結論
美濃窯業は、セメント工場の窯に使う耐火物と、ファインセラミックスを焼く工業炉を作る岐阜の会社だ。時価総額は約120億円で、純現金がそのうち約3割を占める。
筆者の結論は、10年の価値は今の値段をやや上回る、というものだ。理由は二つある。一つは、セメント向け耐火物が国内生産の約4割を握る堅い地位。もう一つは、半導体向け焼成炉という新しい稼ぎ口が育っていることだ。
利益の半分近くはプラント事業が稼ぐ。2026年3月期のプラントの営業利益は7.3億円で、全社の16億円の半分弱にあたる。耐火物は売上の43%を占めるが、利益率は6%と低い。
不安は二つ。セメントの国内需要は人口減で細り、耐火物の数量は減っていく。もう一つは、プラントの受注が大口案件の完工で波打つことだ。2027年3月期の第1四半期も、プラントの減収で営業利益が8%減った。
資本政策は変わり始めている。配当性向を40%へ引き上げ、2026年8月には自己株式を約51万株買い入れた。含み益のある保有株を売って配当に回す方針も出た。純現金が還元に向かうかが、割安さを決める。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「地味な事業を、手堅く、安く持てる」会社と見る。
事業は予測しやすい。セメント窯の耐火物は、窯が動くかぎり定期的に取り替わる。顧客は大手セメントで、取引は長い。半導体向けの工業炉は波があるが、受注残が売上の4割あり、見通しは立つ。
資本の使い方は、ようやく株主に向き始めた。純現金は約35億円(時価総額の3割)あり、事業の運転資金を除いても余る。2026年8月に自社株を買い、配当性向も40%へ引き上げる計画だ。筆者は、この方向が続くかを最も注視している。
安全域は、純現金と上場株式の厚みにある。悲観の筋書きでも、これらを換算した価値が下を支える。
気になるのは、セメント国内需要の長期の縮小だ。堅い堀を持つ市場が細る構造は、バリュー投資が嫌う形である。それでも、プラントなど新しい稼ぎ口が育っているため、10年を通じた稼ぐ力は落ちにくいと見た。
倍率は、ROEが資本コストにわずかに届かないため、式の上限から2〜3割を引いた水準にとどめた。
何で稼ぐ会社か
美濃窯業の事業は4つある。2026年3月期の売上は耐火物セラミックスが70億円、プラントが64億円、建材及び舗装用材が23億円、不動産賃貸が4億円だった。
耐火物セラミックスは、セメントや石灰の窯、焼却炉、リサイクル施設に使うれんがと、半導体や電子部品の焼成に使う台板・棚板(キルンファニチャー)を作る。セメント向けは国内生産量の約4割を占める首位級で、れんがの設計から施工までを一貫して引き受ける点が強みだ。
プラントは、ファインセラミックスを焼く熱処理炉や工業炉の設計・製作と、炉への耐火物の施工を担う。営業利益率は11%台と、4事業で最も高い。半導体製造・試験装置向けの酸化物セラミックスを焼く設備は、国内でほぼ独占していると会社は説明する。受注残は約32億円で、売上の半年分に当たる。
建材及び舗装用材は、カラー舗装や遮熱舗装、工場の塗り床材を扱う。都市部の景観舗装に実績がある。不動産賃貸は売上4億円ながら営業利益2億円と、利益率が約5割の安定した稼ぎだ。
最大の販売先は太平洋セメントで、売上の13%(21億円)を占める。
従業員は連結で346名。小さな会社だが、耐火物と工業炉を組み合わせて提案できる点が、同業の耐火物メーカーとの違いだ。
優良さと弱いところ
事業の質は、筆者の目には「堅いが、大きくは伸びない」だ。
堀はセメント向け耐火物にある。国内の耐火物メーカーは約30社あるが、セメント用に力を入れるのは数社しかない。窯の仕様に合わせたれんがの選定、設計、施工を一貫して行える。ただ、顧客のセメント業界そのものが国内で縮んでおり、堀は縮む池の中の広い水域だ。
プラントの技術は、同業の耐火物メーカーにも設備が採用されるほどだ。ここは堀というより技術力。半導体向けの焼成炉は需要が伸びているが、競合が現れれば値下げ圧力が出る。
利益率は改善してきた。営業利益率は2016年3月期の約3%から、2026年3月期には約10%に上がった。値上げの浸透と、原価の低減が効いている。
資本効率は普通だ。ROEは過去10年で6〜10%、2026年3月期は7.9%。自己資本比率は約70%と厚く、借金はほとんど問題にならない。
弱点は規模と顧客の偏りだ。売上160億円で、上位の顧客に依存する。セメント向け(れんがと工事で売上の約4割)の落ち込みを、半導体向けなど新分野が埋められるかが、10年の勝負になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界の動きは、需要先ごとにまるで違う。
耐火物の国内消費は年間約120万トンで、その約8割が鉄鋼向けだ。美濃窯業はこの鉄鋼向けではなく、セメント・石灰・環境装置に軸足を置く。セメントの国内需要は人口減と建設需要の縮小で、緩やかに細っている。ただ、窯の補修は定期的に必要なので、需要は急には落ちない。
