結論
京セラは、ファインセラミックの技術を核に、半導体パッケージや自動車部品、コンデンサ、複合機、工作機械まで手がける多角化の電子部品メーカーだ。筆者の結論は「割高」である。本業の稼ぐ力が、持っている資産の大きさに追いついていない。
2026年3月期は売上2兆702億円、営業利益1,181億円。前期に半導体基板の減損(約430億円)で営業利益が273億円まで沈んだ谷から戻った。自己資本比率は72%、純現金は2,108億円で、財務は極めて健全だ。ところがROEは4.2%しかない。時価総額の3割前後に当たるKDDI株(筆頭株主、保有比率12.69%)まで含めた純資産に、利益が見合っていない。
会社は資本効率の改善に動いている。2年で最大5,000億円の自社株買い、KDDI株の縮減、事業の整理だ。それでも投資ファンドのオアシス・マネジメントは改善が足りないと批判し、2026年6月の株主総会では会長の解任案に24%が賛成した。
純現金とKDDI株の含み益(税を引いた分)を足しても、10年後の中立の時価総額は今の7.5割、確率を掛けた本質価値は今を3割ほど下回る。楽観寄りの筋書き(合計37%)が実現して初めて今の値段を超える。今の値段は、改善が計画以上に進むことを前提にしている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、京セラは二つの顔を持つ会社だ。半導体パッケージとファインセラミックには、まねしにくい技術の堀がある。一方、値段を決める力が乏しい電子部品と、縮む市場のソリューションの一部も抱える。
株主の手元に残る利益は、2026年3月期の純利益が1,410億円。自己資本比率72%、純現金2,108億円の会社だから、再投資の負担は小さい。本来は、もっと株主に返せるはずだ。
問題は、資本をうまく配分してきたかである。1990年のAVX買収は長く採算が厳しい。半導体基板の減損は、非中核への資本配分の判断ミスを映す。KDDI株の縮減、自社株買い、事業の整理という今の計画は、正しい方向だ。ただ、会長解任案に24%が賛成した事実は、資本配分への市場の評価が、まだ戻っていないことを示す。
値段はどうか。純現金とKDDI株の含み益を足しても、本質価値は今を3割ほど下回り、中立でも7.5割だ。楽観寄りの筋書きが実現して初めて、今の値段を超える。安全域はない、と筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
京セラの事業は、2021年4月の再編で3つに集約された。
「コアコンポーネント」は、ファインセラミック部品、半導体用のセラミック・有機パッケージ、自動車部品などを担う。2026年3月期は売上6,534億円、営業利益631億円。半導体パッケージは世界首位級で、AIサーバーや車載の運転支援向けが成長を支える。ただ、この区分の有機基板事業は、生成AIへの対応が遅れ、2025年3月期に約430億円の減損を出した。業績の谷の主因である。
「電子部品」は、コンデンサ、コネクタ、水晶部品などで、1990年に買った米AVXの製品群を含む。2026年3月期は売上3,635億円、営業利益73億円で、利益率は2.0%にとどまる。スマートフォン向けの汎用品の価格競争と、AVXの採算の弱さが重い。
「ソリューション」は、工作機械、ディスプレイ、複合機・プリンター、通信機器を担う最大の区分だ。2026年3月期は売上1兆709億円、営業利益1,039億円。複合機と通信機器はペーパーレス化とスマートフォンへの移行で縮む。工作機械は、工場の自動化や電池工場の設備投資に支えられ、比較的安定している。
このほかに、KDDI株の配当収入と財務収支が純利益を押し上げている。2026年3月期は、営業利益1,181億円に対し、純利益が1,410億円に達した。
優良さと弱いところ
京セラの優良さは、半導体パッケージとファインセラミック部品の技術にある。セラミックパッケージは世界首位級で、車載の運転支援向けの有機パッケージも上位だ。1960年代から積み上げた技術は、簡単にはまねできない。
一方、電子部品の区分は営業利益率が2.0%と薄い。コンデンサやコネクタの汎用品では、村田製作所やTDKなどの上位勢と競り、値段を決める力は乏しい。ソリューションの複合機と通信機器も縮む市場だ。堀が効いているのは、事業の一部にとどまる。
最大の弱点は、資本の効率だ。自己資本比率は72%、純現金は2,108億円、KDDI株は時価で時価総額の3割前後。これだけ厚い資産に対し、ROEは2026年3月期で4.2%しかない。半導体基板の減損のように、非中核の事業で資本が目減りした過去もある。
