結論
住友大阪セメントは国内 3 位のセメント会社で、半導体製造装置向けの部品も手がける。筆者の結論は「割高」だ。国内セメントは利益がほとんど出ず、静電チャックという半導体部品がそれを埋める構図になっている。ただ資本が重く、稼ぐ力は資本コストに届かない。
セメントは売上の 7 割を占めるのに、営業利益は 55 億円しかない。国内需要は 3,053 万トンと前年から 6.5% 縮み、値上げでようやく黒字を保った。前の 3 年計画は営業利益 214 億円を掲げたが、実績は 136 億円で終わった。
静電チャックは半導体の製造装置の中で、ウエハーを吸い付けて固定する部品だ。新しい工場棟が動き出し、生産能力は 2 倍になる。ここが伸びれば会社の姿は変わる。ただ顧客は偏り、収益性は競合に見劣りすると会社自身が認めている。
株主還元は厚くなる。配当の下限を設け、総還元性向は 5 割以上を続ける。持ち合い株の売却も進む。それでも本質価値を変えるのは利益であって、還元の約束ではない。
中立の 10 年後は営業利益 250 億円、純利益 170 億円。ROE は 6〜7% で資本コストの 8.5% に届かず、PER は 9 倍台が妥当だ。強気が当たれば時価総額は 2 倍になるが、確率で重みをつけた本質価値は今の値段を下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「持ちたい会社」ではない。理由は 3 つある。
第 1 に、事業の中心が衰える市場にある。国内セメントは数量が毎年縮み、値上げでようやく利益を保っている。第 2 に、稼ぐお金のほとんどが設備に消える。減価償却と同じ規模の投資を続けないと、今の利益を維持できない。株主の手元に残るお金は、見かけの利益よりずっと小さい。第 3 に、資本効率が資本コストを下回り続けてきた。事業を続けるほど、株主の価値は薄まる。
一方、静電チャックには光るところがある。世界の半導体需要が伸びる限り、数量は増える。会社はそこに 130 億円を投じ、生産能力を倍にした。この投資が資本コストを上回るかが、筆者の最大の関心だ。
今の値段には、この期待がかなり織り込まれていると筆者は見る。事業の稼ぐ力から割り戻すと、時価総額は 1,150 億円前後が妥当で、今は 5 割ほど高い。安全域が取れるのは、半導体部品の収益が会社の計画を上回った場合に限られる。それを確かめてから動いても遅くない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は大きく 3 本ある。セメントと生コンを売る事業、石灰石などの鉱産品、半導体向けなどの高機能品だ。
セメントは売上 1,588 億円、営業利益は 55 億円。国内で 697 万トン、輸出で 137 万トンを売る。国内の市場占有率は 2 割強で、太平洋セメントと UBE 三菱セメントに次ぐ 3 位だ。セメントは重く、遠くへ運べない。工場の近くが商圏になり、利益は石炭と電力の値段に大きく左右される。
鉱産品は石灰石やドロマイトなどを売る事業で、営業利益は 30 億円。採掘費が上がり、値上げで食いつないでいる。建材はコンクリートの補修・補強材などで売上 230 億円、営業利益は 15 億円。派手さはないが、安定した小さな事業だ。
成長を担うのが高機能品だ。中心の静電チャックは、半導体の製造装置の中でウエハーを固定する部品で、新材料事業の営業利益は 25 億円。光通信用の変調器を扱う光電子事業は赤字が続いてきた。2026 年度からこの 2 つを高機能品としてまとめ、営業利益 42 億円を計画する。
この他にソフトウエア販売や不動産などが営業利益 14 億円。石灰石の山と、廃棄物を燃やして燃料や原料に使う技術が、セメントと他の事業をつないでいる。
優良さと弱いところ
筆者の見立てでは、事業の質は「普通よりやや下」だ。堀(他社がまねできない強み)は、国内セメントの地理的な寡占にあるだけで、利益を押し上げるほどの力はない。
国内セメントは、少数の会社が運べる範囲を分け合う構図で、値上げは通りやすい。だが売上の 7 割がこの事業で、営業利益率は 3.5% しかない。過去を見ても、利益率が 10% を超えたのは 2015 年前後が最後だ。しかも数量は人口とともに縮み続ける。
資本の効率も低い。減価償却は年 236 億円、設備投資は 327 億円で、稼ぐ現金のほとんどを設備が吸う。ROE は過去 10 年の中央値が 5.6% と、資本コストの 8.5% を一貫して下回ってきた。
静電チャックは数少ない伸びる事業だ。ただ世界の競合は日本ガイシ、京セラ、TOTO、新光電気など層が厚く、住友大阪は上位とは言えない。会社自身が、顧客の偏りと収益性の見劣りを認めている。
