結論
北紡は、帝人から受けるアラミド繊維の紡績を祖業とする北陸の会社だ。今は中東向けの民族衣装の生地、のど飴と防犯カメラ、プラスチックのリサイクル、ハイヤー、ビットコインの保有と、事業を次々に足している。筆者の結論ははっきりと割高である。本業の稼ぎが赤字を抜け出せず、増資で集めたお金を新しい事業に回し続けているからだ。
営業赤字は 2019 年 3 月期から途切れず、2026 年 3 月期も 1.4 億円の赤字だった。決算短信には、事業を続ける前提に疑いを生じさせる事象があると書かれている。会社はハイヤー会社の取得で 2027 年 3 月期の黒字を見込むが、その利益の半分近くは残りの株主のものになる。
筆者は、10 年たっても全社の利益は赤字と黒字の境目にとどまると見る。株主の値打ちを支えるのは、帳簿に再評価して載せた土地と、少しの有価証券とビットコインだ。それも事業を続ける限り、株主の手には戻らない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、北紡は「わからない事業の寄せ集め」だ。紡績、生地の商社、のど飴、防犯カメラ、リサイクル、ハイヤー、ビットコイン。どれも小さく、どれにも長く続く強みが見えない。10 年後にこの会社が何で稼いでいるか、筆者には言い当てられない。
経営の資本の使い方も、株主の側に立っているとは言いにくい。17 期を超える赤字の中で、株を刷って集めたお金をビットコインと買収に回している。株主の 1 株あたりの価値は、増えるどころか薄まってきた。
安全域はない。帳簿の自己資本は 15 億円あり、土地もある。だが、その資産は事業を続ける限り株主に戻らず、赤字が続けば少しずつ削られる。今の時価総額はその帳簿の 1.5 倍で、利益のない会社に払う値段としては高すぎる。筆者なら、本業の黒字が 3 期続くまで手を出さない。
何で稼ぐ会社か
北紡の事業は 6 つに分かれる。いちばん古いのが紡績で、帝人のアラミド繊維を糸にする受託の仕事だ。防護服や産業資材に使われる。売上は 3 億円余りで、そのほとんどが帝人向けである。2026 年 3 月期は防護服向けの大口の品番が終わり、生産量は 2 割減った。
売上の最大の柱は、中東向けの民族衣装の生地だ。日本で仕入れた生地を、サウジアラビアなどの男性が着る白い衣装の材料として、1 社の大口の客に売る。2026 年 3 月期の売上は 6.9 億円で、利益の多くはここで出る。
ヘルスケアは、子会社の中部薬品工業ののど飴と、北陸・新潟で売る防犯・防災のシステムだ。リサイクルは静岡の掛川工場で廃プラスチックを資材に戻す。2025 年からはビットコインを買い始め、2026 年 3 月にはハイヤー・タクシーの V リムジンの株の 51% を、自社株を渡して取得した。2027 年 3 月期の売上は、このハイヤーの分で倍近くに増える見込みだ。
全社では、本社が各事業の管理と買収の仕事を担い、その費用が年 1.9 億円かかる。事業の利益の合計が、この費用を賄えていないのが今の姿だ。
優良さと弱いところ
北紡に、他社がまねできない強みはほとんどない。紡績は帝人という 1 社の発注しだいで、帝人が品番を終えれば量が消える。中東向けの生地は、中国やインドなど第三国の安い生地との値段の差が開き、2026 年 3 月期は値上げで量を落とした。売り先も 1 社に偏っている。
ヘルスケアとリサイクルは小さな黒字を出すが、どちらも参入の壁が低い。ハイヤーは都市部の需要が堅い商売だが、運転手の確保と車両の更新にお金がかかり、利益率は高くない。
資本の使い方にも疑問が残る。会社は第三者割当の増資と新株予約権で数年のうちに 10 億円近くを集め、その一部をビットコインの購入に回した。本業が赤字の会社が、値動きの激しい資産を持つことは、株主の資本を賭けに回すのに近い。経営の関心は、本業を磨くことより、新しい事業を足すことに向いているように見える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
北紡がいる業界は、どれも成熟しているか、競争の激しい市場だ。国内の紡績業は、人件費の安いアジアへの移転で数十年にわたり縮んできた。残っているのは、アラミドのような特殊な繊維を少量で扱う受託の仕事くらいである。帝人自身も繊維の事業を絞り込んでおり、受託の量が増える見込みは薄い。
中東向けの民族衣装の生地は、日本製の品質が好まれてきたが、第三国の生地の品質が上がり、値段の差が効くようになった。2026 年には中東の情勢で物流にも制約が出た。
ハイヤー・タクシーは、東京では訪日客と企業の需要で堅いが、運転手の不足と人件費の上昇が利益を削る。配車アプリと大手のタクシー会社が規模で勝ち、小さな会社は大手の傘下に入る流れが続いている。リサイクルは脱プラスチックの追い風を受けるが、廃プラの仕入れの値段と、再生材の売値の両方が市況で動く。
ビットコインを会社の資産として持つ動きは、国内の小型株で 2025 年に広がった。値上がりの期待で株価が動く一方、本業の価値とは関係のない揺れを株主に持ち込む。株を刷って買う形は、値下がりの局面で株主の取り分を二重に削る。
資本政策と M&A
