結論
ディスコは、半導体ウェーハを切り、削り、磨く精密加工装置の世界首位だ。ダイシング(切断)装置の世界シェアは 7〜8 割、グラインディング(研削)装置は 6〜7 割。筆者の結論は、事業は第一級だが値段が先を行きすぎている、というものだ。総合ではやや割高(−19%)になった。
稼ぎの形が良い。装置を売ると、ブレードや砥石という消耗品が毎年売れ続ける。消耗品は売上の 4 割近くを占める。装置が増えるほど、安定した収益も積み上がる。無借金で、自己資本比率は 79% ある。
追い風は AI だ。AI 向けの GPU や積層メモリ(HBM)は、ウェーハを極薄にして切り出す難度を上げる。その加工は、ディスコの装置と消耗品の両方を必要とする。中立では、後工程の市場が実質で約 2.7 倍に伸びると置いた。名目では年 14% の成長になる。機械業界の標準よりかなり高いが、先端パッケージという固有の需要がある。
10 年後の中立は、営業利益率 39%、ROE 20%、PER 17 倍弱。時価総額は今を 4 割ほど上回る。ただし半導体は谷が深い。谷の確率を厚く入れて資本コスト 7% で割り引くと、本質価値は今を 2 割弱下回る。顧客は最先端の数社に集中する。筆者は、AI 投資が長く続き、谷も浅いという前提を、今の値段が先に払っていると見る。
バリュー投資の観点から
筆者が最初に見るのは、株主が自由に取り出せる利益だ。ディスコは研究開発の負担が軽く、高い営業利益率をそのまま現金に変えやすい。ただし受注は半導体の投資循環に強く連れて動く。好況の 1 年の利益を、将来にそのまま引き伸ばしてはいけない。
堀の幅は広いと筆者は見る。ダイシングとグラインディングで、ほぼ独占に近い。装置と消耗品を一体で握る継続収益も強い。顧客のラインに組み込まれているため、替えにくさも堀の一部だ。
警戒するのは顧客の偏りだ。最先端の数社に集中するので、1 社の投資計画の変更が全体に響く。10 年先の姿を読みにくい点でもある。
資本の使い方は評価できる。大型買収に走らず、自前で技術を掘り、配当で分かりやすく返す。
最後に安全域だ。今の PBR は 11 倍超、PER は 49 倍にのぼる。AI の実装が深まり、それがかなり長く続くという前提を、今の値段が先に払っている。安全域は薄い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、半導体ウェーハや電子部品を加工する精密加工装置だ。開示は単一セグメントだが、中身は装置本体と消耗品の二本立てになる。
装置は、ダイシング(切断)、グラインディング(研削)、研磨を担う。消耗品は、装置に付けるダイヤモンドブレードや研削砥石だ。「キラ」の商標で知られ、使うたびに減って交換される。売上の 4 割近くがこちらだ。
装置と消耗品を一体で開発するのが、この会社の流儀だ。社内では「切る・削る・擦る」の頭文字を取って KCSS と呼ぶ。顧客の量産ラインは、加工条件を決め込んだうえで動く。装置を替えると条件を取り直さねばならず、顧客は替えにくい。
顧客は TSMC、サムスン、SK ハイニックス、マイクロンなど最先端の工場だ。NVIDIA や AMD が設計する AI 向けの GPU と HBM の増産が、薄く切り出す難度を押し上げている。次の成長の種は、チップを積み重ねる TSV と、直接つなぐハイブリッドボンディングだ。
創業は砥石づくりにある。切る・削る技術を磨いた延長で、セラミックコンデンサなど電子部品向けにも広がった。
優良さと弱いところ
筆者が見る堀は、世界シェアとつなぎ止める力だ。ダイシングで 7〜8 割、グラインディングで 6〜7 割を握る。競合は東京精密と岡本工作機械製作所など少数にとどまる。
顧客を縛るのは、装置と消耗品を一体で握る構造である。装置を替えるには加工条件を取り直す。その手間と歩留まりの不安が、顧客の背中を止める。営業利益率は 42% 超、ROE は 23% 台。無借金で、自己資本比率も 79% と厚い。
社内の仕組みも変わっている。社内通貨「Will」で仕事を売り買いし、個人単位で独立採算をとる。人件費の一部が仕事の量に連動し、谷の固定費が重くなりにくい。
弱点は二つある。一つは半導体の投資循環で、ITバブル崩壊とリーマンショックでは営業利益率がほぼゼロまで落ちた。もう一つは中国の新興メーカーだ。中位の性能帯で国産化が進めば、長い目ではシェアが削られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
後工程の市場は、AI 向け先端ロジックと HBM の投資で広がっている。先端パッケージ固有の需要が、前工程の設備投資に上乗せされる構造だ。
筆者は、この市場を前工程の設備投資より小さな隣の市場と見ている。担い手は、ディスコ、東京精密、岡本工作機械製作所の日本勢が中心だ。チップを何段にも積み、より薄く加工する流れは、装置と消耗品の両方の単価と需要を押し上げる。
