結論
ヤマックスは、側溝や擁壁などコンクリート二次製品を作り、施工まで手がける熊本の会社だ。売上の 6 割強が公共工事向けの土木用で、2024 年から利益が急に膨らんだ。筆者の結論は「利益率が半分戻る前提でも、今の値段は安い」である。
まず利益率だ。営業利益率は 2023 年 3 月期までほぼ 3〜4% だった。それが直近は 11% を超えた。値上げが通ったこと、公共事業と九州の産業用地整備が重なったことが効いた。ただ、この水準が 10 年続くとは筆者は見ない。中立では 8% 台に戻し、それでも名目の営業利益は今の 9 割を保つと置いた。
次に安全性。自己資本比率は 60% で、借金と現金はほぼ同額だ。余った現金はなく、ためた利益の使い道が課題だ。配当は純利益の 30% 目安で、残りは会社に積み上がる。
最後に足元の注意点だ。2027 年 3 月期の第 1 四半期は売上が 38% 減り、営業利益は 7 割減った。会社は通期予想を据え置いたが、下期に偏った計画で、確度は読みにくい。山から降りる途中の会社だと筆者は見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うべきは「この利益は何年続くか」だ。筆者は、直近の営業利益率を永続するものとは見ない。2023 年までの 3〜4% と直近の 11% のどちらが「普通」かを決めるのが、この会社の評価のすべてだ。
筆者の答えは、間を取って 8% 台だ。地場の二次製品は参入の壁が低い。値上げが通ったのは事実でも、需要が細れば競争で戻る。ただし、公共事業の更新需要という底の堅さと、熊本という追い風がある間は、3〜4% には戻らないとも見る。
この置き方でも価値は今の値段を上回る。時価総額は 123 億円で、直近の純利益の 6 倍にすぎない。利益が半分に減っても 12 倍の PER を付ければ、いまの値段に届く計算になる。安全域は十分にある、と筆者は考える。
気になるのは資本の使い方だ。純利益の 7 割をためる方針で、ためた分が ROE の足を引く。ためた利益に配当や自社株買いで戻る道があるか。そこが持ち続けるかどうかの分かれ目になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は土木用セメント製品だ。2026 年 3 月期の売上は 168 億円で全社の 64%、営業利益は 33 億円と、セグメントの利益の 8 割を占める。道路の側溝、カルバート(地下の通路や水路になる箱形の製品)、擁壁など、公共工事で使う製品を工場で作り、現場に運んで据え付ける。拠点は九州と東北にあり、一関(岩手)に工場がある。
建築用セメント製品は売上 85 億円、営業利益 8 億円。工場や商業施設の外壁、床、梁、柱になるプレキャスト部材(PCa、工場で作ってから現場で組む部材)を作る。2026 年 3 月期は沖縄の大型案件で売上が 36% 伸びたが、一部を同業へ外注したため利益率は 9.5% に下がった。
その他の事業は、木造住宅の施工販売と不動産で、売上は 8 億円。物件の引き渡しが翌期にずれ、営業損失になった。
最大の顧客は商社の伊藤忠丸紅住商テクノスチールで、売上の 12.5% を占める。同社は株主でもある。大口に頼る面があり、建築用の採算は案件ごとに振れやすい。研究開発費は年 0.6 億円と小さく、技術で稼ぐ会社ではなく、工場と施工力で稼ぐ会社だと筆者は理解している。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、地元の工場網と施工力にある。製品は重く、遠くへ運ぶと運賃が利益を食うため、工場から近い現場で戦う地場産業だ。熊本を中心に九州と東北で顧客の現場に届く距離に工場を持つことが、参入を難しくしている。
一方で、値段を自分で決める力は弱い。公共工事は入札で、民間も案件ごとの見積もりになる。2023 年までの営業利益率が 3〜4% だったことが、その証拠だ。直近の 11% は、人手と材料の上昇分を製品価格に乗せられたことと、需要の厚い局面が重なった結果だと筆者は見る。
資本効率は直近こそ ROE 20% だが、過去 10 年の中央値は 8.7% である。設備に眠る資本は大きくなく、利益に対して必要な自己資本は軽い。それでも景気の波は避けられず、利益が 2 倍にも半分にも動く事業だ。
弱い所は 3 つある。1 つ目は利益が山にあること。2 つ目は大口顧客への依存。3 つ目は、ためた利益の使い道が見えないことだ。会社は ROE10% 以上を目標にするが、中期の経営計画は公開されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
土木用の二次製品は、国と自治体の公共事業予算で需要が決まる。道路、河川、下水道の維持更新が中心で、老朽化した施設の更新は 10 年単位で続く。政府は 2026 年度から国土強靱化の新しい計画を進めており、需要の底は堅い。ただし人口は減り、新設は伸びない。