北紡は配当を出していない。株主優待もない。代わりに、資本を集めることが資本政策の中心になっている。2025 年 1 月に第三者割当で 2 億円、その後の新株予約権の行使で 2026 年 3 月までに 3 億円余りを集めた。株数は 2 年で 4 割近く増え、今の株主の取り分は薄まった。
集めたお金は、機械の更新、ビットコインの購入、ハイヤー会社の取得の手元資金に回った。ハイヤー会社の取得も自社株を渡す株式交付で、株はさらに増えた。財務は、現預金 4.8 億円に対し借入が 5.3 億円で、純負債は小さい。土地は再評価して帳簿に 9.6 億円ある。
筆者は、この資本の使い方を株主の価値を増やすものとは見ていない。赤字の本業を、株を刷って集めたお金で支える形が続いている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
会社は変わりつつある。2027 年 3 月期は、ハイヤー会社の取得で売上が倍近くになり、会社は営業黒字を見込む。東京のハイヤーは訪日客と企業の役員の送迎で需要が堅く、運転手と車を増やせば売上は伸びる。同じ形の会社を株式交付で買い足せば、規模はさらに大きくなる。
既存の事業も持ち直している。リサイクルは掛川工場の生産が安定して黒字に戻り、ヘルスケアは防犯システムの販売で利益が 5 倍になった。中東向けの生地は、値上げで量は落としたが、利益率は予想を大きく上回った。
資産の厚みもある。再評価した土地が 9.6 億円、有価証券とビットコインもある。ビットコインの値段が上がれば、評価損は益に変わる。今の値段は、こうした変化を織り込み始めたところだ。
新しい経営は動きが速い。社名を北紡に改め、事業の目的を広げた。小さな会社が攻めの買収を続ければ、数年で姿が変わることもある。防犯システムの南九州への展開も始まる。
慎重な見方
赤字の歴史が長すぎる。営業赤字は 2019 年 3 月期から途切れず、それ以前もほとんどの年が赤字だった。決算短信には、事業を続ける前提に疑いを生じさせる事象があると書かれている。新しい事業を足すたびに全社の費用が膨らみ、2026 年 3 月期の全社費用は 1.9 億円になった。
ハイヤーの利益は、半分近くが残りの株主のものだ。親会社の株主に残る利益は、全社費用を賄うのがやっとである。紡績は帝人の品番の終了で量が 2 割減り、中東向けの生地は第三国の安い品に押されている。
そして、株を刷り続けている。2 年で株数は 4 割近く増えた。集めたお金の一部はビットコインに回り、2026 年 3 月期は評価損で 0.9 億円を失った。利益のない会社が帳簿の 1.5 倍で売られているのは、新しい話題への期待にすぎない。
事業を足すたびに全社の費用が増え、どの事業も小さいまま残る。赤字の会社が値動きの激しい資産を抱える危うさは、数字以上に大きい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。ハイヤーの取得で売上は増えるが、利益の半分近くは残りの株主に流れ、全社費用を賄うのがやっとだ。17 期を超える赤字と株の増え方は構造の話で、一時の不振ではない。確率は中立を厚くし、悲観側を 4 割に置いた。ハイヤーの買い足しが当たる道は、楽観の小さな確率に入れた。資産の値打ちも、株主に戻らない分を割り引いて見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 16 円5 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 6 円2 億円、今との差 −90.4%、 期待の年率 −13.4%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 62 円20 億円 | 3 円1 億円 | −2.5% | −0.3% | 3 円1 億円 |
| やや楽観 | 15% | 20 円6 億円 | 0 円0 億円 | −70.2% | −11.4% | 3 円1 億円 |
| 中立 | 40% | 14 円4 億円 | 0 円0 億円 | −79.8% | −14.8% | 5 円2 億円 |
| やや悲観 | 25% | 12 円4 億円 | 0 円0 億円 | −82.5% | −16.0% | 3 円1 億円 |
| 悲観 | 15% | 8 円3 億円 | 0 円0 億円 | −87.7% | −18.9% | 1 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 16 円5 億円 | 0 円0 億円 | −76.4% | −13.4% | 16 円5 億円 |
今の株価時価総額 67 円21 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 5% ハイヤーの買い足しが当たり、本業も黒字が定着する 利益 2 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 62 円20 億円
ハイヤーが会社の柱に育つ筋書きだ。訪日客と企業の送迎の需要に乗って、同じ形の会社を株式交付で買い足し、車両は 200 台を超える。運転手の採用と配車の仕組みを束ねて、利益率は 7% まで上がる。残りの 49% の株も買い取りが進む。
