結論
クニミネ工業は、粘土の一種ベントナイトを掘り、加工して売る国内最大手だ。鋳物の型の固め材、地熱発電の掘削泥水、猫砂、化粧品原料、農薬の受託加工まで広く手がける。筆者の結論は「適正圏」。事業の質と現金は魅力だが、今の値段はそれをすでに映している。
強みは二つある。一つは自社の鉱山を持つ資源の堀だ。もう一つは現金で、自己資本比率は83%に達し、現金と有価証券、貸付金を合わせて約120億円ある。時価総額の7割に当たる。
弱みは、稼ぎの核が縮む市場にある点だ。売上の4割は鋳物向けで、自動車の電動化と国内生産の減少が向かい風になる。会社は地熱と放射性廃棄物の処分、化粧品で穴を埋める計画だが、実を結ぶまでに時間がかかる。
もう一つの気がかりは、現金が株主に戻りにくいことだ。40%を支配株主が持ち、配当性向は3割台が目安にとどまる。現金の価値は、半分を見るのが妥当だと筆者は考える。
結果として、中立の価値は今の時価総額に近い。安全域は現金が支える。上振れの余地は、放射性廃棄物の出荷が軌道に乗るかにかかる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、クニミネ工業は「良い会社を、現金ごと買う」類いの銘柄だ。自社の鉱山という参入障壁があり、ニッチで最大手の地位を持つ。借金はなく、現金は時価総額の約7割ある。
株主が自由に使える利益は、純利益の8割ほどと筆者は見る。設備投資は年に11〜13億円で、減価償却の9億円を少し上回る程度だ。再投資が軽い事業なので、稼いだ現金は大半が手元に残る。
問題は、その現金が株主に届くかだ。支配株主が4割を持つ会社では、少数株主が現金の使い道を決められない。筆者は、現金の価値を半分に割り引いて見た。逆に、会社が計画どおり利益を伸ばし、ROEを8%以上へ引き上げれば、現金の使い方も変わると期待できる。
安全域は、悲観の筋書きでも現金が支えるので厚い。楽観の筋書きは今の値段を大きく上回るが、確率は低い。中立で今の値段とほぼ釣り合う、公正な値段だ。
何で稼ぐ会社か
クニミネ工業は、1943年に鉱業会社として生まれた。山形県の月布鉱業所などでベントナイトを掘る。国内シェアは分野により約45〜60%で、最大手の地位にある。ベントナイトは、水を吸って膨らむ粘土で、固める、水を止める、泥を安定させるといった性質を持つ。
稼ぎの柱は三つある。一つ目は、ベントナイト事業で、売上118億円・営業利益13億円だ。内訳は、鋳物の砂型を固める素形材向け72億円、地熱発電の掘削や土木の止水材などの環境建設向け38億円、猫砂など8.6億円。素形材は建機・トラック向けの回復と価格改定で増益になった。
二つ目は、農薬の受託加工などのアグリ事業で、売上34億円、営業利益は8.3億円と、全体の3分の1強を稼ぐ。農薬メーカーから原体を預かり、水稲の除草剤などに加工して返す。近年は種子コーティングの受託も伸びる。
三つ目は、化粧品原料の「クニピア」や三次元細胞培養の添加剤を扱うクレイサイエンス事業で、売上18億円・営業利益1.7億円だ。
原料は、グループの鉱山会社3社が国内で掘るほか、米国から一部を輸入する。放射性廃棄物の処分は、青森県六ヶ所村の埋設施設の土を水が通らない層にする原料として、2026年4月に本格出荷を始めた。会社は2028年9月分までの出荷を見込む。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば「資源に守られたニッチトップで、財務は盤石、ただし稼ぐ力は伸び悩んでいる」だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、自社の鉱山を持つこと、鋳物や土木での長い取引、そして用途ごとの技術サービスにある。
強みは三つある。一つ目は、鉱山の自給と海外原鉱の調達を組み合わせ、品質を安定させる力だ。二つ目は、放射性廃棄物の処分向けで、30年以上試験材料を提供してきた実績だ。三つ目は、鋳物向けの価格改定が通る力で、直近の営業利益率は9.4%と前年より1.2ポイント上がった。
弱みも三つある。一つ目は、鋳物向けが自動車の電動化で縮むことだ。会社自身が有報で需要減を見込む。二つ目は、利益の振れの大きさで、2023年3月期の営業利益は8億円と前年の半分に落ちた。三つ目は、資本の効率だ。ROEは6%台で、会社の目標8%もこれから届くかどうか。
経営は中期経営計画の達成率が99〜101%と、約束を守るタイプだ。新しい鉱区の開発や、種子コーティング、三次元細胞培養など多くの種をまいているが、まだ利益に占める割合は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ベントナイトの市場は、用途ごとに別の顔を持つ。最大の鋳物向けは、日本の自動車と建機の生産に連動する。電気自動車は鋳造部品の点数が少なく、国内の生産台数も減っているため、量は長期で縮むと筆者は見る。価格改定で売上を保ってきたが、これは量の減りを埋める作業でもある。
環境建設は、ここ数年で光が当たり始めた。地熱は国のエネルギー基本計画が2040年度に電源の1〜2%まで引き上げる方針で、掘削泥水の需要が伸びる。低レベル放射性廃棄物の処分は、日本原燃の六ヶ所村の施設が、埋設の覆土に難透水性の層を求める。ベントナイトはその主原料だ。
