結論
マイポックスは、ハードディスク、光ファイバー、半導体の仕上げ研磨に使う研磨フィルムと液体研磨剤を作る会社だ。海外売上は 5 割を超え、最大顧客の米国の光ファイバー関連企業が売上の約 2 割を占める。
筆者の結論は、10 年で見ると割高だということだ。2027 年 3 月期の会社計画は、営業利益 12 億円と前期のほぼ 2 倍で、AI 向けの需要が背景にある。
ただし利益の波は大きい。過去 12 年のうち赤字か低い営業利益だった期が半分を占め、2024 年 3 月期も赤字だった。有利子負債は 69 億円あり、財務制限条項も付く。
中立の見方では、利益率が 9% 台に定着し、純利益は 12 億円台になる。そこに 9 倍の評価をつけると、今の時価総額を 2 割ほど下回り、悲観側の重みがさらに引き下げる。確率は中立に 4 割、慎重な側に 3 割強を置いた。株価が上がったあとの市場は、計画が全部達成された姿をすでに織り込みやすい点にも注意したい。小型で単一の事業に絞った会社なので、波の大きさが価値を左右する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず財務の安全域を見る。純負債は 35 億円で、営業利益の 6 倍。利益が荒れる事業としては重く、赤字が 1 年続けば財務制限条項が気になる水準だ。
事業の質は、狭い分野の技術があるものの、利益の安定感がない。ROE は長く資本コストを下回り、14% の山は一度きりだ。今の計画の 9% 台の利益率が定着するかが分かれ目になる。
資本の使い方は、設備投資が減価償却を上回り、成長に回している。借入で賄うため、金利の上昇は直接利益を削る。
10 年後の価値は、中立でも今の評価を 2 割ほど下回り、期待のリターンは年率でほぼゼロにとどまる。安全域は薄い。経営者の資本の使い方は成長投資に傾いており、還元に回る額は小さい。借入が軽くなり、利益率が 9% 台で 2 年続いたと確かめられるまでは、評価に余裕を見込みにくい。
何で稼ぐ会社か
事業は製品事業と受託事業の二つ。2026 年 3 月期の売上は 121 億円で、製品事業が 113 億円、受託事業が 7 億円だった。営業利益は 5.8 億円で、製品事業の 9.3 億円を受託事業の損失 3.5 億円が削った。
製品事業は研磨フィルム、液体研磨剤、研磨装置を作って売る。ハイテク向けの構成は、ハードディスク、光ファイバー、半導体が 3 対 3 対 1 ほど。光ファイバーのコネクタ端面を磨くフィルムが好調で、最大顧客の Fiber Optic Center への売上は 23 億円(構成比 19.5%)に増えた。
受託事業は塗布、加工、研磨の受託で、12 インチ半導体ウェハの CMP 受託が 2026 年に本格稼働した。収益化は 2027 年 3 月期から順に進む見込みだ。
生産はマレーシアのペナンと国内。タイ工場は 2022 年に閉鎖し、清算中だ。連結の従業員は 497 人で、小さな会社である。海外の拠点は米国、マレーシア、中国、インドにあり、販売と後加工を分けて持つ。主力の研磨フィルムは自社で塗布して作り、顧客ごとに仕様を調整する受注生産に近い形だ。
優良さと弱いところ
強みは、研磨フィルムという狭い分野で、ハードディスクから光ファイバー、半導体まで顧客に合わせた仕様を作り分けられる技術と、世界の顧客基盤だ。海外売上は 5 割を超え、半導体と光通信の成長に直接つながる。
弱みは、利益の安定感のなさだ。営業利益率は 2022 年 3 月期の 14% から 2024 年 3 月期の -4.7% まで、4 年で大きく上下した。ROE は過去 10 年の中央値で 1.3% しかない。最大顧客への依存も約 2 割と高い。
財務は、自己資本比率が 49.5% と悪くない。ただ有利子負債が 69 億円と、自己資本の 4 分の 3 ある。純負債は 35 億円で、営業利益の 6 倍ほどだ。
経営は成長投資を再開している。2026 年 3 月期の設備投資は 12 億円で、減価償却費の 7.7 億円を上回った。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
研磨フィルムの市場は、ハードディスク用ヘッドや基板、光ファイバーのコネクタ、半導体のウェハという、精密な表面仕上げが要る用途の集まりだ。どれも一つの市場としては小さく、世界の統計でマイポックスのシェアを確かめることはできなかった。
需要の牽引役は AI だ。データセンターは光ファイバーの接続数を増やし、大容量のハードディスクと半導体を大量に使う。半導体の業界は世界で見ると、2 から 3 年おきに 1 から 3 割縮む循環を繰り返してきた。
競合は、国内ではフジミインコーポレーテッド、ノリタケ、海外では 3M などで、研磨材と砥石の分野に広くいる。マイポックスは大手が手を出しにくい小口の特注品に強い。大手が量を追う分野では勝負せず、少量多品種で単価を保つ立ち位置だ。中国勢は一般品から低価格を武器に入ってくる。ハードディスクの市場は縮小が長く続いたが、データセンター向けの大容量品で出荷が戻りつつある。
米中の輸出規制は、中国向け販売の制約と、中国の国産化を進める両面のリスクになる。輸出管理の運用次第で、顧客の調達先が変わる。
