結論
キングは、婦人服の卸売で知られる京都生まれの会社だ。今の稼ぎの中心は、自社ビルの賃貸にある。2026/03期の営業利益7.9億円のうち、賃貸が8.1億円を稼ぎ、アパレルは0.4億円の赤字だった。
筆者の結論は、今の時価総額181億円は、10年の筋書きを確率で重ねた価値より高いというものだ。割高と見る。理由は、現金の半分近くが株主に戻らないと見るからだ。
財務は極めて堅い。純現金は94億円で、時価総額の52%を占める。自己資本比率は86.5%。ただし、資本効率は悪い。ROEは2.7%と、資本コスト7.6%を大きく下回る。自己資本231億円のうち、約85億円は事業に使われていない現金である。
分かれ目は2つある。1つは、アパレルが赤字を脱するかどうか。売上は10年の年率-4.4%で縮み続けている。もう1つは、余った現金が配当や自社株買いで株主に戻るかどうかだ。大株主に海外の投資会社(LNSマネジメント、9.4%)がいる。この投資会社は、経営への助言や提案を保有目的に挙げている。ただ、現金の戻り方は、会社の決めることだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を一言で言えば、安全な賃貸ビルと現金の山に、赤字のアパレルがくっついた会社だ。
倒れる心配はない。自己資本比率は86.5%、純現金は94億円。賃貸ビルは自社の所有で、年10億円の賃料が入る。アパレルが赤字でも、10年は持ちこたえる。
問題は、現金の使い方だ。資本効率が低く、ROEは2.7%。自己資本の4割が、事業に使われない現金だ。現金を事業に再投資しても、資本コスト7.6%に届く見込みが薄い。株主に戻すのが正しいが、会社は10年のあいだ、現金を減らしていない。
アパレルの赤字は、経営の課題だ。売上は年率-4.4%で縮み、固定費が重い。立て直しが成功すれば価値は上がるが、成功の確率は高くない。
安全域は、現金と賃貸ビルにある。ただし、賃貸ビルの含み益は、賃料の稼ぎとして利益に入っている。別に足すと二重になる。現金が戻らないなら、少数株主にとっての現金の価値は、額面を下回る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は3つの事業だ。アパレルは、婦人服とファッション雑貨を、百貨店・専門店・ショッピングモールなどに卸している。売上は60.5億円で、全体の77%を占める。ところが営業損益は0.4億円の赤字。テキスタイルは、子会社のポーンが生地を卸す事業で、売上は7.7億円、営業利益は0.3億円。エステートは、自社ビルの賃貸だ。売上は10.2億円、営業利益は8.1億円で、営業利益率は80%近い。
貸し出しているのは東京の本社(品川区)、大阪店(吹田市)、京都本店(下京区)の3つで、外部への貸付面積は合わせて約14,600㎡。建物に占める貸付の割合は、東京27%、大阪69%、京都78%。ほかに、港区に賃貸専用の土地(296㎡)がある。
生産は商社や国内メーカーに委託し、大部分が中国で作られる。新ブランドとして、LETICIA(2024秋冬)とpierre cardin(2025秋冬)を展開する。従業員は連結で148人。
売上は2015/03期の128億円から、2026/03期の78億円まで縮んだ。営業利益は8〜14億円の幅を保ってきたが、それはアパレルの利益が落ちた分を、賃貸の安定が支えてきたためだ。
数量や単価の内訳は開示されない。筆者は、アパレルを年173万点×1点0.35万円、テキスタイルを年110万メートル×1メートル0.07万円、エステートを貸付面積14,600㎡×年6.95万円と見積もった(推定)。
優良さと弱いところ
筆者は、アパレルの堀を弱いと見る。ブランド力で選ばれる事業ではなく、卸売の相手は百貨店と専門店で、国内の婦人服は人口減少で縮む。10年の売上は年率-4.4%で減り、営業利益は2025/03期に0.45億円、2026/03期は赤字まで落ちた。
一方、エステートには立地の強みがある。品川と大阪・京都の自社ビルは、取得から長い年月が経ち、簿価は低い。外部貸しの売上10億円に対し、営業利益は8億円。この安定が、全社の損益を支えている。
資本効率は低い。ROEは10年の中央値が3.2%、直近は2.7%。自己資本の約4割が、事業に使われない現金で、これがROEを押し下げている。