経営にも課題がある。前の 3 年計画は営業利益 214 億円に対して実績は 136 億円と、大きく外した。新しい計画は 270 億円と強気で、実現の根拠はまだ薄い。一方で資本の使い方は改まりつつあり、持ち合い株の売却と還元の増額は評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内セメントは長い縮小の途中にある。需要は 1990 年の 8,600 万トンから、2025 年度は 3,053 万トンまで落ちた。2026 年度は 3,000 万トンと、1963 年度並みの水準になる見通しだ。
人口が減り、新築が減る。補修や防災の公共投資が下支えするが、縮みを止めるほどではない。筆者は、10 年で数量が 1 割弱減ると見ている。
縮む市場を支えているのは、少数の会社による価格の維持だ。太平洋セメントと UBE 三菱セメント、住友大阪の 3 社で大半を握る。UBE と三菱マテリアルのセメント事業を統合した会社は、2026 年 7 月に上場を申請した。九州の拠点の集約にも動いている。業界の再編は、すでに始まっている。
費用の側では、石炭・電力の値段と脱炭素が重い。石炭が 1 ドル動くと営業利益は年に約 1 億円動く。二酸化炭素を減らす設備や、廃棄物を燃料に変える投資が、今後 10 年の固定費を押し上げる。
高機能品の側の風は逆だ。生成 AI で半導体の需要が増え、製造装置の中の部品である静電チャックの需要も伸びる。回路が複雑になるほど、1 枚あたりに使う部品の数と性能が増える。ただ半導体は景気の波が大きく、2〜3 年ごとに谷が来る。
資本政策と M&A
資本政策は、ようやく株主を向き始めた。新しい 3 年計画は、総還元性向を平均 5 割以上とし、配当に下限を設けた。前の 3 年は 62% で、自社株買いも 50 億円行った。
持ち合い株は純資産の 17% にあたる。これを 2028 年度末に 10% 未満へ減らす。売って得た現金は、成長投資と還元に回る。ただ売却益は一度きりで、来期の純利益が 100 億円と減る要因もこれだ。
設備投資は 3 年で約 1,000 億円と重い。営業の現金収入に近い規模で、財務に余裕は生まれにくい。純有利子負債は 698 億円で、時価総額の 4 割にあたる。
大株主では、英国の運用会社シルチェスターが 8% 超を持つ。この種の株主は、還元の増額や資産の見直しを求めやすい。業界の再編では、買う側というより、統合を持ちかけられる側に立つ可能性が高い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
静電チャックが会社の計画を大きく上回る。生成 AI で先端の半導体工場が増え続け、部品の需要が 2 倍以上に膨らむ。新工場棟は満杯になり、増産余地を使い切る。顧客の偏りは新しい顧客の獲得で薄れ、利益率は競合に近づく。高機能品の営業利益は 140 億円に届く。
同時に、国内セメントの値上げが定着する。3 社の寡占が崩れず、コスト増を毎年転嫁できる。UBE 三菱セメントの上場後、業界の価格規律はむしろ強まる。国内の営業利益率は 2015 年前後の水準まで戻り、セメントだけで 200 億円近く稼ぐ。
持ち合い株の売却と配当の下限、自社株買いで資本は軽くなる。ROE は 10% を超え、資本コストを上回る。PER は 11 倍台が正当化される。会社の 2035 年の目標である営業利益 400 億円も超える。
10 年の時間をかけて、半導体部品の会社へと評価が変わる。この見方が当たれば、時価総額は今の 2 倍に届く。ただし、半導体の景気の波と顧客の偏りを考えると、すべてが同時に当たる確率は低い。
慎重な見方
縮む国内が、静電チャックの伸びを食い尽くす。国内の需要は年 1〜2% ずつ減り、設備の稼働率は下がる。固定費が重く、値上げは石炭・電力・人件費と脱炭素の費用で消える。セメントの営業利益率は今の 3.5% から 4% 前後にとどまり、改善の余地はない。
計画は何度も外れてきた。前の 3 年計画の営業利益 214 億円に対し、実績は 136 億円だった。新しい計画の 270 億円は、値上げが通ることを前提にしており、中東情勢による石炭高も十分に織り込まれていない。
静電チャックは伸びても、儲からない。世界の競合は層が厚く、会社自身が収益性の見劣りを認めている。新棟の減価償却だけで年 8 億円の重荷になり、顧客が偏っているため値下げの圧力に弱い。光通信の変調器は次世代品が遅れ、赤字が続く。
