結論
神島化学工業は、海水からマグネシウム化合物を作る化学メーカーだ。窯業系の外装建材も柱に持つ。筆者の結論は「やや割安」だ。ただ、安全域は厚くない。
稼ぐ力は戻った。2026年4月期の営業利益は27億円で、前の期の1.5倍になった。ただし退職給付の戻入益2.6億円を含む。除くと24億円で、価格転嫁と高級軒天の拡販が効いた。
懸念は二つある。一つ目は、売上の55%を占める建材が、人口減で縮む戸建住宅に頼ることだ。二つ目は、約70億円の設備投資で借入が重いことだ。今期の業績予想は、中東情勢で原燃料が読めず、会社も出していない。
中立の筋書きでは、営業利益は10年後に35億円弱。物価の分を引けば、今の水準を少し上回る程度にとどまる。マグネシウムの伸びが、建材の縮みを埋める形だ。
筆者がいちばん気にしているのは、投資が稼働率を上げて利益になるかだ。上がれば上の筋書き、上がらなければ減価償却と利払いが利益を食う。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、素材メーカーは「設備に縛られ、市況に利益を左右される」事業だ。神島は、そこにセラミックスの技術と、マグネシウムの品質という芯がある。ただし堀は、建材には深くない。
株主が受け取れる利益は、純利益の6割ほどだと筆者は見る。減価償却と同じ規模の投資が毎年要り、成長の投資も重ねている。利益が現金になりにくい構造だ。
経営の資本配分は、堅いが攻めてもいる。無理な買収はしない。一方、70億円の大型投資は規模のわりに重く、稼働率を上げられなければ裏目に出る。
安全域は、うすい。今期の純利益で見たPERは8倍ほどだが、戻入益を除くと9倍近くになる。住宅が縮む中で、利益が今の水準を保てるかが見えない。悲観の筋書きでは、設備を売っても借入を返すとほとんど残らない。筆者は、投資が稼働に変わり、借入が減り始めるまで、割安とは見ない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は二つある。窯業系建材が売上の55%、化成品が45%だ。化成品の中身は、マグネシウム化合物が39%、セラミックスが6%になる。
建材は、戸建住宅の軒天と外壁が中心だ。軒天は屋根の下の外装材で、高意匠の「アルテザート」が伸びている。ビルの外壁に使う押出成形セメント板「ラムダ」や、ガラスのカーテンウォールの裏に張る耐火パネルも手がける。住宅向けが85%で、非住宅が15%だ。
マグネシウムは、酸化・水酸化・炭酸マグネシウムを作る。原料は海水で、安く安定して作れる。使い道は医薬品やサプリメント、電気ケーブルの難燃剤、電磁鋼板、ゴムの補強剤まで広い。売上の57%は海外向けだ。
セラミックスは、レーザー用の透明なYAGセラミックスや、極低温冷凍機の蓄冷材、LEDの蛍光体を作る。2025年に学会の産業賞を受けた。規模は小さいが、会社の技術力を示す事業だ。
従業員は約680人で、工場は香川県と茨城県にある。連結子会社はなく、単体の決算で見る会社だ。創業は1917年で、肥料の製造から始まり、マグネシウムと建材へ広げてきた。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば「技術のある中堅素材メーカー」だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、事業ごとにまだらだ。
強みは三つある。一つ目は、マグネシウムの品質と原料の安さだ。海水法で安く作れ、医薬・食品向けの品質管理で顧客の信頼を得ている。二つ目は、建材で意匠の高い軒天や外壁を持つことだ。住宅着工が1割以上減った2026年4月期も、高級軒天は13%伸びた。三つ目は、セラミックスの技術だ。透明で大型のセラミックスを作れる会社は、世界でも少ない。
弱みも三つある。一つ目は、建材の量が人口減で細ることだ。二つ目は、原燃料と電気代の波だ。2026年4月期は価格転嫁で利益が戻ったが、再び上がれば利益が削られる。三つ目は、資本の効率だ。ROEは10%前後で、資本コストと大差がない。
経営は慎重で、配当性向は2割台と低い。利益の大半を設備に回す形で、投資が稼ぎに変わるかが問われる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建材は、戸建住宅の着工に左右される。新設住宅着工は2025年度に71万戸と、前の年より13%減った。法改正前の駆け込みの反動が重なったが、世帯数が減る日本では、長い目で見ても細る。戸建は32万戸で、10年先にはもう1〜2割減るだろう。
競合は、窯業系サイディングの大手であるニチハやケイミューだ。外壁は大手が強く、神島は軒天や特注色で差をつけている。ビル向けの押出成形セメント板では、数社が分け合っている。
