結論
MARUWA は、セラミックの基板と部品をつくる会社だ。主力は次世代高速通信、つまり AI データセンターの通信機器に使う基板で、売上の 4 割台後半をこの用途が占める。車載のパワー半導体向け、半導体製造向け、産業機器、LED 照明が脇を固める。営業利益率は 3 割台半ばと、素材・部品の会社として飛び抜けている。
筆者の結論は「割高」だ。理由は 2 つある。1 つは、通信向けの需要が会社自身の言う「次期モデル向け」、つまり特定の機器の更新サイクルに乗っていること。山が高いぶん、谷も深い。もう 1 つは値段で、今の時価総額は、この好調が 10 年続くことまで先取りしている。
強みははっきりしている。自己資本比率は 9 割で、手元には 670 億円の純現金がある。景気が崩れても潰れる心配はまずない。今期の設備投資は 200〜250 億円と過去最大で、瀬戸と三春の新棟で通信と半導体の増産に踏み切った。経営は攻めに入った。
弱みは資本の使い方にある。配当性向は 1 桁%と低く、稼ぎの多くは設備と現金に積み上がる。投資が実れば利益は伸びるが、実らなければ資本効率が落ちる。10 年後の中立で見ても、利益は今の 3 倍ほどにとどまり、時価総額は今の9割弱の水準だ。割り引いた本質価値は、今の値段を大きく下回る。
バリュー投資の観点から
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益から見よう。MARUWA は稼ぐが、その多くを設備に回す。今期は営業キャッシュフローを超える投資だ。これが実れば利益は増えるが、増産が裏目に出ると、設備だけが残る。株主の手に渡る利益は、見かけの純利益より小さいと考えるのが筋だ。
堀は本物だが、狭い。顧客の機器に組み込まれた基板は替えにくい。一方で、通信向けは特定のモデルの更新に乗った需要だ。10 年後も同じ立場にいると言い切れるほど、事業の先は見通せない。「わかる事業」と胸を張って言える会社ではない。
資本配分は評価が割れる。実質無借金で潰れない会社を長く持てるのは魅力だ。ただ、現金を配当や自社株買いで返さないなら、その現金が稼ぐ力を持っていなければならない。現金は預金のまま利回りが低く、積み上がるほど会社全体の資本効率を落とす。
安全域、つまり払う値段と本質価値の差はどうか。今の値段は、通信向けの急成長が長く続くことを前提にしている。中立の筋書きですら、時価総額は今とほぼ同じか、割り引くとかなり小さい。優良な会社であることと、今の値段が妥当であることは別だ。
何で稼ぐ会社か
売上の約 85% は、セラミックを素材にした基板と部品だ。アルミナや窒化アルミニウムの基板、薄膜回路をのせた基板、半導体向けの部品などをつくる。セラミックは熱に強く、電気を通さず、熱をよく逃がす。だから熱がこもる AI の通信機器やパワー半導体に欠かせない。残りの約 15% は LED を中心とした照明機器で、こちらは別の顔をもつ。
稼ぎの源は用途別に見るとわかりやすい。足元の四半期では、情報通信が約 47%、車載が約 18%、半導体が約 11%、産業機器が約 10%、照明が約 13% だ。数字は会社の市場別の売上高から読んだ。情報通信は 1 年前の 4 割強から比率を上げ、会社の稼ぐ力を引っ張っている。
会社は今期の売上を前期比 25% 増の 933 億円、営業利益を 35% 増の 337 億円と見る。期初の予想より大きく上げた。中身は、通信が 48% 増、半導体が 20% 増、車載が 6% 増だ。通信は「次期モデル向けの需要拡大」と会社が説明しており、瀬戸工場の新棟で増産する。半導体は汎用メモリの需要が第 2 四半期から本格化するとみて、三春工場の新棟で応える。
照明は 2030 年の LED 化という政策の追い風で、堅調に伸びる。ただ利益率は 2 割ほどで、セラミック部品の 4 割前後には届かない。会社全体の利益を決めるのは、あくまでセラミック部品の 3 つの用途だ。
優良さと弱いところ
優良さの核は、価格を自分で決められる力だ。営業利益率は 2015 年 3 月期の 7% から、直近は 3 割台前半〜後半まで上がった。素材の会社でこの水準は珍しい。顧客の機器の設計に組み込まれ、仕様が固まると別の会社に替えにくい。この「切り替えにくさ」が堀、つまり他社がまねしにくい強みの正体だ。
ただし堀の幅は狭い。通信向けは特定の機器のモデルに乗っており、顧客が次のモデルで調達先を見直せば、シェアが動く余地がある。会社は顧客名を明かしていないので、集中度は筆者にもわからない。わからないこと自体を、リスクとして織り込むべきだと考える。
財務は盤石だ。自己資本比率は 9 割を超え、実質無借金で、2002 年 3 月期や 2009 年 3 月期のような営業赤字の年も乗り越えてきた。過去 20 年に希薄化の期が 1 度あるが、足元の財務に不安はない。