資本の面でも楽観できない。投資が年 300 億円を超える中で、還元を 5 割保てば財務に余裕がなくなる。ROE は資本コストに届かないまま、PER は 7 倍台にとどまる。筆者はこの指摘に説得力があると見る。
どちらに重みを置いたか
筆者は慎重な見方がやや強いと判断し、確率を悲観側に寄せた。理由は、強気の前提が複数同時に当たる必要があるからだ。国内の値上げの定着、静電チャックの収益性の改善、半導体の需要の持続がそろわないと、資本コストを超えられない。
一方で慎重な見方も、静電チャックの伸びを軽く見すぎている。新棟が埋まれば高機能品の利益は 70 億円を超えうる。このため中立の確率を 37% と最も厚くし、やや悲観を 26%、悲観を 11% とした。楽観とやや楽観は合わせて 26% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,358 円2,243 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 720 円685 億円)。 今の値に割り戻すと 1,583 円1,505 億円、今との差 −7.9%、 期待の年率 +6.0%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,715 円4,485 億円 | 1,156 円1,100 億円 | +241.7% | +13.1% | 470 円447 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,554 円3,380 億円 | 925 円880 億円 | +160.6% | +10.1% | 806 円767 億円 |
| 中立 | 37% | 2,559 円2,435 億円 | 710 円675 億円 | +90.2% | +6.6% | 1,210 円1,151 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,361 円1,295 億円 | 631 円600 億円 | +15.9% | +1.5% | 518 円493 億円 |
| 悲観 | 11% | 370 円352 億円 | 315 円300 億円 | −60.1% | −8.8% | 75 円72 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,358 円2,243 億円 | 720 円685 億円 | +79.2% | +6.0% | 3,079 円2,929 億円 |
今の株価時価総額 1,719 円1,635 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 半導体部品が稼ぎ頭になり、セメントも値上げが定着する 利益 300 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 4,715 円4,485 億円
静電チャックの需要は 10 年で 2 倍以上に膨らむ。新棟は満杯になり、先端の工程向けの高い品種が増える。高機能品の営業利益は 140 億円に届き、会社の主力が入れ替わる。
国内セメントでは、3 社の寡占が崩れない。UBE 三菱セメントの統合後も価格は守られ、値上げは物価を 1 割ほど上回る。数量は 1 割弱減るが、営業利益は 200 億円近くまで戻る。鉱産品と建材も物価並みに伸びる。
全体の営業利益は 420 億円。会社の 2035 年の目標を超える。ROE は 10% を超え、資本コストを上回る。持ち合い株を現金化し、還元も厚くなる。ただ、これは過去 20 年のどの年よりもよい姿だ。
- セメント(国内・輸出):数量 809(セメントの販売量(万トン/年、国内販売+輸出))× 価格 2.86(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 1.9 万円相当(生コンなどを含む))→ 売上 2,311 億円・営業利益 196 億円。数量は今の 0.97 倍、価格は今の 1.50 倍、営業利益率 8.5%
- 鉱産品:数量 875(出荷量(万トン/年、推定))× 価格 0.28(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 2 千円と仮定)→ 売上 248 億円・営業利益 43 億円。数量は今の 1.00 倍、価格は今の 1.42 倍、営業利益率 17.5%
- 建材:数量 4,600(取引の件数(件、推定))× 価格 0.07(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 322 億円・営業利益 26 億円。数量は今の 1.00 倍、価格は今の 1.40 倍、営業利益率 8.0%