前工程の投資は、東京エレクトロンの見方で 10 年後に 2,600 億ドル前後になる。後工程も同じ半導体の景気と AI 投資を共有する。10 年後の市場は、名目で 87 億ドルほどとみた。
ただし循環はなくならない。2001 年と 2008 年の谷では、需要が急に引いた。受注は先読みと在庫調整で大きく揺れる。AI 投資の柱が増えても、この揺れは消えない。
中国の装置国産化も気になる。今は中位の性能帯にとどまるが、10 年あれば競争の形を変えうる。顧客の側も、特定の 1 社に頼りたくない。装置を複数社から買う動きが強まれば、価格の交渉力が変わる。
資本政策と M&A
還元の中心は配当だ。基本の配当性向は 25% で、期末に余った資金の 3 分の 1 を追加で配る。2026 年 3 月期の配当性向は 40%、増配は 7 期連続になった。自社株買いはごく限られる。
大きな買収はほとんどしない。装置と消耗品を自前で深く掘る成長が基本だ。無借金で自己資本比率も高いため、研究開発と還元を同時に進める余力はある。筆者は、この規律を評価する。
中期経営計画を、あえて作らない。長期ビジョン「DISCO VISION」で 2030 年の企業像を示すだけだ。短い期間の数値目標に縛られない経営だが、外から業績を見通しにくい面もある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、AI 投資はまだ序盤だと言う。NVIDIA や AMD の GPU、HBM4 のような先端メモリは、これから何世代も増える。そのたびに、ウェーハをもっと薄く、もっと精密に切る要求が強まる。ディスコの装置と消耗品は、両方で需要が伸びる。
独占は簡単には崩れない、とも言う。シェアは切断で 7〜8 割、研削で 6〜7 割だ。装置と消耗品を一体で作り、顧客のラインに食い込んでいる。東京精密など競合はいるが、最先端の工程では技術の差が大きい。
消耗品は売上の 4 割近い。装置が増えるほど、継続収益が積み上がる。無借金で自己資本比率は 79%。研究開発と還元を並行して進められる。社内通貨「Will」の独立採算は、谷で人件費を機動的に調整する助けにもなる。AI の実装が深まる限り、装置の更新と消耗品の需要は同時に増える、という主張だ。
筆者から見ても、この論点は筋が通る。問題は期間だ。10 年は、AI の投資が複数の波を越えられるかを問う長さである。
慎重な見方
慎重な見方はまず、この市場の狭さを突く。ディスコが大半を握るので、顧客の投資計画の変更が、そのまま業績に響く。2001 年も 2008 年も、営業利益率はほぼゼロまで落ちた。AI 向けの需要が先走れば、メモリもロジックも設備が余り、急に失速しうる。
中国の国産化にも触れる。今は中位の性能帯だけだが、10 年は長い。東京精密との価格競争が、じわじわ強まる可能性もある。
最後に値段だ。PBR は 11 倍超、PER は 49 倍。資本財の会社としては、過去に例のない高さだ。AI の実装が長く続くという期待を、かなり強く織り込んでいる。会社は中期経営計画を作らず、数値目標を示さない。投資家は将来を検証しにくい。期待が少しでもしぼめば、業績が落ちる前に、倍率の縮みだけで株価が大きく下がる、という主張だ。
筆者も、高い倍率の怖さは軽く見ない。業績が予想どおりでも、評価の水準が戻るだけで、投資家の 10 年の成果は薄くなる。
どちらに重みを置いたか
事業の強さでは、強気の見方に説得力がある。装置と消耗品の組み合わせは、堀として本物だ。一方、顧客の集中、循環の谷の深さ、今の倍率の高さでは、慎重な見方にも分がある。
筆者は、中立を最も厚くしつつ、谷の深さを見て悲観側を 35% まで増やした。中立でも、10 年後の時価総額は今を 4 割ほど上回るにとどまる。確率で重ねると、今を 2 割弱下回る。今の値段が正当化されるのは、楽観とやや楽観が続く時に近い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 98,675 円10.70 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 11,246 円1.22 兆円)。 今の値に割り戻すと 58,179 円6.31 兆円、今との差 +13.6%、 期待の年率 +7.9%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 13% | 190,930 円20.71 兆円 | 23,140 円2.51 兆円 | +317.9% | +15.4% | 27,829 円3.02 兆円 |
| やや楽観 | 22% | 145,751 円15.81 兆円 | 15,716 円1.70 兆円 | +215.2% | +12.2% | 35,523 円3.85 兆円 |
| 中立 | 30% | 109,324 円11.86 兆円 | 10,530 円1.14 兆円 | +134.0% | +8.9% | 35,956 円3.90 兆円 |
