結論
ミズノは1906年創業の総合スポーツ用品メーカーである。野球・ゴルフ・ランニング・サッカーを軸に、2026年3月期は売上2,590億円、営業利益226億円と過去最高を4期続けて更新した。筆者の結論は、10年先で見ても値段はやや割高、というものだ。
稼ぐ力が本物であることは疑わない。利益率は10年で3%弱から9%近くまで上がった。ゴルフの鍛造アイアンと欧州・米州の拡大が効き、海外比率は4割に達している。野球という国内の定番を持ちながら、成長は海外のゴルフとサッカー、ランニングが引っ張る形になった。
ただ、この会社は世界の大手に比べれば小さい。ナイキやアディダスと同じ土俵で価格を決めることはできない。利益率の改善にも限りがある。10年の中立は、売上がおよそ1.8倍、営業利益率は9%台半ばで落ち着く姿と見る。
財務は堅い。自己資本比率は約69%で、借金より現金が多い。筆頭株主の公益財団法人が約17%を持ち、経営は安定している。一方で、還元はまだ控えめで、資本を使い切る会社ではない。安全域は薄いが、事業の質は悪くない。値段が下がった時に目を向ける会社だと筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ミズノは「悪くない会社を、悪くない値段で持つ」ことができるかが論点になる。事業は100年を超える歴史を持ち、野球やゴルフの専門性という手堅い強みがある。借金は軽く、潰れる心配はまずない。ここは安心材料である。
一方、オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、見かけの純利益より小さい。ブランドを保つ広告・研究・店舗への投資が毎年かかり、成長を続ける会社ほど、利益の多くを再投資に回す必要がある。この投資から資本コストを大きく超える稼ぎが続くとは、筆者は見ていない。世界のスポーツ用品市場は競争が厳しいからだ。
経営の資本配分は、堅実だが保守的である。無理な買収をしない点は評価できるものの、利益をため込んで資本を余らせてきた歴史は、株主の目では物足りない。直近の自社株買いは前向きな変化だが、まだ試運転の段階だ。
結論として、事業の質は中の上、財務は上、資本配分は中、と見る。10年の中立の筋書きで、価値は今の値段をやや下回る。安全域は薄く、割安になった時に買い増したい会社である。
何で稼ぐ会社か
ミズノの事業は、スポーツ用品の企画・製造・販売である。強みは種目ごとの専門性だ。国内では野球で長く首位級の地位を持ち、グラブ・バット・シューズまでそろえる。学校や社会人チームとの結びつきが深く、買い替え需要が安定している。
2026年3月期のカテゴリー別の売上は、野球415億円、ゴルフ364億円、ランニング249億円、フットボール224億円、ワークビジネス175億円、スポーツスタイルシューズ76億円。これらで全体の6割弱を占め、残りはウェア、テニス、水泳、ウィンタースポーツなどである。
伸びているのはゴルフとランニング、フットボールだ。ゴルフは鍛造アイアンとクラブの合わせ込み(カスタムフィッティング)が米州で好調で、前期比12.7%増だった。ランニングは14.2%増、街履きのスポーツスタイルシューズは約1.6倍と、小さな土台から急速に伸びた。ワークビジネス、つまり作業靴や職場向け用品も2割以上伸びている。
地域では、日本が約6割、米州・アジア・欧州がそれぞれ1割強だ。海外比率は40.1%で、会社は2029年3月期までに46%へ高める計画を掲げる。同じ時期の売上は3,300億円、営業利益は310億円が目標である。カテゴリー別の利益は開示されないため、筆者は利益率を推定で置いている。
優良さと弱いところ
ミズノの堀、つまり他社がまねしにくい強みは、種目ごとの専門性と日本品質への信頼にある。野球の用具、鍛造アイアン、日本人の足型に合うサッカースパイクなど、道具を使う人の細かな声を製品に返す力は、安売りの競争とは別の土俵で効く。値上げを通せる余地もそこから生まれる。
一方で、事業の幅が広く、どれも世界の首位ではない。ゴルフはタイトリスト、キャロウェイ、テーラーメイドが先にいる。サッカーはナイキ、アディダスが市場の大半を持つ。ランニングではアシックスや、オン、ホカといった新しい専門ブランドが伸びる。ミズノのシェアは各分野で1〜3%程度(筆者の推定)にとどまり、規模の力で価格を決めることはできない。
資本の効率は改善中だ。自己資本利益率(ROE)は10年前の3%台から、直近は10%台に上がった。ただ、過去10年の中央値は7%弱で、今の水準が長く続くかは見極めが要る。自己資本比率は約69%と厚く、資本をまだ十分に使い切っていない。
筆者がいちばん気にしているのは、利益率の持続性である。コスト高を価格に移せているのは円安と好況が追い風だからで、需要が冷えた時に同じように通るかは確かでない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界のスポーツ用品は、健康志向と新興国の中間層の拡大で、中長期の需要は伸びる分野である。特にランニング、ゴルフ、サッカーは世界の人口が参加する競技で、実質で年2〜3%の成長が見込める。10年で3割前後の市場拡大は、無理のない置き方だ。
一方、日本国内の野球は事情が違う。少子化で少年野球の人口は減り、国内の用具市場は横ばいからやや縮小に向かう。ミズノはここで首位級だが、国内の頭打ちを海外のゴルフ、サッカー、ランニングで補う必要がある。
