結論
ナガイレーベンは、病院や介護施設で働く人の白衣を専業でつくる会社だ。看護師向けのコア市場で、国内シェアは 6 割を超えると推定される。海外には工場を持たず、アジアの提携工場で縫わせ、全国約 1,000 社の販売店を通じて売る。
筆者の結論は、10 年の価値が今の時価総額とほぼ釣り合う(差は 1 割弱の割高で、適正の範囲)というものだ。事業は堅いが、堅さに見合う成長がない。売上は 12 年ほぼ横ばいで、営業利益率は 31% から 21% に下がった。
強みは、洗濯業者から続く買い替え需要と、数千品目を即納できる在庫力だ。実質無借金で、現金・預金は時価総額の 4 割ほどある。その現金を、配当と自社株買いで戻し続けている。
弱みは値上げの遅さだ。原材料と加工賃の上昇に価格が追いつかず、利益率が削られてきた。2026 年 2 月に価格を改定したが、2026 年 8 月期の営業利益は会社計画を 1 割下回り、2027 年 8 月期も小幅減益の予想だ。
中立では、売上は 10 年で 1.3 倍、営業利益率は 20% 台前半に留まる。資本コストは 7.5%、中立の PER は 13 倍強で、余った現金を足して価値を測った。
いちばん気にしているのは、この会社が成長の見せ場を作れるかどうかだ。現金が厚く下値は固いが、利益が伸びなければ、時間がたつほど資本コストに負けていく。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ナガイレーベンは「よい事業だが、成長しない」会社だ。この種の会社の価値は、事業が稼ぐお金のうち、株主が自由に使える分で決まる。
よい点は 3 つある。事業が単純で、10 年後も白衣は必要だ。実質無借金で、現金が厚い。そして経営が、現金をため込まずに戻している。
気になる点は、値段を決める力だ。堀はあるが、12 年間で利益率は 10 ポイント下がった。コストの上昇を価格に移すのが遅く、利益の増加に結びつかない。成長のための再投資先も少ない。現金が事業に使えないことが、ROE の低さの原因でもある。
筆者は、中立で ROE が 9% 前後、資本コストを 1 ポイント強上回る程度と見る。このとき会社の価値は、利益の約 13 倍に、余った現金を足した額だ。今の値段はそれをやや上回る。現金が時価総額の 4 割あるため下値は固いが、安全域と言えるほどの割安ではない。
会社が成長の場を見つけ、余った現金を高い利回りで使えるなら、見方は変わる。そうでなければ、現金は戻し続けるしかなく、その規律を経営が保てるかが、持ち続ける上での最大の確認点になる。
何で稼ぐ会社か
ナガイレーベンは、1915 年に神田で白衣専門店として始まった。1969 年に医療用に絞り、企画、素材の調達、製造の委託、販売までを一貫して行う。年に約 600 万着を供給する。
売上は 2026 年 8 月期で 172 億円。主な顧客は看護師と医師で、売上の 7 割をコア市場(看護師向けのヘルスケアウェア、ドクターウェア、ユーティリティウェア)が占める。残りの約 3 割が周辺市場で、患者ウェアと手術ウェアだ。海外は 2 億円台で、台湾と韓国に拠点を置く。
買い手は病院ではない。専門の洗濯業者がまとめて買い、病院や介護施設にリースする形が中心だ。ウェアは約 100 回洗うと買い替えになり、リース期間は通常 4 年のため、更新需要が周期的に立つ。会社は直接売らず、約 1,000 社の販売店に出荷する。
海外には自社工場を持たず、インドネシア、ベトナム、中国の提携工場で縫う。国内は秋田県の子会社が担う。海外生産の比率は約 56% で、さらに上げる方針だ。東レなどと素材を共同開発し、制菌や静電気を抑える機能を付けた高付加価値品が、売上の 6 割を超える。
数千品目の在庫を持ち、注文に即納できる体制(クイックレスポンス)が競争力の源だ。在庫は 70 億円と大きく、現金を食うが、他社が簡単にはまねできない。
価格帯で見ると、売上の 6 割強が高付加価値品で、ハイエンドが約 8%、量販品は 4% に満たない。デザイナーとのブランド契約(2023 年にマッキントッシュ)を足がかりに、上の価格帯を広げる戦略だ。利益率は高い価格帯ほど高い。
優良さと弱いところ
堀は、シェアと販売網と在庫の 3 つが組み合わさったものだ。コア市場のシェアは 6 割超と推定され、約 1,000 社の販売店を通じて全国の洗濯業者に届く。数千品目を在庫して即納できるため、洗濯業者は多少高くても同社から買う。東レなどと共同開発した素材の機能も、価格競争を和らげる。
高い収益性も堀の証拠だ。営業利益率は 2013 年に 31% あった。ただ、この堀は価格を決める力まで与えていない。12 年間、売上はほぼ横ばいで、その間に原材料、加工賃、人件費が上がった。価格が追いつかず、営業利益率は 21% に下がった。