九州は特需の局面にある。熊本では半導体関連の産業用地の整備と周辺道路の工事が多く計画されている。会社の開示でも、これが需要を支えていると読める。一方で、工場の着工が遅れると出荷もずれる。2027 年 3 月期の第 1 四半期に売上が大きく減ったのは、この種のずれと、前期の大型案件の反動が重なったためだと見られる。
競争の形は分散型だ。二次製品の工場は全国に多く、地場のメーカーが近隣を押さえる。需要が細る局面では、各社が稼働を保とうと値下げをしやすい。上場の同業では、日本ヒュームやベルテクスコーポレーションが下水道管などで大手だが、ヤマックスは側溝やカルバートなど、地域の公共工事向けの製品が中心で、直接の競争相手は地場の工場になる。
材料と人件費の上昇は避けられない。セメント、骨材、鋼材、運賃、人件費が上がる局面では、価格転嫁の力が利益を左右する。
資本政策と M&A
配当の方針は、DOE(自己資本配当率)1% を下限に、連結配当性向 30% を目安とする。2026 年 3 月期の配当は 4 期連続の増配で、配当性向は 31%。2027 年 3 月期は利益の減少に合わせて減配の予想だ。自社株買いは大きな実績がない。
この方針だと純利益の 7 割が会社に残る。自己資本は 5 年で 2 倍の 102 億円になった。設備投資は年 7 億円ほどで、利益の使い道は設備に限られる。借金と現金がほぼ同額なので、いま余っている現金はない。ただ、このままだと自己資本が積み上がり、ROE が下がる。株主にとっての課題は、ためた利益をどう使うかだ。
大株主は、創業家とみられる個人が上位に並び、麻生、信託口、伊藤忠丸紅住商テクノスチール、UBE 三菱セメントが続く。親会社と呼べる株主はいない。分散した大株主の構成で、TOB の可能性は低くないが、現時点で報道はない。
株主優待は、500 株以上に工場見学会を抽選で提供する程度で、価値は小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益率の跳ねは、一過性ではなく構造だ。2023 年から営業利益率が 4.6%、8.8%、11.7%、11.2% と 3 年続けて高止まりした。人件費と材料費の上昇を価格に乗せる流れが、公共工事でも民間でも定着した。
需要の底が堅い。国土強靱化の新しい計画が 2026 年度から始まり、老朽化した道路・河川・下水道の更新は 10 年単位で続く。熊本では半導体の工場と周辺道路の整備が進み、九州の土木用に特需が出ている。
財務はびくともしない。自己資本比率は 60%、借金と現金はほぼ同額で、金利が上がっても利益はほぼ動かない。それでいて時価総額は純利益の 6 倍にすぎない。配当は純利益の 3 割だが、利益が積み上がれば増配の余地は大きい。8% 台の利益率でも、いまの値段は安い。
工場網と施工力は短期間でまねできない。地元の現場に届く距離に工場があるという強みは、価格競争の中でも顧客を引き止める。直近 3 年の高い利益率が、会社の実力の下限を引き上げたと見るべきだ。
慎重な見方
今の利益率は山の頂上にある。2023 年 3 月期までの 9 年は 3〜4% 台だった。事業の中身は、工場で作って運ぶ重い製品で、値段を決める力はない。利益が 3 倍になったのは、大型案件と特需が重なった結果で、続く保証はない。
足元は早くも崩れている。2027 年 3 月期の第 1 四半期は売上が 38% 減り、営業利益が 72% 減った。会社は通期予想を据え置くが、年間の営業利益 28 億円のうち 2 億円しか第 1 四半期で出ていない。下期偏重の計画は危うい。
大口顧客への依存もある。最大の顧客の売上は前期から約 3 割減った。建築用の大型案件は、受注できるかどうかで利益が大きく動く。さらに、ためた利益の使い道が見えない。純利益の 7 割をためる方針では、ROE は下がるしかない。
中期経営計画も公開されておらず、会社が山の後をどう描いているのか、外から確かめる材料が乏しい。減配の予想が出たことも、会社自身が利益の先行きを慎重に見ている印だと読める。
どちらに重みを置いたか
筆者は、利益率の山が半分戻る前提でも安いと見る。ただし、第 1 四半期の落ち込みと大口依存を重く見て、確率は中立に 38%、やや悲観に 27% を置いた。楽観は 7%、やや楽観は 18%、悲観は 10%。強気の言い分の「構造が変わった」は半分だけ認め、慎重な言い分の「山からの戻り」は価格競争の筋書きに織り込んだ。結果として、割安の幅は大きいが、利益の振れが大きい点は確率に反映している。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,696 円358 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 593 円57 億円)。 今の値に割り戻すと 2,253 円218 億円、今との差 +79.2%、 期待の年率 +13.1%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,080 円783 億円 | 856 円83 億円 | +610.9% | +21.7% | 626 円61 億円 |
