結論
日本インシュレーションは、けい酸カルシウムという白い鉱物の板で熱を封じ込める会社だ。製油所や化学工場の配管を包む保温材と、ビルの鉄骨を火から守る耐火被覆材を作り、自社で施工もする。筆者の結論は「ほぼ適正、わずかに割高寄り」である。純現金は時価総額の 4 割を超えるが、事業の稼ぐ力が資本コストに届かず、厚い現金も株主に戻る速さが遅い。
2026 年 3 月期は売上 144 億円、営業利益 16 億円と好調だった。ただ受注残は 3 割減り、会社は今期の営業利益を 11 億円と見込む。プラントの定期修理と大型ビルの着工に合わせて利益が上下する事業である。
10 年先を見ると、国内の製油所とエチレン設備は集約が続き、保温の補修の母数は細る。一方で発電所、LNG、データセンターの鉄骨造の需要は残る。筆者は営業利益が名目で今と同じ 16 億円前後にとどまると見る。物価の分だけ値段は上がるが、量は 1 割ほど減るからだ。
安全域は現金にある。悲観の筋書きでも、純現金と政策保有株を合わせた額が時価総額の 3 割を支える。ただし石綿の訴訟という古い負債が尾を引く点は、割り引いて見ておきたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、日本インシュレーションは「わかりやすいが、伸びない事業」だ。保温材と耐火被覆は 10 年後も必ず要る。その点で予測はしやすい。だが、母数が減る市場で、値段を決める力も強くない。オーナーとして長く持ちたいかと問われれば、事業より現金の方に魅力がある会社である。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、会計の純利益にかなり近い。設備投資は減価償却と同じ年 3 億円ほどで、事業に追加の資本はあまり要らない。問題はその先だ。余った利益が配当に回らず、現金として積もる。資本コストを超えて稼げない現金は、帳簿の額ほどの価値を株主にもたらさない。
安全域は、悲観の側の床の高さにある。純現金と政策保有株で時価総額の 3 割強が支えられる。ただし今の値段は、その床と普通の筋書きの真ん中より上にある。払う値段に見合う安全域があるとは言いにくい。
何で稼ぐ会社か
事業は 2 つに分かれる。売上の 3 分の 2 を占めるプラント関連と、3 分の 1 の建築関連だ。どちらも材料を売るだけでなく、自社の職人と協力会社で工事まで請け負う。材料と工事を一緒に売るのが、この会社の稼ぎ方の芯である。
プラント関連は、石油精製、石油化学、製鉄、発電所の配管や塔を保温材で包む仕事だ。熱が逃げると燃料が無駄になり、外側が熱いと人がやけどする。保温材は 10〜20 年で傷むので、数年ごとの定期修理のたびに張り替えの需要が出る。新設より補修が中心で、顧客は国内の大手の石油・化学の会社と、そのプラントを預かるエンジニアリング会社である。
建築関連は、高層ビルや物流倉庫の鉄骨に耐火被覆の板を張る仕事と、不燃の内装材だ。鉄骨は火災で熱されると柔らかくなるので、法令で一定時間守る被覆が要る。吹き付けのロックウールと競うが、板は粉じんが出ず仕上がりがきれいで、都心の大型ビルで選ばれやすい。
材料はゾノトライトという結晶のけい酸カルシウムで、軽くて 1,000 度近い熱に耐える。岐阜と三重の工場で作り、保温材の板はベトナムの子会社に生産を移している。ほかにアスベストの調査と除去の工事も手がける。
優良さと弱いところ
強みは、けい酸カルシウムの保温材という狭い市場で、国内の数少ない作り手の 1 つであることだ。競合は A&A マテリアルなど限られ、プラントの顧客は実績のある材料を変えたがらない。工事まで請け負うので、定期修理の段取りに深く入り込める。
弱さは 3 つある。第 1 に、需要の母数を自分で増やせないことだ。保温の補修はプラントの数に比例し、そのプラントが国内で減っていく。第 2 に、値段を決めるのは元請けのエンジニアリング会社とゼネコンで、ロックウールやグラスウールという安い代替材も常にある。第 3 に、資本の使い方である。過去 7 年の ROE の中央値は 8% で、現金をためるほど ROE は下がる。
