結論
ベルテクスは、ヒューム管やマンホール、雨水をためる貯留槽など、水まわりのコンクリート製品を作る会社だ。筆者の結論は「ほぼ妥当な値段」である。中立の 10 年後は営業利益 98 億円で、年率の期待リターンは 7.5% と資本コストを少し下回る。確率で重みをつけた本質価値は今の時価総額より 3% ほど低く、5 段階では適正に収まる。
強みは、雨水対策の製品で首位級の地位を持つことだ。営業利益率は 15% 前後と、セメント各社よりずっと高い。国土強靱化(災害に強い国づくり)の予算が、この分野を支えている。
弱みは、国内の需要が縮む領域にいることだ。ヒューム管の国内需要は、ピークの 1972 年度から 4 割も残っていない。成長は、新しい製品と買収で作るしかない。
2025 年 10 月に IHI の建材子会社を、約 13 億円で買った。トンネル調整池の部材で参入する足場になるが、この会社は直前まで利益がほぼ出ていなかった。ここが、今後 10 年でいちばん読みにくい点だ。
今期の純利益 103 億円は、この買収で出た一度きりの利益を含む。来期の会社予想は 47 億円で、筆者はこちらを実力に近いと見る。現金は純額で 128 億円ある。還元は厚く、自社株買いも続いている。
バリュー投資の観点から
この会社を持ち続けたいか。筆者の答えは「持ってよいが、安全域はまだ足りない」だ。
事業は 10 年後も必要とされる。雨は降り続け、下水管は老朽化する。ただ、需要の中身は新設から更新に変わり、会社の規模は大きくなりにくい。成長を続けるには、新製品か買収で、もう一段の足場を作る必要がある。
株主が自由に使える利益は大きい。設備投資は小さく、減価償却と同じくらいで足りる。利益のほとんどを、配当と自社株買いに回せる。これは、この会社のいちばんの美点だ。
一方で、資本の使い方は、まだ実績が浅い。IHI 建材工業の買収は安く買ったが、利益が出ていなかった会社だ。立て直せば大きな価値になるが、うまくいかなければ、のれんは軽いが時間を失う。
現金は純額で 128 億円あり、時価総額の 2 割ある。ただ、公共工事の会社は、売上が立つ前に材料費を払う。運転資金を引くと、本当に余る現金は 60 億円ほどと筆者はみる。
払う値段は、筆者の見立てでは本質価値とほぼ釣り合う。大きな安全域はない。強靱化の追い風と買収の成功が両方来れば報われるが、片方だけなら、資本コストをわずかに上回る程度に収まる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、コンクリート二次製品だ。工場で型に流して作るプレキャスト製品で、現場で固める生コンとは別の商売になる。
コンクリート事業は売上の約 7 割を占める。下水道のヒューム管、組立式マンホール「エスホール」、雨水貯留の「M.V.P. システム」、ボックスカルバート(四角い水路)が主力だ。会社は雨水関連の製品でシェア首位と説明している。道路、鉄道、防衛向けの製品もある。
斜面防災は、落石や土砂崩れを防ぐ柵や工法だ。売上は 50 億円台と小さいが、利益率は 3 割を超える。会社の利益を、この事業がかなり押し上げている。
パイルは、建物の基礎に打つコンクリートの杭を作り、打ち込む工事も行う。民間の建築需要に左右され、利益はほとんど出ない。米国の関税の影響で、2026 年 3 月期の上期は売上が 4 割近く減り、赤字になった。
その他には、油圧ホースの保守と、半導体装置向けのセラミックスがある。
会社の成り立ちは合併の歴史だ。2014 年に日本ゼニスパイプ、羽田ヒューム管、羽田コンクリート工業が一つになった。2018 年に福井のホクコンと持株会社を作り、2021 年に事業会社も統合した。2022 年に油圧ホースのプロフレックス、2025 年に IHI 建材工業(現 IKK)を買った。
優良さと弱いところ
堀は、重さと許認可と実績の三つにある。コンクリート製品は重く、遠くへ運ぶと採算が合わない。工場の近くが商圏になり、全国の工場網がそのまま参入の壁になる。
自治体の下水道や調整池の工事では、形式と実績が問われる。エスホールや M.V.P. のような規格品は、一度採用されると設計書に残り、置き換わりにくい。この「仕様に入っている」強さが、付加価値の高い製品の比率を押し上げてきた。
利益の質は、セメント会社と比べて目に見えて良い。営業利益率は直近 8 年のほとんどで 14〜16% に収まり、ROE も多くの年で 11% を超えた。ただし、これは強靱化の予算と、値上げが通った環境に支えられた面がある。
弱い点は三つある。第 1 に、売上が公共事業の発注時期に左右される。第 2 に、パイルのように、利益が出にくい事業を抱えている。第 3 に、主力製品の裾野であるヒューム管そのものは、国内で縮み続けている。
筆者は、堀は「強い」でなく「普通」と見る。同業の日本ヒューム、東洋ヒューム管、旭コンクリート工業なども同じ製品群を持ち、地域によっては競りになる。値段を一方的に決められる立場ではない。