弱い点は 2 つある。1 つは新製品の立ち上げだ。前期は歩留まりの低下が利益を押し下げた。もう 1 つは資本効率で、利益を配当で返さず現金と設備に寝かせるため、自己資本利益率は 12% 台にとどまる。稼ぐ力に比べて、株主へ戻る分が少ない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
追い風の主役は AI だ。データセンターの通信は速度が上がり続け、機器の発熱と配線の密度が上がる。セラミックの基板はその受け皿になる。窒化アルミ基板の世界市場は 2024 年に約 1.7 億ドルで、2031 年まで年率 6〜7% で伸びるとの調査がある。ただこの規模は MARUWA 1 社の売上(約 5 億ドル)より小さい。調査の範囲が狭いのだろう。通信用途の基板・部品全体で見る方が実態に近い。
競合は京セラをはじめ、国内外にセラミックの大手が並ぶ。筆者は MARUWA の通信向けシェアを 1 割台前半と推定する。売上規模から逆算した置き方で、第三者の数字は見つからなかった。車載のパワー基板では、窒化ケイ素と窒化アルミが主役になりつつある。
半導体向けは汎用メモリの設備投資に連動する。前期は回復が遅れたが、今期は本格回復を会社が見込む。車載は新エネルギー車向けのパワー基板が柱だ。車の電動化は続くが、販売の伸びは鈍っており、前期は車載の弱さが減益の一因になった。
循環のどこにいるか。通信は山の手前の上り坂、半導体は谷から回復する途中、車載は横ばいだ。通信と半導体が同時に調整に入ると、設備も在庫も一気に重くなる。会社が過去最大の投資を始めた今こそ、需要の山が先送りされたときの傷は深い。
資本政策と M&A
資本政策の特徴は、還元が薄いことだ。配当性向は約 7% で、今期の配当予想は前期より増えるが、それでも利益のごく一部にとどまる。自社株買いの実績は、筆者の調べでは確かめられなかった。
稼いだお金の行き先は設備だ。今期の設備投資は 200〜250 億円で、営業キャッシュフローを上回る見込みになる。建設中の資産はすでに 178 億円まで積み上がった。これまでは現金が増える一方だったが、投資の局面に入って流れが変わった。
M&A は目立たない。大型の買収で価値を壊した形跡も、買収で事業を広げた形跡もない。自前の技術と設備で伸ばす会社だ。買われる側になる可能性は小さくない。一般の統計では、10 年以内に TOB や買収が起きる確率は 15% 前後とされる。ただ、大株主や創業家の意向は、筆者には確かめられなかった。
ガバナンスは監査等委員会設置会社で、指名と報酬を決める諮問委員会は独立社外取締役が過半だ。形は整っている。あとは、積み上がった現金をいつ、どう使うかに、経営の資本配分の力が出る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI データセンターの通信は、速度が上がるたびに基板の数も質も要求が上がる。次世代の機器では、1 台あたりに使うセラミック基板が増え、熱の逃がし方の要求も厳しくなる。会社が通信の今期予想を、期初の 23% 増から 48% 増に引き上げたのは、需要が計画を上回って立ち上がっているからだ。
MARUWA は設計に組み込まれる立場にある。顧客は基板の仕様を満たす調達先を簡単には替えられず、新しいモデルでも同じ会社が選ばれる確率は高い。瀬戸工場の新棟で増産を決めたのは、需要が一過性でないとの確信の表れだ。営業利益率は 3 割台半ばを保ち、規模が増えるほど固定費が薄まって、さらに上がる余地もある。
半導体向けも追い風が吹く。汎用メモリの設備投資が戻り、三春工場の新棟が稼働すれば、この用途は 20% 増の勢いで回復する。車載は新エネルギー車でシェアを広げ、パワー半導体の高出力化で単価の高い基板に移っていく。
財務は自己資本比率 9 割と強く、投資を自己資金でまかなえる。稼ぎのよい事業に、遠慮なく資本を投じられるのは大きな強みだ。10 年かけて通信の市場が数倍に広がるなら、利益は今の数倍になる。その筋書きは荒唐無稽ではない。
慎重な見方
通信向けの急増は、特定の機器の更新サイクルに乗った需要だ。会社の説明も「次期モデル向け」で、そのモデルが売れなければ、需要はすぐに萎む。AI 投資が一巡して設備が余れば、基板の注文は大きく減る。今期の 25% 増収・35% 増益の計画は、会社がすでに一度引き上げた強気の数字だ。第 1 四半期の営業利益の進捗は、通期の 2 割に届かない。
設備投資は過去最大の 200〜250 億円で、営業キャッシュフローを超える。需要が計画を下回れば、新棟は遊休資産になり、減価償却だけが利益を削る。前期にも、新製品の立ち上げで歩留まりが下がって減益になった。増産の局面は、利益率が崩れやすい。
競合は京セラをはじめ、同じセラミックの技術を持つ会社が多い。中国勢も追い上げる。高付加価値の領域に頼る会社が、顧客から値下げを求められる場面は、半導体の部材でよく見る。
何より、今の値段が高い。利益率が高くても、配当性向が 1 桁%のまま現金と設備に積み上がるなら、自己資本利益率は 12% 台から上がらない。この水準では、成長しても資本コストを大きくは上回れない。
