結論
東京ソワールは、喪服を中心とする婦人のフォーマルウェアの会社だ。1971年に黒のフォーマルに絞り込み、百貨店と量販店の売場で育った。売上161億円の9割をフォーマルで稼ぎ、残りは2024年に買ったセレクトショップのキャナルジーンである。
筆者の結論は、今の値段はほぼ妥当で、やや高めというものだ。営業利益率は過去25年で4%を超えたことがない。2025年12月期は1%にとどまった。ならした純利益は3億円前後で、資本コストに遠い。
喪服の需要そのものは底堅い。亡くなる人の数は2040年ごろまで増え続け、きちんとした装いへのこだわりも残る。新ブランドのTOKYO SOIRは立ち上がりが好調だ。
それでも売り先の百貨店と量販店は、毎年のように売場を閉じる。家族葬が広がり、喪服を新調する機会も減った。卸から小売への転換は始まったばかりで、売場の減少を埋めきれていない。
純現金15億円と株17億円、賃貸不動産は厚い。だがその稼ぎは既に利益に入っており、会社が売る方針もない。今の値段は、その厚さに頼りすぎていると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、資産は厚いが、事業の稼ぎが弱すぎる会社だ。
自己資本は105億円あり、純現金と株、不動産で40億円を超える。PBR0.3倍と聞けば安く見える。だが少数株主が手にできるのは、事業が稼ぐ利益と配当だけだ。会社が資産を売って配る方針は無い。
その稼ぎが年3億円前後しかない。設備はあまり要らない商売なので、利益の多くは株主のものになる。それでも資本コストを8%強とすると、値打ちは30億円台にとどまる。
10年後も喪服は要る。亡くなる人の数は増え、きちんとした装いへの思いも残る。問題は、その喪服をどこで売るかだ。百貨店の売場という長年の強みは、10年で大きく削られる。直営店とECで同じ信頼を築けるかは、まだわからない。
安全域は、事業でなく資産の厚さに頼っている。資産を株主に戻す仕組みが無い以上、筆者はそこに十分な安全域を見ない。
何で稼ぐ会社か
創業は1954年。児島絹子氏が開いたソワール洋装店が始まりで、1969年に会社になった。1971年に黒のフォーマルに特化し、喪服の代名詞のような会社に育った。
事業は2つある。主力のフォーマル事業は、2025年12月期の売上が145億円、セグメント利益は0.9億円だった。葬儀や法要のブラックフォーマル、結婚式や入学式のカラーフォーマル、真珠などの小物を扱う。20を超えるブランドを持ち、うちブラックフォーマルだけで10を超える。
売り方は卸が約7割だ。製品は国内外の縫製工場や商社から仕入れ、全国の百貨店や量販店の売場に置く。売場は644か所あり、多くは店の中に場所を借りる形で、売れた分だけ店と分け合う。残りは直営店のformforma、EC、レンタルである。
ライフスタイル事業は、2024年に買ったキャナルジーンだ。売上は16億円、利益は0.8億円。セレクトショップのCANAL JEANを営み、売上の7割をECで稼ぐ。黒の雑貨のkuros'もここに入る。
中期経営計画は2027年12月期に売上180億円、営業利益5.4億円を掲げる。2040年に売上300億円という長い目標もある。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、喪服という狭い分野での信頼だ。
喪服は失敗の許されない服である。周りから失礼に見られないか、何年も着られるか。買う人はこれを気にし、名の通った売場で選ぶ。東京ソワールは半世紀かけて百貨店の喪服売場を押さえ、1社で売場を任される例も多い。縫製とプレスの技術にも定評がある。
ただ、この強みは売場ごと縮んでいる。百貨店と量販店は地方から閉店が続き、売場を持たない会社の信頼は客に届かない。ECでは、安い喪服が値段で並べられる。
数字も弱さを示す。営業利益率は過去25年で4.3%が最高だ。ROEは中央値で2%に満たず、資本コストの8%台に遠い。2020年にはコロナ禍で22億円の営業損失を出した。
経営は効率を上げようとしている。在庫の回転は良くなり、粗利率も上がった。ただ販管費がそれを食い、利益は増えていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
婦人のフォーマルウェアは、需要の数と売場の数が逆に動く市場だ。
需要の側は意外に底堅い。日本で亡くなる人は年160万人に近づき、2040年ごろまで増え続ける。葬儀の約半分は家族葬になったが、コロナの後は一般葬に戻る動きもある。結婚式は減るが、入学式や卒業式、七五三の装いは続く。
売場の側は縮み続ける。喪服は長く百貨店と量販店で売られてきた。その百貨店は地方から閉店が相次ぎ、量販店も衣料の売場を減らしている。東京ソワールの2025年12月期の売上が予想を下回ったのも、主に売場の閉鎖のためだ。
買い方も変わった。喪服は急に要る服で、ECで翌日に届く安い品が増えた。一度しか着ないならと、借りる人もいる。東京ソワール自身もレンタルの店を青山と名古屋に開いた。