経営は、数字に正直だ。中期計画を掲げ、配当と自社株買いを続け、不採算のパイルは地域を絞った。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のヒューム管の需要は、1972 年度の約 412 万トンから、いまは約 10 万トンまで縮んだ。下水道の新設が一巡し、塩ビ管や現場打ちに置き換わったためだ。会社自身がそう説明している。
それでも、水まわりの需要は消えない。いま伸びているのは、新設でなく「守る工事」だ。大雨による浸水を防ぐ貯留槽や調整池、老朽化した下水管の更新が中心になる。国土強靱化の新しい計画は、2026〜2030 年度に 20 兆円強とされる。
もう一つの流れが、プレキャスト化だ。現場で型枠を組んで固める方法に比べ、工場製は職人の手間を 2 分の 1 から 5 分の 1 に減らせる。人手不足と残業規制が強まるほど、工場製の価値は上がる。日本での採用率は、全体の 1 割台とされる。
市場の大きさは、筆者の推定になる。雨水・下水向けのプレキャスト製品は、国内で数千億円規模とみる。ベルテクスのコンクリート事業は 300 億円台なので、全体では 1 割に届かず、雨水貯留などの専門分野でだけ首位に立つ構図だ。
競争は、地域ごとに決まる。運べる範囲が限られるため、全国一律の値下げ合戦にはなりにくい。一方、入札で決まる工事では、同業の工場が近くにあれば値引きが出る。
費用面では、セメントと鋼材、運送費、人件費が効く。運送業の人手不足で、工場から運べる範囲が狭まっている。会社が工場を統廃合しているのも、この流れへの対応だ。
脱炭素は、セメントほど重くは効かない。ただ、製品に使うセメントの値上がりは、製品価格への転嫁が追いつくかどうかの勝負になる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、株主に優しい。配当性向 30% を目安に、総還元性向 50% 以上を掲げる。自社株買いも毎年のように行い、2025 年度は計 12 億円ほどを買った。配当は 2027 年 3 月期にさらに増やす予定だ。
買収の枠は 100〜150 億円で、借入で払う方針だ。IHI 建材工業の取得は約 13 億円と小さく、買った額を大きく下回る純資産を持つ会社だったため、一度きりの利益が出た。この会社の営業利益はほぼゼロで、立て直しが前提になる。
株主の構成は、経営に緊張感を与えている。筆頭株主は太平洋セメントで、持株は 1 割弱だ。投資ファンドのヴァレックス・パートナーズが 12% 超を持つという大量保有報告も出ている。海外の金融機関の持分も厚く、資本効率への要求は強い。
市場の評価を上げるため、会社はプライム市場への移行を準備している。遊休不動産の売却も進め、2027 年 3 月期の第 1 四半期に売却益を出した。
TOB(株式の公開買い付け)の可能性は、筆者は無視できないとみる。時価総額が 600 億円規模で、筆頭株主も同じ業界にいる。ただ、買う側にとって、利益率の高い製品だけを分けるのは難しい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国土強靱化の予算は、2026〜2030 年度に 20 兆円強と、前の計画より増えた。浸水対策と下水道の更新は、いまの政策で最も確実な需要だ。ベルテクスは、雨水貯留と組立式マンホールで首位級にあり、予算が増えれば最初に受注が来る。
買収した IKK の強みが効く。地下トンネル型の調整池は、2030 年までに 1,360 億円、その後は 3,000 億円超の事業が見込まれる。合成セグメントという部材は、競合が少なく、コスト面でも有利だと会社はみる。ここで受注できれば、売上の層がもう一枚増える。
プレキャスト化も追い風だ。人手不足で現場打ちが成り立たなくなり、工場製の採用率は 1 割台から上がる。富士経済は、2029 年にコンクリート市場の 2 割弱をプレキャストが占めるとみる。
値上げの力も証明済みだ。上期は価格改定と販売量の増加で、利益を約 14 億円押し上げた。原価の上昇を、高付加価値製品の比率を上げて吸収している。
長期ビジョンは、2034 年に売上 1,000 億円、営業利益 150 億円だ。いまの 2 倍の規模で、買収が一つ二つ当たれば、現実の範囲に入る。還元が厚いので、利益が伸びれば株主への戻りも大きい。
慎重な見方
国内の需要は、長い目で見れば縮み続ける。ヒューム管は、ピークの 4 割どころか 1 割にも満たない。強靱化の予算は、2030 年度で一区切りになる。その後に、同じ規模が続く保証はない。
来期の会社予想は、営業利益が 71 億円とほぼ横ばいだ。売上は 520 億円と 1 割以上増える計画なので、利益率は下がる。買収した IKK が薄い利益で入ってくるうえ、第 1 四半期の営業利益は大型案件の不在で半分以下に落ちた。公共工事の会社は、期ごとの波が大きい。
パイルは、米国の関税の影響で民間工事が止まり、上期は赤字だった。この事業は、景気が悪いときに数字を足す側にしか回らない。
