結論
モリタは、消防車で国内の約6割を握る会社だ。消火器は首位、ごみ収集車や衛生車も強い。売上の6割が消防車、2割が防災設備である。
筆者の結論は「割安」だ。10年で見た本質価値は、今の時価総額を3割半ほど上回る。決め手は、安定した本業と、時価総額の4分の1に当たる純現金が、今の値段に十分織り込まれていないことだ。
本業の強さは需要の安定にある。消防車は自治体が税金で買い、全国の消防本部が一台ずつ仕様を決める。年1,000〜1,200台ほどの小さな市場だが、大きく崩れることはない。この市場でモリタは台数を作れる唯一の存在で、競合は地場の小さなメーカーが中心だ。
成長は大きくない。国内の消防車は台数がほとんど伸びず、利益の伸びは値上げと高付加価値化、そして海外にかかる。フィンランドのBronto社(高所作業車・はしご車)が海外の柱だ。
気がかりは資本の使い方だ。会社は5年で620億円の成長投資枠を掲げた。前の中計で使ったのは50億円だけで、時価総額の6割にあたる額を買収に使えば、成否がそのまま価値を左右する。そこで筆者は確率を慎重側にも厚く置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、モリタは「買い手の財布が安定した、小さな寡占の会社」だ。
10年後もこの事業は残る。火事はなくならず、消防本部は車を買い替える。堀は幅広くはないが、台数と整備網と実績に根ざしていて、崩れにくい。事業を維持するのに必要な設備投資は小さく、稼いだ利益のほとんどが株主のものになる。オーナー利益が安定して出るのが、この会社のいちばんの魅力だ。
問題は、そのお金の使い道だ。現金をためてきた経営が、620億円の買収枠をうまく使えるかどうか。時価総額の6割にあたる額を、はじめて大きく動かす会社である。筆者は、ここを最大の不確実性と見る。
安全域は、純現金と、利益に対して低い今の値段にある。買収に失敗して現金の半分を失っても、本業の稼ぎだけで元は取れる。最悪の場合でも、工場の土地、保有株、運転資本の回収で、今の時価総額の半分ほどは残る。
分かりやすい事業で、競争の形も読める。予測のしやすさという点では、輸送用機器の中でも高い方に入る。
何で稼ぐ会社か
モリタは、消防・防災・環境の3分野で車と設備を作る会社だ。1907年に消火器の製造で創業し、今は4つの事業を持つ。
いちばん大きいのは消防車輌事業で、売上の61%、営業利益の53%を稼ぐ。ポンプ車、はしご車、コンビナート向けの大型車まで一台ずつ作る。買い手の多くは自治体で、競争入札で決まる。納車のあとの点検や部品も収益になる。海外では2016年に買ったBronto社が、最大地上112メートルのはしご車と高所作業車を100か国超に売る。
防災事業は売上の21%だが、営業利益の33%を稼ぐ高採算の事業だ。消火器は国内首位で、2008年に宮田工業を買って首位に立った。後付けできるパッケージ型の自動消火設備「スプリネックス」は、病院や小規模マンションの設置義務化の追い風を受けている。大型の消火設備案件は年によって波があり、2026年3月期はその反動で売上が6%減った。
環境車輌(売上12%)は、衛生車(バキュームカー)とごみ収集車だ。衛生車のシェアは8割を超える。産業機械(売上6%)は、鉄スクラップの切断機やリサイクルプラントで、切断機のシェアは6割を超える。
どの事業も、完成車メーカーから買ったトラックのシャシに専用の架装をする。シャシの供給が止まると、作れなくなる。2022年度の営業利益率が6%に落ちたのは、半導体不足によるシャシの遅れが原因だった。
優良さと弱いところ
筆者が評価するのは、同じ顔ぶれを長く相手にする商売の安定感だ。消防本部や自治体は何十年も付き合う顧客で、一度納めた車の整備と部品もモリタが受ける。
堀は台数にある。消防車は一台ずつ違う注文品だが、同じ仕様の作り込みを年数百台こなせるメーカーは他にない。自社製の圧縮空気泡消火装置(CAFS)を載せられるのも強みで、競合は輸入品を使う。シェアは2000年の4割から6割へ上がった。値下げで取ったのでなく、機能で取ったシェアだ。
利益率は高い。営業利益率は2025年度に13.3%と過去最高になった。ただ、2022年度の6.2%を見れば、供給網が止まった時のもろさもわかる。
弱みは二つある。一つは入札だ。値段の主導権は自治体にあり、需要も自治体の財政に縛られる。もう一つは資本効率だ。ROEは過去10年の中央値で9.3%と、資本コストをわずかに上回る程度にとどまる。現金をため込む傾向があり、前の中計の目標ROE 10%も9.6%で未達だった。
