結論
ボストン・サイエンティフィックは、心房細動を治す電気生理(ファラパルス)、脳卒中を防ぐ左心耳閉鎖(ウォッチマン)、冠動脈・末梢血管・ペースメーカーなどの心血管機器、内視鏡・泌尿器・神経調節の MedSurg を持つ世界第 3 位級の医療機器会社である。2025 年は売上 201 億ドル(自然増 +15.8%)、営業利益 41 億ドル(営業利益率 20.3%、台帳)、GAAP 純利益 29 億ドル。
2026 年は一転して逆風になった。通期の売上見通しは 2 月の +10.5〜11.5% から 4 月に +7〜8.5%、7 月に +5.5〜6.5% へ 2 度下がり、調整後 1 株利益の見通しも初期より約 1 割下がった。ウォッチマンは標準的な単独手技が減り(4〜6 月期 +4%、下期は減少)、電気生理はメドトロニック・ジョンソン・エンド・ジョンソン・アボットがパルスフィールド・アブレーション(PFA)で追い上げて、米国の競争を「過小評価した」と会社自身が認めた。株価は年初来で約半分になった。
数量 × 価格でセグメントごとに積むと、中立は 2035 年に売上 361 億ドル(年 +6.0%)、純利益 74 億ドル。倍率は利益ベースの正当化 PER の 7〜10 割に置いた(moat は normal)。10 年の中立は、正当化 PER 15.9 倍(g 4.0%、RONIC 9.0%)の 8 割の 12.7 倍。今の GAAP の PER は 23 倍で、この水準を上回る。確率で重ねた総合は、今の時価総額より 26% 下。結論は「やや割高」。悲観(構造的に負ける)の確率を 12% に厚くしており、確率加重の価値は今の時価総額を 2 割台半ば下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ボストン・サイエンティフィックは心臓の不整脈・脳卒中予防・内視鏡・泌尿器と分かりやすい事業の集まりで、10 年後も必要とされる。堀は、臨床データと医師の習熟と病院の採用実績であり、電気生理では後発 3 社が追いつくため狭まる。ウォッチマンは臨床の見方が割れ、堀の広さが試される。MedSurg と心血管の本体は広い堀を保つ。
オーナー利益は、純利益 29 億ドルに現金の出ない償却(年 10 億ドル超)を戻した 40 億ドル近くが近い。フリーキャッシュフローは 37 億ドルで、純利益の 1.3 倍。株式報酬は 3 億ドル前後と小さい。ROE が 12% と低いのは、買収で積んだのれんのためで、事業そのものの収益力ではない。
経営は、PFA とウォッチマンに早くから投資して市場を作った点が優れる。一方で、2026 年に 2 度の下方修正をし、米国の競争を過小評価したと認めたのは、見通しの精度に疑問を残す。買収の連発は価値を壊す危険がある。
安全域を測る。正当化 PER は 15.9 倍(g 4.0%、RONIC 9.0%、k 7.50%、moat は normal)。今の PER 23 倍はこれより高く、安全域はない。確率で重ねた総合は、今の時価総額より 26% 下。結論は「やや割高」。ただし、前提の資本コスト 7.5% と価格の名目上昇に結論が依存する。
何で稼ぐ会社か
2025 年の売上 201 億ドルのうち、心血管が 133 億ドル、MedSurg が 68 億ドル。
電気生理(推定 35 億ドル)は心房細動のカテーテルアブレーションで、ファラパルス(パルス電場で心筋を焼かずに電気的に隔離する方式)が柱。カテーテルとマッピング装置・消耗品を病院に売る。2025 年 4〜6 月期は +96%、通期の自然増は +35% と急成長したが、2026 年 4〜6 月期は 9.16 億ドル(+9%)で、前の四半期からほぼ横ばいになった。
ウォッチマン(2025 年 19.6 億ドル、約 +30%)は、抗凝固薬を飲めない人、あるいは飲みたくない人の左心耳をふさぐ植込み機器。2026 年 4〜6 月期は 5.07 億ドル(+4%)まで鈍った。
そのほか心血管(推定 78 億ドル)は、冠動脈ステント・バルーン・血管内砕石(IVL)などの冠動脈治療、ペースメーカー・除細動器(CRM)、末梢血管の治療機器。MedSurg は内視鏡(29 億ドル。消化管の止血・胆膵・尿管鏡の使い捨て品)、泌尿器(27 億ドル。2024 年のアクソニクス買収で仙骨神経刺激の過活動膀胱・便失禁治療を得た)、神経調節(12 億ドル。脊髄刺激の慢性疼痛治療)。使い捨ての消耗品と植込み機器が収入の大半で、病院が一度採用すると医師の習熟が切り替えの費用になる。
優良さと弱いところ
優良さの核は、使い捨て・植込み型の機器で医師の習熟と臨床データが堀になる点にある。ファラパルスは 2024〜25 年に PFA 市場を作り、米国のアブレーションの 8 割超が PFA に置き換わる過程で首位を取った。ウォッチマンは左心耳閉鎖で圧倒的な首位(米国で事実上の独走)で、臨床試験の積み上げが参入障壁になってきた。調整後の営業利益率は 2025 年に 28.0%、2026 年 4〜6 月期に 28.4% と、医療機器の大手の中でインテュイティブに次ぐ高さである。
資本配分は、配当を出さず、買収で成長を買う方針である。アクソニクス(約 37 億ドル)・サイレント・ロード(約 13 億ドル)・ボルト・メディカルなど 5〜40 億ドル級を毎年のように買い、2026 年は企業価値 145 億ドルのペヌンブラ買収が控える。これまでは成功が多いが、買収で膨らむのれんと無形資産の償却が GAAP の利益率を押し下げ、ROE は 12% 前後と収益力の割に低い。