買収の失敗も、可能性として大きい。IKK は、IHI が手放した事業だ。親会社が持ち続けたい事業であれば、売らない。立て直す間にコストが先行し、のれん的な負担と人員の整理が必要になる恐れがある。
今期の純利益 103 億円は、買収で出た一度きりの利益を含む。普段の姿は 47 億円で、半分以下だ。現金が多く見えても、配当性向 50% の還元を続ければ、積み上がらない。同業との価格競争が再燃すれば、利益率は 10% 台前半まで下がる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。主な理由は、会社の予想が横ばいで、成長を作るには買収の成否に頼るしかないことだ。ただ、強気の見方にも根拠がある。強靱化の予算と、プレキャスト化の流れは、構造的な追い風だからだ。
中立を 4 割弱に置き、やや悲観を 3 割近くまで厚くした。強気は、強靱化と買収の両方が当たる必要があるため、合わせて 2 割台半ばにとどめた。悲観は、価格競争の再燃と買収の失敗が重なる筋書きで、1 割強とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,105 円1,033 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 618 円303 億円)。 今の値に割り戻すと 1,481 円727 億円、今との差 +20.2%、 期待の年率 +8.3%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,155 円2,040 億円 | 864 円424 億円 | +307.4% | +15.1% | 401 円197 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,068 円1,506 億円 | 774 円380 億円 | +211.9% | +12.0% | 692 円340 億円 |
| 中立 | 36% | 2,615 円1,284 億円 | 656 円322 億円 | +165.5% | +10.3% | 1,178 円578 億円 |
| やや悲観 | 27% | 920 円452 億円 | 538 円264 億円 | +18.3% | +1.7% | 394 円193 億円 |
| 悲観 | 11% | 274 円135 億円 | 255 円125 億円 | −57.1% | −8.1% | 58 円29 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,105 円1,033 億円 | 618 円303 億円 | +121.0% | +8.3% | 2,722 円1,337 億円 |
今の株価時価総額 1,232 円605 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 強靱化と買収が両方当たり、規模が 2 倍近くになる 利益 105 億円 · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 4,155 円2,040 億円
強靱化の予算が 2030 年度以降も高い水準で続き、浸水対策と下水道の更新が受注の中心になる。IKK の合成セグメントがトンネル調整池の大型案件を取り、コンクリート事業の数量はいまの 1.3 倍まで増える。工場製への切り替えが進み、値段も物価を超えて上がる。
斜面防災は土砂災害対策の需要で 9 割増え、その他の事業も半導体向けのセラミックスと保守で伸びる。営業利益は 146 億円で、会社が掲げる 2034 年の目標 150 億円にほぼ届く。
資本はさらに軽くなる。配当と自社株買いを純利益の 55% で続けても、現金が積み上がる。ROE は 13% 台まで回復する。
- コンクリート:数量 150(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 4.35(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 3 万円)→ 売上 652 億円・営業利益 130 億円。数量 1.31 倍・価格 1.45 倍、営業利益率 20.0%
- パイル:数量 13.5(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 2.68(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 2 万円)→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 5.0%
- 斜面防災:数量 14.0(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 6.70(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 5 万円)→ 売上 94 億円・営業利益 31 億円。数量 1.27 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 33.0%
