結論
日本ルツボは、金属を溶かす坩堝(るつぼ)と耐火物を140年作り続けてきた会社だ。今は焼却炉や工業炉の工事も手がけ、利益の半分以上をそちらで稼ぐ。筆者の結論は、今の値段は稼ぐ力に比べてやや高い、というものだ。
一番の理由は、資本効率が資本コストに届かないことだ。過去10年のROEの中央値は6%台で、8%台半ばの資本コストを下回る。坩堝の看板は古く、鋳物の会社からの信頼は厚い。だが、客は自動車や鉄鋼の大手で、値段を自分で決める力は限られる。
伸びしろもある。焼却炉の補修や工業炉の電化は、人手不足と脱炭素で需要が増える。2026/03期はこの工事の部門が3割増益だった。
10年後の中立は、営業利益率が4%台半ばに上がる姿と見る。それでもROEは5%ほどで、ためた利益は額面ほどの価値を生まない。今の時価総額は、確率で重ねた価値を4割ほど上回る。
下値の支えは、賃貸の土地と持ち合いの株だ。ただ、会社はそれを売る方針を出しておらず、少数の株主に届くのは賃料と配当の分にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、続く事業だが、株主が持ち続けたい事業とまでは言えない。
坩堝は140年売れ続けてきた。10年後も鋳物の工場は坩堝を使い、焼却炉は毎年補修が要る。事業が消える心配は小さい。
問題は稼ぐ力の水準だ。ROEは良い年でも9%で、普通の年は5〜6%だ。資本コストを下回る稼ぎでためた利益は、株主にとって額面ほどの価値を生まない。配当性向が3割なので、残りの7割はその低い稼ぎに再投資される。
工事の部門が伸び、全社の利益率が上がれば話は変わる。中計の経常利益8.3億円に届けばROEは9%近くになる。ただ、それは過去の最良の年に並ぶ水準で、それが続く根拠はまだ薄い。
買収防衛策を続け、持ち合いの株を持つ姿勢も、株主の取り分を広げる方向ではない。今の値段に安全域があるとは、筆者は見ない。
何で稼ぐ会社か
日本ルツボは1885年に創業した耐火物の会社だ。登記上の社名は日本坩堝。事業は三つの柱と、小さな装置の事業でできている。
一つ目は耐火物で、売上の半分を占める。看板は黒鉛の坩堝で、アルミや銅を溶かして鋳物を作る工場で使う消耗品だ。ほかに、炉の内側に貼る定形のれんがと、流し込んで固める不定形の耐火物を作る。主な客は自動車部品の鋳物の会社で、鉄鋼の高炉の補修も請け負う。
二つ目はエンジニアリングで、売上の4割だ。アルミを溶かす工業炉を設計して据え付け、ごみの焼却炉の内張りを補修する。2025年には保温工事の中橋保温工業所を買い、工事の手を増やした。2026/03期はこの部門が営業利益の過半を稼いだ。
三つ目は不動産だ。工場の跡地などを貸し、売上は4億円弱だが、利益率は5割を超える。
ほかに、自動車の塗装工場で塗料を回す装置を作る小さな事業がある。
稼ぎ方は、坩堝や耐火物を繰り返し売る消耗品の商売と、案件ごとの工事の商売の組み合わせだ。工事は年によって大型案件の有無で売上が振れる。
売上の大半は国内で、海外は関連会社を通じた坩堝の輸出が中心だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、坩堝の長い実績と、炉と耐火物をまとめて面倒を見る力にある。ただ、値段を決める力は弱い。
坩堝は鋳物の品質を左右するので、客は実績のある品を使い続けたがる。国内で黒鉛の坩堝を作る会社は少なく、日本ルツボはその中心にいる。それでも、客は自動車の部品を作る大手とその下請けで、値上げは原料の黒鉛や電気代が上がった分を後から通すのがやっとだ。
耐火物は品川リフラや黒崎播磨のような大手が鉄鋼向けで規模を持つ。日本ルツボは鉄鋼では小さく、高炉の受注は減っている。
工事の部門は強みになりつつある。炉の設計と耐火物の施工を一社でこなせる会社は限られ、焼却炉の補修は毎年必ず要る。ただ、人手が要る商売で、人を集められるかが利益を決める。
資本効率は低い。過去10年のROEの中央値は6.3%で、資本コストを下回る。手元の投資有価証券16億円と賃貸の土地は、資本を重くしている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
坩堝と耐火物の需要は、鋳物と鉄の量で決まる。国内の粗鋼生産は減り続け、高炉の休止が進む。鉄鋼向けの耐火物は、量が細る市場だ。
鋳物の側は、自動車の変化が大きい。エンジンの部品は電気自動車で減るが、車体やモーターの部品にはアルミの鋳物が増える。大きなアルミの一体の部品を作る動きも出てきた。アルミを溶かす坩堝と炉の需要は、急には減らないと筆者は見る。