弱点は 3 つ。①電気生理で後発 3 社(メドトロニック・ジョンソン・エンド・ジョンソン・アボット)が追いつき、価格と数量の両方に圧力がかかること。②ウォッチマンが臨床試験(2026 年春の CHAMPION-AF は抗凝固薬に対し有効性は非劣性、出血は優位だが、同時期に出た CLOSURE-AF は逆の結果)で市場の見方を変えられたこと。③成長を買収に頼るため、割高に買うと価値を壊すこと。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
医療機器の市場は業界ノートで年 +5.5〜6%(名目)と置く。医療費は年 +5.8% で伸び、高齢化と慢性疾患が数量を押し上げる一方、病院の購買組織・保険者・関税が価格と利益率を抑える。ボストン・サイエンティフィックが属するのは心血管・構造的心疾患・電気生理の塊(塊 B)で、メドトロニック・アボット・ジョンソン・エンド・ジョンソンとの 4 社競争である。
電気生理:世界のアブレーション手技は年 +9〜10% で伸びる見込みだが、PFA はすでに米国の 80〜85% を占め、置き換えで伸びる余地は小さい。今後の数量は「手技の総数の伸び」と「シェア」で決まる。ボストン・サイエンティフィックは PFA 初期に 8 割を持っていたが、メドトロニックのアフェラ(スフィア 9)、ジョンソン・エンド・ジョンソンのバリプルス、アボットのボルトが出そろい、シェアは下がる。価格はカテーテルの競争とマッピングの抱き合わせで下落する。
ウォッチマン:年 +30% の成長は終わり、臨床試験の結果で単独手技が減っている。アブレーションと同時に閉鎖する併用手技(OPTION 試験)が補うが、メディケアの適用範囲が制約になる。会社は 2027 年の成長を見込んでいない。
そのほかの心血管(冠動脈・CRM・末梢)と MedSurg は、市場の伸びが年 +4〜6% で、価格は病院の購買組織に押されて物価より低い。内視鏡はオリンパス・富士フイルムと、神経調節はメドトロニック・アボットと競う。
資本政策と M&A
配当は出さない。自社株買いは小さく、株式報酬で増える株の分を打ち消す程度で、正味の還元は小さいと置く(payout は株式報酬を引いた正味)。フリーキャッシュフローは 2025 年に 37 億ドルで、ほとんどを買収と借入金の返済に回してきた。
2026 年は全社の費用削減計画を決め、税引き前の費用 7〜8 億ドル(報道。会社の公式額は未確認)をかけて、2029 年までに年 5 億ドルを削る。ペヌンブラ(血栓除去・脳血管。企業価値 145 億ドル、現金約 73%・株約 27%)の買収は株主承認を済ませ、米連邦取引委員会(FTC)の追加審査が続いている。まだ成立していないので、この分析は今のボストン・サイエンティフィックだけで書く(相手の利益も新株も足さない)。成立すれば純負債が現在の約 99 億ドルから 2 倍を超えて増え、償却も増える。ナル・メディカルは 2026 年 1 月に約 5 億ドルで完了済み。
純負債の時価総額比は約 15% で、借金は重くない。借り換えは約 5.75% に上がるが、純利益への影響は税引き後で年 1〜2 億ドルほどと小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電気生理は市場そのものが大きい。世界の心房細動患者は 5,000 万人を超え、アブレーションを受けているのは一部で、手技の総数は PFA の安全性と手技の短さに助けられ年 +9〜10% で伸び続ける。ボストン・サイエンティフィックは世界の PFA で最大のシェアと最多の臨床データを持ち、ファラパルスのほか、マッピングと一体のシステム(ファラウェーブ・ファラマップ)で病院を囲い込める。競合が追いついても、シェアが 4 分の 1 から 3 分の 1 を保てば、手技の増加で売上は 10 年で 8 割近く増える。
ウォッチマンの減速は一時的である。CHAMPION-AF は、抗凝固薬に対して出血を約半分にして有効性は非劣性を示した。OPTION の併用手技(アブレーション後の閉鎖)は米国だけでなく欧州・日本にも広がる。5 年追跡のデータが出れば、市場の見方は変わる。
ほかの事業も強い。冠動脈の IVL(ボルト・メディカル)・末梢血管・神経調節(ナル)・泌尿器(アクソニクス)は買収で伸びる芽を足し、2029 年までの費用削減で営業利益率はさらに 2 ポイント上がる。株価は年初の半分で、GAAP の PER は 23 倍と、10 年の質の高い成長に対して安い。
慎重な見方
成長の質が一気に落ちた。2026 年に売上見通しを 2 度下げ、初期の +10.5〜11.5% から +5.5〜6.5% へ半分近くに切り下げた。会社自身が「米国の競争を過小評価した」と認めており、電気生理は前の四半期から横ばいで、後発に市場を削られている。PFA は米国の 80〜85% まで普及して置き換えの余地が尽きたので、これから伸びるのは手技の総数だけで、シェアは下がり、カテーテルの価格も競争で下がる。
ウォッチマンは、新しい臨床試験が市場の見方を変えた。CHAMPION-AF は非劣性で、同時期の CLOSURE-AF は逆の結果。新しい抗凝固薬(第 XI 因子阻害薬)の開発も進む。単独手技が減り、2027 年の成長は会社も見込まない。年 +30% を稼いだ主役が 2 つとも失速する。
買収で成長を買い続ける会社は、価格を誤ると価値を壊す。企業価値 145 億ドルのペヌンブラは大きな買収で、成立すればのれんと借入金が一気に増える。リストラ費用 7〜8 億ドルは、成長が止まるのを自ら認める動きとも読める。GAAP の ROE は 12% しかなく、のれんの大きい会社は、成長が鈍れば減損が来る。
どちらに重みを置いたか