財務は強い。自己資本比率は69%、純現金が254億円ある。借金で傾く心配はほぼない。その分、手元の現金をどう使うかが、経営の腕の見せどころになる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の消防車市場は、小さく、安定していて、伸びない。保有台数は約2.5万台で長く横ばい、新車は年1,000〜1,200台ほどだ。1990年代には年1,600台あったが、消防車の購入が自治体の予算になって買い替えの間隔が延び、減った。
人口が減り、自治体の財政も厳しくなる。台数は10年で緩やかに減る、と筆者は見る。一方で、車の値段は物価と、高度な装備で上がる。はしご車は1台2億円を超え、ポンプ車は3,000〜4,000万円だ。
競合は国内に14社あるが、2位は片倉工業子会社の日本機械工業で、残りは地場の小さなメーカーだ。電動化や自動運転の流れが消防にも来れば、開発費を負担できない小さな会社には重くなる。モリタには追い風だ。ただし、消防車用のEVシャシは電池の重さと容量の壁があり、実用化は先になる。
海外は広い。欧州と北米では、はしご車と高所作業車の需要がインフラ投資と共に伸びている。Brontoは北米で過去最大の高所作業車を受注した実績がある。競合は、ドイツのRuthmannやPalfinger、消防車ではRosenbauerがいる。
防災では、消防法の改正で小規模な施設にもスプリンクラーが義務づけられた。後付けしやすい製品が選ばれる。産業機械は、電炉の増加で鉄スクラップが増えると追い風になる。環境車輌は人口減で台数が減るが、更新需要は続く。
資本政策と M&A
資本政策は、これまで守りだった。前の中計(2019〜2025年度)は成長投資枠を200億円としたが、実際に使ったのは累計50億円だけだ。その間に純現金は2019年3月期の33億円から254億円へ積み上がった。
新しい中計「Morita Growth 2030」(2026〜2030年度)は姿勢が違う。営業利益200億円、ROE 10%以上、配当は純資産の3.5%以上を目安にする。5年で営業キャッシュ760億円と借入240億円を集め、620億円を成長投資に、330億円を株主還元に回す計画だ。成長投資の中心は買収で、欧州の消防車メーカーを狙うという報道もあった。
政策保有株も減らす方針で、簿価152億円の投資有価証券が現金に変わる可能性がある。自社株買いは発行済株式の10%を上限に弾力的に行う。
株主は信託銀行や生保、銀行が中心で、第一生命やみずほ銀行、エア・ウォーターが4%台を持つ。支配株主はいない。10年のうちに買われる側になる可能性は、筆者は大きくはないと見るが、ゼロではない。
還元の点検(P3 2026-10-19):中計2030は5年で還元330億円(年66億円=利益の約6割)、配当は純資産の3.5%以上。中立の約54%はその範囲。直さず。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内消防車は年1,000〜1,200台の安定した市場で、シェア6割のモリタが値段を決める側に回りつつある。自社製のCAFSなど高付加価値の装備で、価格競争に頼らずシェアを4割から6割に上げた実績がある。2025年度の営業利益率13.3%は、その成果だ。
防災事業の高採算は続く。消防法の改正で小さな施設にもスプリンクラーが義務化され、後付けのスプリネックスが伸びる。消火器は首位で、更新と点検の需要が毎年積み上がる。
成長はこれから本格化する。新しい中計は5年で営業利益を155億円から200億円に増やす計画で、成長投資枠は620億円と前の3倍超ある。Brontoは北米の高所作業車で過去最大の案件を取っており、欧州で2社目の買収に成功すれば、海外が国内に並ぶ。
そのうえ、純現金は時価総額の4分の1ある。配当は純資産の3.5%以上を目安に、自社株買いも加われば、10年で時価総額に近い額が株主に戻る。今の値段は、この安定と現金の厚みを十分に評価していない。
慎重な見方
国内の消防車は、台数が伸びない市場だ。人口が減り、自治体の財政は厳しくなる。入札では値段の主導権が買い手にあり、利益率をこれ以上上げるのは難しい。2025年度の営業利益率13.3%は、大型の防災案件とBrontoの好調が重なった山である。ならすと11〜12%が実力だ。
経営の資本効率は低い。前の中計で使えた成長投資は200億円の枠に対して50億円で、純現金は積み上がる一方だった。ROEは10年の中央値で9.3%と、資本コストにわずかに届く程度だ。
今度の中計は、620億円の投資枠で、買収を前提にしている。時価総額が1,000億円ほどの会社が、その6割の額を買収に使うのは大きな賭けだ。買収の経験は宮田工業とBrontoの2件で、欧州の消防車メーカーに高い値段を払えば、減損のリスクがある。
シャシ供給という弱点もある。2022年度は半導体不足でシャシが届かず、営業利益率が6%まで落ちた。同じことはまた起こりうる。中国メーカーが高所作業車や消防車に進出すれば、Brontoの優位も揺らぐ。