会社はROEの目標(2028年3月期に5%、2031年3月期に8%)を掲げ、自社株買いやKDDI株の縮減に動いている。だが、会長解任案に24%が賛成した事実は、資本効率への不満が根深いことを示す。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体パッケージは、AIサーバーと車載の運転支援向けの需要が構造的な追い風だ。先端のICパッケージ基板の市場は、2025年に110億〜180億ドルで、2030年代前半にかけて年7〜10%ほど伸びる見通しがある。京セラは、AIサーバー向けの採用が遅れて減損を出したが、車載向けでは構造需要を取り込める位置にいる。
コンデンサとコネクタは、村田製作所やサムスン電機などの上位勢の後ろを追う立場だ。中国メーカーの世界シェアがコロナ前の5%ほどから10%ほどに上がり、価格競争の逆風が続く。
工作機械は、自動車や電池工場の設備投資の波に左右される。2024〜2025年は在庫調整で弱かったが、工場の自動化投資が長い目で下支えする。複合機とプリンターは、ペーパーレス化で縮む成熟市場で、キヤノン、リコー、コニカミノルタなどとの再編が進む。通信機器(国内の携帯電話)も縮小が続く。
競争の形は事業ごとに違う。半導体パッケージは京セラ、イビデン、AT&Sなど上位に集中する。コンデンサとコネクタは多極の競争だ。工作機械と複合機は、分散した成熟市場である。この3つの違う競争環境を一社で抱えるのが、京セラの特徴で、同じ領域の他社と大きく異なる。
資本政策と M&A
配当は、2027年3月期からDOE(株主資本配当率)を基準にした累進配当に改める。自社株買いは、2027〜2028年3月期の2年で最大5,000億円を計画している。
筆頭株主として持つKDDI株は、2024年秋に時価で約1.7兆円、保有比率は16%台だった。2024年10月に5年で3分の1を売る方針を出し、2025年2月に2年へ前倒しした。2026年6月にはKDDIの自社株買いに応じ、保有比率は2026年7月に12.69%まで下がった。
M&Aでは、1990年に米AVXを買い、電子部品の中核に据えた。採算は長年厳しい。2026年1月にはパワー半導体を新電元工業に売り、売上2,000億円規模の非中核事業を外に出す方針を進めている。
オアシス・マネジメントは、非中核事業(売上の3割、6,600億円規模)からの撤退や、4年で1兆円の自社株買いなどを求めた。2026年6月の株主総会で、会長の解任と追加の自社株買い3,500億円を提案したが、会社側は反対し、否決された。解任案の賛成率は24.31%だった。
10年の還元は、自己資本配当率を基準にした累進配当と、2年で最大5,000億円の自社株買いの計画に、その後の還元を足した形で、中立は純利益の合計の約95%に置いた。KDDI株の売却代金は還元に足しておらず、売っても余った現金として残る扱いである。
点検済み:中立の営業利益率9.1%は会社予想(28年3月期8.6%)を0.5pp超えるだけで、本社費用も売上の伸びに合わせて増やしてある。数字は据え置く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
半導体パッケージは、AIサーバーと車載の運転支援向けの需要が追い風だ。先端のICパッケージ基板の市場は、2030年代前半にかけて年7〜10%ほど伸びる見通しがある。2025年3月期に減損を出した有機基板も、AIサーバー向けの採用が軌道に乗れば、一転して成長の柱になりうる。
パワー半導体の売却に続き、売上2,000億円規模の非中核事業の整理が進めば、ソリューションの利益率も上がる。
資本政策も動いている。2027〜2028年3月期に最大5,000億円の自社株買い、KDDI株のさらなる縮減がある。その原資を自社株買いに回せば、ROEは会社目標の5%、8%、さらに10%以上へ向けて加速する。累進配当への変更も、還元の持続性を高める。
オアシスの提言は、外から改革を後押しする。会長解任案の賛成率が24%まで上がったことは、改革の圧力が今後も続く証拠だ。電動化とデータセンターの需要を取り込めれば、ROEは資本コストを明確に超え、純現金とKDDI株を含めた価値は、今の値段に近づく余地がある。
慎重な見方
電子部品の区分は営業利益率が2.0%と薄い。コンデンサやコネクタの汎用品では、中国メーカーの世界シェアが5%ほどから10%ほどに上がり、価格競争が続く。ソリューションの複合機と通信機器は縮む市場で、工作機械も設備投資の波に振られる。
半導体の有機基板は、2025年3月期に約430億円の減損を出した前例がある。AIサーバー向けの採用がまた遅れれば、同じ損失が繰り返されかねない。1990年のAVX買収も、長く期待どおりの成果を出していない。
KDDI株の縮減と5,000億円の自社株買いという今の計画は、オアシスが求める4年で1兆円の自社株買いや、非中核事業(6,600億円規模)からの撤退には遠い。会長解任案に24%が賛成した事実は、資本効率への不満が根深いことを示す。
ROEは4.2%で、資本コスト7.5%に届かない。純現金とKDDI株の含み益を足して測っても、式の上限は今の時価総額を下回る。10年後の中立でも、本業が少し良くなる程度なら、KDDI株を売るほど配当収入も減り、時価総額は今の7.5割にとどまる。