事業の質(臨床データ・医師の習熟・分散)は高く、中立の成長(売上 年 +6.0%)は 2026 年の見通し(+5.5〜6.5%)の延長なので、中立を最大の確率(10 年 37%)に置いた。他方で、2026 年だけで下方修正が 2 度あり、競争の過小評価を会社が認めているため、やや悲観を 22〜23%、悲観を 10〜12% に厚くし、楽観は 8% に抑えた。倍率は正当化 PER の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は、正当化 PER 15.9 倍の 8 割の 12.7 倍。今の PER に寄せていない。確率で重ねた総合は、今の時価総額より 26% 下。結論は「やや割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 59.09 ドル883 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 6.21 ドル93 億ドル)。 今の値に割り戻すと 33.00 ドル493 億ドル、今との差 −28.3%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 111.90 ドル1,672 億ドル | 3.41 ドル51 億ドル | +150.6% | +9.6% | 9.23 ドル138 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 84.27 ドル1,259 億ドル | 3.01 ドル45 億ドル | +89.7% | +6.6% | 17.46 ドル261 億ドル |
| 中立 | 37% | 62.88 ドル940 億ドル | 2.68 ドル40 億ドル | +42.5% | +3.6% | 24.26 ドル363 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 34.62 ドル517 億ドル | 14.32 ドル214 億ドル | +6.4% | +0.6% | 11.26 ドル168 億ドル |
| 悲観 | 12% | 17.14 ドル256 億ドル | 8.77 ドル131 億ドル | −43.7% | −5.6% | 3.11 ドル46 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 59.09 ドル883 億ドル | 6.21 ドル93 億ドル | +41.9% | +3.6% | 65.30 ドル976 億ドル |
今の株価時価総額 46.01 ドル688 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:電気生理で首位を守り、買収した事業が伸びる 利益 107 億ドル · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 111.90 ドル1,672 億ドル
2035 年の売上は 448 億ドル(名目で年 +8.4%)。電気生理は世界の手技が年 +10% で伸び、ファラパルスがシェア 4 割を保ち、87 億ドル(営業利益率 45%)。競合のメドトロニック・ジョンソン・エンド・ジョンソン・アボットも伸びるが、市場が 10 年で 2 倍以上に膨らむ。ウォッチマンは CHAMPION-AF の 5 年追跡と併用手技で 1 桁の増に戻り、35 億ドル。冠動脈の IVL(ボルト・メディカル)・神経調節(ナル)・泌尿器(アクソニクス)は買収の成果で年 +6〜7% 伸び、そのほかの心血管・MedSurg は 326 億ドル。営業利益は 136 億ドル(30.4%。アボットの心血管・メドトロニックの 20% 台前半を上回る)、純利益は 107 億ドル、自己資本は 829 億ドル、還元は 51 億ドル。倍率は 正当化 PER 17.4 倍の 9 割、15.6 倍に置く。利益の質が高く、伸びも一番続く筋書き。上限の 9 割に置く。
- 電気生理(ファラパルス・マッピング):数量 130(ボストン・サイエンティフィックの手技件数(万件、推定)= 世界のアブレーション手技 × シェア)× 価格 6,658(1 手技あたり売上(ドル))→ 売上 87 億ドル・営業利益 38 億ドル。手技件数と 1 手技あたり売上
- 左心耳閉鎖(ウォッチマン):数量 26.4(世界の植込み件数(万件、推定))× 価格 13,409(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 35 億ドル・営業利益 17 億ドル。植込み件数と 1 件あたり売上
- その他の心血管(冠動脈・CRM・末梢血管):数量 2,328(手技・植込み件数(万件、推定の合算))× 価格 768(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 179 億ドル・営業利益 52 億ドル。手技件数と平均単価
- 内視鏡:数量 11,103(処置件数(万件、推定))× 価格 55(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 61 億ドル・営業利益 18 億ドル。処置件数と単価
- 泌尿器・骨盤:数量 1,075(対象の患者数(万人、推定の合算))× 価格 549(1 人あたり売上(ドル))→ 売上 59 億ドル・営業利益 15 億ドル。患者数と単価
- 神経調節:数量 75.1(治療患者数(万人、推定))× 価格 3,657(1 人あたり売上(ドル))→ 売上 27 億ドル・営業利益 9 億ドル。患者数と単価
倍率:正当化 PER は 17.4 倍(g 4.0%、RONIC 10.2%。RONIC は k 7.50% に、事業の ROE 12.9% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 15.6 倍(9 割)に置いた。利益の質が高く、伸びも一番続く筋書き。上限の 9 割に置く。g の内訳:心血管・内視鏡など手技の需要(高齢化)の実質 +2.5% × シェアの小さな低下 −0.5%(電気生理は競合が増える)× 価格 +2.0%(物価 3.5% より低い。病院の購買組織が抑える)で名目 約 4.0%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。
