結論
ダイニックは、布や紙にコーティングや加工をして、製本の表紙、壁紙、熱転写リボンなどを作る素材加工の会社だ。2026年3月期の売上は約442億円、営業利益は約23億円で、過去10年で最も高い水準になった。ただし最終利益の約25億円は、中国子会社の売却益に支えられている。\n筆者の結論は、今の値段は割高の側だ。理由は資本効率の低さにある。過去10年のROEの中央値は4%台で、資本コストに届かない。純有利子負債は約137億円と時価総額と同規模で、金利が上がるほど利払いが重くなる。自己資本は厚く、帳簿上は純資産の半分以下の値段だが、稼げない資産は割安の根拠にならない。\n中立では、熱転写リボンなどの印刷情報分野が稼ぎ続け、営業利益は29億円ほどまで増える。ただ、利払いと税を引くと純利益は18億円前後。この水準では、10年後の価値は今の時価総額に届かない。
筆者は、事業の整理が進んだ点は評価するが、資本効率の改善が確認できるまでは慎重に見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く見えるが、資本効率が低い」ことが最大の問題だ。純資産の半分以下の値段は魅力に映るが、ROEが資本コストを下回る会社では、ためた利益は帳簿どおりの価値を持たない。\nオーナー利益(設備投資を引いたあとの株主の取り分)は、営業利益の半分に届かない。素材加工は設備の更新が重く、減価償却を上回る投資が続く。物価が上がれば更新費も膨らみ、現金は思ったほど残らない。\n良い点は、不採算事業を整理して利益が回復し、自社株買いも始めたことだ。経営の資本配分が、ようやく資本効率を意識し始めた。ただ、10年で資本コストを超えるROEに届くかは見えていない。筆者は、その確認が取れるまで、慎重に見る。
経営が不採算事業を整理した点は評価でき、あとは資本効率の改善が焦点になる。
何で稼ぐ会社か
事業は三つのセグメントに分かれる。最大は印刷情報で、売上の過半を占める。熱転写リボン(バーコードなどを印字する消耗品)、フィルムコーティング、製本に使うクロスなどが中心だ。次が住生活環境で、壁紙(壁装材)や建材用の素材。三つ目が包材で、包装や産業向けのフィルム加工品である。\n稼ぎの源は印刷情報だ。2025年3月期の実績では、印刷情報が売上222億円で営業利益が23億円、住生活環境は売上122億円で営業利益が3億円、包材は売上77億円で営業利益が4億円だった。利益の大半を印刷情報が生み、住生活環境は薄利にとどまる。\n前の中期経営計画(2024年3月期から2026年3月期)では、芯地(衣料の裏地)事業から完全に撤退し、銀行通帳事業も縮小した。壁装材は市況の悪化で低迷した一方、熱転写リボンとフィルムコーティングの環境対応製品が伸びた。新しい中期経営計画「SOLID FOUNDATION 2029」では、成長分野への投資と、老朽化した設備の更新を進める方針だ。
国内が中心で、為替の影響は小さい。顧客の数が多く、1社への依存度も低い。
優良さと弱いところ
強みは、顧客ごとに仕様を作り込む加工の技術と、長い取引の関係だ。熱転写リボンは、ラベル用途の印字で品質が揃わないと現場が止まるため、替えにくい。フィルムコーティングも、環境対応の素材で需要が増えている。製本クロスは、出版の電子化で需要が縮むが、国内で数少ない供給元として残る強みはある。\n数字の面では、営業利益率が2015年3月期の1%台から、2026年3月期には5%台まで上がった。赤字の期はこの10年でない。自己資本比率は48%で改善している。\n弱みは資本効率だ。ROEの中央値は4%台、営業利益率は5%前後にとどまり、素材加工として高いとは言えない。住生活環境は薄利で、壁装材は市況に左右される。純有利子負債は約137億円と重い。2026年3月期の最終利益には中国子会社の売却益が含まれており、実力は営業利益の方を見るべきだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ダイニックの市場は、印刷・包装・建材・自動車の周辺に広がる。熱転写リボンは、物流のラベルや小売の値札など、バーコードの需要に支えられ、ECの拡大で底堅い。ただ、競合のメーカーも多く、価格を上げにくい。\n壁装材は、国内の新築住宅の着工が人口減で細り、リフォームが下支えする構造だ。製本クロスは、出版の縮小で需要が長期的に減る。いずれも数量の増加は見込みにくく、価格を物価並みに上げられるかが利益を左右する。\nフィルム加工では、環境対応の素材や、機能性フィルムの需要が伸びる。競合は、凸版印刷や大日本印刷などの大手から、中堅の加工メーカーまで多い。中国など海外の安価品も入り込む。原材料の石油化学製品や、電気代・人件費の上昇が、利益率を圧迫する要因だ。
競争の軸は、環境対応の素材と、納期や品質の安定に移っている。脱プラスチックの流れの中で、植物由来や再生可能な素材への切り替えが進み、対応できる企業が選ばれる。一方で、研究開発費の負担は重く、小さな会社には厳しい。国内の人口減少は長期の逆風だが、製品の高付加価値化で補う道はある。
資本政策と M&A