どちらに重みを置いたか
半導体パッケージの構造的な需要と、KDDI株や自社株買いによるROE改善の方向には説得力がある。だが、電子部品とソリューションの逆風、過去のM&Aの実績、オアシスの提言に対する株主の根深い不満を考えると、慎重な見方の論拠も重い。
確率は中立にいちばん厚く置き、半導体パッケージの需要とROE改善計画の実行を評価して、やや楽観にも配分した。純現金とKDDI株の含み益を足しても、10年後の中立は今の7.5割で、確率を掛けた本質価値は今を3割ほど下回る。今の値段に安全域があるとは言い切れない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,638 円5.92 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,480 円1.89 兆円)。 今の値に割り戻すと 3,281 円4.19 兆円、今との差 −6.7%、 期待の年率 +5.7%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 9,406 円12.02 兆円 | 2,348 円3.00 兆円 | +234.1% | +12.8% | 1,411 円1.80 兆円 |
| やや楽観 | 25% | 6,293 円8.04 兆円 | 1,879 円2.40 兆円 | +132.3% | +8.8% | 2,043 円2.61 兆円 |
| 中立 | 34% | 4,075 円5.21 兆円 | 1,487 円1.90 兆円 | +58.1% | +4.7% | 1,891 円2.42 兆円 |
| やや悲観 | 22% | 2,243 円2.87 兆円 | 900 円1.15 兆円 | −10.6% | −1.1% | 692 円8,835 億円 |
| 悲観 | 7% | 810 円1.04 兆円 | 352 円4,500 億円 | −67.0% | −10.5% | 81 円1,040 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,638 円5.92 兆円 | 1,480 円1.89 兆円 | +73.9% | +5.7% | 6,117 円7.82 兆円 |
今の株価時価総額 3,518 円4.49 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 12% 半導体パッケージ・車載電動化が会社の主軸に定着 利益 5,583 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 9,406 円12.02 兆円
半導体有機基板事業はAIサーバー向け採用で主要サプライヤーの地位を確立し、車載ADAS向けセラミック・有機パッケージの需要も構造的に拡大する。コアコンポーネントの利益率は20%台に達し、会社の主軸として定着する。電子部品(AVX含む)も車載・データセンター向け高信頼性品へのシフトが進み採算が改善する。ソリューション区分はドキュメントソリューション・通信機器の縮小を工作機械・FA需要が相殺する。この10年でKDDI株はほぼ売却を終え、その資金とDOE基準の累進配当・継続的な自社株買いでROEは会社が将来的に掲げる10%以上の水準に達し、オアシス・マネジメント等が求めた資本効率の改善が実現する10年になる。
- コアコンポーネント(ファインセラミック部品・半導体パッケージ等):数量 12.2(半導体パッケージ・ファインセラミック部品・自動車部品等の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 2,106(1個あたり平均単価(円))→ 売上 25,582 億円・営業利益 5,244 億円。AIサーバー向け主要サプライヤー化(利益率20.5%)
- 電子部品(コンデンサ・コネクタ・AVX等):数量 370(コンデンサ・コネクタ・水晶部品等の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 25(1個あたり平均単価(円))→ 売上 9,280 億円・営業利益 974 億円。車載・データセンター比率上昇で採算改善
- ソリューション(工作機械・複合機・通信機器等):数量 162(工作機械・複合機・通信機器等の年間販売台数(万台、推定))× 価格 116(1台あたり平均単価(万円))→ 売上 18,794 億円・営業利益 2,105 億円。FA・工作機械がドキュメント縮小を相殺