競合は、量販店の自社ブランドとECの専業、ほかのフォーマルの卸である。東京ソワールは百貨店の売場では首位級だが、売場そのものが縮む中での首位である。
筆者の見立てでは、フォーマルの点数は10年で15%ほど減る。単価は品質で物価に近く上がるが、届かない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2025年12月期の配当は総額1.5億円ほど。利益が細った年も配当を保ち、配当性向は4割から6割に達する。自社株買いの方針は示していない。
2024年には、キャナルジーンを買った。卸から小売へ、婦人服から雑貨へと広げる狙いだ。中計では業務提携やM&Aの機会も探るとする。
資産は厚い。純現金15億円、投資有価証券17億円、賃貸不動産8億円、土地17億円を持つ。自己資本比率は75%だ。ただ株の配当と不動産の賃料は既に利益に入っており、売る方針を数字で示してもいない。
時価総額は36億円と、自己資本の3分の1にとどまる。2024年末には流通株式の時価総額が上場の基準を下回り、2025年末にようやく適合した。資本の効率を上げる手は、まだ打たれていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
喪服の需要は消えない。日本で亡くなる人は2040年ごろまで増え続ける。コロナで広がった家族葬も、一般葬に戻る動きがある。周りの目を気にして、きちんとした服を選びたい人は多い。東京ソワールは、その時に真っ先に名前が浮かぶ会社だ。
変化への手も打っている。新ブランドのTOKYO SOIRは発売2か月で計画を65%上回り、売場は200店を超えた。キャナルジーンの新宿店も計画を大きく上回り、出店の誘いが相次ぐ。レンタルの店は名古屋に広がった。卸から小売への転換で、粗利率は1年で1ポイント上がった。
資産はさらに厚い。純現金15億円、株17億円、賃貸不動産と土地を持ち、時価総額の36億円を上回る。配当は利益が細った年も保ち、利回りは4%台だ。会社は資本コストを意識した経営を掲げ、ROEの改善に取り組むと明言している。売場の整理が終われば、中計の利益率3%は手の届く数字だ。
会社が見込む株主資本コストは5〜6%で、それを超えるROEを目標に掲げた。経営が資本の効率を口にし始めたこと自体が、変化の兆しである。
慎重な見方
売場が消えていく。喪服は百貨店と量販店で売られてきたが、その閉店は地方から止まらない。2025年12月期の売上が予想を下回ったのも、主に売場の閉鎖のためだ。直営店とECは伸びているが、卸の7割を埋めるには小さすぎる。
利益の実績は乏しい。営業利益率は過去25年で4.3%が最高で、2015年から2019年は赤字と黒字を行き来した。2020年には22億円の営業損失を出した。中計の3%も、過去に届いたのは数年だけだ。
家族葬や直葬が当たり前になれば、喪服を新調する機会は減る。安い喪服はECで翌日に届き、借りる人も増える。値上げは通りにくい。
資産の厚さは株主の手に届かない。株の配当と不動産の賃料は既に利益に入っており、会社に売る方針はない。キャナルジーンの買収も、のれんを生んだだけでまだ利益は小さい。ROEが2%の会社が資産を抱えても、株主の価値は増えない。
会社は資本コストを5〜6%と見積もるが、筆者の目にはそれも低すぎる。資本の値段を軽く見る経営は、資産を寝かせがちだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方に分がある。喪服の需要は底堅いが、それを売る場所が縮んでおり、小売への転換はまだ売場の減少を埋めていない。利益率の実績も乏しい。確率は中立を厚くし、悲観側をやや厚めに置いた。資産の厚さは床を支えるが、株主に戻る仕組みが無いため、上振れの確率は小さく見た。小売への転換が2〜3年で数字に出れば、見方を改める。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,613 円56 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 494 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 1,042 円36 億円、今との差 +0.9%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,075 円106 億円 | 809 円28 億円 | +276.4% | +14.2% | 311 円11 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,295 円79 億円 | 636 円22 億円 | +184.0% | +11.0% | 586 円20 億円 |
| 中立 | 38% | 1,679 円58 億円 | 520 円18 億円 | +113.1% | +7.9% | 836 円29 億円 |
