結論
東芝テックは、レジ(POS)で国内首位に立ち、複合機とバーコードプリンタも手がける小売機器・事務機の会社だ。筆者の結論は「やや割高」である。理由は稼ぐ力の低さにある。売上は5,700億円あるのに、2026年3月期の営業利益は143億円、最終は赤字だった。
事業は2本柱だ。リテールは国内のPOSで約5割、世界で約17%のシェアを持つと会社は言う。ワークプレイスは複合機が中心で、ペーパーレスで台数が細る成熟市場にいる。複合機の開発・生産は2024年にリコーとの合弁ETRIAへ移し、固定費を落とす道に入った。
追い風はある。国内ではセルフレジとスマートレシートが伸び、2027年3月期は第1四半期から利益が戻った。米国の関税の負担も、生産地の見直しと値上げで吸収に向かう。ただ、この会社は過去12年で5期も純損益が赤字になった。会社が掲げる利益率がそのまま実現する前提で値段を払うのは危うい。
筆者が中立に置く営業利益率は4%台半ばで、会社の目標より低い。それでも10年後の利益は今の2〜3倍に育つ。それを正当な倍率で測っても、今の時価総額に届かない。支えは純現金が時価総額の1割ほどあることと、親会社の東芝が過半を持つ安定した株主構成だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、東芝テックは「いい店を持っているが、儲けの取りこぼしが多い会社」に見える。国内レジの5割という顧客基盤と、世界に置いた140万台の保守網は本物の資産だ。ただ、その資産が利益になって株主に残る度合いが低い。営業利益率は20年間、最良でも5%台にとどまり、過去12年で5期が純損益で赤字だった。
オーナーとして持ち続けたいかと問われれば、筆者は利益が安定して出るという確信が足りない。数字の振れが大きく、経営の約束した水準に届かない期が続いてきたからだ。構造改革で固定費を落とす力は示してきたが、成果が定着するかはまだ証明されていない。
資本の使い方は、堅実とは言えるが目覚ましくない。買収で規模を追わず、提携と合弁で身軽にする方向は評価できる。一方、親子上場で少数株主の取り分が東芝の意向に左右される構図は残る。
安全域は、純現金157億円が時価総額の約1割あることと、親会社の存在で突然の再建局面に陥りにくいことにある。ただ利益が薄いので、10年後の中立でも本質価値が今の値段に届かない。予測が難しい事業なので、確信度は高くない。
何で稼ぐ会社か
東芝テックの稼ぎは、店と事務所に置く機械とその周辺のサービスから来る。事業はリテールソリューションとワークプレイスソリューションの2つに分かれる。
リテールは売上の6割弱を占める。スーパーやコンビニ、ドラッグストアのレジ、セルフレジ、決済端末、レシートを電子化するスマートレシートが主な商品だ。国内ではPOSの約5割を握る首位で、顧客の入れ替えと機能追加の需要を取れる立場にある。海外は米国の大手小売を中心に、ELERAという店舗向けの基盤ソフトとレーンごとの端末を売る。会社によると、世界の上位小売13社が採用しており、米国の上位10社のうち7社が顧客だ。
ワークプレイスは4割強で、複合機とバーコードプリンタ、ラベル用のオートIDが中心になる。複合機は本体を売ったあと、トナーなどの消耗品と保守で稼ぐ。世界で動いている機械は約140万台あり、この保守網が下支えになる。ただ市場そのものは年々縮んでいる。
複合機の開発と生産は、2024年7月にリコーが85%、東芝テックが15%を出資するETRIAへ移した。東芝テックは設計と工場の固定費を抱えずに、販売と保守に集中できる形になった。
親会社は東芝で、議決権の50%余りを持つ。2023年の自社株の公開買付けで東芝が持ち分を減らしたあとも、支配は変わっていない。
優良さと弱いところ
東芝テックの堀、つまり他社がまねしにくい強みは、国内のレジの顧客基盤と、世界に置いた機械の保守網にある。レジは一度入れると周辺の機器・ソフト・保守まで結びつくので、切り替えるのは簡単ではない。国内首位の5割というシェアは、その結果だ。
ただ、堀の深さは利益に出ていない。営業利益率は過去20年を通して0〜5%台で、最良でも2008年3月期の5.3%にとどまる。しかも2016年3月期に純損失1,000億円規模の大赤字を出し、2023年3月期、2024年3月期、2026年3月期も純損益は赤字だった。堀があっても、価格競争と海外事業の不振、関税と為替の揺れが利益を削ってきた。
筆者が気にしているのは、海外のレジで競合が厚いことだ。米国のNCR VoyixやDiebold Nixdorf、HPがいて、セルフレジの出荷では東芝が2位から3位に落ちたという調査もある。ハードの単価は下がりやすく、価値はソフトとレーンごとの継続収入に移っている。ELERAがそこで勝てるかが、これからの分かれ目だ。
財務は、自己資本比率が26%と厚くない。純現金は157億円あるが、営業利益で支払利息をまかなう倍率は8倍台にとどまる。経営は構造改革で人員と費用を落とす手を続けており、実行力はある。ただ、成果が利益率として定着した実績はまだない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ワークプレイスの市場は、構造的に縮んでいる。世界の複合機・プリンタ市場は年220億〜230億ドルほどで、国内の複合機出荷は、ピーク時の65万台超から2024年には45万台程度まで減った。ペーパーレスは止まらず、台数は緩やかな縮小が続く。その分を、トナーなどの消耗品と、業務の代行、クラウドを組み合わせたサービスで補う構図だ。リコー、キヤノン、コニカミノルタ、ブラザー、セイコーエプソンが同じ土俵で争う。
