結論
クラウディアホールディングスは、京都でウェディングドレスを作ってきた会社だ。今は自前のドレスを武器に、衣裳の貸し出しや式場の運営で稼ぐ。筆者の結論は、今の値段はやや高いというものだ。婚礼の数が細るなかで、借金と家賃という固定の重しを抱えているからだ。
2026年8月期は売上139億円、営業利益6億円と、コロナの赤字から立ち直った。原価の軽い衣裳と式場の売上が伸び、販管費も削った。東京大神宮の大神宮会館の運営も始まった。
ただ、営業利益率は過去12年で5%を超えたことがない。婚姻の数は年に2〜3%ずつ減り、式を挙げない夫婦も増えている。式場の多くは借り物で、売上が落ちても家賃は残る。
純負債はおよそ35億円で、時価総額を上回る。金利が上がれば利払いが増える。稼ぐ力は資本コストに届かず、10年後の価値は今の時価総額をやや下回るとみる。
楽観の道もある。大神宮会館が都心の神前式の名所になれば、利益率は一段上がる。ただ、それを今の値段に織り込むには、まだ実績が足りない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、平凡な事業を借金と家賃で回している会社だ。
ドレスは消耗品ではない。それでも花嫁が式を挙げる限り、1着は必ず選ばれる。自前で作れる会社は、その入口を押さえている。この点は評価できる。
しかし、株主のものになる利益は小さい。年4億円前後の純利益から、式場の改装と衣裳の入れ替えを引くと、残りはさらに細る。営業利益率は5%に届かず、コロナのような一度の衝撃で自己資本の半分が消えた。
安全域も薄い。純負債は時価総額を上回り、借り換えのたびに金利は上がる。式場の家賃は売上が落ちても残る。市場が縮むなかで、固定の約束が多い会社を持つには、もっと安い値段が要ると筆者は考える。
経営の資本の使い方は、いまは正しい方を向いている。式場を自前で建てず運営を引き受け、借金を返している。この規律が10年続くかどうかを見たい。
何で稼ぐ会社か
1976年、京都でウェディングドレスの製造・卸として始まった。いまは持株会社の下に十数社の子会社を抱え、ドレスの企画から挙式の当日までを手がける。開示上は単一のセグメントで、中身は2つの部門に分かれる。
ホールセール部門は、自社で作ったドレスを全国の貸衣裳店や式場に売り、貸す部門だ。年30億円ほどの売上がある。映画とのコラボドレスなど、デザインの話題づくりにも力を入れる。ただ製品の売上は減り、貸し出しの収入で支えている。
コンシューマー部門は、花嫁に直接売る部門で、売上の8割を占める。式場と提携した衣裳サロンでのドレスの貸し出し、沖縄やハワイのリゾート挙式、自前の式場とレストランの運営、写真・映像・美容を束ねる。東京・九段のフレンチ「ソンブルイユ」が好調で、2026年4月には東京大神宮の大神宮会館の運営を引き継いだ。
稼ぎは季節に偏る。秋と春の婚礼シーズンに利益が集まり、夏と冬は赤字になりやすい。式場や店の多くは借りており、敷金にあたる差入保証金は25億円に上る。自前の土地と建物も簿価で50億円近く持ち、その多くが借入の担保になっている。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、ドレスを自分で作れることにある。
衣裳の貸し出しは、品ぞろえと流行の早さで勝負が決まる。自社で企画し縫製まで持つ会社は少なく、デザインを早く替えられる。花嫁が最初に選ぶのはドレスで、そこから式場や写真の注文がつながる。
ただ堀は狭い。衣裳ではタカミブライダルやワタベウェディングの流れをくむ会社が競い、式場ではテイクアンドギヴ・ニーズやエスクリなど大手が規模で勝る。式場を選ぶ主導権は式場の側にあり、提携の衣裳店は値下げを求められやすい。
花嫁がドレスに払う額は、景気が悪くても大きくは削られない。ここは数少ない値上げの余地だ。
数字が実力を語る。営業利益率は過去12年で5%を超えず、2020年と2021年は大きな赤字だった。自己資本は10年前の半分近くまで減り、まだ戻り切っていない。原価の軽い衣裳と式場に寄せる今の方向は正しいが、稼ぐ力はようやく平凡な水準に届いたところだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
婚礼の市場は、数がゆっくり縮み、1組あたりの単価が支える構造だ。
国内の婚姻数は2024年で約48万組と、20年前から3割近く減った。未婚化と少子化で、この先も年2〜3%の減少が続く。さらに結婚しても式を挙げない「なし婚」や、家族だけの小さな式が増えた。コロナで広がった少人数の式は、元に戻り切っていない。
一方、挙式する夫婦の1組あたりの支出は上がっている。衣裳やこだわりの演出に払う額は増え、値上げも通りやすい。ドレスの貸し出しは、式の規模が小さくなっても1着は要るので、披露宴の料理や引き出物より底堅い。
