結論
日清紡ホールディングスは、綿紡績から出発した多角化企業だ。いま利益の柱は、日本無線と国際電気を中核とする無線・通信事業である。防衛省、自治体、造船所が主な顧客で、売上の半分、営業利益の大半を稼ぐ。
筆者の結論は、10年の本質価値は今の時価総額を大きく下回る、というものだ。理由は3つある。第一に、会社自身が「稼ぐ力が弱い」と認めている。2025年12月期の営業利益率は5%台で、資本収益率は資本コストに届かない。第二に、同期の営業利益の約半分は不動産の分譲が生んだ。保有地を売り減らす仕事で、年々細る。第三に、半導体のマイクロデバイスは赤字が続き、2026年は約60億円の構造改革費用を見込む。
見るべき点もある。無線・通信は防災の更新と防衛費の増加に支えられ、2026年の上期には営業利益が通期の計画を上回った。早期退職で固定費も軽くなった。
ただ、この改善が10年続いても、中立の利益率は6%弱にとどまると筆者は見る。資本収益率は6%前後で、資本コストを下回る。強気の筋書きが実現しても、10年後の価値は今の時価総額に届かない。今の株価は、再建の成功をかなり先取りしている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く買える優良事業の集まり」ではなく、「再建中の複合企業」に見える。
まず事業の質。無線・通信は、官公需に支えられた堅い事業だ。ただ利益率は低く、10%に届くかは分からない。稼いだ利益のうち、研究開発と設備に回る分が多く、株主が自由に使える利益は小さい。
次に資本の使い方。TMD Frictionの失敗と、マイクロデバイスの長い赤字は、すでに答えが出ている。国際電気の買収の成否は、これからだ。会社が自ら「稼ぐ力が弱い」と書いた点は誠実だが、その弱さを10年で直せる確証はない。
最後に安全域。強気の筋書きでも、10年後の価値は今の時価総額に届かない。払う値段に見合う安全域は、見当たらない。
ほしいのは、堅い無線・通信の事業だけを切り出した姿である。会社全体としては、不動産の細りと半導体の赤字を差し引いた後の利益で価値を測る必要がある。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく4つに分かれる。
最大は無線・通信で、2025年12月期の売上は約2,500億円、営業利益は約180億円だった。日本無線は船舶用レーダーや通信機器、防衛省向けの装置、自治体の防災システムを手がける。国際電気は旧日立国際電気で、2023年12月に約8割を取得した。放送機器、防災・公共向けの無線、携帯キャリア向けの機器を持つ。顧客の多くは官公庁と船会社で、景気に左右されにくい。
二つ目はマイクロデバイスで、売上は約620億円。2022年に新日本無線とリコー電子デバイスを統合した日清紡マイクロデバイスが担う。電源ICやオペアンプなどのアナログ半導体だ。当初は2025年に売上1,000億円・営業利益100億円を掲げたが、今も赤字から抜けられない。
三つ目はマテリアルで、ブレーキの摩擦材、樹脂の精密部品、化学品、繊維を束ねる。売上は合わせて約1,600億円だが、営業利益は約65億円と薄い。安定して稼ぐのはブレーキだけだ。
四つ目が不動産だ。旧工場跡地などを分譲する事業で、2025年は営業利益が約130億円。前期に大型商業施設の分譲があった反動で、前の年より3割近く減った。
まとめると、無線・通信が土台で、不動産が上乗せ、残りが足を引っ張る構図である。
優良さと弱いところ
優良さの評価は、事業ごとに大きく分かれる。
無線・通信には、他社が簡単にまねできない面がある。防衛・防災・船舶は、実績と認証がものをいう分野だ。商船のレーダーは古野電気が世界の約4割を握り、日本無線は残りを分け合う。2番手だが、船が動く限り保守とアフターサービスの収入が続く。ただ利益率は低い。2024年は3%強で、2025年の約7%も、一時的なコスト削減が押し上げた。
ほかの事業に堀は薄い。アナログ半導体では、テキサス・インスツルメンツやアナログ・デバイセズが規模で上回る。日清紡マイクロデバイスの世界シェアは、筆者の推定で0.5%に満たない。ブレーキの摩擦材も世界での存在感は小さく、2023年には欧州のTMD Frictionを手放した。買収から5年、赤字が続いた末の撤退だった。
財務は並である。自己資本比率は43%、純有利子負債は約1,350億円。利払いは借り換えで増える。資本収益率は過去10期のうち、資本コストを超えたのが2期だけで、中央値は4%台にとどまる。筆者がいちばん気にしているのは、この低さが「たまたま」でなく「構造」に見える点だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日清紡の業界は、需要が強い分野と、競争が厳しい分野の寄せ集めだ。
無線・通信の需要は堅い。防衛費は国内総生産比2%を目指して積み増しが続き、レーダーや通信の更新が進む。自治体の防災無線は更新期に入った。商船では、新造船の更新ラッシュが搭載機器の需要を押し上げてきた。ただ、この追い風は防衛予算の伸びと造船の循環が続く間のものだ。新造船が一巡すれば、残るのは保守の収入である。競合は、レーダーの古野電気、防衛電子機器の三菱電機やNECなどが挙がる。