資本効率は ROE で 6〜10% と低い。理由は事業ではなく現金だ。純資産の半分強が現金・預金で、事業だけの稼ぐ力は ROE 換算でずっと高い。経営は、この現金を配当と自社株買いで戻してきた。2025 年 8 月期の総還元は純利益の約 2 倍に達した。
弱みは 3 つある。値上げが後手に回ること。リース更新の期ずれで四半期の売上がぶれること。そして、筆頭株主が社長本人で、持株が 2 割弱あるため、少数株主の発言力は限られることだ。
なお、事業が回るのに必要な運転資金は大きい。売上債権と棚卸を合わせると約 120 億円で、売上の 7 割にあたる。堀を支える在庫は、同時に利益率の足を引っ張る資産でもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
医療白衣の市場は小さく、安定している。公的な統計はなく、同業の経営者は国内で 400 億円規模と語る。ナガイレーベンの売上はその 4 割に当たるが、買い手に洗濯業者が多く、見積りには幅がある。需要は、病院や介護施設で働く人の数と、ウェアの買い替え周期で決まる。
追い風は人手の増加だ。厚生労働省の推計では、看護職員の必要数は 2024 年度の 170 万人から 2040 年度に最大 210 万人へ、介護職員は 213 万人から 272 万人へ増える。2026 年度の診療報酬は本体で 3.09% 上がり、30 年ぶりの大きさだった。介護報酬も臨時に 2.03% 上がる。病院と介護施設の懐は、久しぶりに改善する。
逆風は 3 つある。第 1 に、病院の購買は洗濯業者を経由するため、価格交渉の相手は洗濯業者だ。大手の集約が進めば、値引きの圧力が強まる。第 2 に、合成繊維などの原材料と加工賃の上昇が続く。第 3 に、患者ウェアでは、使い捨てへの切り替えと病院の在庫調整が需要を削っている。2026 年 8 月期は患者ウェアが 11.8% 減った。
競合には住商モンブラン、KAZEN、ミズノなどの総合ユニフォーム会社がいるが、医療白衣のシェアを開示する会社は無い。分かれ目は、価格改定がどこまで通るか、周辺市場で手術ウェアのリース化を伸ばせるか、海外の売上が立ち上がるか、の 3 つだ。
資本政策と M&A
配当は、単体の配当性向 50% 以上を公約している。2017 年 8 月期から 8 年間は同じ水準を続け、2025 年 8 月期は創業 110 周年の記念を含めて 6 割ほど増やした。2026 年 8 月期は普通配当を 1 割以上引き上げ、2027 年 8 月期も同じ水準の予想だ。
主役は自社株買いだ。2025 年 8 月期に約 22 億円、2026 年 8 月期に約 20 億円を取得し、500 万株を消却した。2026 年 10 月からは上限 10 億円の買付けも始めた。総還元は 2025 年 8 月期が純利益の約 2 倍に達する。
それでも現金・預金は、2026 年 8 月期末で約 205 億円(推定)ある。会社自身が有効活用を課題としているが、海外には小さな拠点を置くだけで、大型の M&A は無い。使い道が決まらないまま現金がたまれば、割高な買収に向かう危険は残る。
筆頭株主は社長本人で、持株は 2 割弱だ。経営陣の持株が厚く、敵対的な買収は考えにくい。
10 年の還元は、配当と自社株買いの合計で純利益の約 100% を続ける想定で、中立の累計は約 305 億円とした。余った現金は少しずつ減り、10 年後に約 85 億円(中立)になる想定だ。売上が増えるぶん、売上債権と棚卸という運転資金が膨らむためである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
価格改定の効果はこれから出る。2026 年 2 月に値上げを始め、その増益効果は半年分しか入っていない。2026 年度の診療報酬は 30 年ぶりの大幅な引き上げで、病院と洗濯業者が値上げを受け入れる余地が生まれた。
人手の需要は構造的に増える。看護職員は 2040 年度に最大 210 万人、介護職員も 272 万人まで増える見込みで、白衣の買い替え需要は人数に比例して増える。看護師向けのシェアは 6 割を超え、競合に奪われる気配は無い。
利益率を上げる道も見える。海外生産の比率を 56% から 64% に高める計画で、粗利率は 2026 年 8 月期に 0.5 ポイント改善した。手術ウェアのリース化と海外(台湾・韓国)という新しい売上も立ち上がる。
現金は時価総額の 4 割ある。配当は引き上げが続き、自社株買いも進む。株数が減れば、1 株あたりの価値は利益の伸び以上に増える。中計の営業利益 47 億円(2028 年 8 月期)は、為替が前提どおりなら届く水準だ。
慎重な見方
12 年の実績が、すべてを物語っている。売上は 162 億円から 172 億円で、年 0.5% ほどしか伸びていない。その間、営業利益率は 31% から 21% に下がった。価格改定は 2026 年 2 月にようやく始まったが、2026 年 8 月期の営業利益は会社計画の 40 億円に届かず、2027 年 8 月期の予想も減益だ。