競争は厳しい。ゴルフでは用具メーカーの大手が研究開発費を大きくかけ、ランニングではナイキ・アディダス・アシックスに加え、オン、ホカが若い層を取り込んだ。街履きのスニーカーは流行の移ろいが早い。さらに中国のアンタやリーニンのような地場の大手が、アジアで価格と品ぞろえで迫っている。
景気への感度は中くらいである。ゴルフや高価格の靴は、景気後退で買い控えが起きる。一方、ワークビジネスや学校向けの需要は底堅い。為替は円安が追い風だが、前提は1ドル150円で固定して考えている。米国の関税は、輸入品の採算を押し下げる要因として残る。
資本政策と M&A
ミズノは長く、利益をためる経営をしてきた。配当は控えめで、自社株買いは2018年3月期の小規模なもの以外、ほとんどやっていなかった。2026年3月期に初めて30億円規模の自社株買いを実施し、総還元性向は4割弱まで上がった。還元は、いま強める途中にある。
大株主は、公益財団法人ミズノスポーツ振興財団(約17%)が筆頭で、信託銀行や海外の機関投資家が続く。財団は安定株主であり、短期の買収を受けにくい。一方、この構造は資本効率を高める圧力が弱いことも意味する。
買収・提携については、大きな動きは見当たらない。成長は自前のブランドで海外を伸ばす方針で、M&Aに頼らない。筆者はこの姿勢を悪くないと見る。無理な買収で価値を壊す心配が小さいからだ。TOBについては、財団の持分と事業の独立性の高さから、近い将来の可能性は低いと考える。
資本の使い方で課題が残るのは、現金と自己資本の厚さである。純現金は約230億円と、時価総額から見れば小さいが、自己資本比率は約69%と厚く、投資機会が乏しければ、還元を一段厚くする余地がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ミズノの利益率はまだ上がる。ゴルフは鍛造アイアンの専門性で米州の客を増やし、カスタムフィッティングで価格を維持できている。ランニングは前期14.2%増、街履きのスポーツスタイルシューズは約1.6倍と、小さな土台からの伸びが続く。海外比率を4割から46%へ高める計画は、数字で実績が出ている。
コスト面も好転している。粗利率は2026年3月期に0.9ポイント上がり、41.9%になった。価格を上げても売れる商品が増えた証拠だ。ワークビジネスも2割以上伸びており、景気に左右されにくい柱が育ち始めている。
資本の面でも伸びしろがある。自己資本比率は約69%と厚く、純現金もある。還元を厚くすれば、ROEはさらに上がる。初めての本格的な自社株買いは、経営の姿勢が変わった合図だ。野球で守りを固めながら、海外のゴルフ・サッカー・ランニングで稼ぐ構図が回れば、10年後には売上5,000億円台、営業利益500億円超も十分に見える。
慎重な見方
今の利益率は、円安と世界的なスポーツ需要の追い風に支えられた面が強い。ミズノのシェアは各分野で数%にとどまり、価格を決める力は弱い。景気が冷え、円高に振れれば、粗利率はたちまち縮む。
ゴルフはタイトリスト、キャロウェイ、テーラーメイドが厚い研究費で攻め、ランニングはオンやホカが若い層を奪っている。サッカーはナイキ・アディダスの寡占が固い。ミズノが取れるのは、ニッチの固定客にとどまる。街履きの人気も流行で、数年で冷めることがある。
国内の野球は、少子化で用具市場が縮む。ここは会社の屋台骨だった事業で、頭打ちを海外が補えるかが問われる。中国の地場大手がアジアで価格を下げれば、海外成長の前提も揺らぐ。
資本の面でも、物足りない。自己資本比率は約69%と厚いが、使い道は乏しく、ROEは10%前後で足踏みしてきた。財団が約17%を持つ構造は、資本効率を高める圧力を弱める。10年後に売上が今のまま横ばいで、利益率だけ元に戻る筋書きは、決して珍しくない。
どちらに重みを置いたか
事業の勢いは強気の見方が優るが、10年の価値を決めるのは「利益率がどこまで続くか」である。ミズノは世界の大手でなく、価格を決める力は限られる。このため確率は、中立を最も厚く、楽観側よりやや悲観側に寄せた。財務が堅く、潰れる筋書きは薄いので、悲観は1割にとどめた。強気の見方が正しいのは、ゴルフと海外の追い風が10年続いた場合だけで、その筋書きにはやや軽く置いた。慎重な見方の中心である利益率の反落は、円高や景気後退で現実になりうるので、やや悲観の確率を2割台に厚くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,330 円4,816 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,409 円1,072 億円)。 今の値に割り戻すと 4,053 円3,084 億円、今との差 −7.8%、 期待の年率 +5.8%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 12,146 円9,241 億円 | 1,949 円1,483 億円 | +220.7% | +12.4% | 1,409 円1,072 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,175 円6,981 億円 | 1,663 円1,265 億円 | +146.6% | +9.4% | 2,384 円1,814 億円 |