半導体は、AI向けが強く、産業・車載向けのアナログは回復の途中にある。世界半導体市場統計(WSTS)は、アナログ市場が約865億ドル(2025年)から約1,017億ドル(2027年)へ伸びると見る。ただ、日清紡マイクロデバイスの得意は汎用の電源ICとオペアンプで、価格競争が厳しい。中国勢の台頭で、値段は上がりにくい。
ブレーキの摩擦材は、車の台数に連動する成熟市場だ。電気自動車は回生ブレーキを使うのでパッドの減りは遅いが、車体は重くなる。差し引きで数量は横ばいと見る。繊維と化学品は、国内の人口減と中国の低価格に挟まれる。燃料電池用の部材は、水素の普及が遅れて停滞している。
10年で見れば、成長は無線・通信と半導体に偏る。会社が2035年に両事業で売上の8割超を掲げるのは、そのためだ。
資本政策と M&A
資本政策の中心は、事業の入れ替えである。
買収の歴史は、成功と失敗が混ざる。2017年に日本無線、2018年に新日本無線を完全子会社にし、無線の技術を一つにまとめた。2023年12月には国際電気の約8割を約370億円で取得した。一方、2011年に買った欧州の摩擦材TMD Frictionは5年間赤字が続き、2023年に全株を売った。2025年10月には不織布事業からも撤退している。
還元は、年間配当に下限を置き、配当性向40%を目指す方針だ。自社株買いの方針は示されていない。会社は、構造改革に現金を優先して回すと説明している。
政策保有株は減らす方向にある。2026年9月、四国化成ホールディングス株200万株を売り、約38億円の売却益を特別利益に入れた。保有比率は9.5%から7.0%に下がった。この益で2026年12月期の純利益予想は100億円から140億円に上がったが、本業が良くなったわけではない。
筆者が気にするのは、売却と構造改革が続く間、株主への還元が限られる点だ。10年以内に買収・TOBを受ける確率は、kabufuの推計で15%ほどである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
無線・通信は、いま最も追い風を受けている。2026年の上期の営業利益は約300億円で、会社の通期計画を上回った。早期退職で固定費が下がり、日本無線は事業会社を4社から2社、生産会社を6社から1社に集約する。防災の更新、防衛費の増加、船の保守という、景気に左右されにくい需要が並ぶ。会社は2030年に売上3,000億円・営業利益300億円を目指す。達成すれば利益率は10%に乗る。
半導体の構造改革も効き始める。約560人の早期退職で固定費が下がり、2026年は赤字が大きく縮む。事業をゼロから描き直すと会社が言う以上、売却や提携という手も使える。
不動産は、分譲で得た現金で借金を返す。政策保有株の売却も進み、財務は軽くなる。ブレーキは価格転嫁が進み、精密機器はインドで伸びた。
会社は2035年に営業利益率10%以上、資本収益率10%超を掲げる。構造改革の形はすでに整い、あとは魂を入れる段階にある。実現すれば、利益は今の2倍を超える。
慎重な見方
会社自身が「稼ぐ力が弱い」と認めた点が、すべてを物語る。営業利益率は5%台、資本収益率は4%台で、資本コストに届かない。2025年の営業利益の約半分は不動産の分譲で、保有地を売り減らす仕事だ。2026年の計画では、不動産の営業利益は約64億円と半分になる。残りの事業だけで稼ぐ力を見ると、利益の水準はずっと低い。
無線・通信の改善は、一時的なコスト削減の寄与が大きい。2026年は研究開発が増え、営業利益は減る計画だ。官公需は予算に左右され、造船の新造ブームも永遠には続かない。モビリティ他は赤字で、携帯電話の中継装置は受注の波が大きい。
マイクロデバイスは、アナログ半導体の中では規模が小さく、世界シェアは0.5%に満たない。早期退職は固定費を削るが、売上の回復は約束しない。2025年の目標だった売上1,000億円・営業利益100億円は、どちらも届かなかった。TMD Frictionの買収失敗も、資本配分への信頼を下げる。
10年先でも利益率が10%に届く保証はない。届かなければ、資本収益率は資本コストを下回り続ける。そのとき株主が受け取る価値は、今の時価総額よりずっと小さい。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、無線・通信の改善と構造改革の進み具合を根拠にしていて、事実として間違っていない。ただ、慎重な見方が突く3点のほうが重い。資本収益率が資本コストに届かない構造、不動産という消えゆく利益、半導体の長い赤字である。
確率は中立にいちばん厚く置いた。強気側には、2026年上期の好調さを考えて、やや楽観に2割強を割いた。慎重側には、不動産の細りと半導体再建の難しさを考えて、やや悲観と悲観を合わせて3割台半ばを置いた。慎重側をわずかに厚くしたのは、会社の自己診断が「稼ぐ力が弱い」だからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,901 円2,970 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 467 円729 億円)。 今の値に割り戻すと 1,174 円1,835 億円、今との差 −48.1%、 期待の年率 +0.5%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,986 円6,227 億円 | 857 円1,339 億円 | +114.0% | +7.9% | 387 円605 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,825 円4,413 億円 | 655 円1,023 億円 | +53.8% | +4.4% | 766 円1,196 億円 |