資本政策と M&A
配当は期末に年 1 回。2026 年 3 月期の総額は 1.4 億円と純利益の 3 割弱。会社は安定配当をうたうが、利益が荒れる会社で増配の約束はない。
借入は 2026 年 3 月期に 15 億円増えた。コミットメントラインの極度額 45 億円のうち 35 億円を使い、シンジケートローンと銀行借入には財務制限条項が付く。現金同等物は 31 億円。
過去 20 年に増資などで株数が増えた期が 2019 年 3 月期と 2022 年 3 月期にあり、希薄化の前歴がある。
2025 年に圧着・接着加工のウジケを買収した。M&A は小型で、今のところ大きな買い物はない。大株主による TOB の動きは確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
生成 AI のデータセンターは、光ファイバーの本数、ハードディスクの容量、半導体の枚数のすべてを押し上げる。マイポックスの研磨フィルムは、そのどれにも使われる。最大顧客の売上は前期に 23 億円まで増え、会社は 2027 年 3 月期の営業利益計画を 9 億円から 12 億円へ上げた。第 1 四半期は売上が 21% 増え、4 期ぶりに過去最高を更新した。
12 インチウェハの CMP 受託が稼働し、受託事業の 3.5 億円の赤字は黒字に変わる余地がある。小さな会社なので、利益率が 1 ポイント上がるだけで純利益は大きく動く。2022 年 3 月期には営業利益率が 14% に達し、その実力は一度見えている。
借入は 69 億円あるが、利益が戻れば短い期間で返せる。10 年で見れば、AI の投資は構造的に続き、数量も価格も物価を上回って伸びる。海外に拠点を持ち、円安も売上の追い風になる。小さな会社の利益は、売上の伸びよりも速く増える。
慎重な見方
過去 12 年のうち営業利益が 5 億円以下だった期は半分近くある。2024 年 3 月期は 4 億円の赤字で、利益の水準はまだ定着していない。AI の投資で光ファイバーが好調な今は、利益の山の上にいる。
最大顧客が売上の約 2 割を占める。1 社の発注が減るだけで、売上は大きく動く。会社自身も、HBM や AI の急拡大と反動減を第 1 のリスクに挙げている。
有利子負債は 69 億円で自己資本の 4 分の 3 あり、財務制限条項が付く。受託事業は赤字が続き、設備の償却も重い。金利が上がれば利払いが利益を削る。中国勢の低価格品は一般品から広がる。
ROE は過去 10 年の中央値で 1.3%。資本コストを稼げた年はほとんどない。第 1 四半期の好調は、計画の上方修正を織り込んだ株価がすでに先取りしている可能性がある。受託事業の CMP は稼働したばかりで、損失がいつ止まるかも見えない。最大顧客の発注が 1 社で 2 割を占める点も、利益の安定を疑わせる。
どちらに重みを置いたか
事業は AI 需要で戻りつつあるが、利益の荒れと借入が評価を抑える。中立に 4 割弱、慎重な側に 3 割強の確率を置いた。会社計画の達成実績が薄いため、楽観側は 3 割弱にとどめた。ROE は資本コストに届かない前提で置いた。数字は、2027 年 3 月期の第 1 四半期までの実績で確かめた範囲に限る。過去の実績が薄い分、悲観側の確率を軽く見積もらないようにした。株価が計画の達成を先取りしているかどうかは、価値の評価には使っていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,090 円152 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 127 円18 億円)。 今の値に割り戻すと 579 円81 億円、今との差 −34.8%、 期待の年率 +3.2%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,890 円403 億円 | 201 円28 億円 | +248.1% | +13.3% | 216 円30 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,829 円255 億円 | 172 円24 億円 | +125.4% | +8.5% | 440 円61 億円 |
| 中立 | 38% | 1,079 円150 億円 | 144 円20 億円 | +37.7% | +3.2% | 465 円65 億円 |
| やや悲観 | 23% | 255 円36 億円 | 72 円10 億円 | −63.2% | −9.5% | 75 円10 億円 |
| 悲観 | 10% | 172 円24 億円 | 43 円6 億円 | −75.8% | −13.2% | 22 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,090 円152 億円 | 127 円18 億円 | +37.1% | +3.2% | 1,218 円170 億円 |
今の株価時価総額 888 円124 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% AI の光通信と先端半導体の研磨が重なり、利益率が山に迫る 利益 28 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 2,890 円403 億円