化粧品は、肌への刺激が少ない天然の鉱物として欧米で需要が伸びる。農薬の受託加工は、水稲の直播栽培の広がりで種子コーティングが伸びる。
競争相手は、ホージュンや日本ベントナイト工業などだ。国内の市場は小さく、品質と技術サービスで差がつく。新しい鉱区が開けるか、海外の原鉱を安定して買えるか、為替の変動をどうこなすかが、原価を左右する。中東情勢による材料不足の影響も、会社は意識している。
資本政策と M&A
資本政策の特徴は、現金の厚さと、株主還元の穏やかさだ。配当は、性向30%を目安に、1株の配当に下限を設ける方針で、2027年3月期も同額を続ける予定だ。性向は直近で36%、4年前は60%台と、利益が落ちた年に高く見えた。自社株買いは2025年3月期に3億円、直近はほぼない。
持ち合い株は小さい。上場株式は7銘柄・3億円にとどまり、売却も進んだ。含み益を当てにする会社ではない。
現金は厚い。現金・預金は96億円、有価証券5億円、短期貸付金18億円があり、有利子負債はリース債務だけだ。貸付金は、海外子会社が資金運用のため関係先に外貨で貸したもので、直近に新しく計上された。
株主は、クニミネエンタープライズが40%、取引先持株会が6%、農薬を手がける日本化薬とクミアイ化学工業がそれぞれ約3%だ。自己株は発行済みの16%に及ぶ。支配株主がいて、会社が自ら大きく動く可能性は低い。非上場化などの動きがあるとすれば、主役は支配株主だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
クニミネ工業は、資源に守られた会社で、成長の種を複数持つ。放射性廃棄物の処分向けは、2026年4月に本格出荷が始まり、会社は2028年9月分まで見込む。しかも埋設事業は、複数の施設で数十年続く計画だ。地熱も、国の基本計画で電源に占める割合を3〜6倍へ引き上げる。環境建設の営業利益は、前年の2.8億円から4.7億円へ7割増えた。
鋳物向けの減りは、価格改定と新商材で補える。直近も、量が減るなかで素形材は増益だった。クレイサイエンスは、化粧品で欧米の需要が伸び、輸出が増えている。アグリは営業利益が5割伸び、種子コーティングは水稲の省力化で受託が伸びる。
中期経営計画は、3年後に営業利益26億円、率13%、ROE8%以上を掲げる。前の計画は達成率が99〜101%だった。計画どおりなら、利益は今より6割増える。
財務は盤石で、現金は時価総額の7割ある。配当は性向30%を目安とし、増配の余地もある。ROEが8%を超えれば、現金の価値は評価し直される。
慎重な見方
主力の鋳物向けは、構造的に縮む。有報も、自動車の国内生産の減少と電動化で、国内の鋳造向けベントナイト需要が減ると明記する。売上の4割を占める事業が量で縮み、価格改定は永遠には効かない。タイの子会社も、中国勢の参入で当初の想定を下回った。
利益の山の高さにも注意がいる。直近の営業利益率9.4%は、前の中計の最終年度の水準でしかなく、2021年3月期の15%には遠い。2023年3月期は、営業利益が半分に落ちた。原料の輸入価格や為替で、利益は簡単に動く。
環境建設の拡大は、見かけほど確かではない。放射性廃棄物の出荷は、すでに計画より後ろ倒しになった。会社自身が、受注を保証するものではないと断る。地熱も、国の計画は2040年度でもまだ1〜2%にとどまる。
現金は時価総額の7割あるが、支配株主が4割を持つ。貸付金17.5億円は、海外子会社が関係先に貸したもので、使い道の透明性に不安が残る。現金が株主に戻らなければ、ROEは資本コストの水準に張りつく。
どちらに重みを置いたか
拮抗している。強気の見方が言う資源の堀と成長の種は本物で、現金の厚さも事実だ。ただ、慎重な見方が言う鋳物の縮みと、現金が株主に届きにくい構造も消せない。確率は、中立に4割弱を置き、やや楽観とやや悲観を同程度に近く置いた。放射性廃棄物の出荷が確定している間は楽観側をやや厚くしたが、鋳物の縮みは10年かけて効くので、悲観も1割強残した。現金は、戻り方を半分と見たので、結果は中立で今の時価総額に近い値になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,123 円380 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 530 円64 億円)。 今の値に割り戻すと 1,924 円234 億円、今との差 +49.9%、 期待の年率 +11.0%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,031 円734 億円 | 920 円112 億円 | +441.3% | +18.4% | 487 円59 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,636 円565 億円 | 714 円87 億円 | +316.7% | +15.3% | 963 円117 億円 |
| 中立 | 38% | 3,641 円443 億円 | 575 円70 億円 | +228.4% | +12.6% | 1,602 円195 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,591 円194 億円 | 386 円47 億円 | +54.0% | +4.4% | 494 円60 億円 |