倍率:事業の純利益 5,408 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)12,500 億円。全体の PER 20.53 倍、時価総額 123,526 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 18.55 倍・時価総額 105,125 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:半導体有機基板事業がAIサーバー向けの主要サプライヤーとして10年にわたり定着し、電子部品・ソリューションの両方も改善を続ける必要があり、連続的な上振れの確度は高くない。
やや楽観 25% 構造需要と資本効率改善が着実に進む 利益 3,867 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 6,293 円8.04 兆円
半導体有機基板事業はAIサーバー向け採用が着実に拡大し、2025年3月期のような大きな損失は再発しない。コアコンポーネントは車載ADAS向けパッケージの採用拡大で利益率が17%台まで改善する。電子部品(AVX含む)は中国勢との価格競争が続くものの車載・データセンター比率の上昇で採算は緩やかに改善する。ソリューション区分はドキュメントソリューション・通信機器の縮小が一服し、工作機械の設備投資需要が下支えする。KDDI株の縮減と自社株買いが継続し、2031年3月期のROE目標8%を上回る水準まで資本効率が改善する10年になる。
- コアコンポーネント(ファインセラミック部品・半導体パッケージ等):数量 10.4(半導体パッケージ・ファインセラミック部品・自動車部品等の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 2,033(1個あたり平均単価(円))→ 売上 21,041 億円・営業利益 3,682 億円。着実な利益率改善(17.5%)
- 電子部品(コンデンサ・コネクタ・AVX等):数量 310(コンデンサ・コネクタ・水晶部品等の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 24(1個あたり平均単価(円))→ 売上 7,437 億円・営業利益 610 億円。車載・データセンター比率上昇
- ソリューション(工作機械・複合機・通信機器等):数量 144(工作機械・複合機・通信機器等の年間販売台数(万台、推定))× 価格 112(1台あたり平均単価(万円))→ 売上 16,063 億円・営業利益 1,655 億円。ドキュメント縮小が一服、工作機械が下支え
倍率:事業の純利益 3,692 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)12,500 億円。全体の PER 18.79 倍、時価総額 81,873 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 16.48 倍・時価総額 65,350 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:半導体パッケージの構造需要と資本効率改善策が着実に進むという、業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 34% 中立:3事業の質の差が残ったまま成熟する 利益 2,572 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 4,075 円5.21 兆円
10年後もコアコンポーネントの半導体パッケージ・ファインセラミック部品は京セラの中核であり続け、特別な超過成長は一巡し「堀のある事業と堀の薄い事業が併存する会社」としての評価に収まる。電子部品(AVX含む)は中国勢との価格競争が続き採算改善は小幅にとどまる。ソリューション区分はドキュメントソリューション・通信機器の構造的な縮小が工作機械の成長で部分的に相殺される。KDDI株の縮減・自社株買いは継続するが、2031年3月期のROE目標8%には届かず、将来的な10%以上の目標はさらに先になる、特別な高倍率は付かない10年になる。
- コアコンポーネント(ファインセラミック部品・半導体パッケージ等):数量 8.8(半導体パッケージ・ファインセラミック部品・自動車部品等の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 1,946(1個あたり平均単価(円))→ 売上 17,074 億円・営業利益 2,561 億円。市場拡大に沿った成長(利益率15.0%)
- 電子部品(コンデンサ・コネクタ・AVX等):数量 260(コンデンサ・コネクタ・水晶部品等の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 23(1個あたり平均単価(円))→ 売上 5,907 億円・営業利益 366 億円。中国勢との価格競争が続く