財務は、純有利子負債が約137億円と重い。自己資本比率は48%まで改善したが、金利が上がれば利払いが増える。2026年3月期は中国子会社の売却で約16億円の特別利益が出たが、これは一過性だ。\n株主還元は、配当が中心で、2027年3月期の予想も年間配当は据え置きの見込み。配当性向は2割前後と低い。2026年5月には、上限45万株、約3.8億円の自社株買いを決議した。取得期間は2027年3月末までと、規模は小さい。\n設備の更新が最大の資金需要になる。老朽化した設備を高効率のものに入れ替えるため、今後数年は投資が先行する。親会社はなく、大株主には福井英治氏が6%台で名を連ねる。M&Aは大型のものは想定しにくく、事業の選択と撤退が中心になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
不採算の芯地事業から撤退し、通帳事業も縮小した。体質が改善して、営業利益は前の中計の目標を上回った。熱転写リボンとフィルムコーティングという稼ぎ頭の事業は、ECと環境対応で伸びる。\n新しい中期経営計画では、設備更新と成長投資を進め、利益率を6%台に高める方針だ。2027年3月期の営業利益は27億円を見込み、さらに伸びる見通し。自社株買いも始めた。\n帳簿では純資産の半分以下の値段で、土地や設備の資産価値を考えれば、下値は堅い。10年で利益率が6%に乗れば、純利益は25億円規模になり、今の時価総額を大きく上回る。
環境対応の素材は付加価値が高く、価格を上げやすい。ここに投資を集中できれば、利益率はさらに上がる。熱転写リボンの消耗品としての性格は、景気が悪くても安定した収益をもたらす。ECの物流量は増え続け、ラベル用途の需要も長く続く。借金の金利が上がっても、利益の伸びで吸収できる余地がある。
慎重な見方
ROEは過去10年の中央値で4%台、資本コストを大きく下回る。営業利益率は5%で、素材加工として高くない。住生活環境は薄利で、壁装材は市況の波を受ける。製本クロスは出版の縮小で需要が細る。\n純有利子負債は約137億円。金利が上がれば利払いが増え、利益が削られる。設備の更新投資も重く、物価上昇で投資額は膨らむ。2026年3月期の最終利益は、中国子会社の売却益によるもので、実力ではない。\n新しい中期計画の目標も、前の計画で売上が未達だったように、達成できる保証はない。帳簿の資産は、稼げなければ価値が減る。
国内の人口減少と、出版・住宅の縮小は、数量の面で長期の逆風だ。値上げで補えても、設備の更新費が追い打ちをかける。しかも、新しい中期計画の実行には設備の更新が欠かせず、その資金は借金か内部留保で賄うしかない。借金が増えれば利払いが重くなり、内部留保を使えば株主還元が細る。どちらを選んでも、株主の取り分は増えにくい。
どちらに重みを置いたか
熱転写リボンなどの回復と事業の整理は評価できるが、ROEの低さと借金の重さは構造的な問題だ。慎重な見方が強いとみて、確率は中立から悲観側に寄せた。悲観は、素材の競争激化と市況の悪化が重なる負けとして1割強に置いた。
一方で、事業の整理が進んだ点は評価し、完全な悲観には寄せていない。確率の寄せ方は慎重にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,405 円193 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 450 円36 億円)。 今の値に割り戻すと 1,420 円114 億円、今との差 −12.4%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,528 円363 億円 | 874 円70 億円 | +233.1% | +12.8% | 432 円35 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,435 円275 億円 | 625 円50 億円 | +150.3% | +9.6% | 812 円65 億円 |
| 中立 | 35% | 2,794 円224 億円 | 500 円40 億円 | +103.1% | +7.3% | 1,153 円92 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,205 円96 億円 | 275 円22 億円 | −8.8% | −0.9% | 370 円30 億円 |
| 悲観 | 12% | 635 円51 億円 | 100 円8 億円 | −54.7% | −7.6% | 88 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,405 円193 億円 | 450 円36 億円 | +76.0% | +5.8% | 2,855 円229 億円 |
今の株価時価総額 1,622 円130 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 設備更新と環境対応が奏功し、利益率が6%台に 利益 29 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,528 円363 億円
熱転写リボンと環境対応フィルムが伸び、印刷情報の営業利益率は11%に上がる。壁装材は撤退や統合で赤字を避け、薄利ながら黒字を維持する。包材は新製品で利益率が6%。営業利益は47億円、純利益は29億円ほど。設備更新を終えて投資が一巡し、配当と自社株買いが増える。この筋書きでは、素材加工としては高い水準の利益率が定着し、資本コストを上回るROEに届く。経営は借金の返済を優先しつつ、株主還元にも余力を回す。10年後には、財務の重い会社から、安定して稼ぐ中堅の素材メーカーへ姿を変える。競合が価格を下げても、品質で差別化できる。