マグネシウムは、国内に宇部マテリアルズやタテホ化学工業、協和化学工業などがいる。医薬・サプリ向けは品質の壁が高く、値下がりしにくい。難燃剤は中国勢が安値で攻めてくる分野で、データセンターや電気自動車の電線向けが伸びる一方、競争は厳しい。
セラミックスは、レーザー核融合や宇宙のデブリ除去などの研究が世界で進むが、需要は小さな研究プロジェクトが中心だ。会社も「踊り場」と述べている。
10年先は、建材が実質で縮み、マグネシウムが海外と高付加価値で伸びると筆者は見る。全体で数量は横ばいから微増だ。追い風は海外の健康志向と電力インフラの更新、向かい風は住宅の縮小と原燃料の高止まりになる。
資本政策と M&A
還元の方針は、利益水準と配当性向、設備投資の資金を総合して決める形だ。配当性向は2割台前半から後半で、2026年4月期は24%だった。自社株買いはほぼない。
今期の配当と業績予想は、中東情勢による原燃料の不確実さを理由に、未定としている。中期経営計画も、数字を伏せたローリング版だ。
投資は重い。決算資料は、マグネシウムを中心にした約70億円の大型投資を挙げる。排ガスのCO2を建材に固定化する設備にも約30億円を投じ、2026年8月に完了する予定で、建設仮勘定はすでに21億円ある。借入は91億円、現金は12億円で、純負債は自己資本の半分ほどだ。減価償却は年20億円ほどで、投資は償却を上回る。
買収や持ち合いの整理は目立たない。大株主は資産運用会社や金融機関で、親会社や創業家の支配はない。このため、買収の対象になる可能性は常にある。ただ、2026年10月時点で、公開買付けの発表はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益の質が変わった。2026年4月期は、価格転嫁と高付加価値品の拡販で、営業利益が戻入益を除いても35%増えた。高級軒天は戸建着工が減る中で13%伸び、建材の利益は6割増えた。
マグネシウムは海外でも伸びている。海外売上は57%を占め、サプリ向けの酸化マグネシウムが増収を支えた。海水法の安い原料と医薬品の品質管理は、他社がまねしにくい。約70億円の設備投資は、旺盛な需要に応える先行投資だ。
セラミックスも将来性がある。レーザー核融合や宇宙デブリ除去は、世界が実験を進めており、大型の透明セラミックスを作れる会社は少ない。
CO2を固定化する建材ZESTAは、2026年10月に発売する。ゼネコンやハウスメーカーが排出量の開示を迫られる中で、差になりうる。PBRは1倍台で、純利益で見たPERは8倍ほど。売上が物価の分だけ増えれば、10年後の利益は今を大きく上回る。財務も、自己資本比率が42%から48%へ上がり、借入の重さは和らぎつつある。
慎重な見方
今の利益は、物価転嫁と戻入益で膨らんでいる。営業利益率は過去12年で3%台から10%近くまで振れ、2026年4月期は2番目に高い。戻入益を除いても8.6%で、過去の平均を大きく上回る。
建材の土台は縮んでいる。新設住宅着工は2025年度に13%減り、戸建も8%減った。世帯数が減る日本では、これは一時の反動でなく流れだ。外壁は大手が強く、神島は軒天で差をつけているにすぎない。
投資も重い。約70億円の設備投資は、年20億円の償却に、さらに上乗せされる。借入は91億円、現金は12億円しかなく、金利が上がれば利払いが利益を削る。会社は今期の業績予想を出していない。原燃料と中東情勢の読めなさが、利益の振れを示している。
マグネシウムの難燃剤は、中国勢の安値に押される分野だ。セラミックスの研究需要も「踊り場」にある。10年後に、今の利益率を保てる根拠は薄い。経営者が交代したばかりで、投資の判断が正しいかも、まだ結果が出ていない。
どちらに重みを置いたか
わずかに慎重な見方が強い。マグネシウムの品質と海外の伸びは確かな強みだが、建材の縮みと投資の重さが、10年の利益を押し下げる。それでも値段が利益に対して低く、結果は今の時価総額を少し上回る。確率は、中立に4割弱を置き、やや悲観を2割台半ばまで厚くした。悲観を1割に置いたのは、過去に赤字の年があり、投資が重い今は構造的に負ける道を無視できないからだ。強気の見方が挙げる今期の増益は、戻入益と転嫁の一巡で、10年後を保証しない。中立の営業利益率は7〜8%台に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 3,138 円286 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 551 円50 億円)。 今の値に割り戻すと 1,906 円173 億円、今との差 +23.9%、 期待の年率 +9.1%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,764 円616 億円 | 824 円75 億円 | +393.4% | +17.3% | 607 円55 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,751 円432 億円 | 681 円62 億円 | +253.2% | +13.5% | 1,087 円99 億円 |