買い手が洗濯業者という構造が、価格を押さえる。病院は診療報酬で、洗濯業者は病院との契約で、それぞれ価格を縛られる。更新案件は交渉が長引き、2026 年 8 月期の第 3 四半期には更新の遅れが出た。
成長の見せ場もない。患者ウェアは減り、海外は売上が 2 億円台で、会社全体の 1% 台しか占めない。看護職員が増えても、ウェアの着数が増えるとは限らない。洗濯業者がリースの回転を延ばせば、買い替えの周期は延びる。
現金が厚いのは確かだが、使い道の定まらない現金は、いつか割高な買収に向かう危険もある。直近の ROE は 6% 台で、資本コストに届かない水準が続いている。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さと現金の厚さでは強気の見方が優勢だが、12 年の実績が示す成長の乏しさと価格転嫁の弱さは、慎重な見方のほうが具体的だ。中立は、価格改定が一定程度通り、売上が 10 年で 1.3 倍、営業利益率は 20% 台前半に留まる形に置いた。確率は、強気側と慎重側をほぼ同じ厚みにして、中立に最も厚く置いた。事業は予測しやすい会社なので、悲観の確率は 1 割に抑えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 1,928 円567 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 990 円291 億円)。 今の値に割り戻すと 1,625 円478 億円、今との差 −3.9%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,830 円832 億円 | 1,265 円372 億円 | +142.3% | +9.3% | 409 円120 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,458 円723 億円 | 1,143 円336 億円 | +113.0% | +7.9% | 792 円233 億円 |
| 中立 | 36% | 2,104 円619 億円 | 1,037 円305 億円 | +85.9% | +6.4% | 1,131 円333 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,261 円371 億円 | 826 円243 億円 | +23.5% | +2.1% | 459 円135 億円 |
| 悲観 | 10% | 695 円204 億円 | 565 円166 億円 | −25.5% | −2.9% | 126 円37 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,928 円567 億円 | 990 円291 億円 | +72.6% | +5.6% | 2,918 円858 億円 |
今の株価時価総額 1,690 円497 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 値上げが通り、海外生産と周辺市場で営業利益率が 23% を超える 利益 48 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 2,830 円832 億円
価格改定が通り続ける。病院の収入は診療報酬の引き上げで改善し、洗濯業者も原材料と加工賃の上昇を受け入れる。コア市場は 6 割超のシェアを守りながら、毎年物価並みに値上げできる。
海外生産の比率は 64% を超え、粗利率が上がる。周辺市場では手術ウェアのリース化が広がり、患者ウェアも高付加価値品に移る。台湾と韓国では病院向けのリースが立ち上がり、海外の売上は 20 億円を超える。
営業利益率は 23% 台まで戻り、会社の中計(24%)に近づく。利益はほぼ全額を配当と自社株買いで戻し、株数が減る分、株主の取り分はさらに増える。余った現金は、成長の場が見つかれば海外の小規模な買収に使い、回収できる。
- コア市場(看護師・医師向け):数量 357(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 4.90(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 175 億円・営業利益 44 億円。枚数 1.05 倍。価格は物価並みに通る
- 周辺市場(患者ウェア・手術ウェア):数量 357(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 2.37(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 84 億円・営業利益 19 億円。手術ウェアのリース化が広がる