どちらに重みを置いたか
事業の質と財務の強さでは強気の見方が優勢だ。ただ値段の議論では、慎重な見方の指摘が的を射ている。通信が特定のモデルの更新に乗っている点と、資本効率が低い点は、強気の見方でも否定できない。確率は中立を中心に置き、10 年では「構造的に負ける」側をやや厚くした。楽観の筋書きでも、今の値段を大きくは超えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 85,475 円1.05 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 7,917 円977 億円)。 今の値に割り戻すと 48,028 円5,927 億円、今との差 +0.7%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 191,254 円2.36 兆円 | 12,156 円1,500 億円 | +326.4% | +15.6% | 24,409 円3,012 億円 |
| やや楽観 | 22% | 128,366 円1.58 兆円 | 10,130 円1,250 億円 | +190.3% | +11.2% | 30,469 円3,760 億円 |
| 中立 | 33% | 87,982 円1.09 兆円 | 8,104 円1,000 億円 | +101.4% | +7.3% | 31,708 円3,913 億円 |
| やや悲観 | 20% | 22,602 円2,789 億円 | 5,673 円700 億円 | −40.7% | −5.1% | 5,655 円698 億円 |
| 悲観 | 13% | 5,610 円692 億円 | 3,242 円400 億円 | −81.4% | −15.5% | 1,151 円142 億円 |
| 加重平均 | 100% | 85,475 円1.05 兆円 | 7,917 円977 億円 | +95.8% | +6.9% | 93,392 円1.15 兆円 |
今の株価時価総額 47,700 円5,886 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 12% AI 通信が長く続き、通信向けが数倍に育つ 利益 1,166 億円 · PER 20.1 倍 · 株価時価総額 191,254 円2.36 兆円
AI データセンターの通信が 10 年のあいだ増え続け、機器の世代が変わるたびに基板の要求が上がる。通信向けの市場は今の 5 倍、MARUWA のシェアは 17% まで上がる。営業利益率は 3 割台後半で保たれ、規模の効果が効く。車載は新エネルギー車の普及で今の 2 倍の市場に、半導体は汎用メモリと先端の両方で今の 3 倍の市場になる。設備投資は大きいが、稼ぎが上回り、現金も増える。会社は配当と自社株買いを強め、資本効率も上がる。10 年先の MARUWA は、日本を代表する電子セラミックの会社として、今の 6 倍の利益を稼ぐ。
- 情報通信向けセラミック部品:数量 12.8(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 2,563 億円・営業利益 1,128 億円。市場 75 億ドル(実質)× シェア 17.0%、営業利益率 44%
- 車載・産業機器向けセラミック部品:数量 4.1(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 820 億円・営業利益 328 億円。市場 48 億ドル(実質)× シェア 8.5%、営業利益率 40%
- 半導体向けセラミック部品:数量 2.5(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 496 億円・営業利益 179 億円。市場 38 億ドル(実質)× シェア 6.5%、営業利益率 36%
- 照明機器:数量 24.0(出荷台数(万台・推定))× 価格 11(1 台あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 257 億円・営業利益 51 億円。24 万台 × 1 台 10.72 万円、営業利益率 20%
倍率:事業の純利益 1,162 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)225 億円。全体の PER 20.12 倍、時価総額 23,600 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10 年で通信向けの市場が今の 5 倍になる形。AI の通信量が伸び続ければありうるが、相当に強い前提で、確率は 1 割強にとどめた。