リテールの市場は逆に、人手不足でセルフレジとキャッシュレスが広がり、機械の入れ替えが続く。国内は人口が減るが、省人化の投資が数量を支える。海外は小売大手が店舗のITを刷新する波の中にあり、ソフトとハードをまとめて売る基盤型の競争になっている。競合は米国のNCR Voyix、Diebold Nixdorf、HP、そして安価なタブレット型レジの新興勢だ。
東芝テックの固有の変数は3つある。1つは、米国の関税が収益に与える影響だ。2026年3月期は関税の負担が100億円を超えた。会社は生産拠点の見直しと価格改定でこれを吸収するとしており、2027年3月期の第1四半期は営業利益が44億円と前年から大きく戻った。2つ目は、ETRIAによる複合機の固定費の削減。3つ目は、ELERAの導入拡大で、会社は2029年度までに12万3,000レーンを見込む。
この3つのどれが実現するかで、10年後の利益率が3%台にも7%台にも動く。
資本政策と M&A
資本政策の第一の特徴は、親会社の東芝が議決権の50%余りを持つ親子上場だ。2023年に東芝テックが自社株の公開買付けを行い、東芝が持ち分の大半を手放したが、過半は維持された。東芝は同年に非上場化している。持ち分を売る、あるいは完全子会社にする動きは、確かめられなかった。
還元は配当が中心で、利益が薄いので、配当は純利益に対して重くなりやすい。自社株買いは、2023年の公開買付けのような特殊な場合を除き、大きく積み上がってはいない。
M&Aの面では、2024年のETRIAが大きな動きだった。複合機を持つ側から、15%の出資者へ立場を変えた。加賀電子とは小売向け製品の開発・製造で協業し、AI分析でもNVIDIAのGPUを使う提携を打ち出した。買収で規模を買う方向ではなく、提携で身軽に伸ばす方向だ。
筆者がいちばん気にするのは、東芝グループの意向だ。ファンドの傘下にある東芝が、持ち分を売る、あるいは再編する可能性は小さくないが、時期と形は見えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東芝テックは、構造改革と価格改定で利益率を引き上げる局面に入った。2027年3月期の第1四半期は営業利益が44億円と、前年から65億円も増えた。生産拠点の見直しと値上げで、関税のコスト増を吸収できることを数字で示した。
リテールの需要は強い。国内ではセルフレジとスマートレシートの入れ替えが続き、国内POSで5割という首位の地位がそのまま効く。海外は米国の上位小売10社のうち7社が顧客で、うち4社がELERAを採用している。会社の見通しでは、導入レーンは2029年度に12万3,000に達する。基盤ソフトの継続収入が増えれば、ハードの売り切りより利益率は高くなる。
ワークプレイスも、リコーとの合弁ETRIAで固定費が軽くなった。複合機の台数は減っても、消耗品と保守の継続収入と、加賀電子との協業による調達の効率化が利益率を支える。中期経営計画の2030年度に営業利益率10%という目標は遠く見えるが、半分でも届けば、今の利益は2倍以上になる。親会社の東芝が持ち分を整理する局面が来れば、少数株主にも評価の見直しが及ぶ。
慎重な見方
東芝テックは、20年間のほとんどで営業利益率が0〜5%にとどまってきた会社だ。2016年3月期に大赤字を出し、2023年3月期と2024年3月期、2026年3月期も赤字だった。構造改革の発表は何度もあったが、利益率は定着していない。会社が掲げる目標も、2026年度に営業利益330億円としていたのに、2026年3月期の実績は143億円だった。
関税は一過性とは限らない。米国は主力の海外市場で、関税と為替は利益を大きく振る。価格改定は競合と顧客の目を意識すると、毎回は通らない。
リテールの海外は競合が厚い。NCR VoyixやDiebold Nixdorfが基盤ソフトとサービスで先行し、セルフレジの出荷では東芝が順位を落としたという調査もある。安価なタブレット型レジの普及で、ハードの単価は下がり続ける。ELERAの導入が増えても、値下げ圧力が利益を吸い取る。
ワークプレイスは台数が構造的に縮む。ETRIAで固定費を落としても、規模ではリコーとキヤノンに及ばない。複合機の売上が減り続ける中で、15%出資のETRIAは主導権が弱く、東芝テックが決められる範囲は限られる。親子上場の構図も重しだ。東芝の意向で戦略が動けば、少数株主の利益は後回しになりうる。
どちらに重みを置いたか
リテールの国内の地位と、関税の吸収が始まったことは、確かな強みだ。ただ、20年間の利益率の低さと、過去12年で5期の赤字という実績は重い。会社の目標が毎回未達に終わってきた点も無視できない。強い方の言い分は慎重な見方で、確率はやや悲観寄りに寄せた。