| 中立 | 34% | 7,268 円5,530 億円 | 1,469 円1,118 億円 | +98.8% | +7.1% | 2,971 円2,260 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,447 円1,861 億円 | 1,115 円848 億円 | −19.0% | −2.1% | 819 円623 億円 |
| 悲観 | 11% | 570 円434 億円 | 842 円641 億円 | −67.9% | −10.7% | 155 円118 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,330 円4,816 億円 | 1,409 円1,072 億円 | +76.1% | +5.8% | 7,739 円5,888 億円 |
今の株価時価総額 4,395 円3,344 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 海外のゴルフとランニングが想定以上に伸びる 利益 510 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 12,146 円9,241 億円
ゴルフの鍛造アイアンが米州と欧州で定着し、クラブの合わせ込みの売り方が収益の柱になる。ランニングとスポーツスタイルシューズは、機能と街履きの両方で世界に広がる。フットボールもアジアと欧州で固定客を増やす。
海外比率は5割を超え、価格を上げても売れるブランドの力が利益率を押し上げる。国内の野球は縮小を、海外の野球と学校向けの安定で補う。
財務の厚みを生かし、還元も強める。10年後、ミズノは世界のスポーツ用品の中堅として、専門性と収益性を両立した会社になっている。営業利益率は11%台に乗る。
10年のあいだ、世界の大手が打つ手を外し、ミズノの専門性が評価され続ける前提である。この筋書きでは自己資本利益率(ROE)も14%台に上がる。
- ゴルフ:数量 295(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 35(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 1,032 億円・営業利益 196 億円。市場 1.50 倍・シェア 1.35 倍・営業利益率 19.0%
- 野球・ソフトボール:数量 639(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 11(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 685 億円・営業利益 103 億円。市場 1.10 倍・シェア 1.12 倍・営業利益率 15.0%
- ランニング・スポーツスタイル:数量 600(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 18(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 1,092 億円・営業利益 142 億円。市場 1.60 倍・シェア 1.50 倍・営業利益率 13.0%
- フットボール:数量 342(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 15(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 504 億円・営業利益 55 億円。市場 1.40 倍・シェア 1.20 倍・営業利益率 11.0%
- ワークビジネス・ウェア・他競技:数量 4,417(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 5.36(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 2,368 億円・営業利益 189 億円。市場 1.25 倍・シェア 1.12 倍・営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 510 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍。全体の PER 18.12 倍、時価総額 9,241 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ゴルフ・ランニング・フットボールの全部で追い風が続き、ミズノのシェアも1.2〜1.5倍に伸びる必要がある。実現すれば大きいが、連続した成功が条件なので1割にとどめた。
やや楽観 22% 海外比率が5割に近づき、利益率が10%台になる 利益 408 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 9,175 円6,981 億円
海外が中期経営計画のペースで伸びる。ゴルフとランニングが売上の増加を引っ張り、ワークビジネスも安定して育つ。
国内の野球は市場の縮小を、シェアの維持と単価の改善で抑える。利益率は10%台に乗り、粗利の改善が営業利益に反映される。
配当と自社株買いは徐々に厚くなり、純利益の4〜5割を還元する。大きな買収はしない。ミズノは、専門性の高い中堅ブランドとして、世界で存在感を増していく。
世界の大手との差は縮まらないが、専門性で固定客を守る。実質の成長は市場並みか、やや上である。
