り分は急速に細る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内販売(ドレスシャツの卸と売り場)
CHOYA・SWANなどのワイシャツを百貨店・専門店・量販店に卸し、ネットでも売る。
| 数量国内で売るシャツの枚数(万枚) | 価格1枚あたりの卸の平均売上(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 494 | 1.70 | 84 | −1 |
| 10 年後 中立 | 385 | 2.21 | 85 | 2 |
取り方:枚数は未開示。国内販売の売上84億円を、百貨店向けと量販店向けを均した卸の平均(1枚1.7千円)で割った推定。
製造・海外販売
国内3工場とラオスの自社工場での受託縫製と、上海・タイでの販売。
| 数量受託・海外で売るシャツの枚数(万枚) | 価格1枚あたりの平均売上(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 125 | 1.20 | 15 | −2 |
| 10 年後 中立 | 119 | 1.56 | 19 | 0 |
取り方:製造12億円と海外販売3億円の合計を、受託の縫製単価を均した1枚1.2千円で割った推定。営業損失は製造−1.0億円・海外−1.2億円。
リスクと懸念
ワイシャツの需要の縮み
在宅勤務とオフィスのカジュアル化で、ワイシャツを毎日着る人が減った。売上は10年で半分になり、この流れは戻りそうにない。働く世代の人口減も重なる。
借金と金利
借入金は約41億円で、時価総額22億円のほぼ2倍だ。短期の借入が中心で、金利が上がればすぐに利払いが膨らむ。営業利益が薄いので、利息がその大半を食う。
値決め力の弱さ
ユニクロや青山商事、AOKIが自社のシャツを安く売る。量販店や百貨店は仕入れ値に厳しく、綿や人件費の上昇を卸の値段に乗せ切れない年が多い。
在庫の値引き
シャツは色や柄、サイズで品数が多く、売れ残りが出やすい。需要が急に落ちると在庫の評価損や値引きが利益を削る。2026年3月期の赤字にもその影が出た。
海外の生産と為替
生産はラオスの自社工場と中国・東南アジアの協力工場に頼る。現地の人件費の上昇や政情、輸送費の高騰が原価を押し上げる。為替は150円で固定して見たが、実際の円安は仕入れを重くする。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて3%を超えたら
- やや楽観の確率を厚くし、国内販売の利益率を上げる。
- 借入金が30億円を切ったら
- 借金の上乗せを外して資本コストを下げ、利払いを軽くする。
- 国内販売の売上が2期続けて5%超減ったら
- やや悲観の確率を厚くし、中立の枚数を下げる。
- 本社の土地を売るか、賃貸に回す方針が出たら
- 含みの使い道を見て、悲観側の床を見直す。借金の返済に回るなら株主の取り分は小さい。
- 配当が再開し、還元の方針が示されたら
- 溜まる現金の戻り方を0.75に上げる。
見ておくもの
- 国内販売の売上と営業利益率
- 借入金と支払利息
- 在庫の額と回転
- 中期計画の進み具合
- 配当の再開
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、シャツの枚数(推定)と卸の単価、利益率から10年後の営業利益を積み、借入の利払いを引いた。全筋書きでROEは資本コスト10%に届かないので、PERは1÷k(約10.5倍)を上限に利益の質で8〜9割に置いた。悲観側は赤字のため、土地の含みと政策保有株に戻り方0.5を掛けた床で置いた。PBRが0.7倍台でも、それを割安の根拠にはしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→10 倍・やや楽観 PER 9→10 倍・中立 PER 8.5→10 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%+quality 2.0%。2026年3月期の赤字は工場閉鎖の一過性が大半で、今期は黒字予想のため上乗せ(distress)は付けず、苦しい姿は筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 10.00%。