| 悲観 | 12% | 705 円86 億円 | 181 円22 億円 | −31.0% | −3.6% | 106 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,123 円380 億円 | 530 円64 億円 | +184.5% | +11.0% | 3,653 円445 億円 |
今の株価時価総額 1,284 円156 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 放射性廃棄物・地熱・化粧品が育ち、計画を超える 利益 36 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 6,031 円734 億円
10年間、環境建設が主役になる。低レベル放射性廃棄物の埋設は複数の施設で長く続き、ベントナイトの出荷が途切れない。地熱の開発も国の計画どおり進み、掘削泥水の需要が増える。クレイサイエンスは化粧品の欧米向けに加え、蓄電デバイスや研磨用途が育ち、売上は倍に近づく。鋳物向けは電動化で量が1割ほど減るが、価格改定と新商材で利益は守る。アグリは種子コーティングが伸びる。営業利益は42億円ほどで、率は14%と、会社が目指す13%を超える。会社は還元も強めて、配当性向を4割台に上げ、ROEは10%を超える。資源の堀と成長の種が同時に実る、最も良い姿だ。
- 素形材(鋳物向けベントナイト):数量 11.4(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 84(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 96 億円・営業利益 13 億円。数量 11.40 万トン × 売値 84(円/キロ)、利益率 14.0%
- 環境建設(地熱・止水材・放射性廃棄物):数量 6.5(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 140(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 90 億円・営業利益 15 億円。数量 6.46 万トン × 売値 140(円/キロ)、利益率 17.0%
- ペット(猫砂):数量 0.9(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 120(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90 万トン × 売値 120(円/キロ)、利益率 4.0%
- クレイサイエンス(化粧品・機能材):数量 0.4(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 1,138(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 10 億円。数量 0.44 万トン × 売値 1138(円/キロ)、利益率 20.0%
- アグリ(農薬の受託加工・種子コーティング):数量 1.7(受託加工数量(万トン、実質。推定))× 価格 349(1 キロあたりの加工単価を含む売値(円・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 13 億円。数量 1.66 万トン × 売値 349(円/キロ)、利益率 22.0%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)80 億円。全体の PER 18.22 倍、時価総額 719 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:放射性廃棄物の出荷が長く続き、地熱と化粧品も伸び、鋳物の縮みも価格で補う三つが重なる必要がある。連続して当たる筋書きなので、確率は低く置いた。
やや楽観 18% 環境建設が伸び、鋳物の縮みを補う 利益 28 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 4,636 円565 億円
環境建設は、放射性廃棄物と地熱の需要で量が5割ほど増える。クレイサイエンスは化粧品の輸出が伸び、売上は7割増える。鋳物向けは量が1割弱減るが、価格改定が続いて営業利益率は12%台を保つ。アグリは農薬の受託と種子コーティングで1割増える。営業利益は33億円ほどで、率は12%になる。会社の目標13%には届かない。還元は性向4割台に近づき、ROEは10%まで上がる。資本コストを上回る水準だが、新しい事業の育つ速さは計画より遅い。現金は貸付金や有価証券を含めて厚いまま残り、市場からは堅実な資源会社として評価される。
- 素形材(鋳物向けベントナイト):数量 11.0(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 82(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 91 億円・営業利益 11 億円。数量 11.04 万トン × 売値 82(円/キロ)、利益率 12.5%