- ソリューション(工作機械・複合機・通信機器等):数量 126(工作機械・複合機・通信機器等の年間販売台数(万台、推定))× 価格 103(1台あたり平均単価(万円))→ 売上 12,931 億円・営業利益 1,229 億円。ドキュメント縮小を工作機械が部分的に相殺(利益率9.5%)(ドキュメント・通信機器の価格競争で単価上昇は物価よりやや控えめ)
倍率:事業の純利益 2,397 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)12,500 億円。全体の PER 16.21 倍、時価総額 51,355 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 13.73 倍・時価総額 37,016 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:業界見通しの中心値と、資本コストと事業ROEから出した正当化PERを組み合わせた中心シナリオ。
やや悲観 22% 中国勢の侵食とノンコア事業の縮小が長引く 利益 1,328 億円 · PER 9.2 倍 · 株価時価総額 2,243 円2.87 兆円
中国メーカーの技術力向上がコネクタ・コンデンサの中位グレードにまで及び、電子部品(AVX含む)の採算改善がほとんど進まない。半導体有機基板事業もAIサーバー向け採用の広がりが会社の期待より鈍り、コアコンポーネントの利益率改善も限定的になる。ソリューション区分はドキュメントソリューション・通信機器の縮小が長期化し、工作機械の需要も伸び悩む。それでも事業自体が崩れるわけではなく、自己資本比率71.9%・純現金・残余のKDDI株を背景に配当は維持しつつ、成長期待が後退した10年になる。半導体有機基板事業も大きな追加投資を避けて守りの経営に転じ、収益の柱としての期待は後退する。
- コアコンポーネント(ファインセラミック部品・半導体パッケージ等):数量 7.0(半導体パッケージ・ファインセラミック部品・自動車部品等の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 1,772(1個あたり平均単価(円))→ 売上 12,357 億円・営業利益 1,384 億円。有機基板・パッケージの改善が限定的(利益率11.2%)
- 電子部品(コンデンサ・コネクタ・AVX等):数量 210(コンデンサ・コネクタ・水晶部品等の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 20(1個あたり平均単価(円))→ 売上 4,198 億円・営業利益 160 億円。中国勢の侵食続く
- ソリューション(工作機械・複合機・通信機器等):数量 108(工作機械・複合機・通信機器等の年間販売台数(万台、推定))× 価格 94(1台あたり平均単価(万円))→ 売上 10,120 億円・営業利益 830 億円。ドキュメント・通信機器の縮小長期化(利益率8.2%)
倍率:ROE 4.6%・資本コスト 7.5% から正当化 PER 12.5 倍(ROE が k 以下なので 1÷k)を計算し、その 80% をやや悲観の倍率に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.22 倍・時価総額 20,409 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:中国・韓国勢の技術力向上と、ドキュメントソリューション・通信機器の縮小長期化が重なる想定。業界見通しのうち弱めのレンジに相当する。
悲観 7% 構造的に堀を失い優良企業ではなくなる 利益 129 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 810 円1.04 兆円
世界的な金融収縮と構造的な需要後退が重なり、京セラは半導体パッケージ・ファインセラミック部品でも中国・韓国メーカーにシェアを恒常的に奪われる。電子部品(AVX含む)はほぼ採算が消え、ソリューション区分もドキュメントソリューション・通信機器・工作機械のいずれも縮小が続く。半導体有機基板事業は複数回の減損を経てなお採算化せず、一部事業からの縮小・撤退も避けられない。KDDI株・純現金を取り崩して配当を維持するが(資産の売却、株数は書かない)、優良企業としての評価が市場から外れる10年になる。自己資本比率71.9%という財務基盤があるため財務的に行き詰まる心配は小さい。
- コアコンポーネント(ファインセラミック部品・半導体パッケージ等):数量 4.3(半導体パッケージ・ファインセラミック部品・自動車部品等の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 1,234(1個あたり平均単価(円))→ 売上 5,277 億円・営業利益 253 億円。先端品でもシェア流出(利益率4.8%)