- 印刷情報(熱転写リボン・フィルムコーティング・製本クロスなど):数量 46.4(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 798(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 370 億円・営業利益 41 億円。数量は今の 1.10 倍、価格は 1.45 倍、営業利益率 11.0%
- 住生活環境(壁装材・建材用素材):数量 27.0(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 630(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 170 億円・営業利益 7 億円。数量は今の 0.95 倍、価格は 1.40 倍、営業利益率 4.0%
- 包材(包装・産業向けフィルム加工品):数量 16.4(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 840(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 138 億円・営業利益 8 億円。数量は今の 1.20 倍、価格は 1.40 倍、営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 362 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率の改善と借金の圧縮が同時に進む前提でハードルが高く、1割未満とした。
やや楽観 20% 印刷情報が堅調で、利益率は5%台後半 利益 22 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,435 円275 億円
印刷情報の数量は5%増え、価格は物価を上回って上がり、営業利益率は10%に乗る。住生活環境は数量が1割減るが、薄い黒字を保つ。包材は新製品が伸びて利益率が5%。営業利益は36億円、純利益は22億円ほど。配当は純利益の3割に高まり、借金は緩やかに減る。壁装材の撤退や統合を進めて損益のばらつきを抑え、印刷情報への集中が進む。借金の返済も続き、金利が上がっても利払いは吸収できる範囲にとどまる。ただ、資本効率はなお資本コストに届かない。国内の景気は緩やかに回復し、設備更新の資金にも余裕が出てくる。原材料の値上がりも価格に転嫁できる範囲に収まり、利益率の振れは小さい。
- 印刷情報(熱転写リボン・フィルムコーティング・製本クロスなど):数量 44.3(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 759(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 336 億円・営業利益 34 億円。数量は今の 1.05 倍、価格は 1.38 倍、営業利益率 10.0%
- 住生活環境(壁装材・建材用素材):数量 25.6(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 612(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 157 億円・営業利益 5 億円。数量は今の 0.90 倍、価格は 1.36 倍、営業利益率 3.0%
- 包材(包装・産業向けフィルム加工品):数量 15.0(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 816(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 123 億円・営業利益 6 億円。数量は今の 1.10 倍、価格は 1.36 倍、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 275 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ECと環境対応の追い風が続く筋書きで、中立より一段上が現実的な範囲に入る。
中立 35% 中立:印刷情報が稼ぎ、全体の営業利益率は5% 利益 18 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,794 円224 億円
印刷情報は数量が横ばいで、価格は物価並みに上がり、営業利益率は9%台を保つ。壁装材は新築の減少で数量が1割強減り、営業利益率は2〜3%にとどまる。包材は数量が5%増え、4〜5%の利益率。全社の営業利益は29億円ほど、営業利益率は5%で、過去の山を超えない。借り換えで利払いが増え、純利益は18億円。配当と自社株買いで10年に40億円を返す。減価償却は今の設備分は増えないが、更新投資は建築費の上昇で膨らむ。借金は少しずつ減るが、設備更新の投資が重く、返済のペースは遅い。経営は大きな買収に動かず、事業の選択と効率化を続ける。ROEは4%台にとどまり、資本コストには届かない。
- 印刷情報(熱転写リボン・フィルムコーティング・製本クロスなど):数量 42.2(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 737(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 311 億円・営業利益 29 億円。数量は今の 1.00 倍、価格は 1.34 倍、営業利益率 9.2%