生成 AI のデータセンター投資が 10 年続き、光ファイバーの端面を磨くフィルムと、大容量ハードディスクの研磨フィルムが、数量で 1.9 倍になる。半導体は 12 インチウェハの CMP 受託が顧客に認められ、受託事業は黒字の柱に育つ。
価格は物価を上回って上がる。精密品ほど値付けの力が強く、単価の指数は 1.40 倍になる。利益率は 13% まで上がり、営業利益は 40 億円を超える。
借入は返し終わり、現金が積み上がる。配当も増えるが、会社の方針は安定配当で、還元は純利益の 3 割前後にとどまる。株主への戻りは大きくない一方、事業への再投資が利益を押し上げる。
- 製品事業:数量 830(製品事業の人員(人。連結従業員 497 人のうち製造・営業の推定))× 価格 3,633(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 302 億円・営業利益 39 億円。製品人員 830 人(1.9 倍)× 1 人あたり売上 1.40 倍、営業利益率 13.0%(2022 年 3 月期の山 14% の手前)
- 受託事業:数量 150(受託事業の人員(人。推定))× 価格 1,680(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 2 億円。受託人員 150 人(2.5 倍)× 1 人あたり売上 1.40 倍、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.38 倍、時価総額 403 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:光ファイバー、HDD、半導体の三つが同時に強く出る必要がある。過去 12 年で営業利益率が 14% に届いたのは 2022 年 3 月期の 1 度だけで、確率は低めに置いた。
やや楽観 22% 光ファイバーとハードディスクが堅調で、受託が黒字になる 利益 19 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,829 円255 億円
光ファイバー向けの需要が堅調に続き、最大顧客の Fiber Optic Center の売上は伸びる。新しい用途として次世代のパワー半導体向けの研磨も立ち上がる。ハードディスクは出荷数量がプラスに転じ、研磨フィルムの需要が戻る。
半導体は CMP の受託が軌道に乗り、受託事業は赤字から黒字に変わる。製品事業の営業利益率は 11.5% まで上がる。
純利益は 15 億円ほど。売上は 200 億円に近づき、売上高営業利益率は 11% 台に乗る。受託の CMP が先端の顧客に認められれば、更なる上振れもあるが、ここでは織り込まない。借入を返しながら、配当は少しずつ増える。ただし、顧客が増える分だけ運転資金も増えるため、現金が急に積み上がることはない。
- 製品事業:数量 677(製品事業の人員(人。連結従業員 497 人のうち製造・営業の推定))× 価格 3,529(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 239 億円・営業利益 28 億円。製品人員 677 人(1.55 倍)× 1 人あたり売上 1.36 倍、営業利益率 11.5%
- 受託事業:数量 120(受託事業の人員(人。推定))× 価格 1,608(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。受託人員 120 人(2.0 倍)× 1 人あたり売上 1.34 倍、営業利益率 5%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.34 倍、時価総額 255 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は 2027 年 3 月期に営業利益 12 億円、2028 年 3 月期に 14 億円を計画する。直近の営業利益は 5.8 億円で、計画の達成実績はまだ薄い。計画どおり進み、その先も伸びる筋書きに 2 割強を置いた。
中立 38% ハイテク向けが伸び、利益率は計画どおり 9% 台に定着する 利益 12 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,079 円150 億円
光ファイバーとハードディスクの研磨フィルムは、数量で 10 年に 3 割ほど伸びる。AI 向けの需要が追い風だが、ハードディスクは先細りの面もあり、全体では穏やかな伸びにとどまる。
価格は物価並みの 1.34 倍。原材料と人件費の上昇を転嫁できる範囲で、利益率は 9.5% に落ち着く。受託事業は立ち上げ費用が一巡し、小さな黒字になる。
純利益は 12 億円台。減価償却は取得した値段のままで、新しい設備の分だけ増える。借入は 10 年かけて返す。最大顧客の比率は 2 割前後で変わらず、特定の発注に左右される構造も残る。