- 電子部品(コンデンサ・コネクタ・AVX等):数量 130(コンデンサ・コネクタ・水晶部品等の年間出荷個数(億個、推定))× 価格 14(1個あたり平均単価(円))→ 売上 1,772 億円・営業利益 7 億円。採算ほぼ消失
- ソリューション(工作機械・複合機・通信機器等):数量 72.0(工作機械・複合機・通信機器等の年間販売台数(万台、推定))× 価格 71(1台あたり平均単価(万円))→ 売上 5,140 億円・営業利益 247 億円。工作機械・複合機・通信機器とも縮小続く
倍率:悲観は事業の利益がほぼ無く稼ぐ力では測れないので、床は純現金+売れる KDDI 株の税後 10,400 億円(内訳は floor_assets_why)。今の自己資本に対する比として置いた。
確率:半導体パッケージ・ファインセラミック部品でも中国・韓国勢にシェアを恒常的に奪われ、電子部品・ソリューションの両方が同時に悪化する複合シナリオ。技術者流出・顧客基盤の喪失は一度始まると10年で後退しやすいため低頻度だが無視できない確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コアコンポーネント(ファインセラミック部品・半導体パッケージ等)
ファインセラミック部品、半導体用セラミック・有機パッケージ、自動車部品、光学・医療関連、宝飾品等を担う。半導体パッケージは世界シェアNo.1級で、AIサーバー・車載ADAS向けの高機能パッケージが成長を支える。
| 数量半導体パッケージ・ファインセラミック部品・自動車部品等の年間出荷個数(億個、推定) | 価格1個あたり平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.5 | 1,452 | 6,534 | 631 |
| 10 年後 中立 | 8.8 | 1,946 | 17,074 | 2,561 |
取り方:半導体用セラミック・有機パッケージ、ファインセラミック部品、自動車部品、光学・医療関連、宝飾品等を合わせて年間出荷個数を約4.5億個と推定し、セグメント売上6,534億円から1個あたりの平均単価を逆算した。半導体パッケージは高価格帯、ファインセラミック部品・自動車部品は低価格帯のため、この単価は加重平均である。数量は実物の出荷個数で、名目の市場の伸びは使っていない(伸びの理由は先端半導体向け部品の需要増。物価は単価に別に入れる)。
電子部品(コンデンサ・コネクタ・AVX等)
コンデンサ・コネクタ・水晶部品・パワー半導体等を担う。1990年に買収した米AVXコーポレーション(2019年完全子会社化)の製品群を含む。
| 数量コンデンサ・コネクタ・水晶部品等の年間出荷個数(億個、推定) | 価格1個あたり平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 18 | 3,635 | 73 |
| 10 年後 中立 | 260 | 23 | 5,907 | 366 |
取り方:コンデンサ・コネクタ・水晶部品・パワー半導体等(AVX含む)を合わせて年間出荷個数を約200億個と推定し、セグメント売上3,635億円から1個あたりの平均単価を逆算した。村田製作所のMLCC事業と同様の小型・汎用品中心の加重平均単価である。
ソリューション(工作機械・複合機・通信機器等)
工作機械、ディスプレイ、複合機・プリンター(京セラドキュメントソリューションズ)、通信機器(国内向け携帯電話等)を担う最大区分。
| 数量工作機械・複合機・通信機器等の年間販売台数(万台、推定) | 価格1台あたり平均単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 89 | 10,709 | 1,039 |
| 10 年後 中立 | 126 | 103 | 12,931 | 1,229 |
取り方:工作機械・ディスプレイ・複合機(KDC)・通信機器(国内向け携帯電話等)を合わせた年間販売台数を約120万台と推定し、セグメント売上1兆709億円から1台あたり平均単価を約89万円と逆算した。国内向け通信機器は数量が多いが単価は低く、工作機械・複合機は数量が少ないが単価が高いため、この単価は加重平均である。ドキュメントソリューション・通信機器は競争・ペーパーレス化で価格が物価より上がりにくく、工作機械は物価並みに上がるため、セグメント全体の中立の単価上昇は物価(10年1.34倍)よりやや控えめな数量×単価の組み合わせで置いた。
リスクと懸念
半導体有機基板事業の再失速
半導体有機基板事業は2025年3月期に生成AI市場の急拡大への対応遅れから約430億円の減損を計上した。AIサーバー向け採用の広がりが再び会社の想定より遅れれば、同様の追加減損・損失が繰り返される可能性がある。
中国メーカーの価格競争
コンデンサ・コネクタの汎用品セグメントで、中国メーカーの世界シェアがコロナ前5%程度から直近10%程度まで拡大している。補助金を背景にした低価格攻勢が続けば、電子部品(AVX含む)の薄い採算がさらに悪化するリスクがある。