式場の業界は、大手が数で押す。テイクアンドギヴ・ニーズ、ノバレーゼ、エスクリなどが式場を持ち、衣裳も自前で抱え込む流れがある。提携の衣裳店にとっては、取引の場が狭まる逆風だ。
筆者の見立てでは、挙式の組数は10年で2割近く減る。単価は物価並みに上がるが、市場の金額はほぼ横ばいにとどまる。伸びるのはシェアを取れる会社だけだ。訪日客の神前式やフォトウェディングは新しい需要だが、まだ市場全体を動かす大きさではない。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、総額は年1億円弱だ。配当性向は2〜3割にとどまる。自社株買いはしていない。
優先しているのは借金の返済だ。コロナの赤字で借入が膨らみ、純負債は一時55億円に達した。いまは35億円前後まで減らしたが、自己資本の43億円に近い。
株主優待は額が小さく、価値の計算には入れていない。
買収は小ぶりで、2024年に京都のブライダルハウス島田を子会社にした。式場は新しく建てるより、大神宮会館のように運営を引き受ける形が多い。創業から続く経営で、会社ごと売られる動きは見えない。借金が減り切るまでは、還元を厚くする余地も小さいと筆者は見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益の質が変わり始めた。2026年8月期の営業利益は前期の1.6倍で、会社の予想を4割上回った。原価の軽い衣裳と式場の売上が伸び、販管費も削った。売上はほとんど増えていないのに、利益が増えた点が大事だ。
大神宮会館は、東京の都心で由緒のある神社に隣接する式場だ。建物を自前で建てずに運営を引き受けたので、投資は小さい。神前式は外国人の関心も高く、ここが軌道に乗れば利益はさらに上がる。
ドレスを自前で作れることは、式場の会社に対しても強みになる。デザインの話題で花嫁を集め、衣裳から写真や式場へと注文をつなげる。挙式の数が減っても、1組あたりの支出は増えている。
借金も着実に減っている。純負債は5年で20億円減った。この調子で返せば、5年後には利払いの心配はなくなる。時価総額は純利益の7倍しかなく、利益率が5%台に定着すれば、見直される余地は大きい。
コロナの赤字も、事業の弱さではなく人が集まれなかったことによる。いまは客足が戻り、むしろ少人数の式で単価の高い衣裳が選ばれている。
慎重な見方
婚礼の市場は縮み続ける。婚姻数は毎年減り、式を挙げない夫婦も増える。1組あたりの単価が上がっても、組数の減少を埋めるのがやっとだ。この市場で利益率を上げ続けるのは難しい。
過去がそれを示している。営業利益率は12年間で5%を超えたことがない。2020年と2021年には大きな赤字で、自己資本は半分近くまで減った。今期の好調も、販管費の削減という一度きりの効果が大きい。
借金と家賃は重い。純負債は35億円前後で、時価総額を上回る。借り換えのたびに金利は上がり、利払いは増える。式場や店の多くは借りており、売上が落ちても家賃は払い続けなければならない。
大手の式場は衣裳を自前で抱え込み始めた。提携の衣裳店は場所を失いやすい。ホールセールの製品の売上も減っている。ドレスを作る力は、取引の場がなければ生きない。
大神宮会館も、運営を引き受けた以上は固定の約束が増える。当たれば利益は厚いが、外れれば家賃と人件費が残る。小さな会社が負うには重い賭けだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方に分がある。今期の回復は本物だが、過去12年の利益率の天井を破ったわけではない。市場の縮みと固定費の重さは、数字で確かめられる。確率は中立を厚くし、悲観側をやや厚めに置いた。大神宮会館の成否が、楽観に寄るかどうかの分かれ目になる。借金が減り切れば、悲観の厚みは薄くしてよい。逆に、ホールセールの縮みが速まれば、やや悲観を厚くする。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 552 円50 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 98 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 296 円27 億円、今との差 −9.6%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,276 円116 億円 | 166 円15 億円 | +339.6% | +16.0% | 115 円10 億円 |
| やや楽観 | 20% | 854 円77 億円 | 132 円12 億円 | +200.8% | +11.6% | 197 円18 億円 |
| 中立 | 40% | 612 円55 億円 | 110 円10 億円 | +120.2% | +8.2% | 289 円26 億円 |
| やや悲観 | 20% | 144 円13 億円 | 55 円5 億円 | −39.4% | −4.9% | 40 円4 億円 |
