結論
ニチハは、戸建て住宅の外壁に貼る窯業系サイディング、つまりセメントと繊維を固めた板で国内首位に立つ会社だ。筆者の結論は、堅い事業だが値段は小幅に割高、である。理由は、稼ぐ力が元の水準まで戻る道筋が、市場の縮小と米国の撤退で細く見えるからだ。
強みははっきりしている。国内の窯業系では約6割のシェアを持ち、工務店や住宅メーカーへの販売網と物流網を握る。自己資本比率は7割を超え、純現金もある。倒れる会社ではない。
弱みは、守る市場が縮むことだ。新築の戸建ては人口減で毎年すこしずつ減る。張り替えのリフォームが穴を埋めるが、すべてを埋めるには足りない。物流費と原料費の上昇を値上げで通しきれず、ここ数年は利益が削れてきた。
もう1つの傷が米国だ。住宅向けの汎用品で価格競争に負け、2025年に撤退を決めた。国内で稼いだ利益を海外で失った形で、経営の資本配分には厳しい目を向けたい。
10年後の中立の姿は、国内で堅く稼ぎ、米国は商業向けに絞って小さく黒字になる会社だ。ROEは資本コストにわずかに届かない。この水準では、純資産の割安さを根拠に値段を高く見ることはできない。確率で重みをつけた本質価値は、今の時価総額を1割ほど下回ると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ニチハは悪い会社ではないが、安く買えば報われる会社でもない。事業は地味で堅く、潰れる心配は小さい。一方で、利益の元になる国内の新築が縮み続けるため、10年後に今より強い会社になっているとは言いにくい。
オーナー利益、つまり再投資を引いた後に株主のものになる利益は、国内の外壁材から出る。投資の余地が小さい代わりに、利益の多くを配当と自社株買いで受け取れる点は、ひとつの魅力だ。
気になるのは資本の使い方だ。米国の失敗で積み上げた資本が回収できず、ROEは資本コストを下回っている。純資産に対して今の値段が安く見えても、稼ぐ力が資本コストに届かないなら、割安とは言えない。
安全域は、今の値段にはほとんどない。中立の筋書きでは10年後の価値が今を少し下回り、強気の筋書きでようやく大きく上回る。国内の利益率が戻り、米国が黒字で安定した証拠を見てから判断したい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は外壁材の販売で、売上の大半が国内だ。主力は窯業系サイディングで、新築の戸建てと、張り替えのリフォームに使われる。買い手は住宅メーカー、工務店、リフォーム会社だ。
金属系の外壁材や、外壁まわりの付帯部材も手がける。窯業系ほどの規模はなく、利益率も低い。金属系は軽くて張り替えに向く。ニチハにとっては顧客に一式で提案するための品ぞろえの意味が大きい。
海外は米国が中心だ。ジョージア州メーコンで繊維セメント板を作り、北米の住宅と商業向けに売ってきた。ただし2025年に、住宅向け汎用品から撤退する決定をした。第1工場の事業で、前期の売上は約100億円、営業損失は約6億円だった。今後は商業向けなど付加価値の高い分野に絞る。商業向けは建物の外装という別の需要で、住宅の着工ほど景気に左右されにくい。
セグメントの開示は地域と製品が入り交じる。このためサイトの内訳は、決算の説明をもとに筆者が推定した。国内の窯業系を約880億円、金属系と付帯品を約300億円、米国を約260億円とみている。数字は粗いが、国内の窯業系が利益の大半を生む構図は動かない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、国内の販売網と物流にある。外壁材は重くかさばり、全国の現場へ遅れず届ける力が競争力になる。シェア6割は、ブランドと在庫と配送を長年かけて積み上げた結果だ。
ただし値決めの力は強くない。買い手は大手の住宅メーカーで、値上げの交渉は簡単でない。2025年3月期は物流費の増加だけで営業利益の見通しを45億円下げた。コスト高を通しきれない弱さが出た。
競合はケイミューや旭トステム外装などで、国内で価格が崩れる構図ではない。むしろ怖いのは、新築が縮み続けて工場の稼働が落ちることだ。外壁材は固定費が重く、数量が減ると利益率が一気に下がる。