セメント業界は脱炭素の圧力も受ける。廃棄物を燃やして燃料にする使い方が増え、窯の耐火物には耐食性の高い品が求められる。この高機能品は値段を上げやすく、美濃窯業の狙いでもある。
工業炉は、半導体製造装置の部品や電子部品(積層セラミックコンデンサなど)を焼く需要が牽引する。AI向けの投資で半導体の設備投資は強いが、2〜3年ごとに谷が来る。受注は波を打つと見るのが安全だ。
競合は、耐火物では黒崎播磨、品川リフラクトリーズ、ヨータイなど。美濃窯業は鉄鋼に偏らないため、鉄鋼業界の再編や粗鋼の減産の影響は、同業より小さい。
建材は、道路舗装の維持補修が主な市場だ。公共投資は横ばいだが、価格転嫁が遅れやすい。コスト高で損失を出した四半期もあった。
人口減を背景に、国内の素材需要は10年で緩やかに縮む。伸びるのは、輸出と、国内の高機能領域だけだ。
資本政策と M&A
還元の方針は変わり始めている。2026年3月期の配当は前の期から1割以上増え、2027年3月期はさらに2割強の増配を予想する。中期経営計画では、配当性向を29.5%から2028年3月期に40%程度へ段階的に引き上げる。
自社株買いは長く行われていなかったが、2026年8月に立会外取引で約51万株を取得した。金額は開示から取れないが、6億円前後と推定する。これで自己株式を除く株式の約5%が減った。
中期計画の投資原資は、営業キャッシュフロー54億円に、余剰資金と投資有価証券の売却16億円を加えた計70億円。成長投資に23億円、基盤強化に16億円、株主還元に4億円を配る。含み益のある保有株を売って配当に回すことも検討するとしている。
保有株は上場19銘柄で約19億円(みずほFG、十六FG、大垣共立銀行など)。2025年度に2銘柄を売った。
M&Aでは、2021年に岩佐機械工業を子会社化した。海外では、デンマークのFLSmidth社と約20年提携している。TOBの動きは今のところ出ていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
美濃窯業は、市場が見落としている会社だ。セメント向け耐火物で国内の約4割を握り、プラントでは半導体向けのセラミック焼成炉を国内でほぼ独占する。しかも、純現金が時価総額の3割あり、自己資本比率は70%を超える。
業績は改善が続く。営業利益率は2016年3月期の約3%から約10%まで上がった。2027年3月期は営業利益19億円を見込み、中期計画は2028年3月期に21億円、長期は30億円だ。受注残は65億円と売上の4割あり、見通しも立つ。
資本政策も変わった。配当性向を40%へ上げ、2026年8月には自社株を51万株買った。含み益のある保有株を売って配当に回す方針も出ている。
PBRはまだ0.8倍と、資産の割に低い。還元が進み、プラントが伸びれば、10年で資産の価値が株価に表れる。半導体投資の追い風を、今の値段はほとんど織り込んでいない。
小さな会社なので、他社の提携や買収の対象にもなりやすい。kabufuのモデルでは、10年内のTOBの確率は約30%と出ている。純現金と保有株だけで時価総額の4割を超えるため、買い手にとって割安な買い物になる。
慎重な見方
堀があるのは、縮む市場の中だ。セメント向けの耐火物は、国内のセメント需要が人口減で細るなか、窯が閉鎖・統合されれば数量が落ちる。顧客は少数の大手で、価格転嫁は遅れ、利益率は6%と低い。
プラントの稼ぎも安定していない。半導体投資は2〜3年ごとに谷が来て、大口案件の有無で四半期の利益は大きく動く。2027年3月期の第1四半期は、プラントの減収で営業利益が8%減った。
純現金35億円も、株主に戻る保証はない。ここ5年は現金が積み上がるだけで、配当性向は3割にとどまった。自社株買いも6年ぶりだ。方針が強まったとはいえ、実績は薄い。
建材は、コスト高を転嫁できずに損失を出した。規模も小さく、1つの案件の遅れが利益を左右する。AIエージェントの影響は小さいが、国内の需要が減る逆風は消えない。
10年の稼ぐ力は、ROE 7%台と資本コストを下回る。
配当を増やしても、積み上がる現金が配当を上回る限り、ROEは上がらない。半導体の追い風が一巡すれば、残るのは縮むセメント市場と小さな規模だけだ。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さと純現金の厚みについては強気の言い分が正しい。ただ、国内セメントの縮小という長期の逆風が10年でどこまで進むかが分かれ目で、慎重な見方にも重みがある。確率は中立を最大に、やや悲観を4分の1とした。純現金は戻り方0.75で数え、保有株は現金と同じに扱った。慎重な見方を織り込んだ上で、今の値段と比べてどうなるかは、計算の結果に任せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,421 円236 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 628 円61 億円)。 今の値に割り戻すと 1,580 円154 億円、今との差 +31.0%、 期待の年率 +9.7%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,076 円397 億円 | 974 円95 億円 | +318.7% | +15.4% | 404 円39 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,519 円343 億円 | 800 円78 億円 | +258.1% | +13.6% | 864 円84 億円 |