既存の事業も黒字を保つ。中東向けの生地は品質の高い日本製の地位を守り、リサイクルは脱プラスチックで量を伸ばす。全社の営業利益は 4 億円近くになり、配当も再び出る。それでも資本コストには届かず、価値の大半は 10 年後の利益に頼る。
残りのビットコインの値上がりは、配当の再開を後押しする追い風になる。
- 紡績:数量 527(紡績糸の生産量(t))× 価格 85(1t あたりの売上(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。527t(横ばい)× 85 万円(1.38 倍)、3%
- テキスタイル(中東向け生地):数量 100(販売量(万 m、推定))× 価格 9.40(1m あたりの売上(百円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。100 万 m(1.02 倍)× 940(1.34 倍)、12%
- ヘルスケア:数量 450(販売数量(万個換算、推定))× 価格 1.34(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。450 万個(1.40 倍)× 1.34 倍、8%
- リサイクル:数量 3,500(出荷量(t、推定))× 価格 13(1t あたりの売上(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。3,500t(1.39 倍)× 13.4 万円、8%
- モビリティ(ハイヤー):数量 200(稼働する車両の台数(台、推定))× 価格 2,050(1 台あたりの年の売上(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円。200 台(2.3 倍、株式交付で買い足し)× 2,050 万円(1.37 倍)、7%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)2 億円。全体の PER 10.53 倍、時価総額 20 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業黒字は 2018 年 3 月期が最後で、ハイヤーの買い足しと既存事業の黒字化が重なる必要がある。5% とした。
やや楽観 15% ハイヤーが伸びて黒字になるが、利益の多くは外に流れる 利益 0 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 20 円6 億円
ハイヤーの車両が 150 台に増え、全社で営業黒字が続く筋書きだ。中東向けの生地とヘルスケア、リサイクルも小さな黒字を保つ。紡績は帝人の発注が細り、量は 15% 減るが、赤字にはならない。
ただし、ハイヤーの利益の半分近くは残りの株主のものだ。全社費用も物価とともに増え、親会社の株主に残る利益は 0.4 億円ほどにとどまる。株主の値打ちは、細い利益と、土地や有価証券の資産に頼る形が続く。
株数は新株予約権の残りの行使で少し増える。会社が黒字を続ければ、帳簿の 1 倍に近い値段で同業に買われる道もある。
- 紡績:数量 450(紡績糸の生産量(t))× 価格 82(1t あたりの売上(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。450t(0.85 倍)× 82 万円(1.33 倍)、1%
- テキスタイル(中東向け生地):数量 95.0(販売量(万 m、推定))× 価格 8.90(1m あたりの売上(百円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。95 万 m(0.97 倍)× 890(1.27 倍)、11%
- ヘルスケア:数量 400(販売数量(万個換算、推定))× 価格 1.32(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。400 万個(1.25 倍)× 1.32 倍、7%
- リサイクル:数量 3,100(出荷量(t、推定))× 価格 13(1t あたりの売上(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。3,100t(1.23 倍)× 13.4 万円、7%
- モビリティ(ハイヤー):数量 150(稼働する車両の台数(台、推定))× 価格 2,010(1 台あたりの年の売上(万円))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。150 台(1.72 倍)× 2,010 万円(1.34 倍)、6%
倍率:事業の純利益 0 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.4% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)2 億円。全体の PER 10.53 倍、時価総額 6 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027 年 3 月期の会社予想は営業黒字で、ハイヤーの需要も堅い。ただ非支配株主の取り分と全社費用で、親会社の利益は小さい。15% とした。
