結論
トーヨーアサノは、建物の基礎に打ち込むコンクリートの杭を作る会社だ。東京の瑞穂町に工場を持ち、静岡の沼津では土地の賃貸も営む。筆者の結論は「割高」で、いちばんの理由は、借金の重さに比べて利益が薄いことにある。
2026年2月期の売上は117億円と、2年前の183億円から3割以上縮んだ。静岡の需要が約4割落ち、工場の稼働率が下がったためだ。営業利益は1億円まで細り、一部の取引先への債権で3.5億円の損失も出した。
借入は80億円を超え、現金は17億円。自己資本比率は27%だ。一方で、東京工場の土地は簿価で40億円ほどあり、時価総額と同じくらいの大きさがある。配当は赤字の年も続け、年1.1億円ほどを払っている。
筆者は、需要が一部戻って薄い黒字になる姿を中心に置く。それでも10年の価値は、今の時価総額を6割ほど下回る。
資産の厚みが下値を支える面はあるが、それは事業を畳む時の話だ。売れる資産に頼る話は、あくまで最後の砦だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「資産は厚いが、稼ぐ力が足りない」型だ。工場の土地と賃貸の不動産は、時価総額に並ぶほど大きい。だが、それを事業で稼ぎに変えられていない。
オーナーとして持ちたい会社の条件は、少ない元手で毎年安定して稼ぐことだ。杭の需要は縮み、稼働率の低下で利益が出ない年が増えた。借入が重く、金利が上がれば利益はさらに削られる。
筆者が見たいのは、首都圏の需要を取り込んで稼働率が戻り、営業利益が10億円に近づく姿だ。それが見えるまでは、資産の厚みだけで安全域とは言えない。土地の含み益は魅力だが、事業を続ける限り売れない。
経営が資本をどう配分するかも評価に入れる。赤字でも配当を続ける姿勢は、株主には優しいが、資産と借入の面では余裕を削る。次の一手は、稼働率を上げる受注の確保だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はコンクリートの杭だ。ビルや工場、倉庫の基礎に打ち込む既製の杭を、東京工場で作って売り、工事も請け負う。売上の約98%がこの事業だ。杭の工法には、独自の「ハイパーストレートノット」がある。
もう一つは、静岡県沼津市などでの土地と建物の賃貸だ。売上は2億円ほどと小さいが、営業利益は1億円を超え、会社の稼ぎを下支えしている。静岡工場の一部も賃貸に回している。
お金の流れは装置産業に近い。工場の設備は重く、稼働率が下がると固定費が利益を食う。仕事は建築の着工に左右され、工事が遅れると売上が立たない。杭の値段は競合との競争で決まり、原材料と人件費が上がっても、すぐには転嫁できない。
経営は創業家に近い。非上場の直木商事が議決権の約28%を持ち、社長も兼ねる。配当は業績に関係なく続けてきた。
取引先は、ゼネコンや建築の施工会社、杭を打つ専門の工事会社だ。杭は建物の基礎に使う部材で、客の側に品質で選ぶ理由が小さいため、価格と納期の競争になりやすい。東京工場は首都圏の需要に近く、輸送の面でも有利だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、ほぼ無い。杭は三谷セキサンとジャパンパイル、アジアパイルの3強が市場の大半を占め、トーヨーアサノは小さな地域の会社だ。工法の特許はあるが、大手の規模に差がある。
値段を決める力も弱い。杭は建物ごとの入札で値が決まり、買い手は施工会社だ。原材料のセメントと鋼材、人件費が上がっても、すぐに値上げは通りにくい。
資本効率は低い。過去10年のROEの中央値は4%に届かず、ここ2年は赤字に沈んだ。第8次中期計画はROE8%を掲げるが、2026年2月期はマイナスだった。
強みを探すなら、東京の大きな工場用地と、賃貸の安定した収入だ。ただ、それは資産の力で、杭の稼ぐ力ではない。
取引先の質も、強みか弱みかの境目にある。2026年に貸倒引当金を計上したのは、建設業界の取引の怖さを示した。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
杭の市場は、長く縮んでいる。国内の出荷は2005年の約370万トンから、今は200万トンほどに細った。着工の減少と、杭を使わない工法の増加が重しだ。
競争は少数の大手が中心だ。三谷セキサンは国内2位で利益率が高く、規模でも技術でも差がある。トーヨーアサノは、東京と静岡の需要に頼る小さな会社で、地域の需要の波をまともに受ける。
工事の面では、人手不足と労働時間の規制で、着工が遅れやすい。2026年は静岡の需要が4割落ちた。反対に、首都圏では倉庫や物流施設、再開発の需要が一定ある。
人件費と資材は物価で上がる。値上げを通せる大手と、通せない小さな会社の差は広がる。業界の再編は続き、小さな会社は大手の傘の下に入る流れが考えられる。
