結論
ジオスターは、トンネルの内張りに使うセグメントと、水路や道路の下に埋めるコンクリート製品を作る会社だ。親会社は日本製鉄で、議決権の 45%を持つ。筆者の結論は「やや割高」である。時価総額の 6 割強が現金という安さは本物だが、事業の稼ぎが 10 年かけて細る公算が大きく、現金も外へ出てきにくい。
稼ぎの中身は薄い。2026 年 3 月期の営業利益は 20 億円で、過去 10 年の平均を上回る。会社自身が次の期に経常利益 3 割減を予想し、中期計画の 2030 年度の目標も経常利益 15 億円以上と控えめだ。受注は 3 分の 2 に減り、手持ちの仕事は 450 億円まで落ちた。
良い点は財務だ。有価証券の売却で借金はほぼゼロ、現金は 80 億円ある。ただ、親会社が半分近くを持つ会社で、現金が株主に戻る確証は弱い。筆者は現金の半分を数え、事業は需要の細りを織り込んで置いた。数字は割安に見えても、中身は安全で増えにくい会社である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を長く持ちたいか。筆者の答えは「事業は持ちたくなるほど強くない。現金には価値がある。ただ、その現金を自分で使えない」だ。
まず事業だ。10 年後も存在し、利益は出る。ただ需要は縮み、買い手の力が強い。稼ぐ力は、投じた資本に対して資本コストをやっと超えるか、下回る水準にとどまる。ためた利益を額面どおりには評価しにくい。
次に現金だ。時価総額の 6 割に近い現金は魅力的である。ただ、親会社が半分近くを握る上場子会社では、現金の使い道を少数株主が決められない。配当の下限という前進はあるが、方針はまだ紙の上の約束だ。筆者は現金の半分だけを数える。
最後に安全域だ。悲観の筋書きでも、現金と工場の売却価値が下値を支える。だから大きく損をする形は考えにくい。しかし、10 年の期待は低い。割安というより、安全だが増えにくい会社である。
何で稼ぐ会社か
ジオスターは土木事業の一本で稼ぐ。柱は 2 つある。トンネル覆工用のセグメントと、カルバート(地中に埋める箱型の水路や通路)などのコンクリート土木製品だ。
セグメントは、シールドマシンが掘り進めたトンネルの壁に、輪の形に組み上げる部材である。コンクリートだけのもの、鋼の殻にコンクリートを詰めた合成型、鋼製の 3 種類を作る。合成型は強度と薄さを両立でき、地下鉄や共同溝で使われる。
工場は静岡、和歌山、埼玉、福岡、茨城の 5 か所だ。生産量は年 24 万トン、売上は 289 億円。従業員は連結で 467 人と少なく、設備投資も年 6 億円ほどで済む軽い事業である。
売り先は偏っている。2026 年 3 月期は日本製鉄が売上の 33%、鉄鋼商社の阪和興業が 23%、伊藤忠丸紅住商テクノスチールが 12%を占めた。上位 3 社で 68%だ。商流は鉄の世界に組み込まれている。
使い道は大半が公共工事だ。国や自治体が出す道路、鉄道、下水道、河川の工事に入る。公共投資の予算が、そのまま需要の大きさを決める。
優良さと弱いところ
強みは、合成セグメントを自前で設計できる技術と、全国に 5 つの工場を持つ供給力だ。ただし堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるほど深くはない。
セグメントは重く、工場から現場までの運搬費がかさむ。近くに工場がある会社が有利で、5 工場体制は地域ごとの受注の壁になる。合成型は親会社の技術と結びつき、競合が追いにくい部分もある。一方で RC(鉄筋コンクリート)セグメントは複数社が作り、入札で値が決まる。
収益性は並みだ。営業利益率は過去 10 年で 5〜10%、直近は 7%。ROE は 4〜7%で、資本コストに届かない年が多い。自己資本比率は 68%と厚いが、その厚みは稼ぐ力ではなく、使い道のない現金の山である。
経営の姿勢は堅実で、守りだ。政策保有株を売り切り、借金を減らし、配当の下限を決めた。評価できる。ただ、売上の 7 割近くが 3 社に集まり、値決めの主導権は弱い。筆者は、品質は良いが力関係は買い手が強い会社と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
シールド工法の需要は、大都市の地下で進む大型工事の本数で決まる。リニア中央新幹線、東京外かく環状道路、下水の幹線、共同溝などだ。いまは工事が山を迎えており、受注の波が高い時期を過ぎた。
足もとの受注は 167 億円と前の期の 63%に落ち、手持ちの仕事は 450 億円と 21%減った。会社は 2027 年 3 月期の売上を 11%減と見る。大型の案件が終わり、次の波までの谷に入るという読みだ。生産量も 6%減った。