中立 40% 売上は増えても、全社では赤字と黒字の境目 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 14 円4 億円
ハイヤーで売上は 40 億円近くに増えるが、親会社の株主に残る利益はほぼない筋書きだ。紡績は帝人の発注が細って量が 2 割強減り、利益は出ない。中東向けの生地は第三国の品に押され、値上げは物価に届かない。
ハイヤーは 100 台ほどで、利益率は 5% だ。その半分近くは残りの株主に流れる。全社費用は、事業を足すたびに膨らんだまま物価で増える。全社の営業利益は小さな黒字だが、税と非支配株主の取り分の後では赤字に近い。株主の値打ちは、土地と有価証券、ビットコインにほぼ限られる。
ビットコインは持ち続け、評価の上げ下げが利益を揺らすだけで終わる。
- 紡績:数量 400(紡績糸の生産量(t))× 価格 82(1t あたりの売上(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。400t(0.76 倍、帝人の品番の終了)× 82.4 万円(1.34 倍)、0%
- テキスタイル(中東向け生地):数量 90.0(販売量(万 m、推定))× 価格 8.75(1m あたりの売上(百円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。90 万 m(0.92 倍)× 875(1.25 倍、第三国品との値段の差で物価に届かない)、10%
- ヘルスケア:数量 350(販売数量(万個換算、推定))× 価格 1.30(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。350 万個(1.09 倍)× 1.30 倍、6%
- リサイクル:数量 2,800(出荷量(t、推定))× 価格 13(1t あたりの売上(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。2,800t(1.11 倍)× 13.4 万円(1.34 倍)、6%
- モビリティ(ハイヤー):数量 100(稼働する車両の台数(台、推定))× 価格 2,010(1 台あたりの年の売上(万円))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。100 台(1.15 倍)× 2,010 万円(1.34 倍)、5%
倍率:親会社の純利益が赤字に近いので PBR で置く。稼ぐ力はほぼゼロで、値打ちは再評価した土地の税後、有価証券とビットコインから純負債を引いた約 9.6 億円から、ハイヤーが育つまでの数年の全社費用の赤字約 1 億円を引き、株主に戻らない分の 0.5 を掛けた約 4.3 億円。10 年後の自己資本 15.8 億円の 0.27 倍。
確率:既存事業の小さな黒字とハイヤーの利益を、全社費用と非支配株主の取り分がほぼ打ち消す。17 期を超える赤字の歴史から、最も起こりやすい。40% とした。
やや悲観 25% 生地の客を失い、赤字のまま株を刷り続ける 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 12 円4 億円
中東向けの生地の大口の客が、第三国の安い生地に切り替える筋書きだ。生地の量は 3 割減り、利益はわずかになる。紡績は帝人の受託が細り、赤字に戻る。ハイヤーは運転手の不足で台数を増やせず、利益率は 3% にとどまる。
全社の赤字が続き、会社は新株予約権と増資で資金をつなぐ。株数はさらに増え、今の株主の取り分は薄まる。ビットコインの値段しだいで、評価損が赤字を広げる年もある。株主の値打ちは、土地の帳簿の価値の一部に近づく。
防犯システムとリサイクルの小さな黒字では、全社の費用は賄えない。株主の値打ちを守るはずの土地も、借入の担保に入る。
- 紡績:数量 330(紡績糸の生産量(t))× 価格 78(1t あたりの売上(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。330t(0.63 倍)× 78 万円(1.27 倍)、−5%
- テキスタイル(中東向け生地):数量 68.0(販売量(万 m、推定))× 価格 8.40(1m あたりの売上(百円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。68 万 m(0.69 倍、大口の客の切り替え)× 840(1.2 倍)、5%
- ヘルスケア:数量 300(販売数量(万個換算、推定))× 価格 1.25(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。300 万個(0.93 倍)× 1.25 倍、3%