- その他(油圧ホース保守・セラミックス):数量 520(取扱量(千件・千個換算、推定))× 価格 0.13(1 千件あたりの売上(億円)。1 件約 10 万円)→ 売上 70 億円・営業利益 11 億円。数量 1.33 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 16.0%
倍率:事業の純利益 104 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 18.84 倍、時価総額 2,022 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強靱化の追い風と IKK の立て直しが両方当たる必要があり、確率は厚くできない。
やや楽観 18% 更新需要を取り込み、買収も順調に進む 利益 82 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 3,068 円1,506 億円
更新需要が着実に伸び、IKK の立て直しも進む。コンクリート事業の数量は 2 割増え、値段は物価をやや上回る。付加価値の高い製品の比率が上がり、利益率は 18% 台に乗る。
斜面防災は 2 割強の数量増、その他も 15% 前後の利益率を保つ。パイルは小さな黒字にとどまる。営業利益は 117 億円で、会社の長期ビジョンの 8 割弱に当たる。
還元は純利益の 55% を保つ。成長は物価と買収の寄与が大半で、実質の伸びは控えめだ。ROE は 11% 台に乗る。
同業との競りは続くが、仕様に入った製品の強さで、値引きの圧力は小さくとどまる。
- コンクリート:数量 138(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 4.20(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 3 万円)→ 売上 580 億円・営業利益 107 億円。数量 1.20 倍・価格 1.40 倍、営業利益率 18.5%
- パイル:数量 13.0(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 2.68(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 2 万円)→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。数量 0.96 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 4.0%
- 斜面防災:数量 12.5(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 6.70(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 5 万円)→ 売上 84 億円・営業利益 26 億円。数量 1.14 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 31.0%
- その他(油圧ホース保守・セラミックス):数量 450(取扱量(千件・千個換算、推定))× 価格 0.13(1 千件あたりの売上(億円)。1 件約 10 万円)→ 売上 60 億円・営業利益 9 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 15.0%
倍率:事業の純利益 81 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 17.55 倍、時価総額 1,484 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新需要は確かだが、売上の増え方は買収次第なので、中立より薄く置いた。
中立 36% 縮む国内を新製品と物価が支える 利益 69 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 2,615 円1,284 億円
国内の需要は縮むが、水まわりの更新と防災が下支えし、数量は買収の通年化も含めて 1 割ほど増える。値段は物価並みに、付加価値の高い製品の比率がわずかに上がる分だけ上回る。
コンクリートの利益率は 17%、斜面防災は 3 割、パイルは小さな黒字、その他は 14% にとどまる。営業利益は 98 億円で、今の 71 億円から 4 割ふえるが、大半は物価の分だ。
IKK は、会社の言う合成セグメントの足場は作るが、利益の押し上げは小さいと見る。還元は純利益の 55% で続き、自社株買いが配当と並ぶ。ROE は 10% 前後に落ち着く。