確率:電気生理で首位を守り(シェア 4 割)、ウォッチマンが併用手技で戻り、泌尿器・神経調節・IVL の買収が当たる展開。事業の質は高いが、競合が追いつく中でこの全部がそろう必要があるので 8%。
やや楽観 20% やや楽観:電気生理は世界の手技の伸びに乗り、ウォッチマンも戻る 利益 89 億ドル · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 84.27 ドル1,259 億ドル
2035 年の売上は 404 億ドル(名目で年 +7.2%)。電気生理は世界の手技の伸び(年 +9%)にほぼ乗り、ファラパルスのシェアは 3 割を保って 73 億ドル。ウォッチマンは併用手技で 1 桁の増に戻り、31 億ドル。そのほかの心血管・MedSurg は年 +5.5〜6% で 300 億ドル。営業利益率は 28.5% まで上がり(費用削減と規模の効果、償却の逓減)、純利益は 89 億ドル。借入金の純利息は 3.5 億ドルに抑え、買収は年 20〜30 億ドルを使う。自己資本は 763 億ドル、還元は 45 億ドル。倍率は 正当化 PER 16.6 倍の 8.5 割、14.2 倍に置く。伸びと利益率はほぼ計画どおり。上限の 8.5 割に置く。
- 電気生理(ファラパルス・マッピング):数量 116(ボストン・サイエンティフィックの手技件数(万件、推定)= 世界のアブレーション手技 × シェア)× 価格 6,331(1 手技あたり売上(ドル))→ 売上 73 億ドル・営業利益 31 億ドル。手技件数と 1 手技あたり売上
- 左心耳閉鎖(ウォッチマン):数量 22.8(世界の植込み件数(万件、推定))× 価格 13,409(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 31 億ドル・営業利益 15 億ドル。植込み件数と 1 件あたり売上
- その他の心血管(冠動脈・CRM・末梢血管):数量 2,221(手技・植込み件数(万件、推定の合算))× 価格 731(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 162 億ドル・営業利益 44 億ドル。手技件数と平均単価
- 内視鏡:数量 10,588(処置件数(万件、推定))× 価格 54(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 57 億ドル・営業利益 17 億ドル。処置件数と単価
- 泌尿器・骨盤:数量 1,025(対象の患者数(万人、推定の合算))× 価格 538(1 人あたり売上(ドル))→ 売上 55 億ドル・営業利益 13 億ドル。患者数と単価
- 神経調節:数量 71.6(治療患者数(万人、推定))× 価格 3,586(1 人あたり売上(ドル))→ 売上 26 億ドル・営業利益 8 億ドル。患者数と単価
倍率:正当化 PER は 16.6 倍(g 4.0%、RONIC 9.6%。RONIC は k 7.50% に、事業の ROE 11.7% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 14.2 倍(8.5 割)に置いた。伸びと利益率はほぼ計画どおり。上限の 8.5 割に置く。g の内訳:心血管・内視鏡など手技の需要(高齢化)の実質 +2.5% × シェアの小さな低下 −0.5%(電気生理は競合が増える)× 価格 +2.0%(物価 3.5% より低い。病院の購買組織が抑える)で名目 約 4.0%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。
確率:電気生理が世界の手技の伸び(年 +9%)にほぼ乗り、ウォッチマンも併用手技で 1 桁の増に戻る展開。ファラパルスの臨床データの厚みと買収の実績を見て 20%。
中立 37% 中立:優良な心血管の機器会社として年 6% 前後で伸び、堀は保たれる 利益 74 億ドル · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 62.88 ドル940 億ドル
2035 年の売上は 361 億ドル(2025 年から名目で年 +6.0%。数量で年 +4〜5%、価格で年 +1% 前後。買収による上乗せを年 +1 ポイント含む)。電気生理は世界の手技が年 +9% 伸びてもシェアが 28% から 2 割台前半へ下がり、ボストン・サイエンティフィックの手技は年 +7.5%、価格は年 −1.5% で、売上は 62 億ドル。メドトロニックのアフェラ・ジョンソン・エンド・ジョンソンのバリプルスが残りを取る。ウォッチマンは単独手技が減って併用手技が補い、数量は年 +1%、売上は 25 億ドル。そのほかの心血管・MedSurg は市場並みの年 +4.5〜5.5% で 274 億ドル。営業利益は 98 億ドル(27.1%。2025 年の 20.3% から、償却の逓減と費用削減で上がる)、純利益は 74 億ドル。借入金の純利息は 5 億ドル。自己資本は 705 億ドル、還元は 40 億ドル(利益の大半を買収と投資に回す)。倍率は 正当化 PER 15.9 倍の 8 割、12.7 倍に置く。中立は上限の 8 割。電気生理の首位と臨床データは堀だが、競合の参入で新しく投じる資本の稼ぎは先で薄れる。