長い目では、国内のシールド需要は縮む見込みだ。新しい大規模路線が減り、人口も減る。ただ、老朽化した下水道や共同溝の更新、洪水を防ぐ地下の調整池、防衛・港湾向けの構造物は残る。ジオスターは土木製品を重点に育て、2026 年 4 月には建築向けのプレキャスト部材も作れる体制を整えた。
価格は、人件費と電力、セメント、鋼材が上がる分を転嫁できるかで決まる。公共工事は単価の改定が入りやすいが、半年から 1 年遅れる。原材料の値上がりが先に利益を削る年がある。競合は日本コンクリート工業など RC セグメントを手がける会社と、鋼製・合成型を作る鉄鋼系の会社だ。
資本政策と M&A
資本の使い方は、守りから少しだけ攻めへ動き始めた。
2026 年 3 月期に政策保有株を売り、約 118 億円を回収した。残りも 2026 年 5 月までに売り切っている。借金はほぼなく、現金は 80 億円ある。中期計画で年間配当の下限を設けた。これは株主に有利な変化だ。
ただ、戻し方は限られる。2026 年 3 月期の配当は通常の純利益の 3 割ほどで、自社株買いはない。親会社の日本製鉄が議決権の 45%を持ち、現金が積み上がっても、株主へ出てくる保証は弱い。
親会社が完全子会社化に動く可能性は残る。ただ、発表も公開買付けの報道もない。筆者は筋書きの主役にしない。設備投資は償却並みの年 6 億円で、大きな買収の予定もない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金 80 億円は時価総額の 7 割にあたり、事業の価値はほぼ無料で付いてくる。政策保有株を売り切り、配当の下限も決めた。株主に向く姿勢は、すでに行動で示されている。
手持ちの仕事は 450 億円あり、次の 1 年半は仕事が埋まっている。足もとの減益は大型案件の端境期にすぎず、老朽化した下水道や共同溝の更新、防衛・港湾、建築向けのプレキャストが次の波を作る。
親会社の日本製鉄は、上場子会社の資本効率を問われる立場にある。完全子会社化や自社株の買い取りで現金が動く場面は十分ありうる。そのとき、時価総額の半分以上を占める現金が価格に反映される。営業利益率は直近 7%だが、値上げが定着すれば 8%は届く。研究開発に年 3 億円を投じており、合成セグメントの技術を使った新製品が収益源に育てば、土木以外にも売り先が広がる。さらに固定費の軽い事業なので、売上が少し戻るだけで利益は大きく跳ねる。事業が悪くても、悲観の下値は現金と工場で守られる。
慎重な見方
受注は前の期の 63%、手持ちの仕事は 21%減で、先行指標はすべて下を向いている。会社自身が 2027 年 3 月期に売上 11%減、経常利益 3 割減を見込み、中期計画の目標も経常利益 15 億円以上と低い。今の 20 億円の営業利益は山である。
売上の 7 割近くを日本製鉄・阪和興業・商社の 3 社に頼り、値決めの主導権は弱い。原材料と人件費が先に上がり、公共工事の単価改定は後から来る。この遅れが利益を削る。
現金は魅力でも、親会社が半分近くを握る限り、少数株主の手には届きにくい。配当は通常の純利益の 3 割程度で、自社株買いはない。現金は積み上がっても、PER の根拠にならない。事業の ROE は 5%前後で資本コストに届かず、事業の ROE は資本コスト以下で、ためた利益は額面を下回る価値しか持たない。親会社の下で、この構図は簡単には変わらない。さらに政策保有株の売却益という一回限りの利益で、今の純利益は実力より大きく見えている。
どちらに重みを置いたか
わずかに慎重な見方が強い。事業の稼ぎは山から下り、現金は親会社の下で動きにくい。ただ、現金と工場が悲観の下値を支えるので、悲観を厚くはしない。中立に 4 割弱を置き、やや悲観に 3 割弱を寄せた。楽観は 6%に抑え、親会社の動きは数字の裏づけがないので筋書きの主役にしていない。悲観は 12%と厚めに置くが、現金と工場の売却価値が下値を支えるため、沈みは浅い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 568 円174 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 143 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 368 円113 億円、今との差 +1.1%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,007 円309 億円 | 277 円85 億円 | +252.9% | +13.4% | 77 円24 億円 |