| 中立 | 38% | 3,673 円334 億円 | 604 円55 億円 | +178.1% | +10.8% | 1,626 円148 億円 |
| やや悲観 | 24% | 935 円85 億円 | 440 円40 億円 | −10.6% | −1.1% | 330 円30 億円 |
| 悲観 | 10% | 264 円24 億円 | 132 円12 億円 | −74.3% | −12.7% | 40 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,138 円286 億円 | 551 円50 億円 | +139.8% | +9.1% | 3,689 円336 億円 |
今の株価時価総額 1,538 円140 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% マグネシウムが医薬・電力向けに伸び、建材も高付加価値で守る 利益 38 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 6,764 円616 億円
マグネシウムの出荷は実質で7割増える。医薬・サプリ向けの酸化マグネシウムと、データセンターや電力機器向けの難燃剤・熱伝導材が柱になる。高付加価値品の比率が上がり、利益率は18%を保つ。セラミックスは大出力レーザーの量産が始まり、売上が3倍近くに伸びる。
建材は戸建の着工が減っても、高級軒天と非住宅の耐火材が穴を埋め、出荷は今と同じ水準を守る。CO2固定化建材も上乗せになる。営業利益は55億円ほど、純利益は38億円に近づく。配当性向を3割へ引き上げても自己資本は積み上がるが、稼ぐ力が上回り、ROEは10%台に乗る。小さな素材メーカーが技術で勝った姿だ。
- 窯業系建材(軒天・外壁・耐火パネル):数量 32.3(戸建住宅着工に換算した出荷規模(万戸相当、実質))× 価格 6.37(1戸相当あたり売上(万円・名目))→ 売上 206 億円・営業利益 21 億円。32.3 × 6.37、利益率 10.0%
- マグネシウム化合物:数量 9.2(出荷量(万トン、実質))× 価格 27(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 247 億円・営業利益 44 億円。9.2 × 26.9、利益率 18.0%
- セラミックス(レーザー・蓄冷材・蛍光体):数量 19.6(出荷量(万個相当、推定))× 価格 2.68(1個相当あたり売上(万円・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 7 億円。19.6 × 2.68、利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.2 倍、時価総額 616 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大型投資が当たってマグネシウムの出荷が7割増え、レーザー核融合などでセラミックスも立ち上がる筋書き。両方が同時に当たる必要があり、1割未満に置く。
やや楽観 20% マグネシウムが伸び、建材は小幅な減り 利益 29 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 4,751 円432 億円
マグネシウムの出荷は実質で45%増える。海水法の安い原料と、医薬・食品向けの品質管理が競争力になり、海外の売上比率はさらに上がる。利益率は17%ほどで落ち着く。セラミックスは蛍光体の落ち込みが止まり、レーザー向けが7割増える。
建材は戸建の着工減に押されて、出荷は実質で5%減る。高級軒天は伸びるが、全体では横ばいに近い。営業利益は42億円、純利益は29億円ほど。配当性向は25%台で、自己資本は300億円を超える。ROEは9%台で資本コストを少し超える。今の水準を物価の分だけ底上げした、堅実な成長の姿になる。
- 窯業系建材(軒天・外壁・耐火パネル):数量 30.7(戸建住宅着工に換算した出荷規模(万戸相当、実質))× 価格 6.37(1戸相当あたり売上(万円・名目))→ 売上 196 億円・営業利益 18 億円。30.7 × 6.37、利益率 9.2%
