結論
クラシコは、医師や看護師が着る白衣・スクラブを、デザインと着心地で差別化して販売する医療衣料ブランドである。筆者の結論は「やや割高」だ。医療現場で長く必要とされる商品を持ちながら、2026年に事業計画が大きく崩れたため、利益の再現性をまだ信用し切れない。
2025年10月期は売上36.3億円、営業利益1.6億円、純利益1.7億円だった。ところが2026年9月に公表した通期予想は、売上29.2億円、営業損失5.5億円、純損失12.0億円に修正された。主因は患者衣「lifte」の受注失速、ECの販促効率悪化、海外展開の遅れ、在庫処分である。特別損失の一部は一過性だが、売上の減少と本業の赤字は一過性と決めつけられない。
投資対象として魅力が残るのは、医療従事者向けの直接販売である。顧客との接点、繰り返し購入される衣料、専門性の高い商品開発には蓄積がある。国内の医療衣料市場における同社のシェアもまだ小さく、販売枚数を増やす余地は残る。ただし、2026年の値引き依存は、ブランドが十分な値決め力を確立したとは言い切れない証拠でもある。
10年後の中立では、患者衣を2025年の好調水準まで無理に戻さず、白衣・スクラブの販売量拡大を収益の中心に据える。売上は約51億円、営業利益約3.5億円、純利益約2.4億円となる。確率を加重して資本コストで割り引いた現在価値は約13.5億円で、基準時価総額17.2億円を約21%下回る。ブランドが生き残る可能性は高いが、経営再建の成功を確認する前に積極的な価格を払う理由は乏しい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、医療従事者の制服という商品の寿命は長い。10年後にも白衣とスクラブは必要であり、着心地のよい品を繰り返し買う顧客を抱えられれば、長期の収益源になる。2025年のリピート率51%、医療従事者との直接の接点、商品改良の蓄積は、同社の事業が単なる流行服の売買ではないことを示している。
しかし、ブランドが存在することと、株主が豊かになることは別である。売上を増やすために広告を使い、在庫を積み上げ、十分な利益を残せなければ、顧客に好かれる商品であっても株主の持ち物としての価値は小さくなる。2026年には、まさにこの問題が顕在化した。2025年の利益を起点として毎年伸ばすより、再建後に残る利益を評価する方が安全だ。
最大の難所は「lifte」である。入院セットの普及には長期の意味があるが、施設の導入ペースで卸売の発注が変わり、大口取引先の意向に業績が左右される。医療従事者が自分の意思で同じスクラブを買い足す商売と、病院の予算に沿って患者衣を一括調達する商売とでは、需要を予測する確かさが違う。後者の利益には慎重な値を払いたい。
筆者が持ち続けたいのは、再購入客を増やしながら広告費率と在庫回転を改善できるブランドである。横浜店舗の撤退や在庫処分だけでは、その能力の証拠にならない。2027年以降に通常の営業活動から現金が生まれ、追加増資に頼らず国内のシェアを広げられるなら、判断は変わる。今は好転の可能性を認めながらも、資本配分の再現性と安全域を重視する。
何で稼ぐ会社か
事業の実態は、一般的なファッション衣料ではなく、医療現場に特化した機能性衣料の企画・販売である。医師や看護師が着る白衣とスクラブでは、デザイン、伸縮性、洗濯耐久性、着心地を組み合わせて高価格帯の商品を販売する。生産の多くは外部に委託し、同社は商品企画、ブランド、販売経路、顧客情報を握る。2025年10月期の売上36.3億円を、以下では経済性の異なる五つの販売経路に分けて考える。会社の会計上はメディカルアパレル事業の単一セグメントであり、この五区分は分析用である。
国内自社ECは2025年に約10.4億円を売り上げた。買い手は主に医療従事者で、商品開発への意見を直接集められ、再購入を促せる。国内の実店舗は約3.7億円で、丸の内、大阪、名古屋などを通じて試着機会とブランド認知を提供する。医療法人や販売代理店への国内法人販売は、患者衣を除いて約6.7億円と推定され、まとまった数量を販売できる反面、個人向けより価格競争が強い。
患者衣「lifte」は最大の不安材料である。入院セット事業者のエランと共同開発し、同社へ卸した衣料を病院などの利用者が使う。2025年のエラン向け売上は約14.0億円で全社の38.5%を占めたが、新規病院への導入時期によって発注量が大きく変わる。導入施設が増えることと、クラシコへの毎年の注文額が安定することは同義ではない。2026年の失速はその違いを露わにした。
海外は2025年に約1.7億円とまだ小さい。中国、アジア、中東に加えて北米やオーストラリア向け越境ECを始めたが、販路の拡大と黒字化は別問題である。2026年には中国の個人向け販売から撤退し、広告投資を絞る方針へ転じた。海外を成長の柱にできるかは、注文が増えること以上に、販売後の利益が残るかで判断する必要がある。
優良さと弱いところ
最大の強みは、職業上の必需品にブランド価値を付けたことである。医療衣料は長時間着用され、洗濯と買い替えが繰り返される。会社資料によれば、2025年時点の会員数は約11.1万人、リピート率は51%だった。定番白衣の素材や形を改良してきた蓄積もあり、顧客の好みを把握して次の商品に反映できる。一定のブランド上の堀、つまり競合が簡単には奪えない強みは存在する。
ただし、それは独占的な堀ではない。ナガイレーベン、KAZEN、FOLKなどの業務用衣料メーカーには、病院との取引関係、代理店網、供給の安定性がある。米国のFIGSのように医療衣料のブランド化を進める競合もある。クラシコの価格が高くても購入したい顧客は存在するが、2026年には自社ECで値引きやクーポンへの依存が強まり、粗利率が悪化した。リピート率と価格決定力は区別して評価したい。
資本効率も確立途上である。2024年と2025年の黒字だけを見ると高いROEに見えるが、それ以前には赤字が続いた。2026年7月末の自己資本は約7.5億円まで減り、上場に伴う増資を受けてもなお資本を毀損している。商品は小さく軽いが、販売前に在庫を抱え、広告費を先払いし、売れ残りを処分する必要がある。設備の少ないブランド事業だからといって、オーナー利益が自動的に大きくなるわけではない。