| やや悲観 | 22% | 991 円34 億円 | 347 円12 億円 | +29.6% | +2.6% | 294 円10 億円 |
| 悲観 | 12% | 434 円15 億円 | 231 円8 億円 | −35.6% | −4.3% | 80 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,613 円56 億円 | 494 円17 億円 | +104.1% | +7.4% | 2,107 円73 億円 |
今の株価時価総額 1,032 円36 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 直営と新ブランドで小売の会社に変わる 利益 9 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,075 円106 億円
卸から小売への転換が実を結ぶ。直営のformformaとTOKYO SOIRが全国の商業施設に広がり、百貨店の売場が減った分を自前の店とECで取り戻す。喪服は人生で何度も買わない品だが、亡くなる人の数は2040年ごろまで増え続ける。フォーマルの点数は横ばいを保ち、単価は品質で1.36倍に上がる。利益率は4%と、四半世紀ぶりの水準になる。
キャナルジーンは東京に続いて大阪や名古屋に出店し、ECとともに売上は3倍を超える。
営業利益は11億円、純利益は8億円台だ。配当は利益に合わせて増え、10年の還元は28億円になる。それでもROEは6%台で、資本コストには届かない。
- フォーマル事業(喪服・礼服の卸と小売):数量 72.0(販売点数(万着))× 価格 2.74(1着あたりの平均単価(万円))→ 売上 197 億円・営業利益 8 億円。点数横ばい・単価1.36倍・利益率4.0%
- ライフスタイル事業(キャナルジーン):数量 62.5(受注件数(万件))× 価格 0.87(1件あたりの平均単価(万円))→ 売上 54 億円・営業利益 3 億円。件数2.5倍・単価1.34倍・利益率6.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 106 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:卸から小売への転換、新ブランドの全国展開、キャナルジーンの出店がそろって成功する必要がある。中計の営業利益率3%すら過去に届いたのは数年だけで、確度は低い。
やや楽観 20% 中計の利益率に届き、子会社が育つ 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,295 円79 億円
百貨店と量販店の売場は減り続けるが、直営店とECが一部を埋める。フォーマルの点数は0.92倍、単価は物価並みの1.34倍だ。仕入れを中国からベトナムやインドネシアに移し、原価の上昇を抑える。利益率は3.2%と、中計の目標を少し上回る。
キャナルジーンは数店を出し、ECも伸びて売上は2倍台になる。利益率は5%だ。
営業利益は8億円弱、純利益は6億円台になる。配当は今の水準から少しずつ増え、10年の還元は22億円。自己資本は133億円に積み上がり、ROEは5%弱にとどまる。レンタルの店も主要都市に広がり、喪服を持たない人の需要を拾う。
- フォーマル事業(喪服・礼服の卸と小売):数量 66.2(販売点数(万着))× 価格 2.70(1着あたりの平均単価(万円))→ 売上 179 億円・営業利益 6 億円。点数0.92倍・単価1.34倍・利益率3.2%
- ライフスタイル事業(キャナルジーン):数量 50.0(受注件数(万件))× 価格 0.86(1件あたりの平均単価(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 2 億円。件数2.0倍・単価1.32倍・利益率5.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 79 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2023年12月期に営業利益率3.5%の実績があり、中計の3%は届かない数字ではない。キャナルジーンの新宿店は計画を大きく上回った。百貨店の閉店は続くので、点数は減る形にした。
中立 38% 売場は減り、点数は細るが利益は少し戻る 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,679 円58 億円
百貨店と量販店の閉店が続き、卸の売場は減る。家族葬が広がり、喪服を新調する人も減る。それでも亡くなる人の数は増え、一般葬に戻る動きもある。フォーマルの点数は0.85倍、単価は1.30倍だ。利益率は2.5%で、過去の良い年と悪い年の中ほどである。