フットボールとスポーツスタイルシューズも、小さな土台から着実に積み上がる。ただし街履きは流行の波があり、急に伸びる年と止まる年が交互に来ると見る。
- ゴルフ:数量 255(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 34(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 854 億円・営業利益 145 億円。市場 1.40 倍・シェア 1.25 倍・営業利益率 17.0%
- 野球・ソフトボール:数量 605(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 11(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 649 億円・営業利益 94 億円。市場 1.08 倍・シェア 1.08 倍・営業利益率 14.5%
- ランニング・スポーツスタイル:数量 506(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 17(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 882 億円・営業利益 106 億円。市場 1.50 倍・シェア 1.35 倍・営業利益率 12.0%
- フットボール:数量 316(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 15(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 466 億円・営業利益 47 億円。市場 1.35 倍・シェア 1.15 倍・営業利益率 10.0%
- ワークビジネス・ウェア・他競技:数量 4,089(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 5.36(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 2,192 億円・営業利益 160 億円。市場 1.20 倍・シェア 1.08 倍・営業利益率 7.3%
倍率:事業の純利益 408 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍。全体の PER 17.11 倍、時価総額 6,981 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外が計画どおり伸び、利益率が10%台に乗る筋書き。直近の実績からは十分ありえるが、大手との競争を考えると中立よりは薄く置いた。
中立 34% 中立:高めの利益率を保った、中堅の優良ブランドになる 利益 339 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 7,268 円5,530 億円
世界のゴルフ・ランニング・サッカーの市場は、実質で年2〜3%ずつ広がる。ミズノはゴルフと街履きシューズでじわじわ顧客を増やすが、大手との差が縮まるほどではない。
国内の野球は市場がほぼ横ばいで、守りの事業として利益を出し続ける。価格は物価並みに上がり、原価高をおおむね転嫁できる。
営業利益率は9%台半ばで落ち着く。純利益の約4.5割を配当と自社株買いで還元し、無理な買収はしない。ミズノは、高めの利益率を保つ中堅の優良ブランドとして、10年を過ごす。
過去10年の利益率の上昇は大きかったが、これ以上の上積みは小さいと置く。売上は10年でおよそ1.8倍、営業利益は約1.9倍になる。
- ゴルフ:数量 227(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 34(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 761 億円・営業利益 114 億円。市場 1.30 倍・シェア 1.20 倍・営業利益率 15.0%
- 野球・ソフトボール:数量 572(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 11(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 613 億円・営業利益 86 億円。市場 1.05 倍・シェア 1.05 倍・営業利益率 14.0%
- ランニング・スポーツスタイル:数量 431(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 17(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 750 億円・営業利益 82 億円。市場 1.40 倍・シェア 1.23 倍・営業利益率 11.0%
- フットボール:数量 297(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 15(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 437 億円・営業利益 39 億円。市場 1.30 倍・シェア 1.12 倍・営業利益率 9.0%
