結論
新コスモス電機は、ガスもれを知らせる警報器と検知器を作る会社だ。家庭用のLPガス・都市ガス警報器で国内首位に立ち、工場や半導体工場で使う検知器、作業員が持つ携帯型の検知器も手がける。単一の事業だが、2026年3月期の売上は家庭用が約6割を占める。
筆者の結論は「適正」だ。わずかに割安寄りとみる。事業は規制と実績に守られ、赤字の期がなく、純現金は162億円ある。ただし、直近の好業績の大半は、ニューヨーク市の設置義務という特需によるもので、そのまま続くとは見ない。
2026年3月期は売上501億円、営業利益74億円、営業利益率14.7%と大幅な増収増益だった。今期は売上510億円、営業利益60億円の減益を見込み、第1四半期は営業利益が半分に減った。部材と人件費の上昇、減価償却の増加、北米の一服が重なる。
10年先の中立は、売上610億円、営業利益79億円、純利益57億円とみる。北米は特需が落ち着き、新規参入で価格が上がりにくい。国内は交換需要で横ばい、工業用は緩やかに伸びる。
懸念は、中国勢の参入による価格の下落と、純現金が活かされず積み上がる資本政策だ。筆頭株主の岩谷産業が28%を持ち、少数株主の意向は通りにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、新コスモス電機は「規制に守られた、堅実な小さな会社」だ。家庭用警報器は、法令と使用期限の仕組みで、数量の底が見える。赤字の期がなく、純現金が厚いことも、安全域になる。
堀は国内に限られる。国内の首位と検定の実績は強いが、北米と工業用は新規参入の脅威が大きく、堀が深いとは言い切れない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、帳簿の純利益に近い。設備投資は増産が中心で、軽くはないが重くもない。2026年3月期のフリーキャッシュフローは38億円で、純利益の約7割にとどまる。
資本の使い方は、評価が割れる。配当性向は3割弱で、純現金が時価総額の約37%に積み上がっている。現金が事業の成長に使われるか、使われずに眠るかで、株主の取り分は大きく変わる。筆者は、確信度を中くらいに置く。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、ガスもれを検知する警報器と検知器を作り、ガス会社、販売会社、工場、半導体工場に売ることだ。決算は単一のセグメントで、製品別に開示している。
柱は三つある。最大は家庭用ガス警報器で、2026年3月期の売上は約296億円と、前期比36%増えた。国内ではLPガスと都市ガスの警報器で首位に立つ。法定の使用期限があり、交換の需要が続く。岩谷産業の「みはり」などの名前で、ガス会社を通じて売る。二つ目が工業用の定置式で、工場やプラント、半導体工場に据え付ける。三つ目が業務用の携帯型で、作業員が持つ検知器だ。売上は約71億円で、11.6%増えた。
地域では、2026年3月期に海外比率が51.8%に上がった。北米が159億円と78%増え、主因はニューヨーク市の電池式メタン警報器の設置義務だ。アジアは中国・台湾の半導体市場の低迷で6.2%減った。国内は6.5%増えた。
生産では、ガスセンサを年200万個から300万個へ増やし、メキシコの組立も300万個体制を目指す。2026年6月には岩谷産業と、米国の生産管理の合弁会社を作ると発表した。
優良さと弱いところ
優良さの核は、検定や認証を通った製品と、40年以上続く販売網だ。家庭用ガス警報器は、法令に基づく検定と使用期限があり、安全に関わるため、新規の参入者は実績を積むのに時間がかかる。国内の首位は、ガス会社と岩谷産業との長い取引に支えられている。
財務は強い。自己資本比率は72.7%で、現預金は202億円、純現金は162億円ある。赤字の期は過去にない。営業利益率は2022年3月期と2023年3月期に15%台、2026年3月期に14.7%と、同業の中でも高い。
弱みは、成長の質だ。2026年3月期の増収は、ニューヨーク市の義務化という特需によるところが大きい。期限は2027年1月以降に延期され、今期の予想は延期後の売上を織り込んでいない。少なくとも3社が新規参入し、うち2社は中国製とみられる。
筆者は、堀は国内の規制と実績にあり、北米と工業用は、堀がまだ浅いと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ガス警報器の需要は、法令と事故の歴史から生まれる。国内では、ガス会社と販売会社が、使用期限に合わせて住宅の警報器を交換する。世帯数が減ると数量は細るが、交換の周期が数量を下支えする。