AIエージェント代替の指定された事業類型には該当しない。稼ぎの本体は人月、業務ソフトの席、広告運用の受託ではなく、現物の白衣・スクラブ・患者衣の販売だからだ。AIによる商品企画支援、広告運用や在庫管理の省力化は機会となるが、医療衣料そのものの需要がAIエージェントに置き換わるとは考えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の医療衣料は、一般のアパレル市場よりも人口減少への耐性がある。診療や介護が続く限り制服は必要であり、洗濯、傷み、サイズ変更によって買い替えが生じる。会社が引用する日本ユニフォーム協議会の資料では、2025年の国内メディカルアパレル市場は約575億円である。クラシコの国内売上から患者衣を除いた約20.6億円は、その約3.6%に相当する。これは会社の集計方法によるシェアであり、競合各社が公表する別の制服市場のシェアと単純に比較できない。
市場ではナガイレーベンをはじめとする既存制服メーカーの代理店網が強い。KAZENやFOLKも病院・施設向けで競合する。一方、クラシコは自社ECと店舗で医療従事者本人に直接訴え、指名買いを増やす戦略を採る。国内の市場数量そのものが急増するとは考えず、中立では、既存メーカーからの小幅なシェア獲得と買い替え需要を販売数量の伸びの根拠とした。国内の医療衣料市場が実質横ばいで推移し、価格が物価並みに上がるなら、10年後の名目市場規模はおよそ770億円になる。中立の国内医療従事者向け売上約36億円は、シェア約4.7%に当たる。
患者衣は、別の市場として扱う必要がある。2025年の「lifte」導入施設数は425施設で、国内の入院セット導入済み施設5,355施設に対して7.9%だった。ただし、これは施設数の浸透率であって、患者衣の売上高シェアではない。会社が提示する約1.5兆円という潜在市場も衣料だけではなく、タオルや日用品などを含む入院セット全体の推計である。これをすべて患者衣の獲得可能市場とみなすのは過大評価だ。
海外では、会社資料が世界の医療用スクラブ・白衣市場を2025年に590億米ドルと紹介している。しかし、市場の大きさだけでクラシコが販路を築けるわけではない。現地の販売網、医療従事者の好み、サイズ体系、規制、知名度が壁になる。為替は共通前提の1ドル150円に固定し、成長は販売枚数と実際に通せる単価から考える。10年より先は国内の病院予算と人口制約が残るため、物価上昇率を下回る名目成長に落ち着くとみる。
資本政策と M&A
経営陣がまず取り戻すべきものは、成長率ではなく投じた資本への規律である。2025年にはMNインターファッションとの資本業務提携を進め、2025年11月の上場と12月の第三者割当増資で資金を調達した。それでも2026年の大幅な業績下方修正によって、調達資本のかなりの部分が損失の穴埋めに回る格好となった。少なくとも現時点では、上場後の資本配分が株主価値を高めたとは評価できない。
2026年9月に発表した「Action Program 2027」は、同年を守りの期間、翌年を再成長の期間とする計画である。横浜店舗から撤退し、中国の個人向け販売をやめ、広告費を抑え、在庫を処分する。棚卸資産処分に伴う損失4.25億円、店舗撤退費用約0.21億円などを計上した。商品を値引き販売してブランドを傷めるより、処分して立て直す判断には合理性がある。ただし、初めから過剰な在庫を作らない仕組みの構築こそ重要だ。
この計画に、達成を約束する中期の売上高、営業利益、ROE、配当性向、DOE、自社株買い金額の具体的な数値は確認できない。中期の株主還元は数字の約束なしであり、2026年10月期の配当予想もゼロである。したがって、10年の株主還元を大きく先取りしない。増分の投下資本利益率が資本コストを継続して上回った場合に限り、再投資を評価すべきだ。
大株主には創業者、エラン、MNインターファッションが並ぶ。事業提携は調達と販路に役立つ半面、エランが大株主で最大級の取引先でもある構造では、発注条件が少数株主にとって妥当かを継続的に確認する必要がある。現時点で公表されたTOB・MBO・上場廃止予定および継続企業の前提に関する注記は確認できず、分析対象とする。将来の資本再編や買収は可能性として考慮するが、具体的な買付価格を前提にはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
医療衣料のブランド化には、まだ長い成長余地がある。国内のメディカルアパレル市場は約575億円で、クラシコのシェアは約3.6%にすぎない。既存大手が病院への代理店販売を得意とするのに対し、クラシコは医療従事者本人に選ばれる高価格帯の商品を持つ。着心地を気に入った顧客は買い替えを重ねるため、最初の購入客を獲得できれば長期の売上につながる。高いリピート率は、ブランドが医療の現場で受け入れられている証拠である。
2026年の赤字には、多額の在庫処分費用や税効果の見直しが含まれる。これらは毎年繰り返す費用とは限らず、旧商品の処分によって翌年以降の利益率が改善する可能性がある。横浜の不採算店を閉じ、中国の収益性の低い個人向け販路から撤退すれば、成長のためだけに使っていた費用を減らせる。新規顧客の獲得を広告に頼る構造から、既存顧客の再購入を増やす構造に変えられれば、売上の拡大以上に利益が伸びる。
エランとの提携は、短期には発注変動の原因でも、長期には入院セットという大きな流通網への入口である。施設導入の再加速と補充注文の安定化が両立すれば、患者衣も収益源として復活する。海外では日本の医療従事者向け商品を評価する顧客層を着実に広げられる余地があり、海外売上が小さい現在は成功の余地も大きい。