経営は、配当性向40%を目安に、配当を続けている(2026/03期は性向46%)。自己株式を約36%持ち、過去に自社株買いを行ってきた。ただ、現金は10年のあいだ減っておらず、事業の外に積み上がっている。
会社は、売上拡大を最重要課題に掲げ、新ブランドの展開を始めた。成果は未確認である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の婦人服の卸売は、成熟した縮む市場だ。国内のアパレル小売市場は2024年に8兆5,010億円(名目)と、4年連続で増えたが、1990年代の約15兆円から約4割縮んだ。売上が伸びて見えるのは価格の上昇のためで、数量の伸びは小さい。
市場の変化は、卸にとって厳しい。ファーストリテイリングなどの大手と、EC専業のブランドが顧客を奪う。百貨店や専門店の店舗網が細り、卸の売り先が減る。キングも、売上が年率-4.4%で縮んだ。
生産の大部分は中国に頼る。為替と関税、調達の制約が費用を押し上げる。物価の上昇を価格に転嫁できるかが、利益率を決める。
一方、オフィスビルの賃貸は別の市場だ。東京の品川は、需要が堅い。大阪(吹田)と京都は、東京より賃料が上がりにくい。物価が上がる局面では、既存契約の改定が遅れるため、賃料の上昇は物価に届きにくい。
分かれ目は、アパレルの新ブランドが縮小に歯止めをかけられるかと、賃貸の空き区画をどれだけ埋められるかだ。後者は、本社に勤める人が減るほど、貸せる面積が広がる。前者は、百貨店や専門店の売り場が細るなかで、新しい売り先を見つけられるかにかかる。
資本政策と M&A
資本政策は、守りだ。配当は総額2.9億円(2026/03期)。配当性向は46%で、会社の目安40%を上回る。自社株買いは、2022年11月から2023年3月、2023年11月から2024年3月に行われた。自己株式は、発行済2,477万株のうち880万株(36%)にのぼる。
それでも現金は減っていない。現金同等物は98億円で、純現金は94億円。財務は堅く、営業利益÷支払利息は79倍。自己資本比率は86.5%。
政策保有株は、上場153銘柄で計30.7億円。主な銘柄は、三菱UFJ(6.2億円)、ワコール(4.8億円)、中央倉庫(4.4億円)、TSI(3.4億円)。持ち合いの色が濃い。
株主構成は、特定の親会社がいない。LNSマネジメント(シンガポール)が9.37%、山田育英財団が7.23%、中央倉庫が6.36%、三菱UFJ銀行が4.70%、京都銀行が4.64%を持つ。LNSは、投資目的に経営への助言と重要提案を挙げている。物言う株主が、現金の還元を迫る可能性は残る。筆者の参照するモデルは、10年以内のTOB・買収の確率を21.6%と置く。
減価償却は、既存の建物は取得時の値段のまま。新しい修繕・改装の分だけ、物価で膨らむ。2026/03期の設備投資は5.2億円で、主に店頭の内装。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
キングは、純現金が時価総額の半分を占める会社だ。純現金は94億円、自己資本比率は86.5%。この現金だけで、悲観の場合の価値を支えられる。
賃貸ビルは、年10億円の賃料を生み、営業利益は8億円と、全社の営業利益を上回る。東京本社は建物8,214㎡のうち外部貸しが27%で、空き区画を貸せば増収の余地がある。物価が上がれば、賃料も改定で上がる。
アパレルは、新ブランドが始まった。LETICIAは2024年秋冬、pierre cardinは2025年秋冬から。2027/03期の会社予想は、営業利益9億円と、前期より1.1億円増える見通しだ。
株主構成も変化している。LNSマネジメントが9.4%を持ち、経営への助言と重要提案を保有目的に挙げた。現金の還元が進めば、価値は大きく上がる。TOBの確率も、モデルで21.6%ある。自己株式が36%と多く、市場に出回る株は薄い。さらに、純現金は94億円と、時価総額の半分を超える。事業の価値がゼロでも、現金だけで株価の半分を支える計算になる。賃貸ビルの含み益は、簿価が低い分だけ大きいとみられる。
慎重な見方
同社の問題は、稼ぐ力が弱いことだ。売上は2015/03期の128億円から、2026/03期の78億円まで、年率-4.4%で縮んだ。アパレルは営業赤字で、賃貸ビルの稼ぎを食っている。