北米では、住宅の天然ガス警報器の義務化が都市ごとに進む。ニューヨーク市は電池式のメタン警報器を義務づけ、期限は2025年5月から2027年1月以降に延期された。ほかの都市や州に広がるかが、10年の分かれ目だ。
工業用は、半導体工場、化学プラント、冷媒を使う設備、水素の取り扱いが増える。半導体の投資は循環が強く、2026年3月期は中国・台湾の低迷でアジアが減った。第4四半期は、生成AI向けの半導体需要で回復傾向に入った。
競争では、国内は少数の専業が分け合う寡占で、価格の競争は穏やかだ。北米と工業用では、中国製の安価な警報器と検知器の参入が脅威で、価格が下がりやすい。
費用の面では、部材価格、組立の外注費と人件費、物流とエネルギー、減価償却費が上がっている。今期の減益の理由も、この費用の上昇だ。
需要の側では、ガス会社の再編や、住宅の電化が、国内の家庭用の世帯数を長い目で減らす。使用期限に伴う交換が下支えするが、数量の大きな増加は見込みにくい。
資本政策と M&A
還元は増えてきた。2026年3月期の配当は前期より約6割増やし、配当性向は29%になった。中期計画の期間中に、30%を目指す。自己株式は発行済の約3%を持つが、自社株買いを続ける方針は確認できない。
純現金は162億円あり、時価総額の約37%に当たる。配当性向が3割弱なので、現金は積み上がりやすい。中期計画のROE 8.5%とPBR 1倍以上の目標は、現金の使い道に左右される。
設備投資は、ガスセンサの増産とメキシコの組立の拡大に向かう。岩谷産業と米国の生産管理の合弁を作るため、資金は、成長の事業に使う意思が見える。大型のM&Aの実績は確認できない。
筆頭株主は岩谷産業で、28.4%を持つ。仕入と販売で取引が長く、安定株主だ。次が有限会社アール・ケイ(4.7%)、取引先持株会(3.9%)だ。当サイトの参考値では、10年以内のTOBの確率は3割弱ある。岩谷産業が持分を増やす筋道は、考えやすい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
北米の義務化は、ニューヨーク市の次がある。電池式のメタン警報器は、住宅のガスもれによる爆発を防ぐ目的で、ほかの都市や州に広がりうる。新規参入が3社出ても、国内での検定実績と、岩谷産業との米国の合弁による現地の生産管理と販売網は、簡単に追いつけない。
工業用の追い風もある。生成AI向けの半導体投資が戻り、第4四半期の半導体向けは回復した。水素の取り扱いが増える欧州と、冷媒の漏えい検知の需要も、新しい市場になる。ガスセンサの増産と、MEMSセンサの拡充は、その準備だ。
国内の家庭用は、使用期限に伴う交換で底堅い。営業利益率が14.7%に達し、規制と実績に守られた事業の利益率の高さを、証明した。純現金162億円は、成長の投資にも還元にも使える。中期計画の売上600億円、営業利益率12.5%は、十分に届く水準だ。
岩谷産業との関係も、強みになる。米国の生産管理の合弁を共同で作ることで、現地の関税や為替の影響を抑えられる。筆頭株主が販売網を持つため、販路の拡大に費用がかからない。
慎重な見方
好業績の大半は特需だ。2026年3月期の売上は18.8%増えたが、増えた分の多くは北米の78%増によるもので、ニューヨーク市の義務化の期限が延期されると、売上の伸びが止まる。今期の予想は営業利益が18.4%減り、第1四半期は営業利益が半分に減った。
競争は厳しくなる。北米の警報器は、少なくとも3社が新規参入し、うち2社は中国製とみられる。中国勢の価格攻勢が始まれば、価格は上がらず、10年で1.2倍の予想も下がりうる。工業用も、中国・台湾で半導体の投資が落ちると、売上が減る。
費用が上がっている。部材価格、外注の組立費、人件費、減価償却費、物流費が上がり、利益率を削る。ガスセンサの増産とメキシコの組立の拡大は、需要が伸びなければ、固定費の負担になる。
資本政策にも不安がある。純現金は時価総額の約37%あるが、配当性向は3割弱にとどまり、現金は積み上がる。岩谷産業が28%を持ち、少数株主の意向は通りにくい。国内は世帯数の減少と電化で、長い目では細る。
どちらに重みを置いたか
国内の規制と実績に守られた収益力、赤字のない実績、純現金の厚みには、強気の言い分に分がある。一方で、直近の好業績が特需によること、新規参入による価格の下落、積み上がる現金は、慎重な言い分のとおりだ。