- 高機能品(静電チャック・光電子):数量 48,070(出荷枚数・点数(枚、推定。静電チャックと光部品の合計))× 価格 0.01(1 枚あたりの売上(億円)。平均 100 万円と仮定。ミックス改善と値下がりの差を含む)→ 売上 654 億円・営業利益 137 億円。数量は今の 2.30 倍、価格は今の 1.36 倍、営業利益率 21.0%
- その他(ソフト・不動産など):数量 1,140(取引の件数(件、推定))× 価格 0.04(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 46 億円・営業利益 17 億円。数量は今の 0.95 倍、価格は今の 1.34 倍、営業利益率 36.0%
倍率:事業の純利益 297 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)184 億円。全体の PER 14.51 倍、時価総額 4,500 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 14.16 倍・時価総額 4,248 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:静電チャックの急拡大と国内の値上げ定着が同時に当たる形。半導体の景気の波と顧客の偏りがあり、重なる確率は低い。
やや楽観 18% 静電チャックが計画どおり育ち、国内も黒字を保つ 利益 240 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 3,554 円3,380 億円
静電チャックは新棟が埋まり、数量が 10 年で 2 倍になる。高機能品の営業利益は 100 億円を超え、会社の 2028 年の目標 70 億円を通過点にする。顧客の偏りは残るが、歩留まりの改善で収益性は競合に近づく。
国内セメントは、数量が年 0.5% ほど縮む。値上げは物価を 4% ほど上回って通り、営業利益率は 7.5% まで戻る。セメントの営業利益は 160 億円。石炭と電力の高騰は転嫁できる。
全体の営業利益は 340 億円。会社の計画をほぼ達成する姿だ。ROE は 8% 台で、資本コストにほぼ届く。還元は純利益の 5 割強を保つ。それでも資本が重い構造は残り、株主に残るお金は見かけより小さい。
- セメント(国内・輸出):数量 792(セメントの販売量(万トン/年、国内販売+輸出))× 価格 2.67(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 1.9 万円相当(生コンなどを含む))→ 売上 2,112 億円・営業利益 158 億円。数量は今の 0.95 倍、価格は今の 1.40 倍、営業利益率 7.5%
- 鉱産品:数量 849(出荷量(万トン/年、推定))× 価格 0.27(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 2 千円と仮定)→ 売上 231 億円・営業利益 39 億円。数量は今の 0.97 倍、価格は今の 1.36 倍、営業利益率 17.0%
- 建材:数量 4,462(取引の件数(件、推定))× 価格 0.07(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 306 億円・営業利益 21 億円。数量は今の 0.97 倍、価格は今の 1.37 倍、営業利益率 7.0%
- 高機能品(静電チャック・光電子):数量 41,800(出荷枚数・点数(枚、推定。静電チャックと光部品の合計))× 価格 0.01(1 枚あたりの売上(億円)。平均 100 万円と仮定。ミックス改善と値下がりの差を含む)→ 売上 560 億円・営業利益 106 億円。数量は今の 2.00 倍、価格は今の 1.34 倍、営業利益率 19.0%
- その他(ソフト・不動産など):数量 1,104(取引の件数(件、推定))× 価格 0.04(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 16 億円。数量は今の 0.92 倍、価格は今の 1.34 倍、営業利益率 36.0%