| 中立 | 35% | 2,886 円281 億円 | 697 円68 億円 | +197.1% | +11.5% | 1,254 円122 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,339 円131 億円 | 461 円45 億円 | +49.3% | +4.1% | 450 円44 億円 |
| 悲観 | 12% | 390 円38 億円 | 256 円25 億円 | −46.4% | −6.1% | 78 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,421 円236 億円 | 628 円61 億円 | +152.9% | +9.7% | 3,049 円297 億円 |
今の株価時価総額 1,206 円118 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 半導体向け炉が伸び、利益率が2桁後半に乗る 利益 23 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 4,076 円397 億円
筆者が描く上振れは、プラントが主役になる姿だ。半導体向けの焼成炉と電子部品向けの炉が年間480件規模まで伸び、利益率は13%に乗る。会社の長期目標(売上220億円、営業利益30億円)に近い。
耐火物は、れんがの高機能化と台板・棚板の生産見直しで、利益率が10%台へ上がる。セメント向けのシェアは保つが、国内需要の縮小を値上げで補う。
賃貸は安定し、償却が取得時の値段のままなので利益率が上がる。営業利益は29億円台、純利益は23億円に届く。
還元も厚くなる。配当性向は40%を守り、含み益のある保有株を売って自社株買いを重ね、10年で95億円を返す。この筋書きでは、純現金が戻る形がはっきりする。
- 耐火物セラミックス:数量 27.5(出荷量(千トン、推定))× 価格 34(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 92 億円・営業利益 10 億円。高機能品で利益率が上がる
- プラント:数量 480(年間の完工件数(件、推定))× 価格 0.21(1件あたり売上(億円、推定))→ 売上 103 億円・営業利益 13 億円。半導体向けが伸びる
- 建材及び舗装用材:数量 33.0(施工・出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 9,380(1平方メートルあたり単価(円、推定))→ 売上 31 億円・営業利益 3 億円。価格転嫁が定着
- 不動産賃貸:数量 40.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 1.34(平均賃料(万円/平方メートル・年、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。償却据え置きで利益率上昇
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)29 億円。全体の PER 15.86 倍、時価総額 388 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体・電子部品の設備投資が10年にわたり強く、セメント向けも値上げが通る必要がある。両方が揃う確率は1割弱。
やや楽観 20% プラントが堅調で、耐火物の利益率が上がる 利益 20 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 3,519 円343 億円
プラントは年間440件規模で、半導体向けの焼成炉が堅調に伸びる。利益率は12%を保つ。
耐火物は、価格転嫁と台板・棚板の原価低減が進み、利益率は9%台に達する。セメント向けの国内需要の縮小は、高機能品と環境装置向けでほぼ吸収される。
建材は単価を物価並みに上げ、赤字を出さない水準に戻る。営業利益は25億円近く、純利益は19億円前後。
配当性向は40%で、10年の還元は78億円。保有株の一部を売って配当に回すが、自社株買いは小さい。純現金は積み上がり続け、時価総額に占める割合は高いまま残る。
この筋書きの鍵は、プラントの黒字が続くことと、耐火物の高機能化が進むことの二つだ。どちらも中期計画に沿う内容で、実現の見込みは低くない。