そこで、中立に最も厚く置き、楽観は合わせて28%、悲観は合わせて36%とした。悲観でも赤字にはしない。結果として、本質価値は今の時価総額とほぼ同じ水準になり、割安でも割高でもない、適正の範囲に入った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 8,198 円998 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,289 円157 億円)。 今の値に割り戻すと 5,087 円619 億円、今との差 +41.9%、 期待の年率 +10.2%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 15,063 円1,834 億円 | 1,988 円242 億円 | +375.6% | +16.9% | 1,364 円166 億円 |
| やや楽観 | 20% | 11,485 円1,398 億円 | 1,579 円192 億円 | +264.4% | +13.8% | 2,613 円318 億円 |
| 中立 | 36% | 9,351 円1,138 億円 | 1,267 円154 億円 | +196.2% | +11.5% | 3,823 円465 億円 |
| やや悲観 | 24% | 4,674 円569 億円 | 1,026 円125 億円 | +59.0% | +4.7% | 1,368 円167 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,736 円211 億円 | 934 円114 億円 | −25.5% | −2.9% | 320 円39 億円 |
| 加重平均 | 100% | 8,198 円998 億円 | 1,289 円157 億円 | +164.7% | +10.2% | 9,488 円1,155 億円 |
今の株価時価総額 3,585 円436 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 北米の義務化が他の都市・州に広がり、半導体の検知も伸びる 利益 92 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 15,063 円1,834 億円
ニューヨーク市に続いて、ほかの都市・州が電池式メタン警報器の設置を義務づけ、北米向けの出荷は年 600 万台に増える。岩谷産業との米国の合弁で、現地での生産管理と販売網が整い、新規参入の中国勢にも価格で押し込まれない。
半導体工場の新設が続き、アジアと欧州の工業用検知器が年 7 万台に伸びる。水素の取り扱いが増える欧州でも、検知器の導入が進む。国内の家庭用は交換需要が底堅く、工業用は更新と新設の両方で売上が伸びる。
営業利益は 130 億円前後、利益率は 16% に達する。会社の中期計画の水準を、長く保つ姿だ。配当性向は 35% に上がり、自社株買いも加わる。
- 国内の家庭用ガス警報器:数量 260(年間の出荷台数(万台))× 価格 0.68(1 万台あたり売上(億円/万台・名目)。メーカー出荷額で、物価と機能の高度化を含む)→ 売上 177 億円・営業利益 21 億円。国内の交換需要が底堅い(260 万台)
- 国内の工業用・業務用ガス検知器:数量 6.0(年間の出荷台数(万台))× 価格 27(1 万台あたり売上(億円/万台・名目))→ 売上 162 億円・営業利益 23 億円。更新と新設で伸びる
- 北米の家庭用メタン警報器ほか:数量 600(年間の出荷台数(万台))× 価格 0.43(1 万台あたり売上(億円/万台・名目、1 ドル 150 円相当))→ 売上 256 億円・営業利益 56 億円。他の都市・州に義務化が広がる(600 万台)
- アジア・欧州ほかの工業用検知器:数量 7.0(年間の出荷台数(万台))× 価格 31(1 万台あたり売上(億円/万台・名目))→ 売上 216 億円・営業利益 28 億円。半導体・水素向けが伸びる
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 18.36 倍、時価総額 1,744 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:北米の設置義務が複数の都市・州に広がること、価格競争を避けられること、半導体と水素の検知が同時に伸びることが重なる必要がある。条件が多いので 8% と低めに置いた。