| 悲観 | 12% | 44 円4 億円 | 22 円2 億円 | −79.8% | −14.8% | 8 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 552 円50 億円 | 98 円9 億円 | +97.9% | +7.1% | 649 円59 億円 |
今の株価時価総額 328 円30 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 大神宮会館が当たり、衣裳と式場がシェアを取る 利益 8 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 1,276 円116 億円
大神宮会館が都心の神前式の名所になる。訪日客の挙式も加わり、式場の稼ぎが厚くなる。婚姻数は減るが、取り扱う組数はシェアの伸びで横ばいを保つ。1組あたりの支出は物価を少し上回って増える。
ドレスの企画力が生き、衣裳から写真、式場へと注文がつながる。コンシューマー部門の利益率は8%に上がる。ホールセールもデザインの話題で取引先を広げる。
借金は5年ほどで大きく減り、利払いの重しは軽くなる。営業利益は12億円近く、純利益は8億円弱になる。配当は利益に合わせて増え、10年の還元は15億円だ。ROEは資本コストをわずかに上回る。
- ホールセール部門(ドレスの卸・レンタル):数量 1.4(ドレスの販売・貸出の点数(万着))× 価格 25(1着あたりの平均の売上(万円))→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。点数0.9倍・単価1.34倍・利益率5.5%
- コンシューマー部門(衣裳・リゾート挙式・式場・写真美容):数量 2.4(取り扱う挙式の組数(万組))× 価格 63(1組あたりの平均の売上(万円))→ 売上 151 億円・営業利益 12 億円。組数横ばい・単価1.38倍・利益率8%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.61 倍、時価総額 98 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:婚姻数が減るなかで組数を保ち、利益率を過去12年の天井の倍近くまで上げる必要がある。大神宮会館と訪日客の神前式が両方当たる姿で、確度は低い。
やや楽観 20% 式場が育ち、利益率5%台が定着する 利益 5 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 854 円77 億円
婚姻数の減少は続くが、大神宮会館とソンブルイユが客を集め、取り扱う組数の減りは1割弱にとどまる。単価は物価並みに上がる。原価の軽い衣裳と式場の比重が高まり、コンシューマー部門の利益率は7%になる。
ホールセールは取引先の減少で点数が2割近く減るが、貸し出しの収入で利益は保つ。本社の費用は物価で増える。
営業利益は8億円台、純利益は5億円台だ。借金は少しずつ減り、利払いの増加を吸収する。配当は増え、10年の還元は12億円になる。ROEは7%弱で、資本コストにはまだ届かない。それでも、平凡な会社が安定した会社に変わる姿だ。
- ホールセール部門(ドレスの卸・レンタル):数量 1.3(ドレスの販売・貸出の点数(万着))× 価格 24(1着あたりの平均の売上(万円))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。点数0.82倍・単価1.30倍・利益率4.5%
- コンシューマー部門(衣裳・リゾート挙式・式場・写真美容):数量 2.2(取り扱う挙式の組数(万組))× 価格 61(1組あたりの平均の売上(万円))→ 売上 136 億円・営業利益 10 億円。組数0.93倍・単価1.34倍・利益率7%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.39 倍、時価総額 62 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年8月期に利益率4.6%まで戻した実績があり、大神宮会館の上積みも見込める。婚姻数の減少をシェアで半分ほど埋める姿で、中立より一段上。
中立 40% 組数は細り、利益率は過去の天井どまり 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 612 円55 億円
婚姻数は年2%ほど減り、式を挙げない夫婦も増える。取り扱う組数は10年で15%減る。1組あたりの支出は物価に近い1.3倍に上がり、コンシューマー部門の売上は1割ほど増える。利益率は6%で、今とほぼ同じだ。