| やや楽観 | 16% | 793 円243 億円 | 212 円65 億円 | +176.1% | +10.7% | 161 円49 億円 |
| 中立 | 38% | 662 円203 億円 | 150 円46 億円 | +123.1% | +8.4% | 309 円95 億円 |
| やや悲観 | 28% | 365 円112 億円 | 101 円31 億円 | +28.0% | +2.5% | 130 円40 億円 |
| 悲観 | 12% | 229 円70 億円 | 59 円18 億円 | −20.8% | −2.3% | 35 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 568 円174 億円 | 143 円44 億円 | +95.5% | +6.9% | 711 円218 億円 |
今の株価時価総額 364 円112 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 谷が浅く、値上げが通り、親会社の下で資本効率が上がる 利益 22 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,007 円309 億円
大型案件の端境期は短く、受注が早めに戻る。防衛・港湾向けの構造物と建築向けのプレキャストが数字になり、生産量は今の 0.95 倍を保つ。公共工事の単価改定が人件費と材料の上昇に追いつき、価格は 10 年で 1.42 倍になる。
工場の稼働率が上がり、営業利益率は直近の山を超える 8%に乗る。親会社の資本効率の要請で、配当と自社株買いも増える。現金の戻りが見えてきて、市場の評価も改善する。
ただし 10 年のあいだに、受注の谷も、原材料の先行高も来る。ここまで揃うのは強気の側の最上位である。このとき当社は、軽い設備で利益の取れる会社として評価され直す。
- 土木事業(トンネル用セグメント・土木製品):数量 230(年間生産量(千トン))× 価格 1.69(1 千トンあたりの売上(億円)。セグメントと土木製品の平均)→ 売上 389 億円・営業利益 31 億円。生産量は今の 0.95 倍の 230 千トン、価格 1.42 倍、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 303 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注の回復、値上げの定着、配当の上積みの 3 つが重なる形。受注は減る方向の指標がそろっており、一度に重なる確率は低い。
やや楽観 16% 受注が下げ止まり、物価並みの値上げが通る 利益 16 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 793 円243 億円
受注は谷を越え、年 200 億円前後で安定する。生産量は今の 0.9 倍の 218 千トンにとどまる。公共工事の単価改定は物価をやや上回るペースで入り、価格は 10 年で 1.38 倍になる。
営業利益率は 6.4%と、直近の山から少し下がった水準に落ち着く。配当の下限が効き、総還元は純利益の 4 割ほどになる。
親会社との関係は変わらず、現金は積み上がる一方だが、戻り方は少し改善する。老朽化した下水道や共同溝の更新が下支えとなり、工場の稼働率は 8 割前後を保つ。ただ、売り先が 3 社に集まる構図は変わらず、大幅な値上げまでは望みにくい。
- 土木事業(トンネル用セグメント・土木製品):数量 218(年間生産量(千トン))× 価格 1.65(1 千トンあたりの売上(億円)。セグメントと土木製品の平均)→ 売上 359 億円・営業利益 23 億円。生産量は今の 0.9 倍の 218 千トン、価格 1.38 倍、営業利益率 6.4%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 229 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:手持ちの仕事が 450 億円あり、2 年は仕事が埋まる。老朽化した下水道・共同溝の更新と防衛・港湾が支える形は、実績のある需要が根拠。
中立 38% 受注は谷から戻らず、生産量は 15%減、利益は今より薄い 利益 12 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 662 円203 億円