- 製品事業:数量 568(製品事業の人員(人。連結従業員 497 人のうち製造・営業の推定))× 価格 3,477(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 198 億円・営業利益 19 億円。製品人員 568 人(1.3 倍)× 1 人あたり売上 1.34 倍、営業利益率 9.5%(会社計画 9.2〜9.3% と同水準)
- 受託事業:数量 90.0(受託事業の人員(人。推定))× 価格 1,608(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。受託人員 90 人(1.5 倍)× 1 人あたり売上 1.34 倍、営業利益率 2%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 150 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027 年 3 月期の計画(売上 130 億円・営業利益 12 億円)は、第 1 四半期の営業利益 3.7 億円で順調に見える。ただし過去 12 年で営業利益が 9 億円を超えたのは 3 期だけで、定着には慎重に見た。
やや悲観 23% AI 需要が一巡し、中国勢の低価格品に押されて利益率が戻る 利益 4 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 255 円36 億円
AI 向けの投資が一巡し、光ファイバーの需要は踊り場に入る。ハードディスクは先細りで、数量は横ばいにとどまる。
中国勢が一般品で値を下げ、価格は物価に届かない。利益率は 5.5% に戻り、受託の CMP も顧客が定着せず赤字が続く。
純利益は 5 億円ほど。売上は 150 億円前後にとどまり、固定費の重さが利益率を押し下げる。借入は減りにくく、利払いが利益を削る。配当は据え置く。受託の CMP は顧客の確保に時間がかかり、設備の償却を負担に感じる年が続く。財務制限条項に近づかないよう、設備投資は絞られる。
- 製品事業:数量 437(製品事業の人員(人。連結従業員 497 人のうち製造・営業の推定))× 価格 3,321(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 145 億円・営業利益 8 億円。製品人員 437 人(横ばい)× 1 人あたり売上 1.28 倍、営業利益率 5.5%
- 受託事業:数量 60.0(受託事業の人員(人。推定))× 価格 1,500(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 −1 億円。受託人員 60 人(横ばい)× 1 人あたり売上 1.25 倍、営業利益率 -5%
倍率:利益率が 5% 台に沈み、事業の ROE は 4〜5% で k 8.25% を大きく下回る。値付けの力が弱く、稼ぐ力に見合う倍率として 7 倍に置いた。
確率:過去 12 年のうち 6 期は営業利益が 5 億円以下か赤字だった。2024 年 3 月期も -4 億円で、HBM や AI の急拡大には反動も会社自身がリスクに挙げている。
悲観 10% 半導体と光通信の需要が崩れ、赤字と借入の返済に追われる 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 172 円24 億円
半導体と光通信の投資が急に冷え込み、HBM や AI の反動減が重なる。ハードディスクは次の記録方式に押され、数量が減る。中国勢の低価格品が一般品を侵食し、価格は物価に届かない。
受託事業の CMP は設備の償却だけが残り、赤字が続く。新規事業の先行費用も回収できず、研究開発が重荷になる。借入 69 億円の財務制限条項に触れれば、返済や増資を求められる。
配当は大きく減る。株主の取り分は、売れる資産から借入を引いた残りの床に近づく。この筋書きは、2009 年から 2012 年に長く赤字が続いた実績の再来である。
- 製品事業:数量 371(製品事業の人員(人。連結従業員 497 人のうち製造・営業の推定))× 価格 2,984(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 111 億円・営業利益 2 億円。製品人員 371 人(0.85 倍)× 1 人あたり売上 1.15 倍、営業利益率 2%
- 受託事業:数量 48.0(受託事業の人員(人。推定))× 価格 1,320(1 人あたり売上(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 −1 億円。受託人員 48 人(0.8 倍)× 1 人あたり売上 1.10 倍、営業利益率 -15%
倍率:純利益が小さく稼ぐ力は床に届かない。価値は資産の床で決まり、今の自己資本 90 億円に 0.27 倍。EV ÷ 営業利益で見ると約 49 倍(純負債 35 億円を足す)と利益の倍率では評価できず、床の考え方を使う。