- 海外市場:数量 36.4(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 6.00(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。台湾・韓国で病院向けリースが立ち上がる
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 17.22 倍、時価総額 832 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:価格転嫁が通り、周辺市場と海外もそろって伸びる必要がある。過去 12 年は利益率が下がり続けており、そろう確率は低く見て 1 割に置いた。
やや楽観 22% 価格改定が続き、営業利益率が 22% 台に戻る 利益 41 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 2,458 円723 億円
価格改定が毎年続く。診療報酬の引き上げで病院の経営が改善し、価格の改定幅は物価に近い水準に戻る。コア市場の枚数は横ばいだが、単価が上がって売上が伸びる。
周辺市場では、手術ウェアのリース化が進み、患者ウェアの減少を補う。海外は韓国・台湾で立ち上がり、売上は 15 億円ほどになる。
営業利益率は 22% 台。会社の中計の 24% には届かないが、原材料と加工賃の上昇を価格と海外生産で吸収する。配当と自社株買いは純利益の全額を戻す方針が続き、余った現金は徐々に減る。売上が増えるぶん、売上債権と棚卸の運転資金が膨らみ、現金を使うためだ。この筋書きなら、会社の資本の使い方は無理なく、安心して持ち続けられる。
- コア市場(看護師・医師向け):数量 340(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 4.79(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 163 億円・営業利益 38 億円。枚数横ばい、価格は物価に近い
- 周辺市場(患者ウェア・手術ウェア):数量 319(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 2.31(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 74 億円・営業利益 16 億円。手術ウェアが患者ウェアの減少を補う
- 海外市場:数量 26.0(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 6.00(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円。韓国・台湾が立ち上がる
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)53 億円。全体の PER 16.76 倍、時価総額 723 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年 2 月の価格改定と診療報酬の引き上げが追い風になる筋書き。会社の中計(2028 年 8 月期に営業利益率 24%)に遅れて届く形で、強気側の中心として 2 割強に置いた。
中立 36% 堅く続くが、コストの転嫁が遅く利益率は 20% 台前半に留まる 利益 34 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 2,104 円619 億円
事業は堅く続くが、成長は物価並みに留まる。コア市場の枚数はほぼ横ばいで、価格は洗濯業者との交渉を重ねながら、物価より少し遅れて上がる。
周辺市場は手術ウェアのリース化で伸びるが、患者ウェアの縮小に相殺される。海外は台湾と韓国の売上が立ち上がり、10 年で 12 億円ほどになる。
営業利益率は 20% 台前半に留まり、過去の山(31%)には戻らない。原材料と加工賃の上昇、人件費の増加を価格が追いきれない。利益の全額が配当と自社株買いで戻り、余った現金は徐々に減る。売上は 10 年で 1.3 倍、営業利益は 1.3 倍になる。
- コア市場(看護師・医師向け):数量 330(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 4.65(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 153 億円・営業利益 33 億円。枚数 0.97 倍、価格は転嫁が遅れて 1.27 倍