ドキュメントソリューション・通信機器の構造的縮小
複合機・プリンター(京セラドキュメントソリューションズ)はペーパーレス化で、通信機器(国内向け携帯電話等)はスマホシフトで、いずれも構造的に市場が縮小している。ソリューション区分全体の利益率を押し下げる構造要因が長期化する可能性がある。
ガバナンス・資本配分への株主の不信
投資ファンド・オアシス・マネジメントが2025〜2026年に求めた会長解任・大規模な自社株買い・非中核事業の撤退は株主総会で否決されたが、会長解任提案の賛成率は24.31%に達した。資本配分への株主の不信がなお根深く、今後も改革圧力や株主提案が続く可能性がある。
KDDI株売却・自社株買いの実行リスク
KDDI株の縮減(2026年7月時点で保有比率12.69%)と2027〜2028年3月期の自社株買い最大5,000億円は資本効率改善の柱だが、KDDI株価の下落時に売却が計画通り進まない、あるいは自社株買いが計画より小規模にとどまれば、ROE改善のペースが会社目標(2028年3月期5%・2031年3月期8%)より遅れる可能性がある。
為替(ドル円)感応度
半導体パッケージ・電子部品(AVX含む)は海外売上比率が高く、円高に転じればAIサーバー・車載向けの好調な需要があっても円換算の業績は圧迫される。ドル円は前提で150円に固定しているため、実際の為替変動は筋書きの外側のリスクとして残る。
工作機械・半導体投資サイクルの循環性
工作機械はEV電池工場・FA投資の設備投資循環に左右され、AIサーバー向け半導体パッケージも半導体業界特有の投資サイクルの影響を受ける。過去にも強気の増産投資の直後に需要が急減し、稼働率と採算が同時に悪化する局面が繰り返されてきた。
今後の分かれ目
- 半導体有機基板事業がAIサーバー向け採用で安定的に収益化したら
- コアコンポーネントの利益率前提を上方修正し、楽観・やや楽観側の確率を上げる。
- 半導体有機基板事業で新たな減損・損失が発生したら
- やや悲観・悲観側の確率を上げ、コアコンポーネントの利益率前提を下方修正する。
- KDDI株の縮減・自社株買いが会社計画を上回るペースで進んだら
- ROE改善の前提を上方修正し、楽観側の確率を上げる。
- オアシス・マネジメント等の圧力で追加的な大規模自社株買い・非中核事業撤退が実現したら
- 資本効率の前提を上方修正し、価値を見直す。
- 中国メーカーがコネクタ・コンデンサで中位〜先端グレードにまでシェアを広げたら
- 電子部品の価格前提を下方修正し、やや悲観側の確率を上げる。
- ドキュメントソリューション・通信機器事業の売却・撤退が実現したら
- ソリューション区分の利益率前提を上方修正する。
- AIサーバー向け半導体パッケージ需要が業界見通し(先端ICパッケージ基板市場CAGR7〜10%)を上回って拡大したら
- コアコンポーネントの数量前提を上方修正し、楽観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 半導体有機基板事業の収益化進捗(セグメント損益の推移)
- KDDI株の保有比率の推移(2026年7月時点12.69%からの変化)
- 2027〜2028年3月期の自社株買い(最大5,000億円)の実施状況
- ROE目標(2028年3月期5.0%・2031年3月期8.0%)の達成度
- ノンコア事業売却の進捗(2026年3月期までに売上2,000億円規模の方針)
- 中国メーカーのコネクタ・コンデンサ世界シェアの変化
- オアシス・マネジメント等からの株主提案・ガバナンス圧力の動向
倍率と資本コストの決め方
コアコンポーネント・電子部品・ソリューションの3区分を出荷個数(実質)×単価(名目)で積み上げ、事業の純利益に正当化PER((1−g÷RONIC)÷(k−g)、RONIC=k+残る割合×(事業ROE−k))を当てた。資本コストは基本7.5%にquality+0.5%(循環)の8.0%。倍率は上限の8.5〜9割(悲観は稼ぐ力の範囲)に置いた。純現金2,108億円とKDDI株の含み(税引き後概算、合計12,500億円)は帳簿の値に、持ち合いで戻りにくいことから半分の戻り方を掛けて足した。悲観は本業の利益がほぼ無いため、売れる資産(純現金とKDDI株の税後)の床で置いた。今の株価やトレーリングPER(32.9倍)には寄せていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +0.5%(循環)を足した 8.0%。資本効率の低さ・株主の不満・M&A の実行力は k に足さず、筋書きの事業 ROE と確率で表した。赤字・リストラ中ではないので extra は 0。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。
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