結論
TSI ホールディングスは、アパレルを 50 以上のブランドで売る会社だ。ナノ・ユニバースやアヴィレックスを持ち、2025 年には FREAK'S STORE のデイトナ・インターナショナルを買った。筆者の結論は、事業は上向いているが稼ぐ力はまだ資本コストに届かず、10 年で見た価値は今の時価総額を下回る、というものだ。
稼ぎ方は変わり始めた。値引きを抑え、仕入れ先をまとめ、不振店を畳んだ。この改革で営業利益は 2 年で約 75 億円よくなった。2026 年 2 月期の営業利益は 43 億円で、前の期の 2.6 倍だ。
それでも水準は低い。営業利益率は 2.6% にとどまる。会社は最終年度の営業利益の目標を 100 億円から 75 億円へ下げた。既存ブランドの売上が計画より約 100 億円足りないからだ。
買収は賭けでもある。デイトナの取得に 283 億円を払い、のれんは 322 億円に膨らんだ。かつての純現金は純負債に変わった。育てば利益の柱になるが、外れれば減損が重い。
株主還元は厚い。自社株買いは 3 年で約 200 億円、配当は自己資本の 4% を目安にする。それでも利益が自己資本の 7% 前後にとどまれば、資本コストを稼げない。中立の筋書きでは、時価総額は 10 年で今とほぼ同じにとどまる。還元を足しても、株主が求める年 8.5% には届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は持ち続けたい事業とまでは言えない。理由は 3 つある。
1 つ目は、稼ぎの源が見えにくいことだ。ブランドごとの利益は開示が少なく、どれが 10 年先も売れるか読みにくい。流行に頼る事業は、わからないものは買わないという原則から遠い。
2 つ目は、資本の使い方だ。会社が使ったお金で、どれだけ利益が増えたかを見る。デイトナに 283 億円を投じたが、利益が出るのはこれからだ。株主に返す自社株買いは、割安のうちに行えば効く。一方で、これまでの自己資本の利益率は資本コストを下回り続けてきた。
3 つ目は、安全域だ。持ち合い株の含み益と在庫、敷金はあるが、店の家賃は毎年払う約束だ。売上が落ちても家賃は落ちない。構造的に負ける場合、床は思ったより低い。
それでも良い点はある。メンズカジュアルの強さ、構造改革の実績、経営の株主への姿勢だ。筆者が見るのは、ここから 10 年で稼ぐ力が資本コストを超えるか、という一点だ。超えるなら価値は今より高い。超えないなら、今の値段は先を行きすぎている。
何で稼ぐ会社か
TSI は服の企画から販売までを一貫して行う持株会社だ。連結子会社は 21 社、扱うブランドは 50 を超える。売上の上位 10 ブランドで全体の約 6 割を占め、粗利率は 5〜6.5 割と高い。
売る場所は店と通販に分かれる。2026 年 2 月期の売上 1,670 億円のうち、ファッションビルや駅ビル、アウトレットの店が 823 億円、国内の通販が 438 億円、百貨店が 154 億円だ。海外は 84 億円まで縮んだ。
主力は 3 つに分けられる。1 つ目は百貨店系のウィメンズで、ナチュラル・ビューティー・ベーシックやジル バイ ジルスチュアートがある。長く会社を支えてきたが、客数が減っている。2 つ目はメンズカジュアルだ。アヴィレックスは単独で初めて売上 100 億円を超え、ショットも伸びている。3 つ目はゴルフのパーリーゲイツで、在庫の調整が一巡して戻りつつある。
2025 年 9 月にはデイトナ・インターナショナルを子会社にした。FREAK'S STORE を約 60 店と自社の通販で売る小売りの会社で、年商は約 400 億円ある。TSI の売上の 2 割強にあたる。ブランドを作って売る会社が、仕入れて売り切る小売りの考え方を取り込んだ形だ。
2026 年 4 月には、スカジャンで知られる東洋エンタープライズを買う基本合意を結んだ。年商は約 45 億円で、利益率は高い。取得額は公表されていない。
弱みは 3 つある。百貨店向けの客数の減少、店の敷金だけで 92 億円ある家賃の重さ、そして米国事業だ。米国のハフなどが苦戦し、のれんを減損した。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の堀は浅いと見る。堀とは、他社がまねできない強みのことだ。TSI にはザ・ノース・フェイスのように 1 つで稼ぎを背負うブランドがない。50 のブランドに分かれているのは分散の利点だが、裏返せば、どれも一番手ではないということだ。
それでも稼ぐ力は戻りつつある。粗利率は 2.4 ポイント上がった。仕入れ原価の下げと、値引きの抑制が効いた。販管費も、物流費と広告費の効率化で減った。メンズカジュアルのように、トレンドを捉えて売り切るブランドは強い。