- コンクリート:数量 125(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 4.20(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 3 万円)→ 売上 525 億円・営業利益 89 億円。数量 1.09 倍・価格 1.40 倍、営業利益率 17.0%
- パイル:数量 12.2(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 2.68(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 2 万円)→ 売上 33 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 3.0%
- 斜面防災:数量 12.6(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 6.70(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 5 万円)→ 売上 84 億円・営業利益 25 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 30.0%
- その他(油圧ホース保守・セラミックス):数量 470(取扱量(千件・千個換算、推定))× 価格 0.13(1 千件あたりの売上(億円)。1 件約 10 万円)→ 売上 63 億円・営業利益 9 億円。数量 1.21 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 68 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)60 億円。全体の PER 17.22 倍、時価総額 1,234 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量はほぼ横ばい、価格は物価並みという、業種のノートの中心値に近い形。
やや悲観 27% 予算の山が過ぎ、利益率が痩せていく 利益 40 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 920 円452 億円
強靱化の予算が 2030 年度で一区切りとなり、公共工事の発注が頭打ちになる。同業との入札競争が強まり、価格は物価に届かず、コンクリート事業の利益率は 14% に下がる。
IKK は想定どおりに立ち直らず、のれんの負担はないが、利益への貢献はほとんど出ない。パイルは赤字を脱せず、事業の縮小が続く。斜面防災は需要が落ち着き、利益率が 26% に下がる。
営業利益は 59 億円で、物価で水増しした今の 71 億円を実質で大きく下回る。還元は純利益の 6 割を超え、現金は少し減る。ROE は 6% 台に落ちる。
- コンクリート:数量 112(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 3.90(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 3 万円)→ 売上 437 億円・営業利益 61 億円。数量 0.98 倍・価格 1.30 倍、営業利益率 14.0%
- パイル:数量 10.5(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 2.50(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 2 万円)→ 売上 26 億円・営業利益 0 億円。数量 0.78 倍・価格 1.25 倍、営業利益率 0.0%
- 斜面防災:数量 11.0(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 6.30(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 5 万円)→ 売上 69 億円・営業利益 18 億円。数量 1.00 倍・価格 1.26 倍、営業利益率 26.0%
- その他(油圧ホース保守・セラミックス):数量 400(取扱量(千件・千個換算、推定))× 価格 0.13(1 千件あたりの売上(億円)。1 件約 10 万円)→ 売上 50 億円・営業利益 6 億円。数量 1.03 倍・価格 1.25 倍、営業利益率 12.0%
倍率:ROE が k を下回るため、ためた利益は額面の価値に届かず、PER は 1÷k を下回る。上限の約 7 割まで引き上げず、構造的な負けの側として低く置く。
確率:会社予想が横ばいで、国内の縮小を完全に補う材料が見えないため、やや厚めに置いた。