在庫と広告への投資が正常化した後は、工場を大規模に所有しない事業構造が資本効率の改善につながる。商品を供給するMNインターファッションの支援も生きる。長い目では、2026年を再建のための損失処理の年と捉え、その後の利益回復を評価すべきだ。
慎重な見方
2026年の問題を一過性の損失処理で片付けるのは危険である。会社は上場時に示した2026年10月期の売上予想42.5億円を29.2億円へ引き下げた。本業の営業損益も大幅な赤字へ転じている。売上の未達、広告効率の悪化、在庫の過剰、海外受注の遅れが同時に起きた事実は、成長計画の実現性を再検討すべきことを示す。利益率の回復を計算する前に、販売予測と仕入れ管理の信頼性を問う必要がある。
特に「lifte」は、2025年の会社売上の約4割を占めた。最大取引先であるエランの病院導入計画に発注が左右され、クラシコ自身が発注時期や数量を決められない。施設数が増えても、初回導入時の大量注文は何度も発生しない可能性がある。2025年の売上を定常的な需要と誤認すると、将来の利益を大きく見誤る。
国内の医療衣料には、ナガイレーベン、KAZEN、FOLKなどの強い既存供給者がいる。病院は制服のデザインだけでなく、価格、納期、耐久性、安定供給を重視する。高価格帯の商品が好まれる市場は存在するが、会社が値引きに依存したことは、定価販売を維持できる顧客層の規模に限界がある可能性も示している。海外で認知を築くための費用は、利益が出る前に現金を消費する。
財務上の余裕も薄くなった。2026年7月末の現金預金は約5.9億円あるが、借入金の合計は約6.2億円で、ネットではほぼ相殺される。大量の在庫を帳簿どおりに現金化できるとも限らない。再度大きな損失が出れば、増資による既存株主の希薄化や、提携先との不利な条件の再編を迫られる。ブランドの存続と、現在の株主の持分価値の存続は分けて考えるべきだ。
どちらに重みを置いたか
商品そのものの需要とブランドの蓄積では強い見方に説得力がある。一方、2026年の業績予想の大幅修正、患者衣の注文集中、在庫処分、資本毀損という事実は、慎重な見方により強い根拠を与えている。確率は楽観側28%に対して悲観側42%と下に寄せた。これは医療衣料が消えると考えるからではなく、会社が再建に成功するまでの損失と、成功しても既存株主に利益が十分残るかという不確実性を反映したためである。中立での利益回復は認めるが、それだけでは現在の時価総額に十分な安全域を見いだせない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/10 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,482 円31 億円(+ 還元の換算額還元の合計 132 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 712 円15 億円、今との差 −10.7%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,990 円103 億円 | 702 円15 億円 | +614.3% | +24.4% | 569 円12 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,663 円55 億円 | 225 円5 億円 | +262.4% | +14.6% | 520 円11 億円 |
| 中立 | 30% | 1,538 円32 億円 | 71 円1 億円 | +101.8% | +7.5% | 483 円10 億円 |
| やや悲観 | 27% | 145 円3 億円 | 0 円0 億円 | −81.8% | −15.7% | 39 円1 億円 |
| 悲観 | 15% | 19 円0 億円 | 0 円0 億円 | −97.6% | −31.1% | 3 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,482 円31 億円 | 132 円3 億円 | +102.5% | +7.7% | 1,614 円33 億円 |
今の株価時価総額 797 円16 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 再建が成功し、医療衣料ブランドが国内外に定着 利益 8 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,990 円103 億円
2026年の在庫処分と販路整理が転機になる。自社ECでは、顧客の購買履歴に合わせた再購入の提案が定着し、広告費を過度に増やさずに販売枚数が増える。医療従事者が同僚へ薦める高価格帯の定番商品として、クラシコが国内での存在感を高める。楽天市場やAmazonの入口商品から本来の高付加価値商品へ移る顧客も増える。
直営店舗は不採算店の追加出店を避け、試着とファンづくりに役割を絞る。ナガイレーベンなどの既存供給者が強い病院向け市場でも、代理店と医療法人に選ばれる商品が増える。国内医療従事者向けの売上は約61億円に伸び、実質横ばいの業界市場を前提にしてもシェアの顕著な拡大が必要になる。
患者衣lifteではエランとの共同開発が再び実を結び、新規病院への導入だけでなく既存施設への補充発注も安定する。海外は規律ある販路拡大によって黒字化する。2026年の損失を埋めた後は高い投下資本利益率が定着し、配当と自社株買いも始まる。新株予約権の行使による希薄化は生じるが、払い込み資金も会社に入る。大規模な買収に頼らず、専門ブランドとして成長する10年になる。
- 国内自社ECの白衣・スクラブ:数量 18.3(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.88(1点当たり実現売上・万円/点)→ 売上 34 億円・営業利益 8 億円。販売点数は2025年の2.2倍、単価は1.5倍。再購入客の増加と値引き依存からの脱却が前提。