現金の使い方は、期待しにくい。純現金は94億円で、10年のあいだ、ほとんど減っていない。ROEは2.7%と、資本コスト7.6%を大きく下回る。自社株買いはあったが、年1億円台と小さく、現金の山は変わらなかった。
大株主は、友好的な持ち合いの会社が並ぶ。山田育英財団、中央倉庫、三菱UFJ銀行、京都銀行、日本生命。LNSが提案しても、他の株主が賛成するとは限らない。
新ブランドの成果は、まだ見えない。2027/03期の第1四半期は売上が0.3%増、営業利益は11.8%減。立て直しの兆しは薄い。TOBのプレミアムを期待して買うのは、本質価値の分析ではなく、会社の出方に賭ける行為だ。株価は、安全だが成長しない資産株として、すでに現金に近い値段で評価されている。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だった。賃貸ビルと現金の安全は確かだが、価値を決めるのは、現金が株主に戻るかと、アパレルの赤字が止まるかだ。ここは、現金が10年減っていないという実績が語る。そこで余った現金の戻り方は0.5とし、中立の営業利益率は11.4%、楽観でも14%と置いた。確率は中立を最も厚い36%にし、やや悲観と悲観の合計を40%、楽観側の合計を24%とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,091 円174 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 224 円36 億円)。 今の値に割り戻すと 680 円109 億円、今との差 −42.3%、 期待の年率 +1.1%(資本コスト 7.6%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,541 円246 億円 | 398 円64 億円 | +64.4% | +5.1% | 116 円19 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,401 円224 億円 | 317 円51 億円 | +45.7% | +3.8% | 309 円49 億円 |
| 中立 | 36% | 1,239 円198 億円 | 242 円39 億円 | +25.6% | +2.3% | 533 円85 億円 |
| やや悲観 | 27% | 871 円139 億円 | 159 円25 億円 | −12.7% | −1.3% | 278 円44 億円 |
| 悲観 | 13% | 507 円81 億円 | 101 円16 億円 | −48.4% | −6.4% | 79 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,091 円174 億円 | 224 円36 億円 | +11.6% | +1.1% | 1,316 円210 億円 |
今の株価時価総額 1,179 円188 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.6% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:新ブランドが当たり、アパレルの赤字が消える 利益 12 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 1,541 円246 億円
pierre cardinとLETICIAが百貨店と専門店で定着し、アパレルの卸売は点数が1割減にとどまる。卸値は1.3倍に上がり、赤字が消えて小さな黒字に戻る。
エステートも伸びる。東京本社は建物8,214㎡のうち外部への賃貸が2,247㎡と27%にとどまる。社員が減るなかで空き区画を貸し出し、貸付面積は1割増える。賃料は物価並みの1.32倍に上がり、賃貸の営業利益は11億円に届く。
売上は95億円、営業利益は13.6億円、営業利益率は14%になる。過去12年で最も高い2023/03期の12.7%を超える水準で、アパレルが好転する場合だけに起こりうる。配当性向は6割に引き上げられる。
- 婦人服・ファッション雑貨の卸売(アパレル):数量 156(推定の販売点数(万点))× 価格 0.46(1点あたりの卸売上(万円。10年で1.25倍。卸値は物価に届かない))→ 売上 71 億円・営業利益 2 億円。新ブランドが当たり、点数の減りは1割にとどまる。営業利益率3%