- 電気生理(ファラパルス・マッピング):数量 103(ボストン・サイエンティフィックの手技件数(万件、推定)= 世界のアブレーション手技 × シェア)× 価格 6,018(1 手技あたり売上(ドル))→ 売上 62 億ドル・営業利益 25 億ドル。手技件数と 1 手技あたり売上
- 左心耳閉鎖(ウォッチマン):数量 19.7(世界の植込み件数(万件、推定))× 価格 12,766(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 25 億ドル・営業利益 12 億ドル。植込み件数と 1 件あたり売上
- その他の心血管(冠動脈・CRM・末梢血管):数量 2,118(手技・植込み件数(万件、推定の合算))× 価格 696(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 147 億ドル・営業利益 40 億ドル。手技件数と平均単価
- 内視鏡:数量 10,094(処置件数(万件、推定))× 価格 52(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 52 億ドル・営業利益 15 億ドル。処置件数と単価
- 泌尿器・骨盤:数量 977(対象の患者数(万人、推定の合算))× 価格 522(1 人あたり売上(ドル))→ 売上 51 億ドル・営業利益 12 億ドル。患者数と単価
- 神経調節:数量 68.3(治療患者数(万人、推定))× 価格 3,482(1 人あたり売上(ドル))→ 売上 24 億ドル・営業利益 7 億ドル。患者数と単価
倍率:正当化 PER は 15.9 倍(g 4.0%、RONIC 9.0%。RONIC は k 7.50% に、事業の ROE 10.5% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 12.7 倍(8 割)に置いた。中立は上限の 8 割。電気生理の首位と臨床データは堀だが、競合の参入で新しく投じる資本の稼ぎは先で薄れる。g の内訳:心血管・内視鏡など手技の需要(高齢化)の実質 +2.5% × シェアの小さな低下 −0.5%(電気生理は競合が増える)× 価格 +2.0%(物価 3.5% より低い。病院の購買組織が抑える)で名目 約 4.0%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。
確率:議論の落としどころで最大の確率。業界ノートの医療機器の中立(年 5.5〜6%)に沿い、電気生理はシェアを下げながら手技の伸びに乗る。価格は電気生理が年 −1.5%(競争)、そのほかの機器は年 +1.5%(病院の購買組織・公的保険の償還が物価に連動しない)と物価に届かない。
やや悲観 23% やや悲観:電気生理が後発に削られ、成長が年 4% に鈍る 利益 48 億ドル · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 34.62 ドル517 億ドル
2035 年の売上は 297 億ドル(名目で年 +4.0%)。電気生理は後発 3 社に押されてシェアが 4 分の 1 を割り、手技は年 +5.5% 伸びても価格が年 −2.5% 下がり 46 億ドル。ウォッチマンは単独手技の縮小が続き年 −1.5% で、17 億ドル。そのほかの心血管・MedSurg は年 +4% 前後で 234 億ドル。営業利益は 66 億ドル(22.2%)、純利益は 48 億ドル。借入金の純利息は 6.5 億ドル。自己資本は 415 億ドル、還元は 214 億ドル。倍率は 正当化 PER 16.6 倍の 6.5 割、10.8 倍に置く。競争と値下がりで、新しく投じる資本の稼ぎが薄れる。上限の 7.5 割に置く。
- 電気生理(ファラパルス・マッピング):数量 85.4(ボストン・サイエンティフィックの手技件数(万件、推定)= 世界のアブレーション手技 × シェア)× 価格 5,434(1 手技あたり売上(ドル))→ 売上 46 億ドル・営業利益 17 億ドル。手技件数と 1 手技あたり売上
- 左心耳閉鎖(ウォッチマン):数量 14.5(世界の植込み件数(万件、推定))× 価格 11,563(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 7 億ドル。植込み件数と 1 件あたり売上
- その他の心血管(冠動脈・CRM・末梢血管):数量 1,924(手技・植込み件数(万件、推定の合算))× 価格 650(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 125 億ドル・営業利益 29 億ドル。手技件数と平均単価
- 内視鏡:数量 9,169(処置件数(万件、推定))× 価格 50(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 46 億ドル・営業利益 12 億ドル。処置件数と単価
- 泌尿器・骨盤:数量 871(対象の患者数(万人、推定の合算))× 価格 497(1 人あたり売上(ドル))→ 売上 43 億ドル・営業利益 9 億ドル。患者数と単価
- 神経調節:数量 59.2(治療患者数(万人、推定))× 価格 3,314(1 人あたり売上(ドル))→ 売上 20 億ドル・営業利益 5 億ドル。患者数と単価
倍率:正当化 PER は 16.6 倍(g 4.0%、RONIC 9.5%。RONIC は k 7.50% に、事業の ROE 11.6% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 10.8 倍(6.5 割)に置いた。競争と値下がりで、新しく投じる資本の稼ぎが薄れる。この筋書きは大きな還元で自己資本が細り、純利益に対する自己資本が薄いので、PBR が中立を超えない上限の 6.5 割に置く。g の内訳:心血管・内視鏡など手技の需要(高齢化)の実質 +2.5% × シェアの小さな低下 −0.5%(電気生理は競合が増える)× 価格 +2.0%(物価 3.5% より低い。病院の購買組織が抑える)で名目 約 4.0%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。