| 中立 | 35% | 2,114 円3,303 億円 | 495 円774 億円 | +15.4% | +1.4% | 913 円1,427 億円 |
| やや悲観 | 23% | 757 円1,183 億円 | 268 円418 億円 | −54.7% | −7.6% | 236 円368 億円 |
| 悲観 | 12% | 386 円603 億円 | 160 円250 億円 | −75.9% | −13.3% | 66 円102 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,901 円2,970 億円 | 467 円729 億円 | +4.7% | +0.5% | 2,368 円3,699 億円 |
今の株価時価総額 2,263 円3,535 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 会社の計画どおり、無線・通信が利益率10%に乗る 利益 456 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,986 円6,227 億円
会社の目標がほぼ実現する10年である。無線・通信は、防災の更新、防衛費の増加、船の保守に支えられ、売上が2030年に3,000億円を超え、2035年には4,400億円に近づく。日本無線の統合と固定費の削減が効き、営業利益率は10%に乗る。国際電気との共同開発も進み、機器の販売から保守・運用まで含むソリューション販売へ軸足が移る。
マイクロデバイスは、早期退職と製品の絞り込みで黒字化し、データセンターの電源向けなどを足がかりに売上は1,100億円に届く。不動産は分譲を続けながら、得た現金を借金の返済に回す。ブレーキと精密機器は、価格転嫁と新興国の伸びで利益率を保つ。
営業利益は700億円を超え、資本収益率は10%に乗る。配当は利益とともに増え、自社株買いも加わる。会社が掲げる営業利益率10%以上に届く、最も良い道筋である。
- 無線・通信:数量 21.9(自社の取扱量=市場規模(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 201(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 4,397 億円・営業利益 440 億円。市場 175 億ドル(実質)× シェア 12.50%、営業利益率 10.0%
- マイクロデバイス:数量 5.6(自社の取扱量=アナログ半導体市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 195(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 1,098 億円・営業利益 110 億円。市場 1,341 億ドル(実質)× シェア 0.42%、営業利益率 10.0%
- ブレーキ:数量 4.5(自社の取扱量=世界の摩擦材市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 201(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 906 億円・営業利益 68 億円。市場 136 億ドル(実質)× シェア 3.30%、営業利益率 7.5%
- 精密機器:数量 4.4(自社の取扱量=成形品・精密部品の市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 201(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 884 億円・営業利益 66 億円。市場 440 億ドル(実質)× シェア 1.00%、営業利益率 7.5%
- 繊維・化学品:数量 3.5(自社の取扱量=繊維・機能化学品の市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 201(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 696 億円・営業利益 42 億円。市場 330 億ドル(実質)× シェア 1.05%、営業利益率 6.0%
- 不動産:数量 22.0(年間に売却・賃貸に回る資産の簿価(億円・取得時の値段で固定))× 価格 4.80(簿価に対する売上の倍率(土地の値上がりを含む))→ 売上 106 億円・営業利益 66 億円。売却・賃貸に回る資産の簿価 22 億円、営業利益率 62%