建築の着工は、人口減と建築費の上昇で長く横ばいから減少の傾向にある。首都圏は再開発と物流施設で堅調だが、地方は細る。杭の市場はこの需要に忠実に縮み、設備の過剰が続く。大手が稼働率を保つために値下げをすれば、小さな会社に響く。杭の施工会社は、工事の遅れや人手不足の影響を受けやすい。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。方針は性向30%以上だが、実績は赤字の年も年1.1億円ほどで、純利益を超える年が多い。自社株買いはしていない。株主優待もある。
借入は80億円を超え、現金は17億円。配当を続けるほど、借入が増えるか資産が減る。東京工場の土地は簿価40億円で、含み益があるかは確かめられていない。売れば現金は増えるが、工場を手放せば事業の中心を失う。
非上場の直木商事が議決権の約28%を持ち、社長が兼務する。オーナー系の会社で、少数株主への還元より、事業と資産の維持を優先する傾向がある。
資本政策の焦点は、配当と財務の両立だ。業績の振れをならして性向30%以上という方針と、年1.1億円ほどの実際の支払いには差がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年2月期は底だ。静岡の需要が4割落ち、貸倒引当金も一度に計上した。この二つは繰り返さない。首都圏では倉庫と物流施設、再開発の需要が続き、東京工場の稼働は戻る。
東京工場の土地は簿価で40億円。時価はそれを上回る可能性が高い。賃貸不動産も含めれば、資産は時価総額を大きく超える。事業が弱くても、資産が下値を支える。
売上が2年前の180億円に近づけば、営業利益は9億円になる。借入の利払いを払っても、利益は5億円規模で残り、今の値段を正当化できる。
配当を続けてきた姿勢も、オーナー系の安定した経営を物語る。
取引先の質に不安は残るが、貸倒引当金は一度に計上した。これで当面の損失は出尽くしたとみる向きもある。
首都圏は再開発が続き、倉庫と物流施設の着工も堅調だ。東京工場は、この需要の真ん中に位置する。
第8次中期経営計画はROE8%を掲げ、稼働率の向上と工事の効率化を進めている。2026年の底から1年遅れでも回復の軌道に乗れば、利益は数倍に戻り、割安さが一気に表に出る。
慎重な見方
売上は3年で3割縮み、2026年は営業利益が1億円まで落ちた。貸倒引当金の計上は、取引先の質にも不安を残す。稼働率が下がった今、固定費の重さがそのまま利益に出る。
借入は80億円を超え、自己資本比率は27%まで下がった。借り換えの金利が上がれば、利払いが営業利益を食う。それでも配当は年1.1億円ほどを続け、純利益を超えている。資金は、借入か資産の取り崩しで賄うしかない。
杭の市場は構造的に縮み、大手との規模の差は埋まらない。土地の含み益は未確認で、事業を続ける限り売れない。静岡の需要は戻らない可能性もある。
オーナー系の会社は、少数株主への配慮が弱くなりがちだ。
稼働率が戻る保証もない。大手が首都圏で値下げをすれば、小さな会社は受注の確保で不利になる。
静岡の需要の4割減は、一時の遅れではなく、地域の着工の構造変化かもしれない。
中期経営計画のROE8%も、2026年のマイナス5.5%から見ると遠い。計画の達成実績がなく、本社費と利払いの重さを考えれば、目標は楽観的だ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。資産の厚みは評価できるが、稼ぐ力と借金の重さに照らすと、今の値段は割高に出る。確率は中立から悲観寄りに置き、楽観とやや楽観を合わせて2割台にとどめた。土地の含み益は未確認なので、価値には足していない。 筆者は、借入の重さと稼働率の低さを最も重く見た。 土地の含み益の可能性は、悲観側の床を少し上げる要因として確率に反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,741 円23 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 560 円7 億円)。 今の値に割り戻すと 1,019 円13 億円、今との差 −54.8%、 期待の年率 +0.2%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,612 円87 億円 | 1,515 円20 億円 | +260.7% | +13.7% | 488 円6 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,559 円47 億円 | 909 円12 億円 | +98.3% | +7.1% | 804 円11 億円 |
| 中立 | 38% | 1,287 円17 億円 | 606 円8 億円 | −16.0% | −1.7% | 719 円10 億円 |
| やや悲観 | 25% | 735 円10 億円 | 303 円4 億円 | −53.9% | −7.5% | 259 円3 億円 |