| やや楽観 | 18% | 5,842 円566 億円 | 732 円71 億円 | +423.0% | +18.0% | 1,183 円115 億円 |
| 中立 | 38% | 4,376 円424 億円 | 629 円61 億円 | +298.2% | +14.8% | 1,902 円184 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,348 円131 億円 | 454 円44 億円 | +43.3% | +3.7% | 486 円47 億円 |
| 悲観 | 10% | 517 円50 億円 | 392 円38 億円 | −27.7% | −3.2% | 91 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,696 円358 億円 | 593 円57 億円 | +241.2% | +13.1% | 4,288 円416 億円 |
今の株価時価総額 1,257 円122 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 値上げが定着し、熊本と国土強靱化の需要が長く続く 利益 33 億円 · PER 20.8 倍 · 株価時価総額 8,080 円783 億円
国土強靱化の予算が途切れず、道路・河川・下水道の更新が 10 年続く。熊本を中心に半導体関連の産業用地と周辺道路の整備も続き、土木用の出荷は今の水準を保つ。
人件費と鋼材・セメントの上昇を製品価格に乗せる流れが定着し、単価は 10 年で 1.45 倍まで上がる。土木用の営業利益率は 19% を保ち、建築用も大型案件の採算が戻って 11% に乗る。
全社の営業利益は 47 億円、純利益は 33 億円。配当性向 30% 目安は変わらず、自己資本は 290 億円近くまで厚くなる。事業の稼ぎが株主に残る形だが、手元にためた利益をどう使うかは、この会社の課題として残る。
- 土木用セメント製品:数量 51.0(出荷量(万トン)。売上からの推定)× 価格 4.87(1 トンあたり売上(万円)。施工込み)→ 売上 248 億円・営業利益 47 億円。土木 出荷 51 万t(今の 1.02 倍)× 単価 1.45 倍、営業利益率 19%
- 建築用セメント製品:数量 17.9(出荷量(万トン)。売上からの推定)× 価格 7.27(1 トンあたり売上(万円)。加工・据付込み)→ 売上 130 億円・営業利益 14 億円。建築 出荷 17.9 万t(1.05 倍)× 単価 1.45 倍、営業利益率 11%
- その他(木造住宅・不動産):数量 130(取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.45(取扱量 100 あたり売上の指数(2026/03 = 1.0))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。木造住宅・不動産 取扱 1.3 倍 × 価格 1.45 倍、営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.8 倍。全体の PER 20.79 倍、時価総額 688 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共事業の予算が維持され、値上げも通る筋書き。2024〜2026 年の利益率の跳ね方が一時的でないという条件が重なる必要があり、10 年続く確率は低い。
やや楽観 18% 需要は横ばい、値上げは物価並みに通る 利益 25 億円 · PER 19.4 倍 · 株価時価総額 5,842 円566 億円
土木用の出荷は今の水準を保ち、単価は 10 年で 1.40 倍。物価(1.34 倍)をわずかに上回る分は、製品の高付加価値化と施工込みの受注で稼ぐ。土木用の営業利益率は 16.5% に下がるが、2023 年までの 3〜4% 台と比べれば 4 倍以上だ。
建築用は半導体や物流施設の需要で数量を保ち、営業利益率 9.5%。
全社の営業利益は 35 億円、純利益は 25 億円。山の利益率からは落ちるものの、今の稼ぎは名目でおおむね 1.2 倍になる。
配当は純利益の 3 割を保ち、自己資本は 260 億円ほどに積み上がる。会社が手元の利益を設備や配当にどう振り向けるかが、評価の分かれ目になる。
- 土木用セメント製品:数量 50.0(出荷量(万トン)。売上からの推定)× 価格 4.70(1 トンあたり売上(万円)。施工込み)→ 売上 235 億円・営業利益 39 億円。土木 出荷 50 万t(1.00 倍)× 単価 1.40 倍、営業利益率 16.5%