- ワークビジネス・ウェア・他競技:数量 3,773(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 5.36(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 2,023 億円・営業利益 138 億円。市場 1.15 倍・シェア 1.04 倍・営業利益率 6.8%
倍率:事業の純利益 339 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.24 倍、時価総額 5,505 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:世界のスポーツ用品の中立成長と、ミズノのシェアのゆっくりした上昇を組み合わせた筋書き。最も重みを置く。
やや悲観 23% 追い風が止まり、利益が横ばいに戻る 利益 173 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,447 円1,861 億円
ゴルフとランニングの追い風が止まり、円高と景気の冷え込みで価格を通せなくなる。大手との値引き競争が増え、粗利が削られる。
国内の野球は少子化で縮み、固定費の負担が重くなる。海外は伸びても、広告と販売網への投資がかさみ、利益に残らない。
営業利益は今の水準前後で横ばいが続く。ミズノは、安定はしているが成長しない会社として評価される。還元は純利益の半分ほどに高まるが、事業の稼ぐ力は伸びない。
店舗や広告の固定費は減らしにくいので、売上が伸びない分は利益率の低下として表れる。財務は堅く、潰れる心配はない。
- ゴルフ:数量 167(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 33(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 544 億円・営業利益 60 億円。市場 1.15 倍・シェア 1.00 倍・営業利益率 11.0%
- 野球・ソフトボール:数量 493(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 10(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 513 億円・営業利益 56 億円。市場 0.98 倍・シェア 0.97 倍・営業利益率 11.0%
- ランニング・スポーツスタイル:数量 300(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 17(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 507 億円・営業利益 41 億円。市場 1.20 倍・シェア 1.00 倍・営業利益率 8.0%
- フットボール:数量 223(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 14(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 318 億円・営業利益 19 億円。市場 1.15 倍・シェア 0.95 倍・営業利益率 6.0%
- ワークビジネス・ウェア・他競技:数量 3,213(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 5.20(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 1,671 億円・営業利益 84 億円。市場 1.05 倍・シェア 0.97 倍・営業利益率 5.0%
倍率:ROE は 6.7% で k の 7.75% を下回る。k を下回る ROE では、ためた利益は 額面未満の価値になるので、PER は 1÷k の約 12.9 倍を超えられない。利益の質が下がる筋書きなので、それより低い 10.0 倍に置いた。
確率:円高や景気の冷え込みで価格が通らなくなり、利益率が今の水準から下がる筋書き。ゴルフなど買い控えの出やすい分野を抱えるため、確率を厚めに置いた。
悲観 11% 大手と地場メーカーに挟まれ、規模も利益も縮む 利益 41 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 570 円434 億円
ナイキやアディダスなどの大手が価格を下げ、アジアでは中国の地場メーカーが価格と品ぞろえで迫る。ミズノは各分野でシェアを落とし、特にランニングとサッカーで大きく後退する。
国内の野球は少子化で用具市場が縮み、売上は10年で今を割り込む。固定費を削り切れず、営業利益率は2%台に沈む。
財団の持分は残るが、株主の目は厳しくなる。純現金と自己資本は残るので潰れはしないが、ブランドの価値は大きく目減りする。ミズノは、規模も利益も縮んだ普通の用品メーカーになる。
この筋書きでは、利益は今の4分の1に落ちる。ただ純現金があるため、事業を畳むような事態にはならない。
- ゴルフ:数量 117(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 30(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 349 億円・営業利益 17 億円。市場 1.00 倍・シェア 0.80 倍・営業利益率 5.0%