- 耐火物セラミックス:数量 27.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 34(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 91 億円・営業利益 8 億円。原価低減と価格転嫁
- プラント:数量 440(年間の完工件数(件、推定))× 価格 0.21(1件あたり売上(億円、推定))→ 売上 94 億円・営業利益 11 億円。半導体向けが堅調
- 建材及び舗装用材:数量 32.0(施工・出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 9,380(1平方メートルあたり単価(円、推定))→ 売上 30 億円・営業利益 3 億円。価格転嫁が進む
- 不動産賃貸:数量 40.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 1.34(平均賃料(万円/平方メートル・年、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。償却据え置き
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)29 億円。全体の PER 15.26 倍、時価総額 328 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画は耐火物の利益率10%、プラントの受注拡大を掲げる。計画の半分でも進めばこの筋書きに入る。上振れの中で最も起こりやすいので2割。
中立 35% セメントは縮み、半導体向けが補う。物価並みに伸びる 利益 17 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 2,886 円281 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、「縮む部分と伸びる部分が相殺する」姿だ。セメント向けの耐火物は、国内需要の縮小で数量が5%減る。ただ、価格は物価並みに上がり、利益率は6%から7.5%へ上がる。
プラントは、大口案件の波があるなかで、年間400件規模を保つ。単価は物価並みに上がり、利益率は10〜11%で安定する。
建材と賃貸は小さく、物価並みに伸びる。賃貸は償却が取得時のままなので、賃料の伸びがそのまま利益に残る。
営業利益は21億円台、純利益は16億円台。会社の2028年3月期の目標(営業利益21億円)を、10年かけて達成する形だ。
配当性向は40%で、10年の還元は68億円。純現金は緩やかに積み上がり、ROEは7%台にとどまる。
- 耐火物セラミックス:数量 26.6(出荷量(千トン、推定))× 価格 34(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 89 億円・営業利益 7 億円。数量5%減・価格は物価並み
- プラント:数量 400(年間の完工件数(件、推定))× 価格 0.21(1件あたり売上(億円、推定))→ 売上 86 億円・営業利益 9 億円。件数横ばい
- 建材及び舗装用材:数量 31.4(施工・出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 9,380(1平方メートルあたり単価(円、推定))→ 売上 30 億円・営業利益 3 億円。数量5%減
- 不動産賃貸:数量 40.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 1.34(平均賃料(万円/平方メートル・年、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。償却据え置き
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)29 億円。全体の PER 14.31 倍、時価総額 263 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:耐火物の数量が緩やかに減り、プラントが横ばいから微増という姿は、受注残と会社の計画から見て最も自然。3割台半ば。
やや悲観 25% セメント需要が速く縮み、プラントの受注が弱まる 利益 10 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,339 円131 億円
セメント向けの耐火物の数量が15%減り、価格転嫁も顧客の力に押されて物価に届かない。利益率は5%に下がる。
プラントは半導体投資の谷で、受注が3年ほど落ち込む。10年でみた件数は340件にとどまり、価格競争で利益率は8%に下がる。
建材は、舗装の維持補修の予算が伸びず、コスト高を転嫁できない。利益率は5%。
営業利益は12億円台、純利益は9億円台に落ちる。配当性向は40%を守るが、利益が減るため還元は45億円にとどまる。
純現金は積み上がらず、事業の運転資金に回る。