やや楽観 20% 北米が高止まりし、国内と工業用が着実に伸びる 利益 71 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 11,485 円1,398 億円
ニューヨーク市の設置義務が 2027 年以降に実施され、北米向けの出荷は年 450 万台で高止まりする。新規参入で価格は物価ほど上がらないが、国内での検定実績と品質で、一定のシェアを保つ。
国内の家庭用は、使用期限に伴う交換が続き、年 250 万台を保つ。工業用は、半導体工場の更新と新設で緩やかに伸び、アジアと欧州は年 6.2 万台になる。
営業利益は 100 億円前後、利益率は 14% だ。中期計画の 12.5% を上回る水準が続く。配当性向は 33% で、増配が続く。
純現金は積み上がり、一部は米国の合弁とセンサの増産に使われる。ただし、大型の買収には使われず、現金の戻り方は変わらない。
- 国内の家庭用ガス警報器:数量 250(年間の出荷台数(万台))× 価格 0.68(1 万台あたり売上(億円/万台・名目)。メーカー出荷額で、物価と機能の高度化を含む)→ 売上 170 億円・営業利益 20 億円。交換需要が続く(250 万台)
- 国内の工業用・業務用ガス検知器:数量 5.8(年間の出荷台数(万台))× 価格 27(1 万台あたり売上(億円/万台・名目))→ 売上 156 億円・営業利益 20 億円。更新で伸びる
- 北米の家庭用メタン警報器ほか:数量 450(年間の出荷台数(万台))× 価格 0.40(1 万台あたり売上(億円/万台・名目、1 ドル 150 円相当))→ 売上 179 億円・営業利益 36 億円。義務化で高止まり(450 万台)
- アジア・欧州ほかの工業用検知器:数量 6.2(年間の出荷台数(万台))× 価格 30(1 万台あたり売上(億円/万台・名目))→ 売上 184 億円・営業利益 22 億円。半導体向けが緩やかに伸びる
倍率:事業の ROE は 8% 台で、資本コスト 7% を上回る。正当化 PER は約 15 倍(g 4%・残る割合 0.5)で、その約 95% を置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 17.87 倍・時価総額 1,285 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:北米の延期後の義務化が実施され、新規参入の影響が限られる姿。国内の交換需要と工業用の伸びが加わる。蓋然性のある強気として 20% を置いた。
中立 36% 北米の特需は落ち着き、国内の交換と工業用で伸びる 利益 57 億円 · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 9,351 円1,138 億円
北米の電池式メタン警報器は、ニューヨーク市の義務化で急増した後、年 360 万台に落ち着く。新規参入が少なくとも 3 社あり、価格の上昇は物価に追いつかず、10 年で 1.2 倍にとどまる。
国内の家庭用は、ガスの使用世帯数が緩やかに減るが、使用期限に伴う交換が下支えし、年 240 万台と横ばいに近い。工業用は半導体工場の更新と新設で、アジアと欧州が年 5.5 万台に伸びる。
営業利益は 80 億円前後、利益率は 13% だ。会社が掲げる 12.5% をやや上回る水準にとどまる。配当性向は 30% の方針が守られる。
- 国内の家庭用ガス警報器:数量 240(年間の出荷台数(万台))× 価格 0.68(1 万台あたり売上(億円/万台・名目)。メーカー出荷額で、物価と機能の高度化を含む)→ 売上 163 億円・営業利益 18 億円。ガス世帯の減少を交換需要が下支え(240 万台)
- 国内の工業用・業務用ガス検知器:数量 5.6(年間の出荷台数(万台))× 価格 27(1 万台あたり売上(億円/万台・名目))→ 売上 151 億円・営業利益 19 億円。緩やかに伸びる
- 北米の家庭用メタン警報器ほか:数量 360(年間の出荷台数(万台))× 価格 0.38(1 万台あたり売上(億円/万台・名目、1 ドル 150 円相当))→ 売上 138 億円・営業利益 25 億円。特需の一巡後に落ち着く(360 万台)