| やや悲観 | 22% | 34,119 円3.70 兆円 | 5,791 円6,282 億円 | −22.1% | −2.5% | 8,780 円9,524 億円 |
| 悲観 | 13% | 11,426 円1.24 兆円 | 2,668 円2,894 億円 | −72.5% | −12.1% | 1,832 円1,987 億円 |
| 加重平均 | 100% | 98,675 円10.70 兆円 | 11,246 円1.22 兆円 | +114.6% | +7.9% | 109,920 円11.92 兆円 |
今の株価時価総額 51,230 円5.56 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 13% 独占を維持しながら複数世代のAI実装を取り切る 利益 8,371 億円 · PER 24.4 倍 · 株価時価総額 190,930 円20.71 兆円
最も理想的な 10 年だ。AI、先端パッケージ、次世代メモリの投資の波が何度も重なる。後工程の市場は名目で 116 億ドルまで広がる。
技術の転換が連続する。TSV、ハイブリッドボンディング、さらにその先の 3 次元積層。ディスコはそのたびに、装置と消耗品の両方で新しい採用を取る。シェアは 80% まで上がる。営業利益率は 38% を 10 年保つ。
消耗品も伸びる。装置の稼働台数が積み上がり、営業利益率は 60% まで上がる。東京精密や岡本工作機械製作所との差は開き、中国勢は最先端に届かない。無借金と配当中心の還元は変わらない。
- 精密加工装置(ダイシング・グラインディング等):数量 86.0(世界の後工程精密加工装置市場(億ドル、ダイシング・グラインディング・薄膜化等、今の値段で測った実質))× 価格 161(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 13,869 億円・営業利益 5,270 億円。市場116億ドル(名目)×シェア80%、営業利益率38%
- 消耗品(精密加工ツール):数量 142(稼働しているディスコ装置の台数(千台、推定))× 価格 739(装置 1 台あたりの年間の消耗品購入額(万円、推定))→ 売上 10,483 億円・営業利益 6,290 億円。営業利益率60%
倍率:事業の純利益 8,353 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 32.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 24.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 24.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 24.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,300 億円。全体の PER 24.43 倍、時価総額 205,359 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年の間にTSV・ハイブリッドボンディング・次世代HBMという複数の技術転換を連続して取り切る必要があり、実現すれば非常に強いが連続成功の確度は高くない。
やや楽観 22% AI実装の高度化が成長の主軸として定着 利益 6,375 億円 · PER 24.1 倍 · 株価時価総額 145,751 円15.81 兆円
AI 実装の高度化が、成長の主軸として根づく。後工程の市場は名目で 99 億ドル。ディスコのシェアは 76% に上がり、営業利益率 34% は過去の最高圏のまま 10 年近く続く。
TSV とハイブリッドボンディングの需要が柱になる。消耗品は装置の台数に支えられ、営業利益率は 58% まで伸びる。
競合は残る。それでも装置と消耗品を一体で握る戦略が、優位を守る。AI の投資が学習用の一波で終わらず、推論やエッジ向けにも波が重なる。成長の裾野が広がる 10 年だ。消耗品の利益率も、装置の台数と薄く硬い材料の増加で、じわじわ上向く。
- 精密加工装置(ダイシング・グラインディング等):数量 74.0(世界の後工程精密加工装置市場(億ドル、ダイシング・グラインディング・薄膜化等、今の値段で測った実質))× 価格 153(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 11,337 億円・営業利益 3,855 億円。市場99億ドル(名目)×シェア76%、営業利益率34%
- 消耗品(精密加工ツール):数量 116(稼働しているディスコ装置の台数(千台、推定))× 価格 739(装置 1 台あたりの年間の消耗品購入額(万円、推定))→ 売上 8,601 億円・営業利益 4,989 億円。営業利益率58%