悲観 11% 価格競争が再燃し、買収も失敗する 利益 8 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 274 円135 億円
価格競争が再燃する。強靱化の予算が縮み、各社の工場が受注を奪い合う。コンクリート事業は、利益率が 8% まで下がる。IKK の立て直しも失敗し、赤字が続いて人員と工場を整理する。
パイルは赤字が続き、事業の一部を畳む。斜面防災は需要が頭打ちで、利益率も 2 割を割る。営業利益は 13 億円まで落ちる。
仕様に入っていた製品も、入札では同業の値引きに巻き込まれる。運送費の上昇が、利益をさらに削る。
会社は構造的に、優良な専門メーカーでなくなる。減損が 80 億円出て、自己資本も減る。配当は純利益の半分に絞り、買収の枠は使えなくなる。それでも、純現金と工場の遊休地が、株価の床になる。
- コンクリート:数量 95.0(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 3.45(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 3 万円)→ 売上 328 億円・営業利益 26 億円。数量 0.83 倍・価格 1.15 倍、営業利益率 8.0%
- パイル:数量 8.0(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 2.20(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 2 万円)→ 売上 18 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.59 倍・価格 1.10 倍、営業利益率 -3.0%
- 斜面防災:数量 9.0(出荷量(万トン換算、推定))× 価格 5.50(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 5 万円)→ 売上 50 億円・営業利益 9 億円。数量 0.82 倍・価格 1.10 倍、営業利益率 18.0%
- その他(油圧ホース保守・セラミックス):数量 330(取扱量(千件・千個換算、推定))× 価格 0.11(1 千件あたりの売上(億円)。1 件約 10 万円)→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。数量 0.85 倍・価格 1.10 倍、営業利益率 6.0%
倍率:事業の ROE が k を大きく下回る構造的な負け。稼ぐ力の純利益 ÷ k に置く(上限の 100%)。床は純現金と遊休地で、下値は支えられる。
確率:価格競争の再燃と買収の失敗が重なる構造的な負け。同業との競りがあるため 1 割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンクリート
下水道・浸水対策のヒューム管、組立式マンホール、雨水貯留槽、ボックスカルバート。IKK(トンネル部材)を含む。
| 数量出荷量(万トン換算、推定) | 価格1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 3 万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 115 | 3.00 | 344 | 62 |
| 10 年後 中立 | 125 | 4.20 | 525 | 89 |
取り方:開示に重さの数量は無く、2026 年 3 月期のセグメント売上(会社予想 281 億円に IKK の半期分約 60 億円を足した 344 億円と推定)を、1 トン約 3 万円で割って重さの換算を置いた。実質の出荷量で置き、物価は価格に入れる。利益 62 億円(利益率 18%)も予想と上期から組み直した推定。
パイル
コンクリートパイルの製造・販売と杭打ち工事。販売地域と案件を絞っている。
| 数量出荷量(万トン換算、推定) | 価格1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 2 万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13.5 | 2.00 | 27 | 1 |
| 10 年後 中立 | 12.2 | 2.68 | 33 | 1 |
取り方:2026 年 3 月期の会社予想 34 億円を、上期の実績(売上 37.9% 減)を踏まえ 27 億円と推定し、1 トン約 2 万円で割った。利益はほぼゼロとみる。
斜面防災
落石・土砂崩れ対策の柵や工法。利益率が高い。
| 数量出荷量(万トン換算、推定) | 価格1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 5 万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 11.0 | 5.00 | 55 | 19 |