石綿の問題も残る。昔の建材にアスベストを使っていたため、建材メーカー多数を相手取った集団訴訟の 1 社になっている。元従業員への補償も続く。毎年の負担は小さいが、判決次第で一度に費用が出る可能性は消えていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
保温材と耐火被覆は、国内の設備投資と建設のおこぼれで育つ小さな業界だ。業界の芯は新設ではなく、既存の設備の手入れにある。だから需要は景気で 2〜3 割は振れても、消えはしない。
プラントの側では、構造の変化が逆風になる。国内の石油需要は減り続け、製油所の閉鎖や縮小が相次ぐ。エチレンの設備も、石油化学の大手が西日本と東日本で集約を進めている。設備が減れば、保温を張り替える配管の長さも減る。一方で、LNG の基地、水素やアンモニアの試験設備、ごみ焼却の発電所は、高い温度か極端な低温を扱うので保温材が要る。筆者はこの置き換わりで、プラント向けの量は 10 年で 1 割強減ると見る。
建築の側では、新築の着工は人口とともに細る。ただ鉄骨造の大型ビル、物流倉庫、データセンターは都市部で建ち続ける。耐火被覆は法令で必ず要る材料なので、建物が建つ限り需要はある。競うのは吹き付けのロックウールで、人手不足で現場の吹き付け作業が難しくなる中、工場で作った板を張る工法には追い風もある。
物価の面では、材料費と職人の人件費が上がり、それを値段に移せるかが鍵だ。2026 年 3 月期の増益は、値上げが通った面もある。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、自社株買いはしていない。会社は「継続的かつ安定的な配当」を掲げ、2026 年 3 月期は総額 3.5 億円を払い、今期も同じ額を予定する。配当性向は 3 割前後、利益が落ちる今期は 5 割近くになる。
財務は堅すぎるほど堅い。自己資本比率は 79%、純現金は 38 億円で、2019 年の純負債から 7 年で積み上がった。政策保有株も 14 銘柄で約 10 億円ある。会社は 2030 年度までに約 70 億円の成長投資の枠を掲げ、岐阜工場の設備を三重に移す計画も検討している。
筆頭株主は大阪中小企業投資育成で、持株は約 1 割。親会社はいない。時価総額が 90 億円に満たない小さな会社で、PBR 1 倍を目指すと言いながら現金を寝かせている。買い手から見れば、現金と工場ごと手に入る割安な標的にも映る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
保温材の需要は思われているより固い。製油所が減っても、残る設備は古くなり、補修の頻度はむしろ上がる。LNG の基地、ごみ発電、水素とアンモニアの設備は、高温か極低温を扱い、けい酸カルシウムの出番が多い。プラント向けの量は大きく減らない。
建築では追い風が吹く。東京と大阪の再開発、物流倉庫、データセンターは鉄骨造で、耐火被覆が法令で欠かせない。現場で吹き付ける職人は年々減り、工場で作った板を張る工法の方が人手を食わない。値上げも通り始めた。2026 年 3 月期の営業利益率 11% は、その証拠である。
資本の側にも上振れの余地がある。純現金 38 億円と政策保有株 10 億円で、時価総額の半分を超える。会社は PBR 1 倍と ROE 10% を目標に掲げた。還元を厚くするか、自社株買いに踏み出せば、株主の取り分は一気に増える。時価総額 90 億円弱の会社は、同業や投資ファンドに買われる可能性も十分ある。
慎重な見方
母数が細る市場で、値段も決められない。それがこの会社の本当の姿だ。国内の石油需要は年々減り、製油所とエチレン設備の集約は止まらない。補修の配管の長さが減れば、保温の需要も減る。脱炭素が進むほど、主な顧客の設備は縮む。
値段の主導権も弱い。元請けのエンジニアリング会社とゼネコンが工事の値段を決め、ロックウールとグラスウールという安い代替材が常にある。値上げが通ったのは、材料費の高騰を皆が転嫁した一時の流れにすぎない。受注残はすでに 3 割減り、今期は減益になる。
資本の使い方も変わらない。自社株買いの実績はなく、現金は積もるだけだ。PBR 1 倍の目標は掲げても、行動が伴っていない。さらに石綿の集団訴訟が残る。敗訴すれば、ためた現金が補償に回る。10 年後に、現金は増えたが事業は小さくなった会社になる道は十分にある。