- 国内直営店舗:数量 4.9(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 2.18(1点当たり実現売上・万円/点)→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。優良店舗の販売数量が増え、賃料負担を吸収。2025年比で数量2倍。
- 国内医療法人・代理店向け衣料:数量 15.1(卸売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.09(1点当たり卸売上・万円/点)→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。医療法人・代理店向けで採用を拡大。数量は1.8倍、単価は1.36倍。
- エラン向け患者衣lifte:数量 43.2(患者衣の卸売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 0.62(1点当たり卸売上・万円/点)→ 売上 27 億円・営業利益 3 億円。エランの導入施設数と補充発注が両方伸び、2025年比数量1.4倍。
- 海外の白衣・スクラブ販売:数量 5.1(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 2.00(1点当たり実現売上・万円/点、円換算)→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。海外の小さい基盤から数量4.5倍。販売費を吸収して黒字化。
倍率:k9.0%、事業ROE約21.6%、moat normalの残存割合1/2からRONIC約15.3%。g_long2.5%を用い、正当化PER=(1−g/RONIC)/(k−g)≒12.87倍。市場の過去倍率でなく稼ぐ力から評価し、利益の質をさらに手動で割り引かない。
確率:既存顧客の再購入、国内法人販路、患者衣の再成長、海外の黒字化が同時に成功する筋書きである。商品の独自性はあるが、2026年の計画未達を考えると、長期の連続成功には限定的な確率を割り当てる。
やや楽観 18% 国内の販売力が戻り、患者衣も一定の回復 利益 4 億円 · PER 12.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,663 円55 億円
広告費と在庫を管理する仕組みが改善し、2027年以降、会社は再び安定した黒字を出す。自社ECの顧客情報を活用した再購入が増え、定番スクラブが国内で着実に浸透する。楽天市場やAmazonでの販売は、新規顧客にブランドを知ってもらう入口として機能するが、売上を伸ばすための過度な値引きには戻らない。
直営店舗は採算のよい拠点に絞られ、病院向けの白衣・スクラブでも代理店経由の取引を広げる。国内市場の数量全体が横ばいでも、ブランドの認知向上によって同社の販売点数は増える。患者衣lifteは2025年の特需を恒常的な需要とみなさず、導入施設と補充需要が整った結果として、10年後には同年に近い数量まで戻る。
海外では北米やアジアの一部地域が黒字化する。ただし世界的な強いブランドになるところまでは見込まない。利益が安定し、少額の配当や自社株買いを始める一方、成長を優先する資本配分も残る。大規模な買収は行わず、必要な新株予約権が行使された後の既存株主の取り分も明示する。高収益企業には戻るが、まだ競争から自由ではない事業となる。
- 国内自社ECの白衣・スクラブ:数量 14.5(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.73(1点当たり実現売上・万円/点)→ 売上 25 億円・営業利益 6 億円。販売数量1.75倍、単価1.38倍。値引きを抑えて再購入を増やす。
- 国内直営店舗:数量 3.7(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 2.04(1点当たり実現売上・万円/点)→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。優良店への集中で販売数量1.5倍、単価1.36倍。
- 国内医療法人・代理店向け衣料:数量 12.2(卸売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.07(1点当たり卸売上・万円/点)→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。法人採用が増え、数量1.45倍、単価1.34倍。
- エラン向け患者衣lifte:数量 29.3(患者衣の卸売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 0.60(1点当たり卸売上・万円/点)→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。2025年の初回導入集中は再現しないが、補充と新規導入で数量は当時の95%へ。
- 海外の白衣・スクラブ販売:数量 3.2(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.96(1点当たり実現売上・万円/点、円換算)→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。販路を選び、数量2.8倍。小幅な黒字化を実現。
倍率:k9.0%、ROE約19.0%、通常の堀によるRONIC約14.0%、長期g2.5%から正当化PER約12.63倍。営業回復後の純利益を評価し、成長期待を現在の市場倍率から逆算しない。
確率:2026年の損失処理後に固定費削減と再購入率改善が進むのは十分考えられる。一方、海外と患者衣の両方が計画どおりになる保証はないため、最良の筋書きよりも高いが過半にはならない確率とする。