キャナルジーンは1.5倍に育ち、利益率は4%を保つ。
営業利益は5億円強、純利益は4.5億円になる。賃貸不動産の賃料と株の配当が、営業外で利益を支える。配当は年1.5億円ほどを続け、10年の還元は18億円。自己資本は127億円に膨らみ、ROEは3%台にとどまる。
- フォーマル事業(喪服・礼服の卸と小売):数量 61.2(販売点数(万着))× 価格 2.62(1着あたりの平均単価(万円))→ 売上 160 億円・営業利益 4 億円。点数0.85倍・単価1.30倍・利益率2.5%
- ライフスタイル事業(キャナルジーン):数量 37.5(受注件数(万件))× 価格 0.85(1件あたりの平均単価(万円))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。件数1.5倍・単価1.30倍・利益率4.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.7% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 58 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:百貨店と量販店の閉店は過去10年続いており、止まる理由がない。一方で喪服の需要そのものは亡くなる人の数に支えられる。過去の利益率の中ほどに戻る姿が最も自然とみた。
やや悲観 22% 百貨店の売場が消え、利益が細る 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 991 円34 億円
地方の百貨店と量販店の閉店が加速し、卸の売場が大きく減る。直営店とECでは埋めきれず、フォーマルの点数は0.72倍に縮む。値上げも通りにくく、単価は1.24倍だ。利益率は1%に落ちる。
キャナルジーンは伸び悩み、売上は1.2倍にとどまる。
営業利益は2億円弱、純利益は賃料と配当に支えられて2億円ほどだ。配当は減り、10年の還元は12億円。自己資本は115億円あるが、その多くは在庫と土地、株である。
稼ぐ力で測る価値は25億円ほどで、現金の一部を足しても30億円に届かない。株と不動産を売るかどうかは、経営が決める。
- フォーマル事業(喪服・礼服の卸と小売):数量 51.8(販売点数(万着))× 価格 2.49(1着あたりの平均単価(万円))→ 売上 129 億円・営業利益 1 億円。点数0.72倍・単価1.24倍・利益率1.0%
- ライフスタイル事業(キャナルジーン):数量 30.0(受注件数(万件))× 価格 0.81(1件あたりの平均単価(万円))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。件数1.2倍・単価1.25倍・利益率2.0%
倍率:ROE約1.8%でkを大きく下回る。稼ぐ力(純利益約2.1億円÷k)は約25億円、余った現金の0.75倍に戻り方0.75を掛けた約4.5億円を足して約30億円。その手前の今の自己資本104.9億円の0.273倍に置いた。
確率:主力の百貨店と量販店の閉店は年々進み、2025年12月期もそれで売上が予想を下回った。2015年から2019年は赤字と黒字を行き来した実績がある。
悲観 12% 喪服の卸が成り立たなくなる 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 434 円15 億円
地方の百貨店と量販店が次々に消え、卸の売場は半分以下になる。葬儀は家族葬と直葬が当たり前になり、喪服を買わずに借りる人も増える。フォーマルの点数は0.55倍、単価は1.12倍しか上がらない。在庫の値引きがかさみ、利益率はマイナス3%に沈む。
キャナルジーンも競争に負け、売上は今の8割になる。
営業損失は3億円に達し、賃料と配当で埋めても赤字が続く。配当は減り、やがて止まる。10年の還元は8億円にとどまる。
残る価値は現金と株、賃貸不動産だ。ただ赤字で現金は細り、売るかどうかを決めるのは経営である。
- フォーマル事業(喪服・礼服の卸と小売):数量 39.6(販売点数(万着))× 価格 2.25(1着あたりの平均単価(万円))→ 売上 89 億円・営業利益 −3 億円。点数0.55倍・単価1.12倍・利益率−3.0%
- ライフスタイル事業(キャナルジーン):数量 20.0(受注件数(万件))× 価格 0.75(1件あたりの平均単価(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。件数0.8倍・単価1.15倍・利益率−2.0%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。純現金と投資有価証券・賃貸不動産の税後に戻り方0.5を掛けた床(約15億円)で、今の自己資本104.9億円の0.143倍に置いた。