どちらに重みを置いたか
本業の安定と現金の厚みは確かで、慎重な見方が突く「利益率は山」「買収が失敗する」という指摘にも、事実の裏づけがある。そこで、中立の利益率は今より低い12.5%にとどめ、確率は中立を中心に置きながら、やや悲観を2割、悲観を1割と厚めに取った。ただ、本業が壊れない限り、最悪の筋書きでも今の時価総額の約半分は残る。この非対称さが、強気の見方をわずかに優勢にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,957 円2,449 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,551 円638 億円)。 今の値に割り戻すと 4,051 円1,665 億円、今との差 +61.3%、 期待の年率 +11.6%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 9,381 円3,857 億円 | 2,189 円900 億円 | +360.8% | +16.5% | 1,157 円476 億円 |
| やや楽観 | 25% | 7,710 円3,170 億円 | 1,946 円800 億円 | +284.5% | +14.4% | 2,414 円992 億円 |
| 中立 | 35% | 6,793 円2,793 億円 | 1,581 円650 億円 | +233.5% | +12.8% | 2,931 円1,205 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,959 円1,217 億円 | 1,095 円450 億円 | +61.4% | +4.9% | 811 円333 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,216 円500 億円 | 730 円300 億円 | −22.5% | −2.5% | 195 円80 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,957 円2,449 億円 | 1,551 円638 億円 | +199.0% | +11.6% | 7,507 円3,086 億円 |
今の株価時価総額 2,511 円1,032 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:買収が当たり、海外が国内に並ぶ 利益 200 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 9,381 円3,857 億円
成長投資枠を使った欧州の消防車メーカーの買収が当たり、海外の消防車・高所作業車が国内に並ぶ規模になる。Brontoは北米のインフラ投資と電力会社向けの高所作業車で台数を倍以上に増やし、買収した会社の販売網と合わせて欧州でも存在感を高める。国内は消防車の台数が横ばいのまま、CAFSなど高付加価値の装備でシェアを6割台前半へ押し上げ、値段も物価を上回って上がる。防災では大型の消火設備案件が定着し、スプリネックスが介護施設や小規模ビルに広がる。純現金は買収と還元に回り、ROEは13%台に上がる。会社が掲げる営業利益200億円は2030年前後に達成され、10年後にはそれを5割近く上回る。
- 国内消防車:数量 670(国内の新車需要(台)× モリタのシェア)× 価格 10,858(1台あたりの売上(万円。車両本体と整備・部品の混合))→ 売上 728 億円・営業利益 98 億円。営業利益率13.5%
- 海外消防車・高所作業車:数量 1,600(Bronto と輸出の販売台数(台))× 価格 4,238(1台あたりの売上(万円))→ 売上 678 億円・営業利益 78 億円。営業利益率11.5%
- 防災(消火器・消火設備):数量 320(国内の消火器・消火設備の対象市場(実質億円)× シェア)× 価格 138(値段の指数(2026年3月期=100))→ 売上 442 億円・営業利益 86 億円。営業利益率19.5%
- 環境車輌:数量 880(販売台数(台))× 価格 2,040(1台あたりの売上(万円))→ 売上 180 億円・営業利益 17 億円。営業利益率9.5%
- 産業機械:数量 150(機械・プラント案件の販売数(件))× 価格 6,800(1件あたりの売上(万円。保守を含む))→ 売上 102 億円・営業利益 14 億円。営業利益率14.0%