保有株の値動きも重なり、自己資本はほとんど増えない。セメントの窯の統合が進めば、供給先の再編で価格交渉力はさらに落ちる。
- 耐火物セラミックス:数量 24.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 32(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 76 億円・営業利益 4 億円。数量15%減・価格転嫁が遅れる
- プラント:数量 340(年間の完工件数(件、推定))× 価格 0.20(1件あたり売上(億円、推定))→ 売上 68 億円・営業利益 5 億円。受注の谷・価格競争
- 建材及び舗装用材:数量 28.0(施工・出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 8,500(1平方メートルあたり単価(円、推定))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。コスト転嫁できず
- 不動産賃貸:数量 38.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 1.25(平均賃料(万円/平方メートル・年、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 2 億円。賃料が物価に届かない
倍率:ROEは約4.3%と資本コストを大きく下回る。上限は12.1倍だが、事業が縮む筋書きなので7割の8.5倍に置く。余った現金は0.75倍に減ると見て数える。
確率:セメント需要の縮小は人口減とともに確実に進む。半導体の谷も2〜3年ごとに来る。両方の影響が出る確率は4分の1。
悲観 12% セメント向けが崩れ、半導体の谷が長引く 利益 4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 390 円38 億円
セメント工場の統廃合が進み、窯の数が減る。耐火物の数量は25%減り、残る顧客の値引き要求で単価は物価の半分しか上がらない。利益率は2%に落ちる。
プラントは、半導体の長い谷で受注が6割に減り、競合が値下げに出て利益率は3%にとどまる。建材は赤字、賃貸だけが黒字を保つ。
営業利益は3億円台、純利益は2億円台にとどまる。もう優良な事業ではなく、稼ぐ力はほぼ消える。
会社は清算されないので、少数株主は現金や保有株の使い道を決められない。床は純現金と上場株式の税後の手取りに、戻り方をかけた額とみる。
10年を通じて、電気・ガスなどのエネルギー費の上昇も利益を削る。耐火物の製造は焼成の工程が多く、エネルギー費の転嫁が遅れれば損失に近づく。
- 耐火物セラミックス:数量 21.0(出荷量(千トン、推定))× 価格 30(平均単価(万円/トン、推定))→ 売上 62 億円・営業利益 1 億円。窯の閉鎖で数量25%減
- プラント:数量 260(年間の完工件数(件、推定))× 価格 0.19(1件あたり売上(億円、推定))→ 売上 49 億円・営業利益 2 億円。半導体の谷が長引く
- 建材及び舗装用材:数量 25.0(施工・出荷面積(万平方メートル、推定))× 価格 7,800(1平方メートルあたり単価(円、推定))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。赤字すれすれ
- 不動産賃貸:数量 36.0(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 1.10(平均賃料(万円/平方メートル・年、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。賃料が伸びない
倍率:稼ぐ力はほぼ0。価値は資産で測り、床の資産(純現金と上場株式の手取り)に近い額を、今の自己資本155.6億円に対して0.24倍と置く。
確率:セメント業界の再編による窯の閉鎖と、半導体の長い谷が重なる深い筋書き。会社に現金と保有株の厚みがあり、1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
耐火物セラミックス
セメント・石灰・焼却炉向けの耐火れんがと、半導体・電子部品の焼成に使う台板・棚板。
| 数量出荷量(千トン、推定) | 価格平均単価(万円/トン、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 28.0 | 25 | 70 | 4 |
| 10 年後 中立 | 26.6 | 34 | 89 | 7 |
取り方:2026年3月期の売上69.9億円、セグメント利益4.2億円(利益率6.0%)。出荷量は開示がないため、れんがと台板・棚板の平均単価を1トン25万円前後と置いて割り戻した推定。
プラント
熱処理炉・焼成炉・自動化設備の設計製作と、炉への耐火物の施工。
| 数量年間の完工件数(件、推定) | 価格1件あたり売上(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 0.16 | 64 | 7 |