資本の使い方には課題がある。米国の工場投資は、競争と着工減で回収できなかった。国内は守りの事業で投資の余地が小さく、利益の多くは配当と自社株買いに回る。ROEは過去10年の中央値で9%弱だが、直近は2%まで落ちた。これは米国の失敗が効いている。筆者は、国内の利益率の戻りと米国の黒字化が確認できるまで、ROEの回復を前提にしない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の外壁材は、新築戸建ての数量で決まる。戸建ての着工は人口と世帯数の減少で、長く細ってきた。窯業系の市場も、ピークのころに比べて確実に小さい。
支えはリフォームだ。築20年を超える住宅が増え、外壁の張り替えと塗り替えの需要は新築よりも底堅い。軽い金属系を重ねて張るカバー工法など、窯業系以外の提案も競う。ニチハは窯業系の張り替え用の製品を持つが、リフォームでは塗装という別の選択肢とも競う。
もう1つの変化は物流だ。トラック運転手の不足で運賃が上がり、重い外壁材の配送費が利益を圧迫する。物流費の高止まりを、値上げと配送の効率化でどこまで吸収できるかが分かれ目になる。
米国は住宅着工の減速で、2023年以降に価格競争が強まった。汎用の住宅向けは、大手の繊維セメント板メーカーがひしめく土俵だ。ニチハはここで勝てず、商業向けの高付加価値品に絞る道へ進んだ。業界の需要は大きいが、取れる利益は国内ほど厚くない。
今後10年の外壁材の数量は、国内で年1〜2%の縮小を見る。業種のノートの見通し(住宅建材は年1%前後の縮小、価格は物価並み)と同じ置き方だ。
資本政策と M&A
株主への還元は連結配当性向45%以上を指標とし、自社株買いも機動的に行う。2026年8月にも市場外取引で自社株を取得した。2027年3月期は創立70周年の記念配当で増配の予想だ。
現金は多いが、事業に要らないほど余ってはいない。純現金は約90億円で、時価総額の1割に届かない。外壁材は在庫と設備に資金が要るため、この現金を余剰として分けない。
M&Aは、買う側としては米国の工場投資が失敗に終わった経緯がある。今後の大型買収は考えにくい。買われる側の可能性はある。純資産に比べて時価総額が小さく、国内で6割のシェアを持つ会社は、再編の候補になりうる。過去の統計が示す10年以内の買収確率は2割弱で、筆者は筋書きの上振れの要因として考える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の窯業系で6割を持つ会社が、ようやく足かせを外した。強みは販売網と物流で、他社がすぐには追いつけない。米国の赤字の元だった汎用品から撤退し、国内の物流費の上昇も値上げで少しずつ通している。2027年3月期の第1四半期は営業利益が6割伸びており、回復の兆しは出ている。
張り替え需要は増え続ける。築年数の古い戸建てが増え、外壁の更新は先送りしにくい。ニチハは窯業系の張り替え用製品と、金属系の重ね張りの両方を持ち、リフォームで取りこぼしにくい。
米国が商業向けに絞れば、赤字の元が消え、小さくても安定して黒字を出せる。国内の営業利益率が過去の10%前後に戻れば、10年後の利益は今の倍近くになる。自己資本の厚さを考えると、還元の余力も大きい。
買収の目もある。純資産に比べて小さな時価総額で、国内首位の事業を持つ。買い手が現れれば、その分の上乗せがつく。自社株買いを続けていることも、経営が株価の安さを意識している証拠だと読める。
慎重な見方
売上の大半は縮む国内の新築に頼る。成長の芽は国内にほとんどない。リフォームの伸びは新築の減少を完全には埋めず、数量は10年で目減りする。工場は固定費が重く、稼働が落ちると利益率が急に悪化する。
物流費と原料費の上昇は、買い手の大手住宅メーカーに簡単には転嫁できない。2025年3月期の営業利益は、この物流費だけで45億円下方修正された。米国の失敗も重なり、利益率は過去の10%台から6%台まで下がった。
中計の目標だった営業利益165億円は、今の見通し約96億円とは遠い。ROEは直近2%で、中計の9%とは大きな開きがある。経営が掲げた数字を繰り返し外してきた事実は重い。
買い手の大手住宅メーカーは、値上げのたびに他社への切り替えをちらつかせる。外壁材の需要が、塗装や金属系、木質系などへ移れば、窯業系の優位そのものが崩れる。シェア6割は、縮む市場の6割でしかない。守りの強さと成長力は別の話で、バリュー投資が重視する資本の再投資先が国内に乏しい点も弱みだ。
どちらに重みを置いたか