- マグネシウム化合物:数量 7.8(出荷量(万トン、実質))× 価格 27(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 211 億円・営業利益 36 億円。7.83 × 26.9、利益率 17.0%
- セラミックス(レーザー・蓄冷材・蛍光体):数量 15.1(出荷量(万個相当、推定))× 価格 2.68(1個相当あたり売上(万円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 5 億円。15.1 × 2.68、利益率 12.5%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.91 倍、時価総額 432 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:設備投資が計画どおり効いて高付加価値品の比率が上がる姿。医薬・サプリは海外の需要も追い風だが、建材の量の減りは避けられず、やや厚めの2割に置く。
中立 38% マグネシウムは伸び、建材は縮み、利益は物価並みに増える 利益 24 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 3,673 円334 億円
マグネシウムの出荷は実質で3割増える。設備投資の効果で、医薬・サプリ向けや海外向けが伸びる。利益率は今の2割弱から16%台へ下がる。電気代や原料が物価以上に上がり、転嫁が追いつかないと見るからだ。セラミックスは実質で4割増えるが、規模は小さい。
建材の出荷は実質で1割減る。戸建の着工は減り続けるが、高級軒天と非住宅が支える。利益率は8%台に落ち着く。本社費は物価で増える。営業利益は35億円弱、純利益は23億円ほど。配当性向は2割台半ばで、自己資本は300億円に近づき、ROEは8%を割る。商売は堅いが、資本の稼ぎは伸びない。
- 窯業系建材(軒天・外壁・耐火パネル):数量 29.1(戸建住宅着工に換算した出荷規模(万戸相当、実質))× 価格 6.37(1戸相当あたり売上(万円・名目))→ 売上 185 億円・営業利益 16 億円。29.1 × 6.37、利益率 8.5%
- マグネシウム化合物:数量 7.0(出荷量(万トン、実質))× 価格 27(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 188 億円・営業利益 31 億円。7.0 × 26.9、利益率 16.5%
- セラミックス(レーザー・蓄冷材・蛍光体):数量 12.5(出荷量(万個相当、推定))× 価格 2.68(1個相当あたり売上(万円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 4 億円。12.5 × 2.68、利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.93 倍、時価総額 334 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:住宅が減る建材と、増やす余地のあるマグネシウムが相殺し、価格は物価並みに上がる姿。原燃料の上昇を全部は転嫁できないと見るので、いちばん厚く置く。
やや悲観 24% 住宅が細り、中国勢の安値で利益率が落ちる 利益 9 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 935 円85 億円
戸建の着工が細り、建材の出荷は実質で2割以上減る。ハウスメーカーは大手の外壁に仕様を集約し、軒天の差別化も効きにくくなる。値上げは通りにくくなり、利益率は6%ほどに落ちる。マグネシウムは量を守るが、難燃剤などの汎用品は中国勢の安値に押され、利益率は12%台まで下がる。
設備投資の償却は残り、稼働が上がらない。営業利益は14億円、純利益は9億円前後。配当は守るが性向は上がる。自己資本は230億円台にとどまり、ROEは4%を割る。2019年4月期や2020年4月期の利益水準に近いが、借入が重いぶん打たれ方は強い。投資の回収は遅れ、新しい投資にも慎重にならざるをえない。
- 窯業系建材(軒天・外壁・耐火パネル):数量 25.2(戸建住宅着工に換算した出荷規模(万戸相当、実質))× 価格 6.37(1戸相当あたり売上(万円・名目))→ 売上 161 億円・営業利益 10 億円。25.2 × 6.37、利益率 6.0%
- マグネシウム化合物:数量 5.7(出荷量(万トン、実質))× 価格 27(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 153 億円・営業利益 19 億円。5.67 × 26.9、利益率 12.5%