中立 30% 患者衣は縮小したまま、医療従事者向け衣料が稼ぎを支える 利益 2 億円 · PER 11.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,538 円32 億円
会社は2026年の損失処理と横浜店舗の撤退を終え、2027年から数年間かけて通常の営業黒字を取り戻す。自社ECでは再購入を増やす仕組みが改善し、売上の増加より緩やかな広告費の伸びを実現する。低価格の入口商品と高価格の定番品の役割分担も進むが、競争がなくなるわけではない。医療従事者向けの商品は、病院の制服支給制度の外にある個人購入需要にも支えられて成長する。
国内の販売枚数は、自社ECで2025年比1.4倍、法人向けで1.2倍となる。市場全体の大幅成長ではなく、専門ブランドとしてのシェア上昇を主因とする。単価は基本的に物価上昇並みであり、高価格ブランドだからといってそれ以上の値上げを当然視しない。直営店舗は店舗数の拡大より採算改善を重視する。
患者衣lifteは2025年の導入特需を繰り返さない。2026年に失われた注文の一部は戻るが、長期の数量は2025年の約55%にとどまる。海外はゆっくり拡大し、小幅な営業黒字を生む程度に育つ。追加の大規模M&Aはせず、純利益の一部だけを還元し、残りを在庫・販路・システムへ再投資する。医療衣料のブランドとして生き残り、稼ぐ力を取り戻すものの、成熟した小規模企業としての利益に落ち着く。留保利益によって自己資本は厚くなるが、それに見合う収益力の向上は限定的である。
- 国内自社ECの白衣・スクラブ:数量 11.6(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.68(1点当たり実現売上・万円/点)→ 売上 19 億円・営業利益 4 億円。数量1.4倍、価格1.34倍。国内シェアの緩やかな改善と物価並みの単価上昇。
- 国内直営店舗:数量 2.9(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 2.01(1点当たり実現売上・万円/点)→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。撤退後の優良店を中心に数量1.2倍、価格1.34倍。賃料は費用として残す。
- 国内医療法人・代理店向け衣料:数量 10.1(卸売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.07(1点当たり卸売上・万円/点)→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。法人の数量1.2倍、単価1.34倍。既存メーカーから小幅にシェアを獲得。
- エラン向け患者衣lifte:数量 17.0(患者衣の卸売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 0.60(1点当たり卸売上・万円/点)→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。2025年の新規導入特需を平準化。数量0.55倍、単価1.34倍。
- 海外の白衣・スクラブ販売:数量 2.4(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.89(1点当たり実現売上・万円/点、円換算)→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。海外の数量2.1倍、単価1.30倍。競争と現地費用で値上げは物価未満。
倍率:2026年の予想自己資本6.25億円を起点に、2027~2036年の純利益累計約20.5億円から還元1.5億円を引き、新株予約権の行使払込資金約0.51億円を加えると、2036年の自己資本は約25.76億円となる。2036年のROEは2.4÷25.76で約9.32%となり、資本コスト9.0%をわずかに上回る。moat normalの残存割合1/2からRONICは約9.16%。長期名目成長率g2.5%を用いた正当化PER=(1−g÷RONIC)/(k−g)は約11.19倍であり、上限からさらに手動で値引きしない。自己資本の増加でROEが低下するため、修正前のPER12.35倍は維持しない。
確率:下に寄せる理由:2026年の売上予想が42.5億円から29.2億円へ修正され、患者衣の導入注文と在庫管理の予測が外れた。再建後の黒字化は認めるものの、患者衣が2025年水準へ必ず戻るとは考えず、安定黒字を実現する中心の筋書きに30%を与える。
やや悲観 27% ブランドは残るが、利益が資本コストを下回る 利益 0 億円 · PER 11.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 145 円3 億円
横浜店の撤退と在庫整理によって急激な損失は止まるが、国内ブランドの成長は想定ほど強くない。医療機関向けの制服市場ではナガイレーベン、KAZEN、FOLKなどが供給能力と販売網を維持し、クラシコの高価格帯商品の採用は一部に限られる。ECでは値引きを抑えると購入数が伸び悩み、集客費を減らしても十分な営業利益率を確保できない。
患者衣lifteは新規病院への導入が長期に低迷する。エランとの資本業務提携自体は続くが、既存施設の補充だけでは2025年の卸売額を支えられない。2036年の患者衣販売数量は2025年の約3割にとどまる。海外では中国の個人向け事業からの撤退後も販売の核を作れず、小さな赤字が残る。
直営店は追加閉鎖を避けながら縮小運営され、販管費と賃料が残る。このため、売上は名目31億円程度あっても営業利益は小さい。2027年から数年間の損失で自己資本は減り、その後に小幅黒字へ転じても配当は再開できない。会社は存続するが、新しい投資から高い利益を生む事業ではなくなり、10年後の価値は現在の時価総額より大幅に小さくなる。