工業炉は、脱炭素が追い風だ。ガスで焚く炉を電気の炉に替える投資が、鋳物の工場で始まっている。日本ルツボは電気で保温するアルミの炉を持つ。
焼却炉の補修は、全国のごみ処理の施設が古くなるほど増える。自治体と民間の焼却炉は毎年止めて内張りを直す必要があり、景気に左右されにくい。
費用の面では、黒鉛などの原料、電気代、人件費が上がる。業界の会社はどれも値上げを進めているが、中国の安い耐火物と黒鉛が値段の上限を押さえる。
10年の中立では、数量はほぼ横ばいで、値段は物価にやや遅れて上がると見る。工事の比率が上がる分、利益率は少し良くなる。
業界の再編も進む。品川リフラは海外の会社を買い、規模で生き残りを図っている。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。中計は配当性向30%ほどを掲げ、2026/03期の配当総額は1.2億円、次の期は1.3億円の予定だ。自社株買いは無い。
中計の3年間で、営業のキャッシュフロー約23億円を、設備に11億円、配当に5億円、借入の返済に4億円充てる計画だ。
買収は小さく進める。2025年に中橋保温工業所を安く買い、負ののれんが出た。工事の人手を買う形の買収は、今後も続くだろう。
買収への対応方針、いわゆる買収防衛策を続けている。投資有価証券16億円は持ち合いが中心で、売る方針の数字は無い。
従業員に自社株を渡す制度も入れ、株主との利害をそろえる手は打ち始めた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、工事の部門の伸びと、中計の利益目標に賭ける。
2026/03期、エンジニアリングの部門の利益は3割増えた。焼却炉の補修は全国の施設が古くなるほど増え、景気に左右されない。工業炉は電化の投資が始まったばかりで、電気で保温するアルミの炉を持つ日本ルツボには追い風だ。今期の第1四半期も工業炉は5割近く伸びた。
坩堝も底堅い。電気自動車でエンジンの部品は減るが、車体のアルミの鋳物は増える。国内で黒鉛の坩堝を作る会社は少なく、米国など海外への販売も広げている。
中計の2028/03期の経常利益8.3億円に届けば、ROEは9%近くになり、資本コストを超える。配当は増やし続けており、中橋保温工業所のような安い買収で工事の手も増やせる。
今の値段は純資産の0.7倍ほどだ。稼ぐ力が1段上がれば、今の時価総額は安く見える。
賃貸の土地と持ち合いの株も、下値を支える。不動産の部門だけで年2億円の利益があり、事業が苦しい年も黒字を保ちやすい。
慎重な見方
慎重な見方は、低い稼ぐ力が20年変わっていない点を突く。
営業利益率が6%を超えたのは2018/03期の一度だけだ。過去10年のROEの中央値は6.3%で、資本コストを下回り続けてきた。2026/03期も、耐火物の部門の利益は4割以上減った。工事の伸びが、耐火物の落ち込みを埋めただけだ。
鉄鋼の高炉は休止が進み、鉄鋼向けの耐火物は細り続ける。鋳物の側も、電気自動車でエンジンの部品が減れば、鋳鉄とアルミの溶解の量は減る。自動車の生産が海外へ移れば、坩堝の客も一緒に出ていく。
工事は人手が要る。職人の高齢化と人手不足で、受注があっても人が足りなくなる。案件の大小で利益は年ごとに振れる。
中計の目標は過去の最良の水準で、届いても続く保証は無い。買収防衛策と持ち合いの株は、資本を軽くする気が薄いことを示している。
配当性向3割では、ためた利益の7割が低い稼ぎに回る。株主にとっては、その分だけ価値が目減りしていく。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。工事の部門の伸びは本物で、利益率は少し上がると見る。だが、坩堝と耐火物の値決めの力は弱く、全社のROEが資本コストを安定して超える道筋は見えない。確率は中立を厚くし、慎重な側をやや重くした。
賃貸の土地と持ち合いの株は下値を支えるが、会社が持ち続ける限り、株主の取り分を大きくは変えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 739 円49 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 178 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 446 円30 億円、今との差 −32.3%、 期待の年率 +3.4%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,711 円114 億円 | 316 円21 億円 | +208.0% | +11.9% | 142 円9 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,185 円79 億円 | 256 円17 億円 | +119.0% | +8.2% | 288 円19 億円 |