- 環境建設(地熱・止水材・放射性廃棄物):数量 5.9(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 137(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 81 億円・営業利益 13 億円。数量 5.89 万トン × 売値 137(円/キロ)、利益率 15.5%
- ペット(猫砂):数量 0.9(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 117(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。数量 0.85 万トン × 売値 117(円/キロ)、利益率 3.5%
- クレイサイエンス(化粧品・機能材):数量 0.4(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 1,114(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 7 億円。数量 0.37 万トン × 売値 1114(円/キロ)、利益率 16.0%
- アグリ(農薬の受託加工・種子コーティング):数量 1.5(受託加工数量(万トン、実質。推定))× 価格 342(1 キロあたりの加工単価を含む売値(円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 11 億円。数量 1.52 万トン × 売値 342(円/キロ)、利益率 21.0%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)80 億円。全体の PER 17.1 倍、時価総額 541 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:放射性廃棄物と地熱で環境建設は伸びるが、新規事業は計画ほどは大きくならない姿。事業の質を考えると、中立に次ぐ厚みで置いた。
中立 38% 鋳物は縮み、環境建設とアグリが補う 利益 22 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 3,641 円443 億円
鋳物向けの量は実質で1割ほど減るが、価格は物価並みに上がり、営業利益率は12%を保つ。環境建設は放射性廃棄物の出荷と地熱で、量が4割ほど増える。アグリは農薬の受託が安定し、種子コーティングが少しずつ伸びる。クレイサイエンスは化粧品が育ち、率は13%になる。全体の営業利益は25億円ほどで、率は10%となり、直近より少し高い。会社の目標13%は、10年の標準では届かない。還元は性向4割に上がり、ROEは8%を少し超える。資本コストとほぼ同じで、現金は戻り方が半分にとどまる。大きな失敗も大きな成功もない、堅実な10年になる。
- 素形材(鋳物向けベントナイト):数量 10.6(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 80(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 85 億円・営業利益 10 億円。数量 10.56 万トン × 売値 80(円/キロ)、利益率 12.0%
- 環境建設(地熱・止水材・放射性廃棄物):数量 5.3(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 134(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 10 億円。数量 5.32 万トン × 売値 134(円/キロ)、利益率 14.0%
- ペット(猫砂):数量 0.8(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 115(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。数量 0.80 万トン × 売値 115(円/キロ)、利益率 3.0%
- クレイサイエンス(化粧品・機能材):数量 0.3(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 1,089(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 4 億円。数量 0.30 万トン × 売値 1089(円/キロ)、利益率 13.0%
- アグリ(農薬の受託加工・種子コーティング):数量 1.4(受託加工数量(万トン、実質。推定))× 価格 335(1 キロあたりの加工単価を含む売値(円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 9 億円。数量 1.38 万トン × 売値 334(円/キロ)、利益率 20.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)80 億円。全体の PER 15.96 倍、時価総額 410 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:鋳物向けは縮むが価格で補い、環境建設は放射性廃棄物と地熱で伸びる。会社の計画が一部だけ実る標準の姿として、最も厚く置いた。