- 周辺市場(患者ウェア・手術ウェア):数量 281(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 2.24(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 63 億円・営業利益 12 億円。手術ウェアが伸び、患者ウェアは縮む
- 海外市場:数量 20.0(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 6.00(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。10 年で 12 億円規模
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)85 億円。全体の PER 16.12 倍、時価総額 619 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:事業の予測がしやすく、価格転嫁は進むが遅れ、成長は物価並みに留まる最もありそうな筋書き。
やや悲観 22% リース更新が延び、価格も通らず営業利益率が 16% に下がる 利益 25 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,261 円371 億円
価格が通らない。洗濯業者が集約され、リースの回転を延ばして着数を絞る。更新案件の交渉は長引き、コア市場の枚数は 1 割減る。物価の上昇に価格が追いつかず、粗利率が下がる。
周辺市場でも患者ウェアが使い捨てに奪われる。海外は小さな売上のまま、赤字が続かない程度に留まる。
営業利益率は 16% 台まで下がる。固定費(人件費と広告)は物価で増えるため、売上が伸びない分が利益を削る。配当は方針(配当性向 50% 以上)の下限で保つが、自社株買いは細る。現金は積み上がり、使い道が見つからないまま残る。会社は有効活用を課題と認めているが、割高な買収に走るほど無謀でもなく、何もしないまま時間が過ぎる。株主にとっては、堅いが退屈な10年になる。
- コア市場(看護師・医師向け):数量 306(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 4.39(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 134 億円・営業利益 24 億円。リース更新の延びで枚数 0.9 倍
- 周辺市場(患者ウェア・手術ウェア):数量 242(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 2.12(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 51 億円・営業利益 8 億円。患者ウェアが使い捨てに奪われる
- 海外市場:数量 13.0(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 5.50(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。小さな売上のまま
倍率:ROE 6.1%。RONIC = k 7.5% + 残る割合 1/2 ×(6.1 − 7.5)= 6.8%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 11.8 倍。ROE が k を下回り、ためた利益が目減りする筋書き。上限の 8.5 割の 10.0 倍に置いた。
確率:12 年間の実績(売上横ばい・利益率の低下)が続く筋書き。2026 年 8 月期も会社計画を 1 割下回っており、強気側と同じ厚みで置いた。
悲観 10% 洗濯業者に価格を押され、買収にも失敗して利益が細る 利益 13 億円 · PER 7.3 倍 · 株価時価総額 695 円204 億円
洗濯業者の大手が集約され、価格決定の主導権を握る。ウェアは安い輸入品や自社ブランドに置き換えられ、コア市場の枚数が 25% 減る。ナガイレーベンは在庫を持つ強みを生かしきれず、価格を下げて数量を守ろうとしても利益が出ない。
余った現金の使い道が定まらず、海外や周辺事業の買収に約 100 億円を投じて回収できない。数千品目の在庫には、売れ残りの評価損も出る。
営業利益率は 10% まで下がる。10 年の純利益の合計は約 200 億円あり、還元約 170 億円はその範囲で払う。現金や資産の売却で払うものではない。それでも、もはや高収益の専業メーカーとは言えない状態になる。
- コア市場(看護師・医師向け):数量 255(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 4.02(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 103 億円・営業利益 11 億円。洗濯業者の集約で枚数 0.75 倍