確率:電気生理の後発 3 社が追いつき、シェアが 4 分の 1 を割り、ウォッチマンが縮み、買収の効果も出ない展開。2026 年の下方修正が続く構造だった場合として 23%(事業の質は高いが、この会社は逆風が複数同時に出ているので厚くした)。
悲観 12% 悲観:構造的に負ける(電気生理の値崩れ・ウォッチマンの縮小・減損) 利益 24 億ドル · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 17.14 ドル256 億ドル
2035 年の売上は 240 億ドル(名目で年 +1.8%)。電気生理は PFA のカテーテルが汎用品化して 1 手技あたりの売上が年 −4% で崩れ、シェアも 2 割を割って 33 億ドル。ウォッチマンは臨床試験の見方が覆らず単独手技が年 −6% で縮み、10 億ドル。そのほかの心血管・MedSurg は競合と病院の購買組織に押され年 +2.5〜3% で 197 億ドル。買収で積んだのれんの一部(約 40 億ドル)が減損し、自己資本は 333 億ドルに。営業利益は 39 億ドル(16.2%)、純利益は 24 億ドル、借入金の純利息は 9 億ドル(買収で純負債が増える)。還元は 131 億ドル。倍率は 正当化 PER 13.3 倍の 8 割、10.7 倍に置く。構造的に負けた筋書きなので、長期の g を 3.0%(市場 +1.5% × シェア −1.0% × 価格 +2.5%)に下げた式の値そのままに置く(上限の割合は掛けない)。
- 電気生理(ファラパルス・マッピング):数量 70.5(ボストン・サイエンティフィックの手技件数(万件、推定)= 世界のアブレーション手技 × シェア)× 価格 4,654(1 手技あたり売上(ドル))→ 売上 33 億ドル・営業利益 10 億ドル。手技件数と 1 手技あたり売上
- 左心耳閉鎖(ウォッチマン):数量 9.6(世界の植込み件数(万件、推定))× 価格 9,948(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 4 億ドル。植込み件数と 1 件あたり売上
- その他の心血管(冠動脈・CRM・末梢血管):数量 1,747(手技・植込み件数(万件、推定の合算))× 価格 600(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 105 億ドル・営業利益 20 億ドル。手技件数と平均単価
- 内視鏡:数量 8,321(処置件数(万件、推定))× 価格 47(1 件あたり売上(ドル))→ 売上 39 億ドル・営業利益 8 億ドル。処置件数と単価
- 泌尿器・骨盤:数量 768(対象の患者数(万人、推定の合算))× 価格 473(1 人あたり売上(ドル))→ 売上 36 億ドル・営業利益 6 億ドル。患者数と単価
- 神経調節:数量 53.8(治療患者数(万人、推定))× 価格 3,153(1 人あたり売上(ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。患者数と単価
倍率:事業の ROE 7.2% が k 7.50% 以下なので PER は 1÷k=13.3 倍まで。これに対し 10.7 倍(8 割)に置いた。構造的に負けた筋書き(市場 +1.5%・シェア −1.0%・価格 +2.5% で長期の g は 3.0%)。ROE が k に届かず、ためた利益は額面より低い価値なので、PER の上限 1÷k のさらに 8 割に置く。g の内訳:心血管・内視鏡など手技の需要(高齢化)の実質 +2.5% × シェアの小さな低下 −0.5%(電気生理は競合が増える)× 価格 +2.0%(物価 3.5% より低い。病院の購買組織が抑える)で名目 約 4.0%。検査の上限(4%)の内側。純利益は GAAP。
確率:リーマン級でなく構造の失敗。電気生理が価格競争で値崩れし、ウォッチマンが臨床試験の結果で縮み、買収で積んだのれんが減損する展開。成長を買収に頼る会社は買収の失敗の確率が低くなく、2026 年の下方修正 2 度という現実もあり、12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
電気生理(ファラパルス・マッピング)
心房細動のカテーテルアブレーション。PFA のファラパルスとマッピング装置・消耗品。
| 数量ボストン・サイエンティフィックの手技件数(万件、推定)= 世界のアブレーション手技 × シェア | 価格1 手技あたり売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 50.0 | 7,000 | 35 | 14 |
| 10 年後 中立 | 103 | 6,018 | 62 | 25 |
取り方:電気生理の 2025 年売上は会社が分けて開示していない(心血管 133 億ドルの内訳)。2026 年 4〜6 月期が 9.16 億ドルで前の四半期から横ばいなので、年換算の 35 億ドル前後と推定した。世界のアブレーション手技を約 180 万件(推定)、ボストン・サイエンティフィックのシェアを約 28%(PFA に限れば過半)とみて 50 万件、1 手技あたり約 7,000 ドル(カテーテルとマッピング消耗品)。競合はメドトロニック(アフェラ・スフィア 9)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(バリプルス・カルトマップ)、アボット(ボルト)。価格は物価並みには上げない:PFA カテーテルは参入 3 社の競争で下がり、マッピングも抱き合わせの値引きがある(中立で 10 年 0.86 倍)。営業利益率は台帳の全社 20.3% を GAAP の償却後で配分し、40% と置いた(アボットの心血管やインテュイティブの 30% 台との比較で、電気生理は規模の効果で高い)。