- 国内自社ECの白衣・スクラブ:数量 9.1(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.51(1点当たり実現売上・万円/点)→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。数量1.1倍、価格1.21倍。競争で物価分の値上げを十分に通せない。
- 国内直営店舗:数量 2.1(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.82(1点当たり実現売上・万円/点)→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量0.85倍。店舗賃料と人件費が残り、採算が弱い。
- 国内医療法人・代理店向け衣料:数量 7.6(卸売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 0.98(1点当たり卸売上・万円/点)→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。病院向け競争で数量0.9倍、単価1.23倍。
- エラン向け患者衣lifte:数量 8.6(患者衣の卸売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 0.53(1点当たり卸売上・万円/点)→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。新規導入が低迷し数量は2025年の28%。価格も物価上昇に届かない。
- 海外の白衣・スクラブ販売:数量 1.0(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.70(1点当たり実現売上・万円/点、円換算)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。海外の販売数量は2025年を下回り、撤退費用と固定費の一部が残る。
倍率:2036年ROEは約8.8%で資本コスト9.0%を下回る。超過利益の成長を価値に数えず、PERの上限を1÷kの約11.11倍とする。これは現在の帳簿自己資本や市場の安値から決めた倍率ではなく、残った稼ぐ力の上限である。
確率:2026年の失速のうち一部が構造問題だった場合、医療従事者向けの販売は残っても、ECの広告費と店舗固定費を十分に吸収できなくなる。患者衣の発注変動は継続的な弱点であり、再建が部分的な成功に終わる確率を相応に高くする。
悲観 15% 医療衣料市場で競争に負け、追加増資で持分が薄まる 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 19 円0 億円
2026年の在庫処分を終えても商品企画と需要予測が改善せず、売れ残りと値引きが繰り返される。高価格帯の白衣・スクラブを好む顧客は残るが、医療機関の制服調達では価格と供給の安定性が優先される。ナガイレーベンなどの既存メーカーや価格の安い新規ブランドに顧客を奪われ、クラシコの国内市場シェアは後退する。ECの販売点数も2025年を大きく下回る。
エランとの患者衣取引は一部の既存施設への供給に縮小し、2025年の初回導入売上の大部分を失う。共同開発の契約関係は残っても、発注量の決定権を取り戻せない。海外販路も採算の悪化で整理を迫られる。店舗の家賃、人件費、必要な商品開発費は売上ほど速く減らず、営業損益は再び赤字に沈む。
損失が続き、会社は事業を存続させるため約10億円の新たなエクイティ調達や、提携先を含む資本再編を余儀なくされる。この金額と増資は将来の仮定であり、現在発表されているものではない。新たな投資家が資金を入れても、その後の事業価値は乏しく、既存株主の持分は大きく希薄化する。会社全体では在庫などを換金して負債を返した後の資産価値が下支えになるが、旧株主が受け取る取り分はさらに小さい。
- 国内自社ECの白衣・スクラブ:数量 5.4(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.38(1点当たり実現売上・万円/点)→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。シェア喪失で数量0.65倍、単価は10年で1.10倍にとどまる。
- 国内直営店舗:数量 1.1(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.65(1点当たり実現売上・万円/点)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。店舗の縮小と固定費負担で数量0.45倍、営業赤字。
- 国内医療法人・代理店向け衣料:数量 4.6(卸売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 0.88(1点当たり卸売上・万円/点)→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。主要法人顧客を失い数量0.55倍、卸価格の転嫁も弱い。
- エラン向け患者衣lifte:数量 3.1(患者衣の卸売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 0.49(1点当たり卸売上・万円/点)→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。2025年比数量0.10倍。初回導入特需が消失し補充需要も細る。
- 海外の白衣・スクラブ販売:数量 0.6(販売点数・万点/年、分析上の推計)× 価格 1.51(1点当たり実現売上・万円/点、円換算)→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。海外数量0.5倍、事業整理までの販売費が残る。