国内のシールド工事は大型案件が一巡し、需要は年 1.5%ほど縮む。当社の生産量は 10 年で今の 0.85 倍の 206 千トンになる。土木製品や防衛・港湾、建築向け部材が下支えするが、シールドの減少を埋めきれない。
価格は物価並みの 1.34 倍。人件費・材料の上昇を単価に転嫁できるが、遅れが生じて利益率は 5.2%と、直近の 7%を下回る。会社の目標(経常利益率 5%)とほぼ同じ水準である。
償却費は今の 6.5 億円を取得原価のまま置き、更新投資は建築費の上昇で膨らむが、設備が軽いので利益への影響は小さい。現金は積み上がり、配当は純利益の 4 割ほどを払う。
- 土木事業(トンネル用セグメント・土木製品):数量 206(年間生産量(千トン))× 価格 1.60(1 千トンあたりの売上(億円)。セグメントと土木製品の平均)→ 売上 329 億円・営業利益 17 億円。生産量は今の 0.85 倍の 206 千トン、価格 1.34 倍、営業利益率 5.2%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)34 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 178 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の予想も、2030 年度の目標も経常利益 15 億円と控えめで、受注・手持ちの仕事は下向き。国内のシールド需要は長期で縮む見通しなので、中立は今の山より低い利益に置く。
やや悲観 28% 谷が長引き、価格競争で利益が半分近くに落ちる 利益 7 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 365 円112 億円
大型案件が戻らず、生産量は今の 0.75 倍の 182 千トンに減る。工場の稼働率が下がり、固定費の重さが利益率を押し下げる。価格は買い手の交渉で 10 年 1.30 倍にとどまり、材料と人件費の上昇に負ける。
営業利益率は 3.4%まで下がり、営業利益は 10 億円弱。配当は下限で支え、総還元は 3 億円強を保つ。現金は谷で食われ、成長投資にも向かず、戻り方も細る。
日本製鉄の調達方針の変更で、売上の 3 割を占める取引が縮む場合も、ここに含む。谷が長引くあいだ、現金は事業の穴埋めに回り、株主に戻る額は細る。
- 土木事業(トンネル用セグメント・土木製品):数量 182(年間生産量(千トン))× 価格 1.55(1 千トンあたりの売上(億円)。セグメントと土木製品の平均)→ 売上 282 億円・営業利益 10 億円。生産量は今の 0.75 倍の 182 千トン、価格 1.30 倍、営業利益率 3.4%
倍率:事業の純利益 6.3 億円、事業の自己資本約 280 億円で ROE 2%と、k 7.75%を大きく下回る。上限の 1÷k の 12.1 倍の約 75%(9.0 倍)に置く。余った現金は今の額の 0.75 倍(谷で食う分を引く)に戻り方 0.5 を掛けて足す。
確率:受注が前の期の 63%に落ち、手持ちの仕事も減った。売り先が 3 社に集中し、買い手の力が強い。谷が長引く形は、足もとの指標と整合する。
悲観 12% 大型案件が消え、親会社の都合で売り先も細る 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 229 円70 億円
リニア、外かく環状道路のあとに大型案件が出ない。生産量は今の 0.62 倍の 150 千トンに落ち、工場の統合や減損が必要になる。価格は 1.25 倍にとどまり、材料高を転嫁できない。
営業利益率は 0.5%で、事業はほぼ利益を生まない。配当は下限も守れず、総還元は 10 年で 18 億円に細る。
値打ちは稼ぐ力ではなく、現金と工場・土地の売却価値で測る。現金は谷の損失と配当で細り、親会社の下では少数株主に戻りにくいので、半分だけ数える。10 年のあいだに工場の統合や撤退を迫られ、減損損失も出る。
- 土木事業(トンネル用セグメント・土木製品):数量 150(年間生産量(千トン))× 価格 1.49(1 千トンあたりの売上(億円)。セグメントと土木製品の平均)→ 売上 224 億円・営業利益 1 億円。生産量は今の 0.62 倍の 150 千トン、価格 1.25 倍、営業利益率 0.5%
倍率:稼ぐ力は事業の純利益 1 億円台で、÷k では 20 億円に届かない。値打ちは純現金と売れる資産の税後。今の自己資本 251 億円への PBR 0.28 倍(約 70 億円)で、床の資産の内訳は floor_assets_why に書く。