それでも事業が消える会社ではない。国内POSの首位と複合機の保守網があるので、悲観でも黒字を保てる。最悪の筋書きの確率は低く抑え、中立の利益率は過去の最良に近い4%台半ばにとどめた。計算の結果、10年の本質価値は今の時価総額を2割ほど下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,695 円3,019 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 909 円482 億円)。 今の値に割り戻すと 3,123 円1,656 億円、今との差 +2.1%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 14,823 円7,859 億円 | 1,820 円965 億円 | +443.9% | +18.5% | 1,331 円706 億円 |
| やや楽観 | 20% | 9,570 円5,074 億円 | 1,249 円662 億円 | +253.6% | +13.5% | 2,164 円1,147 億円 |
| 中立 | 32% | 6,037 円3,201 億円 | 888 円471 億円 | +126.3% | +8.5% | 2,216 円1,175 億円 |
| やや悲観 | 28% | 2,126 円1,127 億円 | 675 円358 億円 | −8.5% | −0.9% | 784 円416 億円 |
| 悲観 | 12% | 566 円300 億円 | 339 円180 億円 | −70.4% | −11.5% | 109 円58 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,695 円3,019 億円 | 909 円482 億円 | +115.8% | +8.0% | 6,604 円3,502 億円 |
今の株価時価総額 3,060 円1,622 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% ELERAが定着し、利益率が2桁近くへ 利益 438 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 14,823 円7,859 億円
米国の大手小売でELERAの採用が広がり、基盤ソフトとレーンごとの継続収入が全社の利益を押し上げる。国内ではセルフレジとスマートレシートの入れ替えが続き、国内POSの5割は守られる。関税の負担は生産地の見直しと値上げでほぼ解消し、為替の影響も小さくなる。複合機はETRIAの効果で固定費が軽くなり、消耗品と保守の継続収入が台数の減少を吸収する。リカーリングの比率が上がり、全社の営業利益率は8%近くまで届く。会社が掲げる2030年度の10%には届かないが、過去20年で初めて、この会社が堀を利益に変えた10年になる。親会社の東芝が持ち分を整理し、資本政策も整理が進む。
- リテールソリューション:数量 24,000(世界の小売向け POS・セルフレジ・決済端末・ソフトの市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 25.5%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 6,110 億円・営業利益 538 億円。国内の入れ替えが続き、ELERAが海外で定着(実質の市場 2.4兆円×シェア19%)
- ワークプレイスソリューション:数量 33,500(世界の複合機・プリンタ・オート ID(バーコードプリンタ等)の市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 8.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 2,963 億円・営業利益 213 億円。ETRIAの効果と消耗品で下支え(実質の市場 3.35兆円×シェア6.6%)
倍率:事業の純利益 438 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 25.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍。全体の PER 16.97 倍、時価総額 7,433 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の2030年度の営業利益率10%に近い水準までELERAと継続収入で到達する筋書き。20年で最良5%台の会社が8%近くまで行くのは例外的なので8%に抑えた。
やや楽観 20% 関税と固定費の問題が片づく 利益 298 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 9,570 円5,074 億円
国内POSの入れ替え需要が続き、海外でもELERAの導入レーンが会社の見通しに近い水準まで増える。関税のコストは価格改定と生産地の見直しで吸収され、営業利益率は6%前後まで戻る。複合機は台数が減るが、ETRIAで固定費を落とした分だけ利益が残る。加賀電子との協業で調達も効率化する。