| 中立 | 37% | 913 円61 億円 | 211 円14 億円 | +70.7% | +5.5% | 416 円28 億円 |
| やや悲観 | 24% | 149 円10 億円 | 90 円6 億円 | −63.7% | −9.6% | 57 円4 億円 |
| 悲観 | 12% | 75 円5 億円 | 45 円3 億円 | −81.7% | −15.6% | 14 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 739 円49 億円 | 178 円12 億円 | +39.5% | +3.4% | 918 円61 億円 |
今の株価時価総額 658 円44 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 工事が育ち、利益率7%台 利益 9 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 1,711 円114 億円
焼却炉の補修と工業炉の電化が大きく伸びる。古い焼却炉の補修は毎年増え、鋳物の工場はガスの炉を電気の炉に替える。日本ルツボは炉と耐火物をまとめて請け負う会社として、案件を2割5分増やす。
坩堝は車体のアルミの鋳物と海外の販売で数量を1割伸ばし、値上げも通る。耐火物の利益率は10%に戻る。
全社の営業利益は約12億円、利益率は7%台になる。純利益は9億円を超え、ROEは資本コストに並ぶ。配当は増え、工事の会社をさらに買って人手を補う。
それでも、資本コストを大きく超える稼ぎにはならない。強気の筋書きは、会社が一段上の稼ぐ力に移る姿だ。
- 耐火物(坩堝・定形・不定形):数量 28.6(出荷量(千トン、推定))× 価格 28(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 80 億円・営業利益 8 億円。出荷+10%、単価+40%、利益率10%
- エンジニアリング(工業炉・焼却炉の補修):数量 260(案件数(件、推定))× 価格 28(1件あたり売上(百万円、推定))→ 売上 73 億円・営業利益 10 億円。案件+25%、単価+40%
- 不動産:数量 25.0(賃貸面積(千㎡、推定))× 価格 1.90(1㎡あたり年の賃料(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。賃料+25%、償却は据え置き
- その他(塗料循環装置):数量 30.0(案件数(件、推定))× 価格 26(1件あたり売上(百万円、推定))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。案件+25%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.9 倍、時価総額 111 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:全社の営業利益率7%は過去の最良の6.2%を上回る。工事の伸び、坩堝の海外の販売、値上げの定着がそろう必要があり、7%に抑えた。
やや楽観 20% 中計の道筋に近く、利益率5%台 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,185 円79 億円
工事の部門が着実に伸びる。焼却炉の補修と工業炉の更新で、案件は10年で15%増える。坩堝と耐火物は鉄鋼向けが細るが、鋳物向けが支えて数量は横ばいだ。
値上げは物価をやや上回って通り、耐火物の利益率は8%台に戻る。全社の営業利益は約8億円、利益率は5%台半ばだ。純利益は約6.4億円で、ROEは6%台になる。
配当性向3割を保ち、配当は少しずつ増える。中橋保温工業所のような小さな買収で工事の手を足す。
会社は今より一段強くなるが、ためた利益の稼ぎは資本コストにまだ届かない。
賃料は物価にやや遅れて上がり、不動産の部門は年2.8億円ほどを安定して稼ぐ。