| 悲観 | 13% | 235 円3 億円 | 0 円0 億円 | −89.6% | −20.2% | 31 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,741 円23 億円 | 560 円7 億円 | +2.1% | +0.2% | 2,301 円30 億円 |
今の株価時価総額 2,253 円30 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 首都圏の需要で稼働率が戻る 利益 8 億円 · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 6,612 円87 億円
首都圏の倉庫、物流施設、再開発が続き、杭の出荷が今の2割近く増える。値上げが通り、1トンあたりの売上は物価を上回って伸びる。営業利益率は基礎事業で10%台まで上がり、稼働率の上昇で固定費の負担が軽くなる。借入の返済が進み、配当も増やせる。ただし、杭の大手との差は埋まらず、この姿は需要の山の時期に限られる。東京工場の設備を生かし、物流施設向けの大型杭を安定して受注する。工事の遅れも解消し、売上が立ちやすくなる。稼働率が上がれば、固定費の負担は軽くなり、利益が増幅される。借入は返済が進み、金利の上昇の影響も小さくなる。
- 基礎事業(コンクリートパイルの製造・販売・工事):数量 180(出荷量(千トン、推定))× 価格 1.09(1 千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 196 億円・営業利益 21 億円。数量 1.18 倍、単価 1.45 倍、営業利益率 10.5%
- 不動産賃貸(沼津市など):数量 20.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.13(1 千平方メートルあたりの賃料収入(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 60.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 10.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.9 倍。全体の PER 10.91 倍、時価総額 87 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:東京工場の稼働が上がり、杭の値上げが通る筋書き。首都圏の物流施設と再開発の需要が続けば起きうるが、杭市場の縮みと小規模さから確率は低くした。
やや楽観 18% 需要が戻り、利益が積み上がる 利益 5 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 3,559 円47 億円
静岡と関東の需要が一部戻り、出荷は今より1割ほど増える。値上げは物価並みに通る。基礎事業の営業利益率は9%まで戻り、本社費の物価上昇を吸収する。借入の返済と配当を両立し、利益は5億円に近づく。それでも杭の市場そのものは縮み続ける。静岡の復調は限定的だが、首都圏の再開発と物流施設が稼働を支える。取引先の貸倒は小さくなる。営業利益は9億円近くまで戻るが、本社費と利払いが利益を削る。配当は続けられる。借入の金利は上がるが、利益の増加で吸収できる範囲にとどまる。杭の市場の縮みは続き、成長は限られる。取引先の質も改善し、貸倒の損失は小さくなる。
- 基礎事業(コンクリートパイルの製造・販売・工事):数量 168(出荷量(千トン、推定))× 価格 1.04(1 千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 174 億円・営業利益 16 億円。数量 1.10 倍、単価 1.38 倍、営業利益率 9.0%
- 不動産賃貸(沼津市など):数量 20.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.13(1 千平方メートルあたりの賃料収入(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 60.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 47 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:静岡の需要が一部戻り、稼働率が上がる筋書き。直近2年の落ち込みから、過去の水準に近づく姿だ。
中立 38% 需要が一部戻り、薄い黒字を保つ 利益 2 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,287 円17 億円