倍率:事業の純利益 6,357 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 30.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 22.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 24.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 24.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,300 億円。全体の PER 24.11 倍、時価総額 154,562 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI関連の後工程需要が業界の主役として定着するという、業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 30% 中立:後工程市場は構造的に大きくなるが倍率は平常化 利益 4,781 億円 · PER 23.7 倍 · 株価時価総額 109,324 円11.86 兆円
中立は、市場は大きくなるが、倍率は平常に戻る 10 年だ。後工程の市場は名目で 87 億ドル。今の約 3.6 倍で、物価を除くと約 2.7 倍にあたる。
ただしシェアは 72% で、今からの改善は小さい。最先端の投資は続くが、TSV やハイブリッドボンディングの転換のたびに、東京精密などとシェアを奪い合う。得るものと失うものが打ち消し合う。
営業利益率は 30% まで落ち着く。消耗品は売上の 4 割前後を保ち、営業利益率 55% で業績を支える。循環は消えない。ただし AI 需要が谷を浅くする。筆者は、特別な超過成長が一巡し、普通に強い優良企業として評価される姿を中立に置いた。
- 精密加工装置(ダイシング・グラインディング等):数量 65.0(世界の後工程精密加工装置市場(億ドル、ダイシング・グラインディング・薄膜化等、今の値段で測った実質))× 価格 145(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 9,434 億円・営業利益 2,830 億円。市場87億ドル(名目)×シェア72%、営業利益率30%
- 消耗品(精密加工ツール):数量 94.6(稼働しているディスコ装置の台数(千台、推定))× 価格 739(装置 1 台あたりの年間の消耗品購入額(万円、推定))→ 売上 6,989 億円・営業利益 3,844 億円。営業利益率55%
倍率:事業の純利益 4,763 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 27.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 20.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)1,300 億円。全体の PER 23.69 倍、時価総額 114,131 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:東京エレクトロンのWFE市場見通し(10年後2,600億ドル、+122%)よりやや高い成長率を置き、AI先端パッケージングの上乗せと倍率の平常化を組み合わせた中心シナリオ。
やや悲観 22% シェアがじわり侵食される 利益 2,565 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 34,119 円3.70 兆円
中国の新興メーカーの国産化が、東京精密や岡本工作機械製作所が守る中位帯まで広がる。ディスコのシェアは 63% に下がる。後工程の市場も名目で 70 億ドルと、伸びが鈍る。
TSMC とサムスンの最先端投資は続くが、勢いは落ちる。営業利益率は 20% まで下がる。AI 投資も一段落し、過去 10 年ほどの成長は戻らない。
それでも崩れはしない。最先端のダイシングとグラインディングでは、優位を保つ。消耗品は稼働中の装置に支えられ、営業利益率 45% を守る。配当中心の還元は、規模を縮めながら続く。成長のわりに値段が付きにくい、地味な優良企業になる 10 年だ。
- 精密加工装置(ダイシング・グラインディング等):数量 52.0(世界の後工程精密加工装置市場(億ドル、ダイシング・グラインディング・薄膜化等、今の値段で測った実質))× 価格 127(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 6,604 億円・営業利益 1,321 億円。市場70億ドル(名目)×シェア63%、営業利益率20%