弱いのは資本の効率だ。過去 10 年の自己資本利益率(ROE)の中央値は 3% 台で、資本コストを大きく下回ってきた。不動産の売却益で一度だけ 15% に跳ねた年もあるが、事業の稼ぎではない。在庫は 308 億円あり、売上の 2 割近い。ファッションは売れ残れば値引きで落とすので、在庫は利益の先食いにもなる。
経営は改革に力を入れている。EC の統合、本社人員の約 2 割削減、持ち合い株の売却、自社株買いと、株主を意識した手を一通り打った。社長は「小売りの考え方」への転換を掲げる。ただ、構造改革の効果は想定どおりでも、売上が計画に届かず、営業利益は目標に届かなかった。コストを削る段階は終わり、これからは売り上げを伸ばせるかが問われる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のアパレル市場は成熟している。2024 年の総小売り額は約 8 兆 5,000 億円で、前の年より 1.7% 増えた。4 年続けて増えたが、1990 年代の約 15 兆円からは 4 割ほど縮んだ。人口が減る中、筆者は服の「点数」は 10 年でゆるやかに減ると見る。値段が物価で上がる分が、市場の金額を支える。
競争は激しい。価格の軸ではユニクロやしまむらが、通販ではゾゾタウンが客を集める。海外の大手ブランドも、アウトドアやゴルフの高い値段帯を取りにくる。TSI のように中間の値段帯で多くのブランドを持つ会社は、どこかで強みが薄れやすい。
客は 2 極に分かれている。個性とトレンドを持つブランドには、多少高くても買う。長い歴史があっても今の気分に合わないブランドや、低価格で競うブランドは売れない。百貨店の売り場が縮み、郊外や駅ビル、通販へ客が移る流れも続く。2026 年 2 月期に百貨店の売上が 15% 減ったのが、その表れだ。
追い風もある。訪日客の買い物は大きい。2026 年はこれが期待より弱い時期もあったが、デイトナの店では台湾などの客が買う。メンズのアメリカンカジュアルは、古着や復刻の流行に乗って伸びる。賃上げで衣料にお金を使う余力も出ている。
業界の分かれ目は、流行が一過性で終わるか、定着するかだ。定着するなら、メンズカジュアルを握る TSI の優位は続く。一過性なら、店と在庫が重荷に変わる。
資本政策と M&A
還元は厚い。2025 年 7 月に 120 億円、2026 年 4 月に 30 億円の自社株買いを行い、3 年間で約 200 億円になる。配当は配当性向 30% 以上を基本とし、特別配当を加えて自己資本の 4% 水準を目指す。
買収は積極的だ。デイトナに 283 億円を使い、借入も増やした。借入金は約 450 億円で、手元の現預金は 285 億円だ。純現金だった会社が、1 年で純負債 170 億円ほどの会社に変わった。
持ち合い株は減らしている。2026 年 2 月期は売却益を 34 億円出した。投資有価証券はなお 286 億円あり、含み益は 113 億円ある。含み益の税後(約 79 億円)は、余った資産として中立にも足し、悲観の床も支える。
大株主は信託銀行(約 14%)、日本生命(約 6%)などで、支配する株主はいない。外から見て買収しやすい配置だ。kabufu の推計では、10 年以内に買収・TOB が起きる確率は 21% ある。
今後は、買収を使い切って借入を返すのか、還元に回すのかが焦点だ。前者に傾けば、ROE は上がりにくい。
還元は方針(配当性向30%以上、特別配当で自己資本の4%水準、自社株買い)に沿い、中立は純利益の合計の約8割。持ち合い株の含み益79億円は還元に入れず時価総額に足す。
点検済み:中立の営業利益率4.2%は会社予想(28年2月期4.3%)以下で、服飾の3.8%は今(2.6%)から戻す姿。目標10%は採らず、計画を下げた経緯も文章に残してある。数字は据え置く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
構造改革は終わり、利益が出る体質になった。2 年で約 75 億円の改善が出ている。2027 年 2 月期の第 1 四半期は、営業利益が 25 億円と、この四半期として過去最高だった。既存の事業だけでも売上は前の年を 2.8% 上回り、広告費を前より使って客を呼べている。
買収も成果が見える。FREAK'S STORE は売上が 6% 伸び、台湾に初の路面店を出す。東洋エンタープライズが加われば、アヴィレックスなどとアメカジの市場を取りにいける。ナチュラル・ビューティー・ベーシックやジルも戻っている。
株主への姿勢も変わった。持ち合い株を売り、自社株買いを重ね、配当を自己資本の 4% 水準にした。資本の効率を上げることに本気だ。