倍率:事業の純利益 237 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)184 億円。全体の PER 13.39 倍、時価総額 3,363 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 13 倍・時価総額 3,120 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:新計画の目標に近づく形。値上げが緩やかに通り、新棟が埋まる前提。前の計画を外した実績があるので厚くは置かない。
中立 37% セメントは物価並みの値上げ、半導体部品が下支え 利益 173 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,559 円2,435 億円
国内の需要は年 1% ほど縮み、10 年後は 2,700 万トン前後になる。値上げは物価並みにとどまり、石炭・電力と脱炭素の費用でほぼ相殺される。セメントの営業利益率は 5.5% にとどまり、営業利益は 110 億円。今の 2 倍だが、前の好況期にはまだ届かない。
静電チャックは数量が 7 割増え、新棟は 8 割前後の稼働で推移する。ただ価格は物価に届かず、利益率は 15% にとどまる。高機能品の営業利益は 70 億円になる。
鉱産品と建材は、数量が減るが物価並みに値上げが通る。全体の営業利益は 250 億円で、物価の分を除くと今の 3 割増しだ。ROE は 6〜7% と資本コストに届かない。還元は純利益の 5 割で、持ち合い株の売却益が上乗せされる。
- セメント(国内・輸出):数量 780(セメントの販売量(万トン/年、国内販売+輸出))× 価格 2.55(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 1.9 万円相当(生コンなどを含む))→ 売上 1,990 億円・営業利益 109 億円。数量は今の 0.94 倍、価格は今の 1.34 倍、営業利益率 5.5%
- 鉱産品:数量 831(出荷量(万トン/年、推定))× 価格 0.27(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 2 千円と仮定)→ 売上 223 億円・営業利益 37 億円。数量は今の 0.95 倍、価格は今の 1.34 倍、営業利益率 16.5%
- 建材:数量 4,370(取引の件数(件、推定))× 価格 0.07(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 293 億円・営業利益 19 億円。数量は今の 0.95 倍、価格は今の 1.34 倍、営業利益率 6.5%
- 高機能品(静電チャック・光電子):数量 35,530(出荷枚数・点数(枚、推定。静電チャックと光部品の合計))× 価格 0.01(1 枚あたりの売上(億円)。平均 100 万円と仮定。ミックス改善と値下がりの差を含む)→ 売上 462 億円・営業利益 69 億円。数量は今の 1.70 倍、価格は今の 1.30 倍、営業利益率 15.0%
- その他(ソフト・不動産など):数量 1,080(取引の件数(件、推定))× 価格 0.04(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 15 億円。数量は今の 0.90 倍、価格は今の 1.34 倍、営業利益率 35.0%
倍率:事業の純利益 170 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)184 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 2,314 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の縮小、物価並みの値上げ、静電チャックの堅実な成長を、業界の見通しの中心値で置いた形。前の計画を外した実績を踏まえ、会社の目標より控えめにした。
やや悲観 26% 国内が加速して縮み、半導体部品も値下げに押される 利益 114 億円 · PER 7.3 倍 · 株価時価総額 1,361 円1,295 億円
国内の需要は年 1.5% 縮み、10 年後は 2,600 万トンを割る。値上げは物価に追いつかず、石炭・電力と脱炭素の費用を転嫁しきれない。セメントの営業利益率は 4% にとどまり、営業利益は 70 億円台。鉱産品の採掘費の増加も続く。
静電チャックは数量が 3 割増えるが、顧客の値下げ要求で価格は物価に届かない。新棟の減価償却が重く、利益率は 13% に落ち着く。光通信の変調器は、次世代品の遅れで赤字を抜け出せない。