- 耐火物(坩堝・定形・不定形):数量 26.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 27(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 71 億円・営業利益 6 億円。出荷横ばい、単価+36%
- エンジニアリング(工業炉・焼却炉の補修):数量 239(案件数(件、推定))× 価格 27(1件あたり売上(百万円、推定))→ 売上 65 億円・営業利益 8 億円。案件+15%
- 不動産:数量 25.0(賃貸面積(千㎡、推定))× 価格 1.90(1㎡あたり年の賃料(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。賃料+25%
- その他(塗料循環装置):数量 27.0(案件数(件、推定))× 価格 26(1件あたり売上(百万円、推定))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。案件+12%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 75 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の経常利益8.3億円は2019/03期以来の水準で、工事の伸びという具体的な裏付けがある。届いても保つのは簡単ではなく2割に置いた。
中立 37% 数量は横ばい、工事の比率が上がる 利益 5 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 913 円61 億円
鉄鋼向けの耐火物は高炉の休止で細り、鋳物向けの坩堝が支える。耐火物の数量は10年で5%減る。値上げは物価にやや遅れ、単価は3割強上がる。
工事の部門は焼却炉の補修が安定して増え、案件は5%増える。人手の確保に費用がかかり、利益率は12%台にとどまる。
本社の費用は物価で上がる。償却は取得した時の値段のままなので、そこは物価ほど増えない。全社の営業利益は約6億円で、利益率は4%台半ばだ。純利益は約4.7億円になる。
配当性向3割で配当を続け、純資産は90億円台に増える。ROEは5%ほどで、資本コストを下回ったままだ。
- 耐火物(坩堝・定形・不定形):数量 24.7(出荷量(千トン、推定))× 価格 27(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 66 億円・営業利益 5 億円。出荷−5%、単価+33%
- エンジニアリング(工業炉・焼却炉の補修):数量 218(案件数(件、推定))× 価格 27(1件あたり売上(百万円、推定))→ 売上 58 億円・営業利益 7 億円。案件+5%
- 不動産:数量 25.0(賃貸面積(千㎡、推定))× 価格 1.90(1㎡あたり年の賃料(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。賃料+25%、償却は据え置き
- その他(塗料循環装置):数量 24.0(案件数(件、推定))× 価格 26(1件あたり売上(百万円、推定))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 56 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年の営業利益率は1〜6%で、平均は4%前後だ。工事の比率が上がって少し良くなる姿が最も起こりやすく、4割弱に置いた。
やや悲観 24% 鉄鋼と鋳物が細り、利益が消える 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 149 円10 億円
高炉の休止が進み、鉄鋼向けの耐火物はほぼ消える。自動車の生産が海外へ移り、国内の鋳物の工場も減る。耐火物の数量は2割近く減る。
値上げは原料と電気代の上昇に追いつかない。工事の部門も、人手が足りず大型の案件を取りこぼす。案件は1割減り、利益率は9%に落ちる。
全社の営業利益はほぼゼロになる。持ち合いの株の配当と賃料で黒字は保つが、純利益は年0.3億円ほどだ。配当は減る。
会社は続くが、純資産は増えない。株主に残るのは、賃貸の土地と持ち合いの株、それに細った事業だ。
人手が足りない分を外注で埋めれば、工事の利益はさらに薄くなる。