確率:国内のシールド需要が構造的に縮み、親会社グループの調達が内製・他社へ移る形。売り先が 3 社に集中しているので、一度動けば大きい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木事業(トンネル用セグメント・土木製品)
シールドトンネル用のセグメントと、カルバートなどコンクリート土木製品を作って売る。
| 数量年間生産量(千トン) | 価格1 千トンあたりの売上(億円)。セグメントと土木製品の平均 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 242 | 1.19 | 289 | 21 |
| 10 年後 中立 | 206 | 1.60 | 329 | 17 |
取り方:有価証券報告書の生産高 242 千トンと売上 288.6 億円から単価を出した。報告セグメントは土木の 1 つで、製品別の内訳は開示がない。営業利益は連結の 20.5 億円。
リスクと懸念
大型案件の終わりで受注が細る
2026 年 3 月期の受注は 167 億円で、前の期の 63%に落ちた。手持ちの仕事も 450 億円と 21%減っている。リニア中央新幹線や外かく環状道路の山を越えると、次の大型案件までの谷が長引く恐れがある。稼働率が下がれば、固定費の重い工場の利益は需要の減少より速く落ちる。
売り先が 3 社に集中する
日本製鉄、阪和興業、伊藤忠丸紅住商テクノスチールで売上の 68%を占める。親会社の調達方針が変われば、数量も価格も一度に動く。日本製鉄の比率は前の期の 21%から 33%へ、阪和興業は 39%から 23%へ入れ替わっており、商流が安定しているとは言いがたい。
原材料と人件費の先行
セメント、骨材、鋼材、重油が上がり、人手も足りない。公共工事の単価改定は半年から 1 年遅れて入る。物価が年 3%で続く世界では、この遅れが毎年の利益率を少しずつ削る。
現金が株主に戻らない
現金は 80 億円あるが、親会社が議決権の 45%を持つ。配当は通常の純利益の 3 割ほどで、自社株買いはない。中期計画に配当の下限は入ったが、総還元の目標は示されていない。現金は積み上がっても、株主の取り分にならない可能性がある。
人手不足と設計・積算の効率
工場の担い手が減り、設備の維持と型枠の更新に手間がかかる。研究開発費は年 3 億円で、建築向けや防衛・港湾向けの新製品が数字になるまで時間がかかる。AI が直接の脅威になる事業ではないが、設計・積算の効率で劣れば入札で不利になる。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の受注が 220 億円を超えたら
- 谷が浅いことの裏づけになる。やや楽観の確率を上げる。
- 手持ちの仕事が 350 億円を割り、生産量が 20 万トンを下回ったら
- 稼働率の低下で利益率が大きく崩れる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 総還元性向や自社株買いの目標が公表されたら
- 現金の戻り方を 0.5 から 0.75 に上げる材料になる。
- 日本製鉄が公開買付けを発表したら
- 現金と事業の価値に上乗せ価格が付く。分析の対象から外れる。
- 建築向けプレキャストや防衛・港湾向けの受注が数字で出たら
- 土木以外の収益源が育つ兆しで、数量の見方を上げる。
見ておくもの
- 四半期の受注高と手持ちの仕事
- 日本製鉄・阪和興業など上位売り先の売上比率
- 配当と総還元の方針、自社株買いの有無
- 防衛・港湾・建築向け製品の初受注
- 原材料価格と単価改定の時期
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER からは置かず、生産量 24 万トン × 1 千トンあたりの売上でセグメントを積んだ。倍率は事業の ROE が資本コストに届かない会社の上限 1÷k を基準に、中立は 7 割弱に置いた。現金は戻り方 0.5 で別に足した。今の株価が半分でも倍でも、この置き方は変わらない。新リース会計基準は工場が自社保有で影響が小さい。10 年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.9 倍・やや楽観 PER 9.8→12.9 倍・中立 PER 8→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。