左心耳閉鎖(ウォッチマン)
心房細動の脳卒中予防の植込み機器。抗凝固薬の代替。
| 数量世界の植込み件数(万件、推定) | 価格1 件あたり売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 17.8 | 11,000 | 20 | 9 |
| 10 年後 中立 | 19.7 | 12,766 | 25 | 12 |
取り方:2025 年の売上 19.6 億ドル(約 +30%)を、世界の植込み件数 約 17.8 万件(推定)で割った 1 件あたり約 11,000 ドル。2026 年 4〜6 月期は 5.07 億ドル(+4%)で、会社は通期を横ばい〜低い 1 桁の増、下期は 1 桁中盤〜後半の減、2027 年の成長は見込まないと説明する。単価は物価並みには上げない(中立で 10 年 1.16 倍):メディケアの償還は据え置きで、競合のアボット(アンプラッツァー・アミュレット 360)が価格で追う。競合はアボット 1 社で、ウォッチマンが米国の大半を持つ。営業利益率は機器の粗利率が高いことから 45% と置いた。
その他の心血管(冠動脈・CRM・末梢血管)
冠動脈ステント・IVL・ペースメーカー・除細動器・末梢血管の治療機器。
| 数量手技・植込み件数(万件、推定の合算) | 価格1 件あたり売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,300 | 600 | 78 | 13 |
| 10 年後 中立 | 2,118 | 696 | 147 | 40 |
取り方:心血管 133 億ドルから電気生理(約 35 億)・ウォッチマン(19.6 億)を引いた約 78 億ドルを、年 約 1,300 万件の手技・機器(推定)で割った 1 件あたり約 600 ドル。会社は 2026 年のそれ以外の事業の成長を約 6% と説明する。競合はアボット・メドトロニック・テルモ・バイオトロニックで、病院の購買組織の交渉力が強い。単価は物価並みには上げない(中立で 10 年 1.16 倍)。営業利益率は償却を引いた 17% と置いた(アボット・メドトロニックの GAAP の 19% 前後との比較)。
内視鏡
消化管の止血・胆膵・尿管鏡などの使い捨て内視鏡機器。
| 数量処置件数(万件、推定) | 価格1 件あたり売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6,500 | 45 | 29 | 6 |
| 10 年後 中立 | 10,094 | 52 | 52 | 15 |
取り方:2025 年の売上 29.2 億ドル(+8.6%)を、使い捨て品の処置件数 約 6,500 万件(推定)で割った 1 件あたり約 45 ドル。競合はオリンパス・富士フイルム・クック。使い捨て品の単価は病院の購買組織に押され、物価より低く上がる(中立で 10 年 1.16 倍)。営業利益率は 20% と置いた。
泌尿器・骨盤
結石・前立腺肥大・過活動膀胱(仙骨神経刺激)の治療機器。アクソニクス買収で拡大。
| 数量対象の患者数(万人、推定の合算) | 価格1 人あたり売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 600 | 450 | 27 | 4 |
| 10 年後 中立 | 977 | 522 | 51 | 12 |
取り方:2025 年の売上 27.1 億ドル(+23.1%、自然増 +4.7%)を、結石・前立腺肥大・過活動膀胱などの治療患者 約 600 万人(推定)で割った 1 人あたり約 450 ドル。競合はコロプラスト・メドトロニック(インターステム)・テレフレックス。単価は公的保険の償還に縛られ物価より低く上がる(中立で 10 年 1.16 倍)。アクソニクスの償却が重く、営業利益率は 13%(成長とともに上がる)と置いた。
神経調節
脊髄刺激(慢性疼痛)など。ナル・メディカルを 2026 年 1 月に買収。
| 数量治療患者数(万人、推定) | 価格1 人あたり売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 40.0 | 3,000 | 12 | 2 |
| 10 年後 中立 | 68.3 | 3,482 | 24 | 7 |
取り方:2025 年の売上 12.0 億ドル(+8.4%)を、脊髄刺激などの治療患者 約 40 万人(推定)で割った 1 人あたり約 3,000 ドル。競合はアボット・メドトロニック・ネバロ(グローブスが買収)。単価は物価より低く上がる(中立で 10 年 1.16 倍)。営業利益率は 20% と置いた。
リスクと懸念
電気生理での後発 3 社の追い上げと価格
PFA は米国のアブレーションの 80〜85% を占め、置き換えで伸びる余地が小さくなった。メドトロニックのアフェラ(スフィア 9)、ジョンソン・エンド・ジョンソンのバリプルス、アボットのボルトが出そろい、会社は「米国の競争を過小評価した」と認める。4〜6 月期の電気生理は 9.16 億ドルと前の四半期からほぼ横ばい。シェアが 4 分の 1 を割り、1 手技あたりの価格が年 3〜4% 下がれば、電気生理の営業利益は中立の半分以下になる。
ウォッチマンの減速と臨床の見方