- 建築用セメント製品:数量 17.0(出荷量(万トン)。売上からの推定)× 価格 6.92(1 トンあたり売上(万円)。加工・据付込み)→ 売上 118 億円・営業利益 11 億円。建築 出荷 17 万t(1.00 倍)× 単価 1.38 倍、営業利益率 9.5%
- その他(木造住宅・不動産):数量 110(取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.38(取扱量 100 あたり売上の指数(2026/03 = 1.0))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。木造住宅・不動産 取扱 1.1 倍 × 価格 1.38 倍、営業利益率 4%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.4 倍。全体の PER 19.43 倍、時価総額 482 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共事業の予算は維持され、物価並みの値上げが通る筋書き。直近 3 年の利益率の跳ね方の一部は残る。ただし山の利益率が全部残る保証はない。
中立 38% 利益率は山から半分近く戻り、需要は緩やかに細る 利益 19 億円 · PER 18.2 倍 · 株価時価総額 4,376 円424 億円
土木用の出荷は人口減と公共事業の頭打ちで年 0.4% ずつ減り、10 年後は今の 0.96 倍。熊本の産業用地の整備という追い風は、数年後には薄れる。単価は物価並みの 1.34 倍にとどまる。
営業利益率は、2023 年までの 3〜4% と直近の 11% の間、土木用 15%、建築用 8% に落ち着く。山の水準が続かないのは、競合の地場メーカーが増産して価格を競う局面が来るからだ。
全社の営業利益は 27 億円、純利益は 19 億円。今の 21 億円より少ないが、名目で見れば大きくは崩れない。配当は純利益の 30% 程度で、残りは自己資本に積み上がる。
- 土木用セメント製品:数量 48.0(出荷量(万トン)。売上からの推定)× 価格 4.50(1 トンあたり売上(万円)。施工込み)→ 売上 216 億円・営業利益 32 億円。土木 出荷 48 万t(0.96 倍)× 単価 1.34 倍、営業利益率 15%
- 建築用セメント製品:数量 15.3(出荷量(万トン)。売上からの推定)× 価格 6.72(1 トンあたり売上(万円)。加工・据付込み)→ 売上 103 億円・営業利益 8 億円。建築 出荷 15.3 万t(0.90 倍)× 単価 1.34 倍、営業利益率 8%
- その他(木造住宅・不動産):数量 100(取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.34(取扱量 100 あたり売上の指数(2026/03 = 1.0))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。木造住宅・不動産 取扱 1.0 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 2%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.2 倍。全体の PER 18.22 倍、時価総額 342 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要の緩やかな縮み、物価並みの値上げ、利益率の中間への戻りを、業界の前提と会社の過去の利益率の幅から落としどころにした。
やや悲観 27% 地場の競争で値上げが戻り、利益率が以前に近づく 利益 8 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,348 円131 億円
公共事業が頭打ちになり、熊本の特需が剥がれる。土木用の出荷は今の 9 割に減る。競合の地場メーカーが稼働を保とうと値下げし、単価は物価 1.34 倍に届かず 1.25 倍にとどまる。
土木用の営業利益率は 10.5% に下がり、建築用は 5% に落ちる。大型案件の外注が増え、自社で作る分が減るためだ。
営業利益は 11 億円、純利益は 8 億円。本社費は物価で膨らむ一方、売上は伸びない。工場の稼働が下がり、固定費が重くのしかかる。
配当は利益の減少に合わせて縮むが、財務に傷はない。借金と現金は見合う額で、赤字には落ちない。ただ、稼ぐ力は今の 3 分の 1 まで細り、自己資本の ROE も資本コストを下回って沈む。
- 土木用セメント製品:数量 45.0(出荷量(万トン)。売上からの推定)× 価格 4.20(1 トンあたり売上(万円)。施工込み)→ 売上 189 億円・営業利益 20 億円。土木 出荷 45 万t(0.90 倍)× 単価 1.25 倍、営業利益率 10.5%