やや楽観 22% 通信の需要が根づき、半導体と車載も育つ 利益 797 億円 · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 128,366 円1.58 兆円
通信向けの市場は今の 3.7 倍に育ち、シェアは 15.5% まで上がる。機器の世代が変わっても、設計に組み込まれた MARUWA の基板は選ばれ続ける。半導体は汎用メモリの回復と先端工程への広がりで、今の 2.7 倍の市場になる。車載は新エネルギー車の拡大で、2 倍弱になる。営業利益率は 36% 前後で、ほぼ今の水準を保つ。新棟は計画どおりに稼働し、現金も積み上がる。配当性向は 2 割台に上がる。会社は技術で競合の一歩先を行き、顧客の信頼も厚い。10 年先の MARUWA は、通信と半導体の両方で欠かせない部材メーカーになっている。
- 情報通信向けセラミック部品:数量 8.5(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 1,714 億円・営業利益 720 億円。市場 55 億ドル(実質)× シェア 15.5%、営業利益率 42%
- 車載・産業機器向けセラミック部品:数量 3.4(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 675 億円・営業利益 263 億円。市場 42 億ドル(実質)× シェア 8.0%、営業利益率 39%
- 半導体向けセラミック部品:数量 1.9(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 386 億円・営業利益 131 億円。市場 32 億ドル(実質)× シェア 6.0%、営業利益率 34%
- 照明機器:数量 21.0(出荷台数(万台・推定))× 価格 11(1 台あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 225 億円・営業利益 45 億円。21 万台 × 1 台 10.72 万円、営業利益率 20%
倍率:事業の純利益 793 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)225 億円。全体の PER 19.64 倍、時価総額 15,796 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:通信向けの市場が 10 年で 3.7 倍になる形。AI の通信量の伸びと、基板への要求の上昇が続く前提で、2 割に置いた。
中立 33% 通信は大きくなるが、伸び方は穏やかに 利益 550 億円 · PER 19.2 倍 · 株価時価総額 87,982 円1.09 兆円
通信向けの市場は今の 2.7 倍に育つが、MARUWA のシェアは 14.5% で今とほぼ変わらない。機器の世代が変わるたびに、顧客が調達先を見直す。MARUWA は多くの場面で残るが、新しいモデルで一部を失う年もある。半導体は汎用メモリの循環を挟みながら、今の 2.3 倍の市場になる。車載は新エネルギー車向けの安定した需要で 1.6 倍になる。営業利益率は 34% 前後で、前期の水準より少し高い。10 年の稼ぎは今の 3 倍だが、配当性向を 3 割ほどにしても、資本効率は 15% 台にとどまる。
- 情報通信向けセラミック部品:数量 5.8(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 1,166 億円・営業利益 466 億円。市場 40 億ドル(実質)× シェア 14.5%、営業利益率 40%
- 車載・産業機器向けセラミック部品:数量 2.7(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 543 億円・営業利益 206 億円。市場 36 億ドル(実質)× シェア 7.5%、営業利益率 38%
- 半導体向けセラミック部品:数量 1.5(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 309 億円・営業利益 102 億円。市場 27 億ドル(実質)× シェア 5.7%、営業利益率 33%
- 照明機器:数量 18.0(出荷台数(万台・推定))× 価格 11(1 台あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 193 億円・営業利益 37 億円。18 万台 × 1 台 10.72 万円、営業利益率 19%
倍率:事業の純利益 546 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)225 億円。全体の PER 19.17 倍、時価総額 10,688 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:通信向けの市場が 10 年で 2.7 倍になる形。AI の伸びは続くが、顧客の調達先の見直しや、競合の台頭で、伸び方は落ち着く。最も実現しやすい筋書きとして、3 割強に置いた。