やや悲観 25% 鋳物が縮み、新しい事業は育たない 利益 13 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,591 円194 億円
電動化と国内の生産減少で、鋳物向けの量が2割以上減る。価格改定は止まり、営業利益率は10%に下がる。環境建設は放射性廃棄物の出荷が間延びし、量は1割ほどしか増えない。クレイサイエンスの新規事業は育たず、利益率は1桁にとどまる。アグリは農薬の国内需要の縮みで量が1割減る。営業利益は14億円ほどで、2023年3月期の谷に近い水準に戻る。会社は配当を守るが、増やす余力は乏しい。余った現金は、新しい鉱区の開発と設備の更新に食われて、0.75倍に減る。市場からは「資源を持つが成長しない会社」と見られ、倍率は低いままだ。
- 素形材(鋳物向けベントナイト):数量 9.4(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 78(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 73 億円・営業利益 7 億円。数量 9.36 万トン × 売値 78(円/キロ)、利益率 10.0%
- 環境建設(地熱・止水材・放射性廃棄物):数量 4.2(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 130(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 7 億円。数量 4.18 万トン × 売値 130(円/キロ)、利益率 12.0%
- ペット(猫砂):数量 0.7(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 107(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。数量 0.70 万トン × 売値 107(円/キロ)、利益率 1.0%
- クレイサイエンス(化粧品・機能材):数量 0.2(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 1,016(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 2 億円。数量 0.24 万トン × 売値 1016(円/キロ)、利益率 9.0%
- アグリ(農薬の受託加工・種子コーティング):数量 1.2(受託加工数量(万トン、実質。推定))× 価格 325(1 キロあたりの加工単価を含む売値(円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 7 億円。数量 1.24 万トン × 売値 324(円/キロ)、利益率 16.0%
倍率:事業の ROE は純利益 11.9 億円(現金の利息を除く)÷自己資本(余った現金を除く)246 億円で 4.8%。k 7.25% を大きく下回るので、ためた利益は額面より低い価値で、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。ROE÷k(0.6)に応じて、上限 12.5 倍に 0.64 を掛けた 8.0 倍に置いた。余った現金は谷で食われて 0.75 倍とみた。
確率:電動化と国内生産の減少は、鋳物向けに構造的に効く。新規事業の遅れと重なり、利益率が7%まで下がる姿を、中立に近い厚みで置いた。
悲観 12% 鋳物が崩れ、原鉱の確保にも失敗する 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 705 円86 億円
構造的に負ける。電動化と国内の生産減少が想定より速く進み、鋳物向けの量は半分近くに落ちる。価格競争で改定は効かず、営業利益はほぼ消える。環境建設は放射性廃棄物の受注が計画から外れ、量は1割ほど減る。農薬の顧客が自社で生産を内製し、アグリの受託も縮む。国内の鉱山で品質が下がり、輸入原鉱の価格が上がって、原価が重くなる。営業利益はゼロに近づき、新規事業も撤退を迫られる。それでも現金・有価証券・貸付金は残るので、倒産は遠い。支配株主が現金を事業に使い続けるか、非上場化で買い取るかのどちらかになる。整理の過程で、保有する鉱山の一部は閉山に向かい、閉山費用の引当金が取り崩される。海外のタイ子会社は縮小し、アセアン展開は実を結ばない。それでも、現金の厚さが時間を稼ぐ。
- 素形材(鋳物向けベントナイト):数量 6.6(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 69(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 2 億円。数量 6.60 万トン × 売値 69(円/キロ)、利益率 5.0%