物価が 3% で上がる世界では、値付けを守れるブランドは値上げで利益を守れる。営業利益率が 6% に乗れば、10 年後の営業利益は 180 億円を超える。そこに持ち合い株の売却と還元が加われば、ROE は 10% に届く。ここまで行けば、時価総額は今の 2 倍になる。
慎重な見方
稼ぐ力はまだ弱い。2026 年 2 月期の営業利益率は 2.6% だ。改革で 75 億円よくなったと言うが、元が低すぎた。目標の営業利益 100 億円は届かず 75 億円へ下がった。既存の売上が計画より約 100 億円足りないのは、ブランドが弱いからだ。
この会社は 20 年、同じことを繰り返してきた。営業利益率が 1% 台の年が続き、そのたびに改革を掲げる。過去 10 年の ROE の中央値は 3% 台だ。2025 年 2 月期の純利益は、不動産を売った一度きりの益だ。
買収の値段は重い。283 億円を払い、のれんは 322 億円になった。FREAK'S STORE の人気が落ちれば、減損が出る。米国ではすでにのれんを減損した。
店の家賃は固定の約束だ。敷金だけで 92 億円ある。国内人口は減り、百貨店は縮む。ユニクロやゾゾのような強い相手が、同じ客を取り合う。売上が 2 割落ちれば、営業利益はほぼ消える。
国内の点数が 1 割以上減り、メンズカジュアルの流行が去れば、営業利益は 50 億円を割る。そうなれば ROE は 3% に戻り、時価総額は今の 4 割まで落ちる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。構造改革の実績は本物だが、利益の水準が資本コストを超えたことは、まだ一度もない。第 1 四半期の好調も、広告費を戻した効果が混じる。
そこで確率を悲観側へ寄せた。やや悲観を 25%、悲観を 15% に置き、強気は 28% にとどめた。メンズカジュアルの強さと改革の実績は疑わないので、中立の確率は 32% と最も厚くした。構造的な負けまで行く 15% は、買収ののれんと家賃の固定費を見たうえでの数字だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,513 円850 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 640 円360 億円)。 今の値に割り戻すと 1,095 円615 億円、今との差 −6.3%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,120 円1,752 億円 | 926 円520 億円 | +246.3% | +13.2% | 324 円182 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,251 円1,264 億円 | 837 円470 億円 | +164.3% | +10.2% | 618 円347 億円 |
| 中立 | 32% | 1,769 円994 億円 | 801 円450 億円 | +120.1% | +8.2% | 823 円462 億円 |
| やや悲観 | 25% | 746 円419 億円 | 463 円260 億円 | +3.5% | +0.3% | 302 円170 億円 |
| 悲観 | 15% | 401 円225 億円 | 178 円100 億円 | −50.5% | −6.8% | 87 円49 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,513 円850 億円 | 640 円360 億円 | +84.3% | +6.3% | 2,153 円1,209 億円 |
今の株価時価総額 1,168 円656 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 改革が根づき、メンズカジュアルと買収が稼ぎの柱になる 利益 130 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 3,120 円1,752 億円
メンズカジュアルが世代を超えて定着する。アヴィレックスやショットは海外でも売れ、FREAK'S STORE は台湾などへ路面店を広げる。東洋エンタープライズとの組み合わせも、アメカジの市場の取りこぼしを減らす。
国内の点数は人口が減る中でも保たれ、値段は物価並みに上がる。ブランドの入れ替えが進み、粗利率が高いまま、販管費の比率が下がる。営業利益は 185 億円、営業利益率は 6% を超える。
ROE は 10% 台に乗り、資本コストを超える。持ち合い株の売却と自社株買いで、資本の使い方も締まる。ここまで来れば、会社はもう「改革中の会社」ではなく、小売りの稼ぎ手として評価される。