- テキスタイル(生地の卸売):数量 110(推定の販売数量(万メートル))× 価格 0.09(1メートルあたりの売上(万円。10年で1.25倍))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。新しい販路が開け、数量は横ばい。営業利益率5%
- エステート(自社ビルの賃貸):数量 16,060(外部への貸付面積(㎡))× 価格 9.18(1㎡あたりの年間賃料(万円。10年で1.25倍。既存契約の改定が遅れる))→ 売上 15 億円・営業利益 11 億円。本社の空き区画を貸し出し面積が1割増える。賃料は物価並み。営業利益率75%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 7.60% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)112 億円。全体の PER 13.16 倍、時価総額 246 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新ブランドpierre cardinとLETICIAが売上を押し上げ、アパレルが黒字に戻る筋書き。ただし売上は10年の年率-4.4%で縮んでおり、これを覆す材料はまだ開示にない。営業利益率は14%台と過去12年の山12.7%を超えるため、薄く6%とした。
やや楽観 18% やや楽観:アパレルは赤字を脱し、賃貸の増収が支える 利益 10 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 1,401 円224 億円
アパレルは点数が2割弱減る。新ブランドが縮小の速度を弱め、赤字から脱して小さな黒字に戻る。
エステートは、本社の空き区画の一部を貸して面積が5%増える。賃料は物価に届かない1.28倍で、賃貸の営業利益は10億円になる。
売上は86億円、営業利益は11.3億円、営業利益率は13%。2018/03期から2019/03期の12%台に並ぶ水準だ。純利益は10億円で、配当性向を5割台半ばまで高め、自己資本は約273億円に積み上がる。
ただし、事業のROEは5%台と資本コストの8.0%に届かない。余った現金は積み上がり続け、価値の主役は賃貸ビルと現金のままだ。
- 婦人服・ファッション雑貨の卸売(アパレル):数量 142(推定の販売点数(万点))× 価格 0.45(1点あたりの卸売上(万円。10年で1.25倍。卸値は物価に届かない))→ 売上 64 億円・営業利益 1 億円。点数は2割弱減るが、赤字を脱して営業利益率1.5%
- テキスタイル(生地の卸売):数量 101(推定の販売数量(万メートル))× 価格 0.09(1メートルあたりの売上(万円。10年で1.25倍))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。数量は1割弱減。営業利益率4.5%
- エステート(自社ビルの賃貸):数量 15,330(外部への貸付面積(㎡))× 価格 8.90(1㎡あたりの年間賃料(万円。10年で1.25倍。既存契約の改定が遅れる))→ 売上 14 億円・営業利益 10 億円。空き区画の一部を貸し、面積5%増。賃料は物価に届かない1.28倍。営業利益率74%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 7.60% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)111 億円。全体の PER 13.16 倍、時価総額 224 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027/03期の会社予想は営業利益9億円で、売上は+2%。足元の第1四半期は売上が横ばい(+0.3%)。アパレルの減少が止まり赤字が小さくなる筋書きで18%とした。
中立 36% 中立:アパレルは細り、賃貸ビルが利益を支え続ける 利益 8 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 1,239 円198 億円