- 環境建設(地熱・止水材・放射性廃棄物):数量 3.2(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 120(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。数量 3.23 万トン × 売値 120(円/キロ)、利益率 6.0%
- ペット(猫砂):数量 0.5(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 94(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量 0.50 万トン × 売値 94(円/キロ)、利益率 0.0%
- クレイサイエンス(化粧品・機能材):数量 0.2(取扱数量(万トン、実質。推定))× 価格 935(1 キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。数量 0.18 万トン × 売値 935(円/キロ)、利益率 4.0%
- アグリ(農薬の受託加工・種子コーティング):数量 0.9(受託加工数量(万トン、実質。推定))× 価格 300(1 キロあたりの加工単価を含む売値(円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 3 億円。数量 0.90 万トン × 売値 300(円/キロ)、利益率 10.0%
倍率:構造的に優良でなくなり、稼ぐ力は消える姿。この筋書きの営業利益はほぼ 0 で、純利益は金利収入の 1.4 億円しかなく、稼ぐ力は余った現金を足しても約 50 億円にしかならない。他方で、現金 95.7 億円・有価証券 4.8 億円・短期貸付金 17.5 億円から流動負債 24.7 億円と閉山費用 6.6 億円を引いた約 86 億円は残る。売掛金と在庫は縮む事業の運転資金として使われるので床に入れない。今の自己資本 223 億円に対する PBR 0.385 倍(時価総額 約 86 億円)に置いた。
確率:電動化が想定より速く進み、価格競争と原鉱調達の失敗が重なる構造的な負け。2023年3月期に営業利益が半分に落ちた実績を踏まえ、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
素形材(鋳物向けベントナイト)
鋳物の砂型を固める粘結剤。自動車・建機向けが中心。ベントナイト事業の約 6 割。
| 数量取扱数量(万トン、実質。推定) | 価格1 キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 60 | 72 | 8 |
| 10 年後 中立 | 10.6 | 80 | 85 | 10 |
取り方:素形材の売上 71.85 億円・セグメント利益 7.97 億円(2026/03 期 決算説明資料)。数量は開示が無く、鋳物用ベントナイトの平均の売値を 1 キロあたり約 60(円/キロ)と置いて割った推定値 12.0 万トン。数量は実質、物価の分は価格に入れた。
環境建設(地熱・止水材・放射性廃棄物)
地熱発電の掘削泥水、土木の止水材、低レベル放射性廃棄物の埋設の覆土向け。成長の期待が集まる分野。
| 数量取扱数量(万トン、実質。推定) | 価格1 キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.8 | 100 | 38 | 5 |
| 10 年後 中立 | 5.3 | 134 | 71 | 10 |
取り方:環境建設の売上 38.0 億円・セグメント利益 4.69 億円。高付加価値の止水材や精製品が多いので、平均の売値を 1 キロあたり約 100(円/キロ)と置いて割った推定値 3.8 万トン。地熱向けは 5.64 億円、放射性廃棄物向けは 0.38 億円(本格出荷は 2026 年 4 月から)。
ペット(猫砂)
ベントナイト系の猫砂。中国品との競合で減収が続く。
| 数量取扱数量(万トン、実質。推定) | 価格1 キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 86 | 9 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 115 | 9 | 0 |
取り方:ペット関連の売上 8.55 億円・セグメント利益 0.22 億円。平均の売値を 1 キロあたり約 86(円/キロ)と置いて割った推定値 1.0 万トン。
クレイサイエンス(化粧品・機能材)
精製ベントナイトの化粧品原料「クニピア」、三次元細胞培養の添加剤など。
| 数量取扱数量(万トン、実質。推定) | 価格1 キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.2 | 813 | 18 | 2 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 1,089 | 32 | 4 |
取り方:クレイサイエンス事業の売上 17.88 億円・営業利益 1.67 億円。精製して高機能にした品なので、平均の売値を 1 キロあたり約 800(円/キロ)と高く置いて割った推定値 0.22 万トン。