ただし、百貨店系のウィメンズは縮み、店の家賃は固定費として残る。1 つのブランドに頼らない分、爆発的な利益は出にくい。この筋書きが叶うのは、ほぼ全部のブランドが計画どおりに進んだ時だけだ。
- 国内ブランド事業(既存ブランド・関連事業):数量 22.2(販売点数(百万点・推定))× 価格 8,400(1 点あたり売上(円・税抜・値引き後・推定))→ 売上 1,865 億円・営業利益 112 億円。点数は横ばい、1 点あたり売上は上代の改善を含め 1.40 倍、営業利益率 6.0%
- デイトナ・インターナショナル・ウォーターフロント:数量 11.5(販売点数(百万点・推定・年間))× 価格 7,700(1 点あたり売上(円・税抜・推定))→ 売上 882 億円・営業利益 79 億円。点数 1.5 倍(台湾など海外・自社通販・相互送客)、1 点あたり売上 1.40 倍、営業利益率 9%
- 海外(米国ハフ等):数量 2.4(販売点数(百万点・推定))× 価格 5,628(1 点あたり売上(円・卸・推定))→ 売上 135 億円・営業利益 4 億円。点数 1.2 倍、1 点あたり売上 1.34 倍、営業利益率 3%
倍率:事業の純利益 129 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)79 億円。全体の PER 12.96 倍、時価総額 1,750 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 12.67 倍・時価総額 1,647 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:営業利益率を 6% 超にするには、国内の点数を保ちつつ、買収したブランドを伸ばし続ける必要がある。過去 10 年で営業利益率が 3% を超えたのは 1 度だけで、1 割に届かない 8% とした。
やや楽観 20% 営業利益率は 5% を超え、ほぼ計画に近い姿になる 利益 98 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,251 円1,264 億円
メンズカジュアルとデイトナが伸び、百貨店系ウィメンズは縮小が止まる程度に回復する。会社の目標の 10% には届かないが、営業利益率は 5% を超える。
国内の点数は 3% ほど減るが、値段は物価に近く上がる。デイトナは台湾への進出やグループ内の通販の相互送客で点数が 1.35 倍になる。構造改革の効果が 10 年たっても残り、販管費の比率は低いまま保たれる。
営業利益は 141 億円。純利益は 98 億円で、ROE は 8% 台だ。資本コストにほぼ並ぶ。
買収は 1 件ずつ慎重に行い、大きな失敗は避ける。持ち合い株は売りきり、借入を返しつつ自社株買いを続ける。ブランドの入れ替えは続くが、筋は通る。会社は小売りの収益力を取り戻した姿になる。
- 国内ブランド事業(既存ブランド・関連事業):数量 21.5(販売点数(百万点・推定))× 価格 8,160(1 点あたり売上(円・税抜・値引き後・推定))→ 売上 1,757 億円・営業利益 88 億円。点数 0.97 倍、1 点あたり売上 1.36 倍、営業利益率 5%
- デイトナ・インターナショナル・ウォーターフロント:数量 10.3(販売点数(百万点・推定・年間))× 価格 7,480(1 点あたり売上(円・税抜・推定))→ 売上 771 億円・営業利益 62 億円。点数 1.35 倍、1 点あたり売上 1.36 倍、営業利益率 8%
- 海外(米国ハフ等):数量 2.2(販売点数(百万点・推定))× 価格 5,628(1 点あたり売上(円・卸・推定))→ 売上 124 億円・営業利益 1 億円。点数 1.1 倍、営業利益率 1%
倍率:事業の純利益 97 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)79 億円。全体の PER 11.97 倍、時価総額 1,239 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:第 1 四半期の営業利益は過去最高で、メンズカジュアルと買収は計画に沿う。ただ既存の売上の下振れが続いており、計画どおりとまでは言えない。2 割とした。
中立 32% 営業利益率は 4% 台、人口減を値上げで補って横ばい圏 利益 75 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,769 円994 億円
国内の点数は人口の減少に合わせて 5% ほど減る。値段は物価並みに上がり、売上は今の姿のまま 4 割ほど増える。構造改革の効果は残り、営業利益率は 4% 台になる。