- 耐火物(坩堝・定形・不定形):数量 21.3(出荷量(千トン、推定))× 価格 25(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。出荷−18%、単価+25%
- エンジニアリング(工業炉・焼却炉の補修):数量 187(案件数(件、推定))× 価格 25(1件あたり売上(百万円、推定))→ 売上 47 億円・営業利益 4 億円。案件−10%
- 不動産:数量 25.0(賃貸面積(千㎡、推定))× 価格 1.75(1㎡あたり年の賃料(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。賃料+15%
- その他(塗料循環装置):数量 20.0(案件数(件、推定))× 価格 24(1件あたり売上(百万円、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。縮小
倍率:本業は稼がず、稼ぐ力では測れない。持ち合いの株と賃貸の土地は会社が持ち続ける。売れる資産から退職給付を引いた床を見て、今の自己資本62億円の0.16倍。
確率:2021/03期と2023/03期に営業利益率は1%前後まで落ち、2023/03期は赤字だった。高炉の休止と自動車の海外移転が重なる道は現実的で、2割強に置いた。
悲観 12% 国内の鋳物と鉄が縮み、赤字が続く 利益 −5 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 75 円5 億円
構造的に負ける筋書きだ。国内の高炉は大半が止まり、自動車の鋳物は海外と電動化で大きく減る。中国の安い坩堝と耐火物も入ってくる。耐火物の数量は3分の1以上減る。
工事の部門も人手不足と自治体の予算の締め付けで案件が減り、利益率は5%に落ちる。本社と工場の固定費が残り、全社は毎年赤字になる。工場の減損も出る。
配当はほぼ止まり、純資産は30億円ほどに細る。賃貸の土地と持ち合いの株は会社が持ち続け、赤字の穴埋めに少しずつ売られる。
少数の株主に残るのは、細った事業と、会社の外へ出てこない資産だけになる。
- 耐火物(坩堝・定形・不定形):数量 16.9(出荷量(千トン、推定))× 価格 24(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 41 億円・営業利益 −1 億円。出荷−35%、赤字
- エンジニアリング(工業炉・焼却炉の補修):数量 156(案件数(件、推定))× 価格 24(1件あたり売上(百万円、推定))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。案件−25%
- 不動産:数量 24.0(賃貸面積(千㎡、推定))× 価格 1.75(1㎡あたり年の賃料(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。一部を売却
- その他(塗料循環装置):数量 15.0(案件数(件、推定))× 価格 23(1件あたり売上(百万円、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。縮小
倍率:赤字が続き稼ぐ力は無い。持ち合いの株と賃貸の土地は赤字の穴埋めに使われ、少数の株主に戻る見込みは低い。今の自己資本62億円の0.08倍。
確率:2009/03期と2023/03期に赤字があり、1998〜2002年には利益率がマイナスの年が続いた。国内の素材産業が構造的に縮む道として1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
耐火物(坩堝・定形・不定形)
黒鉛の坩堝、れんが、流し込みの耐火物を作って売る。客は鋳物の会社と鉄鋼。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格平均単価(万円/トン、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 26.0 | 20 | 52 | 3 |
| 10 年後 中立 | 24.7 | 27 | 66 | 5 |
取り方:出荷量の開示は無い。坩堝と安い不定形の耐火物が混ざる平均単価を1トン20万円と推定し、外部への売上52億円から2.6万トンと置いた。利益はセグメント利益。
エンジニアリング(工業炉・焼却炉の補修)
アルミの溶解炉などを設計して据え付け、焼却炉や工業炉の内張りを補修する。
| 数量案件数(件、推定) | 価格1件あたり売上(百万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 208 | 20 | 42 | 6 |