小さな会社であることも弱みになる。従業員は 350 人ほどで、職人の高齢化と採用難が工事の受け手を細らせる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方がやや強い。国内プラントの集約は業界全体の事実で、補修の母数が細る流れは会社の努力で止められない。強気の側の上振れは、還元の強化や買収という会社の外の出来事に頼る部分が大きい。確率は中立を中心に置き、悲観側を楽観側よりやや厚くした。還元の方針がはっきり変わるか、受注残が増えに転じるまでは、中立から上を厚くする理由は乏しいと筆者は見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,728 円150 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 399 円35 億円)。 今の値に割り戻すと 1,072 円93 億円、今との差 +10.0%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,195 円278 億円 | 541 円47 億円 | +283.2% | +14.4% | 299 円26 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,466 円214 億円 | 472 円41 億円 | +201.3% | +11.7% | 588 円51 億円 |
| 中立 | 40% | 2,023 円176 億円 | 403 円35 億円 | +148.8% | +9.5% | 970 円84 億円 |
| やや悲観 | 22% | 638 円55 億円 | 380 円33 億円 | +4.4% | +0.4% | 224 円19 億円 |
| 悲観 | 10% | 299 円26 億円 | 173 円15 億円 | −51.6% | −7.0% | 47 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,728 円150 億円 | 399 円35 億円 | +118.2% | +8.1% | 2,128 円185 億円 |
今の株価時価総額 975 円85 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 値上げの定着と再開発の波で、利益率が過去の山に戻る 利益 19 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 3,195 円278 億円
プラントの集約は進むが、残った設備の老朽化で補修の頻度が上がる。LNG の基地、ごみ発電、水素とアンモニアの設備が新しい需要になり、保温の量は今とほぼ変わらない。建築では、東京と大阪の再開発、物流倉庫、データセンターが続き、吹き付けから板への置き換えも進む。値上げは物価を上回って通り、営業利益率は過去の山に近い 15% 台に戻る。会社は PBR 1 倍の目標に向けて配当を厚くし、ROE は 8% に近づく。それでも資本コストには届かず、ためた現金が足を引っ張る構図は残る。株主から見れば、事業の伸びよりも還元の強化が価値を押し上げる筋書きである。同業や投資ファンドが現金と工場に目をつけ、買収の話が出る可能性もここに含めた。
- プラント関連:数量 316(保温・保冷の施工面積(万 m²・推定))× 価格 4.20(1 m² あたりの売上(万円・材料と工賃込み))→ 売上 133 億円・営業利益 25 億円。316 万 m²(1.02 倍。老朽化で補修の頻度が上がる)× 4.20 万円(1.40 倍)、利益率 19%
- 建築関連:数量 560(耐火被覆・不燃内装の施工面積(万 m²・推定))× 価格 1.40(1 m² あたりの売上(万円・材料と工賃込み))→ 売上 78 億円・営業利益 17 億円。560 万 m²(1.10 倍。再開発と板への置き換え)× 1.40 万円(1.40 倍)、利益率 22%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 13.63 倍、時価総額 265 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 9 年で営業利益率 14% 超は 3 回あり、山は 15.9%。再開発と値上げの定着が重なれば届くが、プラントの集約の流れに逆らう筋書きなので 8% とした。