アパレルは点数が10年で4分の1減る。国内の婦人服は人口減少の影響を受け、売上は2015/03期の128億円から2026/03期の78億円まで縮んだ。この流れが続く。卸値は物価に届かない1.25倍で、固定費の重さが残り、営業利益率は-1%と小さな赤字が続く。
一方、エステートは堅い。貸付面積は変わらず、賃料は既存契約の改定が遅れて1.25倍。賃貸の営業利益は9.3億円になり、全社の営業利益の100%を超える。
売上は78億円、営業利益は8.8億円、営業利益率は11.4%。2027/03期の会社予想(営業利益9億円)とほぼ同じ水準だ。純利益は8億円台で、このうち1.5億円ほどは余った現金の利息である。配当性向は5割で、現金は10年で約109億円に積み上がる。
- 婦人服・ファッション雑貨の卸売(アパレル):数量 130(推定の販売点数(万点))× 価格 0.44(1点あたりの卸売上(万円。10年で1.25倍。卸値は物価に届かない))→ 売上 57 億円・営業利益 −1 億円。点数は10年で4分の1減る。価格は卸値の上げが物価に届かず1.25倍。営業利益率-1%
- テキスタイル(生地の卸売):数量 93.2(推定の販売数量(万メートル))× 価格 0.09(1メートルあたりの売上(万円。10年で1.25倍))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。数量は15%減。営業利益率3%
- エステート(自社ビルの賃貸):数量 14,600(外部への貸付面積(㎡))× 価格 8.69(1㎡あたりの年間賃料(万円。10年で1.25倍。既存契約の改定が遅れる))→ 売上 13 億円・営業利益 9 億円。面積は横ばい。賃料は既存契約の改定が遅れ1.25倍。営業利益率73%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 7.60% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)109 億円。全体の PER 13.16 倍、時価総額 198 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:賃貸ビルが営業利益の大半を稼ぎ、アパレルが細りながら損益ゼロ近辺で続く姿。過去12年の営業利益は8〜14億円の幅で推移した。中立の営業利益率11.4%は山の12.7%以下で、最も厚い36%とした。
やや悲観 27% やや悲観:アパレルの赤字が賃貸の稼ぎを食う 利益 6 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 871 円139 億円
アパレルの点数は4割近く減る。卸値は物価に届かない1.2倍で、固定費が重く営業利益率は-5%まで落ちる。損失は年2億円を超える。
エステートも傷む。築年が進み空室が増え、賃料は1.15倍にとどまる。賃貸の営業利益は7.8億円まで減るが、それでもアパレルの損失を上回る。
売上は62億円、営業利益は5.5億円、営業利益率は8.8%。純利益は6億円弱で、配当は純利益の45%。事業のROEは2%台に落ちる。
安全域は現金にある。余った現金は約100億円残り、株主に戻るかどうかが価値を分ける。アパレルの赤字が年2億円を超えても、現金の利息と賃貸の稼ぎで全体は黒字を保つ。ただし、そこから新しい成長は生まれない。
- 婦人服・ファッション雑貨の卸売(アパレル):数量 107(推定の販売点数(万点))× 価格 0.42(1点あたりの卸売上(万円。10年で1.25倍。卸値は物価に届かない))→ 売上 45 億円・営業利益 −2 億円。点数は4割近く減り、固定費の重さで営業利益率-5%
- テキスタイル(生地の卸売):数量 76.8(推定の販売数量(万メートル))× 価格 0.08(1メートルあたりの売上(万円。10年で1.25倍))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量3割減、営業利益率1%
- エステート(自社ビルの賃貸):数量 14,162(外部への貸付面積(㎡))× 価格 7.99(1㎡あたりの年間賃料(万円。10年で1.25倍。既存契約の改定が遅れる))→ 売上 11 億円・営業利益 8 億円。築年の進みで空室が増え、賃料は1.15倍にとどまる。営業利益率69%
倍率:事業の ROE 2.7%。k を大きく下回り、アパレルの赤字が続くので、上限 12.5 倍の 7 割の 8.75 倍に置いた。引き上げはしていない。