- 建築用セメント製品:数量 13.6(出荷量(万トン)。売上からの推定)× 価格 6.12(1 トンあたり売上(万円)。加工・据付込み)→ 売上 83 億円・営業利益 4 億円。建築 出荷 13.6 万t(0.80 倍)× 単価 1.22 倍、営業利益率 5%
- その他(木造住宅・不動産):数量 80.0(取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.20(取扱量 100 あたり売上の指数(2026/03 = 1.0))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。木造住宅・不動産 取扱 0.8 倍 × 価格 1.20 倍、営業利益率 -2%
倍率:事業の純利益 8 億円、事業の自己資本 約 109 億円で、事業の ROE は 7%、k 7.25% に届かない。ROE が k 以下の会社の PER は 1÷k(12.1 倍)が上限で、利益が細る途中でもあるため、上限の 8 割弱(9.5 倍)に置く。
確率:建設向けの二次製品は地場の工場が多く、需要が細る局面では価格競争が起きやすい。直近の利益率は 2023 年までの 3% 台からの急上昇で、定着の証拠が薄い。
悲観 10% 公共事業の縮小と値崩れで、2023 年以前の利益率に戻る 利益 4 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 517 円50 億円
国土強靱化の予算が尽き、更新投資も後ろに倒れる。熊本の特需も終わり、土木用の出荷は今の 8 割に落ちる。工場が余り、値崩れが続くため、単価は 10 年で 1.10 倍にしか上がらない。
営業利益率は、土木用 9%、建築用 3% まで落ちる。2023 年までの全社 3〜4% に戻る形だ。
営業利益は 5 億円、純利益は 4 億円にとどまる。赤字の事業は出ないが、稼ぐ力は今の 5 分の 1。配当も純利益に合わせて縮み、自己資本の価値は稼ぐ力に見合う水準まで切り下がる。
工場の一部は稼働が半分以下になり、余る設備の整理が避けられない。財務が堅いため倒れる筋書きではないが、株主にとっては何年も報われない時期が続く。
- 土木用セメント製品:数量 40.0(出荷量(万トン)。売上からの推定)× 価格 3.69(1 トンあたり売上(万円)。施工込み)→ 売上 148 億円・営業利益 13 億円。土木 出荷 40 万t(0.80 倍)× 単価 1.10 倍、営業利益率 9%
- 建築用セメント製品:数量 11.1(出荷量(万トン)。売上からの推定)× 価格 5.27(1 トンあたり売上(万円)。加工・据付込み)→ 売上 59 億円・営業利益 2 億円。建築 出荷 11.1 万t(0.65 倍)× 単価 1.05 倍、営業利益率 3%
- その他(木造住宅・不動産):数量 60.0(取扱量(2026/03 を 100 とした指数))× 価格 1.00(取扱量 100 あたり売上の指数(2026/03 = 1.0))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。木造住宅・不動産 取扱 0.6 倍 × 価格 1.00 倍、営業利益率 -5%
倍率:事業の純利益 4 億円で、稼ぐ力(純利益÷k)は約 45 億円。今の自己資本 102 億円に 0.43 を掛けた 50 億円を置く。稼ぐ力に見合う水準で、床の資産は数えない。PER に直すと 12 倍弱とやや悲観より高く見えるが、やや悲観の PER は利益が細る途中の値で、悲観は稼ぐ力そのもので測っているためである。
確率:構造的な負けの筋書き。公共事業予算が縮み、地場の工場が過剰になり、値崩れが起きる。直近の利益率が 2023 年以前の 3% 台に戻る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木用セメント製品
道路・下水道・河川向けの側溝、カルバート、擁壁などコンクリート二次製品を作って売り、施工まで手がける。九州と東北が地盤。
| 数量出荷量(万トン)。売上からの推定 | 価格1 トンあたり売上(万円)。施工込み | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 3.36 | 168 | 33 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 4.50 | 216 | 32 |
取り方:出荷量の開示はない。土木用の売上 167.9 億円を、二次製品の 1 トンあたり売上 3.4 万円前後(側溝・カルバートの製品と施工を含む筆者の推定)で割って 50 万トンとした。数量は推定で、実際の出荷量とずれうる。売上と営業利益はセグメント開示の実額。
建築用セメント製品
工場・商業施設・集合住宅の外壁や床、梁、柱に使うプレキャスト部材(PCa)を作って売る。