ホールセールは貸衣裳店の減少で点数が4分の3に縮む。利益率は3.5%に下がる。本社の費用は物価で2.3億円に膨らむ。既存の式場の償却は取得時の値段のままだが、改装の投資は建築費の上昇で膨らむ。
営業利益は6億円弱、借り換えの金利が上がり純利益は3.6億円になる。配当は年1億円前後が続き、10年の還元は10億円。ROEは5%弱で、資本コストに届かない。
- ホールセール部門(ドレスの卸・レンタル):数量 1.2(ドレスの販売・貸出の点数(万着))× 価格 23(1着あたりの平均の売上(万円))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。点数0.75倍・単価1.25倍・利益率3.5%
- コンシューマー部門(衣裳・リゾート挙式・式場・写真美容):数量 2.0(取り扱う挙式の組数(万組))× 価格 59(1組あたりの平均の売上(万円))→ 売上 121 億円・営業利益 7 億円。組数0.85倍・単価1.30倍・利益率6%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 40 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:婚姻数と挙式率の減少は統計で確かめられ、利益率は過去12年で5%を超えていない。今期の回復を保ちつつ天井は破れない、過去の実績に沿った姿を中心に置いた。
やや悲観 20% 大手に押され、家賃が利益を食う 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 144 円13 億円
大手の式場が衣裳を自前で抱え込み、提携の衣裳店は場所を失う。取り扱う組数は3割近く減る。値上げは客離れを恐れて物価に届かない。コンシューマー部門の利益率は4%に下がる。
ホールセールは取引先の廃業が続き、点数は4割減る。利益はほぼ出ない。
式場の家賃は売上が落ちても残る。営業利益は2億円を切り、上がった金利の利払いを引くと純利益は1億円に届かない。配当は半分に減り、10年の還元は5億円にとどまる。稼ぐ力で測る価値は7億円ほどだ。借金は減らせず、純負債は今と同じ水準で残る。自前の土地と建物を売っても、借入を返すと手元にはわずかしか残らない。
- ホールセール部門(ドレスの卸・レンタル):数量 1.0(ドレスの販売・貸出の点数(万着))× 価格 22(1着あたりの平均の売上(万円))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。点数0.6倍・単価1.2倍・利益率1%
- コンシューマー部門(衣裳・リゾート挙式・式場・写真美容):数量 1.7(取り扱う挙式の組数(万組))× 価格 57(1組あたりの平均の売上(万円))→ 売上 98 億円・営業利益 4 億円。組数0.72倍・単価1.25倍・利益率4%
倍率:ROE約1.2%でkを大きく下回る。稼ぐ力(純利益0.66億円÷k)は約7.8億円。純負債が厚く売れる資産の税後は借入でほぼ消えるので、稼ぐ力を価値とし、今の自己資本39.7億円(facts)の0.186倍に置いた。EV(時価総額+純負債約39億円)÷営業利益は約24倍と高く見えるが、それは利益が細った筋書きだからで、株主の取り分は稼ぐ力の床で測った。
確率:大手の式場が衣裳を内製する流れと、ホールセールの製品売上の減少は既に開示に表れている。家賃と借金の固定費が重く、売上が少し落ちるだけで利益が消える。
悲観 12% 婚礼の縮みと固定費で赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 44 円4 億円
式を挙げない夫婦が多数派になり、取り扱う組数は半分近くに減る。大手の式場との取引も細る。家賃と人件費は売上ほど減らず、営業損益は赤字が続く。
借金の借り換えは高い金利でしか進まず、利払いが赤字を広げる。配当はやがて止まり、10年の還元は2億円にとどまる。不採算の式場を閉じるたびに減損と違約金が出て、自己資本は半分以下に減る。
残る価値は、自前の土地と建物を売って借金を返した残りだ。その使い道を決めるのは経営で、少数株主の取り分は小さい。ドレスを作る技術は残っても、それを生かす売り場が失われている。
- ホールセール部門(ドレスの卸・レンタル):数量 0.7(ドレスの販売・貸出の点数(万着))× 価格 20(1着あたりの平均の売上(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 −1 億円。点数0.45倍・単価1.1倍・赤字
- コンシューマー部門(衣裳・リゾート挙式・式場・写真美容):数量 1.3(取り扱う挙式の組数(万組))× 価格 50(1組あたりの平均の売上(万円))→ 売上 66 億円・営業利益 −1 億円。組数0.55倍・単価1.1倍・赤字