やや悲観 20% 競争と循環に削られ、普通のセラミック会社になる 利益 313 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 22,602 円2,789 億円
通信向けは顧客が調達先を複線化し、MARUWA のシェアは 13% に下がる。通信向けの市場は今の 1.9 倍にとどまる。半導体は汎用メモリの循環に振られ、車載は新エネルギー車の価格競争で単価が下がる。営業利益率は 27% まで下がり、新棟の償却が重い。会社は優良な部材メーカーであり続けるが、価格を自分で決める力は弱まった。顧客は複数の調達先を使い分け、値下げ交渉も厳しくなる。通信の山のあとに続く谷で、投資の重さが目立つ 10 年になる。10 年の稼ぎは名目で今の 1.7 倍にとどまる。物価の上昇分を除けば、ほとんど増えていない。
- 情報通信向けセラミック部品:数量 3.6(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 732 億円・営業利益 249 億円。市場 28 億ドル(実質)× シェア 13.0%、営業利益率 34%
- 車載・産業機器向けセラミック部品:数量 2.0(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 410 億円・営業利益 131 億円。市場 30 億ドル(実質)× シェア 6.8%、営業利益率 32%
- 半導体向けセラミック部品:数量 1.1(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 219 億円・営業利益 61 億円。市場 21 億ドル(実質)× シェア 5.2%、営業利益率 28%
- 照明機器:数量 15.0(出荷台数(万台・推定))× 価格 11(1 台あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 161 億円・営業利益 26 億円。15 万台 × 1 台 10.72 万円、営業利益率 16%
倍率:事業の ROE 10.2%、k 7.25%、残る割合1/2 から RONIC 9.6%。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、g 4.0% で上限 11.7 倍。設備更新の谷で利益が 4 割落ち、ROE が 10% まで下がる年。上限の 6 割台半ばに置く。(上限の約 65% の 7.6 倍)
確率:通信向けのシェアを他社に奪われ、半導体が循環で振れ、利益率が 27% まで落ちる形。堀の幅の狭さを考え、2 割に置いた。
悲観 13% 技術と価格で負け、優良さを失う 利益 71 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 5,610 円692 億円
通信の次世代機器で、基板の素材や構造が変わり、セラミック基板の使い方が変わる。同時に、中国のセラミック基板メーカーが性能を上げ、価格で攻める。MARUWA の通信向けのシェアは 9% に落ち、通信向けの市場も今の 1.3 倍にとどまる。半導体は汎用メモリの循環で小さく、車載は新エネルギー車の価格競争で利益が出にくくなる。営業利益率は 10% まで落ち、新棟は遊休になる。会社は潰れないが、もう優良な会社とは呼べず、10 年先の株価は純資産と現金が支える。通信の増産に賭けた投資は報われず、攻めの経営が裏目に出た形で、株主の手元に残るのは厚い自己資本だけになる。
- 情報通信向けセラミック部品:数量 1.8(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 362 億円・営業利益 65 億円。市場 20 億ドル(実質)× シェア 9.0%、営業利益率 18%
- 車載・産業機器向けセラミック部品:数量 1.2(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 241 億円・営業利益 36 億円。市場 24 億ドル(実質)× シェア 5.0%、営業利益率 15%
- 半導体向けセラミック部品:数量 0.6(対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年))× 価格 201(1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 121 億円・営業利益 12 億円。市場 15 億ドル(実質)× シェア 4.0%、営業利益率 10%