| 数量出荷量(万トン)。売上からの推定 | 価格1 トンあたり売上(万円)。加工・据付込み | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17.0 | 5.02 | 85 | 8 |
| 10 年後 中立 | 15.3 | 6.72 | 103 | 8 |
取り方:出荷量の開示はない。建築用の売上 85.3 億円を、PCa 部材の 1 トンあたり売上 5.0 万円前後(加工と据付を含む推定)で割って 17 万トンとした。2026/03 は沖縄の大型案件で売上が 35.7% 増えたが、同案件は一部を同業へ外注しており、利益率は下がった。
その他(木造住宅・不動産)
木造住宅の施工販売、不動産販売、宅地開発。本業の外側にある小さな事業。
| 数量取扱量(2026/03 を 100 とした指数) | 価格取扱量 100 あたり売上の指数(2026/03 = 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.00 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 1.34 | 11 | 0 |
取り方:物件ごとの開示がないため指数で置く。売上 8.4 億円は全社の 3%。2026/03 は物件の引き渡しが翌期にずれて営業損失 0.3 億円だった。
リスクと懸念
利益率が山から戻る
営業利益率は 2023 年 3 月期までの 3〜4% から 11% 台に跳ねた。2027 年 3 月期の第 1 四半期は売上が 38% 減り、営業利益は 72% 減った。通期予想は据え置きだが、下期に偏った計画で達成は読みにくい。
地場の価格競争
二次製品の工場は各地に多く、近隣で競り合う。公共工事が細る局面では稼働を保つための値下げが起きやすい。直近の値上げの定着が、需要が細った後も続くとは限らない。
大口顧客と大型案件への依存
最大の顧客は商社の伊藤忠丸紅住商テクノスチールで、売上の 12.5%。ただ前期は 15.8% で、1 年で約 3 割減った。沖縄の大型案件で売上が 36% 伸びた一方、外注に回して利益率は落ちた。
公共事業予算と半導体特需の剥がれ
土木用は国と自治体の予算が頼り。国土強靱化の計画は追い風だが、予算が頭打ちになれば出荷は減る。熊本の半導体関連の工事が一巡すれば、九州の特需も剥がれる。
ためた利益の使い道
配当は純利益の 30% 目安で、残りは自己資本に積み上がる。設備投資は年 7 億円ほどで、使い道は限られる。ROE が下がっていく懸念があり、株主還元の見直しがなければ価値は伸びにくい。
材料費・運賃・人件費の上昇
セメント、骨材、鋼材、運賃、人件費が上がる局面では、価格転嫁の遅れが利益を直撃する。製品が重く、運賃の比重が大きい事業だ。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の通期で営業利益が会社予想の 28 億円に届く
- 山からの戻りが緩やかだったことになり、やや楽観の確率を上げる。第 1 四半期の落ち込みは時期のずれと判断できる。
- 営業利益率が 8% を割り、土木用でも 12% を下回る
- 価格競争が戻った合図で、やや悲観の確率を上げる。
- 配当性向の引き上げや自社株買いが発表される
- ためた利益が株主に戻る道が開け、余った資本の価値が上がる。ROE の下落にも歯止めがかかる。
- 国土強靱化の予算が縮み、公共工事の発注が減る
- 土木用の出荷が落ち、悲観の筋書きに近づく。
- 最大の顧客からの受注が一段と減る
- 建築用の稼働が下がり、利益率が落ちる。大口依存の弱さが表に出る。
- 大株主による TOB や再編の動きが出る
- 低い PER を市場が評価する形で、上値が出る可能性がある。
見ておくもの
- 土木用と建築用の営業利益率(四半期)
- 受注残と大型案件の動向
- 国土強靱化・公共事業の予算
- 熊本・九州の産業用地と道路の工事
- 配当性向と自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式(g 4%、k 7.25%、残る割合 1/2)から出し、中立は上限の 8 割(ROE が k を超えるので 1÷k を下回らせない)に置いた。今の PER や過去の PER は使っていない。数量はセグメントの売上を推定の単価で割った推定値で、実際の出荷量とずれうる。営業利益率は 2023 年までの 3〜4% と直近の 11% の間に置いた。中立の営業利益率 8.1% は、過去 12 年の最良の 11.7% を下回る。現金はほぼ借金と見合う額で、余った現金は立てていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.8→20.79 倍・やや楽観 PER 12.3→19.43 倍・中立 PER 12.2→18.22 倍・悲観 PBR 0.43→0.493 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。