倍率:事業の純利益 198 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 18.37 倍、時価総額 3,780 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収の成功、北米の高所作業車の拡大、国内シェアの上昇がすべてそろう必要があり、頻度は低い。ただ、前の中計で営業利益率12%を超えた実績があり、無視はできない。
やや楽観 25% やや楽観:中計をほぼ達成し、利益が着実に伸びる 利益 170 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 7,710 円3,170 億円
新中計は、おおむね計画どおりに進む。国内の消防車は台数が緩やかに減るが、シェアが6割台へ上がり、値上げが続くので、売上は増える。Brontoは北米を中心に伸び、小さな買収が1〜2件加わる。防災は、消防法の改正による設置義務と、施設の更新を取り込んで、利益率18%台を保つ。環境車輌と産業機械は、更新需要と電炉向けの鉄スクラップ設備で緩やかに伸びる。現金の一部は買収に、一部は配当と自社株買いに使われる。営業利益は250億円ほどになり、ROEは11%台に乗る。会社の掲げる目標を、少し遅れて達成する姿だ。
- 国内消防車:数量 650(国内の新車需要(台)× モリタのシェア)× 価格 10,701(1台あたりの売上(万円。車両本体と整備・部品の混合))→ 売上 696 億円・営業利益 89 億円。営業利益率12.8%
- 海外消防車・高所作業車:数量 1,150(Bronto と輸出の販売台数(台))× 価格 4,177(1台あたりの売上(万円))→ 売上 480 億円・営業利益 54 億円。営業利益率11.3%
- 防災(消火器・消火設備):数量 312(国内の消火器・消火設備の対象市場(実質億円)× シェア)× 価格 136(値段の指数(2026年3月期=100))→ 売上 424 億円・営業利益 79 億円。営業利益率18.5%
- 環境車輌:数量 870(販売台数(台))× 価格 2,010(1台あたりの売上(万円))→ 売上 175 億円・営業利益 15 億円。営業利益率8.8%
- 産業機械:数量 145(機械・プラント案件の販売数(件))× 価格 6,700(1件あたりの売上(万円。保守を含む))→ 売上 97 億円・営業利益 13 億円。営業利益率13.0%
倍率:事業の純利益 168 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 17.51 倍、時価総額 3,088 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の営業利益200億円を2030年代前半に達成するという、会社計画に近い筋書き。需要は安定しており、実現の確度は高い。
中立 35% 中立:安定した本業が物価並みに伸びる 利益 147 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 6,793 円2,793 億円
国内の消防車は台数が緩やかに減るが、シェアは6割を保ち、値段は物価並みに上がる。10年で国内消防車の売上は3割ほど増える。Brontoは北米と欧州で堅実に伸び、海外の台数は4割近く増える。買収は行うが、規模は小さく、大きな成果も大きな失敗もない。防災は、消火器の更新と設置義務の追い風が続くものの、大型案件の波と先行投資で利益率は17%台に落ち着く。環境車輌は台数が緩やかに減り、利益率は8%前後。営業利益は215億円ほどで、利益率は今よりやや低い12.5%になる。配当は純資産の3%台で出し、自社株買いも加わる。ROEは10%近くで、資本コストをわずかに上回る平凡な水準が続く。
- 国内消防車:数量 630(国内の新車需要(台)× モリタのシェア)× 価格 10,543(1台あたりの売上(万円。車両本体と整備・部品の混合))→ 売上 664 億円・営業利益 80 億円。営業利益率12.0%
- 海外消防車・高所作業車:数量 960(Bronto と輸出の販売台数(台))× 価格 4,115(1台あたりの売上(万円))→ 売上 395 億円・営業利益 42 億円。営業利益率10.5%
- 防災(消火器・消火設備):数量 295(国内の消火器・消火設備の対象市場(実質億円)× シェア)× 価格 134(値段の指数(2026年3月期=100))→ 売上 395 億円・営業利益 69 億円。営業利益率17.5%
- 環境車輌:数量 850(販売台数(台))× 価格 2,010(1台あたりの売上(万円))→ 売上 171 億円・営業利益 14 億円。営業利益率8.0%