倍率:事業の純利益 456 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.28 倍、時価総額 6,056 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:無線・通信とマイクロデバイスで営業利益率10%への道筋が同時に進む必要がある。過去10期のうち資本収益率が資本コストを超えたのは2期だけで、同時成功の確率は低い。
やや楽観 22% 改善は定着するが、目標には少し届かない 利益 348 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,825 円4,413 億円
改善は定着するが、会社の目標には少し届かない10年である。無線・通信は、官公需の堅さと構造改革の効果で営業利益率が9%前後まで上がり、売上は4,000億円強になる。造船の新造需要は2020年代後半に一巡するが、保守と換装が穴を埋める。
マイクロデバイスは構造改革で赤字を止め、小さな黒字に落ち着く。産業向けの回復と電源ICの新規顧客がそれを支えるが、規模の小さい会社が大手に並ぶほどのシェアは取れない。不動産は分譲の弾が減り、利益は年40億円台に細る。
全体の営業利益は550億円ほどで、資本収益率は8%前後になる。資本コストをわずかに下回る水準で、利益の質はまだ不安定だが、減損や特別損失の多い10年よりはずっと穏やかである。
- 無線・通信:数量 20.2(自社の取扱量=市場規模(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 201(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 4,051 億円・営業利益 365 億円。市場 165 億ドル(実質)× シェア 12.20%、営業利益率 9.0%
- マイクロデバイス:数量 5.2(自社の取扱量=アナログ半導体市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 188(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 973 億円・営業利益 78 億円。市場 1,298 億ドル(実質)× シェア 0.40%、営業利益率 8.0%
- ブレーキ:数量 4.1(自社の取扱量=世界の摩擦材市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 201(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 826 億円・営業利益 56 億円。市場 133 億ドル(実質)× シェア 3.10%、営業利益率 6.8%
- 精密機器:数量 4.1(自社の取扱量=成形品・精密部品の市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 201(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 817 億円・営業利益 53 億円。市場 428 億ドル(実質)× シェア 0.95%、営業利益率 6.5%
- 繊維・化学品:数量 3.2(自社の取扱量=繊維・機能化学品の市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 201(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 633 億円・営業利益 25 億円。市場 315 億ドル(実質)× シェア 1.00%、営業利益率 4.0%
- 不動産:数量 16.0(年間に売却・賃貸に回る資産の簿価(億円・取得時の値段で固定))× 価格 4.80(簿価に対する売上の倍率(土地の値上がりを含む))→ 売上 77 億円・営業利益 45 億円。売却・賃貸に回る資産の簿価 16 億円、営業利益率 58%
倍率:事業の純利益 348 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 4,218 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年上期に営業利益が通期計画を上回り、無線・通信の改善が続く可能性は高い。ただ会社の目標の利益率までは届かない、現実的な上振れを置いた。
中立 35% 改善は進むが、利益率10%には届かない 利益 248 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,114 円3,303 億円
改善は進むが、10%の利益率には届かない10年である。無線・通信は防衛と防災に支えられて売上が3,700億円ほどに伸び、営業利益率は8%に落ち着く。2025年の7%には、一時的なコスト削減が含まれていた。それを除いた実力と、研究開発の増加を見込んだ水準である。
マイクロデバイスは構造改革で赤字を脱するが、利益率は4〜5%にとどまる。アナログ半導体の値段は中国勢に押され、物価ほどは上がらない。ブレーキは堅調で、精密機器は家電分野のシェア低下を車載と医療で補う。繊維と化学品は縮小や切り出しが進み、利益はほぼゼロである。不動産は保有地の残りが少なくなり、営業利益は年30億円ほどに細る。