- 周辺市場(患者ウェア・手術ウェア):数量 204(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 1.94(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 4 億円。患者ウェアが縮み、価格も下げ圧力
- 海外市場:数量 5.2(供給した枚数(万着・年。推定))× 価格 5.00(1 着あたりの売上(千円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。撤退に近い
倍率:ROE 3.9%。RONIC = k 7.5% + 残る割合 1/2 ×(3.9 − 7.5)= 5.7%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 8.6 倍。ROE が k を大きく下回り、利益も細る筋書き。上限の 8.5 割の 7.3 倍に置いた。
確率:洗濯業者の集約で価格を押され、現金の使い道を誤る構造的な負け筋。事業が単純で予測しやすい会社なので、業種ノートの下限に近い 1 割に抑えた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コア市場(看護師・医師向け)
看護師向けのヘルスケアウェア、医師向けのドクターウェア、エプロンやシューズなどのユーティリティウェア。国内シェア 6 割超と推定される本業。
| 数量供給した枚数(万着・年。推定) | 価格1 着あたりの売上(千円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 340 | 3.66 | 124 | 27 |
| 10 年後 中立 | 330 | 4.65 | 153 | 33 |
取り方:2026/08 期のコア市場 124.4 億円(2025/08 期の 119.96 億円に、会社発表の +3.7% を掛けた)を、枚数 × 1 着あたりの売上に分けた。会社は全体で年約 600 万着を供給すると説明しており、コア市場を約 340 万着と推定した(実物の枚数。内訳の開示は無い)。1 着あたり約 3.7 千円(販売店向けの出荷価格、名目)。10 年の枚数は、看護職員が 2040 年度にかけて最大 24% 増える見込み(厚生労働省の推計)が追い風だが、洗濯業者がリースの回転を延ばす動きと小規模病院の減少がそれを打ち消し、中立 0.97 倍。価格は、2026 年 2 月の改定に続き、原材料と加工賃の上昇を転嫁し続けるのが基本だが、洗濯業者との交渉で全部は通せない。中立 1.27 倍(年 2.4%)は物価の 1.34 倍より低い。2014〜2025 年は売上が横ばいで、値上げが原価の上昇に遅れた実績に合わせた。競合は住商モンブラン、KAZEN、ミズノなど。
周辺市場(患者ウェア・手術ウェア)
入院患者向けの患者ウェアと、手術室で使う手術ウェア。シェアがまだ低く、伸びしろがあるとして力を入れる。
| 数量供給した枚数(万着・年。推定) | 価格1 着あたりの売上(千円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 255 | 1.77 | 45 | 9 |
| 10 年後 中立 | 281 | 2.24 | 63 | 12 |
取り方:2026/08 期の周辺市場 45.0 億円(2025/08 期の 47.63 億円に、患者ウェア −11.8%・手術ウェア 約 +7% の概算を当てた)を、枚数 × 1 着あたりの売上に分けた。全体の約 600 万着からコア市場と海外を引いた約 255 万着と推定した(実物)。1 着あたり約 1.8 千円(患者ウェアは安く、手術ウェアは高い)。10 年の枚数は、手術ウェアのリース化提案(コンペルパック)で増える一方、患者ウェアは病院の在庫調整と使い捨てへの切り替えで伸びにくく、中立 1.10 倍。会社の中計は 2028/08 期に 57 億円。価格はコアと同じ事情で、中立 1.27 倍。競合は住商モンブランなどの総合ユニフォーム会社と寝具・リネンの会社。
海外市場
台湾・韓国を中心とする海外の病院向け白衣。洗濯アウトソーシングの普及とクリニック向けの EC 直販を狙う。
| 数量供給した枚数(万着・年。推定) | 価格1 着あたりの売上(千円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 5.2 | 5.00 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 6.00 | 12 | 1 |