- アジア・欧州ほかの工業用検知器:数量 5.5(年間の出荷台数(万台))× 価格 29(1 万台あたり売上(億円/万台・名目))→ 売上 157 億円・営業利益 17 億円。半導体向けが緩やかに伸びる
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 16.68 倍、時価総額 1,001 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:北米の特需は一巡して落ち着き、新規参入で価格も下押しされる。国内は交換需要で横ばい、工業用は緩やかに伸びる。いちばん確からしい筋書きとして 36% を置いた。
やや悲観 24% 北米の特需が剥がれ、中国勢の価格攻勢を受ける 利益 37 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 4,674 円569 億円
北米の義務化は再延期され、出荷は年 250 万台にとどまる。中国勢の参入で価格は上がらず、10 年で横ばいに近い。ニューヨーク市以外への広がりも限られる。
国内の家庭用は、ガスの使用世帯数の減少と電化の進行で、年 225 万台に細る。工業用は、半導体投資が一服し、アジアと欧州で年 4.8 万台にとどまる。
営業利益は 52 億円前後、利益率は 10% に下がる。原材料と人件費、減価償却費の上昇を価格に転嫁しきれない。配当の方針は守る。
純現金は取り崩さないが、増産の投資が遅れて、固定費の負担が重くなる。筆頭株主の岩谷産業の持分は変わらず、現金の使い道も示されない。
- 国内の家庭用ガス警報器:数量 225(年間の出荷台数(万台))× 価格 0.66(1 万台あたり売上(億円/万台・名目)。メーカー出荷額で、物価と機能の高度化を含む)→ 売上 149 億円・営業利益 15 億円。世帯数の減少と電化(225 万台)
- 国内の工業用・業務用ガス検知器:数量 5.3(年間の出荷台数(万台))× 価格 26(1 万台あたり売上(億円/万台・名目))→ 売上 137 億円・営業利益 15 億円。更新が主
- 北米の家庭用メタン警報器ほか:数量 250(年間の出荷台数(万台))× 価格 0.32(1 万台あたり売上(億円/万台・名目、1 ドル 150 円相当))→ 売上 80 億円・営業利益 10 億円。義務化の延期、中国勢の価格攻勢(250 万台)
- アジア・欧州ほかの工業用検知器:数量 4.8(年間の出荷台数(万台))× 価格 26(1 万台あたり売上(億円/万台・名目))→ 売上 127 億円・営業利益 11 億円。半導体投資が一服
倍率:事業の ROE は 5% 台で、資本コスト 7% に届かない。この場合の PER の上限は 1÷k=13.3 倍で、その約 8 割を置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 10.5 倍・時価総額 437 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:北米の義務化の延期が長引き、中国勢が価格で攻め、アジアの半導体向けも伸びない姿。国内も世帯数の減少で細る。24% を置いた。
悲観 12% 構造的に負ける:中国勢の価格破壊で、警報器が値下がりする 利益 19 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,736 円211 億円
中国勢の安価な警報器が北米とアジアで一気に広がり、価格は物価に追いつかず、10 年で 1 割ほどしか上がらない。北米の出荷は年 120 万台に縮み、利益はほとんど出なくなる。
国内の家庭用は、電化とガスの使用世帯数の減少で年 200 万台まで細る。工業用も価格競争に巻き込まれ、アジアと欧州は年 4 万台にとどまる。
営業利益は 26 億円、利益率は 7% 台だ。ただし、赤字にはならない。純現金が厚く、配当は維持を優先する。それでも株主には、長い低迷になる。
岩谷産業との米国の合弁は、中国勢の価格破壊の前に、期待した効果を出せない。増産したガスセンサは余り、減価償却の負担が利益を押し下げる。
- 国内の家庭用ガス警報器:数量 200(年間の出荷台数(万台))× 価格 0.62(1 万台あたり売上(億円/万台・名目)。メーカー出荷額で、物価と機能の高度化を含む)→ 売上 124 億円・営業利益 10 億円。電化と世帯数の減少(200 万台)