国内の堅さは本物で、米国の撤退で最悪は過ぎたと見る。だが、数量の縮小と値上げの通しにくさは構造的で、中計を外してきた実績が重い。ROEが資本コストにわずかに届かない中立の姿を最も確からしいとし、確率は慎重な見方に少し寄せた。強気の上振れ(国内の利益率回復と米国の黒字化)と、悲観の下振れ(稼働低下と価格競争の連鎖)の幅は、ほぼ同じ重さで置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,806 円1,565 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,529 円498 億円)。 今の値に割り戻すと 3,533 円1,150 億円、今との差 +23.4%、 期待の年率 +8.3%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,355 円2,720 億円 | 2,150 円700 億円 | +266.9% | +13.9% | 1,051 円342 億円 |
| やや楽観 | 24% | 6,317 円2,057 億円 | 1,904 円620 億円 | +187.1% | +11.1% | 1,973 円642 億円 |
| 中立 | 33% | 5,375 円1,750 億円 | 1,597 円520 億円 | +143.5% | +9.3% | 2,301 円749 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,525 円822 億円 | 1,167 円380 億円 | +29.0% | +2.6% | 849 円277 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,002 円326 億円 | 614 円200 億円 | −43.5% | −5.6% | 162 円53 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,806 円1,565 億円 | 1,529 円498 億円 | +121.3% | +8.3% | 6,335 円2,063 億円 |
今の株価時価総額 2,863 円932 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 国内の利益率が10%超に戻り、米国は商業向けで黒字を安定させる 利益 165 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 8,355 円2,720 億円
国内の窯業系は、リフォームの張り替えが新築の減少をほぼ埋め、出荷の減りは5%にとどまる。値上げと配送の効率化が定着し、利益率は14%まで戻る。
金属系は張り替え向けの提案が実り、数量を保つ。米国は商業向けに絞り、出荷を伸ばして9%の利益率を安定して出す。
全社で営業利益は約220億円。自己資本の厚さを背景に還元も厚くなり、ROEは9%台に乗る。物流費の転嫁と米国の黒字化という、ここ数年の課題がそろって片づいた姿だ。市場からは、守りの堅い高収益の住宅建材会社と見られる。中計が描いた姿に近い。自社株買いも続き、配当と合わせて株主の手取りも厚くなる。
- 国内の窯業系外壁材:数量 34.2(ニチハの出荷(百万㎡)=国内の窯業系市場(約60百万㎡の推定)×シェア約6割)× 価格 3.28(1㎡あたりの売上(千円))→ 売上 1,123 億円・営業利益 157 億円
- 金属系外壁材・付帯品・その他:数量 6.0(出荷(百万㎡相当))× 価格 6.70(1㎡相当あたりの売上(千円))→ 売上 402 億円・営業利益 32 億円
- 米国の繊維セメント外装材:数量 75.0(出荷(百万平方フィート))× 価格 5.03(1平方フィートあたりの売上(百円))→ 売上 377 億円・営業利益 34 億円
倍率:事業の純利益 164 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)51 億円。全体の PER 16.31 倍、時価総額 2,730 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気の根拠(物流費の転嫁、リフォーム、米国の黒字化)は3つとも現実的だが、同時に実現するのは稀で、1割とした。