全体の営業利益は 170 億円。物価を考えると今と変わらない。ROE は 4% 台で、普通の素材会社として扱われる。配当は守るが、自社株買いは細る。財務の余裕は少しずつ減る。
- セメント(国内・輸出):数量 734(セメントの販売量(万トン/年、国内販売+輸出))× 価格 2.48(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 1.9 万円相当(生コンなどを含む))→ 売上 1,817 億円・営業利益 73 億円。数量は今の 0.88 倍、価格は今の 1.30 倍、営業利益率 4.0%
- 鉱産品:数量 788(出荷量(万トン/年、推定))× 価格 0.26(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 2 千円と仮定)→ 売上 205 億円・営業利益 29 億円。数量は今の 0.90 倍、価格は今の 1.30 倍、営業利益率 14.0%
- 建材:数量 4,140(取引の件数(件、推定))× 価格 0.07(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 269 億円・営業利益 13 億円。数量は今の 0.90 倍、価格は今の 1.30 倍、営業利益率 5.0%
- 高機能品(静電チャック・光電子):数量 28,215(出荷枚数・点数(枚、推定。静電チャックと光部品の合計))× 価格 0.01(1 枚あたりの売上(億円)。平均 100 万円と仮定。ミックス改善と値下がりの差を含む)→ 売上 324 億円・営業利益 42 億円。数量は今の 1.35 倍、価格は今の 1.15 倍、営業利益率 13.0%
- その他(ソフト・不動産など):数量 1,020(取引の件数(件、推定))× 価格 0.04(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 13 億円。数量は今の 0.85 倍、価格は今の 1.30 倍、営業利益率 33.0%
倍率:事業の ROE 4.7% が k 8% 以下なので PER は 1÷k=11.8 倍まで。ROE が k を大きく下回り、稼ぎも物価を引くと伸びない年で、上限の約 6 割に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 7.3 倍・時価総額 956 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:国内の縮みが年 1.5% に加速し、コスト増を転嫁しきれない形。静電チャックの収益性も競合に追いつかない前提。前の計画の未達が続く実績を踏まえ、厚く置く。
悲観 11% 国内が赤字化し、半導体部品でも負けて普通の素材会社になる 利益 25 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 370 円352 億円
国内の需要は 2,400 万トンに落ち、設備が余って稼働率が下がる。値崩れと脱炭素の費用で、国内セメントは営業利益が出なくなる。固定費を吸収できず、工場の統廃合と減損が続く。
静電チャックは、競合の新しい品種や中国の地元企業に押され、シェアを落とす。新棟は埋まらず、減価償却だけが残る。高機能品の営業利益は 15 億円まで落ちる。
全体の営業利益は 45 億円と、今の 3 分の 1 だ。大きな減損で自己資本が削られ、ROE は 2% を割る。含み資産はあるが、純有利子負債が重く、売って得た現金は借金の返済に消える。持ち合い株の売却と配当の維持で還元は続くが、純利益の合計を超える。もう優良な素材会社ではなくなっている。
- セメント(国内・輸出):数量 651(セメントの販売量(万トン/年、国内販売+輸出))× 価格 2.32(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 1.9 万円相当(生コンなどを含む))→ 売上 1,511 億円・営業利益 0 億円。数量は今の 0.78 倍、価格は今の 1.22 倍、営業利益率 0.0%
- 鉱産品:数量 700(出荷量(万トン/年、推定))× 価格 0.24(1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 2 千円と仮定)→ 売上 171 億円・営業利益 19 億円。数量は今の 0.80 倍、価格は今の 1.22 倍、営業利益率 11.0%
- 建材:数量 3,680(取引の件数(件、推定))× 価格 0.06(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 224 億円・営業利益 7 億円。数量は今の 0.80 倍、価格は今の 1.22 倍、営業利益率 3.0%