- リサイクル:数量 2,400(出荷量(t、推定))× 価格 13(1t あたりの売上(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。2,400t(0.95 倍)× 12.5 万円(1.25 倍)、2%
- モビリティ(ハイヤー):数量 85.0(稼働する車両の台数(台、推定))× 価格 1,900(1 台あたりの年の売上(万円))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。85 台(横ばい)× 1,900 万円(1.27 倍)、3%
倍率:赤字なので PBR で置く。床は土地の税後と有価証券から純負債と赤字の穴を引いた額を戻り方 0.5 で数えた約 3.7 億円で、今の自己資本 15.3 億円の 0.24 倍。
確率:中東向けの生地は 1 社の客に頼り、紡績も帝人 1 社だ。どちらかを失えば赤字は広がる。増資で資金をつなぐ形も続いている。25% とした。
悲観 15% 本業の柱が崩れ、資産が赤字で削られる 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 8 円3 億円
帝人の受託が終わり、中東向けの生地の客も失う筋書きだ。紡績は工場を畳む費用がかかり、生地は細々とした取引だけが残る。ハイヤーは運転手の不足と大手との競争で赤字に転じ、のれんは減損になる。
ビットコインの値段も下がり、評価損が重なる。会社は土地を担保に借入を増やし、増資を繰り返して資金をつなぐ。自己資本は今の半分近くに減り、株主の値打ちは土地の一部と、残った有価証券に近づく。安く買われる道も、値段は帳簿の大きな割り引きになる。
最後に残るのは、北陸の土地と工場の建物だ。それも、株主に戻る見込みは半分しかない。
- 紡績:数量 200(紡績糸の生産量(t))× 価格 75(1t あたりの売上(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。200t(0.38 倍、受託の終了)× 75 万円、−15%
- テキスタイル(中東向け生地):数量 45.0(販売量(万 m、推定))× 価格 8.00(1m あたりの売上(百円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。45 万 m(0.46 倍)× 800、0%
- ヘルスケア:数量 250(販売数量(万個換算、推定))× 価格 1.20(1 個あたりの売上(百円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。250 万個(0.78 倍)× 1.2 倍、0%
- リサイクル:数量 2,000(出荷量(t、推定))× 価格 12(1t あたりの売上(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。2,000t(0.79 倍)× 12 万円、−3%
- モビリティ(ハイヤー):数量 70.0(稼働する車両の台数(台、推定))× 価格 1,800(1 台あたりの年の売上(万円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。70 台(0.80 倍)× 1,800 万円(1.2 倍)、−2%
倍率:赤字なので PBR で置く。床は土地の税後と残った有価証券から純負債と赤字の穴を引いた額を戻り方 0.5 で数えた約 2.6 億円で、今の自己資本 15.3 億円の 0.17 倍。
確率:17 期を超える赤字と重要事象等の記載があり、構造的に負ける道は現実にある。ただ土地があり、資金は増資でつないできたので 15% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
紡績
帝人のアラミド繊維などの受託紡績と、高級インナー向け・ポリエステルの紡績糸。
| 数量紡績糸の生産量(t) | 価格1t あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 527 | 62 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 400 | 82 | 3 | 0 |
取り方:短信の生産量(アラミド 394.7t・インナー向け 90.7t・その他 41.7t)の計 527t。売上 3.24 億円を割った 1t 約 61.5 万円。利益はセグメント損失 0.04 億円。
テキスタイル(中東向け生地)
中東の男性用の民族衣装向け生地を国内で仕入れて輸出する。東南アジア向けも少し。
| 数量販売量(万 m、推定) | 価格1m あたりの売上(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 98.0 | 7.00 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 8.75 | 8 | 1 |
取り方:数量の開示がないため推定。売上 6.87 億円を、民族衣装の生地の 1m 約 700 で割った約 98 万 m。利益はセグメント利益 0.83 億円。