メンズカジュアルとデイトナは伸びるが、百貨店系ウィメンズの縮小がそれを一部打ち消す。ブランドは入れ替わり続け、売り切る経営が定着するかは半々だ。
営業利益は 104 億円、純利益は 75 億円。借入の利息は上がるが、受取配当が穴を埋める。ROE は 7% 前後で、資本コストにはまだ届かない。
配当は自己資本の 4% 水準を保ち、自社株買いも続けるが、利益が足りないぶん資本の厚みは減っていく。買収は小粒なものにとどまり、会社は今の延長線で続く。筆者がいちばん起こりやすいと見る姿だ。
- 国内ブランド事業(既存ブランド・関連事業):数量 21.1(販売点数(百万点・推定))× 価格 8,040(1 点あたり売上(円・税抜・値引き後・推定))→ 売上 1,696 億円・営業利益 64 億円。点数 0.95 倍、1 点あたり売上 1.34 倍(物価並み)、営業利益率 3.8%
- デイトナ・インターナショナル・ウォーターフロント:数量 9.2(販売点数(百万点・推定・年間))× 価格 7,370(1 点あたり売上(円・税抜・推定))→ 売上 675 億円・営業利益 47 億円。点数 1.2 倍、1 点あたり売上 1.34 倍、営業利益率 7%
- 海外(米国ハフ等):数量 1.9(販売点数(百万点・推定))× 価格 5,628(1 点あたり売上(円・卸・推定))→ 売上 107 億円・営業利益 0 億円。点数 0.95 倍、営業利益は損益ゼロ
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)79 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 948 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の点数の減少と物価並みの値上げがちょうど釣り合う、最も起こりやすい姿として最も厚く置いた。
やや悲観 25% ブランドが疲れ、営業利益率は 2% 台に戻る 利益 35 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 746 円419 億円
国内の点数は 1 割ほど減る。百貨店系ウィメンズの縮小が止まらず、メンズカジュアルの流行も落ち着く。値段は物価ほど上げられず、競争で一部を値下げする。
デイトナは新しい店を出しても似た店ばかりになり、点数が伸びない。のれんの一部は減損するが、大きくは崩れない。営業利益率は 2% 台に戻る。
営業利益は 47 億円、純利益は 35 億円。ROE は 3% 台と、過去 10 年の中央値の水準だ。店の家賃は固定費として残り、売上の落ち込みがそのまま利益を削る。
配当は特別配当をやめて、自己資本の 2% ほどに下げる。自社株買いは止まり、借入の返済に回る。会社の姿は過去 10 年に近い。資本コストを稼げない会社として評価される。
- 国内ブランド事業(既存ブランド・関連事業):数量 19.5(販売点数(百万点・推定))× 価格 7,800(1 点あたり売上(円・税抜・値引き後・推定))→ 売上 1,524 億円・営業利益 30 億円。点数 0.88 倍、1 点あたり売上 1.30 倍、営業利益率 2%
- デイトナ・インターナショナル・ウォーターフロント:数量 7.6(販売点数(百万点・推定・年間))× 価格 7,150(1 点あたり売上(円・税抜・推定))→ 売上 546 億円・営業利益 27 億円。点数は横ばい、1 点あたり売上 1.30 倍、営業利益率 5%
- 海外(米国ハフ等):数量 1.6(販売点数(百万点・推定))× 価格 5,460(1 点あたり売上(円・卸・推定))→ 売上 87 億円・営業利益 −3 億円。点数 0.8 倍、営業赤字 3%
倍率:ROE 3% は k 8.5% を大きく下回る。PER の上限は 1÷k の約 11.8 倍だが、稼ぐ力が低く家賃の固定費も残るので、その約 68% に置いた。 余った資産は今の額の 0.75 倍(約 59 億円)に戻り方 1.0 を掛けて足した。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8 倍・時価総額 333 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:営業利益率が 3% を超えた年は過去 10 年で 1 度だけだ。今の改善が一時的なものに終わり、元の水準近くに戻る筋書きは十分ありうる。2 割台半ばとした。
悲観 15% ブランドが構造的に負け、のれんと家賃が重荷になる 利益 −10 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 401 円225 億円