2025 年は約 +30% だったウォッチマンは、2026 年 4〜6 月期に +4% まで鈍り、下期は 1 桁中盤〜後半の減少を会社が見込む。CHAMPION-AF(抗凝固薬に対し有効性は非劣性、出血は優位)と CLOSURE-AF(逆の結果)で臨床の見方が割れ、標準的な単独手技が減った。5 年追跡が悪く出れば、年 20 億ドルの事業が縮小に転じる。会社は 2027 年の成長を見込んでいない。
買収の失敗とのれん
成長を買収で買う会社で、アクソニクス(約 37 億ドル)・サイレント・ロード(約 13 億ドル)・ボルト・メディカル・ナル・メディカル(約 5 億ドル)と続き、未成立のペヌンブラ(企業価値 145 億ドル)が控える。のれんと無形資産の償却は年 10 億ドル超で GAAP の利益を削り、成長が鈍れば減損が出る。ペヌンブラが成立すれば純負債は 99 億ドルから 2 倍超に増え、FTC の審査の結果次第では条件の見直しも起こる。
見通しの精度と経営の信頼
2026 年に売上見通しを 2 月の +10.5〜11.5% から 4 月に +7〜8.5%、7 月に +5.5〜6.5% へ 2 度下げ、調整後 1 株利益の見通しも下げた。全社の費用削減計画(税引き前 7〜8 億ドル、年 5 億ドルの削減)も同時に出た。見通しがさらに崩れる、あるいは買収の統合で計画を外すと、経営への信頼が下がり、市場が払う倍率が縮む。
価格圧力・関税・公的保険
病院の購買組織と保険者の価格交渉、関税による粗利率の圧迫、メディケア・メディケイドの縮小が続く。心血管・MedSurg の本体は単価が年 +1〜1.5% と物価(3.5%)に届かない前提で置いた。米国の医療費の伸び(年 5.8%)が政策で抑えられれば、数量と価格が同時に影響を受ける。償還の引き下げは電気生理・ウォッチマンにも当たる。
借入金と金利
純負債は 99 億ドルで時価総額の約 15%、自己資本比率は 55% と重くない。借り換えは約 5.75% に上がるが、純利息は 3 億ドル前後から 5 億ドル前後へ増える程度で、利益への影響は小さい。ただし、ペヌンブラの現金部分(約 110 億ドル)を借入金で賄えば、純利息が年 6〜7 億ドル増え、返済のために買収と自社株買いが細る。
今後の分かれ目
- 電気生理の売上が 2026 年下期以降も前年比 +10% 以上を保ち、米国のシェアの下げが止まったら
- 電気生理の価格下落が年 −2% 以内に収まる筋書きが現実になり、楽観・やや楽観の確率を 10 年で 5〜8 ポイント上げる。後発 3 社の追い上げが限定的と確認できる。
- 電気生理が前年比 +5% 以下に鈍り、メドトロニックのスフィア 9 などにシェアを奪われていると会社が認めたら
- 電気生理の価格が年 −3〜4%、シェアが 4 分の 1 を割る筋書きに寄り、やや悲観・悲観の確率を 5〜8 ポイント上げる。電気生理の営業利益は中立の半分程度になる。
- ウォッチマンの 5 年追跡または併用手技(OPTION)の拡大で、2027 年に前年比プラスに戻ったら
- ウォッチマンの数量が年 +1〜3% になる筋書き(中立〜やや楽観)に寄り、10 年の中立の純利益が約 3% 上振れする。逆に 2027 年も減少が続けば、やや悲観の確率を上げる。
- ペヌンブラの買収が FTC の条件つきで成立し、売上の相乗効果が 2 年以内に出始めたら
- 今の会社だけで置いたこの分析に上乗せの価値が加わる。逆に成立後に統合が遅れ、純負債が 200 億ドルを超えて長引けば、償却と利払いで純利益が数年にわたり圧迫され、やや悲観の確率を上げる。
- 2029 年までの費用削減(年 5 億ドル)が計画どおり出て、調整後の営業利益率が 30% 台に乗ったら
- セグメントの営業利益率が中立より 1〜2 ポイント高くなり、10 年の中立の純利益が約 5% 増える。削減が売上の減少で打ち消されるなら、やや悲観に寄る。
- 2026 年通期の見通し(自然増 5〜6%)をさらに下げる、あるいは 2027 年の見通しを会社が低く出したら
- 成長の鈍化が一時的でなく構造的と判断し、中立の確率を下げてやや悲観・悲観に 5 ポイントずつ寄せる。経営への信頼の低下で、市場が払う倍率も縮む前提で見直す。
見ておくもの
- 電気生理の四半期の成長率(米国・米国外)と、メドトロニック・ジョンソン・エンド・ジョンソン・アボットの PFA のシェア
- ウォッチマンの四半期売上(前年比)と併用手技(OPTION)の比率、CHAMPION-AF の 5 年追跡
- ペヌンブラ買収の FTC の審査結果と、成立後の純負債・償却
- 調整後の営業利益率(2026 年 4〜6 月期 28.4%)と費用削減の進捗(年 5 億ドル)
- 会社の通期見通し(自然増 5〜6%)の改定の有無
- 泌尿器(アクソニクス)・神経調節(ナル)・IVL(ボルト)の成長率
- 純負債と支払利息、自社株買いの再開
倍率と資本コストの決め方
今の PER 23 倍を見る前に、数量と価格でセグメントを積み、純利益と自己資本を決めた。倍率は利益ベースの正当化 PER(RONIC は k に、事業の ROE が k を超える分の残る割合を足した値。moat は normal)の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は、正当化 PER 15.9 倍(g 4.0%、RONIC 9.0%、k 7.50%)の 8 割の 12.7 倍。今の値段には寄せていない。総合は今の時価総額より 26% 下。結論は「やや割高」。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality −0.5% = 7.5%。電気生理の競争・ウォッチマンの減速・買収の実行・訴訟などの個別のリスクは k に足さず、やや悲観・悲観の確率(合計 35%)と悲観の深さで表した。存続は危うくないので上乗せ 0。