- 産業機械:数量 140(機械・プラント案件の販売数(件))× 価格 6,700(1件あたりの売上(万円。保守を含む))→ 売上 94 億円・営業利益 11 億円。営業利益率12.0%
倍率:事業の純利益 144 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 16.95 倍、時価総額 2,598 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は台数が緩やかに減り、値上げと海外で補う筋書き。もっとも重く置く。
やや悲観 20% やや悲観:値下げ圧力と買収の不発で利益が伸び悩む 利益 91 億円 · PER 9.2 倍 · 株価時価総額 2,959 円1,217 億円
自治体の財政が厳しくなり、入札で値下げが進む。国内の消防車はシェアを5割台に落とし、台数も減る。シャシ供給の混乱が再び起こり、受注の消化が遅れる年が出る。Brontoは中国メーカーの参入で値段の下落に押され、海外は伸びない。買収は小粒な案件を割高な値段で買い、期待したほど利益が増えない。防災も大型案件が乏しく、利益率が下がる。営業利益は140億円弱に下がり、ROEは6%台と資本コストを割る。配当は維持するが、自社株買いは小さくなる。現金も残るので、会社が傾くことはない。ただ、優良な会社とは言えなくなり、成長の物語も消える。10年たっても、利益は今の1.4倍にとどまる姿だ。
- 国内消防車:数量 600(国内の新車需要(台)× モリタのシェア)× 価格 10,071(1台あたりの売上(万円。車両本体と整備・部品の混合))→ 売上 604 億円・営業利益 57 億円。営業利益率9.5%
- 海外消防車・高所作業車:数量 760(Bronto と輸出の販売台数(台))× 価格 3,931(1台あたりの売上(万円))→ 売上 299 億円・営業利益 21 億円。営業利益率7.0%
- 防災(消火器・消火設備):数量 260(国内の消火器・消火設備の対象市場(実質億円)× シェア)× 価格 128(値段の指数(2026年3月期=100))→ 売上 333 億円・営業利益 45 億円。営業利益率13.5%
- 環境車輌:数量 800(販売台数(台))× 価格 1,920(1台あたりの売上(万円))→ 売上 154 億円・営業利益 8 億円。営業利益率5.5%
- 産業機械:数量 115(機械・プラント案件の販売数(件))× 価格 6,400(1件あたりの売上(万円。保守を含む))→ 売上 74 億円・営業利益 6 億円。営業利益率8.0%
倍率:事業の ROE 6.5% は k 7.25% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER の上限は 1÷k = 13.8 倍。入札の値下げと買収の不発で稼ぐ力が落ちた姿なので、上限の約 6.6 割の 9.5 倍に置いた。余った現金は 0.75 倍の 112 億円を戻り方 0.5 で足した。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.2 倍・時価総額 933 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:自治体の財政悪化による値下げ圧力、シャシ供給の混乱、買収の不発が重なる筋書き。620億円の投資枠をはじめて大きく使う会社なので、通常より厚く置いた。
悲観 10% 悲観:買収に失敗して現金を失い、本業も削られる 利益 10 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,216 円500 億円
欧州の消防車メーカーを高値で買い、統合がうまくいかず、のれんの減損で250億円ほどの損失を出す。買収に使った現金の大半が失われ、自社株買いは止まる。国内では、入札で価格競争が激しくなり、シェアを5割台半ばに落とす。Brontoも中国メーカーの低価格攻勢で赤字に陥る。環境車輌と産業機械は、利益がほぼ出なくなる。もう優良とは言えない会社で、営業利益は20億円に届かない。配当は保有株の売却で払って維持する。それでも工場の土地、保有株、運転資本の回収を税引き後で合わせれば、今の時価総額の半分ほどは残る。この筋書きでも、会社が消えることはない。本業の骨格が、消防車の入札と整備の仕事に残るからだ。
- 国内消防車:数量 560(国内の新車需要(台)× モリタのシェア)× 価格 9,048(1台あたりの売上(万円。車両本体と整備・部品の混合))→ 売上 507 億円・営業利益 20 億円。営業利益率4.0%
- 海外消防車・高所作業車:数量 600(Bronto と輸出の販売台数(台))× 価格 3,378(1台あたりの売上(万円))→ 売上 203 億円・営業利益 −4 億円。営業利益率-2.0%