営業利益は約390億円、純利益は約250億円になる。資本収益率は6%前後で、資本コストには届かない。会社は稼ぐ力を直しつつあるが、10年たっても稼ぎ切れていない姿である。
- 無線・通信:数量 18.5(自社の取扱量=市場規模(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 201(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 3,714 億円・営業利益 297 億円。市場 154 億ドル(実質)× シェア 12.00%、営業利益率 8.0%
- マイクロデバイス:数量 4.5(自社の取扱量=アナログ半導体市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 180(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 813 億円・営業利益 37 億円。市場 1,254 億ドル(実質)× シェア 0.36%、営業利益率 4.5%
- ブレーキ:数量 3.9(自社の取扱量=世界の摩擦材市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 198(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 772 億円・営業利益 46 億円。市場 130 億ドル(実質)× シェア 3.00%、営業利益率 6.0%
- 精密機器:数量 3.8(自社の取扱量=成形品・精密部品の市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 201(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 762 億円・営業利益 40 億円。市場 412 億ドル(実質)× シェア 0.92%、営業利益率 5.2%
- 繊維・化学品:数量 2.7(自社の取扱量=繊維・機能化学品の市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 195(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 528 億円・営業利益 11 億円。市場 285 億ドル(実質)× シェア 0.95%、営業利益率 2.0%
- 不動産:数量 12.0(年間に売却・賃貸に回る資産の簿価(億円・取得時の値段で固定))× 価格 4.80(簿価に対する売上の倍率(土地の値上がりを含む))→ 売上 58 億円・営業利益 32 億円。売却・賃貸に回る資産の簿価 12 億円、営業利益率 55%
倍率:事業の純利益 248 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 3,006 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025年の改善(無線・通信の利益率7%)と、一時的な要因・研究開発の増加を織り込んだ中心の筋書き。強気と慎重の見方の落としどころで、最も厚く置く。
やや悲観 23% 官公需が一巡し、半導体の再建が長引く 利益 100 億円 · PER 7.3 倍 · 株価時価総額 757 円1,183 億円
官公需が一巡し、半導体の再建が長引く10年である。防衛費の伸びは頭打ちになり、自治体の防災無線の更新も一巡する。造船の新造も減り、無線・通信は価格競争の影響で営業利益率が5%台に戻る。2025年の改善は、一時的なコスト削減が主因だったと分かる。
マイクロデバイスは、約560人の早期退職をしても黒字化できず、損益はゼロ近辺で推移する。アナログ半導体の価格は中国勢に押され、売上はほとんど伸びない。不動産の分譲は終わりに近づき、利益は年20億円を割る。
営業利益は170億円ほどで、純利益は100億円前後。資本収益率は3%まで下がる。配当は下限の水準を保つが、増配は難しい。一部で減損が出て、自己資本は今より小さい伸びにとどまる。
- 無線・通信:数量 16.3(自社の取扱量=市場規模(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 201(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 3,272 億円・営業利益 180 億円。市場 143 億ドル(実質)× シェア 11.40%、営業利益率 5.5%
- マイクロデバイス:数量 3.5(自社の取扱量=アナログ半導体市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 165(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 578 億円・営業利益 0 億円。市場 1,168 億ドル(実質)× シェア 0.30%、営業利益率 0.0%
- ブレーキ:数量 3.5(自社の取扱量=世界の摩擦材市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 188(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 648 億円・営業利益 26 億円。市場 124 億ドル(実質)× シェア 2.80%、営業利益率 4.0%