- 消耗品(精密加工ツール):数量 69.1(稼働しているディスコ装置の台数(千台、推定))× 価格 739(装置 1 台あたりの年間の消耗品購入額(万円、推定))→ 売上 5,107 億円・営業利益 2,298 億円。営業利益率45%
倍率:ROE 14.0%。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7% + 残る割合 2/3 ×(14.0 − 7.75)= 11.9%、長期の成長率 g 4.2% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 18.4 倍。半導体投資の深い谷と中国・日本の競合の追い上げで利益が細る筋書き。ROE は k を上回るが、先で薄れる稼ぎを多めに見て、上限の 7.0 割の 12.8 倍に置いた。 余った現金 975 億円(戻り方 1.0)を別に足した。
確率:中国などの新興メーカーの国産化が中位性能帯まで広がり、後工程市場の伸び自体も鈍化する想定。業界見通しのうち弱めのレンジに相当。
悲観 13% 構造的に優良さを失う 利益 928 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 11,426 円1.24 兆円
技術の転換で、独占が崩れる 10 年だ。東京精密などの競合と中国の新興メーカーが、最先端の工程にも食い込む。ディスコのシェアは 48% まで落ちる。
TSMC とサムスンは装置を複数社から買うようになる。SK ハイニックスとマイクロンの HBM 投資も、米中対立で見通せなくなる。後工程の市場は名目で 74 億ドルに伸びても、シェアの損失が直撃し、営業利益率は 8% まで沈む。
消耗品も価格競争に巻き込まれ、営業利益率は 30% に下がる。技術の優位は一部に残る。だが、ほぼ独占という評価は外れ、普通の精密加工装置の会社として値が付く。
- 精密加工装置(ダイシング・グラインディング等):数量 55.0(世界の後工程精密加工装置市場(億ドル、ダイシング・グラインディング・薄膜化等、今の値段で測った実質))× 価格 97(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 5,322 億円・営業利益 426 億円。市場74億ドル(名目)×シェア48%、営業利益率8%
- 消耗品(精密加工ツール):数量 50.9(稼働しているディスコ装置の台数(千台、推定))× 価格 739(装置 1 台あたりの年間の消耗品購入額(万円、推定))→ 売上 3,763 億円・営業利益 1,129 億円。営業利益率30%
倍率:ROE 6.7% が k 7% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER は 1÷k = 12.9 倍まで。技術の転換で独占が崩れ、消耗品も細る構造悲観。ROE が k を下回るので、稼ぐ力(純利益 ÷ k)を上限に、上限の 9.0 割の 12.78 倍に置いた。 余った現金 650 億円(戻り方 1.0)を別に足した。
確率:東京精密など競合や中国の新興装置メーカーが最先端工程にまで食い込み、かつ循環の谷が同時に来るという複合シナリオ。技術優位の喪失は一度始まると10年で後退しやすいため低頻度だが無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
精密加工装置(ダイシング・グラインディング等)
半導体ウェーハ・電子部品を切断(ダイシング)・研削(グラインディング)・研磨する装置本体。独自のKCSS(切る・削る・擦る)という加工思想に基づく精密機械。
| 数量世界の後工程精密加工装置市場(億ドル、ダイシング・グラインディング・薄膜化等、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 24.5 | 111 | 2,720 | 979 |
| 10 年後 中立 | 65.0 | 145 | 9,434 | 2,830 |
取り方:ダイシング装置で世界シェア 7〜8 割、グラインディング装置で 6〜7 割という開示から加重平均のシェアを 74% とみて、全社売上から消耗品を除いた装置売上を市場規模で逆算した(1 ドル 150 円)。数量は今の値段で測った市場規模(実質)で、物価の分は価格に入れた。10 年で実質 2.65 倍(名目では年 14%)と置くのは、AI 向けの積層・薄化で工程の数と枚数が増える実物の拡大を見るためで、東京エレクトロンの前工程の見方(名目 87 億ドル)と整合する。機械業界の標準(名目 8〜10%)より高いが、先端パッケージ固有の需要なので据え置く。名目の伸びを数量に置いて価格にも物価を掛けたものではない。今のシェアは 74%。
消耗品(精密加工ツール)