倍率:構造的赤字となり稼ぐ力から正の事業価値を見込みにくい。2025年10月期の自己資本14.14億円に対する0.0566倍は会社全体の資産換金価値約0.8億円を表示するための換算値であり、過去の株価や谷のPBRに基づくものではない。2036年の自己資本1.65億円へこの倍率を掛けない。
確率:医療衣料そのものは必要でも、特定ブランドが利益を出し続けるとは限らない。患者衣の大型顧客への依存、値引き競争、在庫再発、海外損失が重なる場合を想定する。2026年の資本毀損が明らかになったため、企業存続を疑う極端な事態を含む構造的敗北に15%を配分する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内自社ECの白衣・スクラブ
医療従事者本人に直接販売する主力チャネル。リピート購入と顧客情報が強みだが、集客広告と値引きの管理が採算を左右する。
| 数量販売点数・万点/年、分析上の推計 | 価格1点当たり実現売上・万円/点 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 8.3 | 1.25 | 10 | 3 |
| 10 年後 中立 | 11.6 | 1.68 | 19 | 4 |
取り方:2025年の国内EC売上約10.39億円は会社の販売経路別開示による。販売点数と実現単価は非開示である。白衣・スクラブの公開小売価格には1万円台を含む商品があり、割引・商品構成を考慮した分析用平均単価1.25万円を仮定して約8.31万点と逆算した。数量は推計で、会社発表の販売点数ではない。営業利益2.6億円は販路の貢献利益に近い分析用配賦で、全社費用は別の調整額へまとめる。
国内直営店舗
白衣・スクラブの試着、接客、ブランド体験を提供する販売経路。店舗賃料と人件費が固定費になる。
| 数量販売点数・万点/年、分析上の推計 | 価格1点当たり実現売上・万円/点 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 2.4 | 1.50 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.9 | 2.01 | 6 | 1 |
取り方:2025年の店舗売上約3.66億円は会社開示による。店舗別販売点数は開示されていないため、試着を伴う高価格商品の構成を考慮して平均単価1.50万円、販売数量約2.44万点と推計した。2026年9月に横浜店の撤退方針を公表しており、将来の数量には残る店舗の改善と販路の選択を反映する。営業利益は分析用の配賦推計。
国内医療法人・代理店向け衣料
患者衣lifteを除く白衣・スクラブなどの法人卸売。まとまった数量を取れるが、病院の予算と入札・代理店条件に左右される。
| 数量卸売点数・万点/年、分析上の推計 | 価格1点当たり卸売上・万円/点 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 8.4 | 0.80 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 10.1 | 1.07 | 11 | 1 |
取り方:2025年の国内法人販売約20.62億円から、エラン向け患者衣売上約13.90億円を除いた約6.72億円を起点とした。数量と卸単価は開示されないため、法人販売の値引きと品ぞろえを考慮した平均単価0.80万円から約8.40万点を逆算した。患者衣と他の法人衣料を分けることが重要である。営業利益は分析用配賦である。
エラン向け患者衣lifte
入院セット事業者エランと共同開発した患者衣の卸売。導入病院の追加と既存施設への補充発注が数量を決める。
| 数量患者衣の卸売点数・万点/年、分析上の推計 | 価格1点当たり卸売上・万円/点 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 30.9 | 0.45 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 17.0 | 0.60 | 10 | 1 |
取り方:2025年のエラン向け売上は有価証券報告書で13.97億円、成長説明資料では約13.9億円と開示される。ここでは患者衣とエラン向け販売を近似して13.90億円を用いる。卸売枚数・単価は開示されないため、分析上の仮定単価0.45万円から約30.9万点を逆算した。2025年は病院の初回導入注文が集中した期であり、翌期以降の恒常的な販売数量を意味しない。営業利益は分析用配賦である。
海外の白衣・スクラブ販売
中国・アジアなどの法人向け販売と海外EC。高価格帯の商品力を利用する一方、現地販売費と販路開拓費がかかる。
| 数量販売点数・万点/年、分析上の推計 | 価格1点当たり実現売上・万円/点、円換算 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 1.1 | 1.45 | 2 | −1 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 1.89 | 5 | 0 |
取り方:2025年の海外売上約1.65億円は会社開示による。販売数量・国別平均単価は非開示であり、国内の高価格商品と海外法人卸の混合を考慮した1.45万円から約1.14万点と推計した。海外先行投資の採算は会社が販路別に開示していないため、営業損益マイナス0.5億円は分析用の仮定である。将来の為替は1ドル150円で固定する。
リスクと懸念
患者衣lifteとエランへの集中
2025年のエラン向け売上は全社の約38.5%だった。エランは大株主で販売先でもあり、病院への新規導入が遅れるとクラシコの卸売数量が急減する。施設数が増えていても、初回導入で発生した大量注文を毎年の補充注文として繰り返せるとは限らない。エランの導入施設数だけでなく、クラシコへの発注額を確認すべきだ。
ブランドの値決め力と広告費