アグリ(農薬の受託加工・種子コーティング)
農薬メーカーの原体を預かり、水稲の除草剤などに加工して返す。種子コーティングの受託が伸びる。
| 数量受託加工数量(万トン、実質。推定) | 価格1 キロあたりの加工単価を含む売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.4 | 250 | 34 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 335 | 46 | 9 |
取り方:アグリ事業の売上 34.44 億円・営業利益 8.29 億円(前年比 +50%)。利益の約 36% を占める。平均の売値を 1 キロあたり約 250(円/キロ)と置いて割った推定値 1.38 万トン。農薬の需要の季節性で利益は下期に偏る。
リスクと懸念
鋳物向けが電動化と国内生産の減少で縮む
素形材は売上の4割を占める主力で、自動車と建機の生産に連動する。電気自動車は鋳造部品の点数が少なく、国内の生産台数も減る。有報も国内の鋳造向けベントナイト需要の減少を見込む。価格改定の余地が尽きれば、減益に転じる。
放射性廃棄物の出荷の遅れ
六ヶ所村の埋設施設の覆土向けは、2026年4月に本格出荷を始めたが、会社の当初計画より後ろ倒しになった。会社は2028年9月分まで見込むが、先の受注は保証されない。工期や規制の変更で、売上の立つ時期が動けば、中期経営計画の利益目標が遠のく。
原鉱の確保と為替
国内の鉱山会社3社で掘るほか、米国から一部を輸入する。災害や事故、品質の低下で採掘が止まれば、調達が難しくなる。輸入は為替予約で緩和するが、円安や海外の価格上昇は原価を押し上げる。中東情勢による材料不足も影響しうる。
利益の振れ
営業利益は2022年3月期の17億円から翌期に8億円へ落ち、直近は16億円まで戻った。原料の高騰、設備投資、在庫の評価減などで年ごとに動く。アグリは農薬需要に左右され、下期に利益が偏る。
現金の使い方と支配株主
クニミネエンタープライズが40%を持ち、取引先持株会を加えると約47%が安定株主だ。短期貸付金17.5億円は海外子会社が外貨で関係先に貸したもので、回収や使い道への不安が残る。現金が事業にも株主にも回らなければ、価値が目減りする。
新規事業の成長の遅さ
三次元細胞培養、蓄電デバイス、工業用研磨などの新規事業は、まだ売上が小さい。クレイサイエンスの営業利益は1.7億円にとどまり、前年より減った。種をまく費用が先行し、芽が出ない年が続けば、中期経営計画の13%目標は遠のく。
今後の分かれ目
- 放射性廃棄物向けの出荷が2028年9月以降も途切れず続く見通しが出たら
- 環境建設の数量を上方に直し、楽観・やや楽観の確率を増やす。
- 営業利益率が2期続けて8%を割ったら
- 価格改定が尽きて鋳物向けの縮みが効き始めたとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 配当性向を5割以上へ引き上げ、または大きな自社株買いを実施したら
- 余った現金の戻り方を0.5から1.0へ上げ、価値を大きく引き上げる。
- 短期貸付金の貸付先や回収の説明が開示され、問題が無いと確かめられたら
- 現金の質への不安が和らぎ、余った現金の額を戻す。
- クニミネエンタープライズが株式を追加で取得し、非上場化の提案が出たら
- 支配株主による買収価格が価値の目安になるので、現金の厚さを反映した値かを見る。
- 国内の鋳造向け出荷量が2期続けて前年比5%以上減ったら
- 素形材の数量を下方に直し、中立の営業利益を数億円削る。
見ておくもの
- 素形材(鋳物)・環境建設・アグリの事業別営業利益
- 放射性廃棄物処分向けと地熱向けの売上
- 営業利益率と中期経営計画の進み具合
- 短期貸付金・現金・有価証券の残高
- 配当性向と自社株買い、支配株主の動き
- 輸入原鉱の価格と為替
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コスト k 7.25%(基本 7.5% + quality 0.5%)の近くになる前提で、式の上限の 8 割 5 分前後に置いた。悲観は谷の PBR からでなく、現金・有価証券・貸付金から流動負債と閉山費用を引いた額で測った。今の株価や PER を見てから決めたわけではない。余った現金は、現金及び預金 95.7 億円・有価証券 4.8 億円・短期貸付金 17.5 億円・リース債務 3.5 億円の差し引き 114.5 億円から、運転・安全の緩衝 25 億円と貸付金の回収不確実さ 10 億円を引いた 80 億円とし、支配株主が 40% を持つため戻り方は 0.5 にした。売掛金と在庫(約 72 億円)は自己資本で賄っており、現金は運転資金の穴埋めではない。減価償却は物価で増やさず、今の約 9 億円に新しい設備の分を足して 10 年後に約 12 億円とみた(一律 1.34 倍でも 12 億円)。更新投資は年 11〜13 億円で償却を上回る分だけ現金が出る。政策保有株は小さく、含み益は足していない。リースは小さく、新リース会計基準(2028 年 3 月期)の影響は小さいと見て今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。