やや楽観 24% 国内は縮みを小さく抑え、米国は小さな黒字、利益率は10%近くへ 利益 133 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 6,317 円2,057 億円
国内の窯業系は、新築の縮小をリフォームが大半は埋め、出荷は1割減にとどまる。物流費の転嫁が進み、利益率は12.5%まで戻る。
物流費の転嫁は完全ではなく、利益率は過去の最良期には戻らない。米国は商業向けで小さく黒字になる。金属系は横ばいで推移し、付帯品との一式提案で顧客をつなぎとめる。
全社の営業利益は約180億円。ROEは8%近くまで回復するが、資本コストにはわずかに届かない。一方で、中期計画が掲げた水準には届かず、期待は途中で止まる。国内の弱さは残るが、米国の撤退で赤字の足を引っ張る要因が消え、全体の利益が緩やかに戻る形だ。
- 国内の窯業系外壁材:数量 32.4(ニチハの出荷(百万㎡)=国内の窯業系市場(約60百万㎡の推定)×シェア約6割)× 価格 3.28(1㎡あたりの売上(千円))→ 売上 1,064 億円・営業利益 133 億円
- 金属系外壁材・付帯品・その他:数量 5.9(出荷(百万㎡相当))× 価格 6.70(1㎡相当あたりの売上(千円))→ 売上 395 億円・営業利益 28 億円
- 米国の繊維セメント外装材:数量 62.0(出荷(百万平方フィート))× 価格 5.03(1平方フィートあたりの売上(百円))→ 売上 312 億円・営業利益 22 億円
倍率:事業の純利益 132 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)51 億円。全体の PER 15.13 倍、時価総額 2,052 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の利益率の戻りと米国の黒字化が、どちらか一方でも実現する可能性は高い。足元の営業利益が伸びていることも考え、24%とした。
中立 33% 国内は堅く稼ぎ、米国は小さく黒字、ROEは資本コストにわずかに届かない 利益 110 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 5,375 円1,750 億円
国内の窯業系は、新築の縮小をリフォームが半分ほど埋め、出荷は15%減る。価格は物価並みに上がり、利益率は11.5%まで戻る。金属系は小さく伸びる。
米国は住宅向けから撤退した後の商業向けで、小さく黒字になる。全社の営業利益は約150億円で、会社が目標にした165億円には届かない。
純利益は約110億円。ROEは6〜7%で資本コストにわずかに届かず、堅いが成長しない住宅建材会社として評価される。数量は縮み、物価の分だけ売上が伸びる姿で、実質の成長はほとんどない。利益の質は悪くないが、伸びしろも乏しい。会社の掲げる目標には届かないまま、還元で株主に報いる姿が続く。
- 国内の窯業系外壁材:数量 30.6(ニチハの出荷(百万㎡)=国内の窯業系市場(約60百万㎡の推定)×シェア約6割)× 価格 3.28(1㎡あたりの売上(千円))→ 売上 1,005 億円・営業利益 116 億円
- 金属系外壁材・付帯品・その他:数量 5.8(出荷(百万㎡相当))× 価格 6.70(1㎡相当あたりの売上(千円))→ 売上 389 億円・営業利益 23 億円
- 米国の繊維セメント外装材:数量 52.0(出荷(百万平方フィート))× 価格 5.03(1平方フィートあたりの売上(百円))→ 売上 261 億円・営業利益 13 億円
倍率:事業の純利益 109 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)51 億円。全体の PER 14.61 倍、時価総額 1,648 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の縮小と堅い収益、米国の小さな黒字という、業種のノートの前提に沿った最も確かな筋書き。慎重な見方の重さを少し反映して33%とした。
やや悲観 23% 新築の縮小が速まり、国内の利益率は8%台、米国は利益が出ない 利益 66 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,525 円822 億円