- 精密機器:数量 3.3(自社の取扱量=成形品・精密部品の市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 192(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 640 億円・営業利益 19 億円。市場 392 億ドル(実質)× シェア 0.85%、営業利益率 3.0%
- 繊維・化学品:数量 2.2(自社の取扱量=繊維・機能化学品の市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 180(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 390 億円・営業利益 −4 億円。市場 255 億ドル(実質)× シェア 0.85%、営業利益率 -1.0%
- 不動産:数量 8.0(年間に売却・賃貸に回る資産の簿価(億円・取得時の値段で固定))× 価格 4.48(簿価に対する売上の倍率(土地の値上がりを含む))→ 売上 36 億円・営業利益 16 億円。売却・賃貸に回る資産の簿価 8 億円、営業利益率 45%
倍率:ROE 2.9% が k 8.25% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER は 1÷k=12.1 倍。官公需の一巡と半導体の再建遅れで利益が不安定な筋書きなので、上限の 6.0 割に置いた(やや悲観は 7 割へ引き上げない)(7.27 倍)。
確率:官公需の循環、不動産の先細り、半導体の再建遅れのどれか一つでも起きれば届く。会社が自ら「稼ぐ力が弱い」と書き、過去の利益の振れも大きいので、やや厚くした。
悲観 12% 構造改革が空回りし、事業の切り売りに入る 利益 −13 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 386 円603 億円
構造改革が空回りし、事業の切り売りに入る10年である。無線・通信は入札で値下げを迫られ、営業利益率は4%に落ちる。官公需の予算は抑えられ、国際電気の統合効果も出ない。マイクロデバイスは赤字を止められず、売却か撤退に至り、のれんや設備の減損が出る。
不動産の分譲は枯れ、ブレーキや精密機器も中国勢との競争で利益が消える。繊維と化学品は赤字が続く。借り換えで利払いが増え、純利益は赤字に転落する。配当は初めの数年を投資有価証券などの売却でまかない、その後は止まる。
会社は事業を絞り、無線・通信を中心にした小さな企業に作り替わる。稼ぐ力が小さい分、価値の下支えは売れる資産と、残る無線・通信の事業価値になる。
- 無線・通信:数量 14.0(自社の取扱量=市場規模(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 188(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 2,618 億円・営業利益 105 億円。市場 133 億ドル(実質)× シェア 10.50%、営業利益率 4.0%
- マイクロデバイス:数量 2.6(自社の取扱量=アナログ半導体市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 150(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 389 億円・営業利益 −23 億円。市場 1,081 億ドル(実質)× シェア 0.24%、営業利益率 -6.0%
- ブレーキ:数量 2.9(自社の取扱量=世界の摩擦材市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 177(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 518 億円・営業利益 8 億円。市場 117 億ドル(実質)× シェア 2.50%、営業利益率 1.5%
- 精密機器:数量 2.8(自社の取扱量=成形品・精密部品の市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 188(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 518 億円・営業利益 3 億円。市場 368 億ドル(実質)× シェア 0.75%、営業利益率 0.5%
- 繊維・化学品:数量 1.7(自社の取扱量=繊維・機能化学品の市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 165(実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率)→ 売上 279 億円・営業利益 −11 億円。市場 225 億ドル(実質)× シェア 0.75%、営業利益率 -4.0%