ただ、会社の2030年度の目標までは届かない。基盤ソフトの継続収入は増えるが、ハードの値下がりが利益の伸びを一部打ち消す。海外のレジでは上位の小売数社に食い込むが、競合の厚い市場でシェアを大きく広げるところまでは行かない。配当は着実に増え、自己資本もゆっくり厚くなる。
- リテールソリューション:数量 22,500(世界の小売向け POS・セルフレジ・決済端末・ソフトの市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 23.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 5,367 億円・営業利益 365 億円。ELERAの導入が計画に近づく(実質の市場 2.25兆円×シェア17.8%)
- ワークプレイスソリューション:数量 32,700(世界の複合機・プリンタ・オート ID(バーコードプリンタ等)の市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 8.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 2,761 億円・営業利益 160 億円。固定費が軽くなり縮小を吸収(実質の市場 3.27兆円×シェア6.3%)
倍率:事業の純利益 298 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.89 倍、時価総額 4,735 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:関税の吸収と固定費の削減が計画どおり進み、利益率が6%前後に届く蓋然性のある楽観。実績が毎回未達だった点を踏まえ20%にとどめた。
中立 32% 国内首位を守り、利益率は過去の最良並みまで 利益 199 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 6,037 円3,201 億円
国内のレジでは首位の地位を保つ。海外は、ELERAが一部の大手に定着するが、値下がり圧力でハードの利益は伸びにくい。関税は価格改定と生産地の見直しで半分ほど吸収し、営業利益率は4%台半ばまで改善する。これは過去20年の最良に近い水準だ。
複合機の台数は10年で15%ほど減り、ETRIAと保守が下支えするが、成長の柱にはならない。リコーとの関係は続き、東芝との親子上場も大きく変わらない。
この10年で、利益の振れは小さくなるが、安定して高収益になるわけではない。新しい投資の稼ぎは、競争で資本コストに近づいていく。配当は利益の3分の1ほどが続く。
- リテールソリューション:数量 21,060(世界の小売向け POS・セルフレジ・決済端末・ソフトの市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 22.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 4,656 億円・営業利益 242 億円。国内は首位を維持、海外は横ばい(実質の市場 2.1兆円×シェア16.5%)
- ワークプレイスソリューション:数量 32,300(世界の複合機・プリンタ・オート ID(バーコードプリンタ等)の市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 8.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 2,597 億円・営業利益 119 億円。台数は縮むが保守で支える(実質の市場 3.2兆円×シェア6.0%)
倍率:事業の純利益 199 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.63 倍、時価総額 2,911 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の地位を守り、関税と固定費の効果が部分的に出て、営業利益率が過去の最良並みになる最も蓋然性の高い筋書き。
やや悲観 28% 海外の競争と複合機の縮小で伸びない 利益 109 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,126 円1,127 億円
海外のレジは、NCR VoyixやDiebold Nixdorfと安価なタブレット型レジに挟まれ、値引きが続く。ELERAの導入は進むが、1レーンあたりの利益は下がる。関税は完全には吸収できず、営業利益率は3%台にとどまる。
複合機はETRIAでも規模でリコーとキヤノンに及ばず、台数の減少を補えない。海外の事業で減損や追加の構造改革費用が断続的に出て、純損益は赤字の期が混じる。
配当は維持されるが、利益に対して重い負担になり、自己資本の積み上がりが鈍る。国内のレジは守るものの、全社の利益は今の延長にとどまる。
- リテールソリューション:数量 19,500(世界の小売向け POS・セルフレジ・決済端末・ソフトの市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 20.1%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 3,920 億円・営業利益 157 億円。海外の競争で値引きが続く(実質の市場 1.95兆円×シェア15%)