- 住生活環境(壁装材・建材用素材):数量 25.0(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 603(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 151 億円・営業利益 4 億円。数量は今の 0.88 倍、価格は 1.34 倍、営業利益率 2.5%
- 包材(包装・産業向けフィルム加工品):数量 14.4(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 804(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 115 億円・営業利益 5 億円。数量は今の 1.05 倍、価格は 1.34 倍、営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 224 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:印刷情報の安定と、住生活環境の低迷が並ぶ形が最も起こりやすいとみて、中間を置いた。
やや悲観 25% 原材料高と住宅不振で利益率が3%台に 利益 5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,205 円96 億円
壁装材の数量が2割減り、価格競争で赤字になる。印刷情報も価格転嫁が遅れ、営業利益率は6%どまり。営業利益は10億円まで落ち、利払いを引くと純利益は5億円。配当は維持するのが精一杯で、設備更新を絞るため、競争力が少しずつ落ちる。稼ぐ力は低く、資産の価値で値が付く。工場や土地の売却が選択肢になる。取引先の与信にも気を配る必要が出て、運転資金の負担が増す。新しい成長投資は後回しになり、事業の入れ替えも遅れる。経営は固定費の削減に動くが、人員の整理や工場の統合には時間がかかる。利益の回復は遅れる。景気が戻らない限り、この状態が数年続く。
- 印刷情報(熱転写リボン・フィルムコーティング・製本クロスなど):数量 38.0(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 688(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 261 億円・営業利益 16 億円。数量は今の 0.90 倍、価格は 1.25 倍、営業利益率 6.0%
- 住生活環境(壁装材・建材用素材):数量 22.8(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 563(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 128 億円・営業利益 0 億円。数量は今の 0.80 倍、価格は 1.25 倍、営業利益率 0.0%
- 包材(包装・産業向けフィルム加工品):数量 13.0(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 750(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 97 億円・営業利益 3 億円。数量は今の 0.95 倍、価格は 1.25 倍、営業利益率 3.0%
倍率:稼ぐ力が資本コストを大きく下回るので、帳簿でなく売れる資産の価値で値を付ける。今の自己資本299億円に0.25倍を掛けた。純有利子負債を足したEV÷営業利益は21倍で、借金の重さから利益の倍率だけでは測れないことも確認した。
確率:原料高・住宅の不振・金利負担が重なる可能性は、2割強に置いた。
悲観 12% 構造的に負け、素材競争と住宅不振で赤字に 利益 −10 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 635 円51 億円
壁装材と製本クロスの需要が細り、撤退を余儀なくされる。印刷情報も価格競争に巻き込まれ、営業利益率は3%に落ちる。営業赤字が続き、利払いも重く、純利益は−10億円。配当は大きく絞られる。工場や土地の売却で借金を返し、事業は縮小する。他社の傘下に入る可能性も高まる。設備更新を先送りした工場は競争力を失い、顧客が他社へ移る悪循環に入る。銀行との交渉で返済条件が厳しくなり、再編や身売りの対象になる可能性も高まる。株主にとっては、配当も株価も回復が見えない長い低迷期になる。会社は縮小均衡に入る。再編が起きれば、事業ごとに他社へ売却される形もありうる。
- 印刷情報(熱転写リボン・フィルムコーティング・製本クロスなど):数量 31.6(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 633(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 200 億円・営業利益 6 億円。数量は今の 0.75 倍、価格は 1.15 倍、営業利益率 3.0%
- 住生活環境(壁装材・建材用素材):数量 17.1(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 495(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 85 億円・営業利益 −3 億円。数量は今の 0.60 倍、価格は 1.10 倍、営業利益率 -3.0%