やや楽観 20% 建築の追い風で量を保ち、値上げも物価を少し上回る 利益 15 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 2,466 円214 億円
プラントの保温は集約で量が 5% ほど減るが、補修の単価が上がって売上は物価以上に伸びる。建築は再開発と物流倉庫で量を保ち、板の耐火被覆が吹き付けからシェアを少し取る。ベトナムへの生産の移管で材料の原価が下がり、プラントの利益率は 18% に上がる。全社の営業利益は 21 億円前後になる。還元は配当の性向 3 割を保ち、現金はさらに積もる。ROE は 6〜7% にとどまる。
石綿の訴訟は和解や判決で区切りがつき、費用は小さく収まる。株主から見れば、利益は伸びるが現金の使い方が変わらず、価値の伸びは利益ほどではない。自社株買いはなく、配当の額を少しずつ上げる形が続く。
- プラント関連:数量 293(保温・保冷の施工面積(万 m²・推定))× 価格 4.08(1 m² あたりの売上(万円・材料と工賃込み))→ 売上 120 億円・営業利益 22 億円。293 万 m²(0.95 倍)× 4.08 万円(1.36 倍)、利益率 18%
- 建築関連:数量 520(耐火被覆・不燃内装の施工面積(万 m²・推定))× 価格 1.36(1 m² あたりの売上(万円・材料と工賃込み))→ 売上 71 億円・営業利益 15 億円。520 万 m²(1.02 倍)× 1.36 万円(1.36 倍)、利益率 21%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 12.65 倍、時価総額 196 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年 3 月期に値上げが通った実績があり、建築の大型案件も続く。母数の縮みを値段と建築で補う筋書きとして 20% とした。
中立 40% 補修の母数が 1 割細り、値段は物価並み。利益は名目で横ばい 利益 11 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,023 円176 億円
製油所とエチレン設備の集約で、プラント向けの量は 10 年で 1 割強減る。LNG やごみ発電の需要が一部を埋める。建築は着工の縮みで量が少し減るが、大型ビルと倉庫で底は堅い。値段は物価並みに上がり、全社の営業利益は 16 億円前後と今とほぼ同じになる。実質では 1 割ほど小さくなった会社だ。配当は性向 3 割台を保ち、現金は積もり続ける。ROE は 5% 台で、資本コストを下回ったままだ。石綿の訴訟は小さな負担として続く。
会社は 2030 年の ROE 10% の目標に届かない。それでも配当は守られ、株主は年 3〜4% ほどの配当を受け取り続ける。
- プラント関連:数量 272(保温・保冷の施工面積(万 m²・推定))× 価格 4.02(1 m² あたりの売上(万円・材料と工賃込み))→ 売上 109 億円・営業利益 19 億円。272 万 m²(0.88 倍。製油所・エチレンの集約)× 4.02 万円(物価並み 1.34 倍)、利益率 17%
- 建築関連:数量 485(耐火被覆・不燃内装の施工面積(万 m²・推定))× 価格 1.34(1 m² あたりの売上(万円・材料と工賃込み))→ 売上 65 億円・営業利益 13 億円。485 万 m²(0.95 倍。着工の縮み)× 1.34 万円(1.34 倍)、利益率 20%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 154 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内プラントの集約と建築の底堅さ、値上げの持続と代替材の圧力が打ち消し合う落としどころとして最も厚く 40% とした。
やや悲観 22% プラントの縮みが速く、代替材との値下げ競争が始まる 利益 5 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 638 円55 億円