- ワークプレイスソリューション:数量 31,000(世界の複合機・プリンタ・オート ID(バーコードプリンタ等)の市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 7.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 2,285 億円・営業利益 78 億円。ETRIAでも規模で劣る(実質の市場 3.1兆円×シェア5.5%)
倍率:ROE 7.4% が k 8.5% を下回るので、ためた利益は額面未満の価値で PER の上限は 1÷k の 11.4 倍。その 75% を稼ぐ力として置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.5 倍・時価総額 926 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:海外のレジと複合機の競争が重く、利益率が3%台にとどまる筋書き。過去12年で5期が赤字という実績と、目標の未達が続いてきた点を重く見て、中立よりやや高めの27%とした。
悲観 12% 構造的に負ける:レジの安価化と複合機の縮小 利益 15 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 566 円300 億円
レジは安価なタブレット型へ置き換わり、専用機で稼ぐ前提が崩れる。ELERAは大手の顧客を取り込めず、海外のレジでNCR VoyixとDiebold Nixdorfにさらにシェアを奪われる。関税が長引き、価格改定も競合に阻まれて、海外は赤字が常態になる。複合機はペーパーレスで台数が4分の3まで縮み、ETRIAの固定費削減も追いつかない。それでも国内POSの顧客基盤と保守網があるので、事業は消えず、営業利益は数十億円の黒字を保つ。ただ、海外事業の整理と減損で自己資本は削られ、時価総額は稼ぐ力と売れる資産で下支えされる水準まで落ちる。
- リテールソリューション:数量 17,500(世界の小売向け POS・セルフレジ・決済端末・ソフトの市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 16.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 2,931 億円・営業利益 53 億円。タブレット型レジに置き換わる(実質の市場 1.75兆円×シェア12.5%)
- ワークプレイスソリューション:数量 29,000(世界の複合機・プリンタ・オート ID(バーコードプリンタ等)の市場(今の値段で測った実質・億円、推定))× 価格 6.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率)→ 売上 1,865 億円・営業利益 19 億円。複合機の縮小に追いつけない(実質の市場 2.9兆円×シェア4.8%)
倍率:悲観の純利益 15 億円は ROE 1.7% で k 8.5% を大きく下回り、稼ぐ力(純利益÷k)は 170 億円ほどにとどまる。それより大きい純現金と売れる資産の税後 300 億円を採り、今の自己資本 941 億円に 0.32 倍を掛けた形で置いた。市場の倍率は根拠にしていない。
確率:レジの安価化と複合機の縮小で構造的に負ける筋書き。国内首位と保守網が残るので黒字の底は固いが、20年の利益率の低さから5%以上の確率は必要と見て12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
リテールソリューション
スーパー・コンビニなど小売向けのPOS、セルフレジ、決済端末、スマートレシート、ELERA(店舗向け基盤ソフト)。国内シェア首位。
| 数量世界の小売向け POS・セルフレジ・決済端末・ソフトの市場(今の値段で測った実質・億円、推定) | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 19,500 | 17.1% | 3,330 | 105 |
| 10 年後 中立 | 21,060 | 22.1% | 4,656 | 242 |
取り方:開示のセグメント営業利益は確かめられなかったため推定。売上は2025年4〜12月のリテール2,388億円・ワークプレイス1,655億円の比率で通期5,693億円を配分し、営業利益は旧中計の目標(リテール200億・ワークプレイス130億)と今期の全社143億円から、リテール105億・ワークプレイス70億・本社調整-32億に置いた。市場は世界の小売向けPOS・セルフレジ等を約1.95兆円(実質)と仮置きし、会社が言う世界シェア17%から逆算した。物価3%は価格(シェア×物価の倍率)に入れた。
ワークプレイスソリューション
複合機とバーコードプリンタ・ラベルなどのオートID、消耗品と保守。複合機の開発・生産はリコーとの合弁ETRIAへ移管済み。