国内の窯業系は、新築の縮小がリフォームの伸びを上回り、出荷は2割強減る。価格は物価に追いつかず、利益率は8%台に下がる。
金属系は価格競争で利益が薄い。米国は商業向けでも稼働が上がらず、利益がほとんど出ない。
全社の営業利益は約90億円。稼ぐ力は今とほぼ同じだが、名目の物価で膨らんだ分を考えれば、実質は縮んでいる。ROEは4%台にとどまる。固定費の重い工場の稼働が下がったことが、利益率を押し下げる主因だ。値上げで補おうにも、買い手の大手が応じず、コスト高を自社で抱え込む。株主への還元は、中立より薄くなる。
- 国内の窯業系外壁材:数量 28.1(ニチハの出荷(百万㎡)=国内の窯業系市場(約60百万㎡の推定)×シェア約6割)× 価格 3.19(1㎡あたりの売上(千円))→ 売上 895 億円・営業利益 76 億円
- 金属系外壁材・付帯品・その他:数量 5.5(出荷(百万㎡相当))× 価格 6.50(1㎡相当あたりの売上(千円))→ 売上 357 億円・営業利益 16 億円
- 米国の繊維セメント外装材:数量 45.0(出荷(百万平方フィート))× 価格 4.80(1平方フィートあたりの売上(百円))→ 売上 216 億円・営業利益 4 億円
倍率:事業のROE約4.3%でkを下回り、PERの上限は1÷k(12.5倍)。稼ぐ力から置く筋書きのため、中立より低い8.5倍に置いた。
確率:着工の縮小が速く、物流費の転嫁が進まない筋書きは、中計を何度も外してきた実績から無視できない。23%とした。
悲観 10% 国内の稼働が崩れ、価格競争で赤字すれすれ、米国から撤退 利益 12 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,002 円326 億円
国内の窯業系は、新築の縮小に塗装や金属系への需要移行が重なり、出荷は3割以上減る。工場の稼働が落ちて利益率は4%まで落ちる。
金属系は利益が出なくなり、米国は小さな赤字のまま撤退に近づく。全社の営業利益は約15億円で、純利益はほぼ出ない。
配当は大きく減らされるが、純現金と工場や土地は残る。市場は成長のない小さな会社として、売れる資産の水準で評価する。還元は手元の現金を取り崩して払う形になり、純資産は少しずつ減る。資産の売却と工場の集約も進めるが、縮む市場では稼働の回復につながらず、利益は小さいまま続く。
- 国内の窯業系外壁材:数量 23.4(ニチハの出荷(百万㎡)=国内の窯業系市場(約60百万㎡の推定)×シェア約6割)× 価格 2.96(1㎡あたりの売上(千円))→ 売上 691 億円・営業利益 28 億円
- 金属系外壁材・付帯品・その他:数量 4.5(出荷(百万㎡相当))× 価格 6.03(1㎡相当あたりの売上(千円))→ 売上 271 億円・営業利益 0 億円
- 米国の繊維セメント外装材:数量 25.0(出荷(百万平方フィート))× 価格 4.52(1平方フィートあたりの売上(百円))→ 売上 113 億円・営業利益 −3 億円
倍率:稼ぐ力は12億円÷k7%で約150億円、純現金と売れる資産の税後は約330億円で、後者が上回る。今の自己資本1,215億円に0.27倍を掛けた水準。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.28 倍・時価総額 326 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:新築の縮小、外壁材の代替、物流費の転嫁失敗が同時に起きる構造的な負けは、確率は低いが起こりうる。重い固定費を考えて10%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の窯業系外壁材
戸建ての新築と張り替えに使うセメント系の外壁板。国内シェア約6割。
| 数量ニチハの出荷(百万㎡)=国内の窯業系市場(約60百万㎡の推定)×シェア約6割 | 価格1㎡あたりの売上(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 36.0 | 2.45 | 882 | 85 |
| 10 年後 中立 | 30.6 | 3.28 | 1,005 | 116 |
取り方:開示が製品別でないため推定。外壁材市場を矢野経済の過去数字(2015年度に全体で1.26億㎡)から縮小分を引いて窯業系を約60百万㎡とし、シェア6割で出荷を約36百万㎡と置いた。売上は約880億円と推定し、営業利益は国内の利益から金属系を引いて約85億円。