静岡の需要は戻らず、関東も細るが、首都圏の再開発と物流施設が穴を埋める。出荷は今より5%ほど増え、値段は物価並みに上がる。基礎事業の営業利益率は7%台で、過去12年の連結の山の7.9%より低い。本社費は物価で1.34倍に増える。借入の金利が上がり、利払いは2億円に近づく。利益は2億円弱で、配当は純利益を超え続ける。本社費と人件費は物価で増え、減価償却は今の設備の取得した値段のまま続く。工場の更新の投資は建築費の上昇で膨らむが、10年では設備の維持が中心だ。借入の返済は進まず、金利の上昇で利払いが増える。配当は純利益を超えるため、現金の取り崩しか借入で賄う。この姿は、会社が続くが大きく伸びない。
- 基礎事業(コンクリートパイルの製造・販売・工事):数量 160(出荷量(千トン、推定))× 価格 1.01(1 千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 161 億円・営業利益 12 億円。数量 1.05 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 7.2%
- 不動産賃貸(沼津市など):数量 20.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.13(1 千平方メートルあたりの賃料収入(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 60.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 17 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:稼働率が一部戻り、薄い黒字を保つ筋書き。過去12年の平均に近い利益に戻る姿を、10年の中心に置く。
やや悲観 25% 静岡の需要が戻らず、赤字に近づく 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 735 円10 億円
静岡の需要は戻らず、関東の杭も着工の減少で細る。出荷は今を1割ほど下回り、値上げは通りにくい。基礎事業の営業利益率は4.5%まで下がり、本社費の増加で連結は営業赤字に近づく。借入の金利が上がり、利払いが利益を食う。配当は借入と現金の取り崩しで払い続け、4億円を払うが、続けるほど借入が増えるため、減配が現実になる。稼働率の低下で固定費の負担が重くなり、更新の投資を先送りする。取引先の貸倒がさらに起きる可能性もある。配当は資産の売却や借入で払い続けるが、財務は細る。取引先の質への不安も重なり、受注を絞る判断が出る。大手への依存が深まる。
- 基礎事業(コンクリートパイルの製造・販売・工事):数量 135(出荷量(千トン、推定))× 価格 0.96(1 千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 130 億円・営業利益 6 億円。数量 0.88 倍、単価 1.28 倍、営業利益率 4.5%
- 不動産賃貸(沼津市など):数量 20.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.13(1 千平方メートルあたりの賃料収入(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。数量 1.00 倍、単価 1.30 倍、営業利益率 60.0%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロでPERは使えない。EV ÷ 営業利益は赤字で測れない。今の自己資本39億円の約25%。借入が先に払われ、土地の含み益は未確認で足していない。
確率:杭の需要が縮み、稼働率が低いまま固定費が重くなる筋書き。直近2年の落ち込みの延長にあたり、確率を厚くした。
悲観 13% 稼働率が崩れ、工場を畳む 利益 −5 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 235 円3 億円
杭の出荷が3割以上減り、稼働率が崩れる。営業赤字が続き、工場の集約と減損で自己資本が減る。借入の返済のため、土地や賃貸不動産を売る。事業は縮小し、大手への売却や提携の話が出る。普通株主の取り分は、売却の条件に左右される。借入の借り換えが難しくなり、資産の売却が現実になる。東京工場の土地が事業を畳む判断の中心になる。借入と取引先の貸倒が重なり、財務の余裕が失われる。普通株主は、事業の縮小と資産の売却の過程で不利な条件を受け入れる。最終的に、地域の大手との統合か事業の売却が現実の選択肢になる。従業員の削減と工場の集約で費用を絞るが、解約と退職の費用が先に出る。
- 基礎事業(コンクリートパイルの製造・販売・工事):数量 100(出荷量(千トン、推定))× 価格 0.86(1 千トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 0 億円。数量 0.65 倍、単価 1.15 倍、営業利益率 0.0%