| 10 年後 中立 | 12.6 | 6.70 | 84 | 25 |
取り方:2026 年 3 月期の会社予想 55 億円、セグメント利益 17.6 億円を使い、鋼材とコンクリートの加工品として 1 トン約 5 万円で重さに換算した。上期は前年比 16% 増、利益率 3 割。
その他(油圧ホース保守・セラミックス)
油圧ホースの保守(プロフレックス)と、半導体製造装置向けのセラミックス。
| 数量取扱量(千件・千個換算、推定) | 価格1 千件あたりの売上(億円)。1 件約 10 万円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 390 | 0.10 | 39 | 9 |
| 10 年後 中立 | 470 | 0.13 | 63 | 9 |
取り方:2026 年 3 月期の会社予想 40 億円(利益 8.5 億円)から 39 億円と推定し、1 件約 10 万円で件数に換算した。油圧ホースは目標に届かず、セラミックスは半導体向けが好調。
リスクと懸念
強靱化の予算が途切れる
売上は、公共工事の発注に左右される。国土強靱化の新計画は 2026〜2030 年度に 20 兆円強とされるが、その後も続くとは限らない。予算が薄くなれば、浸水対策と下水道更新の受注が減り、工場の稼働が落ちる。
値上げが続かない
2026 年 3 月期の上期は、価格改定と販売増で利益が約 14 億円増えた。ただ、入札では同業の工場が近いと値引きが出る。セメントや鋼材、運送費の上昇を転嫁できなければ、利益率が先に削られる。
IKK の立て直しが進まない
IKK(旧 IHI 建材工業)は、取得前の営業利益がほぼゼロだった。取得額は小さいが、事業を回すには人員と設備の手当てが要る。のれん的な処理は軽くても、利益への貢献が出るまでは時間がかかる。
パイル事業の低迷
パイルは、民間の建築需要に左右される。米国の関税の影響で、上期は売上が 4 割近く減り、赤字になった。利益がほとんど出ない事業に、人と設備を割き続ける負担は小さくない。
運送と人手の制約
コンクリート製品は重く、遠くへ運ぶと採算が合わない。運送業の人手不足で、運べる範囲が狭まっている。会社は工場を統廃合して対応するが、受注できる地域が狭まる副作用もある。
期ごとの利益のぶれ
来期の第 1 四半期は、大型案件がなく、営業利益が半分以下になった。公共工事の会社は、出荷の時期で四半期ごとに大きく動く。短期の数字だけで評価すると、判断を誤る。
還元と買収の両立
総還元性向 50% 以上を続けながら、100〜150 億円の買収枠も借入で使う方針だ。両方を実行すると、純現金は減る。買収が外れたとき、還元が先に削られる可能性がある。
今後の分かれ目
- 強靱化の次の計画が、2030 年度以降も同じ水準で閣議決定されたら
- 需要の見通しが 10 年に延びる。やや楽観と楽観の確率を上げる。
- IKK が合成セグメントでトンネル調整池の大型案件を受注したら
- 買収の効果が見え始める。数量と営業利益率の両方を上げて見直す。
- コンクリート事業の営業利益率が 15% を割り込んだら
- 値上げの転嫁が止まった合図で、やや悲観の確率を上げる。
- パイルの赤字が続き、事業の縮小や撤退が決まったら
- 利益の足を引く部分が消える。短期の損失は出るが、全体の利益率は改善する。
- 第 4 次中期経営計画で、2034 年の目標が下方修正されたら
- 成長の筋書きを見直し、中立の営業利益を下げる。
- 太平洋セメントやファンドが持株を増やす、または TOB が出たら
- 値段が変わる可能性があるが、筆者の見立てる本質価値は変えない。
見ておくもの
- 国土強靱化の次期計画と下水道・調整池の予算
- コンクリート事業の営業利益率と価格改定の浸透度
- IKK の合成セグメントの受注と黒字化の時期
- パイルの収益と撤退・縮小の判断
- 第 4 次中期経営計画の数値と還元方針
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER からは決めていない。セグメントごとに数量と価格を積み、事業の ROE と資本コストから正当化 PER の上限を出し、利益の質で上限の 8 割台に置いた。今の PER や過去の PBR とは比べていない。純現金のうち 60 億円は運転資金と買収枠の分を除いた余りとして別に足し、残りは事業の資本として扱った。悲観は価格競争の再燃と買収の失敗で稼ぐ力が落ちる筋書きとし、純現金と遊休地の売却益が床になる。リースは小さく、新リース会計基準で 2028 年 3 月期から数字の形が変わる影響は大きくない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16→18.84 倍・やや楽観 PER 14.5→17.55 倍・中立 PER 13→17.22 倍・悲観 PER 12.9→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。