- セラミックス(レーザー・蓄冷材・蛍光体):数量 8.9(出荷量(万個相当、推定))× 価格 2.68(1個相当あたり売上(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。8.9 × 2.68、利益率 8.0%
倍率:ROE 約 4%。ROE が k 7.5% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。需要と価格が弱い局面で、上限の 7 割弱の 8.5 倍に置いた。
確率:戸建の着工が長く冷え、マグネシウムでも中国勢の安値に押される姿。原燃料が高い局面が続くことも考え、中立に近い2割台半ばで置く。
悲観 10% 構造的に負け、建材も化成品も採算を失う 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 264 円24 億円
戸建の着工が長く冷え、建材の出荷は実質で3分の2まで減る。大手の窯業系サイディングが軒天まで取りにきて、価格競争が戻る。マグネシウムは中国勢が品質を上げ、難燃剤と汎用酸化マグネシウムの値崩れが続く。大型投資は稼働率が上がらない。
利益は赤字になり、設備の減損が自己資本を削る。配当はほぼ出せない。稼ぐ力は戻らず、残るのは土地と設備、運転資金の売れる分だけだ。借入を返したあとに残る分が、会社の価値になる。技術で守れたセラミックスは小さく、全体を支えるには足りない。借入の返済が優先され、技術開発にも手が回らなくなる。
- 窯業系建材(軒天・外壁・耐火パネル):数量 21.0(戸建住宅着工に換算した出荷規模(万戸相当、実質))× 価格 5.94(1戸相当あたり売上(万円・名目))→ 売上 125 億円・営業利益 5 億円。21.0 × 5.94、利益率 4.0%
- マグネシウム化合物:数量 4.9(出荷量(万トン、実質))× 価格 24(1トンあたり売上(万円・名目))→ 売上 117 億円・営業利益 9 億円。4.86 × 24.1、利益率 8.0%
- セラミックス(レーザー・蓄冷材・蛍光体):数量 6.0(出荷量(万個相当、推定))× 価格 2.20(1個相当あたり売上(万円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。6 × 2.2、利益率 3.0%
倍率:稼ぐ力は赤字で、床は売れる資産で測る。今の自己資本 147 億円に PBR 0.16 倍を掛けた約 24 億円。floor_assets_why の内訳と同じ額。
確率:住宅の縮小と中国勢の安値、原燃料の高止まりが重なり、大型投資が稼働しない筋書き。赤字になった年が過去にある素材メーカーで、投資が重い今は1割を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
窯業系建材(軒天・外壁・耐火パネル)
戸建住宅の軒天・外壁と、ビル向けの押出成形セメント板・耐火バックボード。売上の約55%。
| 数量戸建住宅着工に換算した出荷規模(万戸相当、実質) | 価格1戸相当あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 32.3 | 4.75 | 154 | 15 |
| 10 年後 中立 | 29.1 | 6.37 | 185 | 16 |
取り方:建材の売上は153.6億円、セグメント利益は14.7億円(全社費用を引く前。決算説明資料)。住宅131.3億円・非住宅22.2億円。開示に出荷量が無いため、2025年度の戸建住宅着工32.3万戸に出荷規模を重ね、1戸相当あたり売上を約4.75万円と置いた推定。数量が増えるのは着工でなく、神島の取り分で、10年の見通しは着工の減少と高級軒天の拡販で置く。
マグネシウム化合物
海水から作る酸化・水酸化・炭酸マグネシウム。医薬・サプリ、難燃剤、電磁鋼板用。売上の約39%。
| 数量出荷量(万トン、実質) | 価格1トンあたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 5.4 | 20 | 109 | 19 |
| 10 年後 中立 | 7.0 | 27 | 188 | 31 |
取り方:マグネシウムの売上は108.7億円(海外57%)。化成品のセグメント利益21.4億円を、マグネシウムとセラミックスに分け、マグネシウムを約19億円と推定した。出荷量は開示が無く、医薬から汎用まで混ざった平均単価を1トン約20万円と置いた推定(誤差が大きい)。
セラミックス(レーザー・蓄冷材・蛍光体)
レーザー用の透明YAGセラミックス、極低温冷凍機の蓄冷材、LED用蛍光体。売上の約6%。
| 数量出荷量(万個相当、推定) | 価格1個相当あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 8.9 | 2.00 | 18 | 2 |