- 不動産賃貸(沼津市など):数量 20.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.12(1 千平方メートルあたりの賃料収入(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍、単価 1.20 倍、営業利益率 50.0%
倍率:稼ぐ力は赤字で、今の自己資本39億円の約8%。借入が先に払われ、事業の縮小と売却が重なる。
確率:杭の需要が構造的に縮み、再建を迫られる筋書き。純負債が重い小さな会社として、確率を薄くしすぎなかった。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
基礎事業(コンクリートパイルの製造・販売・工事)
東京工場でコンクリートの杭を作り、建物の基礎として売り、工事も請け負う。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格1 千トンあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 153 | 0.75 | 115 | 6 |
| 10 年後 中立 | 160 | 1.01 | 161 | 12 |
取り方:売上114.9億円は開示のセグメント売上、営業利益6.3億円は開示のセグメント利益(本社費などの調整前)。出荷量は開示がなく、杭と工事を合わせた1トンあたりの売上を約7.5万円と置いた推定。
不動産賃貸(沼津市など)
静岡県沼津市などの土地と建物を貸す。静岡工場の一部も賃貸に回している。
| 数量賃貸面積(千平方メートル、推定) | 価格1 千平方メートルあたりの賃料収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 20.0 | 0.10 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 0.13 | 3 | 2 |
取り方:売上1.98億円と営業利益1.2億円は開示のセグメントの値。賃貸面積は開示がなく、約2万平方メートルと置いた推定。
リスクと懸念
杭の需要の縮み
国内の杭の出荷は20年で半分近くに細った。静岡の需要は2026年に約4割落ちた。需要が戻らなければ、稼働率の低下が続き、固定費が利益を食う。
借入と金利
有利子負債は80億円を超え、自己資本を上回る。借り換えのたびに金利が上がり、営業利益が小さいため、利払いが利益を大きく削る。
取引先の債権
2026年2月期に、一部の取引先への債権で3.5億円の貸倒引当金を計上した。建設業の取引は工事の遅れや倒産の影響を受けやすく、同様の損失が再び出る可能性がある。
配当と資金の持続
配当は純利益を超えて年1.1億円ほどを続けている。借入や資産の取り崩しで賄う形になり、続けるほど財務は細る。減配すれば株主の期待は大きく変わる。
大手との規模の差
杭は三谷セキサンやアジアパイルなどの大手が市場の大半を占める。規模、技術、値決めの面で差が大きく、小さな会社は需要が細る局面で不利になる。
オーナー系の支配
非上場の直木商事が議決権の約28%を持ち、社長を兼ねる。少数株主の取り分は、支配株主の判断に大きく左右される。
今後の分かれ目
- 連結の営業利益が3期続けて5億円を超える
- 稼働率が戻ったとみて、中立の利益率を上げ、楽観側の確率を厚くする。
- 静岡の需要が戻り、出荷が前年を上回る
- やや楽観の確率を上げる。
- 貸倒引当金の追加計上や、取引先の倒産が起きる
- やや悲観の確率を上げる。建設業の取引の質が問われる。
- 東京工場の土地の売却や再開発の話が出る
- 含み益が実現する可能性がある。事業の縮小とセットなら、価値の中身を見直す。
- 配当を減らす、または借入の条件が変わる
- 財務の余裕が小さいと判断し、悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 杭の出荷量と稼働率
- 静岡と関東の受注
- 営業利益(本社費の調整後)
- 借入の残高と金利
- 貸倒の動向
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEと資本コスト10%から決めた。中立以下の筋書きではROEがkを下回り、PERの上限は1÷k=10倍。縮む市場なので上限の7〜8割に置き、今の株価や過去の評価からは置いていない。10年の価値が今の時価総額を下回る理由は、借入の利払いと稼働率の低さだ。東京工場の土地の含み益は未確認なので、価値には足していない。新リース会計の影響は小さい(工場は自社で保有)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→10.91 倍・やや楽観 PER 8.5→10 倍・中立 PER 7.5→10 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 2.5% = 10.0%。上乗せなし。継続企業の前提に関する注記は確認されず、利払い能力にも余裕がある。