取り方:2026/08 期の海外 2.6 億円(2025/08 期の 2.23 億円に、会社発表の +16.9% を掛けた)を、枚数 × 1 着あたりの売上に分けた。台湾の期ずれ案件とソウル支店の売上が中心で、約 5.2 万着、1 着あたり約 5 千円と推定した(実物の枚数)。10 年の枚数は、韓国・台湾での病院向けリース提案とクリニック向けの EC 直販が立ち上がり、中立 3.85 倍(会社の中計は 2028/08 期に 3% の構成比で約 6 億円)。価格は現地の競争で中立 1.20 倍(物価の 1.34 倍より低い)。競合は現地の白衣メーカーと日本の総合ユニフォーム会社。
リスクと懸念
価格転嫁の遅れ
12 年間、原材料・加工賃・人件費の上昇に価格が追いつかず、営業利益率は 31% から 21% に下がった。2026 年 2 月の価格改定の後も、2026 年 8 月期の営業利益は会社計画を 1 割下回った。転嫁が遅れる構造は変わっていない。
洗濯業者の交渉力とリース更新の期ずれ
最終的な買い手は、病院ではなく洗濯業者だ。大手の集約が進めば、値引きの圧力が強まる。リース更新は 4 年周期で、時期が前後するたびに四半期の売上がぶれる。2026 年 8 月期は更新の遅れが出た。
原材料・加工賃・為替
製品の過半は海外の提携工場で縫い、ドル建てで仕入れる。合成繊維などの原材料と加工賃が上がり、円安が進めば、粗利率は下がる。この分析は為替を 150 円で固定しているため、為替の振れは別に残るリスクだ。
患者ウェアの縮小
売上の約 19% を占める患者ウェアは、2026 年 8 月期に 11.8% 減った。病院の在庫調整と、使い捨てへの切り替えが原因とみられる。周辺市場を伸ばす戦略の足を引っ張る。
現金の使い道
現金・預金は約 205 億円と、時価総額の 4 割ある。会社自身が有効活用を課題としている。使い道が決まらないままたまれば、割高な買収や海外投資に向かう危険がある。
海外の提携工場への依存
海外生産の比率は約 56% で、インドネシア、ベトナム、中国の提携工場に頼る。自社工場を持たないため投資は軽いが、地政学の変化、現地の人件費の上昇、品質の管理は自社で決められない。
経営の集中
筆頭株主は社長本人で、持株は 2 割弱ある。意思決定は速く、株主還元にも前向きだが、少数株主が資本の使い方に注文をつける力は限られる。
今後の分かれ目
- 2026 年 2 月に始めた価格改定が、更新案件でも通り続ける
- 粗利率が上がり、営業利益率は 22% 台に戻る。強気側の筋書きに寄る。
- 洗濯業者の大手が集約され、価格の再交渉が始まる
- 価格を下げて数量を守る形になり、営業利益率が下がる。慎重側の筋書きに寄る。
- 手術ウェアのリース化が広がり、周辺市場の売上が会社の中計(2028 年 8 月期に 57 億円)に近づく
- 患者ウェアの縮小を補い、成長が物価並みを超える。強気側に寄る。
- 余った現金を使った大型の買収が発表される
- 買収の中身と価格次第で、強気にも悲観にも動く。回収が見込めない買収なら、慎重側に寄る。
- 看護職員の増加が、ウェアの供給枚数の増加に結びつく
- 枚数が横ばいから増加に転じ、強気側の筋書きに寄る。
- 円安や原材料高で、粗利率が 38% を割る
- 価格改定の効果が消え、営業利益率が 18% 以下に下がる。慎重側に寄る。
見ておくもの
- 価格改定後の粗利率(2026 年 8 月期は 40.0%)と、営業利益率の推移
- コア市場の更新案件の進み具合と、リース更新の期ずれ
- 患者ウェアの売上と、手術ウェアのリース化の進み具合
- 海外(台湾・韓国)の売上と、海外生産比率(2028 年 8 月期に 64% の計画)
- 現金・預金の残高と、自社株買いの規模、使い道に関する発表
- 診療報酬・介護報酬の改定と、洗濯業者の再編の動き
倍率と資本コストの決め方
3 つの市場を「供給枚数(実物)× 1 着あたりの売上(名目)」で積み、合計の枚数は会社の説明(年約 600 万着)に合わせた。価格は 10 年 1.27 倍(コア・周辺)と 1.20 倍(海外)で、物価の 1.34 倍より低く置いた。12 年間、値上げが原価に遅れた実績に合わせたためで、理由は各セグメントに書いた。資本コストは基本 7.5% に quality 0(循環 −0.5・値決め +0.5・借金 0・寿命 0)。倍率は正当化 PER の上限の 9 割前後で、中立は ROE が k を上回るので 1÷k の 13.3 倍を下回らせない決まりに従った。余った現金は 160 億円と別に測り、戻り方を 1.0 に置いた。悲観は買収の失敗で現金が減る筋書きに置き、今の PER・PBR や過去の PBR の底からは出発していない。2026 年 8 月期の決算(2026 年 10 月 1 日発表)が出ているため、起点は 2026 年 8 月期の実績に置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。