| 10 年後 中立 | 12.5 | 2.68 | 34 | 4 |
取り方:セラミックスの売上は17.8億円(前の期比6%減)。利益は開示が化成品の合計のみで、約2億円と推定した。数量・単価は開示が無く、製品の種類が多いため、平均単価を1個相当あたり約2万円と置いた推定。価格は物価並みに上げる。
リスクと懸念
戸建住宅の縮小で建材の量が細る
建材は売上の55%を占め、その85%が住宅向けだ。新設住宅着工は2025年度に13%減り、戸建も8%減った。世帯数が減る日本では、長い目で数量が細る。高級軒天の拡販で埋めているが、母数が縮む流れは変わらない。
大型投資が稼働せず、償却と利払いが利益を食う
マグネシウムの大型設備に約70億円を投じる。年20億円ほどの償却に上乗せされ、借入は91億円、現金は12億円だ。需要が伸びず稼働率が上がらなければ、償却と利払いが利益を食う。金利が上がると重さが増す。
原燃料と電気代の波を転嫁しきれない
化学品と建材はエネルギーとナフサ由来の副資材を多く使う。会社は中東情勢を理由に、今期の業績予想と配当予想を出さなかった。転嫁が追いつかなければ、利益率は大きく落ちる。
中国勢の安値でマグネシウムが値崩れする
難燃剤や汎用酸化マグネシウムは、中国メーカーが安値で攻めてくる分野だ。医薬・サプリ向けは守りやすいが、売上の中でどれだけを占めるかは開示が少ない。海外が57%を占めるため、為替と貿易摩擦にも左右される。
今の利益が過去の山に近い
営業利益率は2026年4月期に9.6%と、過去12年で最高だ。戻入益を除いても8.6%ある。転嫁と戻入益が重なった年の高さで、一部は戻ると見る。2019年4月期は4%台まで落ちた。
過去のアスベスト含有製品の訴訟
有価証券報告書は、過去のアスベスト含有製品による健康被害で、損害賠償訴訟が起きる恐れを挙げる。今のところ数字に出ていないが、建材メーカーとして長く残る不確かさだ。
買収の対象になりうる
大株主は金融機関や資産運用会社で、親会社や創業家の支配はない。時価総額は小さく、資本コストを意識した経営も求められている。2026年10月時点で公開買付けの発表はない。
今後の分かれ目
- マグネシウムの大型設備が稼働し、高付加価値品の比率が上がったら
- 投資が稼ぎに変わったと見て、やや楽観の確率を少し増やす。
- 営業利益率が2期続けて7%を割ったら
- 転嫁の局面が終わったと見て、中立の利益率を下げる。
- 新設戸建の着工が2年続けて前年を下回ったら
- 建材の出荷を実質で1割減らし、中立を縮小側へ寄せる。
- 今期の業績予想と中計の数字が出て、営業利益が戻入益抜きの24億円を下回ったら
- 原燃料の転嫁が追いつかないと見て、やや悲観の確率を上げる。
- セラミックスのレーザー向けの量産が決まったら
- 小さな事業が柱に育つと見て、セラミックスの数量を上へ直す。
- 借入が自己資本の半分を超え、金利が上がったら
- 利払いが利益を食うと見て、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 今期の業績予想と中期経営計画の開示
- 営業利益率(戻入益抜き)
- 新設戸建住宅の着工戸数
- 高級軒天の売上と構成比
- マグネシウムの大型設備の稼働
- 借入と純負債の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト k 7.5%(基本 7.5% + quality 0.5%)の近辺にある前提で、正当化 PER の上限(1÷k = 12.5 倍)の 7〜9 割に置いた。悲観は谷の利益でなく、売掛金・棚卸資産・固定資産の回収から負債を引いた売れる資産(約24億円)で測り、谷の PBR は使っていない。今の株価や PER を見てから決めたわけではない。純負債のため余った現金は無い。減価償却(約20億円)は物価で一律には増やさず、新しい投資分だけ足す形で利益率に入れた。退職給付引当金の戻入益2.6億円は一過性として、起点の純利益をならした。リースは軽く、新リース会計の影響は小さいが、10年後の数字は今と同じ形でそろえた。セグメント別の出荷量・単価は筆者の推定で、誤差が大きい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→16.2 倍・やや楽観 PER 11.3→14.91 倍・中立 PER 11.3→13.93 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。個別のリスク(投資の稼働・原燃料の波)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。