- 高機能品(静電チャック・光電子):数量 20,900(出荷枚数・点数(枚、推定。静電チャックと光部品の合計))× 価格 0.01(1 枚あたりの売上(億円)。平均 100 万円と仮定。ミックス改善と値下がりの差を含む)→ 売上 209 億円・営業利益 15 億円。数量は今の 1.00 倍、価格は今の 1.00 倍、営業利益率 7.0%
- その他(ソフト・不動産など):数量 960(取引の件数(件、推定))× 価格 0.04(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 10 億円。数量は今の 0.80 倍、価格は今の 1.22 倍、営業利益率 28.0%
倍率:構造的に負けて国内が赤字の筋書きなので PBR。稼ぐ力(事業の純利益 25 億円 ÷ k 8%)は約 300 億円、純有利子負債 698 億円を返した後の売れる資産の税後は約 352 億円。大きい方の約 352 億円(今の自己資本 1,953 億円の 0.18 倍)を採る。EV ÷ 営業利益は 22 倍と高いが、事業の価値が借金に届かない筋書きなので、売れる資産の床で見る。
確率:国内の構造的な縮小と、静電チャックでのシェア喪失、減損が重なる形。10 年と長いので 1 割強とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
セメント(国内・輸出)
国内外でのセメントと生コンの製造・販売。売上の 7 割を占める本業。
| 数量セメントの販売量(万トン/年、国内販売+輸出) | 価格1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 1.9 万円相当(生コンなどを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 834 | 1.90 | 1,588 | 55 |
| 10 年後 中立 | 780 | 2.55 | 1,990 | 109 |
取り方:2025 年度の国内販売 697 万トンと輸出 137 万トンの合計 834 万トンで、セメント事業の売上 1,588 億円を割った。数量は実質で置き、物価の分は価格に入れる。国内需要は 3,053 万トンで年 1% 前後ずつ縮む。
鉱産品
石灰石・ドロマイト・骨材などの採掘と販売。
| 数量出荷量(万トン/年、推定) | 価格1 万トンあたりの売上(億円)。1 トン約 2 千円と仮定 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 875 | 0.20 | 175 | 30 |
| 10 年後 中立 | 831 | 0.27 | 223 | 37 |
取り方:開示は売上と営業利益のみ。売上 175 億円を、1 トン約 2 千円と仮定して割った推定の出荷量 875 万トン。
建材
コンクリート構造物の補修・補強材、重金属汚染の対策材など。
| 数量取引の件数(件、推定) | 価格1 件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,600 | 0.05 | 230 | 15 |
| 10 年後 中立 | 4,370 | 0.07 | 293 | 19 |
取り方:売上 230 億円を、1 件あたり平均 0.05 億円の取引と仮定して件数に直した推定値。開示された数量はない。
高機能品(静電チャック・光電子)
半導体製造装置向けの静電チャックなどの新材料と、光通信部品・光計測の光電子。2026 年度に統合。
| 数量出荷枚数・点数(枚、推定。静電チャックと光部品の合計) | 価格1 枚あたりの売上(億円)。平均 100 万円と仮定。ミックス改善と値下がりの差を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20,900 | 0.01 | 209 | 24 |
| 10 年後 中立 | 35,530 | 0.01 | 462 | 69 |
取り方:新材料の売上 181 億円と光電子 27 億円の合計 209 億円。平均 1 枚(点)100 万円と仮定して枚数 2 万 900 に直した推定値。静電チャックの世界市場を約 2,300 億円、当社シェアを 9% 前後と見て、数量は市場の実質の伸びとシェアで置く。新材料の営業利益 25 億円と光電子の赤字 0.6 億円を合算。
その他(ソフト・不動産など)
ソフトウエア販売、不動産、その他の小さな事業。