- 照明機器:数量 11.0(出荷台数(万台・推定))× 価格 11(1 台あたりの平均売上(万円・名目))→ 売上 118 億円・営業利益 9 億円。11 万台 × 1 台 10.72 万円、営業利益率 8%
倍率:構造的に負けて利益が細る筋書きなので PBR。稼ぐ力(事業の純利益 69 億円 ÷ k 7.25% + 余った現金 75 億円)は約 840 億円、純現金は 670 億円。やや悲観(PER 7.6 倍)より PER が高くならないよう、床の純現金に近い約 690 億円(今の自己資本 1,473 億円の 0.47 倍)に置いた。
確率:構造的に負ける筋書き。通信向けの基板が別の素材や中国勢に置き換わり、通信向けのシェアが 9% まで落ちる。確率は 1 割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
情報通信向けセラミック部品
AI データセンターなど次世代高速通信の機器に使う、セラミックの基板・部品。会社の稼ぎの半分近くを占める。
| 数量対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年) | 価格1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 150 | 303 | 133 |
| 10 年後 中立 | 5.8 | 201 | 1,166 | 466 |
取り方:会社の市場別売上高から、前期の通信向けを約 303 億円(売上の約 4 割)と読んだ。対象市場を実質 15 億ドル、シェアを 13.5% と推定すると自社の規模は 2.02 億ドルで、150 円を掛けて 303 億円になる。市場の大きさとシェアは第三者の数字が見つからず、売上と競合の規模から逆算した。物価の分は価格(為替 × 物価の倍率)に入れ、シェアと市場の伸びは数量の側に置く。利益は、前期の営業利益 250 億円のうちセラミック部品が約 9 割を稼ぐことから、通信向けの営業利益率を 44% と置いた。 先の数量は対象市場を実質(物価を除く)で置いて伸ばしたもので、名目の市場の伸びではない。
車載・産業機器向けセラミック部品
電気自動車などのパワー半導体の放熱基板と、産業機器・医療機器向けの部品。
| 数量対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年) | 価格1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.6 | 150 | 238 | 90 |
| 10 年後 中立 | 2.7 | 201 | 543 | 206 |
取り方:車載(約 150 億円)と産業機器(約 88 億円)を合わせて 238 億円と読んだ。対象市場を実質 22 億ドル、シェアを 7.2% と推定した。パワー基板は窒化ケイ素・窒化アルミなどで競合が多く、シェアは通信より低い。営業利益率は 38% と置いた。 先の数量は対象市場を実質(物価を除く)で置いて伸ばしたもので、名目の市場の伸びではない。
半導体向けセラミック部品
半導体の製造工程で使うセラミック部品。汎用メモリの設備投資に連動する。
| 数量対象市場(実質・億ドル)× 自社シェア = 自社の実質の売上規模(億ドル・暦年) | 価格1 ドルの売上あたりの円(為替 150 円 × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 150 | 97 | 31 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 201 | 309 | 102 |
取り方:半導体向けを約 97 億円(売上の約 13%)と読んだ。対象市場を実質 12 億ドル、シェアを 5.4% と推定した。汎用メモリの回復が遅れた前期は利益率が低く、営業利益率を 32% と置いた。 先の数量は対象市場を実質(物価を除く)で置いて伸ばしたもので、名目の市場の伸びではない。
照明機器
LED を中心とした照明器具。2030 年の LED 化という政策が追い風。
| 数量出荷台数(万台・推定) | 価格1 台あたりの平均売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13.4 | 8.00 | 107 | 20 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 11 | 193 | 37 |
取り方:照明機器の売上 107 億円を、業務用・屋外向けの 1 台あたり約 8 万円で割って約 13.4 万台と推定した。台数は実質の数量で、物価と高機能化は 1 台あたりの売上に入れた。営業利益率は 1 四半期の実績(約 2 割)から 19% と置いた。
リスクと懸念
通信向けの需要が特定のモデルに偏る