確率:アパレルは2025/03期に営業利益0.45億円まで落ち、2026/03期は赤字になった。この流れが続き、赤字が賃貸の稼ぎを削る筋書きは自然で、中立より少し薄い27%とした。
悲観 13% 悲観:アパレルの赤字が膨らみ、賃貸も傷む 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 507 円81 億円
アパレルの点数は半分以下に落ちる。販売員の費用や在庫の負担が削れず、売上30億円で3.6億円の赤字が出る。テキスタイルも半減して小さな赤字になる。
エステートも、貸し面積が8%減り、賃料は物価に届かない1.05倍。修繕費と固定資産税の増加で営業利益率は62%まで下がり、賃貸の営業利益は6億円にとどまる。
売上は44億円、営業利益は2.2億円と、賃貸ビルの稼ぎもアパレルの赤字でほとんど消える。この状態の価値は、持っている現金・投資有価証券・賃貸ビルで支えられる。ただし、現金の使い道を決めるのは経営陣で、少数株主は取り出せない。
2021/03期の営業利益ゼロは、売上が3割減るとアパレルが赤字になることを示した。ここでは、その状態が長く続く。
- 婦人服・ファッション雑貨の卸売(アパレル):数量 77.8(推定の販売点数(万点))× 価格 0.39(1点あたりの卸売上(万円。10年で1.25倍。卸値は物価に届かない))→ 売上 30 億円・営業利益 −4 億円。点数は半分以下になり、販売の費用が削れず赤字。営業利益率-12%
- テキスタイル(生地の卸売):数量 54.9(推定の販売数量(万メートル))× 価格 0.07(1メートルあたりの売上(万円。10年で1.25倍))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量は半減し、小さな赤字
- エステート(自社ビルの賃貸):数量 13,432(外部への貸付面積(㎡))× 価格 7.30(1㎡あたりの年間賃料(万円。10年で1.25倍。既存契約の改定が遅れる))→ 売上 10 億円・営業利益 6 億円。貸し面積が8%減り、賃料は1.05倍。修繕と税で営業利益率62%
倍率:事業の稼ぐ力(事業の純利益 約 2 億円 ÷ k)では約 24 億円にしかならない。そこで売れる資産・現金を床にした。PBR は床の約 81 億円を今の自己資本 231.2 億円で割った 0.35 倍。
確率:点数が半分以下になり、固定費が重く赤字が膨らむ筋書き。2021/03期のコロナ禍では営業利益がゼロまで落ちた実績がある。賃貸ビルが残るため倒れる形ではなく、13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
婦人服・ファッション雑貨の卸売(アパレル)
婦人服とファッション雑貨を、百貨店・専門店・ショッピングモールなどに卸す。自社ブランドと海外コラボのブランド。
| 数量推定の販売点数(万点) | 価格1点あたりの卸売上(万円。10年で1.25倍。卸値は物価に届かない) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 173 | 0.35 | 61 | 0 |
| 10 年後 中立 | 130 | 0.44 | 57 | −1 |
取り方:アパレルの売上は60.5億円、営業損益は-0.41億円(有報)。点数と単価は開示されない。婦人服の卸の1点あたりの卸売上を0.35万円と仮定し、売上から点数を逆算した(推定)。仕入高は24.0億円で、売上総利益率は高い。
テキスタイル(生地の卸売)
子会社のポーンが、生地を卸す。
| 数量推定の販売数量(万メートル) | 価格1メートルあたりの売上(万円。10年で1.25倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 110 | 0.07 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 93.2 | 0.09 | 8 | 0 |
取り方:テキスタイルの売上は7.68億円、営業利益は0.32億円(有報)。数量は開示されない。1メートルあたり0.07万円と仮定し、売上から逆算した(推定)。
エステート(自社ビルの賃貸)