- 不動産:数量 4.0(年間に売却・賃貸に回る資産の簿価(億円・取得時の値段で固定))× 価格 3.94(簿価に対する売上の倍率(土地の値上がりを含む))→ 売上 16 億円・営業利益 5 億円。売却・賃貸に回る資産の簿価 4 億円、営業利益率 30%
倍率:赤字の筋書きで稼ぐ力では測れない。床は、売れる資産の税後から純有利子負債を引いた額(floor_assets_oku に内訳)で、今の自己資本 2873 億円の 0.21 倍に置いた。稼ぐ力から出したやや悲観の約 727 億円より低い。EV÷営業利益は約 70 倍と高く見えるが、営業利益が赤字事業と減損で潰れた谷の値で、残る無線・通信と資産の価値から出した床である。
確率:TMD Frictionのように、買収や再建が失敗した前例がある。ただ複数の事業で同時に外れる必要があるため、確率は1割強に抑える。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
無線・通信
日本無線(船舶用レーダー・防衛省向け装置・防災システム)と国際電気(放送・防災・携帯キャリア向け機器)の事業。
| 数量自社の取扱量=市場規模(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 16.8 | 150 | 2,518 | 177 |
| 10 年後 中立 | 18.5 | 201 | 3,714 | 297 |
取り方:官公庁・船舶・業務用の無線通信機器・システムの市場を、推定で約 140 億ドル(約 2.1 兆円、今の値段の実質)と置いた。内訳の目安は、防衛省の通信・レーダー、自治体・消防の防災無線、放送機器、商船の航海・通信機器、業務用無線。公的な統計は無く、売上 2,518 億円(会社資料)から逆算したシェアは約 12%。数量は市場×シェア、価格は 150 円に値段の倍率を掛ける。営業利益は 2025 年の実績 177 億円。
マイクロデバイス
日清紡マイクロデバイスの電源IC・オペアンプなどのアナログ半導体と、マイクロ波(電子管)の事業。
| 数量自社の取扱量=アナログ半導体市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.2 | 150 | 624 | −55 |
| 10 年後 中立 | 4.5 | 180 | 813 | 37 |
取り方:世界のアナログ半導体市場は 2025 年に約 865 億ドル(WSTS の予測)。売上 624 億円(会社資料)から逆算したシェアは約 0.48%。数量は市場×シェア、価格は 150 円に値段の倍率を掛ける。アナログ半導体は世代ごとの値下がりと中国勢の価格競争があり、値段は物価並みには上がらないとみる。営業損失は 2025 年の実績 55 億円。
ブレーキ
自動車用ブレーキの摩擦材(ディスクパッド・ライニング)を日本・米国・韓国などで作る事業。
| 数量自社の取扱量=世界の摩擦材市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.9 | 150 | 578 | 34 |
| 10 年後 中立 | 3.9 | 198 | 772 | 46 |
取り方:世界の自動車用摩擦材の市場を、推定で約 130 億ドル(今の値段の実質)と置いた。公的な統計は無く、売上 578 億円(会社資料)から逆算したシェアは約 3.0%。数量は市場×シェア、価格は 150 円に値段の倍率を掛ける。2025 年は価格転嫁が進み、営業利益は 34 億円。
精密機器
車載・医療・家電・住宅設備向けの樹脂成形品と精密部品(日清紡メカトロニクスなど)の事業。
| 数量自社の取扱量=成形品・精密部品の市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.7 | 150 | 554 | 30 |
| 10 年後 中立 | 3.8 | 201 | 762 | 40 |
取り方:車載・医療・家電・住宅設備向けの樹脂成形品・精密部品の市場を、推定で約 400 億ドル(今の値段の実質)と置いた。公的な統計は無く、売上 554 億円(会社資料)から逆算したシェアは約 0.9%。数量は市場×シェア、価格は 150 円に値段の倍率を掛ける。2025 年の営業利益は 30 億円。
繊維・化学品
シャツ・ユニフォーム・機能繊維の繊維事業と、燃料電池用セパレータや機能化学品の化学品事業。
| 数量自社の取扱量=繊維・機能化学品の市場(億ドル・今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質 1 ドル相当の売上あたり円=150 円 × 値段の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.9 | 150 | 430 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.7 | 195 | 528 | 11 |
取り方:繊維(シャツ・ユニフォーム・機能繊維)と化学品(機能化学品・燃料電池用部材)の市場を、推定で約 300 億ドル(今の値段の実質)と置いた。公的な統計は無く、両事業の売上計 430 億円(会社資料)から逆算したシェアは約 1.0%。数量は市場×シェア、価格は 150 円に値段の倍率を掛ける。営業利益は 2025 年にほぼゼロ。