脱炭素で製油所とエチレン設備の閉鎖が前倒しになり、プラント向けの量は 2 割以上減る。残った顧客も補修の費用を絞り、ロックウールなど安い材料への置き換えを求める。値上げは物価に届かず、利益率は下がる。建築も着工の減少で量が 1 割強減る。全社の営業利益は 6 億円ほどに落ちる。会社は配当の総額を据え置き、配当性向は 7 割を超える。現金は増えず、石綿の訴訟の費用が重なる年もある。
経営は工場の集約とベトナムへの生産の移管で費用を削るが、量の減りに追いつかない。ためた現金は事業の立て直しと補償に少しずつ使われ、株主に戻る分は細る。
- プラント関連:数量 240(保温・保冷の施工面積(万 m²・推定))× 価格 3.84(1 m² あたりの売上(万円・材料と工賃込み))→ 売上 92 億円・営業利益 12 億円。240 万 m²(0.78 倍)× 3.84 万円(1.28 倍、物価に届かない)、利益率 13%
- 建築関連:数量 440(耐火被覆・不燃内装の施工面積(万 m²・推定))× 価格 1.28(1 m² あたりの売上(万円・材料と工賃込み))→ 売上 56 億円・営業利益 9 億円。440 万 m²(0.86 倍)× 1.28 万円(1.28 倍)、利益率 16%
倍率:事業の ROE は約 2.5% で k を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で見て、1÷k の 11.8 倍の 6 割の 7.0 倍。余った現金は今の 0.75 倍の 15 億円を戻り方 0.75 で足す。
確率:石油需要の減り方が速まれば、製油所の閉鎖は前倒しになる。受注残が 3 割減った足元はその入口にも見える。構造的な逆風が強まる筋書きとして 22% とした。
悲観 10% 国内の母数が崩れ、赤字に転じる 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 299 円26 億円
国内の石油精製と石油化学は大きく縮み、保温の補修は 3 分の 1 以上減る。建築ではロックウールの吹き付けに機械化が進み、板の耐火被覆の優位が消える。値上げは通らず、工場の固定費が残って営業は赤字に転じる。石綿の集団訴訟で敗訴が重なり、補償の費用が現金を削る。会社は配当を減らし、工場の集約と人員の削減に追われる。株主に残るのは、削られた現金と政策保有株が中心になる。
経営は新しい事業として廃棄物やバイオマスに手を広げるが、本業の縮みを埋める規模にはならない。帳簿の自己資本は残っても、稼ぐ力はほとんど無い会社になる。
- プラント関連:数量 200(保温・保冷の施工面積(万 m²・推定))× 価格 3.60(1 m² あたりの売上(万円・材料と工賃込み))→ 売上 72 億円・営業利益 5 億円。200 万 m²(0.65 倍)× 3.60 万円(1.20 倍)、利益率 7%
- 建築関連:数量 380(耐火被覆・不燃内装の施工面積(万 m²・推定))× 価格 1.20(1 m² あたりの売上(万円・材料と工賃込み))→ 売上 46 億円・営業利益 5 億円。380 万 m²(0.74 倍)× 1.20 万円(1.20 倍)、利益率 10%
倍率:赤字なので PBR で置く。床は純現金と政策保有株の税後から縮小と訴訟の費用を引き、戻り方 0.75 を掛けた約 26 億円で、今の自己資本 148 億円の 0.176 倍。
確率:製油所の閉鎖と代替材への置き換え、石綿の訴訟の敗訴が重なる筋書き。会社は赤字の期を持たず財務も堅いので 10% にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
プラント関連
石油精製・石油化学・製鉄・発電所の配管や塔の保温・保冷の材料と工事。定期修理の張り替えが中心。
| 数量保温・保冷の施工面積(万 m²・推定) | 価格1 m² あたりの売上(万円・材料と工賃込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 309 | 3.00 | 93 | 17 |
| 10 年後 中立 | 272 | 4.02 | 109 | 19 |