通信向けは会社自身が「次期モデル向け」と言う需要で、売上の半分近くを占める。モデルの更新が遅れる、他社の基板に切り替わる、顧客が在庫を調整する。どれが起きても売上は大きく動く。顧客の名前も集中度も開示されていないので、外から測れない点が危うい。
設備投資の回収が遅れる
今期の設備投資は過去最大の 200〜250 億円で、建設中の資産がすでに 178 億円ある。需要の山が先送りされると、新棟は稼働率が上がらず、減価償却が利益を圧迫する。営業キャッシュフローを上回る投資のため、現金の積み上がりも止まる。
半導体の循環と中国勢の追い上げ
半導体向けは汎用メモリの設備投資に連動し、2〜3 年ごとに谷が来る。前期も回復が遅れた。通信・車載向けでも、中国のセラミック基板メーカーが性能を上げれば、価格の下押しが始まる。高い利益率は、競争が緩いからこそ保てている。
新製品の立ち上げと歩留まり
前期の減益では、新製品の立ち上げ時の歩留まり低下が響いた。増産と新棟の立ち上げが重なる今期は、同じことが起きやすい。通信向けの次世代品は要求が厳しく、歩留まりの管理が難しい。立ち上げに失敗すれば、顧客の信頼を失い、次のモデルの受注にも響く。
資本効率が低いまま積み上がる
配当性向は 1 桁%で、稼ぎの多くは設備と現金に積み上がる。投資が実らなければ、自己資本利益率は 1 桁台に落ちかねない。積み上がった現金が大きな成果を生んだ実績も、今のところ見えない。経営が資本配分を見直さない限り、利益が増えても株主への見返りは増えにくい。
車載の需要の弱さ
新エネルギー車は伸びているが、市場全体の販売は鈍い。前期は車載の弱さが減益の要因になった。会社は今期の車載を 6% 増と見るが、パワー半導体の価格競争が強まれば、基板の単価にも下押しが及ぶ。車載は利益率が通信より低く、全体の利益率を下げる方向にも働く。
株価の高さそのものが招く下落
今の PER は実績で 34 倍と高い。成長が計画どおり進んでも、倍率が縮めば株価は下がる。過去の PBR は 0.4 倍から 6 倍超まで大きく動いており、倍率の振れは大きい。好調が続いても、期待が剥がれた時の値下がりは速い。
今後の分かれ目
- 通信向けの受注が、会社の今期計画(48% 増)を上回って続く
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。ただし倍率が先に上がっていないかを別に確かめる。
- 次期モデルの立ち上げが遅れ、通信向けの売上が計画を下回る
- やや悲観・悲観の確率を引き上げる。設備投資の回収が遅れ、利益率にも響く。
- 設備投資が 250 億円を超え、翌年も続く
- 資本効率が下がる方向に見る。需要の裏づけがなければ、悲観の筋書きに重みを置く。
- 配当と自社株買いが利益の 3 割以上に引き上がる
- 余った現金を株主に返す姿勢と見て、自己資本利益率の改善を織り込む。中立の倍率を上げる余地がある。
- 半導体向けの売上が、第 2 四半期以降に 2 割以上伸びる
- 汎用メモリ向けの回復が確認でき、半導体の数量を中立から楽観側へ引き上げる。
- 大株主や経営陣から TOB や再編の動きが出る
- 買収価格が本質価値を上回るかを確かめる。上回るなら、持ち続けるより応じる価値が出る。
- 中国勢が通信・車載向けの基板で、値下げして顧客を奪い始める
- 利益率の下押しが始まる合図とみる。悲観の確率を厚くする。
見ておくもの
- 四半期ごとの通信向け売上と、今期計画(売上 933 億円)の進捗
- 瀬戸・三春の新棟の稼働時期と歩留まり
- 営業利益率(今期予想 36%)が 3 割台を保てるか
- 配当性向と自社株買いの有無
- 世界の半導体設備投資と汎用メモリの動き
倍率と資本コストの決め方
今の株価や実績 PER 34 倍を見て倍率を決めていない。通信・車載・半導体・照明を、市場規模 × シェアの数量と、為替 150 円 × 物価の価格で積み、利益率を置いて純利益を出した。倍率は k 7.25%(基本の7.5%に調整+1.5%)、g 4%、事業の自己資本利益率から出した正当化 PER の上限に、利益の質を見て 8 割前後を掛けた。現金は事業から分け、帳簿の値で足した。リース会計は、工場を自前で持つ会社なので影響は小さい。結果が今の値段を大きく下回るのは、PER 30 倍台を 10 年後も保つ前提が置けなかったためで、数字を合わせにいったものではない。中立の PER が 10 倍前後で、業種のノートの成熟期 18〜28 倍を下回るのは、k が 7.25%(基本の 7.5% に調整 +1.5%)で、現金を抱えて ROE が 15% 前後にとどまるため。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.41→20.12 倍・やや楽観 PER 11.66→19.64 倍・中立 PER 10.75→19.17 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。