金属系外壁材・付帯品・その他
金属サイディング、外壁まわりの部材、ハードボードなど。
| 数量出荷(百万㎡相当) | 価格1㎡相当あたりの売上(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.0 | 5.00 | 300 | 15 |
| 10 年後 中立 | 5.8 | 6.70 | 389 | 23 |
取り方:推定。付帯部材を含む外壁まわりの売上を約300億円と置き、㎡相当の単価5千円で割って数量を出した。利益率は窯業系より低い5%。
米国の繊維セメント外装材
米国メーコンの工場で作る外装材。2025年に住宅向け汎用品から撤退し、商業向けへ絞る。
| 数量出荷(百万平方フィート) | 価格1平方フィートあたりの売上(百円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 68.0 | 3.75 | 255 | −2 |
| 10 年後 中立 | 52.0 | 5.03 | 261 | 13 |
取り方:推定。撤退対象の事業が前々期に売上約104億円・営業損失約6億円だったことと、米国全体の売上規模の推定から約255億円。1平方フィートあたり約2.5ドルとして数量を出した。撤退の途中で利益はほぼゼロ。
リスクと懸念
新築戸建ての縮小が想定より速い
人口と世帯数の減少で戸建ての着工は細り続ける。リフォームが穴を埋めきれなければ、工場の稼働が下がり、固定費の重い外壁材は利益率が急に落ちる。
物流費と原料費を転嫁しきれない
重い外壁材は運賃の影響が大きく、2025年3月期にはこれだけで営業利益の見通しを45億円下げた。大手住宅メーカーが相手で、値上げの交渉は簡単でない。
米国の再建が進まない
住宅向けの汎用品から撤退したが、残る商業向けで十分な稼働と利益を得られる保証はない。工場投資の失敗が続けば、資本をさらに失う。
窯業系から他の外壁材への移行
塗装の張り替え、金属系の重ね張り、木質系などに需要が移れば、シェア6割の窯業系そのものの市場が縮む。ニチハは金属系を持つが、利益率は窯業系より低い。
中期計画を外し続ける
最終年度に営業利益165億円とROE9%を掲げたが、見通しは営業利益約96億円にとどまる。目標と実績の差が埋まらなければ、資本配分への信頼が下がる。
人手不足と施工の担い手の減少
外壁の施工は職人の手で行う。担い手が減れば施工費が上がり、窯業系の重い板は金属系などの軽い材料に押される。
今後の分かれ目
- 国内の窯業系の営業利益率が2期連続で11%を超える
- 物流費の転嫁が定着した証拠になり、強気の筋書きに確率が移る。
- 米国が商業向けだけで黒字化する
- 赤字の元が消えた確認になり、中立の営業利益が上振れする。
- 国内の窯業系の出荷が年3%を超えて減り続ける
- リフォームが穴を埋められない合図で、慎重な筋書きの確率を上げる。
- 大手の買い手から株の買い付けが出る
- 純資産を下回る水準では上乗せがつきやすく、強気の筋書きの価値に近づく。
- 次の中期計画の目標がまた未達になる
- 資本配分への不信が強まり、還元の見通しを下げる。
見ておくもの
- 新設住宅着工(持ち家・分譲戸建て)とリフォーム需要
- 国内の外装材の営業利益率と物流費
- 米国の商業向けの売上と稼働率
- 次の中期経営計画の目標
- 自社株買いと配当の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEと資本コスト7%、残る割合1/2から式で置いた。今の株価と同業の倍率は見ていない。中立の10年後のROEは約6.7%で資本コストに届かず、PERの上限は1÷k(12.5倍)のため、式の上限の約85%に置いた。やや悲観と悲観は稼ぐ力と売れる資産から置き、今の自己資本に掛ける形にした。今の時価総額は最後に比べただけで、確率や倍率を寄せていない。新リース会計の形の変化は、10年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 持ち合い株の含み益(評価差額金の税後)は余った現金に 0.5 で足した。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。