取り方:数量の開示は無いので推定。保温・保冷の工事と材料を施工面積に直し、1 m² あたり約 3 万円(材料・外装・工賃込み)と置くと約 309 万 m²(92.8 億円)。営業利益 16.7 億円はセグメント利益(全社費用の配賦前。有報の要約からの推定)。
建築関連
鉄骨造のビル・倉庫の耐火被覆の板と工事、不燃の内装材。アスベストの調査・除去の工事も含む。
| 数量耐火被覆・不燃内装の施工面積(万 m²・推定) | 価格1 m² あたりの売上(万円・材料と工賃込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 511 | 1.00 | 51 | 11 |
| 10 年後 中立 | 485 | 1.34 | 65 | 13 |
取り方:数量の開示は無いので推定。耐火被覆の板と不燃内装の施工面積を、1 m² あたり約 1 万円(材料・工賃込み)と置くと約 511 万 m²(51.1 億円)。営業利益 11.0 億円はセグメント利益(配賦前の推定)。全社費用約 11.6 億円は調整に入れた。
リスクと懸念
国内プラントの集約
国内の石油需要は減り続け、製油所とエチレン設備の閉鎖や縮小が進む。保温の補修は配管の長さに比例するので、設備が減ればプラント関連の量が細る。売上の 3 分の 2 を占める柱の母数が縮むことが、最大の構造リスクだ。
石綿の集団訴訟
昔の建材にアスベストを使っていたため、建材メーカー多数を相手取った集団訴訟の 1 社として係争中だ。会社は因果関係が認められれば敗訴の可能性があると開示している。元従業員への補償も続き、判決次第で一度に費用が出る。
代替材との値段の競争
保温材ではロックウールとグラスウール、耐火被覆では吹き付けのロックウールが安い代替になる。元請けが工事の値段を決めるので、材料費の高騰が一服すると値上げを保てない恐れがある。
受注の波
受注残は 2026 年 3 月期末に前年の 7 割まで減り、会社は今期の営業利益を 3 割減と見込む。プラントの定期修理と大型ビルの着工の時期で、利益は 2〜3 割振れる。
現金をためる資本政策
純現金は 7 年で 38 億円まで積み上がったが、自社株買いの実績はない。資本コストを下回る ROE が続けば、ためた現金は帳簿の額ほどの価値を生まない。PBR 1 倍の目標に行動が伴うかが問われる。
今後の分かれ目
- 自社株買いを始めるか、配当性向を 5 割以上に引き上げる方針を出したら
- 余った現金の戻り方を 1.0 に上げ、やや楽観の確率を厚くする。
- 受注残が 2 期続けて増え、営業利益率が 12% 以上で定着したら
- 値上げの定着の証拠として、中立の利益率を上に直す。
- 大手の石油・化学会社が製油所やエチレン設備の閉鎖を追加で発表したら
- プラント向けの量の見通しを下げ、やや悲観に重みを移す。
- 石綿の集団訴訟で敗訴し、まとまった補償の費用が出たら
- 悲観の床を下げ、悲観の確率を上げる。
- 同業や投資ファンドから買収の提案や大量保有が出たら
- 現金と工場の価値が表に出る筋書きとして、楽観側の確率を見直す。
見ておくもの
- 受注高と受注残(特にプラント関連の定期修理)
- 営業利益率と値上げの浸透
- 製油所・エチレン設備の閉鎖の発表
- 石綿の集団訴訟の判決
- 自社株買いと配当性向の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PBR を見ずに、ROE と k 8% から決めた。事業の ROE は中立で 6% 前後と k を下回るので、PER の上限は 1÷k の 11.8 倍で、中立はその 8 割。量はプラントの集約で 1 割強減り、値段は物価並みとした。営業利益率は 9.3% で過去 9 年の山 15.9% より下。純現金 38 億円のうち運転資金を残した 20 億円を余った現金とし、政策保有株の配当は利益に残すので余りに足していない。PBR 0.6 倍は割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.63 倍・やや楽観 PER 10.5→12.65 倍・中立 PER 9.4→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。