確率:2009 年 3 月期から 2012 年 3 月期まで営業赤字が続き、2024 年 3 月期にも赤字を出した。小型で単一事業のため、需要の谷が来ると赤字が長引く。10 年に 1 度の想定として 1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
製品事業
研磨フィルム、液体研磨剤、研磨装置など。ハードディスク、光ファイバー(コネクタ端面)、半導体の仕上げ研磨に使う消耗材が中心で、ハイテク向けの構成は「ディスク:光ファイバー:半導体=3:3:1」とされる。
| 数量製品事業の人員(人。連結従業員 497 人のうち製造・営業の推定) | 価格1 人あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 437 | 2,595 | 113 | 9 |
| 10 年後 中立 | 568 | 3,477 | 198 | 19 |
取り方:売上 113.39 億円・セグメント利益 9.27 億円(有価証券報告書)。製品別の金額と出荷量は開示がないため、連結従業員 497 人を製品事業 437 人・受託事業 60 人に分けた推定を数量とした。
受託事業
受託塗布製造、受託コンバーティング、受託研磨加工(大久保鉄工所)。2026 年に 12 インチ半導体ウェハの CMP 受託が本格稼働し、収益化は 2027 年 3 月期から。
| 数量受託事業の人員(人。推定) | 価格1 人あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 1,200 | 7 | −3 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 1,608 | 15 | 0 |
取り方:売上 7.20 億円(40.8% 減)・セグメント損失 3.48 億円(有価証券報告書)。立ち上げの費用が先に出ている。人員は推定。
リスクと懸念
AI 需要の反動
会社が第 1 のリスクに挙げるのが、HBM や AI 関連の急拡大と反動減。光ファイバーとハードディスクの好調が一巡すれば、利益の山の上から落ちる。
最大顧客への依存
Fiber Optic Center の売上は 23 億円で、全体の 19.5%。前期は 14.3% だった。1 社の発注の増減が全体の売上を左右する。
借入と財務制限条項
有利子負債は 69 億円で、コミットメントラインの 35 億円のほか、銀行借入に財務制限条項が付く。赤字が続けば返済や増資を迫られる。
受託事業の立ち上げ
12 インチ CMP 受託は 2026 年に稼働したばかり。前期は 3.5 億円の赤字で、顧客が定着しなければ設備の償却だけが残る。
中国勢と代替技術
一般品では中国勢が低価格で入る。研磨を要しない代替技術も、事業等のリスクに挙げられている。
為替
海外売上が 5 割を超え、円安は売上を押し上げるが、輸入原材料のコストも上げる。2026 年 3 月期は換算調整勘定が 2.7 億円増えた。
小型株の流動性
時価総額は 138 億円。出来高が薄く、株価の振れは大きい。TOB の可能性を示す直接の材料は確認できなかった。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 年続けて 9% を超える
- 計画の達成実績ができ、中立の利益率に確信が持てる。やや楽観の確率を厚くできる。
- 最大顧客の売上構成比が 25% を超える
- 集中のリスクが高まる。値付けの力の評価を下げる。
- CMP 受託が黒字に転じる
- 受託事業の 3.5 億円の赤字が消え、営業利益が増える。やや楽観の側を厚くする。
- 営業利益が 2 期続けて 5 億円を割る
- 財務制限条項が現実の問題になる。やや悲観と悲観の確率を厚くする。
- 借入金が自己資本の半分を下回る
- 財務の不安が薄れる。資本コストの借金の上乗せを 0 に戻せる。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期)
- 最大顧客の売上構成比
- 受託事業のセグメント損益
- 有利子負債と財務制限条項
- 光ファイバーとハードディスクの出荷動向
- 為替
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト 8.25%(基本 7.5% に循環 +1.0%・値決め +0.25%・借金 +0.25%)と、10 年後の ROE(中立で 8% 台)から式で置いた。ROE が k を下回るので上限は 1÷k=11.1 倍で、その 8 割強に置いた。今の株価や PER は見ていない。減価償却は取得時の値段のまま(年 7.7 億円)で、設備投資 12 億円が上回る分は現金から出る前提にした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→14.38 倍・やや楽観 PER 10.5→13.34 倍・中立 PER 9→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に循環 +1.0%・値決め +0.25%・借金 +0.25% を足して 9.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.25%。