ブランドの多くが一番手になれず、安いか個性的な相手に客を奪われる。国内の点数は 25% 減り、値段も上げられない。メンズカジュアルの流行が終わると、デイトナの売上は 2 割落ちる。
店は閉めたいが、敷金と原状回復の費用がかかり、家賃の約束も残る。固定費は売上ほどには落ちない。営業利益は赤字になり、買収ののれんは大きく減損される。米国や海外事業も縮小・撤退となる。
自己資本は 520 億円ほどに減る。配当は大きく削り、自社株買いは止まる。
その時の価値は、稼ぐ力ではなく、売れる資産で決まる。持ち合い株の売却、投資不動産、在庫と売掛金の換金から借入と買掛金を引いた分だ。それでも優良な会社ではなくなる。
- 国内ブランド事業(既存ブランド・関連事業):数量 16.7(販売点数(百万点・推定))× 価格 7,500(1 点あたり売上(円・税抜・値引き後・推定))→ 売上 1,249 億円・営業利益 −12 億円。点数 0.75 倍、1 点あたり売上 1.25 倍、営業赤字 1%
- デイトナ・インターナショナル・ウォーターフロント:数量 6.1(販売点数(百万点・推定・年間))× 価格 6,875(1 点あたり売上(円・税抜・推定))→ 売上 420 億円・営業利益 8 億円。点数 0.8 倍、営業利益率 2%
- 海外(米国ハフ等):数量 0.8(販売点数(百万点・推定))× 価格 5,250(1 点あたり売上(円・卸・推定))→ 売上 42 億円・営業利益 −4 億円。点数 0.4 倍に縮み、赤字 10%
倍率:赤字なので PBR で置く。稼ぐ力はないので、床は売れる資産の税後から出す。決算時の自己資本 993 億円に 0.227 倍を掛けて約 225 億円。
確率:ファストファッションと通販の攻勢、百貨店の縮小、買収ののれんと店の家賃が重なる構造的な負けとして 15% とした。この会社は過去にも営業赤字になった年がある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内ブランド事業(既存ブランド・関連事業)
ナノ・ユニバース、アヴィレックス、パーリーゲイツなど約 50 ブランド。店・自社通販・他社通販で売る。販売代行や店舗設計などの関連事業も含む。
| 数量販売点数(百万点・推定) | 価格1 点あたり売上(円・税抜・値引き後・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 22.2 | 6,000 | 1,332 | 34 |
| 10 年後 中立 | 21.1 | 8,040 | 1,696 | 64 |
取り方:売上 1,671 億円から、新規連結のデイトナ・WF(約 255 億円)と海外(84 億円)を除いた約 1,332 億円。国内の衣料総小売り約 8.5 兆円に対しシェアは約 1.6%。1 点あたり売上は、ブランドごとの上代(約 3 千円〜1.5 万円)と値引きの実績から約 6 千円と置き、点数は逆算した。営業利益は、全社 43 億円から新規連結分(約 14 億円)と海外の赤字を除き、本社費を含めた形で約 34 億円と推定。
デイトナ・インターナショナル・ウォーターフロント
FREAK'S STORE など約 60 店と自社通販 Daytona Park を持つ小売り。2025 年 9 月に連結。傘のウォーターフロントも 2025 年 12 月に加わった。
| 数量販売点数(百万点・推定・年間) | 価格1 点あたり売上(円・税抜・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 7.6 | 5,500 | 420 | 28 |
| 10 年後 中立 | 9.2 | 7,370 | 675 | 47 |
取り方:2026 年 2 月期は約半年分(約 255 億円)しか連結されていないため、年間で置いた姿(デイトナ約 400 億円+ウォーターフロント約 20 億円)にした。そのぶんこの欄の合計は決算の売上・営業利益より大きい。営業利益率は買収額 283 億円と年商から約 7% と推定(非開示)。1 点あたり売上は約 5.5 千円と置いた。
海外(米国ハフ等)
米国のストリートブランド「ハフ」の卸が中心。前期に米国の一部事業を撤退し、縮小中。
| 数量販売点数(百万点・推定) | 価格1 点あたり売上(円・卸・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 2.0 | 4,200 | 84 | −5 |
| 10 年後 中立 | 1.9 | 5,628 | 107 | 0 |
取り方:海外売上は 84 億円で前の期より 30% 減った。卸中心なので 1 点あたり売上は小売りより低い約 4.2 千円と置き、点数は逆算した。のれん減損を除いても赤字と推定。