東京本社(品川区)、大阪店(吹田市)、京都本店(下京区)のビルと、港区の賃貸専用地を貸す。
| 数量外部への貸付面積(㎡) | 価格1㎡あたりの年間賃料(万円。10年で1.25倍。既存契約の改定が遅れる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14,600 | 6.95 | 10 | 8 |
| 10 年後 中立 | 14,600 | 8.69 | 13 | 9 |
取り方:エステートの売上は10.15億円、営業利益は8.08億円(有報)。貸付面積は東京2,247㎡、大阪6,794㎡、京都5,559㎡の計14,600㎡(有報の設備の状況)。港区の賃貸専用地は面積が不明で、面積には含めず、賃料にだけ含まれる。1㎡あたりの賃料は売上÷面積で逆算した(推定)。
リスクと懸念
アパレルの赤字の定着
売上は10年の年率-4.4%で縮み、2026/03期は営業赤字になった。固定費の重さが残り、点数がさらに減ると、赤字が賃貸の稼ぎを食う。
現金が戻らない
純現金94億円は10年間減っていない。ROEが2.7%と資本コストを下回る状態が続き、現金は事業の外に積み上がる。
賃貸ビルの老朽化と空室
東京・大阪・京都の自社ビルは築年が進む。修繕・更新の費用は建築費の上昇で膨らみ、空室が増えれば賃料が下がる。
海外調達
生産の大部分は中国。輸出入規制、中国経済、災害が調達を止める恐れがある。為替は150円の固定で見たが、動けば原価が振れる。
政策保有株の値動き
上場153銘柄、30.7億円を持つ。株価が下がれば自己資本が減り、配当の受け取りも減る。
ガバナンスと持ち合い
大株主に友好的な持ち合いの会社が並ぶ。物言う株主が現れても、提案が通るとは限らない。
今後の分かれ目
- 新ブランドが定着し、アパレルが営業黒字に戻る
- 営業利益率は13%台に乗り、やや楽観から楽観の筋書きに寄る。
- アパレルの売上減が続き、赤字が年2億円を超える
- 営業利益率が9%を割り、やや悲観の筋書きに寄る。
- 自社株買いや増配で、余った現金を大きく減らす
- 現金の戻り方が上がり、価値が上振れる。
- LNSマネジメントが現金の還元を求める提案を出す
- 他の大株主の賛否を見る。賛成が広がれば、還元が進む。
- TOBや買収の提案が出る
- 取引の価格が決まる。現金の評価が市場に織り込まれているかを見る。
- 賃貸ビルの空き区画の貸出が進む
- 貸付面積が増え、営業利益が1〜2億円上積みされる。
見ておくもの
- 2027/03期の営業利益(会社予想9億円)と、アパレルの損益
- 新ブランド(LETICIA、pierre cardin)の売上と、アパレルの点数
- 配当性向(約46%)と、自社株買いの有無
- LNSマネジメントなど大株主の保有比率の変化
- エステートの貸付面積と賃料
倍率と資本コストの決め方
売上はアパレル・テキスタイル・エステートの3つを、推定の数量(点数・メートル・貸付面積)と単価で積み、単価は物価の1.34倍に届かない1.05〜1.32倍に置いた(アパレルの卸値は上げにくく、賃料は既存契約の改定が遅れる)。倍率は式(ROEがk以下なら1÷kが上限)の7〜9割に置いた。余った現金は戻り方0.5で別に足し、賃貸ビルの含み益は稼ぎとして利益に入っているので足していない。今・過去・同業のPER・PBRは根拠にしていない。悲観は余った現金・投資有価証券・賃貸の稼ぎからアパレルの赤字を引いた額を床にし、帳簿のPBRの底は使っていない。営業利益率は中立で過去12年の山(12.7%)以下に抑えた。今の株価(PBR0.8倍)には寄せていない。新リース会計基準(2028/03期から)は、店舗を借りる会社の数字の形を変えるが、同社は主に自社ビルを持つ貸し手であり、影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.25→13.16 倍・やや楽観 PER 10.62→13.16 倍・中立 PER 10.25→13.16 倍)。
資本コスト 7.6% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.5% = 8.0%。新ブランドの成否や物言う株主の動きといった個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.60%。