- 防災(消火器・消火設備):数量 220(国内の消火器・消火設備の対象市場(実質億円)× シェア)× 価格 115(値段の指数(2026年3月期=100))→ 売上 253 億円・営業利益 15 億円。営業利益率6.0%
- 環境車輌:数量 720(販売台数(台))× 価格 1,725(1台あたりの売上(万円))→ 売上 124 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
- 産業機械:数量 90.0(機械・プラント案件の販売数(件))× 価格 5,750(1件あたりの売上(万円。保守を含む))→ 売上 52 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
倍率:赤字に近い筋書きなので、稼ぐ力でなく売れる資産で測る。工場の土地建物、保有株、運転資本の回収超過を税引き後で足した 500 億円を床とし、今の自己資本 1,012 億円の約 0.49 倍に置いた。
確率:620億円規模の買収で失敗し、減損と本業の不振が同時に来る筋書き。モリタは大型買収の経験が浅く、10年の確率として10%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内消防車
国内の消防車(ポンプ車・はしご車・救助車など)と、その点検・整備・部品。自治体の入札で買われる。
| 数量国内の新車需要(台)× モリタのシェア | 価格1台あたりの売上(万円。車両本体と整備・部品の混合) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 638 | 7,868 | 502 | 60 |
| 10 年後 中立 | 630 | 10,543 | 664 | 80 |
取り方:2026年3月期の消防車輌事業 717 億円のうち、海外分を推定 215 億円とおき、国内を 502 億円とした。国内の新車需要は年約 1,100 台、シェアは 58% 前後(60% とする資料もある)で 638 台。台数で割った 1 台あたり売上は、点検・部品の収益と、はしご車などの高額車を含む混合単価。分け方は筆者の推定。
海外消防車・高所作業車
フィンランドのBronto社(屈折はしご車・高所作業車)と、日本からの消防車の輸出。
| 数量Bronto と輸出の販売台数(台) | 価格1台あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 3,071 | 215 | 22 |
| 10 年後 中立 | 960 | 4,115 | 395 | 42 |
取り方:消防車輌事業のうち Bronto と輸出の売上を 215 億円と推定(全社の海外売上比率 22.5% から、防災などの海外分を引いた額)。販売台数は 700 台と推定(調査会社の資料に約 700 台の記述)。1 台あたり売上はその割り算。営業利益は筆者の推定で国内より低い 10% とした。
防災(消火器・消火設備)
消火器、パッケージ型自動消火設備、大型の消火設備工事。消火器は国内首位(シェア36%)。
| 数量国内の消火器・消火設備の対象市場(実質億円)× シェア | 価格値段の指数(2026年3月期=100) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 100 | 250 | 51 |
| 10 年後 中立 | 295 | 134 | 395 | 69 |
取り方:防災事業の売上 250 億円を、対象市場(消火器・後付け自動消火設備・大型消火設備)の推定規模 1,000 億円(実質)× シェア 25% の 250 と見た。市場規模の公開統計は見つからず、筆者の推定。価格の欄は値段の指数で 100 が基準。
環境車輌
衛生車(バキュームカー)とごみ収集車(塵芥車)。衛生車のシェアは8割超。
| 数量販売台数(台) | 価格1台あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 900 | 1,500 | 135 | 13 |
| 10 年後 中立 | 850 | 2,010 | 171 | 14 |
取り方:環境車輌事業の売上 135 億円を、年約 900 台、1 台約 1,500 万円と推定した。台数の開示は無く、塵芥車と衛生車の平均価格(1,000〜1,800 万円)からの逆算。
産業機械
鉄スクラップの切断機、リサイクル設備、ごみ処理施設の設計・施工と保守。切断機のシェアは6割超。