リスクと懸念
既存ブランドの売上不振
2026 年 2 月期は、新規連結を除くと売上が前の年の約 9 割だった。主力ブランドの客数が戻らず、会社は営業利益の目標を 100 億円から 75 億円へ下げた。百貨店系ウィメンズの縮小が止まらなければ、改革の効果が消える。
買収ののれんと減損
デイトナの取得に 283 億円を使い、のれんは 322 億円になった。FREAK'S STORE の人気が落ちれば、減損が出る。米国ではのれんの減損を済ませたが、同じことが起きうる。買収が続けば借入も増える。
店の家賃という固定費
店の敷金・保証金だけで 92 億円ある。家賃は売上が落ちても減らない。2028 年 3 月期ごろから新リース会計が始まり、借入のような約束が貸借対照表に載ると、自己資本比率の見え方も変わる。
流行と気温の変動
アパレルは流行と天候に左右される。暖冬や猛暑で冬物が売れないと、在庫が積み上がり、値引きで粗利が落ちる。在庫は約 308 億円で、売上の 2 割近い。
訪日客の変動
デイトナや FREAK'S STORE の店では、訪日客の買い物が一定の割合を占める。日中関係や為替で訪日客が減ると、店の売上が落ちる。2026 年は訪日客の動きが期待より弱い時期があった。
ブランドの入れ替えと撤退コスト
不振ブランドの撤退・店の閉鎖は、短期的に減損や原状回復の費用を生む。2026 年 2 月期も減損損失が約 19 億円あった。入れ替えが続く限り、この費用は毎年出る。
買収・TOB の可能性
支配する株主がおらず、時価総額は 700 億円ほどと小さい。kabufu の推計では、10 年以内の買収・TOB の確率は 21%。起きれば株価は上がるが、この分析には織り込まない。
今後の分かれ目
- 既存ブランドの売上が 2 四半期続けて前の年を 3% 以上上回る
- 百貨店系ウィメンズが底を打った可能性が高い。強気の筋書きの確率を上げてよい。
- FREAK'S STORE の売上が前の年の水準を割る
- 283 億円の買収の前提が崩れる。のれんの減損と、悲観側の確率の引き上げを考える。
- 2027 年 2 月期の営業利益が、計画の 75 億円を超えて着地する
- 構造改革の効果が売上の下振れを超えたことを意味する。中立の筋書きの営業利益率を引き上げる材料になる。
- 自社株買いを借入で続け、純負債が 300 億円を超える
- 資本コストを稼げない会社が借金で ROE を取り繕う形になる。価値は上がらず、リスクだけ増える。
- 東洋エンタープライズの買収が完了し、アメカジの売上が目に見えて伸びる
- メンズカジュアルが第 2 の柱になる。強気の確率を上げる材料になる。
- 百貨店や駅ビルの退店が加速し、売上が 1 年で 5% 以上落ちる
- 国内の店舗網が不良資産になる入り口だ。悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 新規連結を除いた既存ブランドの売上と、四半期ごとの既存店売上高
- FREAK'S STORE の売上、台湾の路面店の立ち上がり
- 営業利益率(2027 年 2 月期の計画 3.8%)と粗利率
- 純有利子負債と、のれんの減損の有無
- 自社株買いの規模と、持ち合い株の売却額
- 新リース会計の影響額(2028 年 3 月期から)
倍率と資本コストの決め方
今の株価から逆算していない。セグメントごとに点数(人口の減少で国内は 0.95〜0.75 倍、買収ブランドは 1.2〜1.5 倍)と 1 点あたり売上(物価並みの 1.34 倍が中立)で 10 年後の売上を積み、営業利益率(過去の最高 3.2% を超える 4% 台を中立)をかけた。倍率は、ROE が資本コスト 8.5% を下回るので、PER の上限 1÷k(約 11.8 倍)の 7〜9 割に置いた。強気の筋書きでは ROE が k を超えるので、式から約 12.6 倍の約 87%。今の PER・PBR は見ていない。持ち合い株の含み益の税後 79 億円を余った資産として足した(戻り方 1.0)。自己資本は、2026 年 4 月の自社株買い 30 億円を引いた約 963 億円から、純利益の合計と還元で流した。新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で営業利益と純負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れる)でそろえた。デイトナは 2026 年 2 月期に半年分しか連結されていないため、年間の姿で置いた。そのぶん segments の合計は決算より大きい。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。