| 10 年後 中立 | 400 | 0.21 | 86 | 9 |
取り方:2026年3月期の売上約64億円、セグメント利益約7.3億円(利益率11.4%)。受注高55.1億円、受注残32.3億円。件数は開示がないため、1件約1,600万円の案件が中心とみて割り戻した推定で、実際は数億円の大型案件も混ざる。
建材及び舗装用材
カラー舗装・遮熱舗装などの景観舗装材と、工場の塗り床材。
| 数量施工・出荷面積(万平方メートル、推定) | 価格1平方メートルあたり単価(円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 33.0 | 7,000 | 23 | 2 |
| 10 年後 中立 | 31.4 | 9,380 | 30 | 3 |
取り方:2026年3月期の売上約23億円、セグメント利益約2.2億円(利益率9.4%)。面積は開示がないため、材料と施工を含む単価を1平方メートル7千円前後と置いて割り戻した推定。
不動産賃貸
土地や建物を貸す。
| 数量賃貸面積(千平方メートル、推定) | 価格平均賃料(万円/平方メートル・年、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 1.00 | 4 | 2 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 1.34 | 5 | 3 |
取り方:2026年3月期の売上約4億円、セグメント利益約2億円(利益率49.5%)。面積と賃料は開示がなく、土地の貸付が中心とみて単価を低く置いた推定。
リスクと懸念
セメント国内需要の長期の縮小
耐火物(れんがと工事)は売上の約4割がセメント設備向け。人口減と建設需要の縮小で国内のセメント生産は細り、窯の統廃合が進めば数量が落ちる。最大の顧客である太平洋セメントは売上の13%を占める。
半導体向け炉の受注の波
プラントは営業利益の半分近くを稼ぐ。半導体の設備投資が谷になると、焼成炉の受注が数年落ち込む。2027年3月期の第1四半期は大口案件の完工が減り、プラントが大幅な減収減益だった。
建材の価格転嫁の遅れ
建材及び舗装用材は、原価の上昇を吸収しきれず、2027年3月期第1四半期に損失を出した。公共工事の価格改定は遅れやすい。
純現金が株主に戻らない可能性
純現金は約35億円あるが、2022年3月期から積み上がってきた。配当性向40%への引き上げと自社株買いが続かなければ、現金は事業の運転資金や保有株に滞留する。
保有株の値動き
上場19銘柄の簿価は約19億円で、みずほFGや十六FGなどの金融株が大きい。株価の下落は自己資本を減らす。会社は保有を縮減する方針だが、売却の進み方は不透明。
大口顧客と規模の小ささ
売上160億円と小さく、上位の顧客への依存が高い。大口案件の遅れや失注は、四半期の利益を大きく動かす。AIエージェントによる直接の代替は、現場の施工と炉の製作が中心なので限られる。
今後の分かれ目
- 配当性向が40%に達し、自社株買いが毎年行われる
- 純現金が株主に戻る道筋が見える。戻り方を1.0に見直し、筋書きを上に寄せる。
- プラントの受注残が50億円を超える
- 半導体向けの炉が想定以上に伸びている。プラントの件数を上げ、強気の側に確率を寄せる。
- セメント大手が窯を閉鎖・統合すると発表する
- 耐火物の数量が想定より速く減る。やや悲観の側に確率を寄せる。
- 保有株の売却が進み、売却代金が配当や自社株買いに回る
- 含み益のある資産が株主に戻る。余った現金の戻り方を見直す。
- 営業利益率が12%を超える
- 中期計画の目標を前倒しで達成。耐火物の利益率の中立を上げる。
- 他社によるTOBや提携の話が出る
- 純現金と上場株式が価格に織り込まれるかを見る。応じる価値があるかを本質価値と比べる。
見ておくもの
- プラントの受注残と半導体向けの受注
- 耐火物セラミックスの営業利益率(目標10.7%)
- 配当性向と自社株買いの実施
- セメント業界の窯の統廃合
- 純現金と保有株の売却の進み方
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEが資本コスト7.75%に近いため、式の上限(1÷k=12.1倍)の約9割に置いた。今の株価も同業のPERも見ていない。同じ領域の会社(ヨータイ・日本カーボンなど)の中立のPERは9〜12倍で、並べて矛盾はないと確かめたが、倍率の根拠にはしていない。余った現金は戻り方0.75で数え、保有株の配当は利益に残る分と二重にならないよう、現金と同じ利息1.4%を引いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→15.86 倍・やや楽観 PER 11→15.26 倍・中立 PER 10.5→14.31 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。