- 国内の工業用・業務用ガス検知器:数量 4.8(年間の出荷台数(万台))× 価格 24(1 万台あたり売上(億円/万台・名目))→ 売上 117 億円・営業利益 11 億円。価格競争に巻き込まれる
- 北米の家庭用メタン警報器ほか:数量 120(年間の出荷台数(万台))× 価格 0.27(1 万台あたり売上(億円/万台・名目、1 ドル 150 円相当))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。中国勢の価格破壊(120 万台)
- アジア・欧州ほかの工業用検知器:数量 4.0(年間の出荷台数(万台))× 価格 22(1 万台あたり売上(億円/万台・名目))→ 売上 88 億円・営業利益 4 億円。価格競争
倍率:事業の ROE は 3% 台で、資本コスト 7% を大きく下回る。上限は 1÷k=13.3 倍で、その約 7 割を稼ぐ力として置いた。市場の値付けは根拠にしない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.5 倍・時価総額 211 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:中国製の安価な警報器が北米とアジアで価格を壊し、国内でも電化と世帯数の減少で需要が細る構造的な負けの姿。赤字になった期がない会社なので、12% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の家庭用ガス警報器
LPガス・都市ガス用の家庭用ガス警報器。ガス会社と岩谷産業を通じて販売し、国内首位。法定の使用期限に伴う交換が需要の柱。
| 数量年間の出荷台数(万台) | 価格1 万台あたり売上(億円/万台・名目)。メーカー出荷額で、物価と機能の高度化を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 0.51 | 127 | 15 |
| 10 年後 中立 | 240 | 0.68 | 163 | 18 |
取り方:国内の家庭用ガス警報器の売上を約127億円とした。家庭用の売上296億円から、北米159億円と、アジア・欧州の家庭用約10億円を引いた残りによる。台数は、メーカー出荷額を1台あたり約0.51億円/万台(推定)で割って約250万台とした。セグメントの開示はなく、営業利益15.2億円(利益率12%)は全社の73.5億円に合わせた推定。
国内の工業用・業務用ガス検知器
工場・プラント・ビルの定置式ガス検知警報器と、作業員が持つ携帯型ガス検知器。
| 数量年間の出荷台数(万台) | 価格1 万台あたり売上(億円/万台・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.7 | 20 | 115 | 15 |
| 10 年後 中立 | 5.6 | 27 | 151 | 19 |
取り方:国内の工業用・業務用の売上を約115億円とした。国内売上約241億円(海外比率51.8%から逆算)から、国内の家庭用127億円を引いた残りによる。台数は、1台約20万円(推定)で割って約5.7万台とした。営業利益14.9億円(利益率13%)は推定。
北米の家庭用メタン警報器ほか
ニューヨーク市の設置義務で需要が急増した電池式メタン警報器など、北米向けの家庭用警報器。岩谷産業と米国で生産管理の合弁を作る。
| 数量年間の出荷台数(万台) | 価格1 万台あたり売上(億円/万台・名目、1 ドル 150 円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 500 | 0.32 | 159 | 34 |
| 10 年後 中立 | 360 | 0.38 | 138 | 25 |
取り方:北米の売上は、決算説明で約159億円(前期比78%増)。台数は、1台あたり約0.32億円/万台(1ドル150円で約21ドル相当、推定)で割って約500万台とした。営業利益33.5億円(利益率21%)は、特需で高かったと見た推定で、全社の73.5億円に合わせた。
アジア・欧州ほかの工業用検知器
中国・台湾・韓国の半導体工場向けを中心とした工業用ガス検知警報器と、欧州の水素・冷媒向けの立ち上げ。
| 数量年間の出荷台数(万台) | 価格1 万台あたり売上(億円/万台・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.6 | 22 | 100 | 10 |