- 包材(包装・産業向けフィルム加工品):数量 10.9(出荷面積(百万平方メートル))× 価格 660(1平方メートルあたりの平均単価(円))→ 売上 72 億円・営業利益 0 億円。数量は今の 0.80 倍、価格は 1.10 倍、営業利益率 0.0%
倍率:今の自己資本299億円に0.17倍を掛けた。稼ぐ力が消えるので、売れる資産の税後の価値で値を付けた。
確率:原料高と海外の安価品で、素材加工の収益力が構造的に失われる負けとして1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
印刷情報(熱転写リボン・フィルムコーティング・製本クロスなど)
バーコード印字用の熱転写リボン、フィルムコーティング、製本用クロスなど。
| 数量出荷面積(百万平方メートル) | 価格1平方メートルあたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 42.2 | 550 | 232 | 23 |
| 10 年後 中立 | 42.2 | 737 | 311 | 29 |
取り方:2025年3月期の実績(印刷情報222億円・営業利益23億円)と2026年3月期の連結売上442億円から、約232億円と推定。出荷面積は開示がなく、1平方メートル550円と仮置きして逆算した推定値。営業利益は同年のセグメント利益率を参考にした推定配分。
住生活環境(壁装材・建材用素材)
壁紙(壁装材)や建材用の素材の製造・販売。
| 数量出荷面積(百万平方メートル) | 価格1平方メートルあたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 28.4 | 450 | 128 | 3 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 603 | 151 | 4 |
取り方:2025年3月期の実績(住生活環境122億円・営業利益3億円)から、2026年3月期は約128億円と推定。面積は開示がなく、単価450円と仮置きして逆算した推定値。
包材(包装・産業向けフィルム加工品)
包装や産業向けのフィルム加工品の製造・販売。
| 数量出荷面積(百万平方メートル) | 価格1平方メートルあたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13.7 | 600 | 82 | 4 |
| 10 年後 中立 | 14.4 | 804 | 115 | 5 |
取り方:2025年3月期の実績(包材77億円・営業利益4億円)から、2026年3月期は約82億円と推定。面積は開示がなく、単価600円と仮置きして逆算した推定値。営業利益3.5億円は、全社23億円から本社費6.5億円を引く配分で調整。
リスクと懸念
資本効率の低さ
ROEの中央値は4%台で、資本コストに届かない。利益率が上がらなければ、自己資本が積み上がっても株主価値は増えない。
金利上昇と純負債
純有利子負債は約137億円。借り換えで金利が3.5%前後になれば、利払いが数億円増え、純利益を削る。
設備更新の投資負担
老朽化した設備の更新が今後数年続く。物価上昇で更新費が膨らみ、現金の余裕が薄れる。
壁装材・製本クロスの需要減
新築住宅の着工と出版の縮小で、数量は長期的に細る。リフォームの下支えだけでは補い切れない。
原材料・エネルギー価格の上昇
石油化学の原料や電気代、人件費が上がる。価格転嫁が遅れれば、薄い利益率が一気に落ちる。
一過性の利益に頼った実績
2026年3月期の最終利益は中国子会社の売却益によるもの。営業利益が伸びなければ、利益の質への疑いが残る。
今後の分かれ目
- 営業利益率が3期続けて6%を超えたら
- 収益力が構造的に改善した合図。中立の営業利益率を上げ、確率を楽観側に寄せる。
- 純有利子負債が100億円を下回ったら
- 財務の改善が進み、借金の上乗せを下げられる。
- 壁装材の営業赤字が出たら
- 住生活環境の事業整理が必要になる。撤退が決まれば、利益の起点を見直す。
- 配当性向が3割を超え、自社株買いが続いたら
- 資本配分の姿勢が変わった合図。還元の想定を上げてよい。
- 原材料高で営業利益率が4%を割り込んだら
- 価格転嫁の力が弱いことになり、やや悲観の確率を上げる。
- TOBの提案が出たら
- 資産価値が評価される上振れ要因。条件の水準を確認する。
見ておくもの
- セグメント別の営業利益率
- 純有利子負債と利払い
- 設備投資額と減価償却の差
- 配当性向と自社株買いの実績
- 新築住宅着工と出版市場の動向
倍率と資本コストの決め方
売上はセグメントごとに出荷面積×単価で積み、中立の営業利益率は過去の山の5%台を超えない5%に置いた。倍率はROEがkを大きく下回るためPERは上限1÷kの約7割。今の株価は参照していない。リース会計の変更は賃借が小さく、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→12.5 倍・やや楽観 PER 8.8→12.5 倍・中立 PER 8→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質+1.5%を足して9.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.00%。