2026年には自社ECで値引きやクーポンへの依存が生じ、売上総利益率が低下した。高価格帯の衣料を扱っていても、広告費や値引きが増えれば顧客の支払額は事実上低下する。単価を上げた後の販売数量と粗利率を同時に維持できなければ、長期の高い利益率は実現しない。
在庫の評価損と資金流出
2026年には棚卸資産処分に伴う損失4.25億円を計上した。商品の流行が一般衣料ほど速くなくても、色、サイズ、素材、販路の選択を誤れば売れ残りは発生する。処分損を一過性として利益予想から除くだけでは不十分で、翌年以降の在庫回転と仕入れ量が改善したかを確認する必要がある。
追加増資と既存株主の希薄化
2026年7月末の現金預金と借入金はほぼ見合っており、純現金による厚い安全域はない。事業再建が長引けば、借り換えの条件悪化や新株発行が既存株主の取り分を損なう。既存の新株予約権にも潜在的な希薄化があり、強い回復の筋書きではその行使を考慮しなければならない。
海外展開の採算と現地競争
世界の医療衣料市場は大きいが、国内のブランド力をそのまま海外へ移せるわけではない。現地の病院調達慣行、FIGSなどの競合、サイズや仕様の違い、商標・物流・広告費が障壁になる。2026年に中国の個人向け販路から撤退した事実を踏まえ、海外売上の増加だけを成長の証拠とはしない。
店舗賃料と借り換え金利
2025年の本社・店舗の年間賃借料は約0.98億円であり、売上が落ちても賃料の支払いは続く。2027年4月以後に開始する年度から適用される新リース会計基準で表示される負債が増えても、店舗の現金負担が突然増えるわけではない。借入金の借り換え金利が上がる影響も、将来の純利益と再投資余力を圧迫する。
今後の分かれ目
- 2027年10月期に通常の営業利益が黒字へ戻り、在庫の追加大規模処分を要しなかったら
- 中立・やや楽観の確率を高める。単なる特別損失の消失ではなく、粗利率、販管費率、営業キャッシュフローが同時に改善したかを見る。
- 国内自社ECのリピート購入が増え、値引きを縮小しながら売上と粗利率が上昇したら
- ブランドの値決め力が実証されたと判断し、国内ECの数量と利益率を上方修正する。長期の堀が強まるかを改めて検討する。
- エラン向けlifte売上が再び大きく伸び、補充発注も安定したら
- 患者衣の構造的な縮小を見直す。ただし、導入施設数の増加だけで判断せず、同じ施設への継続発注と利益率を確かめる。
- 売上が回復しないまま在庫と借入金が増え、追加増資が発表されたら
- やや悲観・悲観の確率を高める。会社全体の価値と現在の株主に帰属する価値を分け、新株発行条件から持分の希薄化を再計算する。
- 海外売上が増えても販促費が減らず、営業赤字が継続したら
- 海外の販売数量と利益率の期待を引き下げる。規模拡大より撤退や縮小の資本配分を評価し、再投資資金が株主に戻る可能性を検討する。
- 営業キャッシュフローの黒字が定着し、数値を伴う配当・自己株買い方針が示されたら
- 留保利益が既存株主に戻る見通しを改善し、excess_cash_returnの0.5を再検討する。ただし利益の質と資本効率が伴わなければ、還元だけで事業価値は増やさない。
見ておくもの
- 2026年10月期の確定決算と2027年10月期の会社予想。特別損失後の営業損益を確認する。
- 国内自社EC、店舗、国内法人、患者衣lifte、海外の売上構成と前年同期比。
- エラン向け売上高、lifteの導入施設数、既存施設への補充注文の推移。
- 粗利率、広告宣伝費率、再購入率、顧客獲得費用、在庫回転期間。
- 2026年7月末約9.83億円だった商品在庫と、現金預金約5.87億円、借入金約6.25億円の推移。
- Action Program 2027の不採算販路撤退、固定費削減、システム改善の実行結果。
- 増資、新株予約権の行使、借り換え条件、配当・自社株買いの数値方針。
- 国内医療従事者向け売上の市場シェアが2025年の約3.6%から改善するか。
倍率と資本コストの決め方
基準株価830円と基準株数207万株から得られる時価総額は約17.18億円だが、この値段を先に使って利益や倍率を逆算していない。2025年の五つの販売経路の売上を基礎とし、数量を販売点数、価格を1点当たり実現売上に分離した。会社が非開示の枚数と卸単価は明示的に推計とし、2025年の患者衣への大口注文を安定した成長の出発点とみなさなかった。
資本コストは9.0%、長期名目成長率は2.5%とした。楽観から中立は、将来ROEと増分の稼ぐ力から正当化PERを求めた。中立の自己資本は、2026年末見込み6.25億円に2027~2036年の純利益累計約20.5億円と予約権行使払込資金約0.51億円を加え、還元1.5億円を差し引いた25.76億円へ修正した。これにより中立ROEは約9.3%となり、正当化PERも12.35倍から11.19倍へ改めた。利益の成長を二重に評価せず、留保した資本に見合う収益が得られるかを問う形である。
やや悲観は稼ぐ力の上限、悲観は2026年7月末の資産を換金した税後価値を使った。悲観の0.8億円は2025年の自己資本14.14億円や2036年の積み上がった自己資本に過去の安値PBRを掛けた数字ではない。2026年の大幅赤字と上場後増資を踏まえて自己資本の起点を修正し、既存の新株予約権と再建失敗時の追加増資を持分比率で反映した。現時点の余剰現金は別に加算していない。2027年4月以降に開始する年度からの新リース会計基準による表示変更を利益成長として数えず、店舗賃料は営業費用に含めた同じ会計上の物差しで2036年まで比較している。確率加重後の現在価値は約13.5億円で、基準時価総額との差は約マイナス21%、結論は「やや割高」となる。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。普通の会社の7.5%に、利益変動に関するqualityの0.5%と、事業再構築中のextraの1.0%を加えた9.0%。βや小型株プレミアム、現在の市場PERは用いない。患者衣の集中や経営判断の成否は各筋書きと確率で区別する。