- 野球・ソフトボール:数量 397(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 9.60(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 381 億円・営業利益 23 億円。市場 0.90 倍・シェア 0.85 倍・営業利益率 6.0%
- ランニング・スポーツスタイル:数量 188(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 16(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 292 億円・営業利益 9 億円。市場 1.00 倍・シェア 0.75 倍・営業利益率 3.0%
- フットボール:数量 143(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 13(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 188 億円・営業利益 4 億円。市場 1.00 倍・シェア 0.70 倍・営業利益率 2.0%
- ワークビジネス・ウェア・他競技:数量 2,548(販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算)× 価格 4.80(平均単価(千円、物価込みの名目))→ 売上 1,223 億円・営業利益 31 億円。市場 0.95 倍・シェア 0.85 倍・営業利益率 2.5%
倍率:ROE が k を大きく下回る構造的な負けの筋書き。稼ぐ力は純利益 41 億円 ÷ k 7.5% で約 529 億円だが、利益が今の 2 割まで落ちた会社に 1÷k の倍率は付けない。床の資産(純現金+土地・有価証券を売った額 453 億円)で値が付くとみて、今の自己資本 1,734 億円の 0.25 倍(約 434 億円)に置いた。
確率:大手と中国の地場メーカーに価格と市場を取られ、野球の縮小も重なる複合の筋書き。財務が堅く、事業の幅もあるため、1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ゴルフ
クラブ・ボール・ゴルフ用品。鍛造アイアンを軸に、米州と欧州で伸びている。
| 数量販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算 | 価格平均単価(千円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 146 | 25 | 364 | 51 |
| 10 年後 中立 | 227 | 34 | 761 | 114 |
取り方:ゴルフ 364 億円。世界のクラブ・ボール・関連用品の市場を約 1.2 兆円(約 80 億ドル)と置き、シェアは約 2%。タイトリスト、キャロウェイ、テーラーメイドが大手で、ミズノは鍛造アイアンの専門性で戦う。利益率はカテゴリー別の開示がなく、筆者の推定(約 14%)。 数量は売上÷推定の平均単価(25 千円)で出した販売点数(万点)で、市場は実質、物価の分は単価に入れた。 数量の伸びは実質の市場(年2〜3%)にシェアの上積みを乗せたもので、名目の市場の伸びではない。
野球・ソフトボール
野球・ソフトボールの用具一式。国内の定番で、学校・社会人チームに強い。
| 数量販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算 | 価格平均単価(千円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 519 | 8.00 | 415 | 58 |
| 10 年後 中立 | 572 | 11 | 613 | 86 |
取り方:野球・ソフト 415 億円。国内の野球用品市場(約 1,200 億円と推定)で約 3 割のシェア、これに米国・アジアを足した世界市場を約 2,300 億円と置いた。競合は SSK、ゼット、アシックス、ローリングス、ウィルソン。利益率は筆者の推定(約 14%)。 数量は売上÷推定の平均単価(8 千円)で出した販売点数(万点)で、市場は実質、物価の分は単価に入れた。
ランニング・スポーツスタイル
ランニングシューズと街履きのスポーツスタイルシューズ。小さい土台から急伸中。
| 数量販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算 | 価格平均単価(千円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 13 | 325 | 32 |
| 10 年後 中立 | 431 | 17 | 750 | 82 |
取り方:ランニング 249 億円+スポーツスタイルシューズ 76 億円。世界のランニング・スニーカー市場のうち、機能シューズとカジュアル併用の部分を約 5 兆円と置いて、シェアは 0.65%。アシックス、ナイキ、ホカ、オンが相手。利益率は筆者の推定(約 10%)。 数量は売上÷推定の平均単価(13 千円)で出した販売点数(万点)で、市場は実質、物価の分は単価に入れた。 数量の伸びは実質の市場(年2〜3%)にシェアの上積みを乗せたもので、名目の市場の伸びではない。
フットボール
サッカースパイク・ウェア・ボール。日本人の足型に合う革のスパイクに固定客がいる。