| 数量機械・プラント案件の販売数(件) | 価格1件あたりの売上(万円。保守を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 130 | 5,000 | 65 | 9 |
| 10 年後 中立 | 140 | 6,700 | 94 | 11 |
取り方:産業機械事業の売上 65 億円を、機械・プラント案件 130 件、1 件約 5,000 万円と推定。開示は無く、切断機は数千万円、プラントは億円規模という混合から置いた。
リスクと懸念
買収の失敗
5年で620億円の成長投資枠は、時価総額の6割にあたる。買収の経験は宮田工業とBrontoだけで、高い値段を払うと、のれんの減損で利益と純資産を同時に傷める。前の中計で投資枠を使い切らなかった経営が、今回は大きく動く点が最大の不確実さだ。
シャシ供給の途絶
消防車も衛生車も、トヨタ・いすゞ・日野などのトラックのシャシに架装する。供給が止まれば、受注があっても作れない。2022年度は半導体不足で営業利益率が6.2%まで落ちた。同じことは繰り返しうる。
自治体の財政と入札
消防車の買い手の多くは自治体で、競争入札だ。財政が厳しくなれば更新が先送りされ、台数は減る。値下げ圧力も強まる。1990年代の年1,600台から今の1,000〜1,200台へ減った経緯が、この市場の弱さを示している。
防災の大型案件の波
防災事業は営業利益の3割を稼ぐが、大型の消火設備案件に左右される。2026年3月期は前期の大型案件の反動で売上が6%減った。利益率20%という高採算が、案件の有無で大きく動く。
Brontoと海外競争
Brontoは高所作業車の売上が北米の電力インフラ投資に左右される。ドイツのRuthmannやPalfinger、中国メーカーとの競争もあり、為替の影響も受ける。海外が伸びないと、中計の成長の柱が欠ける。
資本効率の低さ
純現金が過去数年で積み上がり、ROEは10年の中央値で9.3%と、資本コストをわずかに上回る程度にとどまる。新しい中計で還元は強まる計画だが、実行されなければ、本業の安定が株価に結びつかない状態が続く。
EV化への対応
消防車の電動化は、電池の重さや容量の壁で進みが遅い。ただし、規制や自治体の方針が急に動けば、EVシャシの確保と開発費の負担が一気に重くなる。モリタはEVモーターズ・ジャパンと提携して備えている。
今後の分かれ目
- 欧州の消防車メーカーの買収を割高な条件で決める
- 減損のリスクが上がり、やや悲観・悲観の筋書きに近づく。買収額と、買う会社の利益率が目安になる。
- Brontoが北米の電力・インフラ向けの大型案件を続けて取る
- 海外の台数が計画を上回り、楽観・やや楽観の筋書きに近づく。
- 国内の消防車の入札で、モリタの落札率が下がる
- シェアが6割を割り、価格競争が始まったサインで、やや悲観に近づく。
- 政策保有株の売却や自社株買いが、会社の計画より速く進む
- 余った現金が株主に戻り、資本効率が上がるため、中立以上の筋書きが実現しやすくなる。
- トラックメーカーのシャシ供給が再び止まる
- 受注があっても納車できず、数期にわたり利益率が落ちる。ただし、解消すれば反動で戻る。
- 防災で、小規模な施設の設置義務を広げる消防法の改正があった場合
- スプリネックスなど後付け設備の需要が増え、防災の利益が上振れする。
見ておくもの
- 新中計の営業利益と成長投資の進み具合(買収の発表)
- 国内の消防車の新車需要(年1,000〜1,200台)とモリタの落札シェア
- Brontoの受注と北米の高所作業車の動き
- 防災事業の大型案件の有無と利益率
- 純現金と自社株買い・政策保有株の売却の動き
- シャシ供給の状況と受注残
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに数量×価格で10年を積み、そこから事業の ROE と資本コストで正当化 PER を出し、上限の 8 割(中立)に置いた。k は基本 7.5% に quality −0.25%(値決めの強さ)を足した 7.25%。今の PER や PBR は倍率の根拠にしていない。悲観の床は今の自己資本ではなく、売れる資産の税引き後 500 億円から置いた。余った現金 150 億円は事業の利益から分け、戻り方 0.5 で足した。新リース会計基準で営業利益や純負債の形が変わっても、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.5→18.37 倍・やや楽観 PER 14.9→17.51 倍・中立 PER 13→16.95 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.25% を足した 7.25%。買収の成否やシャシ供給の途絶は k に足さず、筋書きと確率で表した。