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。土地・建物の売却額から借入を返した残りに戻り方0.5を掛けた床(約4億円)で、今の自己資本39.7億円(facts)の0.10倍に置いた。
確率:コロナの2年で自己資本の半分近くを失った前例がある。式を挙げない流れが一段と進めば、家賃と借金を抱えた事業は赤字に沈む。前例があるので1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ホールセール部門(ドレスの卸・レンタル)
自社で企画・縫製したウェディングドレスを、全国の貸衣裳店や式場に売り、貸し出す。
| 数量ドレスの販売・貸出の点数(万着) | 価格1着あたりの平均の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 1.6 | 18 | 30 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 23 | 28 | 1 |
取り方:2026年8月期の部門売上は未開示。中間期の15.4億円(前年同期比−1.5%)から通期約29.5億円と推定。点数の開示は無く、販売と貸出をならした1着約18万円と置いた推定。単一セグメントで利益も未開示のため、利益率4%と推定。
コンシューマー部門(衣裳・リゾート挙式・式場・写真美容)
花嫁に直接、ドレスの貸し出し、リゾート挙式、式場とレストランの運営、写真・映像・美容を売る。
| 数量取り扱う挙式の組数(万組) | 価格1組あたりの平均の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 2.4 | 46 | 109 | 7 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 59 | 121 | 7 |
取り方:全社売上138.8億円(2026年8月期速報)からホールセールの推定を引いた約109.3億円。組数の開示は無く、衣裳だけの客から式場の客までをならした1組約45万円と置いて約2.4万組とした推定。利益率は原価の軽い衣裳・式場が中心で約6%と推定。
リスクと懸念
婚姻数と挙式率の減少
婚姻数は年2〜3%ずつ減り、式を挙げない夫婦や家族だけの小さな式も増えている。1組あたりの単価で埋められなくなれば、売上はじりじり細る。
借金と金利
純負債は35億円前後で、時価総額を上回る。借り換えのたびに金利が上がり、利払いは増える。返済が遅れれば、配当や式場の改装に回すお金が減る。
式場と店の家賃
式場や衣裳店の多くは借り物で、差入保証金は25億円に上る。家賃は売上が落ちても残る固定の約束で、コロナの時のように客が消えると赤字が一気に膨らむ。
大手の式場の内製化
テイクアンドギヴ・ニーズなど大手の式場は、衣裳を自前で抱え込む流れにある。提携の衣裳店として入る場が狭まれば、コンシューマー部門の組数が減る。
疫病や災害の衝撃
2020年と2021年は、婚礼の延期と中止で大きな赤字を出し、自己資本が半分近くに減った。人が集まれない出来事が再び起きれば、同じ形で傷む。
今後の分かれ目
- 大神宮会館が通年で黒字になり、全社の営業利益率が2期続けて5%を超えたら
- やや楽観の確率を厚くし、コンシューマー部門の利益率を上げる。
- 純負債が20億円を切ったら
- 借金の上乗せを外し、資本コストを下げる。還元の拡大も見込める。
- ホールセールの売上が2期続けて1割超減ったら
- やや悲観の確率を厚くし、ドレスの点数を下げる。
- 婚姻数の減り方が年3%を超えて速まったら
- 中立の組数を下げ、悲観側の確率を厚くする。
- 大手の式場や投資ファンドから買収の提案が出たら
- 買収の値段が付く筋書きとして、価値の見方を改める。
見ておくもの
- 全社の営業利益率
- 部門別の売上(ホールセールとコンシューマー)
- 大神宮会館の稼働
- 純負債の額と支払利息
- 国内の婚姻数
- 配当と自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、ドレスの点数と挙式の組数、1組あたりの単価、本社費から10年後の利益を積んだ。中立〜やや楽観のROEは資本コスト9%を下回るので、PERは1÷k(約11.8倍)を上限に利益の質で8〜9割に置いた。悲観側は稼ぐ力と土地・建物の税後から借入を引いた床で置いた。起点は2026年8月期の速報値。新しいリース会計(2028年8月期から)で純負債は膨らんで見えるが、10年後も家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.61 倍・やや楽観 PER 10→11.39 倍・中立 PER 9.5→11.11 倍・やや悲観 PBR 0.196→0.186 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。