確率:百貨店の売場の消滅、家族葬と直葬の定着、喪服を持たず借りる習慣が重なる構造的な負け。2020年12月期に営業損失22億円を出した実績もある。喪服の需要が消えはしないので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
フォーマル事業(喪服・礼服の卸と小売)
葬儀や法要で着るブラックフォーマルと、結婚式や入学式のカラーフォーマル、小物。百貨店・量販店への卸が中心で、直営店とEC、レンタルも営む。
| 数量販売点数(万着) | 価格1着あたりの平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 72.0 | 2.01 | 145 | 1 |
| 10 年後 中立 | 61.2 | 2.62 | 160 | 4 |
取り方:2025年12月期のフォーマル事業の売上144.87億円・セグメント利益0.92億円(決算短信)。点数の開示は無く、小物を含めた1点あたりの平均単価を約2万円と置いて約72万着とした推定。
ライフスタイル事業(キャナルジーン)
子会社キャナルジーンのセレクトショップCANAL JEANと、黒の雑貨のkuros'。売上の7割がEC。
| 数量受注件数(万件) | 価格1件あたりの平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 25.0 | 0.65 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 37.5 | 0.85 | 32 | 1 |
取り方:2025年12月期のライフスタイル事業の売上16.25億円・セグメント利益0.82億円(決算短信)。件数の開示は無く、ECの1件あたり約6,500円と置いて約25万件とした推定。
リスクと懸念
百貨店と量販店の売場の閉鎖
売上の約7割は卸で、その多くが百貨店と量販店の売場だ。地方の閉店は止まらず、2025年12月期の売上が予想を下回った主な理由になった。直営店とECで埋めきれなければ、点数は縮み続ける。
葬儀の簡素化
家族葬と直葬が広がれば、喪服を新調する機会は減る。コロナの後に一般葬へ戻る動きもあるが、長い目で見て葬儀が小さくなる流れは変わりにくい。
ECの安い品とレンタル
喪服は急に要る服で、ECで翌日に届く安い品が増えた。一度しか着ないならと借りる人もいる。値上げが通りにくく、単価は物価に届かないおそれがある。
在庫と天候
在庫は売上の3割近くあり、売れ残れば値引きと評価損で利益が飛ぶ。カラーフォーマルと雑貨は流行と天候に左右され、猛暑で来店が減った年もある。
買収と小売への転換の実行
キャナルジーンの買収でのれんを抱え、直営店の出店には家賃と人件費の固定費が伴う。小売への転換が売上に結びつかなければ、固定費だけが残る。
資産を株主に戻す仕組みの欠如
純現金、株、不動産で時価総額を上回る資産を持つが、売る方針も自社株買いの方針もない。資本の効率が低いまま、資産だけが寝続けるおそれがある。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて3%を超えたら
- 中計の達成とみて、やや楽観の確率を厚くする。
- TOKYO SOIRと直営店の売上が卸の減少を上回り、フォーマルの売上が増えたら
- フォーマルの点数を上げる。
- 政策保有株の売却や自社株買いの方針が数字で示されたら
- 余った現金の戻り方を1.0に上げ、資産の一部を価値に足す。
- 大手の百貨店か量販店との取引が大きく縮んだら
- やや悲観の確率を厚くする。
- キャナルジーンが出店を重ねて利益率5%を保ったら
- ライフスタイル事業の数量を上げる。
見ておくもの
- フォーマル事業のセグメント利益
- 卸と小売の売上の比率
- 売場の数と閉店
- TOKYO SOIRの展開店舗
- キャナルジーンの出店と利益
- 配当と自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、フォーマルとライフスタイルの数量と単価、利益率から10年後の利益を積んだ。ROEはどの筋書きでも資本コスト8.5%に届かないので、PERは1÷k(約12.1倍)を上限に利益の質で7.5〜9割に置いた。悲観側は稼ぐ力と、純現金・株・賃貸不動産の税後に戻り方0.5を掛けた床で置いた。今のPBR0.3倍には寄せていない。株数はfactsでなく短信の発行済株式から自己株を引いた数に直した。売場の多くは店の中の委託の形で、新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→11.76 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 9→11.76 倍・やや悲観 PBR 0.28→0.273 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。