ダイヤモンドブレードや研削用の砥石(商標「キラ」等)など、装置に装着して使用し随時交換が必要な消耗品。装置と一体で販売・保守される継続収益。
| 数量稼働しているディスコ装置の台数(千台、推定) | 価格装置 1 台あたりの年間の消耗品購入額(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 550 | 1,650 | 924 |
| 10 年後 中立 | 94.6 | 739 | 6,989 | 3,844 |
取り方:ダイシングソーやグラインダの累計出荷と耐用年数から、世界で動くディスコ装置を約 3 万台と推定した。消耗品売上 1,650 億円 ÷ 3 万台で、1 台あたり年約 550 万円になる。数量は稼働台数で実物であり、名目の市場の伸びではない。装置の台数が増えるほど、また薄く硬い材料ほど 1 台の消耗が増える。価格は物価並みに上がる。人件費と原料のダイヤやニッケルも上がるので、利益率は保つ。
リスクと懸念
顧客が最先端の数社に偏る
売上の大半が TSMC、サムスン、SK ハイニックス、マイクロンに集まる。1 社が投資計画を変えるだけで、装置も消耗品も受注が大きく動く。偏りは独占の裏返しで、簡単には直せない。
半導体の谷は深い
ITバブル崩壊(2001 年)とリーマンショック(2008 年)では、営業利益率がほぼゼロまで落ちた。AI 投資という新しい柱ができても、受注が先読みと在庫調整で振れる性質は消えていない。
倍率が縮む
今の PBR は 11 倍超、PER は 49 倍だ。AI への期待がわずかに後退しただけで、業績が落ちる前に、倍率の縮みだけで株価が大きく下がりうる。高い倍率ほど縮む痛みは大きい。
中国の新興メーカーが追う
今は中位の性能帯にとどまる。それでも 10 年の間には最先端へ手が届くかもしれない。東京精密などとの価格競争が強まれば、利益率が削られる。
数値目標が見えにくい
中期経営計画がなく、長期ビジョンも定性的だ。業績を数字で検証しにくい。AI 投資の持続への期待が外れた時、株価の反応が大きくなりやすい。
工程の切り替えで競合に先を越される
TSV やハイブリッドボンディングは、今の装置では対応できない工程の変化を伴うことがある。新しい工程で競合が先に採用されれば、ディスコは個別の工程でシェアを落とす。
今後の分かれ目
- AI データセンター向けの投資が加速し、HBM や先端パッケージ向けの極薄加工の需要が会社の想定を上回ったら
- 楽観とやや楽観の確率を上げてよい。ただ、倍率がすでに高いので、株価が価値より先に走っていないかも確かめる。
- TSMC、サムスン、SK ハイニックス、マイクロンの誰かが投資計画を大きく見直したら
- やや悲観と悲観の確率を上げる。顧客集中の影響がどの工程に出たか、決算で確かめる。
- 中国の新興メーカーが中位の性能帯を越え、最先端の受注を取り始めたら
- シェアの前提を下げ、悲観側の確率を上げる。
- 消耗品の売上比率がさらに高まり、全社の利益率が安定して上がったら
- 循環への耐性が強まったと見て、悲観の利益率の底を引き上げる。
- 会社が具体的な数値目標を持つ中期計画を出したら
- 業績を検証しやすくなり、不透明さに伴う割引が和らぐ。
- 半導体投資が急に冷え、受注が前年を割ったら
- やや悲観や悲観の筋書きに近づいたと見る。倍率の縮みも合わせて想定する。
見ておくもの
- 四半期ごとの装置・消耗品別の受注高と営業利益率
- TSMC・サムスン・SKハイニックス・マイクロンの資本支出計画の進捗
- 中国・東京精密など後工程装置メーカーのシェア動向
- 消耗品事業の売上比率の推移
倍率と資本コストの決め方
装置は後工程の市場(実質)に価格の指数を掛け、消耗品は稼働台数に 1 台あたりの年間購入額を掛けて積んだ。市場の実質 2.65 倍は名目で年 14% にあたり、機械業界の標準より高い。理由は先端パッケージで工程の数と難度が増えることで、東京エレクトロンの前工程の見方(名目 87 億ドル)と整合する。数量は実物の増加で、名目の伸びを数量に置いて価格にも物価を掛けたものではない。消耗品の台数も実物である。倍率は強い堀の正当化 PER を上限に、中立はその 8 割。悲観は ROE が k を下回るので稼ぐ力で測った。今の株価に寄せて動かした所はない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 20.82→24.43 倍・やや楽観 PER 18.76→24.11 倍・中立 PER 16.7→23.69 倍・悲観 PER 11.54→12.78 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.25% = 7.75%。顧客の集中(最先端のファウンドリ・メモリ数社)は k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 7.00%。