| 数量販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算 | 価格平均単価(千円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 204 | 11 | 224 | 18 |
| 10 年後 中立 | 297 | 15 | 437 | 39 |
取り方:フットボール 224 億円。世界のサッカーシューズ・ウェア・ボールの市場を約 9,000 億円と置き、シェアは約 2.5%。ナイキ、アディダス、プーマが大半を押さえ、ミズノは日本の足型に合う革のスパイクで固定客を持つ。利益率は筆者の推定(約 8%)。 数量は売上÷推定の平均単価(11 千円)で出した販売点数(万点)で、市場は実質、物価の分は単価に入れた。
ワークビジネス・ウェア・他競技
作業靴などのワークビジネス、ウェア、テニス・バレー・水泳・ウィンターなどの他競技、ライセンス。
| 数量販売点数(万点)。市場(実質億円)× シェアから換算 | 価格平均単価(千円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,155 | 4.00 | 1,262 | 82 |
| 10 年後 中立 | 3,773 | 5.36 | 2,023 | 138 |
取り方:ワークビジネス 175 億円とウェア・テニス・バレー・水泳・ウィンター・ライセンスなどの合計(開示の残りの差分)。広く薄い市場なので、世界市場を約 10 兆円と置いてシェア 1.2%。利益率は全社の営業利益 226 億円に合うよう逆算した約 6.5% で、ここだけ精度は低い。 数量は売上÷推定の平均単価(4 千円)で出した販売点数(万点)で、市場は実質、物価の分は単価に入れた。
リスクと懸念
利益率の持続性
営業利益率は10年で2%台から9%近くまで上がった。円安と海外のゴルフ・ランニングの追い風が大きい。円高や需要の冷え込みで価格を通せなくなれば、利益は想定より早く落ちる。
世界の大手との競争
ゴルフはタイトリスト、キャロウェイ、テーラーメイドが、ランニングはオン・ホカ・アシックスが、サッカーはナイキ・アディダスが先行する。ミズノのシェアは小さく、広告と開発の力で劣る。
国内野球市場の縮小
少子化で少年野球の人口が減り、国内の野球用具市場は縮む。ミズノは国内の首位級で、この事業は会社の安定した土台だ。縮小のペースが速いと、全社の成長を押し下げる。
街履きスニーカーの流行
スポーツスタイルシューズは約1.6倍と急伸したが、まだ小さな土台である。ファッションの流行は数年で冷める。売上が急に止まれば、在庫の積み上がりで利益を圧迫することもある。
中国の地場メーカーの台頭
アンタやリーニンなど中国の大手は、アジアで価格と品ぞろえを武器に広がっている。ミズノの海外比率を高める計画は、アジアで価格競争に巻き込まれる可能性がある。
米国の関税と為替
輸入品に関税がかかれば、米州の採算は下がる。ドル円が前提の150円から外れて円高に振れれば、海外の利益は円換算で目減りする。両方が同時に起きる場面もありうる。
資本効率の改善が進まない
自己資本比率は約69%と厚く、純現金もある。筆頭株主の財団は安定株主で、還元を求める圧力は弱い。資本をため込む姿勢が続けば、ROEは10%前後で足踏みする。
今後の分かれ目
- ゴルフの米州売上が2桁成長を数年続けたら
- ゴルフのシェア上昇を上方修正する。楽観・やや楽観の確率を引き上げてよい。
- 営業利益率が10%台に乗り、粗利率も上がり続けたら
- 価格を通す力が本物と見て、中立の利益率を上方に直す。
- 円高や景気後退で売上が前年を割り、粗利率が縮んだら
- 利益率の持続性への疑いが強まる。やや悲観側に確率を移す。
- 総還元性向が5割を超え、自社株買いが毎年続いたら
- 資本配分の姿勢が変わった合図である。資本の厚みを使い切る方向で評価が上がる。
- 国内の野球売上が前年比で大きく落ち、海外で補えなくなったら
- 全社の成長の前提を下方修正する。
- 中国の地場メーカーがアジアで価格を引き下げ、ミズノの現地売上が落ちたら
- 海外比率46%の計画を疑い、アジアの成長を下方修正する。
見ておくもの
- ゴルフ・ランニングの売上成長率と粗利率
- 海外比率(目標は2029年3月期に46%)
- 営業利益率(目標の2029年3月期に営業利益310億円)
- 総還元性向と自社株買いの継続
- 国内の野球売上と少年野球人口
- ドル円と米国の関税
倍率と資本コストの決め方
セグメントは世界市場の規模(実質)にミズノのシェアを掛けて積み、価格は物価込みの指数で別に置いた。倍率は式(正当化 PER)だけで決め、市場の倍率は使っていない。中立の価値は、10 年先でも今の時価総額を下回る。これは今の利益を高く見すぎていないかの点検の結果である。店舗の賃借は小さく、リースの固定の約束は純現金に比べて軽いと見て、悲観の利益率にも大きく織り込んでいない。新リース会計基準(2028年3月期から)で営業利益・純負債の形が変わる点は、10年後も今と同じ家賃を費用に入れた形でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.3→18.12 倍・やや楽観 PER 13.7→17.11 倍・中立 PER 13.4→16.24 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。