| 10 年後 中立 | 5.5 | 29 | 157 | 17 |
取り方:アジア・欧州ほかの売上は、海外売上約259億円から北米159億円を引いた約100億円による。台数は、1台約22万円(推定)で割って約4.5万台とした。営業利益9.9億円(利益率9.9%)は、全社の73.5億円から他を引いた残りで、アジアの半導体向けの不振を織り込んだ。
リスクと懸念
北米の特需の剥がれと、義務化の延期
2026年3月期の増収の大半は、ニューヨーク市の義務化によるものだ。期限は2027年1月以降に延期され、今期の予想は延期後の売上を織り込んでいない。ほかの都市・州へ広がらなければ、北米の売上は縮む。
中国勢の参入と、価格の下落
北米の警報器に少なくとも3社が新規参入し、うち2社は中国製とみられる。価格の下落は、北米だけでなく、アジアの工業用にも広がりうる。営業利益率が14.7%から下がる恐れがある。
費用の上昇と、増産の固定費
部材価格、外注の組立費、人件費、物流費、減価償却費が上がり、今期は営業利益が18.4%減る見込みだ。ガスセンサの増産とメキシコの組立は、需要が伸びなければ重い固定費になる。
半導体投資の波
工業用の検知器は、半導体工場の投資に連動する。2026年3月期は、中国・台湾の低迷でアジアが6.2%減った。生成AI向けは戻ったが、投資の波は続く。
資本の使い方と、少数株主の立場
純現金162億円が積み上がり、時価総額の約37%に達する。配当性向は3割弱で、使い道が示されないと、ROEは下がる。岩谷産業が28%を持ち、非公開化や持分の増加の筋道もある。
国内の世帯数の減少と電化
国内の家庭用は、ガスの使用世帯数の減少と電化で、長い目では細る。使用期限に伴う交換が下支えするが、数量の増加は見込みにくい。
今後の分かれ目
- 北米の義務化が、ニューヨーク市以外の都市・州に広がる
- 北米の数量が構造的に増える証拠になる。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 北米の売上が、延期後の義務化を待たずに急に縮む
- 特需の剥がれが早まった証拠になる。やや悲観に重みを移す。
- 中国勢の警報器が北米で価格を下げ、営業利益率が10%を割る
- 価格の下落が構造化した証拠になる。悲観の確率を上げ、中立を見直す。
- 半導体向けの検知器が、アジアで前年比2桁の増収に戻る
- 工業用の回復を意味する。アジアの数量と利益率を上方に見直す。
- 自社株買いや配当性向の引き上げ、現金の大きな使い道が発表される
- 純現金の戻り方が上がる。余剰現金の戻り方を見直す。
- 岩谷産業が持分を増やす、または非公開化(TOB)に動く
- 少数株主への価格が焦点になる。価格の水準を本質価値と比べて判断する。
見ておくもの
- 北米の売上と、ニューヨーク市以外の義務化の動き
- 新規参入の中国勢の価格と、営業利益率
- 国内の家庭用の出荷台数と、交換需要
- アジアの半導体向け検知器の売上
- 原材料・人件費・減価償却費の増加と、営業利益の推移
- 純現金の推移と、配当性向・自社株買いの方針
- 岩谷産業の持分の変化と、米国の合弁の進み方
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPERを見ず、各筋書きのROEと資本コスト7%(基本のまま、循環+0.25%と寿命-0.25%が相殺)から正当化PERを計算して置いた。中立はROEが8%前後で資本コストをわずかに上回り、正当化PERは約13.5倍。その約93%の12.5倍を置いた。純現金162億円のうち、運転資金と増産・合弁の投資に要る分を除いた100億円を余った現金として分け、戻り方0.5(親会社の岩谷産業が28%を持ち、配当性向が3割弱で、戻っている実績が乏しい)を掛けて足した。10年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17→18.36 倍・やや楽観 PER 14.5→17.87 倍・中立 PER 12.5→16.68 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0(循環 +0.25・寿命 -0.25)を足して k 7%。純現金で借金の上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.00%。