| 数量取引の件数(件、推定) | 価格1 件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,200 | 0.03 | 36 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1,080 | 0.04 | 43 | 15 |
取り方:売上 36 億円を、1 件あたり 0.03 億円と仮定して件数に直した推定値。利益率が高い。
リスクと懸念
国内セメント需要の構造的な縮小
需要は 1990 年の 8,600 万トンから 3,053 万トンまで落ちた。人口減と新築の減少が続く限り、数量は年 1〜2% ずつ縮む。工場の固定費を吸収しにくくなり、値上げで利益を守れる期間にも限りがある。
石炭・電力の高騰と脱炭素の費用
石炭が 1 ドル上がると営業利益は年に約 1 億円減る。中東情勢で燃料が高騰すれば、値上げが追いつかない。二酸化炭素を減らす設備投資は 10 年で 1,000 億円規模とされ、償却費が利益を圧迫する。
静電チャックの顧客集中と収益性
売上は特定の装置メーカーに偏り、値下げ要求に弱い。会社自身が、競合より収益性が見劣りすると認めている。歩留まりの改善が遅れれば、新棟の減価償却が利益を食う。
半導体の景気の波
半導体は 2〜3 年ごとに谷が来る。装置メーカーの設備投資が止まれば、静電チャックの注文は一気に減る。新棟は能力が 2 倍になったため、稼働率が下がると固定費が重くなる。
計画の未達と経営の信頼
前の 3 年計画は営業利益 214 億円に対し、実績は 136 億円だった。新計画の 270 億円は値上げの継続を前提にしており、外れる可能性が高い。計画の外れは、評価の割り引きにつながる。
光通信部品の赤字
光電子事業は、次世代の変調器の販売開始が遅れ、赤字が続いてきた。体制の縮小で赤字幅は減ったが、成長の見込みは薄く、追加の減損や撤退の可能性が残る。
財務の余裕の乏しさ
設備投資は年 300 億円規模で、営業の現金収入とほぼ同じ。純有利子負債は 698 億円ある。還元を 5 割保ちながら投資を続ければ、金利上昇で利払いが増え、財務に余裕がなくなる。
今後の分かれ目
- 国内セメントの営業利益が、2026 年度の計画 50 億円を上回って着地したら
- 値上げが定着した証拠になる。やや楽観の確率を上げる。営業利益率が 6% を超えて続くかを見る。
- 静電チャックの新棟が、下期にほぼフル稼働になったら
- 需要が計画どおりと確認できる。高機能品の営業利益が 70 億円に近づくかを見て、楽観側へ寄せる。
- 石炭が 1 トン 140 ドルを大きく超えて高止まりしたら
- 値上げが追いつかず、セメントの営業利益が計画を割る。やや悲観の確率を上げる。
- 持ち合い株の売却と自社株買いが、計画より速く進んだら
- 資本が軽くなる分は評価できる。ただ、本質価値は利益で決まるので、倍率の上限は動かさない。
- UBE 三菱セメントなど他社との設備統合や再編の話が出たら
- 国内の稼働率が上がり、固定費の負担が軽くなる。価格の規律も保たれ、やや楽観の確率を上げる。
- 静電チャックで大口顧客の発注が減ったり、他社に切り替わったら
- 新棟の稼働が下がり、高機能品の利益が大きく崩れる。悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- セメント協会の国内需要(年度)
- セメントの値上げ発表と実際の販売価格の差
- 石炭と電力の市況
- 静電チャックの稼働率と高機能品の営業利益
- 半導体製造装置メーカーの設備投資
- 持ち合い株の売却額と還元の実績
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から逆算せず、まずセグメントごとに数量と価格を積み、ROE から正当化 PER を出した。ROE は資本コスト 8% に届かず、中立の上限は 1÷k の約 11.8 倍。静電チャックの伸びを考え、その 8 割に置いた。中立の PBR は約 0.6 倍で、過去の PBR には寄せていない。悲観は谷の PBR でなく、稼ぐ力(純利益÷k)で見た。純有利子負債は時価総額の 4 割で純現金でないので、余った現金は立てていない。持ち合い株の含み益は数字にしていない。リースは小さく、新リース会計で数字の形が 2028 年 3 月期から変わる影響も大きくない。 持ち合い株の含み益(評価差額金の税後)は余った現金に 0.5 で足した。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。