不動産
旧工場跡地などの保有地を分譲・賃貸する事業。会社は保有資産を計画的に分譲して現金化する方針。
| 数量年間に売却・賃貸に回る資産の簿価(億円・取得時の値段で固定) | 価格簿価に対する売上の倍率(土地の値上がりを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 50.0 | 3.58 | 179 | 127 |
| 10 年後 中立 | 12.0 | 4.80 | 58 | 32 |
取り方:分譲・賃貸の物量は開示が無い。売上 179 億円(会社資料)に対し、売却・賃貸に回る資産の簿価を年 50 億円ほどと推定し、簿価あたりの売上を約 3.6 倍とした。営業利益は 2025 年に 127 億円で、前期の 177 億円から減った。保有地は売れば減るため、数量は年々細る。
リスクと懸念
稼ぐ力が直らない
会社自身が「稼ぐ力が弱い」と認め、目標は営業利益率10%・ROIC 7%以上だ。2025年は営業利益率5%台、ROICは4%台にとどまった。この目標に届かなければ、資本収益率は資本コストを下回り続け、価値は増えない。
不動産の利益が先細る
2025年12月期の営業利益の約半分、約127億円は不動産の分譲が稼いだ。会社は保有地を計画的に分譲し現金化する方針で、2026年の計画は約64億円と半分になる。分譲が終われば、利益の柱が抜ける。
マイクロデバイスの再建失敗
新日本無線とリコー電子デバイスの統合後も赤字が続き、2026年は約60億円の構造改革費用が出る。約560人の早期退職で固定費は下がるが、売上が戻らなければ、売却・撤退や減損に進む恐れがある。
官公需と造船の循環
無線・通信は防衛、防災、新造船の需要に支えられる。どれも予算や発注の循環があり、一巡すれば営業利益率は押し戻される。2025年の改善には一時的なコスト削減も含まれ、2026年は研究開発の増加で減益の計画だ。
国際電気の統合が進まない
2023年12月に約370億円で約8割を取得した国際電気は、携帯キャリア向け機器など受注の波が大きい事業を抱える。日本無線との重複を減らせなければ、統合の効果が出ず、買収の評価が下がる。
金利上昇による利払い増
純有利子負債は約1,350億円。借り換えのたびに金利が上がり、10年で利払いが約35億円増える見込みだ。営業利益が300〜400億円の会社にとって、小さくない負担である。
売却益に頼る利益の見かけ
2026年9月の四国化成株の売却で、純利益予想は100億円から140億円に上がった。だが一過性の益で、本業の力ではない。政策保有株の売却益が尽きたとき、利益の水準が見かけより低いことが分かる恐れがある。
今後の分かれ目
- 無線・通信の営業利益率が2年続けて9〜10%近くになったら
- 強気の筋書き(楽観・やや楽観)の確率を上げる。10%の利益率は構造改革の成果と読めるので、中立の利益率も見直す。
- マイクロデバイスが売却や提携で赤字を止めたら
- 悲観側の確率を下げ、半導体の損失を前提にした利益の見方を引き上げる。のれんや設備の減損が出ても、将来の赤字が消える分は評価する。
- 不動産の分譲が終わりに近づき、無線・通信の利益で穴を埋められなかったら
- やや悲観に重みを移す。不動産の利益は10年で細る前提なので、その分の穴埋めが数字で見えるかを確認する。
- 配当の引き上げや自社株買いが示されたら
- 還元の見通しを上げる。ただし構造改革の資金が足りるか、借金の水準が上がらないかを同時に確かめる。
- 防衛予算や自治体の防災予算の伸びが鈍ったら
- 無線・通信の利益率をやや悲観の水準に近づけ、官公需の循環の影響を中立の数字に織り込み直す。
- 国際電気との重複費の削減が決算で数字になったら
- ソリューション・特機の利益率を引き上げ、買収の効果を評価し直す。
見ておくもの
- 無線・通信の営業利益率(2026年計画は6.4%、2030年の目標は10%)の推移
- マイクロデバイスの黒字化の時期と、構造改革費用・のれん減損の額
- 不動産の分譲規模と、保有地の残り(売上と営業利益の推移)
- 配当方針(性向40%)と自社株買いの有無、純有利子負債の水準
- 防衛費・自治体の防災予算、新造船の受注量
- 政策保有株の売却の進み具合と、売却益を除いた利益の水準
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト8.25%(基本7.5%に、循環・値決め力・借金で各0.25%を足した)と10年後の資本収益率から、利益ベースの上限を出し、その6〜8.5割に置いた。今の株価や過去の倍率は使っていない。市場規模とシェアは公的な統計がなく、売上から逆算した筆者の推定である。2026年上期の好調は通期計画との差が大きく、中立の出発点には使わず、強気側に入れた。10年後の数字は、新リース会計基準の適用前と同じ形(家賃を費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.29→13.28 倍・やや楽観 PER 9.7→12.12 倍・中立 PER 9.09→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。