| 数量世界の複合機・プリンタ・オート ID(バーコードプリンタ等)の市場(今の値段で測った実質・億円、推定) | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 38,000 | 6.2% | 2,360 | 70 |
| 10 年後 中立 | 32,300 | 8.0% | 2,597 | 119 |
取り方:開示のセグメント営業利益は確かめられなかったため推定(上の欄を参照)。市場は世界の複合機・プリンタ約220〜230億ドル(gii)に、オートIDなどを足した約3.8兆円(実質)と仮置きし、売上から逆算したシェアは約6.2%。数量は複合機の縮小を反映して10年で縮める。物価3%は価格に入れた。
リスクと懸念
関税と為替で利益が振れる
2026年3月期は米国の関税で100億円を超える負担が出て、営業利益は143億円に沈んだ。価格改定と生産地の見直しで吸収に向かうが、関税の水準や為替が動けば、もう一度利益が崩れる。主力の海外リテールは特に影響が大きい。
海外のレジ事業の競争
米国のNCR VoyixやDiebold Nixdorf、HPと競り合い、セルフレジの出荷では順位を落としたという調査もある。安価なタブレット型レジの普及でハードの単価が下がる。ELERAが継続収入として定着しないと、利益率が上がらない。
複合機の構造的な縮小
ペーパーレスで複合機の台数は年々減り、国内の出荷はピークの65万台超から45万台程度まで縮んだ。ETRIAで固定費は軽くなったが、開発・生産の主導権はリコーにあり、東芝テックが決められる範囲は限られる。
目標が毎回未達になってきた
旧中計の2026年度目標は営業利益330億円だったが、2026年3月期の実績は143億円。過去12年で5期で純損益が赤字になり、改革の効果が利益率として定着した実績がない。新しい目標も同じ道をたどる恐れがある。
親子上場と東芝の意向
東芝が議決権の50%余りを持つ。東芝の事情で持ち分の売却や再編が動けば、経営の方針が変わり、少数株主の取り分が後回しになる恐れがある。時期と形は見えず、確かめられた動きはない。
海外事業の減損・追加の構造改革費用
2016年3月期には純損失1,000億円規模の大赤字を出した。海外事業の不振で減損や構造改革費用が出ると、自己資本比率26%の財務に響く。一度の損失で配当や投資の余力が細る点に注意が要る。
今後の分かれ目
- 営業利益が2期連続で300億円を超え、営業利益率が4%台後半に定着する
- 改革の効果が本物と確かめられ、中立の筋書きが楽観側に寄る。
- ELERAの導入レーン数が会社の見通し(2029年度に12万3,000)に沿って増え、継続収入の比率が上がる
- ハードの値下がりを継続収入が補い、楽観の確率が上がる。
- 米国の関税が引き上げられるか、価格改定が競合に阻まれて通らなくなる
- 海外のレジの利益が再び崩れ、やや悲観の筋書きに近づく。
- 東芝が持ち分を売る、または東芝テックを完全子会社にする動きが出る
- 資本政策が変わり、少数株主の評価と経営の方針が大きく動く。買付価格は本質価値とは別に判断する。
- 海外で大きな減損や構造改革費用が出て、純損益が再び赤字になる
- 利益の質への疑いが強まり、悲観側の確率が上がる。
- ETRIAの出資比率や役割が見直され、複合機の事業から東芝テックが後退する
- ワークプレイスの固定費はさらに軽くなるが、売上と保守収入の基盤も細る。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期ごと)と関税の影響額
- ELERAの導入レーン数と継続収入の比率
- 国内POSのセルフレジ・スマートレシートの売上
- 海外リテールの営業損益
- 複合機の台数とETRIAの業績
- 東芝の持ち分売却・再編の動き
- 純損益の赤字の期と減損の有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価・今のPERを見ず、セグメントごとの数量×シェア×物価で積んだ利益と、その時点のROE・資本コスト(8.75%=基本7.5%+quality 1.25%)・長期の成長から正当化PERを計算し、その9割前後に置いた(中立はROEがkを上回るので下限1÷k)。悲観は稼ぐ力と売れる資産で置き、過去のPBRの底は使っていない。セグメントの営業利益は開示を確かめられず推定。新リース会計基準で形が変わっても、10年後の数字は今と同じ家賃を営業費用に入れた形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.1→16.97 倍・やや楽観 PER 11.7→15.89 倍・中立 PER 11.45→14.63 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.25% を足して k 8.5%。事業が傾いているわけではなく(純現金・黒字回復の途上)extra は置かない。同じ領域のコニカミノルタ(+1.2%)に近い。ブラザーより低く出る値決め力の弱さと、複合機の寿命の短さを重く見た。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.50%。