| 10 年後 中立 | 218 | 27 | 58 | 7 |
取り方:案件数の開示は無い。大型の工業炉と小口の補修が混ざる平均を1件0.2億円と推定し、売上41.7億円から約208件と置いた。
不動産
工場の跡地などの建物と駐車場を貸す。太陽光の売電を含む。
| 数量賃貸面積(千㎡、推定) | 価格1㎡あたり年の賃料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 1.52 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 1.90 | 5 | 3 |
取り方:面積の開示は無い。賃料の水準から約2.5万㎡と推定し、売上3.8億円を割って1㎡あたり年1.52万円。償却は年1億円で取得原価のまま。
その他(塗料循環装置)
自動車の塗装工場で塗料を循環させる装置を作る。
| 数量案件数(件、推定) | 価格1件あたり売上(百万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 24.0 | 20 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 26 | 6 | 0 |
取り方:案件数の開示は無い。1件約0.2億円と推定し売上4.7億円から24件と置いた。
リスクと懸念
高炉の休止
国内の鉄鋼会社は高炉を減らしている。日本ルツボが補修を請け負う高炉の受注は2026/03期に16%減った。鉄鋼向けの耐火物と工事は、この流れで細り続ける。
自動車の鋳物の変化
坩堝と耐火物の主な客は自動車の部品の鋳物の会社だ。電気自動車でエンジンの部品は減り、生産の海外移転も進む。車体のアルミの鋳物が埋めきれなければ、坩堝の数量は減る。
工事の人手
焼却炉の補修や炉の据え付けは職人の手が要る。人手が集まらなければ、受注があっても利益にならない。人件費の上昇も利益率を削る。
原料と電気代
黒鉛などの原料と、焼成に使う電気とガスの値段が上がると、値上げが追いつくまで利益が削られる。中国の安い品が値段の上限を押さえる。
案件の振れ
工業炉の大型案件は年によって有無が分かれる。2026/03期の工業炉の売上は5割増えたが、翌年に同じ大きさの案件がある保証は無い。
資本の重さ
投資有価証券16億円と賃貸の土地は、配当と賃料を生むが資本を重くしている。会社が売る方針を出さない限り、ROEは上がりにくい。
今後の分かれ目
- 中計の経常利益8.3億円に届き、翌年も保った
- 工事の部門の伸びが一時でないとわかる。やや強気の筋書きの確率を上げる。
- 耐火物の部門の利益率が2期続けて8%を超えた
- 値上げが原料の上昇を上回って通った合図だ。値決めの力の評価を上げる。
- 持ち合いの株を売って還元に回す方針を数字で出した
- 資本が軽くなりROEが上がる。株の価値を別に足して見直す。
- 担当する高炉が止まると決まった
- 鉄鋼向けの売上の柱が一つ消える。慎重な筋書きの確率を上げる。
- 工事の会社をさらに買い、人手を大きく増やした
- 工事の部門の伸びを速める手だ。買った値段と稼ぎを見て、強気の側に寄せるか決める。
見ておくもの
- エンジニアリングの部門の受注と利益率
- 耐火物の部門の利益率と値上げ
- 国内の粗鋼生産と鋳物の生産量
- 工業炉の電化の案件
- 投資有価証券の残高と売却の有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。中立のROEは5%ほどで資本コスト8.5%を下回り、PERの上限は1÷kの約11.8倍で、その約75%の8.8倍に置いた。今のPER10倍台やPBR0.7倍、同業の値付けは根拠に使っていない。持ち合いの株と賃貸の土地は配当と賃料を利益に残すので、価値を別に足さず、悲観の床の説明にだけ使った。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.9 倍・やや楽観 PER 9.5→11.76 倍・中立 PER 8.8→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality +1.0%を足した8.5%。同じ領域の東海カーボン、品川リフラ、美濃窯業、TYK(8.2〜8.8%)の中ほど。黒鉛電極の市況に振られる東海カーボンより循環は小さく、工事の安定した稼ぎがある分を見た。