ヘルスケア
中部薬品工業ののど飴・健康食品と、防犯・防災のセキュリティ管理システムの販売。
| 数量販売数量(万個換算、推定) | 価格1 個あたりの売上(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 321 | 1.00 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 350 | 1.30 | 5 | 0 |
取り方:数量の開示がないため推定。のど飴(1 袋 100 前後)に、防犯システムを 1 件の売上で換算して足した約 321 万個。利益はセグメント利益 0.34 億円。
リサイクル
掛川工場で廃プラスチックを加工し、プラスチック資材として売る。
| 数量出荷量(t、推定) | 価格1t あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,520 | 10 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,800 | 13 | 4 | 0 |
取り方:数量の開示がないため推定。売上 2.52 億円を、再生資材の 1t 約 10 万円で割った約 2,520t。利益はセグメント利益 0.26 億円。
モビリティ(ハイヤー)
V リムジン(51%)と NEO TOKYO のハイヤー・タクシー。2026/03 期末に取得。
| 数量稼働する車両の台数(台、推定) | 価格1 台あたりの年の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 87.0 | 1,500 | 13 | 1 |
| 10 年後 中立 | 100 | 2,010 | 20 | 1 |
取り方:期末のみなし取得で 2026/03 期の損益はない。2027/03 期の会社予想(売上 29 億円・営業利益 0.47 億円)と既存事業の差から、年の売上約 13 億円・営業利益約 0.9 億円と推定し、ハイヤー 1 台の年の売上約 1,500 万円で割った約 87 台。
リスクと懸念
赤字の長期化と資金繰り
営業赤字は 2019 年 3 月期から続き、営業キャッシュ・フローもマイナスだ。決算短信には事業を続ける前提に疑いを生じさせる事象があると書かれている。資金は増資と新株予約権でつないでおり、株式市場が冷えれば調達の道が細る。
株の増え方による薄まり
第三者割当、新株予約権の行使、ハイヤー会社の株式交付で、株数は 2 年で 4 割近く増えた。今後も買収と資金の調達で株を刷れば、今の株主の取り分はさらに薄まる。
客の集中
紡績の売上のほとんどは帝人向けで、中東向けの生地も 1 社の大口の客に頼る。帝人は大口の品番を終え、紡績の量は 2 割減った。どちらかの客を失えば、利益の柱が消える。
ビットコインの値動き
トレジャリーとしてビットコインを持ち、2026 年 3 月期は評価損で 0.9 億円の営業損失を出した。値動きは大きく、本業が赤字の会社にとっては利益と自己資本を大きく揺らす。
ハイヤーの人手と非支配株主
ハイヤーは運転手の確保と人件費の上昇が利益を削る。取得したのは 51% で、利益の半分近くは残りの株主のものだ。のれん 2 億円も、稼ぎが落ちれば減損になる。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期と 2028 年 3 月期に親会社の純利益が黒字になったら
- やや楽観の筋書きの確率を上げ、PER での評価に移す。
- 新株予約権や第三者割当で株数がさらに 1 割以上増えたら
- 株主の取り分の薄まりとして、価値を積み直す。
- 帝人の受託か、中東向けの生地の大口の客を失ったら
- やや悲観の確率を上げる。
- ハイヤーの残りの 49% を買い取ったら
- 非支配株主の取り分が消える分、親会社の利益の見通しを上げる。払った値段と株数の増え方も見る。
- ビットコインを売って配当や借入の返済に回したら
- 資本の使い方が株主側に変わった兆しとして、戻り方を見直す。
見ておくもの
- 親会社の株主に帰属する純利益の黒字化
- 株数の増え方(新株予約権・増資・株式交付)
- 帝人向けの紡績の生産量
- 中東向けの生地の販売量と利益率
- ハイヤーの台数とセグメント利益、ビットコインの評価損益
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PBR 1.5 倍を見ずに、稼ぐ力と資産から決めた。中立は親会社の利益が赤字に近く、ROE が k 9.5% を大きく下回るので PER を使えず、土地と有価証券の税後から純負債を引き、株主に戻らない分を 0.5 で割り引いた。楽観側の PER は 1÷k の 9.5 倍の 8 割前後。帳簿の自己資本は床にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8→10.53 倍・やや楽観 PER 8→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 0.5%。